(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クレーンに接続された吊上げ治具に搬送物を連結して目標位置まで搬送する際に、前記目標位置に設けられた複数のガイドピンが、前記吊上げ治具に設けられた複数のガイドブッシュにそれぞれ挿入されるように実施される、前記吊上げ治具の前記目標位置に対する位置決め作業を支援する搬送支援装置であって、
前記複数のガイドブッシュに対する前記複数のガイドピンの相対位置をそれぞれの検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記搬送物の前記目標位置に対する位置関係を演算する演算部と、
前記演算部の演算結果を出力する出力部と、
を備え、
前記複数のガイドピンは、前記目標位置に設置された載置スタンドに隣接する壁面から突出した突出壁の上面に偏在して設けられている、搬送支援装置。
前記検出部は、前記位置決め作業が実施される際に、前記複数のガイドブッシュの各々の上方に配置された撮像装置によって前記複数のガイドブッシュの各々を撮像した撮像画像に基づいて、前記相対位置を検出する、請求項1に記載の搬送支援装置。
前記検出部は、前記撮像画像について、各画素の輝度が所定閾値以上であるか否かを判定することにより二値化処理を実施して、前記複数のガイドブッシュ及び前記ガイドピンを特定する、請求項2に記載の搬送支援装置。
クレーンに接続された吊上げ治具に搬送物を連結して目標位置まで搬送する際に、前記目標位置に設けられた複数のガイドピンが、前記吊上げ治具に設けられた複数のガイドブッシュにそれぞれ挿入されるように実施される、前記吊上げ治具の前記目標位置に対する位置決め作業を支援する搬送支援方法であって、
前記複数のガイドブッシュに対する前記複数のガイドピンの相対位置をそれぞれの検出する検出工程と、
前記検出工程の検出結果に基づいて、前記搬送物の前記目標位置に対する位置関係を演算する演算工程と、
前記演算工程の演算結果を出力する出力工程と、
を備え、
前記複数のガイドピンは、前記目標位置に設置された載置スタンドに隣接する壁面から突出した突出壁の上面に偏在して設けられている、搬送支援方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで原子炉容器内に格納されている炉内構造物は高線量物であるため、上述のような搬送作業は、作業現場から隔離された環境にいる作業員によって、カメラの撮像画像を介して遠隔的に行われる。このように直接目視による確認が困難な環境で、限られた視界の撮像画像を参考しながら位置決め作業を実施することは難易度が高く、熟練者の技術が求められる。
【0007】
本発明の少なくとも1実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、作業者の技量に依存することなく、搬送物の目標位置に対する位置決めを容易且つ精度のよく実施可能な搬送支援装置及び搬送支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも1実施形態に係る搬送支援装置は上記課題を解決するために、
クレーンに接続された吊上げ治具に搬送物を連結して目標位置まで搬送する際に、前記目標位置に設けられた複数のガイドピンが、前記吊上げ治具に設けられた複数のガイドブッシュにそれぞれ挿入されるように実施される、前記吊上げ治具の前記目標位置に対する位置決め作業を支援する搬送支援装置であって、
前記複数のガイドブッシュに対する前記複数のガイドピンの相対位置をそれぞれの検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記搬送物の前記目標位置に対する位置関係を演算する演算部と、
前記演算部の演算結果を出力する出力部と、
を備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、検出部によって、吊上げ治具に設けられた複数のガイドブッシュと、搬送先である目標位置に設けられた複数のガイドピンとの相対位置がそれぞれ検出される。検出部の検出結果は、演算部にて解析されることにより、搬送物の目標位置に対する位置関係が幾何学的に演算され、数値化される。演算部の演算結果は出力部から出力されることで、クレーンを操作する作業者は、目標位置を定量的に把握することができる。その結果、作業者の技量に依存することなく位置決めが可能となる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記検出部は、前記位置決め作業が実施される際に、前記複数のガイドブッシュの各々の上方に配置された撮像装置によって前記複数のガイドブッシュの各々を撮像した撮像画像に基づいて、前記相対位置を検出する。
【0011】
上記(2)の構成によれば、検出部における相対位置の検出は、ガイドブッシュの上方に配置された撮像装置によってガイドブッシュを撮像することで、位置決め作業の際に、撮像画像から特定されるガイドブッシュ及びガイドピンに基づいて行われる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では上記(2)の構成において、
前記検出部は、前記撮像画像について、各画素の輝度が所定閾値以上であるか否かを判定することにより二値化処理を実施して、前記複数のガイドブッシュ及び前記ガイドピンを特定する。
【0013】
上記(3)の構成によれば、撮像装置で取得される撮像画像に対して二値化処理を実施することにより、撮像画像をモノクロ画像に変換する。モノクロ画像はデータ容量が少なく、処理速度の向上に貢献する。そのため、本構成では、検出部にて撮像画像からガイドブッシュ及びガイドピンを迅速に特定でき、その結果、リアルタイムな支援制御が可能となる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか1構成において、
前記クレーンはポーラクレーンであり、
前記目標位置は前記ポーラクレーンの回動中心より径方向外側に設定されている。
【0015】
上記(4)の構成によれば、搬送作業を行うためのクレーンとしてポーラクレーンが採用される。搬送先である目標位置が、ポーラクレーンの回動中心より径方向外側に設定される場合、目標位置が回動中心に近い場合に比べてクレーンの操作難易度が高くなる。このような場合であっても、上述したように、搬送物の目標位置に対する位置関係を定量的に出力することで、作業者は、その出力結果を参照することで、クレーンを容易に操作して精度のよい位置決め作業を行うことができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では上記(4)の構成において、
前記複数のガイドピンは、前記目標位置に設置された載置スタンドの周方向に沿って配置されている。
【0017】
上記(5)の構成によれば、位置決め作業で搬送先を特定するための基準となるガイドピンが載置スタンドに直接設けられる。このような場合、ガイドピンが載置スタンドの周方向に沿って配置されることで、精度のよい位置決めが可能となる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では上記(4)の構成において、
前記複数のガイドピンは、前記目標位置に設置された載置スタンドに隣接する壁面から突出した突出壁の上面に偏在して設けられている。
【0019】
上記(6)の構成によれば、位置決め作業で搬送先を特定するための基準となるガイドピンが、目標位置に設置された載置スタンドに隣接する壁面から突出した突出壁の上面に設けられる。このような場合、位置決め作業の精度は、載置スタンドと突出壁との間に存在する誤差等によって少なからず影響を受けやすいが、上述のように演算部の演算結果を定量的に出力することで、作業者の技量に依存することなく精度のよい位置決めが可能となる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか1構成において、
前記吊上げ治具のうち前記ガイドブッシュより上方側には、前記ガイドブッシュを照射する光源が設けられている。
【0021】
上記(7)の構成によれば、ガイドブッシュの上方側から光源でガイドブッシュを照射することで、位置決め作業の際に、ガイドブッシュと、ガイドブッシュに挿入されるガイドピンとの位置関係を明瞭に検出できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では上記(1)から(7)のいずれか1構成において、
前記複数のガイドピンの先端部には、前記ガイドピンの中心軸に対応する位置に反射部材が設けられている。
【0023】
上記(8)の構成によれば、ガイドピンの中心軸に対応する位置に反射部材が設けられることで、検出部によってガイドピンの中心をより精度よく検出できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では上記(1)から(8)のいずれか1構成において、
前記搬送物は原子炉容器内に収納される炉内構造物である。
【0025】
上記(9)の構成によれば、搬送物が原子炉容器内に格納される高線量物である炉内構造物である場合、上述のような搬送作業は、作業現場から隔離された環境にいる作業員によって、カメラの撮像画像を介して遠隔的に行われるが、演算部の演算結果が定量的に出力されることで、作業者の技量に依存することなく精度のよい位置決めが可能となる。
【0026】
(10)本発明の少なくとも1実施形態に係る搬送支援方法は上記課題を解決するために、
クレーンに接続された吊上げ治具に搬送物を連結して目標位置まで搬送する際に、前記目標位置に設けられた複数のガイドピンが、前記吊上げ治具に設けられた複数のガイドブッシュにそれぞれ挿入されるように実施される、前記吊上げ治具の前記目標位置に対する位置決め作業を支援する搬送支援方法であって、
前記複数のガイドブッシュに対する前記複数のガイドピンの相対位置をそれぞれの検出する検出工程と、
前記検出工程の検出結果に基づいて、前記搬送物の前記目標位置に対する位置関係を演算する演算工程と、
前記演算工程の演算結果を出力する出力工程と、
を備える。
【0027】
上記(10)の方法は、上述の搬送支援装置(上記各種形態を含む)により好適に実施可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の少なくとも1実施形態によれば、作業者の技量に依存することなく、搬送物の目標位置に対する位置決めを容易且つ精度のよく実施可能な搬送支援装置及び搬送支援方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0031】
図1は本発明の少なくとも1実施形態に係る搬送支援装置1を、支援対象である搬送装置2とともに示す模式図である。以下の説明では、搬送装置2の搬送対象として、加圧水型原子炉(PWR)の原子炉容器の内部に収納される炉内構造物4を採用した場合を例に述べる。尚、本実施形態では、搬送対象である炉内構造物4として上部炉内構造物を例示しているが、下部炉内構造物であっても特段の記載がない限りにおいて同様である。
【0032】
搬送装置2は、オペレータによって操作可能なクレーン6と、クレーン6に吊上げ支持される吊上げ治具8と、搬送先である目標位置10に設置された載置スタンド11と、を含む。ここで、クレーン6はポーラクレーンである。
【0033】
吊上げ治具8は金属部材が組み合わされてなる枠体であり、その上端側がクレーン6により吊り下げ支持されるとともに、下端側に炉内構造物4が連結可能に構成されている。吊上げ治具8は、クレーン6に吊り下げられた状態において、鉛直方向に沿って互いに平行に設けられる3本の支柱13を有する。3本の支柱13は、それぞれの上端が三角形状をなすスプレッダ14に連結される。スプレッダ14には、三角錐形状をなす3本のスリングロッド15が連結され、その三角錐(3本のスリングロッド15)の頂部には、クレーンによって支持されるブロックスリング16が取り付けられている。また各支柱13の下端側には、サポートリング17が固着される。サポートリング17には、3つのガイドブッシュ18がそれぞれ固着されている。
尚、本実施形態ではガイドブッシュ18が3つ設けられた場合について例示するが、このガイドブッシュ18は少なくとも2つ以上あればよい。
【0034】
ガイドブッシュ18は、
図2に示されるように、後述するガイドピン24が挿入可能な開口18aを有する。
図2は、ガイドピン24が挿入されたガイドブッシュ18を上方から示す模式図である。ガイドブッシュ18の開口18aの内径は、ガイドピン24の外径より若干大きく設計されており、ガイドピン24との間に数mm程度の隙間22が形成されている。これにより、ガイドブッシュ18にガイドピン24がスムーズに挿入できるとともに、挿入されたガイドピン24の水平方向のズレが規制されるように構成されている。
【0035】
また吊上げ治具8の下端側には、不図示のラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、吊上げ治具8が搬送対象である炉内構造物4上に載置された際に、炉内構造物4の上面に設けられた被係合部と係合可能な係合部を含み、吊上げ治具8と炉内構造物4とを連結可能に構成されている。
【0036】
吊上げ治具8には、上端側に設けられた操作台からアームを介して、ガイドブッシュ18の直上に対応する位置に、それぞれカメラ25及び光源26が取り付けられている。カメラ25は吊上げ治具8の位置監視用カメラであり、カメラ25の撮像画像は、搬送作業現場から隔離された監視室に設置されたモニタ(不図示)を介してオペレータにより認識されるようになっている。オペレータは、カメラ25の撮像画像をモニタ上で監視することで、クレーン6によって支持される吊上げ治具8の位置を認識し、クレーン6の操作を行う。これにより、オペレータは放射線量が高い搬送作業現場に近づくことなく、クレーン6による搬送作業が可能となっている。
【0037】
図3は
図1のカメラ25及び光源26の近傍を側方から示す模式図である。カメラ25は、ガイドブッシュ18より上方側に配置されている。搬送対象である炉内構造物4は高線量物であるためキャビティに貯留された水中に配置されているが、カメラ25は、吊上げ治具8が鉛直下方の最下端位置に降ろされた際であっても、キャビティの水面上に位置するように配置されている。そのため、カメラ25は防水仕様である必要はなく、低コストな撮像装置を採用できる。
【0038】
またカメラ25は、その撮像方向が鉛直下方(すなわち下方側に設置されたガイドブッシュ18)を向くように光軸Lが設定されている。そのため、カメラ25の撮像範囲には、鉛直下方に位置するガイドブッシュ18が含まれる。好ましくは、カメラ25の撮像範囲の略中央に、ガイドブッシュ18の開口18aが位置するように設定されるとよい。またカメラ25及びガイドブッシュ18は直線上に取り付けられているため、カメラ25とガイドブッシュ18との位置関係は常に一定に維持されている。
【0039】
光源26は、カメラ25より上方に配置されており、鉛直下方に向けて光を照射するように取り付けられている。すなわち、光源26は下方に配置されたガイドブッシュ18を照射し、カメラ25はその反射波を受光することにより、ガイドブッシュ18の近傍の明瞭な撮像画像を取得できるように構成されている。特に、ガイドブッシュ18にガイドピン24が挿入されている場合、カメラ25の撮像画像には、ガイドブッシュ18とともにガイドピン24が含まれることとなる。
【0040】
目標位置10に設置された載置スタンド11は、上面に搬送物である炉内構造物4を載置可能なスタンドリング27と、スタンドリング27を床面に対して支持する4本の支持脚28と、を含む。スタンドリング27の上面には、吊上げ治具8が有する3本のガイドブッシュ18に対応する3本のガイドピン24が立設されている。ガイドピン24は、スタンドリング27から鉛直上方に向けて延在し、吊上げ治具8が載置スタンド11の直上に位置する場合に、吊上げ治具8がクレーン6により降ろされることにより、ガイドブッシュ18に挿入されることでガイドする。3本のガイドピン24は、目標位置10に設置された載置スタンド11の周方向に沿って配置されている。このようにガイドピン24が載置スタンド11の周方向に沿って配置されることで、精度のよい位置決めが可能となる。
尚、本実施形態では3つのガイドブッシュ18に対応するようにガイドピン24も3つ設けられた場合について例示するが、このガイドピン24はガイドブッシュ18に対応する数が設けられていればよい。すなわち、ガイドピン24は上述のガイドブッシュ18と同様に少なくとも2つ以上あればよい。
【0041】
ガイドピン24は、例えば反射率が高い金属材料から形成される。そのため、上方に配置された光源26によって照らされた場合に、光源26からの光がガイドピン24によって好適に反射され、カメラ25でガイドピン24の存在を明瞭に認識できるようになっている。
【0042】
また
図4に示されるように、ガイドピン24の先端部20には、ガイドピン24の中心軸に対応する位置に反射部材29が設けられていてもよい。ここで
図4は、ガイドピン24の先端部20のバリエーションを示す拡大図である。
【0043】
図4では、ガイドピン24の先端部20は平坦面23を有しており、平坦面23のうちガイドピン24の中心軸(光軸L)が通る位置に反射部材29が設けられている。反射部材29はガイドピン24を構成する材料より反射率が高い材料から形成されており、ガイドブッシュ18より上方に配置される光源26から照射される光を好適に反射する。特に反射部材29は、平坦面23の全体ではなく中心軸(光軸L)が通る位置に局所的に設けられることにより、上方にある光源26から照射された際に、カメラ25の撮像画像においてガイドピン24の中心軸が明瞭に認識できるようになっている。
【0044】
またガイドピン24の滑らかな外表面は、平坦面23との境界にて不連続的に変化している。そのため当該境界では周囲に比べて輝度が大きく変化し、カメラ25の撮像画像に表示されやすくなっている。
【0045】
尚、反射部材29は例えば取り扱いが容易な脱着可能なシール部材であってもよい。
【0046】
また搬送支援装置1は、コントロールユニットである制御装置30を備える。制御装置30はコンピュータ等の電子演算装置から構成されており、予め記憶された所定プログラムを実行することにより、本実施形態に係る搬送支援装置として機能する。ここで
図5は
図1の制御装置30の内部構成を機能的に示すブロック図である。
図5に示されるように、制御装置30は、制御装置で実施される制御を実行するために必要な各種データを入力可能な入力部32と、上述の所定プログラムをはじめ、制御装置30で実施される制御を実行するために必要な各種データを記憶可能な記憶部34と、入力部32への入力内容及び記憶部34の記憶内容に基づいて制御に必要な演算を実施可能な演算部36と、演算部36の演算結果を出力デバイス31(
図1を参照)に出力可能な出力部39と、を備える。
【0047】
制御装置30の入力部32には、カメラ25で取得された撮像画像が電気的信号として入力される。入力部32に取り込まれた撮像画像は、演算部36に送られ、画像解析がなされる。演算部36は、取得した撮像画像に基づいてガイドブッシュ18に対するガイドピン24の相対位置をそれぞれの検出する検出部38と、炉内構造物(搬送物)4の目標位置10に対する位置関係を算出する算出部40と、を備える。
【0048】
続いて上記構成を有する搬送装置2を用いた搬送作業について説明する。ここで
図6は搬送作業が実施される現場レイアウトの一例である。この例では、キャビティ41内に貯留された水中に原子炉容器42が配置されており、その内部に搬送物である炉内構造物4が収納されている。原子炉容器42は、平常時には不図示の蓋部によって閉じられているが、本実施形態では定期点検等のために予め蓋部が取り外され、炉内構造物4が外部に対して露出した状態になっている。
【0049】
蓋部が取り外された原子炉容器42の上面にはフランジ部42aが設けられており、フランジ部42aには、その上面に鉛直上方に向けて延在する3本のガイドピン24cが、周方向の異なる位置に設けられている。尚、ガイドピン24cは平常に原子炉容器42に蓋部材を固定するための複数のボルトがそれぞれ挿入される複数の穴部(不図示)のうち任意に選択された3箇所に立設されている。
【0050】
原子炉容器42から離れた位置には、2つの載置スタンド11a、11bがクレーン6の径方向に沿って設置されている。2つの載置スタンド11a、11bは、例えば炉内構造物4を構成する上部炉内構造物及び下部炉内構造物にそれぞれ対応する。
【0051】
載置スタンド11aは、
図1に示されたように、スタンド本体に対して周方向の異なる位置に直接的に3本のガイドピン24aが設けられている。一方、載置スタンド11bは、スタンド本体に隣接する壁面から突出した突出壁44の上面から鉛直上方に向けて2本のガイドピン24bが立設されている(すなわち載置スタンド11bのガイドピン24bは、スタンド本体とは独立して設けられている)。また載置スタンド11b側の2本のガイドピン24bは、載置スタンド11の一方側に設けられた突出壁44に2つ偏在している。
【0052】
尚、以下の説明では、2つの載置スタンド11a、11bを区別しない場合には符号“11”で総称することとする。またガイドピン24a、24b、24cを区別しない場合もまた符号“24”で総称することとする。
【0053】
図7は
図6における搬送作業を工程毎に示すフローチャートであり、
図8及び
図9は
図7の搬送作業における様子を段階的に示す模式図である。
まずクレーン6のオペレータは、
図8(a)に示されるように、クレーン6に連結された吊上げ治具8を原子炉容器42の上方に搬送し(ステップS101)、吊上げ治具8のガイドブッシュ18と、フランジ部42aに設けられたガイドピン24との位置決め作業を行う(ステップS102)。
【0054】
位置決め作業が完了すると、
図8(b)に示されるように、オペレータはクレーン6を操作することにより、吊上げ治具8を原子炉容器42に収納された炉内構造物4に向けて降ろし、吊上げ治具8と炉内構造物4とを連結する(ステップS103)。このとき、吊上げ治具8に設けられたガイドブッシュ18に、フランジ部42aに立設されたガイドピン24が挿入されることにより、吊上げ治具8はガイドされながら降ろされる。そして吊上げ治具8が炉内構造物4上に載置されると、吊上げ治具8の下端に設けられたラッチ機構(不図示)によって、吊上げ治具8と炉内構造物4とが連結される。
【0055】
続いて吊上げ治具8と連結された炉内構造物4は、
図8(c)に示されるように、クレーン6によって吊上げ治具8とともに引き上げられる。その後、吊上げ治具8と連結された炉内構造物4は、
図9(d)に示されるように、載置スタンド11が設置された目標位置10の上方に搬送される(ステップS104)。そして、吊上げ治具8のガイドブッシュ18と、目標位置10に設けられたガイドピン24との位置決め作業が行われる(ステップS105)。この位置決め作業は、ガイドピン24が設けられている場所に違いがあるものの、上記ステップS102と実質的に同じである。
【0056】
位置決め作業が完了すると、
図9(e)に示されるように、クレーン6によって炉内構造物が目標位置10に設置された載置スタンド11に向けて降ろされる(ステップS106)。このとき、吊上げ治具8に設けられたガイドブッシュ18には、目標位置10に設けられたガイドピン24が挿入されることによりガイドされる。そして炉内構造物4が載置スタンド11上に載置されると、吊上げ治具8の下端に設けられたラッチ機構(不図示)によって、吊上げ治具8と炉内構造物4とが隔離される(ステップS107)。その後、吊上げ治具8はクレーン6によって引き上げられることにより撤去され(ステップS108)、一連の搬送作業が完了する(終了)。
【0057】
ここで上記ステップS102及びS105における位置決め作業は、
図2を参照して上述したように、ガイドブッシュ18及びガイドピン24間の隙間22が数mm程度と小さいため、高度なクレーン技術が要求される。特に、原子炉容器42内に格納されている炉内構造物4は高線量物であるため、上述のような位置決め作業は、作業現場から隔離された環境にいる作業員によって、カメラ25の撮像画像を介して遠隔的に行われる。このように直接目視による確認が困難な環境で、限られた視界の撮像画像を参考しながら位置決め作業を実施することは難易度が高いが、搬送支援装置1を利用することにより、作業者の技量に依存することなく、搬送物の目標位置に対する位置決めを容易且つ精度のよく実施できる。
【0058】
続いて、
図7のステップS102及びS105における位置決め作業について詳しく説明する。
図10は
図7のステップS102及びS105における位置決め作業を工程毎に示すフローチャートであり、
図11は
図10のステップS202のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0059】
まず搬送支援装置1は、入力部32でカメラ25から撮像画像を取得する(ステップS201)。ここで
図12は
図10のステップS201で取得される撮像画像の模式図である。この撮像画像には、
図2に対応するように、ガイドブッシュ18とともに、吊上げ治具8の下方に位置するガイドピン24が含まれる。吊上げ治具8はオペレータのクレーン操作によって、予めガイドピン24の上方に大まかに位置決めされるため、ガイドピン24の少なくとも一部は、撮像画像において、ガイドブッシュ18の開口18aの内側に表示される。
尚、
図12ではガイドブッシュの開口18aの中心がガイド線A(実線)で示されるとともに、ガイドピン24の中心がガイド線B(破線)で示されている。
【0060】
続いて検出部38は、ステップS201で取得された撮像画像からガイドブッシュ18及びガイドピン24間の相対位置を検出する(ステップS202)。このような検出部38による検出処理は、
図11に示されるように、まずカメラ25から取得した撮像画像に対して二値化処理を実施する(ステップS301)。ここで
図13は
図12の撮像画像を二値化処理した模式図である。二値化処理は、撮像画像に含まれる各画素の輝度を検知し、当該輝度が所定閾値以上であるか否かに基づいて行われる。
図13では、輝度が所定値以上である画素を白色で表示するとともに、輝度が所定値未満である画素を黒色で表示することにより、二値化処理された撮像画像を、モノクロ画像として表示している。このような二値化処理によって、撮像画像の低容量化がなされ、演算負担の軽減によって処理速度が向上し、リアルタイム処理が可能となる。
【0061】
本実施形態では、カメラ25より上方に配置された光源26によって、ガイドブッシュ18及びガイドピン24が照射されるため、撮像画像中にガイドブッシュ18及びガイドピン24が明瞭に表示される。その結果、上述の二値化処理によって、ガイドブッシュ18及びガイドピン24が良好に特定される。
尚、実際の二値化処理では光源26からの照射光が周囲で反射等することにより、
図13のような鮮明な画像が得られない場合もあるが、比較的不鮮明な画像であってもガイドブッシュ18及びガイドピン24の形状輪郭を特定することで、両社の位置関係を特定するとよい。この場合、時間的な平均化処理を行ってノイズ成分を除去することで、画像を鮮明化してもよい。
【0062】
また搬送物である炉内構造物4は高線量物であるため、搬送作業中においてもキャビティ41に貯留された水中にあることが望ましい。この場合、上方に位置するカメラ25と下方に位置するガイドブッシュ18との間に水面が存在することとなるため、光源26からの照射光は、少なからず水面で反射または屈折することで散乱され、カメラ25によるガイドブッシュ18及びガイドピン24の認識精度が低下するおそれがある。このような場合、検出部38は、上述の二値化処理に加え、時間的に平均処理を実施することにより、認識精度の改善を図ってもよい。
【0063】
続いてステップS301で二値化処理が実施された撮像画像に基づいて、ガイドブッシュ18及びガイドピン24の中心をそれぞれ特定する(ステップS302)。二値化処理が実施された撮像画像では、
図13に示されるように、白色表示された画素に基づいて、ガイドブッシュ18及びガイドピン24が形状的に認識される。撮像画像の状態によっては、ガイドブッシュ18及びガイドピン24が完全な円形状として表示されない場合もあるが、このような場合には、表示内容に基づいてガイドブッシュ18及びガイドピン24の形状を推定してもよい。そして、ガイドブッシュ18及びガイドピン24の形状に基づいて、それぞれの中心が特定される。
尚、カメラ25、ガイドブッシュ18は共通の吊上げ治具に取り付けられているため、撮像画像ではガイドブッシュ18は静止している。このため、撮像画像をもとに手動でガイドブッシュ中心を特定することは可能である。
【0064】
尚、上記ステップS302では、
図4を参照して上述したように、ガイドピン24の先端部20の中心に対応する位置に反射部材29が配置されている場合には、当該反射部材29に基づいてガイドピン24の中心を特定してもよい。この場合、反射部材29は周囲に比べて反射率が高いため、より明瞭に中心位置を特定することができる。
【0065】
続いてステップS302で特定されたガイドブッシュ18及びガイドピン24の中心に基づいて、ガイドブッシュ18及びガイドピン24の相対位置を算出する(ステップS303)。このような相対位置の算出は、ガイドブッシュ18及びガイドピン24の中心間のベクトル差を求めることにより行われる。
【0066】
再び
図10に戻って、演算部36は、ステップS202における相対位置の検出が吊上げ治具8に設けられた3つのカメラ25にて正常に行われたか否かを判定する(ステップS203)。いずれかのカメラ25にて正常に相対位置の検出が行われなかった場合(ステップS203:NO)、処理はステップS201に戻され、上記各工程が繰り返される。
【0067】
各カメラ25にて正常に相対位置の検出が行われた場合(ステップS203:YES)、演算部36は、ステップS202で算出された各相対位置に基づいて、吊上げ治具8の目標位置10に対する位置関係を算出する(ステップS204)。ここで
図14は、撮像画像から特定されるガイドブッシュ18、ガイドピン24、吊上げ治具8及び目標位置10の位置関係を示す模式図である。
図14では、3つのガイドブッシュ18の中心P1、P2及びP3、3つのガイドピン24の中心P1’、P2’及びP3’、吊上げ治具8の中心O、並びに、目標位置10に対応する位置O’が示されている。吊上げ治具8の中心Oは、ガイドブッシュ18の中心P1、P2及びP3、ガイドピン24の中心P1’、P2’及びP3’に基づいて幾何学的に算出される。このように吊上げ治具8の中心Oと、目標位置10に対応する位置O’とが特定されることにより、吊上げ治具8の目標位置10に対する位置関係が算出される。
【0068】
続いて演算部36は、ステップS204で算出された位置関係に基づいて出力データを作成する(ステップS205)。そして演算部36で作成された出力データは出力部39からモニタ等の出力デバイス31(
図1を参照)に送られ、所定の出力表示がなされる(ステップS206)。ここで
図15は
図1の出力デバイス31における表示例である。出力デバイス31による表示内容は、ステップS204で算出された位置関係に基づいて得られる任意のパラメータを広く含んでよいが、
図15では例として、撮像画像におけるガイドブッシュ18の中心P1の座標、ガイドピン24の中心P1’の座標、ガイドブッシュ18の内径、ガイドピン24の外径、吊上げ治具8の目標位置10に対する差分ピクセル量、差分ピクセル量を実空間に変換して得られる差分距離がそれぞれ表示されている。
【0069】
尚、撮像画像におけるピクセル量と実空間の座標系への変換は、撮像画像における表示位置と実空間における座標系との対応関係が予め記憶部34に記憶されているので、当該対応関係を参照することにより行われる。
【0070】
また出力部39の表示内容は、クレーン6の操作量に変換されてもよいが、この場合、実際のクレーン6にはポーラクレーンが移動するレールに存在するガタ等に起因する誤差が含まれてしまう。そのため、出力部39の表示内容は、位置に関するパラメータとすることで、オペレータがクレーン6を操作する際に参照可能な情報とすることが好ましい。
【0071】
このように搬送支援装置では、複数のガイドブッシュ18と複数のガイドピン24との相対位置に基づいて、吊上げ治具8の目標位置10に対する相対位置が幾何学的に演算され、数値化された情報として表示される。これらの情報は、クレーンを操作するオペレータにとって有用な情報として提供されることにより、オペレータのクレーン操作を有効に支援する。
【0072】
特に
図6に示されるように搬送先である載置スタンド11a、11bが、クレーン6の回動中心より径方向外側に設定される場合、目標位置が回動中心に近い場合に比べてクレーン6の操作難易度が高くなる。このような場合であっても、上述したように、搬送物の目標位置に対する位置関係を定量的に出力することで、作業者は、その出力結果を参照することで、クレーンを容易に操作して精度のよい位置決め作業を行うことができる。
【0073】
また
図6の載置スタンド11bでは、ガイドピン24が突出壁44の上面に偏在して設けられている。このような場合、位置決め作業の精度は、載置スタンドと突出壁との間に存在するガタ等によって少なからず影響を受けやすく、載置スタンド11aに比べてクレーンの操作難易度が高くなるが、上述のように演算部の演算結果を定量的に出力することで、作業者の技量に依存することなく精度のよい位置決めが可能となる。
【0074】
以上説明したように本実施形態によれば、作業者の技量に依存することなく、搬送物の目標位置に対する位置決めを容易且つ精度のよく実施可能な搬送支援装置及び搬送支援方法を提供できる。