特許第6777026号(P6777026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777026
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20201019BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20201019BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20201019BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B41J29/38 203
   B41J29/38 201
   B41J29/00 Z
   G03G21/00 388
   H04N1/00 567M
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-128328(P2017-128328)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10794(P2019-10794A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼戸 彰史
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−037091(JP,A)
【文献】 特開2014−037069(JP,A)
【文献】 特開2017−007183(JP,A)
【文献】 特開2009−269310(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03125105(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104219405(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 29/00
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された用紙を出力させる画像形成装置であって、
周囲を撮像する撮像手段と、
前記画像形成装置の使用者を認識する使用者認識手段と、
前記撮像手段によって得られた撮像データ中における人物を認識する人物認識手段と、
前記人物認識手段によって、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された場合に、前記用紙における前記画像が遮蔽されるように前記用紙を出力する機密保護出力を行わせる制御手段と、
前記画像に応じて機密性の有無を認識する機密性認識手段と、を具備し、
前記制御手段は、前記人物認識手段によって前記撮像データ中に前記他人がいると認識され、かつ前記機密性認識手段によって出力される前記画像に前記機密性があると認識された場合において、前記機密保護出力を行わせ、
前記機密性認識手段は、前記撮像データ中に前記他人がいると認識された場合に前記画像形成装置と前記他人との間の距離を認識し、予め設定された閾値よりも前記距離が短く、かつ予め設定された文字列が前記画像中において認識された場合に前記機密性があると認識し、
前記文字列は複数の種類に区分されて複数設定され、前記閾値は前記種類毎に設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像が形成された用紙を出力させる画像形成装置であって、
周囲を撮像する撮像手段と、
前記画像形成装置の使用者を認識する使用者認識手段と、
前記撮像手段によって得られた撮像データ中における人物を認識する人物認識手段と、
前記人物認識手段によって、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された場合に、前記用紙における前記画像が遮蔽されるように前記用紙を出力する機密保護出力を行わせる制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記機密保護出力を行わせるに際して、
複数の頁にわたり前記画像が形成された前記用紙を出力させる際に、白紙である前記用紙を出力させた後で、前記画像が形成されている前記用紙の出力を休止させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像が形成された用紙を出力させる画像形成装置であって、
周囲を撮像する撮像手段と、
前記画像形成装置の使用者を認識する使用者認識手段と、
前記撮像手段によって得られた撮像データ中における人物を認識する人物認識手段と、
前記人物認識手段によって、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された場合に、前記用紙における前記画像が遮蔽されるように前記用紙を出力する機密保護出力を行わせる制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記用紙における片面においてのみ前記画像を形成して出力させる印刷ジョブを実行する際に、前記機密保護出力を行わせるに際して、前記画像が形成された前記用紙の表裏を逆転させて出力させる動作を行わせ、
前記用紙における両面に前記画像を形成して出力させる印刷ジョブを実行する際に、前記機密保護出力を行わせるに際して、白紙である前記用紙を出力させた後で、前記画像が形成されている前記用紙の出力を休止させる動作を行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記機密性認識手段は、予め設定された文字列が前記画像中において認識された場合に前記機密性があると認識することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記使用者認識手段は、前記画像形成装置が前記使用者によって操作された際に前記撮像手段によって得られた前記撮像データより、前記使用者を認識することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記用紙における両面に前記画像が形成されて出力されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記機密保護出力を行わせるに際して、
前記画像が形成された前記用紙の表裏を逆転させて出力させることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記機密保護出力を行わせるに際して、
複数の頁にわたり画像が形成された前記用紙を出力させる際に、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された以降に出力される前記用紙の表裏を逆転させて出力させることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記用紙における片面においてのみ前記画像が形成されて出力されることを特徴とする
請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記用紙における片面においてのみ前記画像を形成して出力させる第1の印刷ジョブと、前記用紙における両面に前記画像を形成して出力させる第2の印刷ジョブとが並行して入力された場合に、
前記第1の印刷ジョブの実行の優先度を、前記第2の印刷ジョブの実行の優先度よりも高める制御を行うことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体上に画像を形成して出力する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体上に画像を形成して出力する画像形成装置として、文書ファイル等の印刷出力をする印刷機能、原稿から画像を読み取るスキャナ機能、読み取られた画像を用紙に印刷して出力するコピー機能、ファクシミリ機能等も有する複合機(MFP:Multi Function Printer)が普及している。こうした画像形成装置は、職場に設置されている場合もあるが、コンビニエンスストア等の商業施設に設置されている場合も多い。MFPは大型かつ高価であるために、特に個人が私用で用いる際には、こうした商業施設に設置されたものを用いる場合も多い。
【0003】
一方で、こうした商業施設における人の出入りは自由であるため、こうしたMFPにおいて機密性の高い情報を扱う際には、特に注意を要し、例えば、MFPにおける表示部(ディスプレイ)においてこうした情報の印刷プレビュー画像が表示されるような場合には、注意を要する。このため、特許文献1には、センサによってMFP周囲の移動体(人物)の状況を認識し、その状況に応じて情報の機密度を設定し、機密度が高い場合には、表示部における画像を縮小して見にくくする、あるいは非表示にする動作を行う画像形成装置が記載されている。これによって、機密度が高いと判定された場合に、MFPの近傍にいる他人は、こうした情報に関わるプレビュー画像を見にくくなる、あるいは見ることができなくなり、機密が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−288330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術において、他人が見ることを抑制される対象となるのは、表示部における画像であり、用紙上に形成されて出力される画像を他人が使用者と同様に見ることは可能である。一方、用紙上に形成される画像に対して上記のように表示部で表示される画像と同様の処理を行うことは好ましくないことは明らかである。
【0006】
このため、印刷出力された用紙中の画像に対する機密保護を図ることが望まれた。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、画像が形成された用紙を出力させる画像形成装置であって、周囲を撮像する撮像手段と、前記画像形成装置の使用者を認識する使用者認識手段と、前記撮像手段によって得られた撮像データ中における人物を認識する人物認識手段と、前記人物認識手段によって、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された場合に、前記用紙における前記画像が遮蔽されるように前記用紙を出力する機密保護出力を行わせる制御手段と、前記画像に応じて機密性の有無を認識する機密性認識手段と、を具備し、前記制御手段は、前記人物認識手段によって前記撮像データ中に前記他人がいると認識され、かつ前記機密性認識手段によって出力される前記画像に前記機密性があると認識された場合において、前記機密保護出力を行わせ、前記機密性認識手段は、前記撮像データ中に前記他人がいると認識された場合に前記画像形成装置と前記他人との間の距離を認識し、予め設定された閾値よりも前記距離が短く、かつ予め設定された文字列が前記画像中において認識された場合に前記機密性があると認識し、前記文字列は複数の種類に区分されて複数設定され、前記閾値は前記種類毎に設定されることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、画像が形成された用紙を出力させる画像形成装置であって、周囲を撮像する撮像手段と、前記画像形成装置の使用者を認識する使用者認識手段と、前記撮像手段によって得られた撮像データ中における人物を認識する人物認識手段と、前記人物認識手段によって、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された場合に、前記用紙における前記画像が遮蔽されるように前記用紙を出力する機密保護出力を行わせる制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記機密保護出力を行わせるに際して、複数の頁にわたり前記画像が形成された前記用紙を出力させる際に、白紙である前記用紙を出力させた後で、前記画像が形成されている前記用紙の出力を休止させることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、画像が形成された用紙を出力させる画像形成装置であって、周囲を撮像する撮像手段と、前記画像形成装置の使用者を認識する使用者認識手段と、前記撮像手段によって得られた撮像データ中における人物を認識する人物認識手段と、前記人物認識手段によって、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された場合に、前記用紙における前記画像が遮蔽されるように前記用紙を出力する機密保護出力を行わせる制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記用紙における片面においてのみ前記画像を形成して出力させる印刷ジョブを実行する際に、前記機密保護出力を行わせるに際して、前記画像が形成された前記用紙の表裏を逆転させて出力させる動作を行わせ、前記用紙における両面に前記画像を形成して出力させる印刷ジョブを実行する際に、前記機密保護出力を行わせるに際して、白紙である前記用紙を出力させた後で、前記画像が形成されている前記用紙の出力を休止させる動作を行わせることを特徴とする。
本発明の画像形成装置において、前記機密性認識手段は、予め設定された文字列が前記画像中において認識された場合に前記機密性があると認識することを特徴とする
本発明の画像形成装置において、前記使用者認識手段は、前記画像形成装置が前記使用者によって操作された際に前記撮像手段によって得られた前記撮像データより、前記使用者を認識することを特徴とする
本発明の画像形成装置は、前記用紙における両面に前記画像が形成されて出力されることを特徴とする。
本発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記機密保護出力を行わせるに際して、前記画像が形成された前記用紙の表裏を逆転させて出力させることを特徴とする。
本発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記機密保護出力を行わせるに際して、複数の頁にわたり画像が形成された前記用紙を出力させる際に、前記撮像データ中に前記使用者と異なる他人がいると認識された以降に出力される前記用紙の表裏を逆転させて出力させることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、前記用紙における片面においてのみ前記画像が形成されて出力されることを特徴とする
本発明の画像形成装置は、前記制御手段は、前記用紙における片面においてのみ前記画像を形成して出力させる第1の印刷ジョブと、前記用紙における両面に前記画像を形成して出力させる第2の印刷ジョブとが並行して入力された場合に、前記第1の印刷ジョブの実行の優先度を、前記第2の印刷ジョブの実行の優先度よりも高める制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、印刷出力された用紙中の画像に対する機密保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が使用される際の形態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の制御に関わる構成を示すブロック図である
図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において行われる動作の第1の例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において行われる動作の第2の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において行われる動作の第2の例によって用紙が出力される状況を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において行われる動作の第3の例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において行われる動作の第3の例によって用紙が出力される状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1が使用される際の状況を示す斜視図であり、図2は画像形成装置1の制御に関わる構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は複合機(MFP)であり、用紙に各種の方法で入手した画像を形成して図1における排紙部90に出力する。また、この画像形成装置1は、その周囲を撮像して画像データを入手する撮像部(撮像手段:カメラ)80を具備する。図1において、撮像部80によって、画像形成装置1の近傍にいる人物Hが撮像される。この人物Hは、この画像形成装置1のユーザー(排紙部90への出力がされるようにこの画像形成装置1を操作した人物)と、それ以外の他人に分類される。
【0012】
図2において、この画像形成装置1は、ユーザーが操作パネル11を操作することによって操作される。表示部(表示手段:ディスプレイ)12は、画像形成装置1の上部に設けられ、画像形成装置1の状態や、ユーザーに対する指示を表示し、ユーザーが操作パネル11を操作するに際して補助的に用いられる。用紙に形成される画像は、例えば接続された記憶媒体を介して印刷データ入手部13から入手した印刷データによって出力される。また、画像が形成された原稿を原稿読取部(スキャナ)14によって光学的に読み込んだ画像データから用紙に画像を形成することもできる。また、原稿読取部14から入手した画像データを接続された記憶媒体に記憶させることもできる。
【0013】
用紙に画像を形成する動作は、画像形成部(画像形成手段)15によって機械的に行われる。画像形成部15においては、用紙上にトナーで構成された画像パターンが形成された後に定着される。最終的に、この用紙は図1における排紙部90まで導かれて出力される。こうした動作は、画像形成装置1内において用紙が搬送される際に行われ、用紙を搬送するための複数のローラー等で構成される用紙搬送機構16が設けられている。実際には用紙搬送機構16は、画像形成装置1における各所に分散されて構成されている。CPUである制御部(制御手段)20は、上記の構成要素を制御し、上記の動作を行わせる。また、制御部20は、前記の撮像部80を制御し、この画像形成装置1の周囲を撮像することができる。
【0014】
ここで、制御部20には、各種のデータに対して各種の動作を行うプロセッサである撮像データ解析部(使用者認識手段)21、人物認識部(人物認識手段)22、画像データ解析部23、機密性認識部(機密性認識手段)24が接続されている。
【0015】
撮像データ解析部21は、撮像部80によって得られた撮像データを解析し、その中に人物Hがいる場合には、周知のパターン認識手法によって、これを認識する。ここで、ユーザーがこの画像形成装置1を使用するに際して、操作パネル11に対する何らかの操作を行う際に、制御部20は、撮像部80によってこの状況を撮像させる。このため、この状況における撮像データ中で認識された人物Hをユーザーとして認識することができる。特に、操作パネル11と撮像部80の位置関係を、ユーザーが操作パネル11を操作する際にユーザーの顔を撮像部80によって撮像できるように設定すれば、ユーザーの顔を認識することは容易である。こうして得られたユーザーの顔のデータを使用者情報記憶部25に記憶し、以降において、ユーザーの識別情報として用いることができる。また、ここで以降の制御の対象となる動作は、排紙部90に画像が形成された用紙を出力させる動作(印刷出力を行う動作)であり、これ以外の動作は本願発明とは無関係である。このため、以下の説明におけるユーザとは、このような印刷出力を行わせるためにこの画像形成装置1を操作した人物を意味する。
【0016】
その後に撮像部80で撮像を行わせた場合に、撮像データ解析部21によってこの撮像データ中において人物Hが認識された場合に、人物認識部22は、使用者情報記憶部25を参照して、認識された人物Hが前記のユーザーであるか、他人であるかを認識することができる。あるいは、撮像データ中に複数の人物Hが認識された場合に、その中に他人が含まれるか否かを認識することができる。以降に説明する動作では、この中に撮像データ中における他人の存在の有無の判定結果が用いられる。
【0017】
また、画像データ解析部23は、画像形成部15によって用紙に形成される画像中の文字を認識し、予め設定された特定の文字列がこの画像中にあるか否かを認識し、機密性認識部24は、このような文字列が認められた場合に、この画像が機密保護の対象である(この画像に守秘性がある)と認識することができる。具体的には、こうした文字列の例として、「会議」、「ミーティング」、「打ち合わせ」、「経営方針」、「業績」、「稟議」、「社外秘」、「機密」、「safety」、「confide(ntial)」等がある。
【0018】
ここで、画像が形成された用紙は排紙部90において、通常出力(機密保護が全く考慮されずに行われる出力)と、機密保護出力のいずれかで出力される。制御部20は、出力される画像が機密保護の対象であると認められ、かつ画像形成装置1の近傍においてユーザー以外の人物(他人)がいると認識された場合に、機密保護出力を行わせ、これ以外の場合には、通常出力を行わせる。
【0019】
用紙に対して片面印刷出力が行われ、かつ通常出力を行う場合には、排紙部90において、用紙は画像が形成された側の面を上側にして出力されるものとする。このため、ユーザーは、出力された用紙における画像(文書等)を、即時に確認することができる。ただし、ユーザーと同様にこの画像形成装置1の近傍にいる他人も、同様にこの画像を目視することができる。
【0020】
一方、機密保護出力の場合には、通常出力の場合とは異なり、出力された用紙上の画像が遮蔽されるように用紙が排紙部90で出力される。用紙搬送機構16において用紙が搬送される際に、画像が形成された後の用紙を表裏反転させる用紙反転部17が、機密保護出力のために設けられている。ただし、用紙反転部17を用いずに機密保護出力をさせることもできる。機密保護出力の具体的内容については後述する。
【0021】
図3は、制御部20の動作を示すフローチャートの第1の例である。この動作は、片面印刷出力の場合を対象としている。また、この動作は、印刷ジョブ毎に行われる。ここでは、まず、この画像形成装置1における出力(画像が形成された用紙が排紙部90に出力されるような動作)が行われるように、ユーザーによって操作パネル11が操作される。この状況が撮像部80で撮像されることによって、前記のように、制御部20がユーザーを認識する(S1)。認識されたユーザーの情報(顔の画像データ等)は、使用者情報記憶部25に記憶される。その後、制御部20は、前記のように、出力される全頁にわたる画像について、画像データ解析部23、機密性認識部24によって、この画像が機密保護の対象であるか否かを出力前に判定する(S2)。
【0022】
その後、制御部20は、撮像部80を用いて画像形成装置1周囲を再び撮像し(S3)、撮像データ解析部21、人物認識部22を用い、使用者情報記憶部25を参照して、撮像された画像の中に、認識されたユーザー以外の人物(他人)がいるか否かを判定する(S4)。他人の存在が認められなかった場合(S4:No)には、全頁に対して、通常出力が行われる(S5)。この場合には、排紙部90において、用紙における画像が形成された側となる表面が上側となって出力される。
【0023】
撮像された画像の中に、他人がいることが認められた場合(S4:Yes)には、この画像が機密保護の対象となるか否か(S6)に応じた動作が行われる。まず、ここで出力される画像(全頁分)が機密保護の対象ではない場合(S6:No)には、前記と同様に、通常出力が行われる(S5)。すなわち、画像が機密保護の対象ではない場合には、他人の存在の有無に関わらず、同様に通常出力が行われる(S5)。
【0024】
一方、ここで出力される画像が機密保護の対象である場合(S6:Yes)には、機密保護出力が行われる(S7)。ここでは、前記の用紙反転部17が用いられ、画像が形成、定着された後の用紙が表裏逆転してから図1における排紙部90で出力される。このため、排紙部90においては、画像が形成されていない裏面が上側となり、ユーザー、他人は共に用紙上に形成された画像を排紙部90において見ることができない。このため、図3に示された動作によって、出力されるべき画像に対する機密保護を図ることができる。なお、機密保護出力が行われた場合には、表示部12でその旨を表示させることが好ましい。
【0025】
図3の動作においては、撮像(S3)、他人の存在の有無の判定(S4)は、出力が行われる前に1回のみ行われ、この判定結果に応じて通常出力(S5)、機密保護出力(S7)のいずれかが行われた。ここで、出力が複数頁(複数枚の用紙)にわたる場合もあるが、通常出力(S5)、機密保護出力(S7)のどちらにおいても、出力される各用紙は同じ状態(表面が上、又は裏面が上)となる。
【0026】
これに対して、出力される頁数が多い場合には、印刷(出力)の開始時には他人がいなかったが、その後に他人が画像形成装置1の近くに来る場合もある。図4に示された第2の例となるフローチャートの動作は、こうした場合に適している。
【0027】
図4のフローチャートにおいては、ユーザーの認識(S1)、画像の機密性の有無の認識(S2)については前記と同様に、用紙が出力される前に行われる。ただし、撮像部80による撮像(S3)、他人の存在の有無の判定(S4)の具体的内容については前記と同様であるが、これらの動作は各頁の出力前に毎回行われる。また、この動作においては、ある頁の印刷出力を行わせずに待機させる状態(待機状態)と、印刷出力を即時に行わせる状態(非待機状態)の設定がなされる。デフォールトとしては、非待機状態が設定される(S11)。
【0028】
ある頁の出力前において、他人の存在が認められなかった場合(S4:No)には、この1頁分の通常出力、すなわち、表面(画像が形成された側の面)を上側にして用紙が排紙部90に出力される(S12)。他人の存在が認められ(S4:Yes)、かつ画像が機密保護対象である場合(S6:Yes)には、まず、現在において待機状態が設定されているか否かが判定される(S13)。この時点で初めて他人の存在が認められた場合(S4:Yes)には、非待機状態が設定されている(S11、S13:No)ため、画像が形成された用紙の代わりに白紙(画像が形成されていない用紙)が出力される(S14)。その後、待機状態が設定される(S15)。その後、再び撮像(S3)、他人の存在の有無の判定(S4)が行われ、他人が存在し(S4:Yes)、かつ画像が機密保護対象である場合(S6:Yes)には、待機状態が設定されたために(S15、S13:Yes)、再び撮像(S3)、他人の存在の有無の判定(S4)が行われる。このため、排紙部90においては、白紙が出力されてから、他人がいなくなったと認められる(S4:No)まで、以降の出力は停止する。
【0029】
他人がいなくなったと認められた(S4:No)場合には、通常出力が行われる(S12)。その後は、非待機状態の設定(S11)、撮像(S3)、他人の存在の有無の判定(S4)以降の動作が、全ての頁の出力が行われる(S16:Yes)まで、頁毎に同様に行われる。この場合においても、他人の存在が認められたために、白紙が出力された(S14)、あるいはその後に待機状態とされた(S15)ために出力(S12)が休止している場合は、その旨を表示部12で表示することが好ましい。
【0030】
こうした動作によっても、機密保護が要求される画像が形成された用紙の出力に対して機密保護が図られる。この動作においては、用紙反転部17は用いられない。白紙を出力させる(S14)に際しては、用紙が画像形成部15をバイパスする、あるいは画像形成部15でブランク出力が行われるように設定とすればよい。
【0031】
図5は、11頁にわたり用紙Pを出力させる際に機密保護出力が全く適用されない場合(図5(a))と、7頁目の出力後に他人の存在が確認でき、この他人がまだ存在する場合(図5(b))、その後にこの他人が立ち去った場合(図5(c))、の排紙部90における出力の状況を示す図である。図5(b)の場合には、白紙P0が7頁の後に追加されており、これによってこの時点で一番最後に印刷出力された7頁目の用紙Pが遮蔽されている。この状態は、この他人が立ち去るまで維持され、この他人が立ち去った後に、排紙部90においては、最終的には図5(c)のような形態となる。出力中で白紙P0となった頁をユーザーは容易に認識することができるため、後で白紙P0を除去して出力された全頁を用いることができる。
【0032】
また、図4の動作において、出力される画像の機密度の有無の認識(S2)において、制御部20は、機密度の認識のために用いられた文字列が存在する頁を認識することができる。このため、これによって、特に機密保護の対象となる頁のみが遮蔽される設定とすることもできる。図4の動作において、白紙を出力する(S14)際には、その直前に出力された用紙がこのように機密保護の対象となっていないと認識される場合には、白紙の出力(S14)を行わない設定とすることもできる。この場合には、他人が立ち去るまで次の頁の出力が行われないだけであり、最終的に出力される形態を、図5(a)のように機密保護出力が全く適用されない場合と同様とすることができる。
【0033】
また、図4の動作と同様に、複数頁にわたる出力の途中で出力の方式を変えることができる動作として、図6に示されたフローチャートによる動作(第3の例)がある。ここでは、機密保護動作として、図3の動作と同様に出力される用紙の表裏を反転させる動作が行われる。
【0034】
図6の動作においても、ユーザーの認識(S1)、機密性の有無の認識(S2)は、前記と同様に行われる。その後、最初に撮像(S3)が行われる前に、デフォールトの出力状態の設定として、通常出力とすることが設定される(S21)。以降の動作は、頁毎に行われ、前記と同様に、撮像された画像中における他人の存在の有無が判定される(S4)。ここで、他人が存在すると認められない場合(S4:No)には、出力状態の設定(S21)は変更されない。
【0035】
また、他人が存在すると認められたが(S4:Yes)、出力が機密保護の対象でない場合(S6:No)においても、上記と同様に、出力状態の設定(S21)は変更されない。一方、他人が存在すると認められ(S4:Yes)、かつ出力が機密保護の対象である(S2)と認識された場合(S6:Yes)においてのみ、出力状態の設定が、機密保護出力とするように変更される(S22)。その後、この頁の出力は、このような設定に基づいて行われ(S23)、通常出力が設定された場合(S23:No)には1頁分の通常出力(S12)、機密保護出力が設定された場合(S23:Yes)には、1頁分の機密保護出力(S24)が行われる。この出力が終了し、全ての頁についての出力が終わっていない場合(S16:No)には、上記の動作は、撮像(S3)から繰り返される。
【0036】
この動作においては、出力が機密保護の対象である(S2)と認識された場合(S6:Yes)においても、一度他人が存在すると認められる(S4:Yes)までは、頁毎に通常出力が行われる(S12)。他人が存在すると認められた(S4:Yes)後は、その後にこの他人が立ち去った場合でも、機密保護出力とした設定(S22)がその後に変更されることはなく、以降の出力は全て機密保護出力(S24)で行われる。
【0037】
図6の動作が行われた場合の排紙部90における用紙Pの出力の状況を図5に対応させて図7に示す。図7の場合には、8頁以降の用紙Pが裏向きに出力される。図4の動作においては、図5(b)の状態で動作が一時休止するのに対して、図6の動作においては、動作は連続的に行われるため、速やかに全頁の出力が行われる。また、白紙P0は不要となるため、このために用紙が消耗することはない。
【0038】
なお、図3、4、6の動作では、片面印刷の出力を行う場合を対象としていた。仮に図3、6の動作を両面印刷の出力を行う場合に適用した場合においては、裏面側にも画像があるため、これらの動作によっては機密保護が図れない場合がある。これに対して、白紙を出力する図4の動作は、両面印刷、両面印刷のどちらにおいても同様に有効である。すなわち、両面印刷の場合には、特に図4の動作を行わせることが好ましい。
【0039】
また、前記の通り、上記の動作は、印刷ジョブ毎に行われ、印刷ジョブが片面印刷、両面印刷のいずれかであるかは制御部20が認識することができる。このため、入力された印刷ジョブが片面印刷である場合には、図3又は図6の動作を行わせ、両面印刷である場合には図4の動作を行わせるように設定することができる。これによって、待ち時間が長くなるおそれのある図4の動作が両面印刷のみに適用されるため、作業を効率的に行うことができる。
【0040】
この際、複数の印刷ジョブが入力された場合には、その優先度を、上記の動作を考慮して設定することもできる。例えば、一つの印刷ジョブ(第1の印刷ジョブ)が片面印刷であり、かつその出力が機密保護の対象であるものとする。他の一つの印刷ジョブ(第2の印刷ジョブ)は、両面印刷であり、かつその出力が機密保護の対象であるものとする。上記の設定とした場合には、両面印刷の場合には他人の存在により待ち時間が長くなる可能性があるのに対して、片面印刷の場合にはこのような待ち時間は発生しない。このため、こうした場合には、制御部20が、長い休止時間が発生する可能性がある第2の印刷ジョブの優先度を第1の印刷ジョブよりも下げて、この画像形成装置1を動作させることが好ましい。
【0041】
なお、上記の例においては、用紙上に出力されるべき画像における機密性の有無は、この画像中における特定の文字列の有無によって判定された。しかしながら、他の事項によって、あるいは他の事項を更に組み合わせて機密性の有無を判定(設定)することもできる。例えば、他人が存在しても、この他人と画像形成装置1(排紙部90)との間の距離が遠ければ、機密保持出力をする必要性は低く、この距離が近ければ、機密保護出力をする必要性は高くなる。このため、撮像部80によって認識された他人とこの画像形成装置1との間の距離を、上記の事項として採用することができる。ここで、この距離については、高い精度は要求されないために、撮像画像解析部21が撮像データ中で人物を認識する際に認識することができる。
【0042】
また、上記の例の場合には、出力される画像における機密性に関しては、その有無という二者択一の状態が設定された。しかしながら、実際には、内容の重要度等に応じて、機密を要する度合い(機密レベル)が複数段階に設定される場合もある。表1においては、前記のように機密性の有無の判定に用いられた文字列の例を、更に細かく三種類に分類している。ここで、機密レベルが「高」「中」、「低」の順に、機密を要する度合いが高くなっている。
【0043】
ここで、機密レベルが高ければ、出力される画像をより他人に見えにくくすることが要求される。一方、機密レベルが低ければ、出力される画像がこれよりも他人に見えやすくなったとしても、ユーザーにとって排紙部90で画像が見やすくなくことが好ましい場合もある。このため、機密性の有無(他人の存在がある場合に機密保護出力を行わせるか否か)を、機密レベルと上記の距離に応じて設定することができる。すなわち、各機密レベルに応じて距離の閾値を設定し、他人の存在が認識されただけではなく、認識された他人に対する距離がこの閾値を下回った場合に、上記の動作における機密性があるとされた場合の動作を行わせることができる。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において、機密レベルが高い順に、この距離の閾値が大きく設定されている。このため、機密レベルが高い場合には、他人が遠くにいた場合でも機密保護出力が行われ、機密保護出力がされやすくなる。このため、他人はこの画像をより見にくくなる一方、ユーザーもこの画像を見にくくなる。一方、機密レベルが低い場合には、機密保護出力はされにくくなる。このため、他人がこの画像を見る可能性は若干高まるものの、ユーザーはこの画像を見やすくなる。このため、ユーザーに対する利便性がさらに向上する。
【0046】
この場合においては、図3、4、6の動作において、出力画像の機密性認識(S2)の代わりに機密レベルが「高」「中」、「低」のいずれかであるかの判定を行い、機密保護の対象であるか否かの判定(S6)の代わりに、他人との間の距離が機密レベルに応じた閾値を下回ったか否かの判定を行えばよい。
【0047】
この例においては、機密レベルに応じた機密保護出力の採用のされやすさを段階的に調整するために、上記のような他人との間の距離が用いられた。しかしながら、この距離以外にも、同様の目的で他のパラメータを採用することができる。
【0048】
なお、上記の構成においては、ユーザーの認識が、撮像部80による撮像データによって行われた。すなわち、撮像部80、撮像データ解析部21が、この画像形成装置1を操作したユーザーを認識するための使用者認識手段として用いられた。こうした設定は、不特定多数の人物がこの画像形成装置1を用いる場合には、特に好ましい。しかしながら、ユーザーが限定される場合には、ユーザーとなりうる人物が予め登録され、例えば操作パネルからユーザーが識別番号等を入力することによって、制御部がユーザーを認識してもよい。こうした場合においても、ユーザーの顔の画像情報等を認識していれば、その後で撮像部によって撮像された撮像データ中に他人がいるか否かの判定をすることができる。すなわち、上記の例では、使用者認識手段として撮像部80、撮像データ解析部21が用いられたが、適切にユーザーを認識できる限りにおいて、他の使用者認識手段を用いることもできる。
【0049】
また、上記の例においては、機密性認識部24によって、出力されるべき画像中の文字に応じて機密性の有無あるいは機密レベルが設定されたが、ユーザーが操作パネルを介して機密性の有無あるいは機密レベルを設定できる構成とし、その後の動作を上記と同様に行わせることもできる。すなわち、機密性認識手段としても、他の方法でこれらを認識あるいは設定するものを用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 画像形成装置
11 操作パネル
12 表示部(表示手段)
13 印刷データ入手部
14 原稿読取部
15 画像形成部(画像形成手段)
16 用紙搬送機構
17 用紙反転部
20 制御部(制御手段)
21 撮像データ解析部(使用者認識手段)
22 人物認識部(人物認識手段)
23 画像データ解析部
24 機密性認識部(機密性認識手段)
25 使用者情報記憶部
80 撮像部(撮像手段:使用者認識手段)
90 排紙部
H 人物
P 用紙
P0 白紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7