特許第6777097号(P6777097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777097
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】移植装置及び移植方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/08 20060101AFI20201019BHJP
   A01C 11/04 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   A01G9/08 610B
   A01C11/04
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-557814(P2017-557814)
(86)(22)【出願日】2016年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2016085139
(87)【国際公開番号】WO2017110371
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-251449(P2015-251449)
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】東田 哲
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第1222845(EP,A1)
【文献】 特開2002−171840(JP,A)
【文献】 特許第3796738(JP,B2)
【文献】 特許第2741684(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/08
A01C 11/04
A01G 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植装置であって、
前記苗床片を把持可能な把持部材を有し、前記把持部材が前記苗床片を把持した状態で前記把持部材と前記苗床とを相対移動させることによって前記苗床から前記苗床片を分離可能な分離機構と、
前記分離機構によって分離された前記苗床片を前記移植先に移植可能な移植機構と、
を備え、
前記苗の茎は第1の側に伸び、前記苗の根は第2の側に伸び、
前記把持部材は、前記第1の側及び前記第2の側とは異なる側から前記苗床片を把持し、
前記分離機構は、前記把持部材によって把持される前記苗床片と隣り合う隣接苗床片に前記第2の側から係合して前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を備えていることを特徴とする移植装置。
【請求項2】
前記分離機構は、前記隣接苗床片に前記移動阻害部材が係合する前に前記移動阻害部材と前記隣接苗床片を挟んで対向する位置である対向位置に移動可能であり、且つ前記隣接苗床片に前記移動阻害部材が係合した後に前記対向位置から退避した位置である退避位置に移動可能な移動部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の移植装置。
【請求項3】
切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植装置であって、
前記苗床片を把持可能な把持部材を有し、前記把持部材が前記苗床片を把持した状態で前記把持部材と前記苗床とを相対移動させることによって前記苗床から前記苗床片を分離可能な分離機構と、
前記分離機構によって分離された前記苗床片を前記移植先に移植可能な移植機構と、
を備え、
前記分離機構は、前記把持部材によって把持される前記苗床片と隣り合う隣接苗床片に前記苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から係合して前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を備え、前記隣接苗床片に前記移動阻害部材が係合する前に前記移動阻害部材と前記隣接苗床片を挟んで対向する位置である対向位置に移動可能であり、且つ前記隣接苗床片に前記移動阻害部材が係合した後に前記対向位置から退避した位置である退避位置に移動可能な移動部材を備えていることを特徴とする移植装置。
【請求項4】
切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植方法であって、
前記苗床片を把持可能な把持部材によって前記苗床片を把持した状態で
前記苗床片と前記隣接苗床片との間の前記切れ目に前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を挿入し、当該移動阻害部材が前記把持部材によって把持された前記苗床片に隣接する隣接苗床片に前記苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から係合して当該隣接苗床片の移動を阻害し、
把持された前記苗床片を前記苗床から分離し、
分離された前記苗床片を前記移植先に移植することを特徴とする移植方法。
【請求項5】
前記把持部材によって前記苗床片を把持して前記苗床片と前記隣接苗床片との間の前記切れ目が広がるように前記苗床片を引っ張った状態で前記切れ目に前記移動阻害部材を挿入することを特徴とする請求項に記載の移植方法。
【請求項6】
切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植装置であって、
前記苗床片を把持可能な把持部材を有し、前記把持部材が前記苗床片を把持した状態で前記把持部材と前記苗床とを相対移動させることによって前記苗床から前記苗床片を分離可能な分離機構と、
前記分離機構によって分離された前記苗床片を前記移植先に移植可能な移植機構と、
を備え、
前記分離機構は、前記把持部材によって把持される前記苗床片と隣り合う隣接苗床片に前記苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から近づくように移動して前記苗の茎及び前記切れ目の間において前記隣接苗床片の外面に係合することにより前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を備えていることを特徴とする移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば植物などを移植する移植装置及び移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の移植装置としては、例えば特許文献1に記載の定植機が知られている。このような定植機では、上面に方眼の切込みが形成された苗付ウレタンマットが複数の把持針により複数の立方体状の苗床ブロックに分離される。各苗床ブロックは移植針に引き渡され、当該移植針によって育生パネルに設けられたポット穴に移植される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−187661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような定植機では、把持針によって苗付ウレタンマットから苗床ブロックを容易に千切って分離できるように、分離したい苗床ブロックの周囲の苗床ブロックが、苗の葉や茎の出ている上面側から複数の押え棒によって押えられる。このため、押え棒によって苗の葉や茎を傷付けてしまうおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものである。その目的とするところは、苗の葉や茎を傷付けることを抑制しつつ、複数の苗床片に区切られた苗床から苗床片を精度よく分離することができる移植装置及び移植方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する移植装置は、切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植装置であって、前記苗床片を把持可能な把持部材を有し、前記把持部材が前記苗床片を把持した状態で前記把持部材と前記苗床とを相対移動させることによって前記苗床から前記苗床片を分離可能な分離機構と、前記分離機構によって分離された前記苗床片を前記移植先に移植可能な移植機構と、を備え、前記分離機構は、前記把持部材によって把持される前記苗床片と隣り合う隣接苗床片に前記苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から係合して前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を備えている。
【0007】
この構成によれば、把持部材と苗床とを相対移動させることによって把持部材に把持された苗床片を苗床から分離する際に、移動阻害部材を隣接苗床片に対して苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から係合させて隣接苗床片の移動を阻害することで、隣接苗床片を苗床に残した状態で把持部材によって把持された苗床片だけを苗床から分離することができる。この場合、移動阻害部材が苗の葉や茎と接触しないので、苗の葉や茎を傷付けることを抑制しつつ、複数の苗床片に区切られた苗床から苗床片を精度よく分離することができる。
【0008】
上記移植装置において、前記苗の根は第2の側に伸び、前記把持部材は、前記第1の側及び前記第2の側とは異なる側から前記苗床片を把持し、前記移動阻害部材は、前記第2の側から前記隣接苗床片に係合することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、把持部材と移動阻害部材とが干渉することを抑制できる。
上記移植装置において、前記分離機構は、前記隣接苗床片に前記移動阻害部材が係合する前に前記移動阻害部材と前記隣接苗床片を挟んで対向する位置である対向位置に移動可能であり、且つ前記隣接苗床片に前記移動阻害部材が係合した後に前記対向位置から退避した位置である退避位置に移動可能な移動部材を備えていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、隣接苗床片に移動阻害部材が係合した際に隣接苗床片が移動阻害部材に押圧されて移動することを移動部材によって抑制できる。
上記課題を解決する移植方法は、切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植方法であって、前記苗床片を把持し、把持された前記苗床片に隣接する隣接苗床片に前記苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から係合して当該隣接苗床片の移動を阻害し、把持された前記苗床片を前記苗床から分離し、分離された前記苗床片を前記移植先に移植する。
【0011】
この構成によれば、苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から隣接苗床片に係合して当該隣接苗床片の移動を阻害する際に、苗の葉や茎に接触することがない。したがって、苗の葉や茎を傷付けることを抑制しつつ、複数の苗床片に区切られた苗床から苗床片を精度よく分離することができる。
【0012】
上記移植方法において、前記苗床片を把持可能な把持部材によって前記苗床片を把持した状態で、前記苗床片と前記隣接苗床片との間の前記切れ目に前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を挿入することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、苗床片と隣接苗床片との間の切れ目に移動阻害部材を挿入する際に苗床片が移動阻害部材によって押圧されて移動することを把持部材によって抑制できる。
上記移植方法において、前記把持部材によって前記苗床片を把持して前記苗床片と前記隣接苗床片との間の前記切れ目が広がるように前記苗床片を引っ張った状態で前記切れ目に前記移動阻害部材を挿入することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、苗床片と隣接苗床片との間の切れ目に移動阻害部材を挿入し易くすることができる。
上記課題を解決する移植装置は、切れ目により区切られ、かつ各々が苗を備える複数の苗床片によって構成される苗床から、前記切れ目において少なくとも1つの苗床片を分離し、分離した苗床片を移植先に移植する移植装置であって、前記苗床片を把持可能な把持部材を有し、前記把持部材が前記苗床片を把持した状態で前記把持部材と前記苗床とを相対移動させることによって前記苗床から前記苗床片を分離可能な分離機構と、前記分離機構によって分離された前記苗床片を前記移植先に移植可能な移植機構と、を備え、前記分離機構は、前記把持部材によって把持される前記苗床片と隣り合う隣接苗床片に前記苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から近づくように移動して前記苗の茎及び前記切れ目の間において前記隣接苗床片の外面に係合することにより前記隣接苗床片の移動を阻害可能な移動阻害部材を備えている。
【0015】
この構成によれば、把持部材と苗床とを相対移動させることによって把持部材に把持された苗床片を苗床から分離する際に、移動阻害部材を苗の茎が伸びる第1の側とは異なる側から隣接苗床片に近づくように移動させて苗の茎及び切れ目の間において当該隣接苗床片の外面に係合させることにより隣接苗床片の移動を阻害する。これにより、隣接苗床片を苗床に残した状態で把持部材によって把持された苗床片だけを苗床から分離することができる。この場合、移動阻害部材が苗の葉や茎を押えつけることがないので、苗の葉や茎を傷付けることを抑制しつつ、複数の苗床片に区切られた苗床から苗床片を精度よく分離することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、苗の葉や茎を傷付けることを抑制しつつ、複数の苗床片に区切られた苗床から苗床片を精度よく分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の移植装置の斜視図。
図2】移植装置に苗床と定植パネルとを載置したときの状態を示す斜視図。
図3】苗床トレイの斜視図。
図4】苗床の一部を示す模式斜視図。
図5】苗床の一部を示す模式平面図。
図6】移植装置の電気的構成を示すブロック図。
図7】各把持対象苗床片を各把持部材によって把持したときの状態を示す斜視図。
図8】各係合棒が各把持対象苗床片と各隣接苗床片との間の切れ目に挿入されたときの状態を示す斜視図。
図9図8の要部を拡大して示す平面図。
図10】苗床から各把持対象苗床片を分離したときの状態を示す斜視図。
図11】一列に配置され、かつ互いに一体化された複数の把持対象苗床片を個別に同時に分離したときの状態を示す斜視図。
図12】挟持部材を上昇させるときの状態を示す斜視図。
図13】把持部材によって把持された把持対象苗床片を挟持部材に受け渡すときの状態を示す斜視図。
図14】把持対象苗床片を定植パネルに設けられた穴に移植するときの状態を示す斜視図。
図15】変更例において、各係合棒が各把持対象苗床片と各隣接苗床片との間の切れ目に挿入されたときの状態を示す斜視図。
図16】変更例の把持部材を把持対象苗床片に向かって移動させるときの状態を示す斜視図。
図17図16の把持部材を把持対象苗床片に突き当てたときの状態を示す斜視図。
図18図16の把持部材で把持対象苗床片を把持したときの状態を示す斜視図。
図19図16の把持部材で把持対象苗床片を苗床から分離したときの状態を示す斜視図。
図20】変更例の移植装置の要部を拡大して示す斜視図。
図21】別の変更例の移植装置の要部を拡大して示す斜視図。
図22図21において丸棒を各隣接苗床片に係合させたときの状態を示す斜視図。
図23図22において各把持対象苗床片を上昇させたときの状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、移植装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、移植装置11は、図示しないフレームに支持されており、苗床12を搬送する第1搬送機構13と、苗床12から苗床片14を分離する分離機構15と、定植パネル16を搬送する第2搬送機構17と、苗床片14を移植先である定植パネル16に移植する移植機構18とを備えている。
【0019】
第1搬送機構13は、苗床12が載置される苗床トレイ19と、苗床トレイ19を移植装置11の前後方向Xに移動させる第1駆動部20とを備えている。第1駆動部20は、モータなどの駆動源を有しており、L字状の連結板21を介して苗床トレイ19を支持している。第1駆動部20を駆動することで、苗床12が載置された苗床トレイ19が前後方向Xに沿って搬送される。
【0020】
図1及び図3に示すように、苗床トレイ19は、前後方向Xに長い矩形板状をなしている。苗床トレイ19において、前後方向Xと直交する左右方向Yの両縁と前縁とには高さの低い側壁が形成されている。苗床トレイ19において、後縁には側壁が形成されていない。苗床トレイ19の底壁19aには、前後方向Xに真っ直ぐに延びる複数の切欠溝19bが、互いに平行で且つ左右方向Yに等間隔となるように底壁19aのほぼ全域にわたって形成されている。
【0021】
各切欠溝19bは、底壁19aにおける後縁まで達しているが、底壁19aにおける前縁までは達していない。すなわち、苗床トレイ19の底壁19a上における前端部には切欠溝19bが形成されていない領域が存在する。当該領域には複数の略円柱状の突起19cが立設されている。
【0022】
各突起19cは、各切欠溝19bと前後方向Xで対応するように配置されている。したがって、突起19cの数は切欠溝19bの数と同じであり、複数の突起19cは左右方向Yに沿って互いに等間隔となるように直線状に並んで配置されている。
【0023】
図4及び図5に示すように、苗床12は、例えばウレタン等の発泡樹脂からなる弾性変形可能な平面視矩形状のマット体である。苗床12には、前後方向X及び左右方向Yに沿って延びる多数の切れ目22が平面視で格子状をなすように形成されている。苗床12は、これらの切れ目22により略立方体形状をなす複数の苗床片14に区切られている。因みに本実施形態では、12個の苗床片14が左右方向Yに並び且つ25個の苗床片14が前後方向Xに並ぶマトリックス状の配置となるように、格子状の切れ目22が苗床12に形成されている。
【0024】
図5に示すように、各苗床片14において、隣接する他の苗床片14との境界となる辺の略中央部は、当該他の苗床片14と部分的に連なる連結部23を構成している。したがって、苗床12を構成する複数の苗床片14の各々は、左右方向Y及び前後方向Xにおいて切れ目22と連結部23が交互に連続することにより、左右方向Y及び前後方向Xにおいて隣接する他の苗床片14と断続的に連結されている。
【0025】
苗床片14の上面における略中央部には、平面視円形の凹部24が形成されている。凹部24内には植物の苗Nが植え付けられる。苗床片14の凹部24の底部には苗床片14の下面まで延びる切り込みが設けられている。各苗床片14の凹部24内に植え付けられた苗Nの根が伸びた場合には、その伸びた根が当該切り込みを通じて苗床片14の下面側から苗床片14の外側に出ることが可能である。
【0026】
なお、図1図2、及び図5に示すように、苗床12を苗床トレイ19に載置する場合には、苗床12における左右方向Yに沿って延びる切れ目22のうち最も前側に位置する切れ目22に各突起19cが挿入されることによって、苗床12が位置決めされる。
【0027】
図1及び図2に示すように、第2搬送機構17は、苗床片14が移植される定植パネル16が載置される定植トレイ26と、定植トレイ26を前後方向Xに移動させる第2駆動部27とを備えている。定植トレイ26は、苗床トレイ19よりも下方に配置されている。第2駆動部27は、モータなどの駆動源を有しており、矩形状の連結板28を介して定植トレイ26を支持している。そして、第2駆動部27を駆動することで、定植パネル16が載置される定植トレイ26が前後方向Xに沿って搬送される。
【0028】
定植トレイ26は、前後方向Xに長い矩形板状をなしている。定植トレイ26において、左右両縁と後縁とには高さの低い側壁が形成されている。定植トレイ26の前縁には側壁が形成されていない。定植トレイ26の底壁26aには、当該底壁26aを貫通する前後方向Xに長い複数の長孔26bが、互いに平行で且つ左右方向Yに等間隔となるように底壁26aのほぼ全域にわたって形成されている。
【0029】
定植パネル16は、前後方向Xに長い矩形板状をなしている。定植パネル16の厚さ寸法は、苗床片14における上下方向(鉛直方向)Zの寸法と対応している。上下方向Zは、前後方向X及び左右方向Yの両方向と直交する方向に対応している。定植パネル16には、その定植パネル16を貫通する複数の定植用の穴16aが形成されている。本実施形態では、100個の穴16aが定植パネル16に形成されている。各穴16aの平面視形状は円形である。各穴16aの内周面に沿う円が、略立方体形状をなす苗床片14の一つの面(例えば、底面)の形状に対応する正方形の内接円に相当する。
【0030】
このため、各穴16a内に苗床片14が挿入された場合、その苗床片14は平面視での四隅部分が弾性変形して穴16aの内周面に圧接することで、穴16a内に保持される。因みに、本実施形態の定植パネル16では、左右方向Yに並べられた10個の穴16aにより構成される穴列が10列分、前後方向Xに並んだ配置となるように形成されている。定植トレイ26に定植パネル16を載置した状態では、各穴16aと各長孔26bとが上下方向Zにおいて対応する。
【0031】
図1及び図7に示すように、分離機構15は、第1搬送機構13及び第2搬送機構17よりも後方に配置されている。分離機構15は、ガイド部材31と、ガイド部材31を前後方向Xに移動させる第1分離駆動部32と、第1分離駆動部32を支持しながら左右方向Yに移動させる第2分離駆動部33とを備えている。ガイド部材31は、左右方向Yに並び、かつ一列を構成する複数の苗床片14をそれぞれ把持可能な複数の把持部材30を支持している。本実施形態において、左右方向Yに並び、かつ一列を構成する苗床片14の数は12であるため、ガイド部材31は12個の把持部材30を支持している。第2分離駆動部33は、モータなどの駆動源を有している。第2分離駆動部33を駆動することにより、第1分離駆動部32が左右方向Yに移動される。
【0032】
ガイド部材31は、左右方向Yに延びており、矩形状の連結板34を介して第1分離駆動部32に支持されている。第1分離駆動部32は、モータなどの駆動源を有している。第1分離駆動部32を駆動することにより、連結板34を介してガイド部材31が前後方向Xに移動される。ガイド部材31の前面には、左右方向Yの全体にわたって延びるガイド溝31aが形成されている。各把持部材30の一部がガイド溝31aに挿入されることで、ガイド溝31aは各把持部材30を左右方向Yに沿って摺動可能に支持している。
【0033】
各把持部材30は、左右方向Yにおいて並び、かつ苗床片14を後方から把持する一対の把持片35と、一対の把持片35を支持しながら駆動する第1駆動アクチュエータ36と、第1駆動アクチュエータ36を支持する矩形板状のベース部37とを備えている。第1駆動アクチュエータ36は、例えばエアシリンダにより構成される。
【0034】
第1駆動アクチュエータ36は、一対の把持片35に苗床片14を把持させたり、一対の把持片35による苗床片14の把持状態を解除させたりするように、一対の把持片35を駆動する。すなわち、第1駆動アクチュエータ36を駆動することにより、一対の把持片35を互いに近づけたり遠ざけたりするように移動させることが可能である。
【0035】
ガイド部材31と把持部材30との間には、左右方向Yに延びるリンク機構38が配置されている。リンク機構38は、X字状に交差した複数のリンクが左右方向Yに沿うように軸38aによって回動自在に直列に連結されることにより構成されている。すなわち、リンク機構38は、左右方向Yに沿って伸縮自在に構成されている。リンク機構38において、X字状をなすリンクの交点にそれぞれ位置する12個の軸38aが、12個の把持部材30のベース部37にそれぞれ連結されている。
【0036】
リンク機構38における左右方向Yの一端部には、リンク機構38を左右方向Yに沿って伸縮させる第2駆動アクチュエータ39が連結されている。第2駆動アクチュエータ39は、例えばエアシリンダなどで構成されており、左右方向Yに延びるロッド39aと、ロッド39aを左右方向Yに沿って移動させる駆動要素39bとを有している。ロッド39aの先端部がリンク機構38における左右方向Yの一端部に連結されている。
【0037】
このため、第2駆動アクチュエータ39を駆動してロッド39aを左右方向Yに沿って往復移動させることで、リンク機構38が伸縮されると、複数の軸38aが同時に移動して当該複数の軸38a同士の間隔が広くなったり狭くなったりする。
【0038】
この場合、左右方向Yにおける複数の軸38a同士の間隔は全て同じになる。したがって、第2駆動アクチュエータ39の駆動により、複数の把持部材30が同時に移動されて当該複数の把持部材30同士の間隔が広くなったり狭くなったりする。この場合、左右方向Yにおける複数の把持部材30同士の間隔は全て同じになる。
【0039】
また、分離機構15は、苗床トレイ19の下方に配置された係合部材40を備えている。係合部材40は、左右方向Yに沿って真っ直ぐに延びる梁部41と、梁部41の上面に立設された移動阻害部材の一例としての複数の係合棒42とを備えている。
【0040】
各係合棒42は、丸みを帯びた先端部を有する丸棒によって構成されている。複数の係合棒42は、係合部材40の上側に苗床トレイ19が移動された場合に苗床トレイ19の底壁19aに形成された複数の切欠溝19bと上下方向Zにおいて対応するように配置されている。したがって、係合棒42の数は切欠溝19bの数と同じである。複数の係合棒42は左右方向Yに沿って互いに等間隔となるように直線状に並んで配置されている。
【0041】
係合部材40の梁部41における左右方向Yの両端部は、上下方向Zに延びる一対の第3駆動部43によって昇降可能に支持されている。一対の第3駆動部43は、モータなどの駆動源を有している。一対の第3駆動部43を駆動することにより、係合部材40が上下方向Zに沿って移動される。したがって、係合部材40の上側に苗床トレイ19が移動された状態で係合部材40を上昇させることで、複数の係合棒42が苗床トレイ19の複数の切欠溝19bに対してそれぞれ下側から挿入される。
【0042】
図1及び図2に示すように、移植機構18は、分離機構15の下側であって且つ第2搬送機構17よりも低い位置に配置されている。移植機構18は、左右方向Yに延びる第1移植駆動部44と、第1移植駆動部44上に配置されたL字板状のベース板45と、ベース板45に取着された複数の第2移植駆動部46と、複数の第2移植駆動部46によってそれぞれ上下方向Zに移動可能に支持された複数の挟持部材47とを備えている。本実施形態においては、4つの第2移植駆動部46と、4つの挟持部材47とが設けられている。
【0043】
第1移植駆動部44は、モータなどの駆動源を有している。第1移植駆動部44を駆動することにより、ベース板45が左右方向Yに移動される。4つの第2移植駆動部46は、左右方向Yに等間隔に配置され、それぞれモータなどの駆動源を有している。4つの第2移植駆動部46を駆動することにより、当該4つの第2移植駆動部46に支持されている4つの挟持部材47が上下方向Zに移動される。挟持部材47は、上下方向Zに延びており、定植パネル16の穴16aに挿通可能な太さを有している。
【0044】
各挟持部材47は、先端部に苗床片14を挟持可能な一対の挟持片48を有し、且つ基端部に一対の挟持片48を駆動する第3駆動アクチュエータ49を有している。第3駆動アクチュエータ49は、例えばエアシリンダなどで構成され、一対の挟持片48に苗床片14を挟持させたり、一対の挟持片48による苗床片14の挟持状態を解除させたりするように、一対の挟持片48を駆動する。すなわち、第3駆動アクチュエータ49を駆動することにより、一対の挟持片48の先端部同士が互いに近づいたり遠ざかったりするように、一対の挟持片48を揺動させることが可能である。
【0045】
次に、移植装置11の電気的構成について説明する。
図6に示すように、移植装置11は、移植装置11全体を統括的に制御する制御部50を備えている。制御部50は、CPU50a、ROM50b、及びRAM50cを備えている。CPU50aは中央処理装置として機能し、各種のプログラムを実行する。ROM50bは、各種の情報や移植装置11全体の動作を制御するために用いられる移植用プログラム等を読み出し可能に記憶する。RAM50cは、各種の情報を書き込み及び読み出し可能に記憶する。
【0046】
CPU50aは、図示しないインターフェースを介して各種の情報が制御部50に入力された場合、ROM50bに記憶された移植用プログラムを実行する。これにより、CPU50aは、移植装置11の動作を制御するために必要とされる各種の演算を行うと共に、その演算において使用される各種の情報の読み出しをROM50bに対して行ったり、その演算において使用される各種の情報の読み出し及び書き込みをRAM50cに対して行ったりする。
【0047】
制御部50の入力側インターフェース(図示略)には、ユーザーが操作するための操作部51が電気的に接続されている。制御部50の出力側インターフェース(図示略)には、第1駆動部20、第2駆動部27、第1分離駆動部32、第2分離駆動部33、第3駆動部43、第1移植駆動部44、第2移植駆動部46、第2駆動アクチュエータ39、第1駆動アクチュエータ36、及び第3駆動アクチュエータ49がそれぞれ電気的に接続されている。
【0048】
そして、制御部50は、操作部51の操作に基づき、第1駆動部20、第2駆動部27、第1分離駆動部32、第2分離駆動部33、第3駆動部43、第1移植駆動部44、第2移植駆動部46、第2駆動アクチュエータ39、第1駆動アクチュエータ36、及び第3駆動アクチュエータ49の駆動をそれぞれ制御する。
【0049】
次に、移植装置11の作用について説明する。
苗床12から苗床片14を分離して定植パネル16に移植する場合には、まず、図2に示すように、苗床トレイ19及び定植トレイ26に苗床12及び定植パネル16をそれぞれ載置した状態で、操作部51を操作して移植装置11による移植動作を開始する。すると、苗床12が載置された苗床トレイ19及び定植パネル16が載置された定植トレイ26が後方に向かってそれぞれ移動されて所定の位置で停止される。
【0050】
続いて、図7に示すように、左右方向Yに並ぶ12個の把持部材30が前方に同時に移動される。ここで、苗床12において、最も後側に位置する左右方向Yに整列した一列分に対応する12個の苗床片14を把持対象苗床片14Aと称すると、12個の把持対象苗床片14Aにおける後面が12個の把持部材30の一対の把持片35によってそれぞれ同時に把持される。すなわち、苗Nの茎が伸びる側を第1の側と称し、苗Nの根が伸びる側を第2の側と称すると、各把持部材30の一対の把持片35は、上記第1の側に対応する上側及び上記第2の側に対応する下側とは異なる後側から当該各把持対象苗床片14Aを把持している。
【0051】
続いて、図8及び図9に示すように、係合部材40が上方に移動されると、各係合棒42が、苗床トレイ19の底壁19aに形成された各切欠溝19bを通して、各把持対象苗床片14Aと、各把持対象苗床片14Aと隣り合う他の苗床片14である隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に挿入される。
【0052】
これにより、各隣接苗床片14Bの把持部材30に向かう後方への移動が各係合棒42によって阻害される。このとき、各係合棒42は、各隣接苗床片14Bに対して苗Nの茎が伸びる第1の側に対応する上側とは異なる側であって、苗Nの根が伸びる第2の側に対応する下側から係合するため、各隣接苗床片14Bに植え付けられた苗Nの茎や葉を傷付けることはない。
【0053】
また、各係合棒42が各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に挿入される際には、各係合棒42が各把持対象苗床片14A及び各隣接苗床片14Bから摩擦力や弾性復元力などの抵抗を受けることで、各係合棒42によって各把持対象苗床片14A及び各隣接苗床片14Bが突き上げられて浮き上がろうとする。
【0054】
この点、本実施形態では、各係合棒42が各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に挿入される前に、各把持対象苗床片14Aが各把持部材30の一対の把持片35によって把持された状態になっている。このため、各把持対象苗床片14A及び各隣接苗床片14Bが各係合棒42によって突き上げられて浮き上がろうとすることが抑制される。
【0055】
引き続き、図10に示すように、各把持部材30の一対の把持片35が各把持対象苗床片14Aを把持した状態で後方に移動されると、各把持対象苗床片14Aが苗床12から各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22において分離される。すなわち、各把持対象苗床片14Aが各把持部材30により各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとを連結する連結部23において苗床12から引き千切られる。
【0056】
このとき、各隣接苗床片14Bは、各把持部材30により各把持対象苗床片14Aを介して後方へ引っ張られるが、各隣接苗床片14Bは各係合棒42によって把持部材30に向かう後方への移動が阻害される。よって、各隣接苗床片14Bが各把持対象苗床片14Aに追従して苗床12から引き千切られることはない。したがって、各把持部材30により苗床12から各把持対象苗床片14Aだけが精度よく分離される。
【0057】
引き続き、図11に示すように、係合部材40が下方に移動され、第2駆動アクチュエータ39の駆動によりリンク機構38が収縮状態から伸長状態にされると、全ての把持部材30が左右方向Yにおける互いの間隔が広くなるように同時に移動される。
【0058】
これにより、一体化されていた一列分に対応する12個の把持対象苗床片14Aは、これらをそれぞれ連結する連結部23において個別に千切られて分離される。このとき、12個の把持対象苗床片14Aのうちの一部は、定植パネル16の穴16aの真上に配置される。
【0059】
引き続き、図12に示すように、4つの挟持部材47のうちの一部が定植パネル16の穴16aの真上に配置された把持対象苗床片14Aの真下に移動するように4つの挟持部材47を左右方向Yに沿って同時に移動した後、4つの挟持部材47が上方に移動される。すると、各挟持部材47は、定植トレイ26の長孔26b及び定植パネル16の穴16aに挿通された状態になる。
【0060】
引き続き、図13に示すように、挟持部材47が上方に移動されて把持部材30の一対の把持片35に把持された状態の把持対象苗床片14Aに達すると、当該把持対象苗床片14Aが挟持部材47の一対の挟持片48によって挟持される。すると、把持対象苗床片14Aの把持部材30の一対の把持片35による把持状態が解除され、当該把持対象苗床片14Aが把持部材30の一対の把持片35から挟持部材47の一対の挟持片48に受け渡される。
【0061】
引き続き、図14に示すように、把持対象苗床片14Aを挟持した挟持部材47が下方に移動され、当該把持対象苗床片14Aが定植パネル16の穴16a内に挿入された状態になると、挟持部材47の一対の挟持片48による当該把持対象苗床片14Aの挟持状態が解除される。
【0062】
これにより、把持対象苗床片14Aが定植パネル16の穴16aに保持され、挟持部材47が下方に移動されることで、苗床12からの1つの把持対象苗床片14A(苗床片14)の定植パネル16への移植が完了する。その後、同様にして苗床12から苗床片14が順次に定植パネル16へと移植される。
【0063】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)移植装置11の分離機構15は、各把持部材30を移動させることによって各把持部材30に把持された各把持対象苗床片14Aを苗床12から分離する際に、複数の係合棒42を各隣接苗床片14Bに対して下側から係合させて各隣接苗床片14Bの移動を阻害している。苗Nの茎が伸びる側を第1の側と称すると、第1の側は上側に相当する。したがって、複数の係合棒42は、各隣接苗床片14Bに対して、第1の側(上側)とは異なる下側から係合して、各隣接苗床片14Bの移動を阻害している。このため、各隣接苗床片14Bを苗床12に残した状態で各把持部材30によって把持された各把持対象苗床片14Aだけを苗床12から分離することができる。この場合、複数の係合棒42が苗Nの葉や茎と接触しないので、苗Nの葉や茎を傷付けることを抑制しつつ、苗床12から各把持対象苗床片14Aを精度よく分離することができる。
【0064】
(2)苗Nの根が伸びる側を第2の側と称すると、第2の側は下側に相当する。移植装置11において、各把持部材30は、上記第1の側である上側及び上記第2の側である下側とは異なる後側から各把持対象苗床片14Aを把持する。複数の係合棒42は、上記第2の側である下側から各隣接苗床片14Bに係合する。このため、各把持対象苗床片14Aと複数の係合棒42とが干渉することを抑制できる。
【0065】
(3)移植装置11では、各把持部材30によって各把持対象苗床片14Aを把持した状態で、各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に複数の係合棒42が挿入される。このため、当該切れ目22に複数の係合棒42が下側から挿入される際に、各把持対象苗床片14A及び各隣接苗床片14Bが複数の係合棒42によって上側へ押圧されて、各把持対象苗床片14A及び各隣接苗床片14Bが苗床トレイ19から浮き上がることを各把持部材30によって抑制することができる。
【0066】
(変更例)
上記実施形態は次のように変更してもよい。
図15に示すように、複数の係合棒42を各隣接苗床片14Bに係合させる際に、各把持部材30によって各把持対象苗床片14Aを把持して各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22が広がるように各把持対象苗床片14Aを後方に引っ張った状態で当該切れ目22に複数の係合棒42を挿入するようにしてもよい。このようにすれば、各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に複数の係合棒42を挿入し易くすることができる。
【0067】
図16に示すように、分離機構15の把持部材30のベース部37における前面に、左右方向Yに所定間隔をおいて並ぶ移動部材の一例としての一対の補助棒60を前方に向かって真っ直ぐに延びるように形成してもよい。一対の補助棒60同士の左右方向Yの間隔は、一対の補助棒60が苗床片14の左右方向Yにおける寸法(幅寸法)内に収まる程度に設定されている。
【0068】
そして、図17及び図18に示すように、把持部材30を前後方向Xに沿って前方に移動させて把持対象苗床片14Aを把持部材30で把持すると、一対の補助棒60が把持部材30で把持した把持対象苗床片14Aの上面及び当該把持対象苗床片14Aに隣接する隣接苗床片14Bの上面に対向する。このとき、一対の補助棒60は、把持対象苗床片14Aの上面及び隣接苗床片14Bの上面との間に僅かな隙間を形成する状態になるが、当該一対の補助棒60が把持対象苗床片14Aの上面及び隣接苗床片14Bの上面に軽く接触してもよい。
【0069】
この状態、すなわち隣接苗床片14Bに複数の係合棒42(図9参照)が係合する前の状態では、一対の補助棒60は、複数の係合棒42と隣接苗床片14Bを挟んで対向する対向位置(図17及び図18に示す位置)に位置している。続いて、複数の係合棒42を把持対象苗床片14Aと隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に下側から挿入すると、把持対象苗床片14Aと隣接苗床片14Bとが複数の係合棒42に押圧されて浮き上がることがあるが、この場合には一対の補助棒60によって把持対象苗床片14Aと隣接苗床片14Bとが押えられてこれらが浮き上がることを抑制できる。
【0070】
続いて、図19に示すように、把持部材30を前後方向Xに沿って後方に移動させると、苗床12から把持対象苗床片14Aが分離された状態になる。この状態、すなわち隣接苗床片14Bに複数の係合棒42(図9参照)が係合した後の状態では、一対の補助棒60は、上述の対向位置から退避した退避位置(図19に示す位置)に位置している。つまり、一対の補助棒60は、把持部材30の移動に伴って対向位置と退避位置との間で移動可能になっている。なお、補助棒60は、一対(2本)に限らず、1本でもよいし、3本以上であってもよい。
【0071】
図20に示すように、複数の係合棒42の代わりに、移動阻害部材の一例として左右方向Yに延びる丸棒61を採用してもよい。丸棒61の左右方向Yの長さは、苗床12の左右方向Yの長さ(幅)よりも少し長く設定されている。丸棒61は、先端が丸みを帯びた形状を有している。丸棒61は、図示しない駆動部により左右方向Yに沿って移動可能であり、苗床12における各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に挿入される挿入位置(図20に示す位置)と、苗床12から離れた位置との間で移動される。つまり、丸棒61は、左右方向Yの一方側から挿入位置へ移動し、各隣接苗床片14Bに係合することで、各隣接苗床片14Bの後方への移動を阻害する。なお、複数の丸棒61が用いられてもよい。
【0072】
・上述した図20の場合において、移動阻害部材の一例としての丸棒61が、苗Nの茎及び切れ目22の間において各隣接苗床片14Bの外面に係合される係合位置(図22に示す位置)と、苗床12から離れた退避位置(図21に示す位置)との間で移動されるように構成してもよい。つまり、図21及び図22に示すように、丸棒61は、隣接苗床片14Bに苗Nの茎が伸びる第1の側(本例では上側)とは異なる側である左右方向Y側(本例では左側)から近づくように移動して苗Nの茎と切れ目22との間において隣接苗床片14Bの外面に係合する。この状態(図22に示す状態)で、各把持対象苗床片14Aを把持した状態の各把持部材30を上方に移動させると、図23に示すように、各隣接苗床片14Bの上方への移動が丸棒61によって阻害されるので、各隣接苗床片14Bから各把持対象苗床片14Aが円滑に千切られる。これにより、苗床12から各把持対象苗床片14Aが精度よく分離される。
【0073】
・移植装置11では、各把持部材30によって各把持対象苗床片14Aを把持する前に、各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に複数の係合棒42を挿入するようにしてもよい。
【0074】
・移動阻害部材は、比較的厚さの薄い帯状の部材によって構成してもよい。このようにすれば、移動阻害部材を各把持対象苗床片14Aと各隣接苗床片14Bとの間の切れ目22に挿入し易くなる。
【0075】
・左右方向Yにおける複数の係合棒42同士の間隔は、適宜変更してもよいし、必ずしも全てが同じである必要はない。
・各把持対象苗床片14Aを苗床12から分離する場合には、各把持部材30が各把持対象苗床片14Aを把持した状態で、各把持部材30を移動させることなく停止させ、且つ苗床12を前後方向Xにおいて各把持部材30から離れるように移動させてもよい。あるいは、各把持部材30が各把持対象苗床片14Aを把持した状態で、各把持部材30及び苗床12の両方を前後方向Xにおいて互いに離れるように移動させて各把持対象苗床片14Aを苗床12から分離するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
11…移植装置、12…苗床、14…苗床片、14A…把持対象苗床片、14B…隣接苗床片、15…分離機構、16…移植先の一例としての定植パネル、18…移植機構、22…切れ目、30…把持部材、42…移動阻害部材の一例としての係合棒、60…移動部材の一例としての補助棒、61…移動阻害部材の一例としての丸棒。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23