特許第6777293号(P6777293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777293
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20201019BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20201019BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20201019BHJP
   F16D 55/22 20060101ALI20201019BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20201019BHJP
   F16D 121/06 20120101ALN20201019BHJP
   F16D 123/00 20120101ALN20201019BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20201019BHJP
【FI】
   F16D65/18
   B61H5/00
   F16D65/02 B
   F16D55/22 C
   F16D121:04
   F16D121:06
   F16D123:00
   F16D125:64
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-86729(P2016-86729)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-198226(P2017-198226A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(74)【代理人】
【識別番号】100204021
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 廣順
(72)【発明者】
【氏名】入江 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 禎也
(72)【発明者】
【氏名】井原 一征
(72)【発明者】
【氏名】笠松 正樹
(72)【発明者】
【氏名】麻野 吉雄
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−349614(JP,A)
【文献】 特開平08−226467(JP,A)
【文献】 特開平10−267055(JP,A)
【文献】 特開2004−060862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18
B61H 5/00
F16D 55/22
F16D 65/02
F16D 121/04
F16D 121/06
F16D 123/00
F16D 125/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に設置する支持枠と、
この支持枠に、車輪の軸方向に平行となるよう設置した支持ピンに沿う往復移動が自在なように、基端側を前記支持ピンに嵌め込み、先端側が車輪の外周両側面の外側に位置するよう二つに分岐形成したキャリパ本体と、
このキャリパ本体の前記二つに分岐形成した先端部の内側にそれぞれ支持された制輪子と、
これら制輪子を車輪と一体に取付けたブレーキディスクに押付けるべく、前記キャリパ本体の一方の先端部に配置された2個のピストンと、
これら2個のピストンの間に配置された隙間調整装置と、
を備えた浮動型キャリパブレーキ装置であって、
前記キャリパ本体の基端側に設置する駐車ブレーキシリンダ装置と、
この駐車ブレーキシリンダ装置のロッド突出側の端部に基端部を回転自在に取付け、前記キャリパ本体に設けた作動油配管口よりも車輪の軸方向に関して車輪側とした支点を中心として、先端部で前記ピストンを配置した側の前記一方の制輪子を押付けるブレーキ梃子と、
を有する駐車ブレーキを備えたことを特徴とする鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ梃子の先端部に、3点の押圧部を形成した押圧部材を設置し、この押圧部材の3点の押圧部を前記制輪子に押付けることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置。
【請求項3】
前記3点の押圧部の押圧高さ位置を、制輪子のこれら押圧部の被押付け面の段差に合致させることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記ブレーキ梃子の先端部に球面支持する一方、この押圧部材の回り止めを設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置。
【請求項5】
前記駐車ブレーキシリンダ装置は、
シリンダと、当該シリンダ内に配置されるピストンと、当該ピストンと一体に設けられ、先端側が前記シリンダの一方端面より外方に位置するロッドを備え、
前記ロッドの先端側外周にプッシュロッドを挿入し、このプッシュロッドに設けた孔内に配置したボールをロッドに設けた円周凹部内に嵌合させた状態を、前記プッシュロッドの外周に挿入した保持部材の内周部に形成した保持部で保持することでプッシュロッドを前記ロッドに連結した状態で、
シリンダ内のロッドが存在する側の圧縮空気を排気することで、前記シリンダ内のロッドが存在しない側に配置した圧縮ばねの付勢力で前記ピストンを介して前記ロッドをシリンダから突出させて駐車ブレーキ力を得る駐車ブレーキ装置であって、
前記ボールを前記ロッドの円周凹部から出して両者の連結を解除し、前記プッシュロッドの前記ロッドへの挿入量を大きくして前記駐車ブレーキ力を開放するために、前記プッシュロッドとの相対位置を変化させるべく前記保持部材を移動させる引き棒を、前記シリンダに設けた案内支えを通ってシリンダの反ロッド突出側に導いたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置。
【請求項6】
前記引き棒の、駐車ブレーキを解除した緩め位置のときに前記シリンダの反ロッド突出側の端面下の位置に第1表示部を設けるとともに、前記緩め位置のときには前記シリンダに設けた案内支えの端面に一方端が一致する一方、駐車ブレーキ時には案内支えの外側となる位置に第2表示部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車輪の両側面に一体的に取付けたブレーキディスクの外側側面に、制輪子をピストンで直接押付けることで制動力を付与する鉄道車両用キャリパブレーキ装置のうちの、特に浮動型のキャリパブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
係留時における鉄道車両の転動を防止するため、従来は、レールと車輪の間に手歯止めと称するくさび形状の器具を噛み込ませるのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、高速鉄道車両の海外展開に伴い、係留時における鉄道車両の転動防止手段として、ブレーキ装置に駐車ブレーキを追加することが要求されるようになってきている。
【0004】
ところで、鉄道車両用ブレーキ装置には、制輪子の押圧をピストンが直接行うキャリパ式と、リンク機構を介して行う梃子式がある。このうち、制輪子の押圧をピストンが直接行うキャリパブレーキ装置には、制輪子のそれぞれにピストンを配置した対向型(例えば特許文献1)と、前記制輪子の何れか一方のみにピストンを配置した浮動型(例えば特許文献2)がある。
【0005】
このうち対向型のキャリパブレーキ装置に駐車ブレーキを追加したものは、特許文献3ですでに開示されている。この特許文献3に記載のブレーキ装置は、支持枠を介して台車に設置するキャリパ本体にアームを回動可能に支持し、このアームを回動させることで、梃子の原理で前記キャリパ本体の先端部に支持させた制輪子をブレーキディスクに押付ける構成である。
【0006】
この特許文献3に記載のブレーキ装置は、駐車ブレーキの取付けが容易で、かつコンパクト化を図れるが、制輪子を押付けるそれぞれ2個のピストン間に前記アームの回動先端部を設置する空間が存在する対向型のキャリパブレーキ装置であるから可能なものである。
【0007】
これに対して、浮動型のキャリパブレーキ装置は、制輪子を押付ける2個のピストン間に2個の隙間調整装置が配置されているため、制輪子を押付けるための、前記アームの回動先端部を設置する空間を確保することが難しい。
【0008】
従って、特許文献3に記載のブレーキ装置の前記アーム構造をそのまま浮動型キャリパブレーキ装置に採用する場合、ブレーキ性能に重要なピストン、隙間調整装置などの配置変更が必要となり、ブレーキ性能に大きく影響することが懸念される。
【0009】
加えて、浮動型キャリパブレーキ装置は、キャリパ本体の、前記アームの支点となる位置に作動油配管口があるので、キャリパ本体に設けた作動油配管口の外側に前記アームの支点を配置することになってキャリパ本体の幅が増大し、台車への搭載性を阻害することにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−226471号公報
【特許文献2】特開平8−226467号公報
【特許文献3】特開2002−235780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、構造上の制限から、特許文献3に記載されたブレーキ装置の駐車ブレーキを浮動型キャリパブレーキ装置にそのまま採用することができず、制輪子押付け位置における改善が必要であるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、係留時における鉄道車両の転動を防止する駐車ブレーキを、ブレーキ性能に影響を与えることなく、浮動型キャリパブレーキ装置に追加することを目的としたものである。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置は、
台車に設置する支持枠と、
この支持枠に、車輪の軸方向に平行となるよう設置した支持ピンに沿う往復移動が自在なように、基端側を前記支持ピンに嵌め込み、先端側が車輪の外周両側面の外側に位置するよう二つに分岐形成したキャリパ本体と、
このキャリパ本体の前記二つに分岐形成した先端部の内側にそれぞれ支持された制輪子と、
これら制輪子を車輪と一体に取付けたブレーキディスクに押付けるべく、前記キャリパ本体の一方の先端部に配置された2個のピストンと、
これら2個のピストンの間に配置された隙間調整装置と、
を備えた浮動型キャリパブレーキ装置であって、
前記キャリパ本体の基端側に設置する駐車ブレーキシリンダ装置と、
この駐車ブレーキシリンダ装置のロッド突出側の端部に基端部を回転自在に取付け、前記キャリパ本体に設けた作動油配管口よりも車輪の軸方向に関して車輪側とした支点を中心として、先端部で前記ピストンを配置した側の前記一方の制輪子を押付けるブレーキ梃子と、
を有する駐車ブレーキを備えたことを最も主要な特徴としている。
【0014】
本発明の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置は、ブレーキ梃子の支点をキャリパ本体に設けた作動油配管口よりも車輪の軸方向に関して車輪側としたので、ブレーキ梃子を小型化することができる。また、キャリパ本体の幅が増大し、台車への搭載性を阻害することもない。
【0015】
本発明において、ブレーキ梃子の先端部に、その押圧高さ位置を制輪子の被押付け面の段差に合致させた3点の押圧部を形成した押圧部材を設置し、この押圧部材の3点の押圧部で前記制輪子を押付けるようにすれば、ブレーキ性能に重要なピストン、隙間調整装置などの配置変更が不要になる。
【0016】
本発明において、
シリンダと、当該シリンダ内に配置されるピストンと、当該ピストンと一体に設けられ、先端側が前記シリンダの一方端面より外方に位置するロッドを備え、
前記ロッドの先端側外周にプッシュロッドを挿入し、このプッシュロッドに設けた孔内に配置したボールをロッドに設けた円周凹部内に嵌合させた状態を、前記プッシュロッドの外周に挿入した保持部材の内周部に形成した保持部で保持することでプッシュロッドを前記ロッドに連結した状態で、
シリンダ内のロッドが存在する側の圧縮空気を排気することで、前記シリンダ内のロッドが存在しない側に配置した圧縮ばねの付勢力で前記ピストンを介して前記ロッドをシリンダから突出させて駐車ブレーキ力を得る駐車ブレーキ装置の、
前記ボールを前記ロッドの円周凹部から出して両者の連結を解除し、前記プッシュロッドの前記ロッドへの挿入量を大きくして前記駐車ブレーキ力を開放するために、前記プッシュロッドとの相対位置を変化させるべく前記保持部材を移動させる引き棒を、前記シリンダに設けた案内支えを通ってシリンダの反ロッド突出側に導いた場合は、
ロッド、プッシュロッド、保持部材が台車の幅方向中央に位置する場合であっても、台車の側面方向から、手動で解放操作をできるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、支点をキャリパ本体に設けた作動油配管口よりも車輪の軸方向に関して車輪側としてブレーキ梃子を小型化したので、駐車ブレーキを追加しても従来の浮動型キャリパブレーキ装置のサイズを維持することができ、台車への搭載性を阻害することもない。
【0018】
また、ブレーキ梃子の先端部に設置する押圧部材の3点の押圧部の押圧高さ位置を制輪子の被押付け面の段差に合致させれば、ブレーキ性能に重要なピストン、隙間調整装置などの配置変更が不要となる。従って、従来の浮動型キャリパブレーキ装置との互換性を持たせることができ、容易に従来の浮動型キャリパブレーキ装置との置き換えができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置の平面図である。
図2図1の正面図である。
図3図1の背面図である。
図4図1から本発明の鉄道車両用浮動型キャリパブレーキ装置に追加する駐車ブレーキを取り出して示した図である。
図5図4の制輪子押付け側部分を側面から見た図である。
図6図4の制輪子押付け側部分の拡大図である。
図7図4の駐車ブレーキの構成を示した図で、(a)は緩め位置、(b)は駐車ブレーキ位置、(c)は手動解放後の状態をそれぞれ示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、係留時における鉄道車両の転動を防止する駐車ブレーキを、浮動型キャリパブレーキ装置に追加するという目的を、ブレーキ梃子の支点をキャリパ本体に設けた作動油配管口よりも車輪の軸方向に関して車輪側とすることで実現した。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施するための一実施例を、図1図7を用いて説明する。
1はキャリパ本体が車輪の軸方向に移動する本発明の浮動型キャリパブレーキ装置であり、以下に説明するように構成されている。
【0022】
2は先端側が車輪3の外周両側面の外側に位置するように二つに分岐形成されたキャリパ本体であり、台車4に固定された支持枠5に取付けた2本の支持ピン6a,6bに沿って車輪3の軸方向へのスライドが自在なように、その基端側を支持枠5に取付けている。
【0023】
7a,7bは前記キャリパ本体2の二つに分岐形成されたうちの一方の先端部における車輪3の周方向両側にそれぞれ支持された2個の油圧ピストンであり、これら油圧ピストン7a,7bのロッド端に制輪子8aが設置されている。
【0024】
9a,9bは前記キャリパ本体2の一方の先端部における前記2個の油圧ピストン7a,7bの間に設置された2個の隙間調整装置であり、車輪3に一体的に取付けられたブレーキディスク10と制輪子8aとの隙間を自動的に調整する装置である。
【0025】
一方、前記キャリパ本体2の一方の先端部と相対する他方の先端部の内側には制輪子8bが直接支持され、制輪子8bをブレーキディスク10に押付ける油圧ピストン7a,7bは設置されていない。
【0026】
なお、11aは前記制輪子8a,8bを上端部から保持する上部受け部材、11bは同じく制輪子8a,8bを下端部から保持する下部受け部材で、それぞれキャリパ本体2の分岐した先端部に設置される。
【0027】
また、2aはキャリパ本体2における前記油圧ピストン7a,7bの設置側の中央部に設けられた作動油配管口であり、この作動油配管口2aから供給された作動油は、通孔2bを通って油圧ピストン7a,7bに供給される。
【0028】
上記構成の浮動型キャリパブレーキ装置1は、油圧ピストン7a,7bに作動油を供給してロッドを突出させることで、キャリパ本体2の一方の先端部に支持された制輪子8aがブレーキディスク10に押付けられる。
【0029】
制輪子8aがブレーキディスク10に押付けられると、その反力でキャリパ本体2は支持ピン6a,6bに沿って制輪子8aが車輪3から離れる方向に移動する一方、キャリパ本体2の他方の先端部に支持された制輪子8bがブレーキディスク10に接近する方向に移動する。そして、ついには両制輪子8a,8bでブレーキディスク10を両側から押付けることになる。
【0030】
本発明では、上記浮動型キャリパブレーキ装置1に、以下の構成の駐車ブレーキを追加している。
【0031】
12はエアーの供給によってシリンダ21から突出するロッド22が出退動する駐車ブレーキシリンダ装置であり、前記キャリパ本体2の基端側の、鉄道車両の高さ方向に設置した前記2本の支持ピン6a,6bの間に設置される。
【0032】
前記駐車ブレーキシリンダ装置12は、前記シリンダ21の内部をピストン23によってばね室24と圧力室25に気密を保って区画し、ばね室24に配置した圧縮ばね26によりロッド22を突出するように付勢している。
【0033】
前記ピストン23のばね室24側への移動は、ピストン23のロッド22と反対側に突出させた軸状部23aの段差部23bにシリンダ21のばね室24側の壁面21aから圧力室25側に突出させた筒状部21bの先端面が当接することで規制している。図7の例では、前記軸状部23aを前記筒状部21bの内部で摺動自在に支持させたものを示している。
【0034】
27は前記ロッド22の先端部外周に移動自在に挿入した筒状のプッシュロッドである。このプッシュロッド27の基端側には複数の孔27aを設け、これらの孔27aにそれぞれ挿入したボール28がロッド22の先端側に形成した円周凹部22aに嵌合することで、ロッド22とプッシュロッド27が連結するようになっている。
【0035】
29は前記円周凹部22aに嵌合したボール28を保持すべく、前記プッシュロッド27の外周に挿入した筒状の保持部材である。この保持部材29の他端側端部はプッシュロッド27の外周に形成した凸状周縁部27bと当接可能に形成され、前記連結時に保持部29aの内周面がボール28の直上に位置するように保持部材29の内部に設けたばね30によって付勢されている。また、前記保持部材29の一端側の内周部分から前記保持部29aに至る間をボール28の逃がし部29bとなるように形成している。
【0036】
31は前記保持部材29に固定された取付け部32にピン33を用いて一方端側を回転自在に設置されたレバーであり、このレバー31の他方端にピン34を介して連結した引き棒35をシリンダ21のばね室24側の壁面21aに至るように導いている。
【0037】
そして、前記引き棒35の長手方向2か所には僅かな凹み35a,35bを形成し、これら凹み35a,35bを分別するために2種類の塗料で塗り分けている。
【0038】
このうちのピン34より遠い方の凹み35a(第1表示部)は、図7(a)に示した駐車ブレーキを解除した緩め位置のときにシリンダ21のばね室24側の端面下に位置するようにその位置を決定し、緩め位置であることを確認できるようにしている。
【0039】
また、ピン34に近い方の凹み35b(第2表示部)は、図7(a)に示した緩め位置のときには、その一方端がシリンダ21の外周部に設けた引き棒35の案内支え21cの例えばロッド側端面と一致する一方、図7(b)の駐車ブレーキ時には案内支え21の外側に位置するようにその位置を決定している。このように、凹み35bの位置を決定すれば、案内支え21cの例えばロッド側端面と駐車ブレーキ時の凹み35bの一方端の距離を測定することで、駐車ブレーキ時のピストンストローク量Lを測定できることになる。
【0040】
このような構成により、図1に示すように、ロッド22、プッシュロッド27、保持部材29が台車の幅方向中央に位置する場合であっても、台車の側面方向から、以下に説明するように、手動で解放操作をできるようになる。
【0041】
すなわち、上記構成の駐車ブレーキシリンダ装置12では、鉄道車両の係留時は、図7(a)の緩め位置にある圧力室25から圧縮空気を排気することにより、図7(b)に示すように、圧縮ばね26の付勢力によりプッシュロッド27をロッド22と一体に突出させる。
【0042】
このプッシュロッド27の突出により前記一方の制輪子8aがブレーキディスク10に向けて移動し、結果的に両制輪子8a,8bで車輪3の両側面に取付けたブレーキディスク10を挟んで鉄道車両が転動しない駐車ブレーキ状態になる。
【0043】
その際、駐車ブレーキシリンダ12のプッシュロッド27の突出を一方の制輪子8aに伝える手段として、本発明では、以下のブレーキ梃子13を採用している。
【0044】
すなわち、前記駐車ブレーキシリンダ装置12のプッシュロッド27の端部にブレーキ梃子13の基端部13aを回転自在に取付ける。そして、前記プッシュロッド27の突出により先端部13bをプッシュロッド27の突出方向と逆方向に移動させて前記油圧ピストン7a,7bを配置した側の一方の制輪子8aを押付けるように、中央部に支点13cを設ける。このブレーキ梃子13の支点13cを、本発明では、前記キャリパ本体2に設けた作動油配管口2aよりも車輪の軸方向に関して車輪側とする。
【0045】
このようにキャリパ本体2に設けた作動油配管口2aよりも車輪の軸方向に関して車輪側にブレーキ梃子13の支点13cを設けることで、ブレーキ梃子13が小型化できて、駐車ブレーキを追加しても従来の浮動型キャリパブレーキ装置のサイズを維持することができ、台車4への搭載性を阻害することもなくなる。
【0046】
また、実施例では、前記ブレーキ梃子13の先端部13bに設置した球面座14を介して押圧部材15を保持し、この押圧部材15に形成した3点の押圧部15a〜15cで前記制輪子8aを押付けるものを示している。
【0047】
その際、前記3点の押圧部15a〜15cの押圧高さ位置を、制輪子8aの被押付け面(ブレーキディスク10への当接面と反対側)の段差に合致させることで、ブレーキ性能に重要な油圧ピストン7a,7b、隙間調整装置9a,9bなどの配置を変更することなく、安定した押付けが可能になる。この安定した押付けは球面座14を介在させることによってより顕著になる。
【0048】
このような実施例によれば、従来の浮動型キャリパブレーキ装置との互換性を持たせることができ、容易に従来の浮動型キャリパブレーキ装置との置き換えが可能になる。
【0049】
一方、球面座14を介在させた場合は、車両の走行時に押圧部材15に回転動揺が生じる。従って、押圧部材15の回転動揺を防止するために、実施例では、押圧部材15にピン16を貫通させ、この貫通させたピン16をブレーキ梃子13の前記ピン16の貫通部分に設けた嵌入孔13dに挿入している。このような回り止めを設置することで、車輪の回転方向の自由度を抑制して押圧部材15が回転動揺しないようになる。
【0050】
図7(b)に示す駐車ブレーキ位置から手動で駐車ブレーキを解除する場合は、作業者が引き棒35をロッド22の突出方向と反対方向に引いてピン33を支点として前記レバー31の一方端側を回動する。
【0051】
これにより、レバー31の一方端側に形成した爪部31aがプッシュロッド27の外周面に形成した凸部27cをシリンダ21側に押し、ばね30の付勢力に抗して保持部材29を凸部27c側に引き寄せ、ボール28がロッド22の円周凹部22aから出て退避位置に位置するよう、保持部材29を移動させる(図7(c)参照)。手動による駐車ブレーキの解除後、引き棒35の位置が図7(a)に示した緩め位置と紛らわしい場合は、引き棒35が簡単に移動するかどうかによって確認することができる。
【0052】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 浮動型キャリパブレーキ装置
2 キャリパ本体
2a 作動油配管口
3 車輪
4 台車
5 支持枠
6a,6b 支持ピン
7a,7b 油圧ピストン
8a,8b 制輪子
9a,9b 隙間調整装置
10 ブレーキディスク
12 駐車ブレーキシリンダ装置
13 ブレーキ梃子
13a 基端部
13b 先端部
13c 支点
14 球面座
15 押圧部材
15a〜15c 押圧部
16 ピン
21 シリンダ
21c 案内支え
22 ロッド
22a 円周凹部
23 ピストン
26 圧縮ばね
27 プッシュロッド
27a 孔
28 ボール
29 保持部材
29a 保持部
35 引き棒
35a,35b 凹み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7