特許第6777052号(P6777052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777052
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/64 20060101AFI20201019BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   H04N5/64 511A
   G02B27/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-191262(P2017-191262)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-68233(P2019-68233A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏征
【審査官】 大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−152075(JP,A)
【文献】 特表2015−526750(JP,A)
【文献】 特開2014−145889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B27/00−27/64
G06F 3/01
G06F 3/048−3/0489
G09G 5/00−5/36
G09G 5/377−5/42
H04N 5/222−5/28
H04N 5/64−5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号を取得する画像信号取得手段と、
前記画像信号取得手段により取得した前記画像信号に基づき、画像を表示する表示部と、
使用者の頭部に前記表示部を装着するための部材であって、前記使用者の眼に対する前記表示部の位置を調整可能な調整部を少なくとも含む装着部と、
前記画像の使用状況を示すタリー情報を取得するタリー情報取得手段と、
前記タリー情報取得手段によって取得された前記タリー情報に基づき、前記画像の使用状況を前記使用者に報知する報知手段と
前記使用者の眼と前記表示部との位置関係を検出する位置検出手段と、
を備え
前記報知手段は、
前記位置検出手段によって検出された前記位置関係に応じた報知態様で、前記画像の使用状況を報知することを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記報知手段は、
前記位置検出手段によって検出された前記位置関係に応じて異なる表示態様で前記表示部に表示することによって、前記画像の使用状況を報知することを特徴とする請求項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記調整部は、前記表示部のうち表示された前記画像の光が出射される出射部が前記使用者の眼に対向する場合の前記表示部の位置を含む中央領域に、前記表示部の位置を調整可能であり、
前記報知手段は、
前記位置検出手段によって検出された前記表示部の位置が前記中央領域に含まれる場合、前記表示部の表示領域の周辺部に第1画像を表示することによって、前記画像の使用状況を報知することを特徴とする請求項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記装着部は、前記使用者の頭部に着用される着用具に固定される固定部、及び、前記固定部と前記表示部とを連結するアーム部を有し、
前記調整部は、
前記固定部と前記アーム部とを回動可能に連結する第1調整部、及び、前記表示部と前記アーム部とを回動可能に連結する第2調整部を有し、
前記第1調整部及び前記第2調整部の少なくとも何れかの回動によって、前記表示部を第1位置と第2位置とに調整可能であり、
前記第1位置は、前記表示部のうち前記画像の光が出射される出射部が前記使用者の眼に対向する場合の前記表示部の位置を含む中央領域に含まれ、
前記第2位置は、前記表示部が前記第1位置に配置された状態における前記第1調整部及び前記第2調整部の位置から、前記第1調整部及び前記第2調整部のうち、少なくともいずれか一方が、第1所定角度以上且つ前記第1所定角度よりも大きい第2所定角度未満の範囲で回動した場合の位置であって、前記中央領域を除く第1周辺領域に含まれ、
前記報知手段は、
前記位置検出手段によって検出された前記表示部の位置が、前記第2位置を含む前記第1周辺領域に含まれる場合、前記表示部の表示領域の中央部に第2画像を表示することによって、前記画像の使用状況を報知することを特徴とする請求項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記調整部は、
前記第1調整部及び前記第2調整部の少なくとも何れかの回動によって、前記表示部を前記第1位置と第3位置とに調整可能であり、
前記第3位置は、前記表示部が前記第1位置に配置された状態における前記第1調整部及び前記第2調整部の位置から、前記第1調整部及び前記第2調整部のうち、少なくともいずれか一方が前記第2所定角度以上回動した場合の位置であって、前記中央領域を除く第2周辺領域に含まれ、
前記報知手段は、
前記位置検出手段によって検出された前記表示部の位置が、前記第3位置を含む前記第2周辺領域に含まれる場合、音の出力及び振動の少なくとも一方によって、前記画像の使用状況を報知することを特徴とする請求項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記報知手段は更に、
前記位置検出手段によって検出された前記位置関係に応じた色の前記画像を、前記表示部に表示することを特徴とする請求項からの何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記報知手段は更に、
前記位置検出手段によって検出された前記位置関係、及び、前記タリー情報取得手段により取得した前記タリー情報が示す前記画像の使用状況に応じて、前記表示部の表示領域の輝度を上げて前記表示領域に表示することを特徴とする請求項からの何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記タリー情報は、前記画像の使用状況として、前記画像が使用中であるか、及び、前記画像が使用予定であるかを更に示し、
前記報知手段は更に、
前記タリー情報取得手段によって取得された前記タリー情報に基づき、前記画像が使用中であるか、及び、前記画像が使用予定であるかを前記使用者に報知することを特徴とする請求項1からの何れかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラにより撮影された映像が放映映像等として使用中であるか否かを、タリー表示により通知するHMDが提案されている。特許文献1は、複数のテレビカメラ及びマイクロホンからの出力信号に基づいて、複数のモニター画像、音声レベル等を表示可能なHMDを開示する。HMDは更に、オンエアされているモニター画像と、次にオンエアされる予定のモニター画像とを、他のモニター映像と区別して表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−152075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ビデオカメラを操作する使用者によってHMDが使用される場合がある。この場合、使用者は、ビデオカメラに表示される撮影映像を確認しながら、撮影映像がオンエア中であるかをHMDにより確認したいという要求がある。このような使用形態でHMDが使用される場合、ビデオカメラに表示された撮影映像が視認可能なように、使用者に対するHMDの位置の移動は容易であることが好ましい。しかし、特許文献1のように、使用者の視界全体を覆うビデオ透過型のHMDの場合、使用者に対するHMDの位置は固定的である。この場合、使用者に対するHMDの位置の移動に手間を要するという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、画像の使用状況を使用者に通知することが可能であり、且つ、使用者に対する着用位置を容易に変更可能なヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘッドマウントディスプレイは、画像信号を取得する画像信号取得手段と、前記画像信号取得手段により取得した前記画像信号に基づき、画像を表示する表示部と、使用者の頭部に前記表示部を装着するための部材であって、前記使用者の眼に対する前記表示部の位置を調整可能な調整部を少なくとも含む装着部と、前記画像の使用状況を示すタリー情報を取得するタリー情報取得手段と、前記タリー情報取得手段によって取得された前記タリー情報に基づき、前記画像の使用状況を前記使用者に報知する報知手段と前記使用者の眼と前記表示部との位置関係を検出する位置検出手段と、を備え、前記報知手段は、前記位置検出手段によって検出された前記位置関係に応じた報知態様で、前記画像の使用状況を報知することを特徴とする
【0007】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の使用者は、装着部によりHMDを頭部に装着した状態で、画像の使用状況を報知により認識できる。ここで、装着部は、使用者の眼に対する表示部の位置を調整部により調整可能である。従って使用者は、画像の使用状況を、眼に対する表示部の位置を調整しながら確認できる。
【0008】
又、使用者の眼と表示部との位置関係によっては、画像の使用状況の報知を使用者が認識し難い場合がある。これに対し、HMDは、使用者の眼と表示部との位置関係に応じた報知態様で報知するので、使用者は、使用者の眼と表示部との位置関係に依らず、画像の使用状況を報知により容易に認識できる。
【0009】
本発明において、前記報知手段は、前記位置検出手段によって検出された前記位置関係に応じて異なる表示態様で前記表示部に表示することによって、前記画像の使用状況を報知してもよい。使用者の眼と表示部との位置関係によっては、表示部に表示される画像を使用者が視認し難い場合がある。これに対し、HMDは、使用者の眼と表示部との位置関係に応じて異なる表示態様で表示部に表示する。このため使用者は、使用者の眼と表示部との位置関係に依らず、表示部に表示された画像を視認できるので、画像の使用状況を容易に認識できる。
【0010】
本発明において、前記調整部は、前記表示部のうち表示された画像の光が出射される出射部が前記使用者の眼に対向する場合の前記表示部の位置を含む中央領域に、前記表示部の位置を調整可能であり、前記報知手段は、前記位置検出手段によって検出された前記表示部の位置が前記中央領域に含まれる場合、前記表示部の表示領域の周辺部に第1画像を表示することによって、前記画像の使用状況を報知してもよい。表示部が中央領域に含まれる場合、使用者は、表示部の表示領域を周辺部まで視認できる可能性が高い。従って、HMDは、表示領域の周辺部に第1画像を表示し、画像の使用状況を報知する。この場合、使用者は、表示領域の周辺部に表示された第1画像を視認することによって、画像の使用状況を認識できる。又、表示部の位置が中央領域に含まれる場合、使用者は、表示領域の中央部を視認している可能性が高い。これに対し、HMDは、表示部の位置が中央領域に含まれている場合、表示領域の中央部を除く部分(周辺部)に第1画像を表示させる。これによって、HMDは、使用者の視認対象が第1画像に隠れて見え難くなることを抑制できる。
【0011】
本発明において、前記装着部は、前記使用者の頭部に着用される着用具に固定される固定部、及び、前記固定部と前記表示部とを連結するアーム部を有し、前記調整部は、前記固定部と前記アーム部とを回動可能に連結する第1調整部、及び、前記表示部と前記アーム部とを回動可能に連結する第2調整部を有し、前記第1調整部及び前記第2調整部の少なくとも何れかの回動によって、前記表示部を第1位置と第2位置とに調整可能であり、前記第1位置は、前記表示部のうち前記画像の光が出射される出射部が前記使用者の眼に対向する場合の前記表示部の位置を含む中央領域に含まれ、前記第2位置は、前記表示部が前記第1位置に配置された状態における前記第1調整部及び前記第2調整部の位置から、前記第1調整部及び前記第2調整部のうち、少なくともいずれか一方が、第1所定角度以上且つ前記第1所定角度よりも大きい第2所定角度未満の範囲で回動した場合の位置であって、前記中央領域を除く第1周辺領域に含まれ、前記報知手段は、前記位置検出手段によって検出された前記表示部の位置が、前記第2位置を含む前記第1周辺領域に含まれる場合、前記表示部の表示領域の中央部に第2画像を表示することによって、前記画像の使用状況を報知してもよい。表示部が第2位置を含む周辺領域に含まれる場合、使用者は、表示部の表示領域の周辺部を適切に視認できない可能性がある。従って、HMDは、表示領域の中央部に第2画像を表示し、画像の使用状況を報知する。この場合、使用者は、表示領域の中央部に表示された第2画像を適切に視認することによって、画像の使用状況を認識できる。
【0012】
本発明において、前記調整部は、前記第1調整部及び前記第2調整部の少なくとも何れかの回動によって、前記表示部を前記第1位置と第3位置とに調整可能であり、前記第3位置は、前記表示部が前記第1位置に配置された状態における前記第1調整部及び前記第2調整部の位置から、前記第1調整部及び前記第2調整部のうち、少なくともいずれか一方が前記第2所定角度以上回動した場合の位置であって、前記中央領域を除く第2周辺領域に含まれ、前記報知手段は、前記位置検出手段によって検出された前記表示部の位置が、前記第3位置を含む前記第2周辺領域に含まれる場合、音の出力及び振動の少なくとも一方によって、前記画像の使用状況を報知してもよい。表示部が第3位置を含む周辺領域に含まれる場合、使用者は、表示部の表示領域全体を適切に視認できない可能性がある。従って、HMDは、音の出力及び振動の少なくとも一方によって、画像の使用状況を報知する。この場合、使用者は、音及び振動の少なくとも一方を感知することによって、画像の使用状況を認識できる。
【0013】
本発明において、前記報知手段は更に、前記位置検出手段によって検出された前記位置関係に応じた色の画像を、前記表示部に表示してもよい。この場合、使用者は、表示部に表示される画像の色に基づいて、画像の使用状況を認識できる。
【0014】
本発明において、前記報知手段は更に、前記位置検出手段によって検出された前記位置関係、及び、前記タリー情報取得手段により取得した前記タリー情報が示す前記画像の使用状況に応じて、前記表示部の表示領域の輝度を上げて前記表示領域に表示してもよい。この場合、HMDは、表示部の表示領域を使用者が適切に視認できない場合でも、輝度を上げることによって使用者の視認性を良好にできる。このため、使用者は、画像の使用状況を適切に認識できる。
【0015】
本発明において、前記タリー情報は、前記画像の使用状況として、前記画像が使用中であるか、及び、前記画像が使用予定であるかを更に示し、前記報知手段は更に、前記タリー情報取得手段によって取得された前記タリー情報に基づき、前記画像が使用中であるか、及び、前記画像が使用予定であるか否かを前記使用者に報知してもよい。この場合、使用者は、使用中の画像であるかだけでなく、次に使用予定の画像であるかを認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】HMD1の斜視図である。
図2】第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7の拡大図である。
図3】HD2が第1位置又は第2位置に配置された状態のHMD1を示す図である。
図4】HD2が第3位置に配置された状態のHMD1を示す図である。
図5】HMD1の電気的構成を示すブロック図である。
図6】メイン処理のフローチャートである。
図7】メイン処理のフローチャートであって、図6の続きである。
図8】出射部22に表示される画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<HMD1の概要>
本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下、「HMD」という。)1は、ビデオ透過型のHMDである。HMD1は、着用具10、装着部11、及び、表示装置2(以下、「HD2」という。)を備える。以下、図の説明の理解を助けるため、HMD1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側を定義する。HMD1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側は、例えば、図1の上側、下側、左斜め上側、右斜め下側、左側、及び、右側にそれぞれ対応する。HMD1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側は、それぞれ、着用具10が着用された使用者にとって、上側、下側、右側、左側、前側、及び、後側に対応する。
【0018】
図1に示すように、着用具10は、樹脂や金属(例えば、ステンレス)などの、可撓性を有する材質で構成される。着用具10は、第1部分10A及び第2部分10B、10Cを有する。なお、以下では、理解を容易とするために、着用具10を第1部分10A及び第2部分10B、10Cに区分して説明するが、着用具10は、第1部分10A及び第2部分10B、10Cのそれぞれの部材に分かれておらず、全体として一体の部材である。
【0019】
第1部分10A及び第2部分10B、10Cは、それぞれ、湾曲した細長い板状部材である。第1部分10Aは、着用具10のうち、位置102と位置103との間で左右方向に延びる。第1部分10Aは、前側に凸状に湾曲する。位置102は、着用具10の左右方向中心101よりも左側に位置する。位置103は、着用具10の左右方向中心101よりも右側に位置する。第2部分10Bは、着用具10のうち、位置102から後側に延びる。第2部分10Cは、着用具10のうち、位置103から後側に延びる。第2部分10B、10Cは、それぞれ、後端部が互いに近づく方向に延びる。着用具10は、使用者の前頭部、右側頭部、及び、左側頭部のそれぞれに、第1部分10A、第2部分10B、10Cを接触させた状態で、使用者の頭部に着用される。着用具10の位置103に、装着部11が固定される。以下、着用具10のうち第1部分10A及び第2部分10B、10Cで囲まれた側を「内側」といい、内側と反対側を「外側」という。
【0020】
装着部11は、アーム部12、固定部14、第1ボールジョイント6、及び、第2ボールジョイント7を備える。固定部14は、着用具10の位置103に螺子14A(図2(A)参照)で固定される。アーム部12は略棒状である。アーム部12は、樹脂や金属などで構成される。アーム部12は、正面から見た状態で上下方向に延びる。アーム部12の上端部は、第1ボールジョイント6を介して固定部14に接続される。アーム部12の下端部は、第2ボールジョイント7を介してHD2に接続される。アーム部12は、固定部14とHD2とを連結する。アーム部12及び固定部14は、着用具10が使用者の頭部に着用された状態で、使用者の左眼の前側にHD2を保持できる。第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7は、使用者の左眼8(図2図3参照)に対するHD2の位置を調整可能である。
【0021】
図2(A)に示すように、第1ボールジョイント6は、ボールスタッド61及びソケット62を備える。ボールスタッド61は、棒部61A及び球体部61Bを有する。球体部61Bは、棒部61Aの一端部に設けられた球状の部位である。ソケット62は、球体部61Bを摺動可能に支持する。以下の説明において、着用具10のうち固定部14及びソケット62が配置される位置における、着用具10の外周面100に直交する方向を「直交方向」という。ソケット62は、蓋部621及び受け部622を有する。受け部622は筒状であり、固定部14から直交方向に沿って外側に延びる。受け部622の内部に球体部61Bが収容される。受け部622は、外側の面にねじ山を有する。蓋部621は、内側の面にねじ山を有する。蓋部621は受け部622に螺合する。蓋部621は、円形の孔部621Aを有する。ボールスタッド61の棒部61Aは、受け部622の内部から孔部621Aに向けて延び、孔部621Aを通過する。棒部61Aは、球体部61Bから直交方向に沿って外側に延び、右方向に屈曲し、左右方向に沿って更に延び、アーム部12に支持される。棒部61Aの屈曲角度θ1は約30度である。
【0022】
球体部61Bがソケット62に対して摺動することによって、第1ボールジョイント6は、固定部14とアーム部12とを回動可能に連結する。固定部14に対するアーム部12の可動範囲は、孔部621Aに棒部61Aが当接することよって制限される。
【0023】
図2(B)に示すように、第2ボールジョイント7は、ボールスタッド71及びソケット72を備える。ボールスタッド71は、棒部71A及び球体部71Bを有する。球体部71Bは、棒部71Aの一端部に設けられた球状の部位である。ソケット72は、HD2に設けられる。ソケット72は、球体部71Bを摺動可能に支持する。ソケット72は、蓋部721及び受け部722を有する。受け部722は筒状であり、HD2から延びる。受け部722の内部に球体部71Bが収容される。受け部722は、外側の面にねじ山を有する。蓋部721は、内側の面にねじ山を有する。蓋部721は受け部722に螺合する。蓋部721は、円形の孔部721Aを有する。ボールスタッド71の棒部71Aは、受け部722の内部から孔部721Aに向けて延び、孔部721Aを通過する。棒部71Aの他端部は、アーム部12に支持される。棒部71Aは、アーム部12から左側に向けて延び、着用具10から離れる方向に屈曲して更に延び、球体部71B及びソケット62を介してHD2に支持される。棒部71Aの屈曲角度θ2は約30度である。
【0024】
球体部71Bがソケット72に対して摺動することによって、第2ボールジョイント7は、HD2とアーム部12とを回動可能に連結する。アーム部12に対するHD2の可動範囲は、孔部721Aに棒部71Aが当接することよって制限される。
【0025】
図1に示すように、HD2は筐体21を備える。筐体21は中空箱状である。筐体21の後端部に、矩形状の開口が設けられる。開口は、透明の板状部材で覆われる。筐体21の内部に、液晶パネル2Aが収容される。液晶パネル2Aは、赤(R)、緑(G)、及び、青(B)のそれぞれの光の出力タイミングを制御することによってカラー画像を表示する。液晶パネル2Aは、ケーブル2Bを介して接続した外部機器9(図5参照)から受信した画像信号に基づき、表示領域に画像を表示させる。液晶パネル2Aの表示領域に表示された画像の光は、筐体21の開口に向けて出射される。画像の光は、筐体21の開口を通過し、更に、透明の板状部材を後側に透過する。画像の光は、筐体21から外部に出射される。以下、図2(B)に示すように、液晶パネル2Aの表示領域、言い換えれば、液晶パネル2Aのうち画像の光が出射される部分を、「出射部22」という。
【0026】
<HMD1の使用態様>
本実施形態において、外部機器9は、スタジオ等の撮影現場に設置された複数のビデオカメラである。HMD1は、各外部機器9に1つずつ接続され、外部機器9を操作する者に着用されて使用される。HMD1には、外部機器9によって撮影された画像が少なくとも表示される。HMD1の使用者は、HMD1の液晶パネル2Aに表示される画像を視認することによって、使用中の外部機器9によって撮影された画像を確認できる。
【0027】
更に、外部機器9は、撮影中の画像の使用状況を示す情報(以下、「タリー情報」という。)を、接続されたHMD1に出力する。タリー情報は、第1情報及び第2情報を少なくとも含む。第1情報は、撮影中の画像が放映画像として使用中であるかを示す。第2情報は、撮影中の画像が放映画像として次に使用予定であるかを示す。なお、タリー情報は、第1情報及び第2情報により、撮影中の画像が放映画像として使用中であるか又は次に使用予定であるかの何れかを少なくとも示す。HMD1は、外部機器9から受信したタリー情報に応じ、画像の使用状況を使用者に報知する。使用者は、HMD1の液晶パネル2Aを介して視認した画像の使用状況を、報知によって認識できる。
【0028】
<HMD1の使用方法>
使用者は、着用具10を頭部に固定する。使用者はHD2を持ち、図3(A)に示すように、液晶パネル2Aの出射部22の何れかの位置が使用者の左眼8の前側に対向して配置されるように、HD2の位置を調節する。このとき、第1ボールジョイント6、及び、第2ボールジョイント7が自在に回動するため、使用者はHD2を容易に移動させることができる。以下、出射部22の何れかの位置が使用者の左眼8の前側に対向する場合のHD2を含む領域を、「中央領域」という。
【0029】
固定部14のうち、第1ボールジョイント6の球体部61B(図2(A)参照)の中心C11を定義する。HD2の出射部22の中心C12を定義する。出射部22の中心C12が使用者の左眼8の前側に対向する場合のHD2の位置(図3(A)参照)を、「第1位置」という。第1位置は第1領域に含まれる。HD2が第1位置に配置された場合の中心C11、C12との間の距離を、「第1距離L1」という。
【0030】
外部機器9(図5参照)からケーブル2B(図1参照)を介して出力された画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22に画像が表示される。表示された画像の光は、筐体21の開口を介して後側に出射される。HD2が中央領域に配置された場合、出射された画像の光は使用者の左眼8に入射する。これによって、使用者は画像を認識する。
【0031】
使用者は、HD2の液晶パネル2Aに表示される画像と眼前の景色との両方を視認できるように、HD2を配置させて使用する場合がある。この場合、使用者は、HD2が第1位置に配置された状態(図3(A)参照)から、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を、上側から見た状態で時計回りに第1所定角度以上第2所定角度未満の範囲で回動させる(図3(B)参照)。つまり、使用者は、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7のそれぞれについて、上下方向を軸とした回動角度が第1所定角度以上第2所定角度未満になるように、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を回転させる。これによって使用者は、左眼8の前側に出射部22が対向して配置されなくなるまで、HD2を移動させる。図3(B)に示すように、HD2は、着用具10から離れる方向に移動する。中心C11、C12との間の距離は、第1距離L1よりも長い第2距離L2に変化する。
【0032】
以下、第1位置に配置されたHD2に対し、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7の少なくとも何れか一方を第1所定角度以上第2所定角度未満の範囲で回転させて移動させた場合におけるHD2の位置を、「第2位置」という。HD2が第2位置に配置された場合、中心C11、C12の間の距離は第2距離L2となる。中央領域を除く領域のうち、第2位置に配置されたHD2を含む所定の領域を「第1周辺領域」という。HD2が第2位置に配置された場合、使用者は、視線を前側に向けることによって、眼前の景色を視認可能となる。又、使用者は、視線の方向を、HMD1の右側(使用者から見て左側)にずらすことによって、液晶パネル2Aの出射部22に表示された画像を視認できる。
【0033】
なお、本実施形態において、図3(A)における第1位置から図3(B)における第2位置までHD2を移動させる場合の回動角度は、一例として、10°〜45°の範囲の何れかの値としてもよい。この場合、回動角度の閾値である第1所定角度は10°となり、第2所定角度は45°となる。図3に示す例では、第1ボールジョイント6が上下方向を軸としてθ12(=約25°)回転し、且つ、第2ボールジョイント7が上下方向を軸としてθ22(=約25°)回転することによって、HD2は第1位置(図3(A)参照)から第2位置(図3(B)参照)まで移動している。なお、図3(A)(B)の一点鎖線T11は、HD2が第1位置に配置された状態における第1ボールジョイント6の回転角度の基準線を示す。図3(B)の一点鎖線T21は、HD2が第2位置に配置された状態における第1ボールジョイント6の角度の基準線を示す。図3(A)(B)の一点鎖線T12は、HD2が第1位置に配置された状態における第2ボールジョイント7の回転角度の基準線を示す。図3(B)の一点鎖線T22は、HD2が第2位置に配置された状態における第2ボールジョイント7の角度の基準線を示す。なお、第2位置は、例えばHMD1を装着した使用者が、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を回動させてHD2を配置させたときに、使用者の視界の範囲内にHD2が含まれる領域内としてもよい。
【0034】
なお、図2(B)に示すように、第2ボールジョイント7のボールスタッド71の棒部71Aは、アーム部12から延び、着用具10から離れる方向に屈曲し、ソケット72に支持された状態の球体部71Bに接続される。このため、HD2の位置は、棒部71Aが屈曲しない場合に比べて、顔から離れる方向へのHD2の可動範囲が広くなり、顔に近づく方向のHD2の可動範囲が狭くなる。従って、使用者は、顔から離れる方向にHD2を移動させて第2位置に配置させることが容易に可能となる。
【0035】
使用者は、眼前の景色を良好に視認できるように、HD2を視界から外して配置させて使用する場合がある。この場合、使用者は、HD2が第1位置に配置された状態(図3(A)参照)から、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を、右側から見た状態で時計回りに、第1所定角度よりも大きい第2所定角度以上回動させる(図4参照)。つまり、使用者は、第1ボールジョイント6の左右方向を軸とした回動角度が第2所定角度以上になるように、第1ボールジョイント6を回転させる。これによって使用者は、図4に示すように、左眼8の前側に出射部22が対向して配置されなくなるまで、HD2を移動させる。中心C11、C12との間の距離は、第1距離L1と略同一の第3距離L3で維持される。
【0036】
以下、第1位置に配置されたHD2に対し、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7の少なくとも何れか一方を、第1所定角度よりも大きい第2所定角度以上回動させて移動させた場合におけるHD2の位置を「第3位置」という。HD2が第3位置に配置された場合、中心C11、C12の間の距離は、第3距離L3となる。中央領域、及び、第1周辺領域を除く領域のうち、第3位置に配置されたHD2を含む所定の領域を、「第2周辺領域」という。HD2が第3位置に配置された場合、使用者は、HD2が視界に入ることを抑制しつつ眼前の景色を視認可能となる。
【0037】
なお、本実施形態において、図3(A)における第1位置から図4における第3位置までHD2を移動させる場合の回動角度は、一例として、45°よりも大きい角度としてもよい。この場合、回動角度の閾値である第2所定角度は45°となる。図4に示す例では、第1ボールジョイント6が左右方向を軸としてθ13(=約120°)回転し、且つ、第2ボールジョイント7が左右方向を軸としてθ23(=約90°)回転することによって、HD2は第1位置(図3(A)参照)から第3位置(図4参照)まで移動している。なお、図4の一点鎖線U11は、HD2が第1位置に配置された状態における第1ボールジョイント6の回転角度の基準線を示す。一点鎖線U31は、HD2が第3位置に配置された状態における第1ボールジョイント6の回転角度の基準線を示す。一点鎖線U12は、HD2が第1位置に配置された状態における第2ボールジョイント7の回転角度の基準線を示す。一点鎖線U32は、HD2が第3位置に配置された状態における第2ボールジョイント7の回転角度の基準線を示す。なお、第3位置は、例えばHMD1を装着した使用者が、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を回動させてHD2を配置させたときに、使用者の視界の範囲外にHD2が含まれる領域内としてもよい。
【0038】
なお、図2(A)に示すように、第1ボールジョイント6のボールスタッド61の棒部61Aは、球体部61Bから直交方向に沿って延び、右方向に屈曲して左右方向に沿って延び、アーム部12に支持される。つまり、棒部61Aの一部の延びる方向(左右方向)と、第1ボールジョイント6が回動するときの軸の方向(左右方向)とが一致する。このため、第1ボールジョイント6は、棒部61Aが屈曲しない場合に比べて、左右方向を軸として回動し易くなる。従って、使用者は、第1ボールジョイント6を回動させてHD2を第1位置から第3位置まで移動させることが容易に可能となる。
【0039】
<HMD1の電気的構成>
図5を参照し、着用具10及びHMD1の電気的構成について説明する。着用具10は、加速度センサ41を備える。加速度センサ41は、HD2のFPGA33(後述)と電気的に接続する。加速度センサ41は、着用具10に作用する3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)のそれぞれの加速度を検出する。加速度センサ41は、検出された加速度を示す信号を、FPGA33に出力する。
【0040】
HD2は、CPU31、記憶部32、液晶パネル2A、スピーカ2C、振動モータ2D、FPGA33〜35、加速度センサ37を有する。CPU31は、HMD1全体の制御を司る。記憶部32、液晶パネル2A、スピーカ2C、振動モータ2D、FPGA33〜35は、CPU31と電気的に接続する。加速度センサ37は、FPGA33と電気的に接続する。外部機器9から画像信号が出力される信号線は、ケーブル2B(図1参照)を介してFPGA34と電気的に接続する。外部機器9からタリー情報が出力される信号線は、ケーブル2Bを介してFPGA35と電気的に接続する。なお、HMD1は、FPGA33〜35のそれぞれの機能を全て有する1つのFPGAを、FPGA33〜35の代わりに有していてもよい。
【0041】
記憶部32には、CPU31によって実行されるメイン処理(図6参照)のプログラム、及び、各種パラメータ等が記憶される。液晶パネル2Aは、CPU31から出力される信号に基づいて画像を表示させる。スピーカ2Cは、CPU31から出力される信号に基づいて音を出力させる。振動モータ2Dは、CPU31から出力される信号に基づいて回転し、HD2の筐体21(図1参照)を振動させる。
【0042】
加速度センサ37は、HD2に作用する3軸方向のそれぞれの加速度を検出する。加速度センサ37は、検出された加速度を示す信号を、FPGA33に出力する。FPGA33は、着用具10に対するHD2の位置を検出する機能を備えたプログラマブルロジックデバイス(PLD)である。FPGA33は、加速度センサ37から出力される信号に基づき、HD2に作用する加速度を特定する。FPGA33は、加速度センサ41から出力される信号に基づき、着用具10に作用する加速度を特定する。FPGA33は、それぞれの加速度の差分を算出することによって、着用具10に対するHD2の位置を検出する。なお、着用具10は使用者の頭部に着用されるので、着用具10に対するHD2の位置は、使用者の頭部に対するHD2の位置に対応する。FPGA33は、検出されたHD2の位置を示す信号を、CPU31に出力する。
【0043】
FPGA34、35は、外部機器9から出力された信号の形式を、CPU31が検出可能な形式に変換するインタフェース素子である。FPGA34は、外部機器9が出力した画像信号の形式を変換し、CPU31に出力するFPGA35は、外部機器9が出力したタリー情報の形式を変換し、CPU31に出力する。
【0044】
<メイン処理>
図6を参照し、CPU31によって実行されるメイン処理について説明する。メイン処理は、外部機器9から画像信号の出力が開始された場合、記憶部32に記憶されたプログラムをCPU31が実行することによって開始される。図6に示すように、CPU31は、外部機器9から出力された画像信号を、FPGA34(図5参照)を介して取得する(S11)。以後、画像信号を取得する処理は、メイン処理が実行されている間継続される。CPU31は、外部機器9から出力されたタリー情報を、FPGA35(図5参照)を介して取得する(S13)。
【0045】
CPU31は、S13の処理によってタリー情報を取得したか、言い換えれば、外部機器9からタリー情報が出力されているか判定する(S15)。CPU31は、S13の処理によってタリー情報を取得していない場合、外部機器9からタリー情報が出力されていないと判定する(S15:NO)。この場合、CPU31は、S11の処理によって取得された画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S17)。CPU31は、処理をS13に戻す。
【0046】
CPU31は、S13の処理によってタリー情報を取得した場合、外部機器9からタリー情報が出力されていると判定する(S15:YES)。この場合、CPU31は、タリー情報に含まれる第1情報に基づき、S11の処理によって取得された画像が放映画像として使用中であるか否かを判定する(S19)。CPU31は、画像が使用中であると判定した場合(S19:YES)、処理をS21に進める。CPU31は、FPGA33から出力される信号に基づき、着用具10に対するHD2の位置を検出する(S21)。CPU31は、検出されたHD2の位置に基づき、HD2が中央領域(図3(A)参照)の何れかの位置(第1位置)に配置されているか判定する(S23)。CPU31は、HD2が中央領域の何れかの位置に配置されていると判定された場合(S23:YES)、処理をS25に進める。CPU31は、S11の処理によって取得した画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S25)。又、CPU31は、図8(A)に示すように、液晶パネル2Aの出射部22の周辺部に、枠状で赤色の第1画像M11を表示させる(S25(図6参照))。図6に示すように、CPU31は、処理をS13に戻す。
【0047】
CPU31は、HD2が中央領域の何れの位置にも配置されていないと判定された場合(S23:NO)、HD2が第1周辺領域(図3(B)参照)の何れかの位置(第2位置)に配置されているか判定する(S27)。CPU31は、HD2が第1周辺領域の何れかの位置に配置されていると判定された場合(S27:YES)、処理をS29に進める。CPU31は、S11の処理によって取得した画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S29)。又、CPU31は、図8(B)に示すように、液晶パネル2Aの出射部22の中央部に、円形の第2画像M12を点滅表示させる(S29(図6参照))。第2画像M12の直径は、s1とされる。図6に示すように、CPU31は、処理をS13に戻す。
【0048】
CPU31は、HD2が第1周辺領域の何れの位置にも配置されていないと判定された場合(S27:NO)、HD2が第2周辺領域(図4参照)の何れかの位置(第3位置)に配置されていると判定する。この場合、CPU31は、S11の処理によって取得した画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S31)。又、CPU31は、スピーカ2Cに信号を出力して音を発生させる(S31)。CPU31は、処理をS13に戻す。
【0049】
CPU31は、タリー情報に含まれる第2情報に基づき、S11の処理によって取得された画像が放映画像として次に使用予定であると判定した場合(S19:NO)、処理をS41(図7参照)に進める。図7に示すように、CPU31は、FPGA33から出力される信号に基づき、着用具10に対するHD2の位置を検出する(S41)。CPU31は、検出されたHD2の位置に基づき、HD2が中央領域(図3(A)参照)の何れかの位置(第1位置)に配置されているか判定する(S43)。CPU31は、HD2が中央領域の何れかの位置に配置されていると判定された場合(S43:YES)、処理をS45に進める。CPU31は、S11の処理によって取得した画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S45)。又、CPU31は、図8(C)に示すように、液晶パネル2Aの出射部22の周辺部に、緑色で枠状の第1画像M21を表示させる(S45(図7参照))。図7に示すように、CPU31は、処理をS13(図6参照)に戻す。
【0050】
CPU31は、HD2が中央領域の何れの位置にも配置されていないと判定された場合(S43:NO)、HD2が第1周辺領域(図3(B)参照)の何れかの位置(第2位置)に配置されているか判定する(S47)。CPU31は、HD2が第1周辺領域の何れかの位置に配置されていると判定された場合(S47:YES)、処理をS49に進める。CPU31は、S11の処理によって取得した画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S49)。又、CPU31は、図8(D)に示すように、液晶パネル2Aの出射部22の中央部に、円形の第2画像M22を点滅表示させる(S49(図7参照))。第2画像M22の直径は、S29(図6参照)によって表示された第2画像M12の直径s1よりも大きいs2とされる。図7に示すように、CPU31は、処理をS13(図6参照)に戻す。
【0051】
CPU31は、HD2が第1周辺領域の何れの位置にも配置されていないと判定された場合(S47:NO)、HD2が第2周辺領域(図4参照)の何れかの位置(第3位置)に配置されていると判定する。この場合、CPU31は、S11の処理によって取得した画像信号に基づき、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させる(S51)。又、CPU31は、振動モータ2Dに信号を出力してHD2の筐体21を振動させる(S51)。CPU31は、処理をS13(図6参照)に戻す。
【0052】
<本実施形態の作用、効果>
HMD1の使用者は、装着部11によりHMD1を頭部に装着した状態で、HMD1による報知を通して画像の使用状況を認識できる。例えば使用者は、液晶パネル2Aに枠状で赤色の第1画像M11が表示されている場合(S25)、直径の相対的に小さい第2画像M12が表示されている場合(S29)、及び、スピーカ2Cから音が出力される場合(S31)、液晶パネル2Aに表示された画像が使用中であると認識できる。一方、例えば使用者は、液晶パネル2Aに枠状で緑色の第1画像M21が表示されている場合(S45)、直径の相対的に大きい第2画像M22が表示されている場合(S49)、及び、筐体21が振動する場合(S51)、液晶パネル2Aに表示された画像が次に使用予定であると認識できる。ここで、装着部11は、使用者の左眼8に対するHD2の位置を調整可能である。従って使用者は、画像の使用状況を、左眼8に対するHD2の位置を調整しながら確認できる。
【0053】
使用者の左眼8とHD2との位置関係によっては、画像の使用状況の報知を使用者が認識し難い場合がある。これに対し、HMD1は、使用者の左眼8とHD2との位置関係を検出し(S21、S41)、検出された位置関係に応じた報知態様で報知を行う(S25、S29、S31、S45、S49、S51)。このため使用者は、使用者の左眼8とHD2との位置関係に依らず、画像の使用状況を報知により容易に認識できる。
【0054】
HMD1は、HD2の液晶パネル2Aに画像を表示して画像の使用状況を報知する場合(S25、S29、S45、S49)、使用者の左眼8とHD2との位置関係に応じて表示態様を相違させる。つまり、HMD1は、視認性が改善されるような表示態様を位置関係毎に定め、HD2に画像を表示させる。このため、使用者の左眼8とHD2との位置関係が原因でHD2に表示される画像を使用者が視認し難くなる場合であっても、HMD1は、画像の使用状況を使用者に適切に認識させることができる。
【0055】
第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7は、液晶パネル2Aの出射部22が使用者の左眼8に対向する場合のHD2の位置(第1位置)を含む中央領域に、HD2の位置を調整可能である。HD2が中央領域に含まれる場合、使用者は、HD2の液晶パネル2Aの出射部22を周辺部まで視認できる。従って、HMD1は、HD2の位置が中央領域に含まれる場合(S23:YES、S43:YES)、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させ(S25、S45)、且つ、出射部22の周辺部に枠状の第1画像M11,M21を表示させる(S25、S45)。この場合、使用者は、出射部22の周辺部に表示された枠状の第1画像M11,M21を視認することによって、画像が使用中であるか又は使用予定であることを認識できる。又、HMD1は、画像が使用中であるか又は次に使用予定であるかに応じて、第1画像M11,M21の色を相違させる。これによって、使用者は、HD2の位置が中央領域に含まれる場合において、画像が使用中であるか又は次に使用予定であるかを区別して認識できる。
【0056】
なお、HD2が中央領域に含まれる場合、使用者は、液晶パネル2Aの出射部22の中央部を視認している可能性が高い。これに対し、HMD1は、HD2が中央領域に含まれている場合(S23:YES、S43:YES)、液晶パネル2Aの出射部22の中央部を除く周辺部に、第1画像M11,M21を表示させる(S25、S45)。これによって、HMD1は、使用者の視認対象が第1画像M11,M21に隠れて見え難くなることを抑制できる。
【0057】
第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7は、液晶パネル2Aと第1ボールジョイント6の球体部61Bの中心C11との間の距離が、HD2が中央領域に含まれる場合の第1距離L1よりも長い第2距離L2となる第2位置を含む第1周辺領域にHD2の位置を調整可能である。言い換えれば、HD2は、中央領域の何れかの位置である第1位置に配置された状態から、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7のうち、少なくともいずれか一方が第1所定角度以上第2所定角度未満の範囲で回動した場合に、第2位置に配置される。HD2が第2位置に配置されて第1周辺領域に含まれる場合、使用者は、HD2の液晶パネル2Aの出射部22の周辺部を適切に視認できない可能性がある。従って、HMD1は、HD2の位置が第1周辺領域に含まれる場合(S27:YES、S47:YES)、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させ(S29、S49)、且つ、出射部22の中央部に第2画像M12,M22を表示させる(S29、S49)。この場合、使用者は、出射部22の中央部に表示された第2画像M12,M22を適切に視認することによって、画像が使用中であるか又は使用予定であることを認識できる。又、HMD1は、画像が使用中であるか又は次に使用予定であるかに応じて、第2画像M12,M22の直径を相違させる。これによって、使用者は、HD2の位置が第1周辺領域に含まれる場合において、画像が使用中であるか又は次に使用予定であるかを区別して認識できる。
【0058】
第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7は、HD2が中央領域の何れかの位置である第1位置に配置された状態から、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7のうち、少なくともいずれか一方が第1所定角度よりも大きい第2所定角度以上回動した場合の第3位置を含む第2周辺領域に、HD2の位置を調整可能である。HD2が第2周辺領域に含まれる場合、使用者は、HD2の液晶パネル2Aの出射部22全体を適切に視認できない可能性がある。従って、HMD1は、HD2の位置が第2周辺領域に含まれる場合(S27:NO、S47:NO)、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させ(S31、S51)、且つ、スピーカ2Cから音を出力させるか、又は、振動モータ2Dにより筐体21を振動させる(S31、S51)。この場合、使用者は、HD2の液晶パネル2Aに表示された画像を視認することが難しい場合でも、音又は筐体21の振動を感知することによって、画像が使用中であるか又は使用予定であることを認識できる。又、HMD1は、画像が使用中であるか又は次に使用予定であるかに応じて、スピーカ2Cからの音の出力又は筐体21の振動を切り替える。これによって、使用者は、HD2の位置が第2周辺領域に含まれる場合において、画像が使用中であるか又は次に使用予定であるかを区別して認識できる。
【0059】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上記のHMD1では、使用者の左眼8の眼前にHD2が配置される構成であったが、使用者の右眼の眼前にHD2が配置される構成としてもよい。HMD1は着用具10を有していなくてもよい。固定部14は、着用具10と異なる別の部材に固定されてもよい。例えば固定部14は、使用者によって着用される帽子、ヘルメット等に固定されてもよい。
【0060】
HMD1は、HD2が中央領域又は第1周辺領域の何れかの位置に配置されていると判定した場合(S23:YES、S27:YES、S43:YES、S47:YES)、HD2の液晶パネル2Aに第1画像M11,M21や第2画像M12,M22を表示させることに加えて、スピーカ2Cから音を出力させたり、振動モータ2DによりHD2の筐体21を振動させたりすることによって、使用者に報知してもよい。この場合、HMD1は、スピーカ2Cからの出力音や筐体21の振動パターンを、HD2が第2周辺領域の何れの位置に配置された場合(S27:NO、S47:NO)の出力音や振動パターンと相違させてもよい。これによって、それぞれの状態を区別して使用者に報知してもよい。
【0061】
画像の使用状況を報知するための第1画像M11,M21及び第2画像M12,M22は、使用者が視認可能な範囲で適宜変更できることは言うまでもない。例えば、HMD1は、HD2の位置が中央領域に含まれる場合(S23:YES、S43:YES)、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させ(S25、S45)、且つ、出射部22の中央部に透過性の高い画像を表示させる(S25、S45)ことによって、画像が使用中であるか又は使用予定であることを使用者に報知してもよい。
【0062】
HMD1は、HD2が第1周辺領域に含まれる場合(S27:YES、S47:YES)、液晶パネル2Aの出射部22全体に画像を表示させ(S29、S49)、且つ、出射部22の中央部及び周辺部の両方に画像を表示させる(S29、S49)ことによって、画像が使用中であるか又は使用予定であることを使用者に報知してもよい。
【0063】
HMD1は、HD2が第2周辺領域に含まれる場合(S27:NO、S47:NO)、スピーカ2Cから音を出力させると同時に筐体21を振動させてもよい。このとき、HMD1は、画像が使用中の場合と使用予定の場合とで、スピーカ2Cからの出力音や筐体21の振動パターンを相違させ、それぞれの状態を区別して使用者に報知してもよい。
【0064】
HD2が第1位置に配置された場合の第1距離L1は、HD2が第2位置に配置された場合の第2距離L2より長くてもよい。HD2を第1位置から第2位置に移動させるときの第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7うち少なくとも何れか一方の回動角度は、第1所定角度よりも小さくてもよい。HD2を第1位置から第3位置に移動させるときの第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7のうち少なくとも何れか一方の回動角度は、第2所定角度よりも小さくてもよい。装着部11は、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7の代わりに、他の調節機構、例えば、ゴム等の弾性体によって形成されたフレキシブルジョイントを有していてもよい。
【0065】
HMD1は、S25、S29、S31、S45、S49、S51の処理を実行する場合において、液晶パネル2Aの出射部22全体に表示させる画像を単色で示してもよい。このとき、HDM1は、検出したHD2の位置、及び、画像の使用状況(使用中又は使用予定)に応じて、画像の色を変化させてもよい。この場合、使用者は、HD2に表示される画像の色に基づいて、画像が使用中であるか又は使用予定であることを認識できる。なお、出射部22全体に表示される画像の色を変化させた場合、使用者は、画像の使用態様を認識し易くなるため好ましい。
【0066】
HMD1は、S25、S29、S31、S45、S49、S51の処理を実行する場合において、液晶パネル2Aの出射部22全体に表示させる画像の輝度を、S17の処理によって画像を表示させる場合よりも大きくしてもよい。このとき、HMD1は、検出したHD2の位置、及び、画像の使用状況(使用中又は使用予定)に応じて、輝度のレベルを変化させてもよい。この場合、HMD1は、HD2の出射部22を使用者が適切に視認できない場合でも、輝度を上げることによって使用者の視認性を良好にできる。このため、使用者は、画像が使用中であるか又は使用予定であることを適切に認識できる。
【0067】
HMD1が使用者に報知する画像の使用状況は、使用中の画像であるかだけでも良いし、次に使用予定の画像であるか否かだけでも良い。又、画像の使用状況として、別の情報を使用者に報知してもよい。例えばタリー情報は、画像が録画中の画像であることを示してもよいし、次に録画される予定の画像であることを示してもよい。HMD1は、画像が録画中であるか又は次に録画される予定であるかを、使用者に報知してもよい。
【0068】
HMD1は、非図示のカメラによって着用具10を撮影してもよい。CPU31は、撮影された画像のデータに基づいて、HD2の位置を特定してもよい。又、HMD1は、カメラによって第1ボールジョイント6を撮影してもよい。CPU31は、撮影された画像のデータに基づいて、中心C11、C12間の距離を特定してもよい。CPU31は、特定された距離に基づいて、HD2の位置を特定してもよい。又、HMD1は、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7の回動角度を検出するセンサを有していてもよい。CPU31は、このセンサに基づいて特定される第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7のそれぞれの回動角度に基づいて、HD2の位置を特定してもよい。
【0069】
HMD1は、非図示のカメラによって使用者の眼を撮影してもよい。HMD1は、カメラから出力される画像データに基づく画像から、使用者の眼の目頭を基準点として特定し、使用者の眼の虹彩を動点として特定してもよい。HMD1は、FPGA34は、特定された目頭の位置に対する虹彩位置から、使用者の視線の方向を特定してもよい。HMD1は、特定した視線の方向に応じて、画像の使用状況を報知するための画像の表示態様を相違させてもよい。
【0070】
第1周辺領域の何れかの位置にHD2が配置されている場合、使用者は、液晶パネル2Aに表示される画像と眼前の景色との両方を視認するために視線の方向を頻繁に変化させている可能性が高い。この場合、カラーブレーキング(色割れ)が発生しやすい状態である。このためHMD1は、第1周辺領域の何れかの位置にHD2が配置されている場合、カラーブレーキングが発生し難い態様で液晶パネル2Aに画像を表示させてもよい。具体的には、例えばHMD1は、液晶パネル2Aの表示形式を、フィールドシーケンシャル方式から、R、G、Bの光の全てを同時タイミングで出力する方式に切り替えてもよい。又、HMD1は、画像を単色画像に切り替えてもよい。また装着部は以上説明した構成に限定されず、帽子やヘルメットなどに装着するアタッチメントのような構成でもよいし、メガネのフレームのような構成でもよい
【0071】
また、本実施形態において第1位置から第2位置へ移動させる場合の一例として、第1位置に配置されたHD2を、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を上下方向を軸として第1所定角度以上第2所定角度未満の範囲で回動させて移動させた場合におけるHD2の位置を「第2位置」としている。しかしながらこの例に限られず、左右方向を軸としたり、その他の方向を軸として、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7の少なくとも一方を第1所定角度以上第2所定角度未満の範囲で回転させた位置を第2位置としてもよい。
【0072】
加えて、本実施形態において第1位置から第3位置へ移動させる場合の一例として、第1位置に配置されたHD2を、第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7を左右方向を軸として第2所定角度以上回動させて移動させた場合におけるHD2の位置を「第3位置」としている。しかしながらこの例に限られず、上下方向を軸としたり、その他の方向を軸として、第1ボールジョイント6及びは第2ボールジョイント7の少なくとも一方を第2所定角度以上回転させた位置を第3位置としてもよい。
【0073】
<その他>
S11の処理を行うCPU31は、本発明の「画像信号取得手段」の一例である。HD2は、本発明の「表示部」の一例である。第1ボールジョイント6及び第2ボールジョイント7は、本発明の「調整部」の一例である。S13の処理を行うCPU31は、本発明の「タリー情報取得手段」の一例である。S25、S29、S31、S45、S49、S51、の処理を行うCPU31は、本発明の「報知手段」の一例である。S21、S41の処理を行うCPU31は、本発明の「位置検出手段」の一例である。
【符号の説明】
【0074】
1 :HMD
2 :表示装置
2A :液晶パネル
2C :スピーカ
2D :振動モータ
6 :第1ボールジョイント
7 :第2ボールジョイント
10 :着用具
11 :装着部
12 :アーム部
14 :固定部
22 :出射部
31 :CPU
L1 :第1距離
L2 :第2距離
L3 :第3距離
図1
図2
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図4
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図8