【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の構造物の雨水排出用屋根材は、躯体としての屋根の天端上に設置され、降雨時の雨水を受け止めて前記屋根外へ排出するために使用される屋根材であり、内部に気体と液体の注入が可能で、それぞれの注入状態を維持可能な素材から中空断面形状に形成され、環状に閉じた形に周回する枠材と、液体の貯留状態を維持可能な素材から形成され、前記周回する枠材の底面側に一体化した底材とを備え、前記枠材に気体と液体のいずれかを注入するための注入口が形成され
、前記底材に前記底材上の水を排出するための排水口が形成されており、前記排水口に縦樋が直接、または横樋を介して間接的に接続可能であることを構成要件とする。
【0009】
「環状に閉じた形に周回する」とは、中空の枠材の材軸に直交するある断面上の中心を結ぶ軸線の方向に枠材の構成材である素材が連続し、全体として環状に閉じた形状をすることを言い、主に直線状の軸線からなる角のある環状に形成されるが、一部の軸線が曲線状であることもある。枠材自体、あるいは枠材の構成材自体は軸線方向(軸方向)に連続した中空断面形状(チューブ状)をし、軸線方向に連続した1本の中空断面材からなることもあるが、角のある環状に形成される場合には、例えば
図4に示すように幅方向に距離を置いて並列する主枠材21、21と、主枠材21の少なくとも軸方向両端部間に架設されて各主枠材21に接続され、内部が主枠材21の内部に連通するつなぎ枠材22、22から枠材2が構成されることが合理的である(請求項5)。主枠材21とつなぎ枠材22は枠材2を構成するから、共に中空である。
【0010】
この(請求項5の)場合、主枠材21は主に直線状に形成されるが、並列する主枠材21、21の長さ方向の両端部間につなぎ枠材22が架設され、両主枠材22、22、または各主枠材22に接続(接合)されたときに枠材2が環状に閉じ、周回した形状になる。この場合の枠材2の基本形状は2本の主枠材21、21が並列したときの形状になるが、枠材2(屋根材1)を構成する主枠材21は2本であるとは限らず、3本以上であることもある。主枠材21とつなぎ枠材22からなる枠材2は主に主枠材21の軸方向に長い形状、例えば長方形状等に形成されることが多いが、そうでない形状のこともある。
【0011】
只、請求項5では屋根材1の幅方向に隣接する屋根材1と隙間なく組み合わせる(請求項6)上では、基本的には主枠材21とつなぎ枠材22は共に直線状に形成されることが合理的であるため、閉じた枠材2は主に長方形状に形成されるが、完全な長方形状である必要はない。例えば屋根材1が
図2、
図3に示すように幅方向に並列して配列し、隣接する屋根材1、1同士が互いに接合されて組立屋根5として使用される場合(請求項6)に、
図1に示すように屋根材1の軸方向(長さ方向)の一方の端部が躯体としての屋根(以下、躯体屋根4と言う)の縁(へり)から庇状に張り出すような場合には、その張り出し側(縁側)に位置するつなぎ枠材22は必ずしも直線状である必要はなく、並列する屋根材1、1の張り出し側の端部が直線状に揃えられている必要もない。
【0012】
この躯体屋根4から張り出す側の反対側(躯体側)の端部は躯体としての壁や柱等に密着した状態を維持することが望ましいため、その側のつなぎ枠材22は壁等の躯体の表面形状に対応し、直線状に、または凹凸状に形成されることが適切である。このことから、枠材2は基本的には並列する主枠材21、21とその少なくとも躯体側である一方側のつなぎ枠材22が直線状であればよく、主枠材21の他方側(縁側)のつなぎ枠材22は直線状の場合とそうでない場合がある。
【0013】
請求項1における「気体と液体の注入が可能で、それぞれの注入状態を維持可能な素材」とは、気体と液体を中空の枠材2内部に注入したときに気体と液体が枠材2の外部に漏れない性能を有する素材であることである。例えばゴムボートの素材として使用されるゴム引布等のようにポリエステル、アラミド繊維その他の合成繊維からなる基布の両面にCSM(クロロスルホン化ポリエチレン)、EPDM等の合成ゴム、PVC等の合成樹脂を貼り合わせた素材、または前記合成繊維の基布の片面に前記合成ゴムや合成樹脂を貼り、他方の片面にクロロプレンゴム等の合成ゴムを貼り合わせた素材等が適する。但し、合成ゴムや合成樹脂、並びに枠材2の素材はこれらの例には限られない。
【0014】
底材3として使用される「液体の貯留状態を維持可能な素材」も同様の性能を有する素材であることであり、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド等のような合成樹脂のように底材3上から液体が漏れることがなく、底材3上に貯留させることができる能力を持つ素材を言う。「気体」と「液体」はそれぞれ主に空気と水であるが、必ずしもその必要はなく、水は海水を含む。
【0015】
請求項1における「気体と液体のいずれかを注入する」とは、屋根材1の状態(躯体屋根4上への設置前か設置後か)に応じ、枠材2の内部に気体のみを注入(充填)する場合と液体のみを注入(充填)する場合があることを言う。枠材2内部に気体を注入している状況から液体を注入するときには、液体が気体に置き換わるように枠材2の内部に注入され、注入されている気体は注入口2aから、または注入口2aとは別に枠材2に形成された場合(請求項4)の排出口2cから排出される。枠材2内部に液体が注入されている状況から気体を注入するときには、同様に注入口2aから、または排出口2cから液体が排出される。
【0016】
枠材2は気体と液体の注入が可能なように軸方向に連続した中空断面形状(チューブ状)に形成されるため、請求項5の主枠材21とつなぎ枠材22は共に、それぞれ軸方向に連続した中空断面形状(チューブ状)に形成される。枠材2の軸線に直交する断面形状は任意であり、円形状、多角形状等に形成される。
【0017】
只、屋根材1は幅方向に並列して配置され、組み合わせられることから(請求項6)、隣接する屋根材1、1の枠材2、2(主枠材21、21)間に雨水等が浸入しないようにする上では、隣接する屋根材1の枠材2との組み合わせ(接合)時に両枠材2、2間に隙間が生じないよう、
図2に示すように例えば隣接する屋根材1、1の枠材2、2の接触面が互いに面で接触(密着)するような方形状、または半円形状等の断面形状であることが望ましい。但し、
図5、
図6に示すように隣接する屋根材1、1の並列する枠材2、2(主枠材21、21)間に面状(帯状)の連結材6が跨り、連結材6が枠材2、2間の空隙を塞ぐことができれば、必ずしも並列する枠材2、2が互いに接触する必要はない。
【0018】
主枠材21の少なくとも軸方向(長さ方向)両側に配置され、主枠材21に接続されるつなぎ枠材22が主枠材21に接続されたときには、つなぎ枠材22の内部と主枠材21の内部の空間が連通する。「接続」とは、主枠材21とつなぎ枠材22の端面(断面)が互いに突き合わせられた状態で、端面の周面が周方向に連続して縫合される、または接着される等により接合されることを言う。「つなぎ枠材が少なくとも主枠材の軸方向両端部間に架設される」とは、つなぎ枠材22が並列する主枠材21、21の軸方向中間部間にも架設され、双方に接合されることがあることを意味する。
【0019】
屋根材1を地上から躯体屋根4上に吊り上げるときには、吊り上げ作業性と作業効率を考慮し、屋根材1の軽量化のために、枠材2の内部には注入口2aから気体が注入される。屋根材1を躯体屋根4上へ載置した後の屋根材1の使用状態では風による浮き上がりに対する安定性の確保のために、枠材2の内部には注入口2aから液体が注入され、屋根材1の質量が増加させられる。このように屋根材1の躯体屋根4上への吊り上げ時に枠材2の内部に気体が注入されて屋根材1が軽量化され、吊り上げ後に液体が注入されて質量が増加させられるため、屋根材1の吊り上げ作業性を確保しながら、設置後の風に対する安定性も確保することが可能になる。
【0020】
躯体屋根4上に載置された屋根材1の枠材2内への液体の注入は枠材2に形成され、枠材2内部に気体を注入したときの注入口2aから注入されればよいが、前記のように注入口2aとは別に、気体や液体の排出用の排出口2cが形成されることもある(請求項4)。この場合、排出口2cは注入口2aからの気体や液体の注入時に、注入されている液体や気体の排出を促し、注入口2aからの効率的な注入の目的で使用される。この他、気体注入用の注入口2aと液体注入用の注入口2aが独立して形成されることもあり、その場合、いずれか一方の注入口2aから気体や液体が注入されるときには、他方の注入口2aは排出口2cとして利用されることになる。
【0021】
躯体屋根4上に設置された屋根材1が役目を終えて、または交換のために地上に降ろされるときには、軽量化のために注入口2a、もしくは排出口2cから液体が排出されるが、単一の注入口2aからの排出が困難な場合に、注入口2aと排出口2cが枠材2に形成されていれば(請求項4)、注入口2aと排出口2cのいずれか一方から気体を注入することで、他方から容易に液体を排出することが可能であり、躯体屋根4上の屋根材1を降ろすときの液体の排出作業性を向上させることが可能である。
【0022】
屋根材1の使用状態で屋根材1全体が躯体屋根4の上に完全に、またはほぼ完全に納まるように載置される場合には、屋根材1全体が躯体屋根4上に支持されるため、枠材2全体の内部に液体が注入されればよく、液体が枠材2の全体に均等に行き渡ることで、屋根材1は全体において躯体屋根4に支持される。
【0023】
この場合、屋根材1が使用状態に置かれた後、降雨があったときの雨水等は底材3上に貯留するため、基本的には
図1に示すように底材3に形成された排水口3aから(請求項
1)、または底材3上の空間と枠材2の外部を連通させるパイプ7が枠材2を幅方向に、もしくは幅方向に傾斜した方向に貫通し、このパイプ7の内周面が底材3上の水を排出するための排水口を兼ねる場合の排水口から排水される(請求項
2)。
請求項
1、
3における「水」は主に雨水を指すが、放水された水を含む場合もある。
【0024】
例えば幅方向に隣接する屋根材1、1を互いに隙間なく組み合わせて組立屋根5を形成した場合(請求項6)に、隣接する屋根材1、1の内周側間に各底材3上の空間を連通させるためにパイプ7を挿通させる場合(請求項7)には、少なくとも組立屋根5の幅方向片側に位置する屋根材1の枠材2に排水口が形成されればよく、必ずしも全屋根材1に排水口が形成される必要はない。「屋根材1の内周側」は周回する枠材2の内周側、あるいは底材3の上面側を指す。隣接する屋根材1、1間にパイプ7を挿通させる場合(請求項7)、パイプ7は枠材2を幅方向等に貫通するため、パイプ7の内周面が排水口を兼ねることになる(請求項
2)。以下、本項目中、パイプ7の内周面が形成する排水口を排水口7と記載する。
【0025】
パイプ7は組立屋根5としての屋根材1にではなく、屋根材1単体の枠材2にも使用されることがある。例えば
図5−(a)は組立屋根5を構成する屋根材1、1の隣接する枠材2、2間にパイプ7を挿通させた場合の様子を示すが、このように枠材2の軸方向端部か中間部のいずれかの部分を枠材2の幅方向等に貫通し、底材3上の空間と枠材2の外部を連通させるように枠材2に設置されることもある。
【0026】
この場合、上記のように枠材2を幅方向に、もしくは幅方向に対して傾斜した方向に貫通し、底材3上の空間と枠材2の外部を連通させるパイプ7の内周面が排水口7になる(請求項
2)。この場合の排水口7が形成される枠材2は
図5−(a)に示すように組立屋根5としての屋根材1の枠材2、または屋根材1単体の枠材2を指す。
図5−(a)は枠材2の断面が円形状の場合の例であるため、パイプ7の内周面の下面(上向き面)が底材3の上面より上に位置しているが、枠材2の断面は
図2に示すように方形状の場合もあるため、パイプ7の内周面の下面(上向き面)は底材3の上面に揃えられる場合もある。
【0027】
屋根材1全体が躯体屋根4の上に載っている場合には、底材3に形成された排水口3a(請求項
1)に直接、躯体屋根4の縁の屋外側に設置される縦樋8を接続することが難しいため、排水口3aと縦樋8との間には例えば横樋が介在させられ、双方に接続されるようなことが必要になることもある。枠材2の長さ方向一方側(躯体屋根4縁側)の部分が躯体屋根4の縁から張り出すように屋根材1が躯体屋根4上に設置される場合には、底材3の排水口3aに直接、縦樋8を接続することができるため、横樋等の介在は必要ではない。排水口7が枠材2に形成されている場合(請求項
2)には、屋根材1の長さ方向の一部が躯体屋根4の縁から張り出すか否かに拘わらず、排水口7に縦樋8を直接、またはほぼ直接的に接続することが可能である。
【0028】
躯体屋根4縁側のつなぎ枠材22が躯体屋根4の縁から張り出す場合には、縦樋8を鉛直方向に向けた状態で、枠材2の排水口7に限らず、底材3の排水口3aにも底材3の底面側から接続することができるため、底材3の排水口3aから縦樋8までに横樋等を介在させずに済み、排水口3aから縦樋8までの経路を迂回させずに済む。この結果、雨水等が底材3上に貯留している状況のときに、排水口3aと縦樋8間に横樋等を介在させる場合のように貯留している雨水等が縦樋8まで到達するまでの間に停滞するようなことがなくなるため、底材3上の雨水等の排水効率を向上させることが可能になる。
【0029】
屋根材1の一方側(躯体屋根4縁側)の部分が躯体屋根4上に納まる場合も張り出す場合も、底材3の排水口3a、または枠材2の排水口7からの排水の効率上は、排水口3a、7は躯体屋根4縁側の、主枠材21の長さ方向一方側のつなぎ枠材22寄りに形成されることが合理的である
(請求項3)。躯体屋根4縁側のつなぎ枠材22が躯体屋根4の縁から張り出す場合には、排水口3a、7は張り出し側のつなぎ枠材22寄りの、躯体屋根4の縁から張り出した区間に配置されることが、上記した縦樋8の接続上、適切である。底材3の排水口3aは
図7−(a)に示すように一箇所とは限られず、枠材2の排水口7も同様である。
【0030】
屋根材1は基本的に底材3の上面に、主枠材21の長さ方向一方側の、排水口3aの反対側(躯体側)から排水口3a側(縁側)へかけて鉛直方向下向きに傾斜する水勾配が付けられた状態で躯体屋根4の天端面上に載置される。但し、躯体屋根4の天端面自体に水勾配が付けられている場合には、屋根材1は躯体屋根4の天端面上に単純に載置されればよく、底材3の上面には必ずしも水勾配が付けられる必要はない。躯体屋根4の天端面が水平面である場合には、水平面の天端面上に載置されたときに底材3の上面に水勾配が付けられるよう、予め底材3の上面に水勾配を付けた状態で屋根材1が製作されることもあるが、底材3に水勾配を付けることなく、底材3や枠材2に排水口3a、7を形成することもある。
【0031】
枠材2の躯体屋根4縁側の一部が躯体屋根4の縁から張り出すように屋根材1が躯体屋根4上に設置される場合には、枠材2の、躯体屋根4の縁から張り出す部分は躯体屋根4に支持されなくなる。この場合に、枠材2全体の内部に液体を注入すると、躯体屋根4から張り出した部分が液体の重みで垂れ下がろうとするため、枠材2内部に液体が注入された屋根材1の躯体屋根4上での安定性が損なわれることになる。
【0032】
そこで、枠材2の躯体屋根4に支持される部分(領域)と支持されない部分(領域)とに枠材2の内部を仕切り、躯体屋根4に支持される部分に液体を注入し、支持されない部分には液体が回り込まないよう、気体が注入された状態に保たれるようにすることで(請求項5)、躯体屋根4の縁側の一部が躯体屋根4の縁から張り出すように屋根材1が躯体屋根4上に設置される場合にも屋根材1の設置状態での安定性を確保することが可能になる。
【0033】
この場合、枠材2は前記のように幅方向に距離を置いて並列する主枠材21、21と、主枠材21の少なくとも軸方向両端部間に架設されて各主枠材21に接続され、内部が主枠材21の内部に連通するつなぎ枠材22からなり、主枠材21の長さ方向一方側のつなぎ枠材22と主枠材21との接続部分、もしくはこの接続部分に近い主枠材21の内部に、枠材2内部の空間を主枠材21側とつなぎ枠材22側とに仕切る隔壁23が形成される(請求項5)。隔壁23はつなぎ枠材22と主枠材21との接続部分か、その付近に形成されるため、接続部分よりつなぎ枠材22側に寄った位置、または接続部分より主枠材21側へ寄った位置に形成されることもある。
【0034】
枠材2内部の空間が隔壁23に区画され、隔壁23を挟んだ両側にそれぞれ気体と液体のいずれかを注入するための注入口2a、2bが形成されることで(請求項5)、主枠材21側の空間とつなぎ枠材22側の空間のそれぞれに独立して気体と液体のいずれかを注入することが可能になる。主枠材21側の空間とつなぎ枠材22側の空間に独立して気体と液体のいずれかを注入可能であるから、主枠材21側の空間とつなぎ枠材22側の空間のいずれにも気体と液体を独立して注入可能である。
【0035】
屋根材1全体が躯体屋根4上に納まるように載置される場合と躯体屋根4縁部側の一部が躯体屋根4から張り出して設置される場合のいずれも、隔壁23を挟んだ主枠材21側の空間には吊り上げ時に気体が注入され、躯体屋根4上への設置後には液体が注入されるため、主枠材21側の空間には気体と液体のいずれかが注入されるが、屋根材1の使用時には設置状態に拘わらず、液体が注入される。前記のように枠材2の内周の底材3上に貯留した雨水等の地上への排出をし易くする目的で、躯体屋根4縁部側の一部が躯体屋根4から張り出して設置される場合、つなぎ枠材22側の空間への液体の注入状態は屋根材1の安定性を損なうことになるため、つなぎ枠材22側の空間には気体が注入されたままの状態に保たれる。
【0036】
隔壁23を挟んだつなぎ枠材22側の空間には、躯体屋根4上への設置状態で屋根材1全体が躯体屋根4上に納まる場合には液体が注入され、縁部側の一部が躯体屋根4から張り出して設置される場合には気体が注入されたままであるため、つなぎ枠材22側の空間には屋根材1の使用時には設置状態に応じ、気体と液体のいずれかが注入される。このため、隔壁23を挟んだ主枠材21側の空間用の注入口2aと隔壁23を挟んだつなぎ枠材22側の空間用の注入口2bのいずれも、気体の注入用と液体の注入用を兼ねることになる。
【0037】
躯体屋根4縁部側の一部が躯体屋根4から張り出して設置される場合、屋根材1の一方のつなぎ枠材22側の端部を躯体屋根4の縁から張り出させることで、前記のように底材3の張り出したつなぎ枠材22寄りに排水口3aを形成し、排水口3aに縦樋8を接続すれば、底材3上に貯留している雨水等を直接、縦樋8を通じて地上に排出することができる。同時に、使用状態ではその張り出し側のつなぎ枠材22側の空間内に気体が注入されることで、躯体屋根4からの張り出し区間が自重により垂れ下がろうとすることがないため、使用状態での安定性と排水性を同時に確保することが可能になる。
【0038】
請求項5では隔壁23の形成により枠材2内部の空間は隔壁23を挟んで主枠材21側の空間とつなぎ枠材22側の空間とに区画され、隔壁23自体の周辺部分を含め、隔壁23の全面において両側の空間間での気密性と水密性が確保される。「気密性と水密性が確保される」とは、隔壁23の一方側の空間に注入された気体と液体が隔壁23を挟んだ他方側の空間へ移動しないことを言う。隔壁23の全面での気密性と水密性を確保するために、隔壁23にも枠材2や底材3と同一、もしくは同等(類似)の素材が使用される。
【0039】
枠材2の内部に隔壁23が形成された場合(請求項5)、前記のように隔壁23を挟んだ主枠材21側の空間には屋根材1の躯体屋根4への吊り上げ時には気体が注入され、躯体屋根4への載置後には液体が注入され、気体と液体が入れ替わるように注入されるため、躯体屋根4への載置後の液体の注入作業が円滑に行われるようにする目的で、隔壁23を挟んだ主枠材21側に注入口2aから液体を注入するときの気体の排出を促すための排出口2cが形成されることもある(請求項4)。主枠材21側の空間に液体が注入されている状態から、屋根材1を躯体屋根4上から降ろすような場合等には、注入口2aから気体が注入されることで、排出口2cから液体が排出される。
【0040】
この場合、隔壁23を挟んだ主枠材21側に注入口2aと排出口2cが形成されることで、主枠材21内に気体が注入されている状態で注入口2aから液体を注入するときに、液体の注入に伴い、排出口2cから気体が抜けていくため、排出口2cがない場合より液体の注入がし易く、作業効率が向上する。
【0041】
屋根材1の、躯体屋根4から張り出す側の反対側(躯体側)の端部は前記のように構造体(躯体)の屋外に面する壁や柱の表面と屋根材1の背面との間への雨水等の回り込みを回避、あるいは抑制するために、これら壁等の躯体に突き合わせられ、接触(密着)させられる。壁と柱の接合部等、躯体の屋外側の表面に平面上(平面図として見たとき)、凹凸がある場合にはその凹凸に屋根材1の躯体側の端部の形状が合わせられる。
【0042】
屋根材1は単独(単体)で地上から吊り上げられ、躯体屋根4の天端上に載置されることもあるが、吊り上げ作業の効率を上げる上では、
図5、
図6に示すように複数本(複数枚)の屋根材1を予め地上で屋根材1の幅方向に並列させて組み合わせ、連結して組立屋根5を組み立てた状態で躯体屋根4上に吊り上げ、載置することが合理的である(請求項6)。
【0043】
この場合、隣接して配置された屋根材1、1の並列する枠材2、2(主枠材21、21)間に跨って連結材6が設置され、連結材6が両枠材2、2に接続(接合)されることで、隣接する屋根材1、1が枠材2、2の幅方向に互いに接合(連結)される(請求項6)。前記のように隣接する屋根材1、1の枠材2、2は雨水等の浸入防止上は互いに接触(密着)した状態で連結されることが望ましいが、連結材6が面状である場合にはその必要はない。
【0044】
「屋根材の幅方向」とは、屋根材1の平面形状を見たときに長さ方向と幅方向に区別できる場合の幅方向であるが、平面上、2方向の長さが等しく、長さ方向と幅方向の区別ができない場合にはいずれかの方向を指す。枠材2が主枠材21とつなぎ枠材22からなる場合(請求項5)には、「屋根材の幅方向」は主枠材21の幅方向を指す。
【0045】
連結材6は屋根材1が互いに連結される方向の幅方向に直交する方向の長さ方向である枠材2の軸方向に1箇所、または複数箇所に分散して配置され、枠材2の表面には面ファスナー、スナップボタン等の着脱自在な接着、嵌合、係止その他、任意の手段により接合される。但し、連結材6は必ずしも枠材2表面に着脱自在に接合される必要はなく、縫合等により分離不能に接合されることもある。枠材2が主枠材21とつなぎ枠材22からなる場合(請求項5)には、「枠材の軸方向」は主枠材21の軸方向を指す。
【0046】
請求項6では屋根材1(主枠材21)の幅方向に並列する複数本の屋根材1、1が連結材6によって纏められて1枚の板状の組立屋根5が構成されることで、同数の屋根材1を躯体屋根4上に吊り上げることに要する回数が削減されるため、地上から躯体屋根4上への吊り上げ作業が効率化される。複数本の屋根材1から構成された組立屋根5の吊り上げ時には、枠材2(主枠材21とつなぎ枠材22)の内部に気体が注入されるため、地上及び躯体屋根4上での人による組立屋根5の取扱い作業性が屋根材1単体の場合と異ならずに済む。組立屋根5の躯体屋根4上への吊り上げ後、躯体屋根4の縁から端部が張り出す場合のその側のつなぎ枠材22内を除き(請求項5)、枠材2の内部に水等の液体が注入され、風等による浮き上がりに対する安定性が確保される。
【0047】
複数本の屋根材1、1から構成された組立屋根5が躯体屋根4上に載置され、使用状態に置かれたときには、前記のように壁と柱等、躯体の表面形状に屋根材1の端部の形状が合わせられるが、予め地上で複数本の屋根材1から組立屋根5が組み立てられる場合にも、組立屋根5の躯体側の端部の形状は吊り上げ予定の躯体の表面形状に応じた形状に調整されることがある。
【0048】
躯体屋根4上で使用状態になった各屋根材1の底材3上には降水時に雨水等が貯留しながら、前記のように躯体屋根4の縁側の排水口3aから縦樋8等を通じて躯体外へ排出される。但し、複数本の屋根材1が連結されて組立屋根5が組み立てられる場合(請求項6)、躯体屋根4上での組立屋根5の設置位置や傾斜状態等の原因により各屋根材1の排水口3aからの排水速度が相違し、各屋根材1内の雨水等の貯留量が相違することが想定される。各屋根材1内の雨水等の貯留量が相違することは各屋根材1内での排水速度の差に起因する場合と起因しない場合がある。
【0049】
このように互いに連結された屋根材1、1の内、いずれかの屋根材1内の雨水等の貯留量が多くなるような状況に対しては、
図5−(a)に示すように請求項6において隣接する屋根材1、1の、例えば互いに接触している枠材2、2(主枠材21、21)の各屋根材1の内周側間に、各屋根材1の底材3上の空間を連通させるパイプ7を挿通させることで(請求項7)、特定の屋根材1内の雨水等の貯留量が多くなる事態を回避することが可能である。パイプ7は前記のように枠材2を幅方向に、もしくは幅方向に対して傾斜した方向に貫通する。この場合、前記のように全屋根材1の枠材2に排水口7を形成する必要はない。枠材2、2にパイプ7を挿通させる場合も、並列する枠材2、2は必ずしも互いに接触している必要はない。
【0050】
請求項7では幅方向に隣接する枠材2、2の内周側間にパイプ7が挿通させられることで、枠材2の内部の空間はパイプ7の外周側の空間と内周側の空間とに仕切られるが、パイプ7の外周側の空間は枠材2の内部の空間に連通し、同時に枠材2の表面に形成された挿通孔21aの内周部分において枠材2の外部とも連通する。このため、挿通孔21a内周部分における枠材2外部との連通部分には枠材2内部に注入されている気体や液体が外部に漏れないよう、シール材が充填、もしくは挿入され、パイプ7の外周面と挿通孔21aとの間での気密性と水密性が確保される。パイプ7の内周側の空間はパイプ7の軸方向の端部において各屋根材1の枠材2内周側の底材3上の空間に連通する。
【0051】
枠材2に幅方向に挿通する挿通孔21aが形成されながらも、パイプ7の外周面と挿通孔21aとの間での気密性と水密性が確保されることで、枠材2内に注入される気体や液体の漏れが防止されながら、枠材2(主枠材21)が気体や液体が注入された膨張状態の形態が維持される。
【0052】
またパイプ7の内周側の空間が各屋根材1の枠材2内周側の底材3上の空間に連通することで、隣接する屋根材1、1の内、相対的に雨水等の貯留量の多い側の屋根材1から貯留量の少ない側の屋根材1内に雨水等を移動させることができるため、屋根材1内に貯留した雨水等をより効率的に躯体外へ排出することが可能になり、貯留量の多い側の屋根材1から雨水等が溢れる事態を回避することが可能になる。