(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性板部は、前記被接続部材が非挿通状態であるときに、先端が前記導電性板部の前記係合突起に前記挿通孔とは反対側から係合している請求項1又は2に記載の電気機器の接続端子構造。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる場合がある。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の一実施形態を示す電気機器の一つである熱動形過負荷リレーについて説明する。
熱動形過負荷リレー(サーマルリレー)10は、
図1に示すように、正面に3本の外部接続ピン11u、11v及び11wが上部から下方に突出して平行に配置されている。これら外部接続ピン11u、11v及び11wは、接続対象となる他の電気機器、例えば電磁接触器に形成されたスプリング端子に挿通して接続される。
【0012】
また、熱動形過負荷リレー10は、
図4に示すように、背面に3つの主端子12u、12v及び12wが左右方向に並列状態で配置されている。主端子12uは、
図6に示すように、左右側面が熱動形過負荷リレー10の前後方向に延長する側壁13a及び隔壁13bに接触した状態で固定されている。主端子12vは、
図6に示すように、左右側面が熱動形過負荷リレー10の前後方向に延長する隔壁13b及び13cに接触した状態で固定されている。主端子12wは、
図6に示すように、左右側面が熱動形過負荷リレー10の前後方向に延長する隔壁13c及び13dに接触した状態で固定されている。
【0013】
さらに、熱動形過負荷リレー10は、
図4に示すように、背面に主端子12wの外側に補助端子14a、14b及び14c、14dが2つずつ左右方向に並列された状態で階段状に2段に配置されている。これら補助端子14a〜14dも左右側面が熱動形過負荷リレー10に形成された前後方向に延長する隔壁13d、13e及び側壁13fに接触した状態で固定されている。
【0014】
これら主端子12u〜12w及び補助端子14a〜14dは、端子板15と端子ねじ16とを備えたねじ端子構造を有する。端子板15は導電性金属材で製作されている。端子板15には、
図9に拡大図示するように、中央部に下方に突出する円筒部17がバーリング加工によって形成されている。この円筒部17の内周面には雌ねじ部18が形成されている。端子ねじ16には、座金19が装着され、この端子ねじ16が雌ねじ部18に螺合する。
【0015】
各端子板15には、
図8に拡大図示するように、雌ねじ部18の中心を通って半径方向の左右方向に延長する断面半円形状の突条20が形成されている。この突条20は、回り止め機構RSを形成する第1係合部となるものである。突条20は端子板15をプレス加工する際に、下面側からエンボス加工によって形成される。
端子ねじ16は、端子板15の雌ねじ部18に螺合する。この端子ねじ16は、頭部側に座金19を回転可能に保持している。この座金19は、端子ねじ16と別体とすることもできる。
【0016】
また、熱動形過負荷リレー10は、
図7に示すように、内部に3つのバイメタル21u、21v及び21wを備えている。これらバイメタル21u〜21wは、外部接続ピン11u〜11w及び主端子12u〜12w間を流れる電流が過電流状態となったときに加熱されて図示しないシフタ、釈放レバー、接点反転機構によって通電路を遮断するトリップ状態となる。
さらに、熱動形過負荷リレー10は、
図3に示すように、上面にトリップ状態を解除するリセット棒21が突出されている。
【0017】
熱動形過負荷リレー10の主端子12u〜12wと補助端子14a〜14dには、熱動形過負荷リレー10へスプリング端子による接続を可能とするアドオン部品となる端子変換部材31が接続される。
この端子変換部材31は、主端子用端子変換部32と補助端子用端子変換部33A,33Bとで構成されている。
主端子用端子変換部32は、
図4、
図5及び
図8に示すように、主端子12u〜12wに対して個別に接続されるように3つ用意されている。
【0018】
各主端子用端子変換部32は、例えば合成樹脂材で成型された絶縁ケース35を有する。この絶縁ケース35は、
図5、
図9及び
図10に示すように、底板部35a、前面板部35b、後面板部35c及び左側面板部35dとで、側面から見て略U字状に形成されている。
底板部35aは、前後方向に延長する平面から見て長方形状に形成されている。この底板部35aの前端側の下面には、
図9及び
図10に示すように、下方に突出する係合突起35a1が形成されている。この係合突起35a1は後述する端子カバー51の係合孔57に係合する。
【0019】
前面板部35bは、底板部35aの前端から上方に延長する第1垂直板部35b1と、この第1垂直板部35b1の上端から上方及び前方に離間して上方に延長する第2垂直板部35b2と、この第2垂直板部35b2から上方に且つ後方に湾曲延長する湾曲板部35b3とで構成されている。
後面板部35cは、底板部35aの後端から上方に前面板部35bの第2垂直板部35b2の上端まで延長している。
【0020】
左側面板部35dは、底板部35aの左側端部から上方に延長し、前面板部35bの湾曲板部35b3の上端と略等しい高さの前側板部35d1と後面板部35cの上端と略等しい高さの後側板部35d2とで構成されている。この左側面板部35dには
図5及び
図9に示すように内面に右端側に突出する環状周壁36が形成されている。
この環状周壁36は、
図10で特に明らかなように、互いに連続する底壁部36a、前面壁部36b、上面壁部36c及び後面壁部36dを備えている。底壁部36aは、底板部35aに対して所定間隔だけ離間して対向している。
【0021】
前面壁部36bは、底板部35aの前端から上方に延長し、前面板部35bと所定間隔だけ離間して対向している。この前面壁部36bには、底壁部36a側に後方にずれる段部36eが形成されているとともに、上下方向の中間部に前方に突出する係合突部36fが形成されている。
上面壁部36cは前面壁部36bの上端から後方に僅かに延長している。
後面壁部36dは、上面壁部36cの後端から下方に延長する垂直壁部36d1とこの垂直壁部36d1から斜め後方に延長する傾斜壁部36d2とこの傾斜壁部36d2から下方に延長して底壁部36aに達する垂直壁部36d3とで構成されている。
【0022】
また、絶縁ケース35には、
図8に示すように、鉄材等の導電性金属材で形成された端子部材37が保持されている。この端子部材37は、端子部37aとこれに連続するU字状導電性板部37bとで構成されている。
端子部37aは、絶縁ケース35の前面板部35bの第1垂直板部35b1及び第2垂直板部35b2間の窓部35b4を通じて前方に突出延長し、先端に
図9で拡大図示するように、端子ねじ16を挿通可能な貫通孔37cが形成されている。また、端子部37aには、
図8で拡大図示するように、下面側に貫通孔37cを中心として半径方向の左右方向に延長する断面三角形状の係合溝37dが形成されている。この係合溝37dは、主端子12u〜wの端子板15に形成された突条20に係合して回り止め機構RSの第2係合部を構成する。
【0023】
U字状導電性板部37bは、端子部37aの後端から下方に延長する前面板部37b1と、この前面板部37b1の下端から後方に延長する底板部37b2と、この底板部37b2の後端から上方に延長する後面板部37b3とを備えている。底板部37b2の右側面には、
図5に示すように、右方に突出する係合板部37b4が形成されている。後面板部37b3の上端側内面には、
図10に示すように、前方に突出する係合突起37b5が形成されている。
この係合突起37b5は、上端側が後面板部37b3の内面から下方に行くに従い徐々に突出量が増加する緩やかな傾斜面SL1とされ、下端側が比較的急峻な傾斜面SL2とされている。この傾斜面SL2が後述する主端子接続ケーブル60の導電性接続部61が挿入されていないときに後述する端子スプリング38の先端を係止する。
【0024】
そして、端子部材37は、U字状導電性板部37bが絶縁ケース35にその前面板部35b、底板部35a及び後面板部35cの内面に沿うように保持されている。ここで、U字状導電性板部37bは、前面板部37b1及び底板部37b2が絶縁ケース35の前面板部35b及び底板部35aと環状周壁36の前面壁部36b及び底壁部36aとの間に挿入されて絶縁ケース35に保持されている。
【0025】
さらに、絶縁ケース35には、
図9に示すように、導電性ばね板材で逆U字状に形成された弾性板部としての端子スプリング38が保持されている。この端子スプリング38は,前面板部38a、湾曲板部38b及び傾斜板部38cを備えている。前面板部38aは、環状周壁36の前面壁部36bの段部36eから前面壁部36bに沿って上方まで延長している。湾曲板部38bは、前面板部38aの上端から折り曲げられて絶縁ケース35の前面板部35bの湾曲板部35b3と環状周壁36の上面壁部36cとの間を通って後方側に延長している。傾斜板部38cは、
図10に示すように、湾曲板部38bの後端から下方に急な傾斜角で延長する第1傾斜板部38c1と、この第1傾斜板部38c1の下端から緩やかな傾斜角で延長する第2傾斜板部38c2とでドッグレッグ状に屈曲されて延長されている。この傾斜板部38cは、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61を挟持していない状態では、
図10で一点鎖線図示のように、自身の弾性力によって先端がU字状導電性板部37bの係合突起37b5の下端側に係止されている。
【0026】
この端子スプリング38と、端子部材37のU字状導電性板部37bの後面板部37b3とでスプリング端子39が構成されている。
このスプリング端子39は、後述する端子カバー51の挿通孔52bを通じて被接続部材としての主端子接続ケーブル60の導電性接続部61が挿入されていない状態では、
図10で一点鎖線図示のように、端子スプリング38の傾斜板部38cの先端が端子部材37のU字状導電性板部37bの後面板部37b3に形成された係合突起37b5の下端側の傾斜面SL2に弾性接触している。
【0027】
この状態で、
図10で実線図示のように、端子カバー51の挿通孔52bを通じて主端子接続ケーブル60の導電性接続部61が挿入されると、先ず、導電性接続部61の先端が端子スプリング38の傾斜板部38cの先端側とU字状導電性板部37bの後面板部37b3の係合突起37b5より上方側との間に接触する。この状態で、さらに導電性接続部61の先端を下方に押し込むと、端子スプリング38の傾斜板部38cを内側に弾性変形させながら導電性接続部61の先端が係合突起37b5の傾斜面SL1に接触して内側に移動し、導電性接続部61の先端が係合突起37b5の頂点に達した後に、端子スプリング38の傾斜板部38cの先端が、係合突起37b5より下側で導電性接続部61のU字状導電性板部37bの後面板部37b3とは反対側の側面に接触する。
【0028】
これにより、導電性接続部61の先端がU字状導電性板部37bの係合突起37b5より下側の内面に接触し、さらに導電性接続部61を押し込むことにより、
図10で実線図示のように、導電性接続部61の先端がU字状導電性板部37bの後面板部37b3の内面に接触する接触点P1と、導電性接続部61の中間部が係合突起37b5に接触する接触点P2との2点接触状態となる。このとき、導電性接続部61の後面板部37b3とは反対が弾性接触している。したがって、導電性接続部61がU字状導電性板部37bの後面板部37b3と、端子スプリング38の先端とで3点支持状態で挟持される。この主端子接続ケーブル60の挟持状態では、
図10に示すように、主端子接続ケーブル60の中心軸が上下方向に対して熱動形過負荷リレー10側に僅かに傾斜した状態となる。
【0029】
また、補助端子用端子変換部33A及び33Bは、
図11に示すように、上述した主端子用端子変換部32に対して小さい相似形状に形成されている。したがって、補助端子用端子変換部33A及び33Bについての詳細説明はこれを省略するが、絶縁ケース45、環状周壁46、端子部材47及び端子スプリング48を備えている。ここで、端子部材47には、
図11で拡大図示するように、主端子用端子変換部32の端子部材37と同様に、熱動形過負荷リレー10の主端子12u〜12wの端子板15に形成された突条20に係合する断面三角形状の第2係合部としての係合溝47xが形成されている。この係合溝47xと突条20とで回り止め機構RSが構成されている。なお、補助端子用端子変換部33A及び33Bには、端子スプリング48が並列に2つ配置されている。
【0030】
また、下段側の補助端子14c及び14dに装着する補助端子用端子変換部33Bは、上段側の補助端子14a及び14bに装着する補助端子用端子変換部33Aに対して端子部材47の長さが長く設定されている。したがって、
図11に示すように、補助端子用端子変換部33A及び33Bを補助端子14a,14b及び14c,14dに装着したときに、端子スプリング48の係止位置が上下方向で重ならないようにしている。
さらに、絶縁ケース45の底板部45aの前端側には、
図12に示すように、下面に下方に突出する係合突起45xが形成されている。この係合突起45xは、端子部材47のU字状導電性板部47bに形成された貫通孔を通じて後述する端子カバー51の長溝58に形成された係合孔59に係合する。
【0031】
そして、熱動形過負荷リレー10の主端子12u〜12wに個別に主端子用端子変換部32を装着し、補助端子14a,14b及び14c,14dに個別に補助端子用端子変換部33A及び33Bを装着した状態で、主端子用端子変換部32と補助端子用端子変換部33A及び33Bの全てを覆うように合成樹脂材などの絶縁部材で形成された端子カバー51が装着されている。
この端子カバー51は、
図13に示すように、各主端子用端子変換部32を収納する端子部材収納部52と各補助端子用端子変換部33A及び33Bとを個別に収納する端子部材収納部53A及び53Bとが絶縁隔壁54で区切られて形成されている。
【0032】
端子部材収納部52には、
図13に示すように、内周面に端子部材37のU字状導電性板部37bの後面板部37b3に形成された係合板部37b4が係合する係合溝52aが形成されている。
また、端子部材収納部52の上部には、
図5に示すように熱動形過負荷リレー10の主端子12u〜12wを覆う庇部55が形成されている。同様に、端子部材収納部53Aの上部には補助端子14a及び14bを覆う庇部56が形成されている。庇部55には、熱動形過負荷リレー10の隔壁13b及び13cの上端に形成された係合部13gが係合する係合長孔55a及び55bが貫通して形成されている。庇部56には、熱動形過負荷リレー10の隔壁13eの上端に形成された係合部13gが係合する係合長孔56aが貫通して形成されている。
【0033】
また、端子部材収納部52の下面側には、
図9に示すように、主端子用端子変換部32の絶縁ケース35に形成された係合突起35a1が係合する係合孔57が前後方向に延長して形成されている。この係合孔57の前端側に端子カバー51を装着する際に、係合突起35a1を乗り越えてスナップフィット結合するフック部52dが形成されている。
一方、端子部材収納部53Bの下面側には工具の挿通が不能な幅の長溝58が形成され、この長溝58の前端部の底面に補助端子用端子変換部33Bの下面に形成された係合突起45xが係合する係合孔59が貫通して形成されている。なお、
図12に示すように、端子カバー51における端子部材収納部53Bの底板部53cの係合孔59を形成する端部の上面にフック部53dが形成されている。このフック部53dは、端子カバー51を装着する際に、補助端子用端子変換部33Bに形成された係合突起45xを乗り越えてスナップフィット結合する。
【0034】
さらに、端子部材収納部52の上面の後端側には、主端子接続ケーブルの単線、撚り線、フェルール端子付き撚り線等の電気的接続を行う被接続部材としての導電性接続部61を挿入する挿通孔52bが端子スプリング38の傾斜板部38cの先端側に対向させて貫通して形成されている。この挿通孔52bは、
図10に示すように、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61の最大径を挿通可能な端子部材37におけるU字状導電性板部37bの後面板部37b3の内面と面一となる後端面を有する例えば平面から見て方形の開口部52b1と、この開口部52b1の上方に連通し、導電性接続部61の上部側の絶縁カバー部62を収容する収容孔部52b2とで構成されている。
【0035】
ここで、開口部52b1は、平面から見て前後方向の幅が左右方向の幅に比較して長く設定されて、主端子接続ケーブル60の接続時の傾斜を許容するように設定されている。また、収容孔部52b2には、前面側側壁が主端子接続ケーブル60の傾斜状態での挟持を許容する傾斜面52b3が形成されている。
また、端子部材収納部52の上面における挿通孔52bの前面側には、端子スプリング38を押圧して導電性接続部61から離間させるクランプ解除工具を挿通する挿通孔52cが貫通して形成されている。
【0036】
同様に、端子部材収納部53A及び53Bの上面の後端側には、補助端子接続ケーブル(図示せず)の単線、撚り線、フェルール端子付き撚り線等の電気的接続部を挿入する挿通孔53aが2つの端子スプリング48と対向するように2つずつ形成されている。また、端子部材収納部53A及び53Bの上面における挿通孔53aの前面側には端子スプリング48を押圧して電気的接続部から離間させるクランプ解除工具を挿通する挿通孔53bが2つずつ貫通して形成されている。
次に、本発明の動作を説明する。
【0037】
図4に示すねじ端子を有する熱動形過負荷リレー10を、スプリング端子を有する熱動形過負荷リレーとして使用するには、先ず、
図4及び
図5に示すように、熱動形過負荷リレー10の主端子12i(i=u、v、w)に個別に主端子用端子変換部32を装着する。同様に、熱動形過負荷リレー10の補助端子14j(j=a,b)に個別に補助端子用端子変換部33Aを装着し、さらに補助端子14k(k=c、d)に個別に補助端子用端子変換部33Bを装着する。
【0038】
主端子12iに対して主端子用端子変換部32を装着するには、先ず、主端子12iの端子板15の雌ねじ部18に螺合している端子ねじ16を座金19とともに取り外す。この状態で、主端子用端子変換部32から突出している端子部材37の端子部37aを端子板15上に載置する。
このとき、端子板15に形成された突条20に端子部材37の端子部37aに形成された係合溝37dを係合させる。端子板15は、側壁13a,13fや隔壁13b〜13eによって回転不能に固定されているので、主端子用端子変換部32が熱動形過負荷リレー10の前端面に対して直角な前後方向に延長するように位置決めされる。
この状態で、座金19を装着した端子ねじ16を端子部材37の貫通孔37cを通じて端子板15の雌ねじ部18に螺合させて締め付ける。
【0039】
このとき、作業者が端子ねじ16の頭部に座金19の上面が接触し、下面が端子部材37の端子部37aの上面に接触させた状態で、係合溝37dが突条20に係合を開始するまでの間は主端子用端子変換部32を手で保持しておく。その後は、作業者が主端子用端子変換部32の保持を解除して、端子ねじ16の締め付けを行ったときに、係合溝37dと突条20とが係合していることにより、位置決めと回り止めの双方の機能を発揮して、端子ねじ16の回転によって主端子用端子変換部32が回転することなく正確に位置決めされて固定される。したがって、主端子12iに対する主端子用端子変換部32の装着作業を短時間で容易に行うことができる。
【0040】
この際、主端子12iの端子板15に形成した突条20が側面から見て半円形状に形成されており、端子部材37の端子部37aに形成した係合溝37dが側面から見て三角形状に形成されている。このため、突条20及び係合溝37dの断面形状が正確に成型されていない場合であっても、三角形状の係合溝37dのセンタリング機能によって位置決め及び回り止めを正確に行うことができる。
【0041】
次いで、補助端子用端子変換部33Bを補助端子14kに個別に装着する。この場合も補助端子14kの端子板15に突条20が形成され、補助端子用端子変換部33Bの端子部材47に係合溝47dが形成されている。このため、主端子12iへの主端子用端子変換部32の装着と同様の手順で補助端子用端子変換部33Bを補助端子14kに個別に装着することができる。この際に、突条20と係合溝47dとによって位置決め機能と回り止め機能とが発揮されて、補助端子14kへの補助端子用端子変換部33Bの装着作業を短時間で容易に行うことができる。
【0042】
さらに、補助端子用端子変換部33Aを補助端子14jに個別に装着する。この場合も補助端子14jの端子板15に突条20が形成され、補助端子用端子変換部33Aの端子部材47に係合溝47dが形成されている。このため、補助端子14jへの補助端子用端子変換部33Bの装着と同様の手順で補助端子用端子変換部33Aを補助端子14jに個別に装着することができる。この際に、突条20と係合溝47dとによって位置決め機能と回り止め機能とが発揮されて、補助端子14jへの補助端子用端子変換部33Bの装着作業を短時間で容易に行うことができる。
【0043】
このようにして、熱動形過負荷リレー10の主端子12u〜12w及び補助端子14a〜14dに対して主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bの装着を完了する。この状態では、
図5及び
図6に示すように、主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bが前後方向に延長し、且つ左右方向に正確に整列されて保持される。
この状態では、熱動形過負荷リレー10の主端子12u〜12w、補助端子14a及び14b、主端子用端子変換部32の端子部材37及び端子スプリング38及び補助端子用端子変換部33A,33Bの端子部材47及び端子スプリング48がむき出しとなっている。このため、主端子12u〜12w、補助端子14a,14b、主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bを覆うように端子カバー51を装着する。
【0044】
この端子カバー51の装着は、先ず、端子カバー51の各端子部材収納部52を主端子用端子変換部32に対向させるとともに、端子部材収納部53A及び53Bを補助端子用端子変換部33A及び33Bに対向させる。この状態で、端子カバー51を熱動形過負荷リレー10の背面側に押し込むことにより、庇部55に形成された係合長孔55a及び55bに熱動形過負荷リレー10の隔壁13b及び13cに形成された係合部13gが係合される。
【0045】
これと同時に、
図9に示すように、フック部52dが主端子用端子変換部32の底面に形成された係合突起35a1を乗り越えて係合突起35a1が係合孔57にスナップフィット係合される。さらに、
図12に示すように、端子部材収納部53Bの下面に形成されたフック部53dが補助端子用端子変換部33Bの底面に形成された係合突起45xを乗り越えて係合突起45xが係合孔59にスナップフィット結合される。
さらに、主端子用端子変換部32のU字状導電性板部47bに形成された係合板部37b4が端子部材収納部52に形成された係合溝52aに係合する。
【0046】
したがって、端子カバー51が主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bを介して熱動形過負荷リレー10に取り外し不能に装着される。すなわち、補助端子用端子変換部33Bの絶縁ケース45に形成された係合突起45xが端子カバー51の端子部材収納部53Bの下面に形成された工具の挿入が不能な長溝58の底部に形成された係合孔59に係合されている。このため、長溝58内には工具を挿入できないことから係合孔59と係合突起45xとの係合状態を離脱させることができず、長溝58、係合孔59、フック部53dで抜け止め機構を構成し、端子カバー51の取り外しが不能となる。
【0047】
なお、端子カバー51に覆われた主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bの何れか1つが故障した場合には、端子カバー51を壊して故障した端子部を交換してから新たな端子カバー51を装着する。
このように、端子カバー51を装着することにより、
図1〜
図3に示す状態となり、主端子12u〜12w、補助端子14a,14b、主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bの導電部が全て覆われる。このため、感電事故を未然に防止することができる。また、主端子用端子変換部32、補助端子用端子変換部33A,33Bが端子カバー51内に形成した絶縁隔壁54によって絶縁されるので、各端子部材間の絶縁を確実に行うことができる。
【0048】
そして、ねじ端子を有する熱動形過負荷リレー10に主端子用端子変換部32及び補助端子用端子変換部33A,33Bと端子カバー51を装着することにより、ねじ端子を有する熱動形過負荷リレーを、スプリング端子を備えた熱動形過負荷リレーとすることができる。
この状態で、端子カバー51の挿通孔52bに主端子接続ケーブル60の単線、撚り線、フェルール端子付き撚り線等の導電性接続部61を挿入すると、端子スプリング38の傾斜板部38cが弾性変形してU字状導電性板部37bの後面板部37b3の係合突起37b5から離間する。このとき、導電性接続部61の先端は端子スプリング38の弾性によって押圧されて後面板部37b3の内面に接触しながら下降する。
【0049】
このため、導電性接続部61は、その先端が係合突起37b5の傾斜面SL1に係合し、先端が傾斜面SL1の頂点を乗り越えた後、端子スプリング38の傾斜板部38cの先端が導電性接続部61の背面側に接触する状態となり、導電性接続部61をU字状導電性板部37bの後面板部37b3の内面側に押圧する。この結果、
図10に示すように、導電性接続部61の先端が後面板部37b3の係合突起37b5より下側の接触点P1に接触し、導電性接続部61の中間部が係合突起37b5の頂点の接触点P2に接触する。
【0050】
したがって、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61は、後面板部37b3との対向側面が後面板部37b3に接触点P1及びP2の2点で接触し、後面板部37b3とは反対側の側面が接触点P1及びP2の中間の接触点P3で端子スプリング38の傾斜板部38cの先端に接触する3点支持状態となる。つまり、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61がスプリング端子39を構成するU字状導電性板部37b及び端子スプリング38のみによって3点支持状態で挟持される。
このとき、端子スプリング38の傾斜板部38cの先端が主端子接続ケーブル60の導電性接続部61に鋭角で接触しているので、導電性接続部61が抜け出す方向に移動しようとしたときに傾斜板部38cの先端が導電性接続部61に食い込むことになり、導電性接続部61の抜け出しが防止されるロック状態となる。
【0051】
このように、本実施形態によると、前述した先行技術のように、主端子接続ケーブル60を支持する際に、スプリング端子以外の挿通孔などを必要としない。このため、スプリング端子39で挟持する主端子接続ケーブル60の導電性接続部61の外径寸法が小さくなった場合でも、スプリング端子39での3点接触状態を維持することができる。これにより、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61の外径寸法にかかわらず、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61の傾斜角を略一定に維持して挟持することができ、導電性接続部61の装着時の姿勢を安定させることができる。
【0052】
しかも、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61がU字状導電性板部37bの後面板部37b3に2点接触状態で挟持されるので、導電性接続部61とU字状導電性板部37bとの電気的接続を確実に行うことができ、接触不良の発生を抑制することができる。さらに、端子スプリング38の前面板部38aがU字状導電性板部37bの前面板部37b1に接触しているので、端子スプリング38も電気的接触部材とすることができ、より確実に電気的接続を行うことができる。
【0053】
また、端子カバー51に形成した主端子接続ケーブル60の導電性接続部61を挿通する挿通孔52bにおける開口部52b1の前後方向の幅を左右方向の幅に比較して広くしたので、主端子接続ケーブル60をスプリング端子39で挟持する際の傾斜を許容することができる。さらに、主端子接続ケーブル60における導電性接続部61の上部側の絶縁カバー部62を収容する収容孔部52b2に傾斜面52b3が形成されていることにより、主端子接続ケーブル60をスプリング端子39で挟持する際の傾斜に支障をきたすことなく容易に行うことができる。
【0054】
さらに、端子スプリング38の傾斜板部38cは、
図10に示すように、湾曲部38b側の傾斜角が急な第1傾斜板部38c1と、この第1傾斜板部38c1に対して傾斜角が緩やかとなる第2傾斜板部38c2とでドッグレッグ状に形成されている。このため、主端子接続ケーブル60の導電性接続部61を挿通していない状態では、
図10で一点鎖線図示のように、傾斜板部38cの先端がU字状導電性板部37bの後面板部37b3の係合突起37b5に係止されたときに、傾斜板部38cの屈曲点が傾斜板部38cを直線的に形成した場合に比較して低い位置となる。したがって、主端子接続ケーブル60の挿通孔52bの開口部52b1をU字状導電性板部37bの後面板部37b3の上端に接近させることができ、この分端子カバー51の上下方向の高さを低くして小型化することができる。
【0055】
また、主端子接続ケーブル60を端子スプリング38及びU字状導電性板部37b間に挟持させる際に、端子スプリング38の弾性に抗する大きな力が必要となる。このため、主端子用端子変換部32の端子部材37の端子部37aとは反対側に片持ち荷重が掛かる。しかしながら、U字状導電性板部37bの底板部37b2の係合板部37b4が端子カバー51の端子部材収納部52の内面に形成された係合溝52aに係合している。このため、主端子用端子変換部32に掛かる片持ち荷重を端子カバー51に分散させて支持することができ、端子部材37の端子部37aの変形を防止することができる。
【0056】
また、スプリング端子39から主端子接続ケーブル60の導電性接続部61を取り外すには、工具挿通孔52c(又は53b)にマイナスのネジ回し等の工具を差し込んで端子スプリング38(又は48)の傾斜板部38c(又は48c)の先端を導電性接続部61から離間させる。これにより、導電性接続部61のロック状態を解除して導電性接続部61を引き出すことができる。
同様に、補助端子用端子変換部33A,33Bについても図示しないが補助端子接続ケーブルの導電性接続部を挿入孔を通じて挿入することにより、端子スプリング38及びU字状導電性板部47bによって3点支持されて挟持される。したがって、上述した主端子用端子変換部32と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、U字状導電性板部37bと端子スプリング38とが接触する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、端子スプリング38をU字状導電性板部37bと切り離して配置するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、端子スプリング38の傾斜板部38cをドッグレッグ状に形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜板部38cを平板状に形成するようにしてもよい。
【0058】
さらに、上記実施形態では、U字状導電性板部37bの後面板部37b3と端子スプリング38によってスプリング端子39を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前後反転させてU字状導電性板部37bの前面板部37b1に係合突起37b5と同様の係合突起を形成し、この係合突起に端子スプリング38の傾斜板部38cを係止するようにしてよい。要は、導電性板部に係合突起を形成し、端子スプリング38と協動して接続ケーブルの導電性接続部を3点支持できればよいものである。
【0059】
ここで、係合突起37b5の形状は傾斜面SL1及びSL2とで形成する場合に限らず、傾斜面SL1に代えて円筒面を形成したり、三角形状の断面に代えて台形状の断面としたりすることができ、接続ケーブルの導電性接続部の下降に支障を与えないように構成すればよい。
また、上記実施形態では、
図5に示すように、補助端子用端子変換部33A及び補助端子用端子変換部33Bを熱動形過負荷リレー10の補助端子14j及び14kに装着した状態で、補助端子用端子変換部33Bが補助端子用端子変換部33Aの後端から完全に露出している場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、補助端子用端子変換部33Bの露出領域を端子カバー51の挿通孔53a及び53bを外部に望ませることができる程度に狭めるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、熱動形過負荷リレー10に接続する端子変換部に本発明に係る端子接続構造を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、熱動形過負荷リレー10や電磁接触器などの任意の電気機器の接続端子構造に本発明を適用することができる。この場合、主端子のみを有し補助端子を有さない電気機器にも本発明を適用することができる。