特許第6777480号(P6777480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6777480電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777480
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20201019BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C02F1/469
   B01D61/46
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-180614(P2016-180614)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-43206(P2018-43206A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】日高 真生
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−058011(JP,A)
【文献】 特開2000−312883(JP,A)
【文献】 特開2012−196619(JP,A)
【文献】 特開2012−170906(JP,A)
【文献】 特開2011−020029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
1/46− 1/48
B01D 53/22
61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に位置し、前記陽極側のアニオン交換膜と前記陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、前記アニオン交換膜および前記カチオン交換膜を介して前記脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置であって、
前記電気式脱イオン水製造装置の運転を、被処理水を前記脱塩室に通水して得られた処理水を処理水タンクに貯留する第1の運転モードと、被処理水を前記脱塩室に通水して得られた処理水を前記脱塩室に還流させて循環させるか、または前記処理水を外部に排出する第2の運転モードとに切り替える制御部を有し、
前記制御部は、前記処理水タンク内の水位が所定の水位を上回った場合、または前記処理水の水質が所定の水質を下回った場合に、前記第1の運転モードから前記第2の運転モードに切り替え、
前記第2の運転モードでは、前記脱塩室への通水量が前記第1の運転モードよりも少なく、前記陽極と前記陰極との間に流れる電流値が、前記第1の運転モードにおける前記通水量に対する前記第2の運転モードにおける前記通水量の割合と同じ割合だけ、前記第1の運転モードよりも小さい、電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記一対の濃縮室には、それぞれイオン交換体が充填されている、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
前記脱塩室は、前記第2の運転モードにおいて前記処理水が前記被処理水を貯留する被処理水タンクを介して前記脱塩室に還流するように、前記被処理水タンクに接続されている、請求項1または2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記脱塩室は、前記第2の運転モードにおいて前記処理水が前記処理水タンクを介して前記脱塩室に還流するように、前記処理水タンクに接続されている、請求項1または2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
前記陽極を備えた陽極室と、前記陰極を備えた陰極室とを有し、
前記脱塩室は、前記第2の運転モードにおいて前記処理水の一部が前記陽極室および前記陰極室を介して外部に排出され、前記処理水の他の部分が前記一対の濃縮室を介して外部に排出されるように、前記陽極室、前記陰極室、および前記一対の濃縮室に接続されている、請求項1または2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
前記脱塩室は、前記第2の運転モードにおいて前記処理水タンク内の前記処理水が前記被処理水として前記脱塩室に供給されるように、前記処理水タンクに接続されている、請求項1または2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項7】
前記脱塩室と前記処理水タンクとは、前記処理水タンク内の前記処理水が水頭圧によって前記脱塩室に供給されるように接続されている。請求項6に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項8】
前記脱塩室への前記処理水の通水方向が、前記第1の運転モードと前記第2の運転モードとで互いに反対方向である、請求項5から7のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項9】
陽極と陰極との間に位置し、前記陽極側のアニオン交換膜と前記陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、前記アニオン交換膜および前記カチオン交換膜を介して前記脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置の運転方法であって、
被処理水を前記脱塩室に通水して得られた処理水を処理水タンクに貯留する第1の工程と、
被処理水を前記脱塩室に通水して得られた処理水を前記脱塩室に還流させて循環させるか、または前記処理水を外部に排出する第2の工程と、を含み、
前記第1の工程において、前記処理水タンク内の水位が所定の水位を上回った場合、または前記処理水の水質が所定の水質を下回った場合に、前記第1の工程を終了して前記第2の工程を実行し、
前記第2の工程では、前記脱塩室への通水量を前記第1の工程よりも少なくし、前記陽極と前記陰極との間に流す電流値を、前記第1の工程における前記通水量に対する前記第2の工程における前記通水量の割合と同じ割合だけ、前記第1の工程よりも小さくする、電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気式脱イオン水製造装置は、カチオン(陽イオン)のみを透過させるカチオン交換膜とアニオン(陰イオン)のみを透過させるアニオン交換膜との間に配置され、イオン交換体(アニオン交換体とカチオン交換体との少なくとも一方)が充填された脱塩室と、脱塩室の両側でカチオン交換膜およびアニオン交換膜の外側にそれぞれ配置された濃縮室とを基本構成として備えた装置である。脱塩室は、脱塩室と陽極との間にアニオン交換膜が位置し、脱塩室と陰極との間にカチオン交換膜が位置するように、陽極と陰極との間に配置されている。
【0003】
このような電気式脱イオン水製造装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水すると、被処理水中のイオン成分は脱塩室内のイオン交換体に捕捉される。それと同時に、脱塩室内では、イオン交換膜とイオン交換体との界面またはイオン交換体同士の界面で生じる電位差により、水の解離反応が進行し、水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)が生成される。そして、この生成された水素イオンと水酸化物イオンとによって、先にイオン交換体に補足されていたイオン成分はイオン交換され、イオン交換体から遊離する。遊離したイオン成分のうちカチオンは、直流電流によって駆動されてイオン交換体内を移動し、さらにカチオン交換膜を通過して陰極側の濃縮室に移動する。同様に、遊離したイオン成分のうちアニオンは、直流電流によって駆動されてイオン交換体内を移動し、さらにアニオン交換膜を通過して陽極側の濃縮室に移動する。こうして、脱塩室に供給された被処理水中のイオン成分が濃縮室に移動し、脱塩室から脱イオン水が得られるとともに、脱塩室のイオン交換体も再生される。一方で、イオン成分が移動してきた濃縮室には水を流すことで、そのイオン成分を濃縮水として外部に排出することができる。
【0004】
上述したように、電気式脱イオン水製造装置では、イオン交換体への不純物イオンの吸着とそのイオン交換体の電気的な再生、不純物イオンの濃縮室への移動という複数の過程によって、被処理水中の不純物イオンが除去される。このため、一般的なイオン交換樹脂を用いた吸着装置に比べ、装置起動時の処理水(脱イオン水)の水質の立ち上がりに時間がかかる傾向がある。特に、装置を一定時間運転した後で停止した場合、運転再開時の水質の立ち上がりに長時間かかることがある。これは、電気式脱イオン水製造装置が、その構成として、イオン成分が除去されイオン濃度が低減される脱塩室と、この脱塩室とイオン交換膜を挟んで配置され、脱塩室から移動してきたイオン成分によってイオン濃度が高められる濃縮室とを備えることから、装置の運転を停止したことで陽極と陰極との間に電圧が印加されていないとしたときに、濃縮室と脱塩室とのイオン濃度の勾配に基づいて濃縮室からイオン成分が脱塩室に拡散し、それが脱塩室内のイオン交換体に吸着してしまうためである。すなわち、脱塩室内のイオン交換体に不純物イオンが吸着された状態で装置を起動しても、その吸着された不純物イオンを再び濃縮室まで移動させる工程が必要になるためである。一例では、装置の運転停止前の状態に戻るまでに数時間から数十時間の時間を要するケースもある。
【0005】
以上の点を考慮すると、運転再開時の水質の立ち上がり時間を短縮する方法としては、装置の運転を停止する際に、電極への直流電圧の印加を停止した後も濃縮室への通水を継続して行い、濃縮室内に滞留して不純物イオンを多く含む水を外部に排出する(ブローする)ことが考えられる。しかしながら、この方法は、濃縮室でのスケールの発生を抑制するとともに運転電圧を低減するために濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている場合(例えば、特許文献1参照)には有効ではない。すなわち、濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている場合、上述のブロー運転を行ったとしても、濃縮室内のイオン交換樹脂に吸着したイオン成分は外部に排出されず、さらには徐々に脱塩室に拡散してしまい、運転再開時の水質の立ち上がりの問題を回避することは困難である。
【0006】
そこで、この水質の立ち上がりの問題を回避する別の方法として、特許文献2に記載されているように、ユースポイントで処理水の需要がないときにも、処理水を脱塩室に還流させて循環させることで、電気式脱イオン水製造装置の運転を停止させずに継続して行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−259646号公報
【特許文献2】特開平9−57271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、処理水の循環運転を行うことや直流電源を常時作動させることに伴う消費電力が無視できず、省エネルギーの観点から好ましくない。また、処理水の循環運転の間にも、濃縮室でイオン成分を取り込んだ濃縮水を外部に排出する必要があるが、処理水の循環運転が長期間にわたると、その排出量も無視できなくなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、エネルギーや水の無駄な消費を抑制しながら、装置起動時に発生し得る処理水の水質の立ち上がりの問題を回避する電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の電気式脱イオン水製造装置は、陽極と陰極との間に位置し、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、アニオン交換膜およびカチオン交換膜を介して脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置であって、電気式脱イオン水製造装置の運転を、被処理水を脱塩室に通水して得られた処理水を処理水タンクに貯留する第1の運転モードと、被処理水を脱塩室に通水して得られた処理水を脱塩室に還流させて循環させるか、または処理水を外部に排出する第2の運転モードとに切り替える制御部を有し、制御部は、処理水タンク内の水位が所定の水位を上回った場合、または処理水の水質が所定の水質を下回った場合に、第1の運転モードから第2の運転モードに切り替え、第2の運転モードでは、脱塩室への通水量が第1の運転モードよりも少なく、陽極と陰極との間に流れる電流値が、第1の運転モードにおける通水量に対する第2の運転モードにおける通水量の割合と同じ割合だけ、第1の運転モードよりも小さい。
【0011】
また、本発明の電気式脱イオン水製造装置の運転方法は、陽極と陰極との間に位置し、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、アニオン交換膜およびカチオン交換膜を介して脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置の運転方法であって、被処理水を脱塩室に通水して得られた処理水を処理水タンクに貯留する第1の工程と、被処理水を脱塩室に通水して得られた処理水を脱塩室に還流させて循環させるか、または処理水を外部に排出する第2の工程と、を含み、第1の工程において、処理水タンク内の水位が所定の水位を上回った場合、または処理水の水質が所定の水質を下回った場合に、第1の工程を終了して第2の工程を実行し、第2の工程では、脱塩室への通水量を第1の工程よりも少なくし、陽極と陰極との間に流す電流値を、第1の工程における通水量に対する第2の工程における通水量の割合と同じ割合だけ、第1の工程よりも小さくする。
【0012】
このような電気式脱イオン水製造装置によれば、第2の運転モード(第2の工程)における消費電力および外部への排水量を、第1の運転モード(第1の工程)と同じ条件(脱塩室への通水量および電極間の電流値)で第2の運転モード(第2の工程)を行った場合に比べて削減することができる。その結果、装置起動時に発生し得る処理水の水質の立ち上がりの問題を回避するために装置の継続運転を行った場合でも、消費電力および外部への排水量を削減することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、水やエネルギーの無駄な消費を抑制しながら、装置起動時に発生し得る処理水の水質の立ち上がりの問題を回避することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明を説明するための例示的なものであり、本発明を制限するものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。なお、図示した構成は、あくまで一例であって、例えば、各室の構成(数、配置など)を変更したり、バルブや計測器などを追加したりするなど、装置の使用目的や用途、要求性能に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0017】
電気式脱イオン水製造装置10は、電気泳動と電気透析とを組み合わせた装置であり、イオン交換体による被処理水の脱イオン化(脱塩)処理と、イオン交換体の再生処理とを同時に行う装置である。電気式脱イオン水製造装置10には、電気式脱イオン水製造装置10に供給される被処理水を貯留する被処理水タンク1と、電気式脱イオン水製造装置10で製造された処理水(脱イオン水)を貯留する処理水タンク2とが接続されている。
【0018】
電気式脱イオン水製造装置10は、陽極11を備えた陽極室E1と、陰極12を備えた陰極室E2と、陽極室E1と陰極室E2との間に設けられた脱塩室Dと、脱塩室Dの両側に配置された一対の濃縮室C1,C2であって、脱塩室Dの陽極11側で、アニオン交換膜a1を介して脱塩室Dと隣接する陽極側濃縮室C1と、脱塩室Dの陰極12側で、カチオン交換膜c1を介して脱塩室Dと隣接する陰極側濃縮室C2とを含む一対の濃縮室C1,C2と、を有している。陽極側濃縮室C1は、カチオン交換膜c2を介して陽極室E1と隣接し、陰極側濃縮室C2は、アニオン交換膜a2を介して陰極室E2と隣接している。
【0019】
脱塩室Dには、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填され、好ましくは、カチオン交換体とアニオン交換体との混合物が充填されている。すなわち、カチオン交換体とアニオン交換体とがいわゆる混床形態で充填されていることが好ましい。カチオン交換体としては、カチオン交換樹脂、カチオン交換繊維、モノリス状多孔質カチオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なカチオン交換樹脂が好適に用いられる。カチオン交換体の種類としては、弱酸性カチオン交換体、強酸性カチオン交換体等が挙げられる。アニオン交換体としては、アニオン交換樹脂、アニオン交換繊維、モノリス状多孔質アニオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なアニオン交換樹脂が好適に用いられる。アニオン交換体の種類としては、弱塩基性アニオン交換体、強塩基性アニオン交換体等が挙げられる。
【0020】
陽極側濃縮室C1および陰極側濃縮室C2は、脱塩室Dから排出されるアニオン成分およびカチオン成分をそれぞれ取り込み、それらを濃縮水によって外部に排出するために設けられている。電気式脱イオン水製造装置10の電気抵抗を抑えるために、各濃縮室C1,C2にはイオン交換体が充填されていることが好ましい。
【0021】
陽極室E1には、金属の網状体あるいは板状体からなる陽極11が収容されている。陰極室E2には、金属の網状体あるいは板状体からなる陰極12が収容されている。電気式脱イオン水製造装置1の電気抵抗を抑えるために、陽極室E1および陰極室E2にはイオン交換体が充填されていることが好ましい。
【0022】
脱塩室Dは、流路f1を介して被処理水タンク1に接続され、流路f2を介して処理水タンク2に接続されている。流路f1には、被処理水を送出するためのポンプ13が設けられ、流路f2には、バルブ14と、流路f2を流れる処理水の水質(例えば、導電率、比抵抗など)を計測するための水質計15とが設けられている。被処理水タンク1からの流路f1は、途中で分岐して、各濃縮室C1,C2と陰極室E2にも接続されている。各濃縮室C1,C2には、流路f1を通じて供給される濃縮水を外部に排出するための流路f3が接続されている。陰極室E2は、流路f4を介して陽極室E1に接続され、陽極室E1には、陽極室E1および陰極室E2に供給される電極水を外部に排出するための流路f5が接続されている。なお、流路f1が陽極室E1に接続され、流路f5が陰極室E2に接続されていてもよい。また、流路f2から分岐して被処理水タンク1に接続された流路f6が設けられ、流路f6には、バルブ16が設けられている。
【0023】
被処理水タンク1には、流路f7が接続され、被処理水として、好ましくは逆浸透(RO)膜やイオン交換樹脂で前処理した水(導電率が0.1〜100μS/cmの水)が必要に応じて供給されるようになっている。処理水タンク2は、配管(図示せず)を介してユースポイントに接続され、処理水タンク2内の処理水をユースポイントに供給することができる。処理水タンク2には、処理水タンク2内の水位を計測するための水位計17が設けられている。
【0024】
さらに、電気式脱イオン水製造装置10は、電気式脱イオン水製造装置10の運転を2つの運転モードに切り替える制御部3を有している。以下、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の2つの運転モード、すなわち、採水運転モードと循環運転モードについて説明する。
【0025】
採水運転モード(第1の運転モード)は、電気式脱イオン水製造装置10の通常運転時に行われる運転モードである。この採水運転モードでは、ユースポイントで使用される処理水を補充するために、被処理水を脱塩室Dに通水して得られた処理水を処理水タンク2に貯留する工程が行われる。
【0026】
採水運転モードが開始されると、流路f2のバルブ14が開放され、流路f6のバルブ16が閉鎖される。そして、定電流運転が行われ、すなわち、陽極11、陰極12間には、両極11,12間に流れる電流値が所定の値になるように直流電圧が印加され、脱塩室Dには、ポンプ13の作動により、流路f1を通じて被処理水タンク1から被処理水が供給される。このとき、陽極側濃縮室C1および陰極側濃縮室C2には、被処理水の一部が濃縮水として供給され、同様に、陽極室E1および陰極室E2には、被処理水の一部が電極水として供給されている。被処理水中のカチオン成分およびアニオン成分は、被処理水が脱塩室Dを通過する際に、脱塩室Dに充填されたカチオン交換体およびアニオン交換体にそれぞれ吸着されて除去される。こうして、カチオン成分およびアニオン成分が除去された被処理水は、処理水(脱イオン水)として、処理室Dから流路f2を通じて処理水タンク2に貯留される。
【0027】
一方で、脱塩室Dでは、水が水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)とに解離する水解離反応が、連続的に進行している。Hはカチオン交換体に吸着したカチオン成分と交換され、OHはアニオン交換体に吸着したアニオン成分と交換される。こうして、脱塩室Dに充填されたカチオン交換体およびアニオン交換体がそれぞれ再生される。
【0028】
脱塩室Dのカチオン交換体から遊離したカチオン成分は、陽極11、陰極12間の電位差によって、陰極12側に引き寄せられ、カチオン交換膜c1を通過して陰極側濃縮室C2に移動する。陰極側濃縮室C2に移動したカチオン成分は、陰極側濃縮室C2に供給される濃縮水に取り込まれ、濃縮水と共に流路f3を通じて外部に排出される。脱塩室Dのアニオン交換体から遊離したアニオン成分は、陽極11、陰極12間の電位差によって、陽極側11に引き寄せられ、アニオン交換膜a1を通過して陽極側濃縮室C1に移動する。陽極側濃縮室C1に移動したアニオン成分は、陽極側濃縮室C1に供給される濃縮水に取り込まれ、濃縮水と共に流路f3を通じて外部に排出される。
【0029】
循環運転モード(第2の運転モード)は、例えばユースポイントで処理水の需要がないときなど、処理水タンク2内の処理水の未使用時に行われる運転モードである。この循環運転モードでは、被処理水を脱塩室Dに通水して得られた処理水を処理水タンク2に貯留させずに、脱塩室Dに還流させて循環させる工程が行われる。
【0030】
循環運転モードでは、通常運転時のモードと同様の脱塩処理が行われるが、循環運転モードが開始されると、流路f2のバルブ14が閉鎖され、流路f6のバルブ16が開放される。そのため、脱塩室Dを流出した処理水は、流路f2から流路f6に流入し、被処理水タンク1から流路f1を通じて再び脱塩室Dに流入する。こうして、脱塩室Dから流出した処理水が被処理水タンク1を介して脱塩室Dに還流することで、処理水の循環運転が行われる。
【0031】
一方、循環運転モードでは、ポンプ13の出力が制御され、脱塩室Dへの通水量が採水運転モードよりも少なくなるように設定される。それに応じて、陽極11と陰極12との間に流れる電流値も採水運転モードと同じか、それよりも小さくなるように設定される。その結果、循環運転モードでは、採水運転モードと同じ条件(脱塩室Dへの通水量および電極11,12間の電流値)で処理水の循環運転を行った場合に比べて、ポンプ13の出力を下げるとともに、電流値を同じかまたは小さくすることができ、装置全体の消費電力を削減することができる。また、循環運転モードでは、脱塩室Dへの通水量が少なくなるため、濃縮室C1,C2への濃縮水の通水量も少なくて済み、それにより、外部への排水量も削減することができる。すなわち、装置起動時に発生し得る処理水の水質の立ち上がりの問題を回避するための継続運転として、本実施形態の循環運転モードで運転を行うことで、装置全体の消費電力および外部への排水量を削減することが可能になる。
【0032】
電極11,12間の電流値の引き下げ率(採水運転モードにおける電流値に対する循環運転モードにおける電流値の割合)は、脱塩室Dへの通水量の引き下げ率(採水運転モードにおける通水量に対する循環運転モードにおける通水量の割合)と同じであることが好ましい。これは、循環運転モードにおいて、採水運転モードと同じ電流効率となり、同じ処理水質を維持できるためである。
【0033】
なお、ユースポイントで処理水の需要があり、処理水タンク2内の処理水が使用されている場合であっても、その使用量によっては、処理水タンク2内の水位が満水に近くなることがある。その場合には、採水運転モードから循環運転モードへの切り替えは、処理水タンク2内の処理水の使用の有無にかかわらず、処理水タンク2内の水位に基づいて行うようになっていてよい。すなわち、水位計17により計測された処理水タンク2内の水位が所定の水位を上回った場合に、採水運転モードから循環運転モードへの切り替えを行うようになっていてよい。また、採水運転モードから循環運転モードへの切り替えは、得られる処理水の水質に基づいて行うようになっていてもよい。すなわち、水質計15により計測された処理水の水質が所望の水質を下回った場合に、採水運転モードから循環運転モードへの切り替えを行い、所望の処理水質が得られるまで処理水の循環運転を行うようになっていてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、脱塩室は1つだけ設けられているが、脱塩室は2つ以上設けられていてもよい。この場合、脱塩室と濃縮室とは、カチオン交換膜またはアニオン交換膜を介して交互に設けられ、最も陽極側に位置する濃縮室が陽極室と隣接し、最も陰極側に位置する濃縮室が陰極室と隣接することになる。一方で、陽極室に隣接する濃縮室を省略して、陽極室と脱塩室とを隣接させたり、陰極室に隣接する濃縮室を省略して、陰極室と脱塩室とを隣接させたりすることもできる。この場合、陽極室および陰極室が濃縮室を兼ねることになり、すなわち、陽極室または陰極室に隣接する脱塩室で除去された被処理水中のイオン成分が、陽極室または陰極室に移動して、電極水と共に外部に排出されるようになる。このような構成は、脱塩室の数にかかわらず適用可能であり、上述した脱塩室が1つだけ設けられている場合にも適用可能である。いずれの場合であっても、各脱塩室は、陽極と陰極との間に位置し、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とで区画されている。
【0035】
また、脱塩室は、中間イオン交換膜によって直流電流の通電方向に2つに分割されていてもよい。この場合、それら2つの小脱塩室は、直列流路を形成し、アニオン交換膜と隣接する陽極側の小脱塩室には、少なくともアニオン交換体が充填され、カチオン交換膜と隣接する陰極側の小脱塩室には、少なくともカチオン交換体が充填されている。中間イオン交換膜は、被処理水の水質や処理水(脱イオン水)に求められる水質、各小脱塩室に充填されるイオン交換体の種類などを考慮して選択することができ、例えば、アニオン交換膜またはカチオン交換膜の単一膜であってもよく、あるいはバイポーラ膜であってもよい。
【0036】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0037】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、循環運転モードにおける処理水の循環経路を変更した変形例である。第1の実施形態では、処理室Dと処理水タンク2とを接続する流路f2から分岐して被処理水タンク1に接続された流路f6が設けられているが、本実施形態では、処理水タンク2と流路f1とを接続する流路f8が設けられている。流路f8には、処理水を送出するためのポンプ18と、バルブ19とが設けられ、これに応じて、流路f1には、新たにバルブ20が設けられている。また、本実施形態では、流路f2に設けられていたバルブ14は設けられていない。
【0038】
本実施形態の採水運転モードでは、流路f1のバルブ20が開放されて、第1の実施形態と同様の運転が行われ、処理水が処理水タンク2に貯留される。一方で、循環運転モードでは、流路f1のバルブ20が閉鎖されるとともに、流路f8のバルブ19が開放される。そして、ポンプ13の作動が停止し、ポンプ18が作動することで、処理水タンク2内の処理水が流路f1に流入する。こうして、脱塩室Dから流出した処理水が処理水タンク2を介して脱塩室Dに還流することで、処理水の循環運転が行われる。
【0039】
本実施形態においても、循環運転モードでは、装置全体の消費電力および外部への排水量が削減されるように、脱塩室Dへの通水量が採水運転モードよりも少なくなるように設定され、陽極11と陰極12との間に流れる電流値も採水運転モードと同じか、それよりも小さくなるように設定される。なお、本実施形態の循環運転モードでは、被処理水として処理水タンク2内の処理水が脱塩室Dに供給されるため、脱塩室Dで脱塩処理が行われなくてもよく、電極11,12間に流れる電流値は0であってもよい。
【0040】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、処理水タンク2内の処理水の未使用時に、循環運転モードの代わりに、被処理水を脱塩室Dに通水して得られた処理水を外部に排出するブロー運転モードが実行される点で、第1の実施形態と異なっている。以下、図3(a)および図3(b)を参照して、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置について説明する。図3(a)および図3(b)は、それぞれ本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の採水運転モードおよびブロー運転モードにおける流路構成を示す概略図である。以下、上述した実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0041】
本実施形態では、流路f2から分岐した流路f6が、第1の実施形態とは異なり、被処理水タンク1にではなく流路f1に接続されている。これに応じて、流路f1には、新たにバルブ21が設けられている。
【0042】
本実施形態の採水運転モードでは、図3(a)に示すように、流路f1のバルブ21と流路f2のバルブ14が開放され、流路f6のバルブ16が閉鎖されて、第1の実施形態と同様の運転が行われ、処理水が処理水タンク2に貯留される。
【0043】
一方、ブロー運転モード(第2の運転モード)が開始されると、図3(b)に示すように、流路f1のバルブ21と流路f2のバルブ14が閉鎖され、流路f6のバルブ16が開放される。このため、流路f1を通じて被処理水タンク1から供給される被処理水は、流路f6を通じて脱塩室Dに流入し、採水運転モードとは反対方向に脱塩室Dを通過して流出する。そして、脱塩室Dを流出した処理水は、一部が陰極室E2に流入して、流路f4および陽極室E1から流路f5を介して外部に排出されるとともに、残りの部分が一対の濃縮室C1,C2に流入して、流路f3を介して外部に排出される。こうして、脱塩室Dを流出した処理水が、陽極室E1、陰極室E2、および一対の濃縮室C1,C2を介して外部に排出されることで、処理水のブロー運転が行われる。
【0044】
本実施形態のブロー運転モードでは、上述した実施形態の循環運転モードと同様に、脱塩室Dへの通水量が採水運転モードよりも少なくなるように設定され、陽極11と陰極12との間に流れる電流値も採水運転モードと同じか、それよりも小さくなるように設定される。これにより、本実施形態のブロー運転モードにおいても、採水運転モードと同じ条件(脱塩室Dへの通水量および電極11,12間の電流値)で処理水のブロー運転を行った場合に比べて、装置全体の消費電力を削減するとともに、外部への排水量を削減することができる。すなわち、装置起動時に発生し得る処理水の水質の立ち上がりの問題を回避するための継続運転として、本実施形態のブロー運転モードで運転を行うことで、装置全体の消費電力および外部への排水量を削減することが可能になる。
【0045】
なお、本実施形態のブロー運転モードでは、脱塩室Dへの通水方向が採水運転モードと反対方向(向流)であることから、処理水質が低下したときにブロー運転モードを行うことで、脱塩室Dに充填されたイオン交換体が向流再生され、高効率でイオン交換体の回生効果を得ることもできる。
【0046】
(第4の実施形態)
図4(a)および図4(b)は、それぞれ本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の採水運転モードおよびブロー運転モードにおける流路構成を示す概略図である。以下、上述した実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0047】
本実施形態は、第3の実施形態に対して、ブロー運転モードにおける脱塩室Dへの被処理水の供給経路を変更した変形例である。第3の実施形態では、流路f2から分岐して流路f1に接続された流路f6が設けられているが、本実施形態では、流路f2から分岐して処理水タンク2に接続された流路f9が設けられている。流路f9には、バルブ22が設けられている。
【0048】
本実施形態の採水運転モードでは、図4(a)に示すように、流路f1のバルブ21と流路f2のバルブ14が開放され、流路f9のバルブ22が閉鎖されて、第1の実施形態と同様の運転が行われ、処理水が処理水タンク2に貯留される。
【0049】
一方、ブロー運転モードが開始されると、図4(b)に示すように、流路f1のバルブ21と流路f2のバルブ14が閉鎖されるとともに、流路f9のバルブ22が開放され、ポンプ13の作動が停止される。ここで、流路f9は、処理水タンク2内の処理水が水頭圧によって脱塩室Dに供給されるように、処理水タンク2と脱塩室Dとを接続している。このため、処理水タンク2内の処理水は、流路f9および流路f2を通じて脱塩室Dに流入し、採水運転モードとは反対方向に脱塩室Dを通過して流出する。そして、脱塩室Dを流出した処理水は、陰極室E2に流入して、流路f4および陽極室E1から流路f5を介して外部に排出されるとともに、一対の濃縮室C1,C2に流入して、流路f3を介して外部に排出される。こうして、脱塩室Dを流出した処理水が、陽極室E1、陰極室E2、および一対の濃縮室C1,C2を介して外部に排出されることで、処理水のブロー運転が行われる。
【0050】
本実施形態においても、ブロー運転モードでは、装置全体の消費電力および外部への排水量が削減されるように、脱塩室Dへの通水量が採水運転モードよりも少なくなるように設定され、陽極11と陰極12との間に流れる電流値も採水運転モードと同じか、それよりも小さくなるように設定される。特に、本実施形態のブロー運転モードは、水頭圧を利用して送水を行っているため、ポンプを使用していない点で、他の実施形態に比べて有利である。なお、本実施形態のブロー運転モードでは、被処理水として処理水タンク2内の処理水が脱塩室Dに供給されるため、脱塩室Dで脱塩処理が行われなくてもよく、電極11,12間に流れる電流値は0であってもよい。また、第3の実施形態と同様に、脱塩室Dに充填されたイオン交換体の回生効果を得ることもできる。
【0051】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
本実施例では、図1に示す電気式脱イオン水製造装置を用いて、採水運転モードで一定時間の運転を行った後、循環運転モードで22時間の運転を行い、採水運転モードに運転を再度切り替えた後の処理水質(処理水比抵抗)を測定した。被処理水として、導電率が3〜4μS/cmの2段RO透過水を用い、循環運転モードでの運転は、採水運転モードにおいて比抵抗値が18.2MΩ・cmの処理水が得られた後、処理水タンク内の水位が所定の上限水位以上になった時点で開始した。採水運転モードでは、処理流量(処理室に流入させる被処理水の流量)、濃縮水流量、および電極水流量を、それぞれ500L/h、50L/h、および20L/hとし、循環運転モードでは、処理流量、濃縮水流量、および電極水流量を、それぞれ250L/h、25L/h、および10L/hとした。運転電流(電極間に流す電流値)は、採水運転モードおよび循環運転モード共に、2.5Aとした。
【0053】
(実施例2)
循環運転モードでの運転電流を1.25Aとした以外、実施例1と同様の条件で測定を行った。
【0054】
(実施例3)
本実施例では、図2に示す電気式脱イオン水製造装置を用い、循環運転モードでの運転電流を1.25Aとし、処理水タンク内の水位に応じて採水運転モードと循環運転モードとを適宜切り替えながら循環運転モードでの運転を合計で22時間行った以外、実施例1と同様の条件で測定を行った。すなわち、本実施例では、循環運転モードにおいて、被処理水として処理水タンク内の処理水が脱塩室に供給されるため、処理水タンク内の水位が所定の下限水位以下になった場合に所定の上限水位以上になるまで採水運転モードを実行するように、採水運転モードと循環運転モードとを適宜切り替えながら循環運転モードでの運転を合計で22時間行った。
【0055】
(実施例4)
循環運転モードにおける処理流量、濃縮水流量、および電極水流量をそれぞれ50L/h、5L/h、および1L/hとし、循環運転モードにおける運転電流を0Aとした以外、実施例3と同様の条件で測定を行った。
【0056】
(実施例5)
本実施例では、図3に示す電気式脱イオン水製造装置を用い、循環運転モードで運転を行う代わりに、ブロー運転モードで運転を行い、ブロー運転モードにおける処理流量、濃縮水流量、および電極水流量を、それぞれ50L/h、40L/h、および10L/hとし、ブロー運転モードにおける運転電流を0.25Aとした以外、実施例1と同様の条件で測定を行った。
【0057】
(実施例6)
本実施例では、図4に示す電気式脱イオン水製造装置を用い、実施例3と同様に、処理水タンク内の水位に応じて採水運転モードとブロー運転モードとを適宜切り替えながらブロー運転モードでの運転を合計で22時間行った以外、実施例5と同様の条件で測定を行った。
【0058】
(比較例1)
採水運転モードで一定時間の運転を行い、比抵抗値が18.2MΩ・cmの処理水が得られた後、循環運転モードで22時間の運転を行う代わりに、装置の運転を22時間停止した後で採水運転モードでの運転を再開した以外、実施例1と同様の条件で測定を行った。
【0059】
(比較例2)
循環運転モードにおける処理流量、濃縮水流量、および電極水流量を、採水運転モードと同様に、それぞれ500L/h、50L/h、および20L/hとした以外、実施例1と同様の条件で測定を行った。
【0060】
なお、実際には、実施例1〜6および比較例1,2において、脱塩室が5室設けられた電気式脱イオン水製造装置を用いて測定を行った。各実施例および各比較例に共通する各室の仕様は、以下の通りである。ここで、CERはカチオン交換樹脂、AERはアニオン交換樹脂の略である。
・陽極室:寸法200×300×8mm CER充填
・陰極室:寸法200×300×8mm AER充填
・脱塩室:寸法200×300×16mm(5室とも) AER/CER充填
・濃縮室:寸法200×300×8mm(6室とも) AER充填
【0061】
表1に、実施例1〜6および比較例1,2における測定結果、具体的には、採水運転モードでの運転再開10秒後での処理水比抵抗を示す。なお、比較のために、表1には、継続運転(循環運転およびブロー運転)中の排水量の積算値(総排水量)、運転電流、およびポンプの動作状況も示している。
【0062】
【表1】
【0063】
継続運転を行わない比較例1と比べて、実施例1〜6では、処理水の水質の立ち上がりに関して良好な結果が得られていることが確認された。また、表1から、実施例2,4〜6は、処理水の水質の立ち上がりの点では実施例1,3より若干劣るものの、総排水量および消費電力(運転電流およびポンプの動作状況)の少なくとも一方で、実施例1,3よりも良好であることがわかる。また、すべての実施例で、同様に継続運転を行った比較例2と比べて、総排水量が大幅に削減されていることが分かる。したがって、実施例1〜6では、継続運転を行うことで処理水の水質の立ち上がりの問題が回避されるとともに、総排水量および消費電力の削減が可能になることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1 被処理水タンク
2 処理水タンク
3 制御部
10 電気式脱イオン水製造装置
11 陽極
12 陰極
13,18 ポンプ
14,16,19,20〜22 バルブ
15 水質計
17 水位計
D 脱塩室
C1 陽極側濃縮室
C2 陰極側濃縮室
E1 陽極室
E2 陰極室
a1,a2 アニオン交換膜
c1,c2 カチオン交換膜
f1〜f9 流路
図1
図2
図3
図4