(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱手段は、前記洗い行程において、前記水槽内の水を前記50℃温度帯内の温度に維持する期間と、前記50℃温度帯以外の温度帯内の温度に維持する期間と、を設ける請求項1に記載の洗濯機。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、洗濯機に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に例示する洗濯機10は、回転槽の回転軸が水平軸または傾斜軸となる、いわゆる横軸型のドラム式洗濯機であり、その外郭を構成する外箱11の内部に、水槽12およびドラム13を備える。水槽12は、水を貯留することが可能な有底円筒状をなしており、一対のサスペンション14により弾性的に支持されている。水槽12の前面の開口部12aは、ベローズ15を介して外箱11の前部の開口部11aに水密に接続されている。外箱11の開口部11aは、扉16により開閉される。
【0008】
ドラム13は、回転槽の一例であり、水槽12の内部に回転可能に設けられている。ドラム13の回転軸は、洗濯機10の前後方向、つまり、奥行方向に沿って、後面側が前面側よりも低くなるように傾斜している。ドラム13は、水槽12の後面に設けられたモータ17により回転される。ドラム13の周側面には、複数の貫通孔13aが設けられている。また、ドラム13の内周面には、複数のバッフル13bが設けられている。
【0009】
洗濯機10は、給水弁20a、注水ケース20bなどを有する給水機構部20、および、排水弁21aなどを有する排水機構部21を備える。給水機構部20は、ドラム13内に収容された洗濯物を洗う洗い行程および洗濯物をすすぐすすぎ行程において、給水弁20aを制御することにより、例えば水道などの機外の水源から水槽12内に水を供給する。注水ケース20bは、図示しない洗剤類投入部を有している。洗剤類投入部には、例えば、汚れを分解する酵素を含む洗剤や柔軟剤などが収容される。排水機構部21は、排水行程において、排水弁21aを制御することにより、水槽12内の水を機外に排出する。水槽12の下部には、水槽12内に開放する凹状のヒータ収容部30が設けられている。このヒータ収容部30の内部には、水槽12内の水を加熱するための温水生成用のヒータ31が設けられている。
【0010】
次に、洗濯機10の制御系の構成例について説明する。
図2に例示する制御装置40は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、制御プログラムに従って洗濯機10の動作全般を制御する。外箱11の開口部11aの上部には、図示しない操作パネルが設けられている。制御装置40は、例えば操作パネルの裏面側に設けられている。制御装置40には、モータ17、給水弁20a、排水弁21aなどの各種の駆動部が接続されている。制御装置40は、制御プログラムに従って各種の駆動部の駆動を制御することにより、洗濯物を洗う洗い行程、洗濯物をすすぐすすぎ行程、洗濯物を脱水する脱水行程などを含む各種の運転コースを実行する。
【0011】
即ち、制御装置40は、制御プログラムを実行することにより、洗い行程実行処理部51、すすぎ行程実行処理部52、脱水行程実行処理部53、加熱処理部54などの各種の処理部をソフトウェアにより仮想的に実現する。なお、制御装置40は、これらの処理部をハードウェアにより構成してもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより構成してもよい。
【0012】
洗い行程実行処理部51は、洗い行程実行手段の一例であり、ドラム13内の洗濯物を洗う洗い行程を実行する。すすぎ行程実行処理部52は、すすぎ行程実行手段の一例であり、洗い行程実行処理部51による洗い行程の後に、ドラム13内の洗濯物をすすぐすすぎ行程を実行する。脱水行程実行処理部53は、脱水行程実行手段の一例であり、すすぎ行程実行処理部52によるすすぎ行程の後に、ドラム13内の洗濯物を脱水する脱水行程を実行する。
【0013】
加熱処理部54は、洗い行程実行処理部51による洗い行程において、ヒータ31をオンすることにより、水槽12内の水を所定の温度帯内の温度に加熱する。そして、加熱処理部54は、所定の温度帯内の温度に加熱した水槽12内の水を、当該温度帯内の温度に維持する。これにより、制御装置40は、洗い行程において水槽12内の水を加熱して洗濯物を洗う、いわゆる温水洗い行程を実行可能に構成されている。また、加熱処理部54は、すすぎ行程実行処理部52によるすすぎ行程において、ヒータ31をオンすることにより、水槽12内の水を所定の温度帯内の温度に加熱することも可能である。これにより、制御装置40は、すすぎ行程において水槽12内の水を加熱して洗濯物をすすぐ、いわゆる温水すすぎ行程も実行可能に構成されている。
【0014】
洗濯機10は、水槽12内の水の温度を検知する水温センサ60を備えている。制御装置40は、温水洗い行程を実行する場合、温水すすぎ行程を実行する場合には、水温センサ60により検知される水槽12内の水の温度を監視しながら、加熱処理部54により水槽12内の水を所定の温度帯内の温度に調整する。
【0015】
次に、上述した温水洗い行程における制御例について説明する。
図3に例示するように、制御装置40は、温水洗い行程を開始する場合には、まず、給水弁20aを駆動して水槽12内に設定水位まで水を供給する。水槽12内の水の水位は、例えば図示しない水位センサにより検知することができる。また、設定水位は、例えば、ドラム13内に投入されている洗濯物量を特定する周知の重量センシングの結果に基づいて自動的に設定してもよいし、ユーザによる操作に応じて設定してもよい。
【0016】
制御装置40は、水槽12内に設定水位まで水を供給すると、ヒータ31をオンして、水槽12内の水を、40℃を含む40℃温度帯内の温度に加熱する。この場合、40℃温度帯は、35℃から45℃の温度帯として設定されている。よって、水槽12内の水の温度は、35℃から45℃の温度範囲内に維持される。この40℃温度帯は、50℃以外の所定温度を含む非50℃温度帯の一例である。そして、この40℃温度帯は、洗剤に含まれる酵素が活性化する温度、例えば約40℃の温度を含む温度帯となっている。なお、40℃温度帯の温度範囲は、少なくとも40℃あるいは40℃付近の温度を含む温度範囲であれば、適宜変更することができる。
【0017】
制御装置40は、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に加熱すると、ヒータ31をオフして、モータ17の駆動を開始する。制御装置40は、モータ17の駆動を制御することによりドラム13を正転方向および反転方向に交互に回転させる。これにより、40℃温度帯内の温度に加熱された水によりドラム13内の洗濯物が洗われる。このとき、制御装置40は、水槽12内の水の温度が40℃温度帯の下限値、この場合、35℃よりも低くなった場合には、ヒータ31をオンして水槽12内の水を加熱する。また、制御装置40は、水槽12内の水の温度が40℃温度帯の上限値、この場合、45℃よりも高くなった場合には、ヒータ31をオフして水槽12内の水の加熱を停止する。これにより、制御装置40は、水槽12内の水の温度を40℃温度帯内の温度に維持する。
【0018】
制御装置40は、水槽12内の水の温度を40℃温度帯内の温度に加熱してモータ17の駆動を開始してから所定の第1設定期間T1が経過すると、モータ17の駆動を停止する。そして、制御装置40は、ヒータ31をオンして、水槽12内の水を、50℃を含む50℃温度帯内の温度に加熱する。この場合、50℃温度帯は、45℃から55℃の温度帯として設定されている。よって、水槽12内の水の温度は、45℃から55℃の温度範囲内に維持される。この50℃温度帯は、洗濯物に付着している油汚れが溶解する温度、例えば約50℃の温度を含む温度帯となっている。なお、50℃温度帯の温度範囲は、少なくとも50℃あるいは50℃付近の温度を含む温度範囲であれば、適宜変更することができる。
【0019】
制御装置40は、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に加熱すると、ヒータ31をオフして、モータ17の駆動を開始する。制御装置40は、モータ17の駆動を制御することによりドラム13を正転方向および反転方向に交互に回転させる。これにより、50℃温度帯内の温度に加熱された水によりドラム13内の洗濯物が洗われる。このとき、制御装置40は、水槽12内の水の温度が50℃温度帯の下限値、この場合、45℃よりも低くなった場合には、ヒータ31をオンして水槽12内の水を加熱する。また、制御装置40は、水槽12内の水の温度が50℃温度帯の上限値、この場合、55℃よりも高くなった場合には、ヒータ31をオフして水槽12内の水の加熱を停止する。これにより、制御装置40は、水槽12内の水の温度を50℃温度帯内の温度に維持する。
【0020】
制御装置40は、水槽12内の水の温度を50℃温度帯内の温度に加熱してモータ17の駆動を開始してから所定の第2設定期間T2が経過すると、モータ17の駆動を停止する。これにより、制御装置40は、複数の温度帯、この場合、40℃温度帯および50℃温度帯の温水により洗濯物を洗う温水洗い行程を終了する。この温水洗い行程において、水槽12内の水を非50℃温度帯内の温度、この場合、40℃温度帯内の温度に維持する期間は第1設定期間T1である。また、この温水洗い行程において、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に維持する期間は第2設定期間T2である。なお、第1設定期間T1および第2設定期間T2は、例えばドラム13内の洗濯物量に応じて設定するなど、適宜変更して設定することができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る温水洗い行程による洗濯物の洗浄効果を検証するために出願人が行った試験結果について説明する。
図4に例示するように、試験は、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度および50℃温度帯内の温度に順に加熱して洗い行程を実行したパターンA、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に加熱して洗い行程を実行したパターンB、水槽12内の水を加熱しないで洗い行程を実行したパターンCを比較する形態で行った。なお、水槽12内の水を加熱しない場合の水の温度は約20℃である。即ち、パターンA,Bでは、加熱前の水の温度は約20℃であり、パターンCでは、20℃の水により洗い行程全体を行った。また、試験は、室温が約20℃の環境下で行った。
【0022】
また、上述した各パターンA〜Cにおいて、ドラム13内には、一般社団法人日本電気工業会(JEMA:THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURER’S ASSOCIATION)で規格されている一般的な衣類を約5Kg投入した。また、洗剤は、一般的に市販されている酵素入りの洗剤を使用した。洗剤の使用量は、上述した各パターンA〜Cにおいて同量となるように調整した。また、上述した各パターンA〜Cにおいて、ドラム13内に投入する洗濯物には、汚れとしてデミグラスソースおよび牛脂を付着させた。汚れの付着量は、上述した各パターンA〜Cにおいて同量となるように調整した。
【0023】
また、パターンAでは、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に加熱して維持する期間つまり第1設定期間T1を15分とし、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に加熱して維持する期間つまり第2設定期間T2も15分とした。また、パターンBでは、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に加熱して維持する期間を30分とした。つまり、パターンA,Bにおいて、水槽12内の水が所定の温度帯内の温度に加熱され維持される期間は、何れも30分で同じである。
【0024】
以上の条件の下、上述した3つのパターンA〜Cについて、洗い行程実行後の色差ΔEを測定して比較した。この試験結果によれば、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に加熱した場合の色差ΔEは4.9、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に加熱した場合の色差ΔEは3.7、水槽12内の水を加熱しない場合の色差ΔEは27.3であった。色差ΔEが小さいほど、洗濯物から汚れが落ちていることを示している。よって、水槽12内の水を加熱して洗い行程を行うことにより、水槽12内の水を加熱しないで洗い行程を行う場合に比べ、洗濯物の洗浄効果を向上できることが確認された。また、水槽12内の水の温度が高いほど、洗濯物の洗浄効果を向上できることが確認された。
【0025】
本実施形態に係る洗濯機10によれば、制御装置40は、洗い行程において、水槽12内の水を、所定の温度を含む温度帯内の温度に加熱する。この構成によれば、洗濯物の汚れの種類に応じた温度帯、つまり、その汚れを落とすのに最も効果的な温度帯に含まれる温度に水槽12内の水を加熱することにより、洗濯物を一層効果的に洗うことができるようになる。
【0026】
本実施形態では、制御装置40は、洗い行程において、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に維持する期間と、非50℃温度帯である40℃温度帯内の温度に維持する期間と、を設ける。ここで、50℃温度帯内の温度に加熱された温水によれば、洗濯物に付着した例えば動物性油脂などの油汚れを効果的に溶解することができる。また、40℃温度帯内の温度に加熱された温水によれば、洗剤に含まれる酵素を効果的に活性化させることができる。よって、洗濯物に複数種類の汚れ、この場合、油汚れ、および、酵素により分解しやすい汚れが付着している場合であっても、それぞれの汚れを効果的に洗い落すことができ、洗濯物を一層効果的に洗うことができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、制御装置40は、水槽12内の水を、より高温である50℃温度帯内の温度に維持する期間よりも前に、より低温である40℃温度帯内の温度に維持する期間を設けている。そのため、水槽12内の水が、より高温である50℃温度帯内の温度に加熱されることにより酵素が失活してしまうことを回避することができ、酵素による洗浄効果を有効に発揮させることができる。
【0028】
なお、洗濯機10は、例えばユーザによる操作に応じて洗い行程の実行時間を調整可能に構成されている。そのため、洗い行程の実行時間が調整された結果、洗い行程の実行時間が増加した場合には、制御装置40は、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に維持する期間つまり第1設定期間T1の増加量を、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に維持する期間つまり第2設定期間T2の増加量よりも多くするように構成するとよい。
【0029】
また、洗い行程の実行時間が調整された結果、洗い行程の実行時間が減少した場合には、制御装置40は、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に維持する期間つまり第1設定期間T1の減少量を、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に維持する期間つまり第2設定期間T2の減少量よりも少なくするように構成するとよい。
【0030】
即ち、洗剤に含まれる酵素による汚れの分解効果は、時間が長いほど高くなる。これに対して、例えば動物性油脂などの油汚れを溶解させる効果は、時間を長くかけても大幅に効果が高くなることは期待できない。そのため、洗い行程の実行時間が増加した場合に、その増加分を、洗剤に含まれる酵素が活性化する期間つまり水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に維持する第1設定期間T1に極力多く割り当てることにより、また、洗い行程の実行時間が減少した場合に、その減少分を、洗剤に含まれる酵素が活性化する期間つまり水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に維持する第1設定期間T1に極力少なく割り当てることにより、洗剤に含まれる酵素が活性化する期間を極力長く確保することができる。よって、酵素による洗浄効果を一層有効に活用することができ、より効果的に洗濯物を洗うことができる。
【0031】
(第2実施形態)
図5に例示するように、本実施形態では、制御装置40は、水槽12内の水の温度を50℃温度帯内の温度に加熱してモータ17の駆動を開始してから所定の第2設定期間T2が経過すると、モータ17の駆動を停止する。そして、制御装置40は、さらに、ヒータ31をオンして、水槽12内の水を、60℃を含む60℃温度帯内の温度に加熱する。この場合、60℃温度帯は、55℃から65℃の温度帯として設定されている。よって、水槽12内の水の温度は、55℃から65℃の温度範囲内に維持される。60℃温度帯は、50℃を超える温度を含む50℃超温度帯の一例である。そして、この60℃温度帯は、水槽12内の水を除菌することが可能な温度、例えば約60℃の温度を含む温度帯となっている。なお、60℃温度帯の温度範囲は、少なくとも60℃あるいは60℃付近の温度を含む温度範囲であれば、適宜変更することができる。また、上述した50℃温度帯内の温度に加熱された温水によっても、ある程度の除菌効果を期待することができる。よって、50℃温度帯も、水槽12内の水を除菌することが可能な温度を含む温度帯として定義することができる。
【0032】
制御装置40は、水槽12内の水を60℃温度帯内の温度に加熱すると、ヒータ31をオフして、モータ17の駆動を開始する。制御装置40は、モータ17の駆動を制御することによりドラム13を正転方向および反転方向に交互に回転させる。これにより、60℃温度帯内の温度に加熱された水によりドラム13内の洗濯物が洗われる。このとき、制御装置40は、水槽12内の水の温度が60℃温度帯の下限値、この場合、55℃よりも低くなった場合には、ヒータ31をオンして水槽12内の水を加熱する。また、制御装置40は、水槽12内の水の温度が60℃温度帯の上限値、この場合、65℃よりも高くなった場合には、ヒータ31をオフして水槽12内の水の加熱を停止する。これにより、制御装置40は、水槽12内の水の温度を60℃温度帯内の温度に維持する。
【0033】
制御装置40は、水槽12内の水の温度を60℃温度帯内の温度に加熱してモータ17の駆動を開始してから所定の第3設定期間T3が経過すると、モータ17の駆動を停止する。これにより、制御装置40は、複数の温度帯、この場合、40℃温度帯、50℃温度帯、60℃温度帯の温水により洗濯物を洗う温水洗い行程を終了する。この温水洗い行程において、水槽12内の水を50℃超温度帯内の温度、この場合、60℃温度帯内の温度に維持する期間は第3設定期間T3である。なお、第3設定期間T3も、例えばドラム13内の洗濯物量に応じて設定するなど、適宜変更して設定することができる。そして、この洗い行程において、50℃温度帯は、洗剤に含まれる酵素が活性化する温度を含む温度帯内の温度、この場合、40℃温度帯内の温度と、水槽12内の水を除菌することが可能な温度を含む温度帯内の温度、この場合、60℃温度帯内の温度との間の温度を含む温度帯として定義することができる。
【0034】
本実施形態に係る洗濯機10によっても、複数種類の温度帯内の温度に水槽12内の水を加熱することにより、洗濯物に付着している複数種類の汚れを洗い落すことができ、洗濯物を一層効果的に洗うことができる。
【0035】
本実施形態では、制御装置40は、洗い行程において、非50℃温度帯であり且つ50℃超温度帯である60℃温度帯内の温度に維持する期間を設ける。ここで、60℃温度帯内の温度に加熱された温水によれば、水槽12内の水を除菌することが可能である。よって、洗濯物に付着している複数種類の汚れ、この場合、油汚れ、および、酵素により分解しやすい汚れを洗い落した後に、水槽12内の水、さらには洗濯物を除菌することができ、洗濯物を清潔に洗い上げることができる。
【0036】
また、本実施形態においても、より高温である60℃温度帯内の温度に維持する期間よりも前に、より低温である40℃温度帯内の温度に維持する期間を設けている。そのため、酵素の失活を回避することができ、酵素による洗浄効果を有効に発揮させることができる。
【0037】
なお、60℃温度帯の上限値を60℃とし、制御装置40は、洗い行程において水槽12内の水を60℃以下の温度に加熱するように構成してもよい。60℃を超える温水により洗濯物を洗うと、洗濯物の染料の色落ち、洗濯物の生地の傷みなどの不具合が生じる可能性が高くなる。そのため、洗い行程における水槽12内の水の温度が60℃を超えないようにすることにより、洗濯物の色落ちや傷みなどの不具合を抑えつつ、例えば動物性油脂などの汚れを効果的に洗い落とすことができる。
【0038】
(第3実施形態)
図6に例示するように、本実施形態では、制御装置40は、水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に維持する第1設定期間T1では、正転時および反転時においてドラム13の回転を例えば7秒オンし3秒オフする。また、制御装置40は、第1設定期間T1では、ドラム13の回転速度を例えば45rpmに制御する。一方、制御装置40は、水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に維持する第2設定期間T2では、正転時および反転時においてドラム13の回転を例えば7秒オンし7秒オフする。また、制御装置40は、第2設定期間T2では、ドラム13の回転速度を例えば35rpmに制御する。即ち、制御装置40は、洗い行程において水槽12内の水を50℃温度帯内の温度に維持する第2設定期間T2では、同じく洗い行程において水槽12内の水を40℃温度帯内の温度に維持する第1設定期間T1よりも、ドラム13の単位時間あたりの回転量を低下させる。
【0039】
水槽12内の水を、より高温である50℃温度帯内の温度に維持する期間においては、より低温である40℃温度帯内の温度に維持する期間に比べ、熱による洗濯物の傷みが発生しやすい。そのため、水槽12内の水を、より高温である50℃温度帯内の温度に維持する第2設定期間T2において、より低温である40℃温度帯内の温度に維持する期間よりもドラム13の単位時間あたりの回転量を低下させることにより、洗濯物に与えられる機械力を低減することができ、洗濯物が傷んでしまうことを回避することができる。
【0040】
(第4実施形態)
図7に例示するように、本実施形態では、制御装置40は、洗い行程の後に実行するすすぎ行程においても、水槽12内の水を加熱する。即ち、制御装置40は、水槽12内の水を加熱して洗濯物をすすぐ温水すすぎ行程を実行する。この場合、制御装置40は、水槽12内に設定水位まで水を供給すると、ヒータ31をオンして、水槽12内の水を、すすぎ用温度帯内の温度に加熱する。この場合、すすぎ用温度帯は、例えば40℃温度帯と同じく35℃から45℃の温度帯として設定されている。よって、水槽12内の水の温度は、35℃から45℃の温度範囲内に維持される。なお、このすすぎ行程において水槽12内に風呂水を供給する場合には、すすぎ用温度帯は、例えば60℃温度帯と同じく55℃から65℃の温度帯として設定するとよい。これにより、風呂水に含まれる雑菌を除菌できる効果が期待できる。
【0041】
制御装置40は、水槽12内の水をすすぎ用温度帯内の温度に加熱すると、ヒータ31をオフして、モータ17の駆動を開始する。制御装置40は、モータ17の駆動を制御することによりドラム13を正転方向および反転方向に交互に回転させる。これにより、すすぎ用温度帯内の温度に加熱された水によりドラム13内の洗濯物がすすがれる。このとき、制御装置40は、水槽12内の水の温度がすすぎ用温度帯の下限値よりも低くなった場合には、ヒータ31をオンして水槽12内の水を加熱する。また、制御装置40は、水槽12内の水の温度がすすぎ用温度帯の上限値よりも高くなった場合には、ヒータ31をオフして水槽12内の水の加熱を停止する。これにより、制御装置40は、水槽12内の水の温度をすすぎ用温度帯内の温度に維持する。
【0042】
制御装置40は、水槽12内の水の温度をすすぎ用温度帯内の温度に加熱してモータ17の駆動を開始してから所定の第4設定期間T4が経過すると、モータ17の駆動を停止する。これにより、制御装置40は、温水すすぎ用温度帯内の温度に加熱された温水により洗濯物をすすぐ温水すすぎ行程を終了する。この温水すすぎ行程において、水槽12内の水をすすぎ用温度帯内の温度に維持する期間は第4設定期間T4である。なお、第4設定期間T4も、例えばドラム13内の洗濯物量に応じて設定するなど、適宜変更して設定することができる。
【0043】
洗い行程により洗濯物から洗い落された汚れは、水槽12の表面やドラム13の表面に付着する場合がある。そのため、せっかく洗い行程で洗い落した汚れが、その後のすすぎ行程において、水槽12内の表面やドラム13内の表面から水槽12内の水に混ざって洗濯物に再付着するおそれがある。本実施形態に係る洗濯機10によれば、制御装置40は、洗い行程の後に行うすすぎ行程においても、水槽12内の水を加熱する。これにより、洗濯物に汚れが再付着したとしても、その汚れを洗濯物から効果的にすすぎ落すことができ、洗濯物を一層効果的にすすぐことができる。
【0044】
(その他の実施形態)
本実施形態は、上述した複数の実施形態に限られるものではなく、例えば、次のように拡張または変更することができる。例えば、本実施形態に係る洗濯機は、上述した複数の実施形態を組み合わせた構成としてもよい。また、本実施形態は、回転槽の回転軸が垂直軸となる、いわゆる縦軸型の洗濯機にも適用することができる。
【0045】
また、
図8に例示するように、洗濯機10は、温水を利用して洗い行程を実行した場合では、その後の脱水行程における動作内容を、温水を利用しないで洗い行程を実行した場合とは異ならせるように構成してもよい。即ち、加熱された水はその粘性が低下することから、水槽12内の水を加熱して洗い行程を実行した場合には脱水効率が向上する。そのため、温水を利用して洗い行程を実行した場合には、その後の脱水行程において、例えば、ドラム13の回転速度を温水を利用しない場合よりも低下させたり、脱水の動作時間を温水を利用しない場合よりも短くしたとしても、十分な脱水効率を得ることができる。よって、十分な脱水効率を得ながらも、消費電力量の削減や脱水行程の時間の短縮を図ることができる。
【0046】
また、洗濯機10は、水槽12内の水を循環させる循環機構部を備える構成としてもよい。循環機構部は、水槽12に連通する循環経路、水槽12内の水を循環経路を通して循環させる循環ポンプなどを備える。制御装置40は、例えば洗い行程やすすぎ行程において循環ポンプを駆動することにより、水槽12内の水を循環経路を通して循環させ、その循環させた水を循環経路の先端部の噴出口から水槽12内にシャワー状に噴出させる。そして、この循環機構部は、循環経路の途中に除菌剤投入部を備える。この除菌剤投入部には、例えば銀イオンを溶出する除菌剤が投入される。この構成によれば、循環経路を循環して水槽12内にシャワー状に噴射される水に、除菌成分である銀イオンが含まれるようになる。そのため、銀イオンによる除菌機能を備えた水をシャワー状に洗濯物に供給しながら洗い行程やすすぎ行程を行うことができ、洗濯物の洗浄効果を一層向上することができる。
【0047】
そして、洗濯機10が、このような循環機構部を備える構成では、
図9に例示するように、制御装置40は、温水を利用して洗い行程を実行した場合には、循環ポンプの動作内容を、温水を利用しないで洗い行程を実行した場合とは異ならせるように構成してもよい。即ち、温水を利用して洗い行程を実行する場合において循環ポンプを動作させる場合には、循環経路にも温水が流れるため、温水を利用しない場合に比べ、銀イオンが溶出しやすくなる。そのため、温水を利用して洗い行程を実行する場合において循環ポンプを動作させる場合には、例えば、循環ポンプのポンプモータの回転速度を温水を利用しない場合よりも低下させたり、動作時間を温水を利用しない場合よりも短くしたとしても、循環水に十分に銀イオンを溶出させることができ、十分な除菌効果を得ることができる。よって、十分な除菌効果を得ながらも、消費電力量の削減や循環時間の短縮を図ることができ、また、銀イオンが必要以上に溶出してしまうことを回避することができる。
【0048】
本実施形態に係る洗濯機によれば、洗い行程において、水槽内の水を、所定の温度を含む温度帯内の温度に加熱する。この構成によれば、洗濯物の汚れの種類に応じた温度帯、つまり、その汚れを落とすのに最も効果的な温度帯に含まれる温度に水槽内の水を加熱することにより、洗濯物を一層効果的に洗うことができる。
【0049】
なお、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。