(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液透過性を有するトップシートと、液不透過性を有するバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配された吸収体と、前記バックシートの前記吸収体側の面とは逆の面側に設けられたカバーシートを含む吸収性物品であって、
前記カバーシートは、第1カバーシート部分と、前記第1カバーシート部分の前記吸収性物品の長手方向または幅方向のいずれかの端縁部に前記第1カバーシート部分と平面視で一部が重畳して配された第2カバーシート部分と、の少なくとも2つの部分を有し、
前記第1カバーシート部分は、前記重畳している領域の少なくとも一部において、前記第2カバーシート部分と間欠的に接着される第1接着領域を有し、
前記吸収性物品を平面視した際に、少なくとも一部が前記第1接着領域の少なくとも一部と重なるように、前記第1カバーシート部分の前記長手方向または前記幅方向の端縁部に沿う方向に弾性部材が伸長状態で設置されて、前記第1カバーシート部分と前記第2カバーシート部分との間にフルート構造を形成しており、
前記弾性部材は、前記第2カバーシート部分と前記バックシートとの間に配置されているか、若しくは、前記第2カバーシート部分と前記第1カバーシート部分との間に配置されている
ことを特徴とする、吸収性物品。
前記カバーシートは、さらに第2周辺カバーシート部分を有し、前記第2周辺カバーシート部分は、前記中央カバーシート部分の前記第1周辺カバーシート部分との間で重畳を有する端縁部と対向する端縁部において、前記中央カバーシート部分と平面視で一部重畳して配されており、前記重畳している領域の少なくとも一部において、前記中央カバーシート部分と接着される第2接着領域 を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による吸収性物品の実施形態である使い捨ておむつの例について、
図1から
図10を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
周知のように使い捨ておむつにはいわゆるパンツ型のものと、展開型のものがあるが、本発明を展開型の使い捨ておむつに応用した実施形態の例について以下に説明する。
ただし、本発明は実施形態の展開型の使い捨ておむつの態様に限定されるものではない。
【0012】
<実施形態>
(おむつ着用時の外観斜視図)
図1に本発明の実施形態に係るおむつの、着用時の正面側から見た外観斜視図を示す。本実施形態に係るおむつ10は、展開型の使い捨ておむつであり、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、これら前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。また、着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。
【0013】
同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rの下端部と股下領域10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
【0014】
着用時に前身頃領域10Fは、着用者の腹側に位置し、後身頃領域10Rは着用者の背側に位置する。そして、着用時に股下領域10Cは、着用者の股下を覆い、左右一対の脚周り開口部10Lに、着用者の脚がそれぞれ通された形となる。したがって、脚周り開口部10Lは、着用者の両脚の付け根から太股あたりのいずれかに位置することとなる。
【0015】
おむつ10の外側に位置するカバーシート11の後身頃領域10Rの左右両端縁部には、着用時に前身頃領域10Fの左右両端縁部に重ね合わせてこれらをつなぎ、脚周り開口部10Lを形成し得る左右一対のファスニングテープ10Aが接着されている。このファスニングテープ10Aは、前身頃領域10Fのカバーシート11上に接着されたフロントパッチシート10Bに対して繰り返し剥離可能に接合される。
【0016】
本実施形態では、カバーシート11を、おむつの長手方向に延在し、部分的に重複(以下、「重畳」ともいう。)して幅方向に並ぶ3つのカバーシート11A,11B,11Cで構成している。
【0017】
図1では左から順に、カバーシート11Aを左サイドカバーシート、11Bを中央カバーシート,11Cを右サイドカバーシートと呼ぶ。左右を区別しない場合は、11Aと11Cをまとめて、単にサイドカバーシートと呼ぶ。
図1からも判るように、中央カバーシート11Bとサイドカバーシート11A、11Cの重複部分において、内側(着用者の肌側)からみて中央カバーシート11Bはサイドカバーシートよりも外側に位置するように構成されている。
【0018】
図1の中央カバーシート11Bの幅方向両端縁部の波線部分は、内部のサイドカバーシート11A、11Cの幅方向両端縁部(点線部分)との間で形成された、着用時におむつ内部の換気の通路として作用するフルート構造(波型の屈曲断面による周期的または間欠的開口構造)である。
【0019】
(おむつ展開状態の分解斜視図)
図2は、
図1に示すおむつ10の展開状態における模式的な分解斜視図である。本実施形態におけるおむつ10は、着用時の外側にあたる
図2の下から上へ順に、カバーシート11と、液不透過性を有するバックシート(裏面シート)12と、吸収体13と、液透過性を有するトップシート(表面シート)14を重ねた積層構造を有している。
【0020】
カバーシート11は、内部を保護し良好な手触りと通気性を得るために、エアスルーの薄い不織布にて形成される。バックシート12は液不透過性であるが、ある程度の透湿性を有するのが望ましい。吸収体13は前述のように、吸収性本体17をコアラップ18で被覆して構成される。トップシート(表面シート)14の上部には任意的に、ギャザーを有する一対のサイドシート15を設けても良い。
【0021】
図2において最下層に位置する本実施形態のカバーシート11は、
図1とは裏返しにバックシート12に面する内側の面を上面に表示されているので、中央カバーシート11Bはサイドカバーシート11A、11Cよりも下層側に位置している。
図1と異なり、カバーシート11は展開状態であるので、サイドカバーシート11A、11Cの対向する長手方向の端縁部にはフルート構造は表示されていない。
【0022】
(カバーシートの展開平面図と断面図)
図3は、本発明の実施形態に係るカバーシート11の展開平面
図3(A)、中央カバーシートとサイドカバーシートの重畳領域のおむつの長手方向断面IIIBの断面
図3(B)、およびおむつの長手方向2箇所の幅方向断面IIIC、IIIDにおける断面
図3(C),3(D)である。
【0023】
図3(A)のカバーシート展開平面図において、カバーシート11は
図2とは逆に外側の面を表に表示されており、
図1の装着時と同じ外側の面が表示されている。ただし、フロントパッチシート10Bの位置から判るように、
図1とは上下が逆となっている。
【0024】
図3(A)からもわかるように、カバーシート11は、おむつの長手方向に延在しておむつ幅方向に部分的に重畳して並ぶ、中央部分の中央カバーシート11Bと左右2つのサイドカバーシート11C、11Aの3つの部分から構成されている。
【0025】
また、中央カバーシート11Bは、おむつの長手方向に沿ってサイドカバーシート11C、11Aと部分的に重なる2列の重畳領域20C,20Aを有しており、重畳領域においてサイドカバーシートよりも図の手前側に位置している。
【0026】
さらに
図3(A)では、中央カバーシート11Bは、重畳領域20C,20Aの少なくとも一部において、おむつの長手方向に間欠的にサイドカバーシートと接着される接着領域を有することが、重畳領域の長手方向に間欠的に並んだ複数の幅方向の破線の領域で示されている。
【0027】
なお、本発明において、カバーシート同士の重畳領域の幅は、吸収性物品の通気性や強度を考慮して任意に決定することができるが、通常は2mm〜50mmの範囲であり、好ましくは4mm〜40mmの範囲であり、特に好ましくは6mm〜30mmの範囲とすることができる。
【0028】
図3(B)に示すおむつの長手方向断面図(
図3(A)のIIIB断面)は、展開時の伸長状態における断面(
図3(B)左)と、対応する部分の収縮状態における断面(
図3(B)右)の2つの状態の断面の概略を示す。収縮状態においては、カバーシートの層の位置にフルート構造が形成されていることがわかる。詳細な断面の層構造は
図4に後述する。
【0029】
図3(C)は、吸収体13のあるおむつ長手方向中央部に位置する、幅方向断面IIICの断面図である。
図3(C)には、コアをコアラップシートで包んで構成された吸収体13を、液透過性を有するトップシート14と、液不透過性を有するバックシート12で挟んだ吸収性物品としての基本構造が示される。また、本実施形態のカバーシート11が中央カバーシート11Bとサイドカバーシート11C、11Aの3つの部分から構成され、重畳領域20C,20Aで部分的に重なる構造が示される。
【0030】
加えて、おむつとして任意的にトップシート14の上に左右からまたがってギャザーを構成する一対のサイドシート15、おむつ全体に丸みを持たせたり、着用者の脚まわりにおむつがフィットするように伸縮性を与える弾性部材として機能する2本1組の糸ゴム16などの断面構造も図示される。
【0031】
また、任意的に糸ゴムのような弾性部材21A、21Cを、おむつの長手方向に接着領域と重なる位置で、サイドカバーシート11C、11Aとバックシート12との間に配置してもよい。これにより、中央カバーシート11Bの幅方向端縁部の重畳領域20C,20A内の接着領域において、フルート構造の形成を確実かつ容易にできる。この弾性部材21A、21Cは本発明において必須の構成要件ではなく、弾性部材が無い場合であっても間欠的な接着領域でさえあれば、カバーシートとバックシートの間隙にある空気を、カバーシートの押圧によるポンプ効果で、サイドカバーシート11C、11Aと中央カバーシート11Bの重畳部で接着されない隙間から排気可能である。
【0032】
図3(D)は、おむつ長手方向端部の吸収体13のない部分における幅方向断面IIIDの断面図である。弾性部材21A、21Cの断面も示されているが、この位置ではフルート構造は形成する必要は無く、弾性部材21A、21Cは接着固定されていない。すなわち伸縮力を発揮しない状態にされている。この部分は、製造時に製品間を切断する際に弾性部材がスナップバックする(伸長状態から弛緩するまでに縮みながら移動する)ための通路として機能する。
【0033】
なお、弾性部材21A、21Cが伸縮力を発揮しない状態にするその他の手段として、弾性部材21A、21Cを切断刃やヒートシール刃によって切断してもよい。この場合は、弾性部材はサイドカバーシート11C、11Aと中央カバーシートの間に接着した状態で細かい間隔で切断すれば良い。
【0034】
(カバーシート重畳領域の長手方向断面図の詳細)
図4は、
図3(B)のおむつ長手方向断面IIIBの断面図の部分図であって、おむつの重畳領域の伸長状態の
図4(A)と、収縮状態の
図4(B)として長手方向断面の層構造を示す。
【0035】
図4(A)の伸長状態において、各層は上から順にトップシート14、吸収体13、バックシート12、サイドカバーシート11Aまたは11C、中央カバーシート11Bである。吸収体13は前述のように吸収性本体をコアラップで被覆した構造であるため、2本の線で挟まれた部分として示されている。
【0036】
トップシート14、吸収体13、バックシート12の各層の間は、図の蛇行点線で模式的に示すように接合されている。接合にはいわゆるホットメルト接着剤を用いることができるが、これをベタ塗りに接着すると柔軟性が低下し、かえって強度が低下するので、間欠的または部分的な接合とするのが望ましい。あるいはホットメルト接着に代えて、ソニックシール(超音波溶着)やヒートシール(熱融着)を用いることもできる。
【0037】
図4(A)の左半分において、サイドカバーシート11Aまたは11Cと中央カバーシート11Bの重畳領域の間には、長手方向に間欠的な接着領域が形成されている。この接着領域では、ソニックシールやヒートシールによる熱融着、またはホットメルト接着による接合が可能であり、望ましくはソニックシールがよい。
【0038】
この間欠的な接着領域により、収縮時にカバーシートの幅方向端縁部にフルート構造が形成可能とされており、通気口として着用時におむつ内部の換気の作用をすることが出来る。
【0039】
図4(B)の収縮状態においては、このフルート構造の開口が
図4(A)の伸長状態よりも拡大していることがわかり、おむつ内部との通気口の開口面積が拡大するため、おむつ着用時におむつ内部の換気が促進される。
【0040】
前述のように、任意的に糸ゴムのような弾性部材を、おむつの長手方向に接着領域と重なる位置で、カバーシートやバックシートとの間などに配置して間欠的に接着してフルート構造の形成を促進しても良い。この場合、おむつの長手方向の弾性部材端部では、弾性部材が製造時にスナップバックする道を確保する必要があり、弾性部材端部に帯状に接着しない領域を作るのが望ましい。
【0041】
(態様1:弾性部材の配置)
図5は、任意的な本発明の実施形態の態様1における弾性部材の配置の例を示す、おむつ幅方向断面
図5(A)および長手方向断面の模式
図5(B)である。
【0042】
図5(A)は、
図3(C)と同じ、おむつ長手方向中央部の吸収体13のある部分の断面IIICにおける、おむつ幅方向断面図である。
図5(A)では、例示的に2本1組の糸ゴムのような弾性部材21A、21Cの断面配置を明示している。この態様1では弾性部材21A、21Cは、サイドカバーシート11A(11C)とバックシート12の間に配置され、
図5(B)にも示すように例えばホットメルト接着剤で長さ方向に間欠的に固定されている。
【0043】
弾性部材とカバーシート、バックシートとの間の接着手段としてはホットメルト接着がもっとも好ましいが、ヒートシールによる熱融着も可能である。ウルトラソニック(超音波)による接着も可能であるが、この場合は特にバックシートを傷つけないようにする配慮が必要である。なお、ホットメルト接着の場合は、糸ゴムの長さ方向にホットメルト接着剤を網目状、Ω字状、スパイラル状にバックシートまたはカバーシートに塗って糸ゴムを固定したり、糸ゴムに対して直接連続的(糸ゴムの収縮力を与える部分だけ)に塗ってもよい。
【0044】
図5(B)の長手方向断面の模式図に示すように、サイドカバーシート11Aと中央カバーシート11Bの重畳領域の長手方向の間欠的な接着領域と同じ位置で、間欠的に弾性部材を固定するのが望ましい。
【0045】
図5(B)に示すように、弾性部材が収縮時にスナップバックする道として、弾性部材のおむつ長手方向の両端部には、弾性部材を接着しない領域が設けられている。この弾性部材を接着しない領域は、フルート構造形成領域の端からおむつ全体の端部までの1/4程度の距離とすることが望ましい
【0046】
(態様2:弾性部材の配置)
図6は、任意的な本発明の実施形態の態様2における弾性部材の配置の別例を示す、おむつ幅方向断面
図6(A)および長手方向断面の模式
図6(B)である。
【0047】
図6の態様2では弾性部材21A、21Cは、おむつの長手方向に接着領域と重なる位置で、サイドカバーシート11A、11Cと中央カバーシート11Bとの間に配置されて間欠的に接着されている。このように弾性部材を配置することにより、弾性部材がフルート開口の真中を通るため、中央カバーシート11Bの側にも収縮力を効果的に伝えることが可能となる。この結果、中央カバーシート11Bの側にサイドカバーシート11A、11Cと逆向きの波型の屈曲構造を形成し、大きくきれいな形の開口の形成を促進することが可能となる。
【0048】
この態様2で製造する場合、弾性部材を伸長状態でサイドカバーシートと中央カバーシートとの間に配置し、ウルトラソニック(超音波溶着)で固定することが考えられるが、弾性部材があたる部分では弾性部材が破断しない程度にウルトラソニックをかけるのが望ましい。ウルトラソニックをかけるためには、
図7(A)の製造工程断面図に示すように、弾性部材21Aまたは21C(例えば糸ゴム)を挟んだカバーシート11A〜Cの接着部分を、ウルトラソニックを印加するホーン71とアンビル72で挟み込んで超音波をあてる。この際に、一方(例えばホーン71)の側の弾性部材に当たる部分には、弾性部材をはさむカバーシート部分との間のクリアランスが0.05mm〜0.2mm程度とれる溝を形成して、弾性部材が破断するおそれをなくすることができる。
【0049】
図7(B)には、このようにウルトラソニックで接合した後の糸ゴム部分のおむつ長手方向平面図および幅方向断面図を示す。この例では、糸ゴムを2本1組にして使用している。なお、この部分の接着にもヒートシールによる熱融着、またはホットメルト接着による接合が可能であるのはもちろんである。
【0050】
(態様3:カバーシートとバックシートの接合領域)
図8は、本発明の実施形態の態様3におけるカバーシートとバックシートの接合領域の例を示す、おむつ展開平面図である。
図3(A)と同じくカバーシート11の外側から見た図で、カバーシートとバックシートの接合領域は斜線でハッチングした点線の領域で示している。但し簡単のため、フロントパッチシート10Bは図示していない。
【0051】
本実施形態のカバーシートは3つの部分からなるため、バックシートとの接合領域をそれぞれの部分に設ける必要がある。2つのサイドカバーシート11A,11Cについては、おむつ長手方向に沿って
図8の斜線で示す接合領域22A、22Cのように設ければよい。フルート構造の形成を阻害しないよう、接合領域22A、22Cはカバーシート同士の接着部分、重畳部分は除いて配置するのが望ましい。
【0052】
また、中央カバーシート11Bについては、バックシート12との間でおむつ内部の空気を換気・排出するポンプ室として作用する空間を確保するため、おむつ長手方向の両端縁部の接合領域23B1、23B2でバックシート12と接合する。すなわち、中央カバーシート11Bは、2つのサイドカバーシート11A,11Cと重なる部分の近傍、特に長手方向中央部分において、バックシート12に接着されていない部分を有する。
【0053】
いずれの接合領域においても例えばホットメルトによる接合とすることができ、ホットメルトの接合パターン(塗布パターン)はベタ塗りではない網目状、スパイラル、オメガ(Ω)など任意のパターンとすることができる。
【0054】
また任意的にカバーシートの重畳領域の接着領域に弾性部材を配置する場合には、例えば
図5の態様であれば、弾性部材に直接ホットメルトを塗って固定してもよく、または弾性部材の固定位置にあたるカバーシートないしバックシートの側に塗っても良い。
【0055】
なお、
図8右端の上下の両矢印の範囲の長手方向部分は、弾性部材21A,21Cの収縮によってフルート構造のきれいな開口ができ易い領域を示すものである。
図1の16や
図2の19の糸ゴムような、おむつ足廻りやギャザーのための弾性部材もフルート構造形成に寄与する。
【0056】
(態様4:カバーシートとバックシートの接合領域)
図9は、本発明の実施形態の態様4におけるカバーシートとバックシートの接合領域の別例を示す、おむつ展開平面図である。
【0057】
図9の態様4では、中央カバーシート11Bとバックシート12との間の接合のため、
図8の態様3の接合領域23B1、23B2に加えて、おむつの幅方向中央部におむつ長手方向に沿って幅の狭い直線状の接合領域23B3を設けたことを特徴とする。この態様の場合、中央カバーシート11Bが接合領域23B3で固定されているため、ポンプ作用で押し出される湿った空気は、中央カバーシートとサイドカバーシートの重畳部に形成された開口部に向かいやすく、良好な換気効果が得られる。フルート構造を構成する重畳領域の近傍においてバックシートと接着されていない領域を確保しつつ、このような接合領域を設けることにより、必要なポンプ作用を維持しつつも、例えば子供が座位のまま這い這いをする、いわゆるズリハイをするような場合に、中央カバーシート11Bと床がこすれ摩擦力によってバックシート12との間でずれや毛羽立ちを生じてしまうのを防止することができる。
図9の接合領域23B3は、ポンプ室機能やフルート構造の開口形成を阻止してしまわないように形成されていれば直線以外の任意なパターンでもよい。すなわち、例えば、接合領域23B1、23B2を結ぶ必要は無く、重畳領域20A、20Cの接着領域と同じように、おむつの長手方向に間欠的に並んだ幅方向のパターンで接合しても良い。
【0058】
(態様5:吸収体の構造)
図10は、本発明の実施形態の態様5における吸収体の構造を説明する部分平面図である。おむつの展開状態でカバーシート11の内側から見て平面視で、カバーシート11上にバックシート12と吸収体13を載置した状態の部分図である。
【0059】
吸収体13は
図2に示したように通常、吸収性本体17をコアラップ18で被覆して構成されるが、圧搾などの機械加工あるいは吸収性本体17の成形により吸収体13、あるいは吸収性本体17の表面に溝のパターンを形成して水分の吸収と拡散、吸収体13の領域に接する着用者の肌付近の、湿気を含んだ空気の拡散を促進することができる。本態様5では、
図10に示すように吸収体13の表面に、おむつ幅方向の接着領域の近傍に位置する端縁部に達する溝24を設けたことを特徴とする。ここで、上記接着領域の近傍とは、前記接着領域から10mmの範囲内の領域として設計する。より好ましくは、上記近傍は、より小さい該接着領域から5mmの範囲内、さらに小さい1mmの範囲内として設計することができる。特に好ましくは、該接着領域と一致することが好ましい。
【0060】
溝24のパターンは
図10のような斜め格子のパターンに限らず、吸収体13のおむつ幅方向の両端縁部、そして吸収体13の領域外への空気の拡散を可能とするものでありさえすればよく、例えば曲線の網目状や木の枝状パターンなどであっても良い。
【0061】
このような溝を設けることによって、吸収体上の湿気を含んだ空気が迅速に移送拡散され、しかもその空気はフルート構造の開口の近くに排出されるので、一層おむつ内部の換気の効率を上げることが可能となる。
【0062】
<本発明のその他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態や、任意的な変形例の態様に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、その他の実施形態が可能である。
【0063】
例えば、上記各実施形態またはその変形例に係るおむつの構造は、上述したような展開型に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に規定された構成を含む吸収性物品でありさえすれば、どのような構成であってもよい。例えば、パンツ型の使い捨ておむつや、尿パッドなどであっても本発明を適用可能である。加えて、上記実施形態またはその変形例は、乳幼児向けのおむつに限らず、成人向けのおむつ、尿パッドなど、各種吸収性物品に適用可能である。
【0064】
更に、上記実施形態においてはカバーシートを、おむつの長手方向に延在し、部分的に重複して幅方向に並ぶ3つのカバーシートで構成した例を示したが、上記各種吸収性物品の様々な形状を勘案すれば、カバーシートの構造は、この例に限定されるものでは無い。
【0065】
本発明においては、複数の(少なくとも2つの)カバーシートが部分的に重畳しており、重畳している領域の少なくとも一部において間欠的に接着されていればよい。つまり、本発明は、2枚のシートでカバーシートが作られているケースを含むものであり、2枚のシートが幅方向に並ぶか、長手方向に並ぶかも任意である。個々のカバーシートの構成要素は完全に別部材でなくても良いので、カバーシート部分と呼ぶことができる。
【0066】
すなわち本発明のカバーシートは、第1カバーシート部分と第2カバーシート部分の少なくとも2つの部分を有していればよく、第2カバーシート部分は、前記第1カバーシート部分の前記吸収性物品の長手方向または幅方向のいずれかの端縁部に前記第1カバーシート部分と平面視で一部が重畳して配されていればよく、前記第1カバーシート部分は、前記重畳している領域の少なくとも一部において、前記第2カバーシート部分と間欠的に接着される第1接着領域を有していればよい。
【0067】
この場合において、前記第1カバーシート部分および前記第2カバーシート部分のうち、前記重畳している領域において前記バックシートからより遠い側の層にあるカバーシート部分は、平面視において前記重畳している領域と前記バックシートとが重なる部分の近傍において、前記バックシートに接着されていない部分を有するように構成されることが望ましい。ここで、バックシートに貼られていない領域の幅は、少なくとも1mm以上、より好ましくは10mm以上、特に好ましくは30mm以上とすることができる。
【0068】
このように構成するのは、カバーシートが重畳する部分の近傍では、少なくとも片方のカバーシートはバックシートと接着されていない領域を有することにより、カバーシートとバックシートの間に空間を形成するためである。このような空間により、バックシートとカバーシートを貼り合せる接着剤でバックシートの透湿性が損なわれることがなく、かつ形成された空間が空気をためるポンプ室として作用して、着用者の体動運動などによってカバーシートが圧されると中の空気が、不織布の厚み方向とフルート構造の部分から排気されるという、従来技術にはない優れた効果が発揮される。
【0069】
また好ましい条件として、換気効果に着目すると、いずれのカバーシート部分についてもバックシートとの接着は少ないほうが望ましい。
【0070】
更に任意的に、前記第1カバーシート部分は、前記吸収性物品の中央部分に少なくとも存在する中央カバーシート部分であることができ、前記第2カバーシート部分は、第1周辺カバーシート部分であることができる。ここにおける「中央部分」とは、吸収性物品の長手方向の中央部分であってもよく、幅方向の中央部分であってもよい。実施形態においては、中央カバーシート11Bが中央カバーシート部分にあたり、サイドカバーシート11C、11Aの一方が第1周辺カバーシート部分にあたっている。
【0071】
また更に任意的に、前記カバーシートは、さらに第2周辺カバーシート部分を有するものとできる。この第2周辺カバーシート部分は、前記中央カバーシート部分の前記第1周辺カバーシート部分との間で重畳を有する端縁部と対向する端縁部において、前記中央カバーシート部分と平面視で一部重畳して配されたものとできる。実施形態においては、サイドカバーシート11C、11Aの他方が第2周辺カバーシート部分にあたる。
【0072】
そしてこの第2周辺カバーシート部分は、前記重畳している領域の少なくとも一部において、前記中央カバーシート部分と接着される第2接着領域を有するものとできる。フルート構造は少なくとも一方の接着領域に形成されればよいので、この第2接着領域では接着は特に間欠的であることを必要とはしないが、前記第1接着領域と同様に間欠的な接着としてもよい。このような構成において、本発明は前記実施形態と任意的な各態様の全てを含むものとできる。