特許第6777224号(P6777224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777224
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】損傷検出装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20201019BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-511040(P2019-511040)
(86)(22)【出願日】2017年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2017014537
(87)【国際公開番号】WO2018185934
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔平
(72)【発明者】
【氏名】葛西 茂
(72)【発明者】
【氏名】清川 裕
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−242363(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/152076(WO,A1)
【文献】 特開2009−229070(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183313(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0238438(US,A1)
【文献】 特開2004−301792(JP,A)
【文献】 原田 和洋 他,”鉄道橋の動的応答における部材振動性状の簡易同定法”,コンクリート工学年次論文集,2008年,Vol.30,No.3,pp.13-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出装置であって、
前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する取得部と、
取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する特定部と、
特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する判定部と、
を備え
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定し、または、
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での前記位相および前記振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定する、ことを特徴とする損傷検出装置。
【請求項2】
前記剛体振動の情報は、前記卓越周波数、前記卓越周波数における位相、および前記卓越周波数における振幅を含むことを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、特定された前記剛体振動の情報を、前記構造物において過去の基準時期に取得された前記剛体振動の情報と比較することによって、前記損傷を判定することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記構造物において前記基準時期に取得された前記剛体振動の情報に対する、特定された前記剛体振動の情報の変化度に基づいて、前記損傷を判定することを特徴とする、請求項に記載の損傷検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記構造物において前記基準時期に取得された前記剛体振動の情報に含まれる前記卓越周波数に対する、特定された前記剛体振動の情報に含まれる前記卓越周波数の変化度に基づいて、前記損傷を判定することを特徴とする、請求項に記載の損傷検出装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記振動に含まれる減衰自由振動に基づいて前記卓越周波数を取得することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記減衰自由振動に含まれる各周波数成分の振幅の大きさに基づいて前記卓越周波数を取得することを特徴とする、請求項に記載の損傷検出装置。
【請求項8】
前記構造物は複数の前記支持物を含み、
複数の前記地点における前記剛体振動の情報を互いに比較することによって、複数の前記支持物のうちいずれに前記損傷があるかを推定する推定部をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【請求項9】
被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出方法であって、
前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する工程と、
取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する工程と、
特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する工程と、
を有し、
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定する工程、または、
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での前記位相および前記振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定する工程を有する損傷検出方法。
【請求項10】
被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出プログラムであって、
コンピュータに、
前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する工程と、
取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する工程と、
特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する工程と、
を実行させ、
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定する工程を実行させ、または、
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での前記位相および前記振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定する工程を実行させる損傷検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の損傷を検出する装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の損傷(欠陥)の検査は目視によって行われてきた。目視検査では、大きな構造物を検査する際に時間が掛かり、また外部から見えない場所(内部や入り組んだ部位等)に生じた損傷を検出することはできない。そこで、構造物を効率的に検査するために、構造物の振動に基づいて損傷を検出する技術が考案された。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、振動センサによって列車のレールの振動を測定し、該振動のピーク周波数(卓越周波数)が予め定められた許容範囲外の場合に該レールは破断していると判定する。該技術では、測定対象であるレールそのものに振動センサが設けられる。
【0004】
特許文献2には、被支持物を支持物によって支える構造において、該被支持物の振動を加速度センサによって測定し、正常時のスペクトルと大きな差のある周波数を抽出する。その後、該技術は、抽出された周波数についてウェーブレット変換を行い、得られたスカログラムにおいて強度の経時変化が小さい場合に異常が発生していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−158919号公報
【特許文献2】特開2016−50404号公報
【発明の概要】
【0006】
支持物が被支持物を支える構造を有する構造物では、支持物は被支持物よりも小さいことが多い。また、支持物は被支持物の下に位置するため、アクセスしづらい場合がある。このような構造物に特許文献1に記載の技術を適用すると、支持物および被支持物の両方にセンサを設ける必要がある。そのため、設置されるセンサの数が多くなり、高コストである。また、支持物が小さく、アクセスしづらいことから、支持物にセンサを設けることが難しい場合がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、支持物および被支持物の振動をまとめて検査するため、支持物および被支持物のどちらに損傷があるのかを判定できない。例えば特許文献2に記載の技術は、支持物および被支持物の間に隙間があることを検出することはできるが、該隙間の原因が支持物および被支持物のどちらにあるかを知ることはできない。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みて行われたものであって、被支持物の振動を測定することによって支持物の損傷を検出できる損傷検出装置、方法およびプログラムを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出装置であって、前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する取得部と、取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する特定部と、特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する判定部と、を備え、前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定し、または、前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での前記位相および前記振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定する
【0010】
本発明の第2の態様は、被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出方法であって、前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する工程と、取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する工程と、特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する工程と、を有し、前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定する工程、または、前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での前記位相および前記振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定する工程を有する
【0011】
本発明の第3の態様は、被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出プログラムであって、コンピュータに、前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する工程と、取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する工程と、特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する工程と、を実行させ、前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定する工程を実行させ、または、前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での前記位相および前記振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定する工程を実行させる

【0012】
本発明によれば、被支持物の振動を測定することによって支持物の損傷を検出するため、支持物にセンサを設ける必要がなく、センサの数を低減できる。また、構造物の形状によって支持物自体にセンサを設けるのが難しい場合であっても、支持物の損傷を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る損傷検出システムの模式図である。
図2】第1の実施形態に係る損傷検出装置のブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る剛体振動の模式図である。
図4】第1の実施形態に係る振動情報のグラフを示す図である。
図5】第1の実施形態に係る損傷検出装置の例示的な機器構成を示す概略構成図である。
図6】第1の実施形態に係る損傷検出方法のフローチャートを示す図である。
図7】実施例に係る損傷検出方法の模式図である。
図8】第2の実施形態に係る損傷検出装置のブロック図である。
図9】第2の実施形態に係る損傷検出方法の模式図である。
図10】第2の実施形態に係る損傷検出方法のフローチャートを示す図である。
図11】各実施形態に係る損傷検出装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る損傷検出システム1の模式図である。損傷検出システム1は、振動を測定する振動センサ20と、振動センサ20による測定値を用いて損傷検出を行う損傷検出装置100とを備える。構造物10は、被支持物11と、被支持物11を支持する支持物12とを含む。被支持物11は、棒、板等の任意の形状を有する部材である。支持物12は、錐体、柱体等の任意の形状を有する、被支持物11とは別体の部材である。支持物12は、被支持物11の重力方向の下側に接して支える。被支持物11の形状および大きさによって、被支持物11を安定的に支えることが可能な数および配置の支持物12が設けられる。図1の例では、1つの棒状の被支持物11に対して、該被支持物11の両端近傍にそれぞれ1つ(合計2つ)の支持物12が設けられている。
【0016】
振動センサ20は、測定対象物(被支持物11)の変位、速度、加速度の少なくとも1つを測定することによって振動を検出するセンサである。振動センサ20として、静電容量を用いるもの、過電流を用いるもの、ドップラー効果を用いるもの、圧電効果を用いるもの等、測定対象物の大きさや性質に応じて任意のセンサが用いられる。振動センサ20は、被支持物11の振動情報を測定し、データとして損傷検出装置100に送信する。振動センサ20は、損傷検出装置100に直接接続されてもよく、無線通信によって接続されてもよく、ネットワークを介して接続されてもよい。
【0017】
振動センサ20は、被支持物11の内部又は表面に設けられる。被支持物11の形状および大きさによって、被支持物11全体の振動を測定可能な数および配置の振動センサ20が設けられる。振動センサ20は、各支持物12の近傍、および2つの支持物12の中間に設けられることが望ましい。換言すると、2つの支持物12の中間の振動センサ20は、該2つの支持物12よりも、該2つの支持物12を結ぶ線分の中点に近い位置に設けられる。また、各支持物12の近傍の振動センサは、該中点よりも該2つの支持物12に近い位置に設けられる。このような構成により、振動センサ20は剛体振動および弾性振動を区別するための十分な振動情報を取得することができ、後述の処理において剛体振動の振動モードを高精度に特定することができる。図1の例では、1つの被支持物11に対して、該被支持物11上の2つの支持物12の近傍および中間にそれぞれ1つ(合計3つ)の振動センサ20が設けられている。
【0018】
損傷検出装置100は、振動センサ20によって測定された被支持物11の振動情報に基づいて、該被支持物11を支持する支持物12の損傷を検出する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る損傷検出装置100のブロック図である。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示したもの以外のデータの流れがあってよい。図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に別れて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0020】
損傷検出装置100は、処理部として、センサ情報入力部110、卓越周波数取得部120、剛体振動特定部130、損傷判定部140および損傷情報出力部150を備える。また、損傷検出装置100は、記憶部として、基準剛体振動記憶部160を備える。
【0021】
図3は、本実施形態に係る剛体振動の模式図である。振動センサ20が測定する被支持物11の振動は、剛体振動および弾性振動が混合したものである。剛体振動は、構造物の変形を伴わない構造物全体の振動である。一方、弾性振動は、構造物の変形を伴って構造物内で発生する振動である。
【0022】
本実施形態のような被支持物11および支持物12からなる構造物において、剛体振動の特性は、被支持物11の質量および支持物12の剛性によって決まる。剛体振動の特性は、振動モードにおける卓越周波数、減衰比、および振動形状(すなわち位相および振幅)である。そのため、被支持物11の質量が一定であれば、剛体振動の特性から支持物12の剛性の変化(すなわち支持物12における損傷の発生)を知ることができる。
【0023】
図3の上図に示すように、支持物12に損傷Bが生じていない場合(すなわち通常時)には、被支持物11には特性A1の剛体振動が起こる。図3の下図に示すように、支持物12に損傷Bが生じている場合には、被支持物11には通常時の特性A1とは異なる特性A2の剛体振動が起こる。損傷Bは、支持物12に生じ得るひび、ずれ、固着等であり、支持物12の剛性に影響を与えるものである。剛体振動の特性A1、A2は視認性のために図3中に矢印で示されているが、実際には卓越周波数、減衰比、および振動形状である。
【0024】
損傷検出装置100は、被支持物11の複数の地点で(すなわち複数の振動センサ20によって)測定された被支持物11の振動情報から剛体振動情報を特定し、特定された剛体振動情報に基づいて被支持物11を支持する支持物12の損傷の有無を判定する。
【0025】
センサ情報入力部110は、複数の振動センサ20からそれぞれ振動情報のデータを受け取り、損傷検出装置100に入力する。このときセンサ情報入力部110は、振動センサ20から振動情報のデータが損傷検出装置100によって利用できるように、振動情報のデータに対して所定の変換を行ってもよい。
【0026】
図4は、本実施形態に係る振動情報のグラフを示す図である。図4の左図は振動センサ20によって測定された被支持物11の振動の時間変化を示すグラフであり、横軸は時間(任意単位)であり、縦軸は振幅(任意単位)である。図4の左図には、被支持物11に対して外力が加えられはじめた時間が矢印で示されている。被支持物11に対してある瞬間に外力が加わり始め、その後外力が除去され作用しなくなった場合、振動の振幅は、まず増大しその後徐々に減衰する。このように外力が作用していない状態で減衰する振動を減衰自由振動という。
【0027】
卓越周波数取得部120は、センサ情報入力部110によって入力された振動情報から振動の時間変化の波形を生成する。そして卓越周波数取得部120は、振動の時間変化の波形の中で減衰自由振動の範囲を取得し、該減衰自由振動の範囲に対してフーリエ変換を行うことによって、該減衰自由振動に含まれる各周波数成分の周波数分布を生成する。振動の周波数分布は、複数の振動センサ20についてそれぞれ生成される。振動の時間変化の波形における減衰自由振動の範囲は、卓越周波数取得部120によって波形から特定されてもよく、利用者によって指定されてもよい。フーリエ変換の方法としては、周知の方法を用いることができる。
【0028】
図4の右図は振動の周波数分布を示すグラフであり、横軸は周波数(任意単位)であり、縦軸は振幅(任意単位)である。振動の周波数分布には、振幅が極大値をとるピークが出現する。卓越周波数取得部120は、振動の周波数分布においてピークがある周波数を卓越周波数C(ピーク周波数ともいう)として取得する。このとき、卓越周波数取得部120は、振幅が大きい順に所定の数(少なくとも1つ)の卓越周波数Cを取得してもよい。あるいは、卓越周波数取得部120は、振幅が所定の閾値以上又は所定の閾値より大きい少なくとも1つの卓越周波数Cを取得してもよい。卓越周波数Cを取得する基準となる数および振幅の閾値は、被支持物11の大きさおよび形状に応じて設定される。卓越周波数Cは、複数の振動センサ20についてそれぞれ取得される。
【0029】
剛体振動特定部130は、卓越周波数取得部120によって取得された卓越周波数Cから、剛体振動の周波数を特定する。第1の方法として、剛体振動特定部130は、それぞれの卓越周波数Cにおける振動形状(すなわち位相および振幅)の複数の地点間のばらつきに基づいて、剛体振動の周波数を特定する。被支持物11の変形を伴わない剛体振動の振動モードにおいては、被支持物11上の複数の地点における位相および振幅のばらつきが小さい。そのため、剛体振動特定部130は、位相および振幅のばらつきが小さい卓越周波数Cを、剛体振動の周波数であると推定する。
【0030】
具体的には、まず剛体振動特定部130は、複数の振動センサ20から、それぞれの卓越周波数Cにおける位相および振幅を取得する。次に剛体振動特定部130は、それぞれの卓越周波数Cについて、複数の振動センサ20(すなわち被支持物11上の複数の地点)間の位相のばらつきおよび振幅のばらつきを算出する。位相および振幅のばらつきとして、分散、標準偏差等、値のばらつきの程度を表すことが可能な任意の統計量を用いることができる。最後に剛体振動特定部130は、位相および振幅のばらつきが所定の条件を満たす卓越周波数Cを、剛体振動の周波数として特定する。位相および振幅のばらつきの条件は、例えば位相のばらつきが所定の値未満(又は以下)であり、かつ振幅のばらつきが所定の値未満(又は以下)であることである。所定の条件を満たす卓越周波数Cが複数ある場合には、最も位相および振幅のばらつきが小さい卓越周波数Cを剛体振動の周波数として特定してもよい。
【0031】
第2の方法として、剛体振動特定部130は、卓越周波数Cにおける振動形状(すなわち位相および振幅)を予め定められた剛体振動の振動形状と比較することによって、剛体振動の周波数を特定する。剛体振動の振動モードは、予め実験やシミュレーションを行うことによって定義できる。そこで、それぞれの卓越周波数Cについて、測定された振動モードと、予め定められた剛体振動の振動モードとの相関を算出する。剛体振動特定部130は、予め定められた剛体振動との相関が高い振動モードの卓越周波数Cを、剛体振動の周波数であると推定する。
【0032】
具体的には、モード間の相関を評価するためにモード信頼性評価基準(Modal Assurance Criterion:MAC)を用いる。剛体振動特定部130は、それぞれの卓越周波数Cについて、以下の式(1)を用いて相関値(MAC値)を算出する。
【0033】
【数1】
ラベル記号のIは予め定められた剛体振動の基準値を表し、Fは1つの卓越周波数Cにおける測定値を表す。φは振動形状ベクトルであり、以下の式(2)によって表される。
【0034】
【数2】
nは被支持物11上の各地点(すれぞれ複数の振動センサ20のそれぞれ)を表し、rは振幅を表し、θは位相を表す。
【0035】
相関値(MAC値)は、その値が大きいほど(1に近いほど)2つのモード間の相関が高いことを示す。剛体振動特定部130は、相関値が所定の条件を満たす卓越周波数Cを、剛体振動の周波数として特定する。相関値の条件は、例えば相関値が所定の値より大きい(又は以上である)ことである。所定の条件を満たす卓越周波数Cが複数ある場合には、最も相関値が大きい卓越周波数Cを剛体振動の周波数として特定してもよい。
【0036】
さらに剛体振動特定部130は、剛体振動の周波数として特定された卓越周波数Cおよび該卓越周波数Cにおける振動形状(すなわち位相および振幅)を剛体振動情報として特定する。剛体振動情報の卓越周波数C、位相および振幅は、複数の振動センサ20の測定値の平均値から取得されてもよい。また、剛体振動情報の卓越周波数Cは、複数の振動センサ20のいずれかの測定値から取得されてもよい。剛体振動特定部130による剛体振動の特定のために、上述の第1の方法および第2の方法に限らず、卓越周波数Cが剛体振動の周波数か否かを判定可能な任意の方法を用いることができる。
【0037】
損傷判定部140は、剛体振動特定部130によって特定された剛体振動情報(卓越周波数C、位相および振幅)に基づいて、被支持物11を支持する支持物12の損傷の有無を判定する。具体的には、まず過去の基準時期に剛体振動特定部130によって剛体振動情報(卓越周波数C、位相および振幅)を予め取得し、基準剛体振動情報として基準剛体振動記憶部160に記録する。基準時期は、例えば構造物10の初期状態時等、構造物10に損傷が発生していないとみなせる時期である。
【0038】
損傷判定部140は、損傷検出を行う際に剛体振動特定部130によって取得された剛体振動情報を受け取るとともに、基準剛体振動記憶部160から基準剛体振動情報を読み出す。次に損傷判定部140は、基準剛体振動情報に対する剛体振動情報の変化度を算出する。本実施形態では、剛体振動情報の変化度として、剛体振動の卓越周波数Cの変化率、該卓越周波数Cにおける位相の変化率、および該卓越周波数Cにおける振幅の変化率を用いる。剛体振動情報の変化度として、変化率のほか、卓越周波数C、位相および振幅の変化量や変化前後のユークリッド距離等、剛体振動情報の変化の程度を表すことが可能な任意の指標を用いることができる。
【0039】
損傷判定部140は、基準剛体振動情報からの剛体振動情報の変化度が所定の条件を満たす場合に、支持物12に損傷があることを判定する。変化度の条件は、例えば卓越周波数C、位相および振幅の少なくとも1つの変化率が所定の値より大きい(又は以上である)ことである。
【0040】
損傷情報出力部150は、損傷判定部140によって判定された支持物12の損傷の有無を示す情報を、ディスプレイによる表示、プリンタによる紙印刷、記憶装置へのデータ記録等の任意の方法で出力する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る損傷検出装置100は、被支持物11上の複数の地点で振動センサ20によって測定された振動情報から剛体振動情報を特定し、特定された剛体振動情報に基づいて被支持物11を支持する支持物12の損傷を検出する。そのため、支持物12に振動センサ20を設ける必要がない。
【0042】
図5は、本実施形態に係る損傷検出装置100の例示的な機器構成を示す概略構成図である。損傷検出装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、記憶装置103と、インタフェース104とを備える。損傷検出装置100は独立した装置でよく、あるいは他の装置と一体に構成されてよい。
【0043】
インタフェース104は、データの送受信を行う通信部であり、有線通信および無線通信の少なくとも一方の通信方式を実行可能に構成される。インタフェース104は、該通信方式に必要なプロセッサ、電気回路、アンテナ、接続端子等を含む。インタフェース104は、CPU101からの信号に従って、該通信方式を用いて通信を行う。インタフェース104は、例えば振動センサ20と通信を行う。
【0044】
記憶装置103は、損傷検出装置100が実行するプログラムや、プログラムによる処理結果のデータ等を記憶する。記憶装置103は、読み取り専用のROM(Read Only Memory)や、読み書き可能のハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等を含む。また、記憶装置103は、CD−ROM等のコンピュータ読取可能な可搬記憶媒体を含んでもよい。
【0045】
メモリ102は、CPU101が処理中のデータや記憶装置103から読み出されたプログラムおよびデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0046】
CPU101は、処理に用いる一時的なデータをメモリ102に一時的に記録し、記憶装置103に記録されたプログラムを読み出し、該プログラムに従って該一時的なデータに対して種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するプロセッサである。また、CPU101は、記憶装置103に処理結果のデータを記録し、またインタフェース104を介して処理結果のデータを外部に送信する。
【0047】
本実施形態においてCPU101は、記憶装置103に記録されたプログラムを実行することによって、図2のセンサ情報入力部110、卓越周波数取得部120、剛体振動特定部130、損傷判定部140および損傷情報出力部150として機能する。また、メモリ102又は記憶装置103は、基準剛体振動記憶部160として機能する。
【0048】
損傷検出装置100は、図5に示す具体的な構成に限定されない。損傷検出装置100は、1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されていてもよい。損傷検出装置100に含まれる各部は、それぞれ電気回路構成により実現されていてもよい。ここで、電気回路構成とは、単一のデバイス、複数のデバイス、チップセット又はクラウドを概念的に含む文言である。
【0049】
また、損傷検出装置100の少なくとも一部がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてよい。すなわち、損傷検出装置100を実現するための機能の少なくとも一部が、ネットワーク経由で実行されるソフトウェアによって実行されてよい。
【0050】
図6は、本実施形態に係る損傷検出方法のフローチャートを示す図である。図6のフローチャートは、例えば利用者が損傷検出装置100に対して所定の指示を入力することによって開始される。
【0051】
まず、センサ情報入力部110は、複数の振動センサ20からそれぞれ振動情報のデータを受け取り、損傷検出装置100に入力する(ステップS101)。卓越周波数取得部120は、ステップS101で入力された振動情報から振動の周波数分布を生成し、該周波数分布においてピークがある周波数を卓越周波数Cとして取得する(ステップS102)。
【0052】
剛体振動特定部130は、ステップS102で取得された卓越周波数Cから、剛体振動の周波数を特定する(ステップS103)。剛体振動の周波数を特定するために、上述の第1の方法のように被支持物11上の振動形状のばらつきを用いてもよく、上述の第2の方法のように予め定められた剛体振動の振動形状との相関を用いてもよい。
【0053】
損傷判定部140は、ステップS103で特定された剛体振動の剛体振動情報(卓越周波数C、位相および振幅)に基づいて、被支持物11を支持する支持物12の損傷の有無を判定する(ステップS104)。最後に、損傷情報出力部150は、ステップS104で判定された支持物12の損傷の有無を示す情報を、任意の方法で出力する(ステップS105)。
【0054】
損傷検出装置100のCPU101は、図6に示す損傷検出方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、CPU101は、図6に示す損傷検出方法を実行するための損傷検出プログラムをメモリ102又は記憶装置103から読み出し、該プログラムを実行して損傷検出装置100の各部を制御することによって図6に示す損傷検出方法を実行する。
【0055】
本実施形態に係る損傷検出装置100によれば、構造物10において被支持物11上に設けられた振動センサ20によって測定される振動情報に基づいて支持物12の損傷の有無を判定できるため、支持物12上に振動センサ20を設ける必要がない。そのため、支持物12が被支持物11に隠れており支持物12に振動センサ20を設けることが難しい場合であっても、支持物12の損傷を検出できる。また、構造物10の損傷検出に必要な振動センサ20の数を低減することができる。
【0056】
(実施例)
第1の実施形態に係る損傷検出方法の実験が行われた。図7は、本実施例に係る損傷検出方法の模式図である。図7に示すように、通常状態の構造物10および損傷模擬状態の構造物10が用意された。通常状態では支持物12によって被支持物11が支持されており、損傷模擬状態では支持物12および支持物12とは剛性の異なる支持物12aによって被支持物11が支持されている。剛性の異なる支持物12aは、損傷が発生した状態の支持物12を模擬している。被支持物11の表面には、複数の振動センサ20が設けられている。なお、実際には通常状態の構造物10に対する測定を行った後に、支持物12を支持物12aに交換することによって損傷模擬状態の構造物10に対する測定を行った。
【0057】
通常状態の構造物10および損傷模擬状態の構造物10に対して、それぞれハンマによって外力が加えられた。その後、第1の実施形態の損傷検出方法に従って振動センサ20によって測定された振動情報から卓越周波数を取得し、取得された卓越周波数から剛体振動の卓越周波数を特定した。
【0058】
その結果、通常状態の構造物10において測定された剛体振動の卓越周波数は80Hzであり、損傷模擬状態の構造物10において測定された剛体振動の卓越周波数は70Hzであった。すなわち、通常状態の卓越周波数を基準とした損傷模擬状態の卓越周波数の変化率は−14%である。このように支持物12の剛性が変化する(すなわち支持物12に損傷が発生する)と、剛体振動情報が変化するため、剛体振動情報に基づいて損傷の有無を判定できることが確認された。
【0059】
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、支持物の損傷の有無を判定する。それに加えて、本実施形態は、損傷がどの位置にあるか、すなわちいずれの支持物上にあるかを推定する。
【0060】
図8は、本実施形態に係る損傷検出装置100のブロック図である。図8において、矢印は主なデータの流れを示しており、図8に示したもの以外のデータの流れがあってよい。図8において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図8に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に別れて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0061】
本実施形態に係る損傷検出装置100は、図2の構成に加えて、損傷位置推定部170を備える。損傷位置推定部170は、被支持物11の各地点(すなわち各振動センサ20)の剛体振動情報を比較することによって、どの支持物12に損傷があるのかを推定する。
【0062】
図9は、本実施形態に係る損傷検出方法の模式図である。ここでは、構造物10において損傷Bのない支持物12bおよび損傷Bのある支持物12cによって被支持物11が支持されている状態を想定する。損傷検出装置100は、第1の実施形態と同様の方法によって、振動センサ20によって測定された振動情報から卓越周波数を取得し、取得された卓越周波数から剛体振動情報を特定し、特定された剛体振動情報に基づいて損傷の有無を判定する。
【0063】
損傷判定部140によって損傷があると判定された場合に、損傷位置推定部170は、被支持物11の複数の地点(すなわち複数の振動センサ20)における剛体振動情報(卓越周波数、位相および振幅)同士を比較する。図9の例では、損傷Bのある支持物12cに最も近い振動センサ20の測定値は、他の振動センサ20とは異なる測定値となる。そのため、複数の振動センサ20同士で剛体振動情報を比較することによって、損傷Bのある支持物12cに近い振動センサ20を判定することができる。
【0064】
剛体振動情報の比較のために、損傷位置推定部170は、他の振動センサ20の剛体振動情報(卓越周波数、位相および振幅)の平均値に対する、1つの振動センサ20の剛体振動情報の類似度を算出する。本実施形態では、剛体振動情報の類似度として、剛体振動の卓越周波数Cの変化率、該卓越周波数Cにおける位相の変化率、および該卓越周波数Cにおける振幅の変化率を用いる。剛体振動情報の類似度として、変化率のほか、卓越周波数C、位相および振幅の変化量や、平均値に対するユークリッド距離等、剛体振動情報の類似の程度を表すことが可能な任意の指標を用いることができる。
【0065】
次に損傷位置推定部170は、他の振動センサ20の剛体振動情報の平均値に対する変化率が所定の閾値より大きい(又は以上である)剛体振動情報を有する振動センサ20を選択する。あるいは、損傷位置推定部170は、他の振動センサ20の剛体振動情報の平均値に対する変化率が最も大きい剛体振動情報を有する振動センサ20を選択してもよい。最後に、損傷位置推定部170は、選択された振動センサ20に最も近い支持物12(支持物12c)に損傷Bがあると推定する。
【0066】
図10は、本実施形態に係る損傷検出方法のフローチャートを示す図である。図10のフローチャートは、例えば利用者が損傷検出装置100に対して所定の指示を入力することによって開始される。
【0067】
ステップS201〜S204は、図6のステップS101〜S104と同様である。
【0068】
ステップS204で損傷がないと判定された場合には(ステップS205のNO)、ステップS207に進む。ステップS204で損傷があると判定された場合に(ステップS205のYES)、損傷位置推定部170は、複数の振動センサ20の剛体振動情報(卓越周波数、位相および振幅)を比較することによって、他の振動センサ20の剛体振動情報と異なる剛体振動情報を有する振動センサ20を選択する。そして、損傷位置推定部170は、選択された振動センサ20に最も近い支持物12に損傷があると推定する(ステップS206)。
【0069】
最後に、損傷情報出力部150は、ステップS204で判定された支持物12の損傷の有無を示す情報およびステップS206で推定された損傷のある支持物12を示す情報を、任意の方法で出力する(ステップS207)。
【0070】
損傷検出装置100のCPU101は、図10に示す損傷検出方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、CPU101は、図10に示す損傷検出方法を実行するための損傷検出プログラムをメモリ102又は記憶装置103から読み出し、該プログラムを実行して損傷検出装置100の各部を制御することによって図10に示す損傷検出方法を実行する。
【0071】
本実施形態に係る損傷検出装置100によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、さらにいずれの支持物12に損傷があるのかを推定できる。
【0072】
(その他の実施形態)
図11は、上述の各実施形態に係る損傷検出装置100の概略構成図である。図11には、損傷検出装置100が、被支持物の振動を測定することによって支持物の損傷を検出できる装置として機能するための構成例が示されている。損傷検出装置100は、被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出するために、前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する卓越周波数取得部120(取得部)と、取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する剛体振動特定部130(特定部)と、特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する損傷判定部140(判定部)と、を備える。
【0073】
本発明は、例えば橋台上の支承部によって橋桁を支持する構造を有する橋梁等、任意の構造物に適用できる。本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0074】
上述の実施形態の機能を実現するように該実施形態の構成を動作させるプログラム(より具体的には、図6、10に示す処理をコンピュータに実行させる損傷検出プログラム)を記録媒体に記録させ、該記録媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記録媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記録媒体はもちろん、そのプログラム自体も各実施形態に含まれる。
【0075】
該記録媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。また該記録媒体に記録されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作して処理を実行するものも各実施形態の範疇に含まれる。
【0076】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0077】
(付記1)
被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出装置であって、
前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する取得部と、
取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する特定部と、
特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する判定部と、
を備える損傷検出装置。
【0078】
(付記2)
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅のばらつきに基づいて、前記剛体振動の情報を特定することを特徴とする、付記1に記載の損傷検出装置。
【0079】
(付記3)
前記特定部は、複数の前記地点における前記卓越周波数での位相および振幅を、予め定められた前記剛体振動の位相および振幅と比較することによって、前記剛体振動の情報を特定することを特徴とする、付記1に記載の損傷検出装置。
【0080】
(付記4)
前記剛体振動の情報は、前記卓越周波数、前記卓越周波数における位相、および前記卓越周波数における振幅を含むことを特徴とする、付記1〜3のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【0081】
(付記5)
前記判定部は、特定された前記剛体振動の情報を、前記構造物において過去の基準時期に取得された前記剛体振動の情報と比較することによって、前記損傷を判定することを特徴とする、付記1〜4のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【0082】
(付記6)
前記判定部は、前記構造物において前記基準時期に取得された前記剛体振動の情報に対する、特定された前記剛体振動の情報の変化度に基づいて、前記損傷を判定することを特徴とする、付記5に記載の損傷検出装置。
【0083】
(付記7)
前記判定部は、前記構造物において前記基準時期に取得された前記剛体振動の情報に含まれる前記卓越周波数に対する、特定された前記剛体振動の情報に含まれる前記卓越周波数の変化度に基づいて、前記損傷を判定することを特徴とする、付記6に記載の損傷検出装置。
【0084】
(付記8)
前記取得部は、前記振動に含まれる減衰自由振動に基づいて前記卓越周波数を取得することを特徴とする、付記1〜7のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【0085】
(付記9)
前記取得部は、前記減衰自由振動に含まれる各周波数成分の振幅の大きさに基づいて前記卓越周波数を取得することを特徴とする、付記8に記載の損傷検出装置。
【0086】
(付記10)
前記構造物は複数の前記支持物を含み、
複数の前記地点における前記剛体振動の情報を互いに比較することによって、複数の前記支持物のうちいずれに前記損傷があるかを推定する推定部をさらに備えることを特徴とする、付記1〜9のいずれか一項に記載の損傷検出装置。
【0087】
(付記11)
被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出方法であって、
前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する工程と、
取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する工程と、
特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する工程と、
を有する損傷検出方法。
【0088】
(付記12)
被支持物および前記被支持物を支持する支持物を含む構造物の損傷を検出する損傷検出プログラムであって、
コンピュータに、
前記被支持物の複数の地点における振動の情報から卓越周波数を取得する工程と、
取得された前記卓越周波数から前記構造物の剛体振動の情報を特定する工程と、
特定された前記剛体振動の情報に基づいて前記支持物の損傷を判定する工程と、
を実行させる損傷検出プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11