特許第6777541号(P6777541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6777541培養培地の包装用ポリマーフィルムの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777541
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】培養培地の包装用ポリマーフィルムの使用
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20201019BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20201019BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20201019BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20201019BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20201019BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20201019BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20201019BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20201019BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/32 D
   B32B27/36
   B32B7/02
   B32B3/24 Z
   B32B1/02
   B32B27/16
   !C12N1/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-541019(P2016-541019)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-502886(P2017-502886A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】FR2014053466
(87)【国際公開番号】WO2015092328
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】1363169
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】テタール, ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】シモン, ナタリー
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−180845(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/145408(WO,A2)
【文献】 特表2007−516859(JP,A)
【文献】 特表2010−520931(JP,A)
【文献】 特開昭58−155080(JP,A)
【文献】 特開平05−038765(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/118034(WO,A1)
【文献】 特開2014−084123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/40
B32B 1/00−43/00
C12N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの微生物培養培地を包装するためのポリマーフィルムの使用であって、前記フィルムが、ポリエチレンテレフタレートの少なくとも1つの層及び少なくとも1つのヒートシール層を含み
記フィルムが、10.0g/m×24時間と80.0g/m×24時間の間の平均水蒸気透過性を有し
なくとも1つの層が微細穿孔され
前記フィルムがコーティング層を有さず、押出成形又は複合化によって直接得られる、使用。
【請求項2】
フィルムが、ポリエチレンテレフタレートの第2の層を更に含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
フィルムが、20と80μmの間の厚みを有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも1つの微生物培養培地の包装を目的とする小袋を作製するための、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマーフィルムの使用。
【請求項5】
少なくとも1つの培養培地を包装する方法であって、
− 1つ又は複数の培養培地を請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルムの上、該フィルムのヒートシール層の上に置く工程、
− ヒートシール層が互いに向き合うように、前記フィルムの自由なままの一部により又は他のフィルムにより、1つ又は複数の培養培地を覆う工程、
− 1つ又は複数の培養培地がこのように形成された小袋内に閉じ込められるように、1枚のフィルム又は2枚のフィルムの端部を固定する工程
を含む、方法。
【請求項6】
1つ又は複数のフィルムが事前に殺菌される、請求項5に記載の包装方法。
【請求項7】
殺菌の方法が、ガンマ線及び/又はベータ線からなる群から得られた放射線による照射である、請求項6に記載の包装方法。
【請求項8】
固定する工程が、100と170℃の間の温度でのヒートシール工程である、請求項5から7のいずれか一項に記載の包装方法。
【請求項9】
− このように得られた小袋を第2の小袋の内部に置く工程、及び
− 前記第2の小袋をシールする工程
を更に含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の包装方法。
【請求項10】
− このように得られた第2の小袋を第3の小袋の内部に置く工程、及び
− 前記第3の小袋をシールする工程
を更に含む、請求項9に記載の包装方法。
【請求項11】
前記第2及び/又は第3の小袋が、セロハン、ポリオレフィン、及びポリアミドを含む群から得られた材料からなる、請求項5から10のいずれか一項に記載の包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
製品の包装に使用可能なポリマーフィルムが市場に多く存在する。特に、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリ塩化ビニル(PVC)フィルムなどの食品に関連して使用されるフィルムを挙げることができる。
【0002】
より具体的に、出願人の活動範囲であるインビトロ診断に対して関心が示された場合、特に培養培地の袋詰めに使用されるフィルムについては、通常使用される材料は、高い水蒸気透過性(>120g/m×24時間)によって特徴付けられた低いバリア性を有する材料であることに注意されたい。このような材料には、例えば、セロハンがある。この材料は、使用準備済みの寒天培養培地に含まれる水を蒸発させて、フィルムを通過させるという利点を有する。これにより、セロハンフィルムによって構成されたバッグの内部の過剰な凝結が防止される。逆に、主な欠点は、水蒸気がフィルムを通過するので、内部の含水量が非常に低く、それがあまりに過ぎると、培養培地の乾燥が早まることである。したがって、このことにより製品の貯蔵期間が影響を受ける。
【0003】
培養培地の袋詰めに使用される更に他の材料は、それ自体、低い水蒸気透過性(<5g/m×24時間)によって特徴付けられた高いバリア性を有する。この低い水蒸気透過性により、特に培地が注入された後、使用準備済みの寒天培地のシャーレに形成される著しい凝結を除去することが可能になるわけではない。最終的な使用者によって後者が開封されるまで、この水がバッグに残ることとなり、全く許容できないシミや汚れが生じる。このような製品とは、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などのポリオレフィンである。ポリオレフィンは、包装材料として広く使われている。しかしながら、このような材料を得るための方法は、後者が非常に低い水蒸気透過性を有することを意味する。更に、水蒸気バリア特性の増強が意図されているPA+PEフィルムなどの2つの複合フィルムを含む材料も見出されている。したがって、この種類の材料は、約10グラム/m×24時間より低い水蒸気透過性値を有する。開封されるまでバッグの中に残る水の量を制限する既知の解決法は、小袋の形態のシリカゲルなどの乾燥剤を使用することを含む。しかしながら、このような方法では、各バッグに一定量の乾燥剤を追加することが必要となり、それにより、製造コストが増大し、著しい量の廃棄物が生じる。
【0004】
最後に、培養培地の袋詰めにも使用される他の材料は、「キャスト」タイプの非配向PAのみからなる単層、及び更にフィルムをシールするコーティング層の主成分として使用される一定量のPVC及び/又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)を含む。この技法の利点は、PAフィルム上に堆積されたコーティングの量を変化させることによって、水蒸気透過性を調節し得ることである。この種類の材料は、35g/m×24時間と110g/m×24時間の間の水蒸気透過性を有する。しかしながら、これらのフィルムを生成する方法は、フィルムの表面上に堆積されるコーティング量の制御を可能にするわけではない。結果として、得られたフィルムは、同じ製造バッチに対して変動し易い水蒸気透過性範囲を有する。それ故、培養培地包装を作製するためにこの種類のフィルムを使用しても、正確な貯蔵寿命を保証することを可能にするわけではない。
【0005】
寒天培養培地を製造する企業は依然として、最適条件下で培養培地の貯蔵が可能な包装を待望している。この最適条件とは、主に、予想可能でありながらも時間の経過とともにそれほど変動しないように、早まった乾燥を防止するために水蒸気が十分に豊富でありながらも、特に常温でバッグ中の過剰な凝結を防止するために水蒸気が十分に少ない環境である。このようなフィルムは、包装の滲出の程度を損なわずに、寒天の重量損失速度、更に培養培地の脱水のリスクを制限することを可能にするはずである。更に、これらの特性を、顧客の期待に応じた視覚的見栄え(特に透明度に関して)、並びに伸縮に対する十分な耐性と組み合わせるべきである。
【0006】
発明者の功績により、微生物培養培地を包装する目的で、ポリエチレンテレフタレートの少なくとも1つの層及び少なくとも1つのヒートシール層を含み、且つ10.0g/m×24時間と80.0g/m×24時間の間の平均水蒸気透過性を有するフィルムの使用が可能であることが示された。これらの特定の材料を使用することにより、貯蔵及び輸送の条件が何であれ、貯蔵寿命のより優れた制御が可能となり、常温での貯蔵及び輸送が可能になる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の第1の目的は、特に水蒸気バリア性能力に関して、制御された水分含量を有する空気中で微生物培養培地の貯蔵寿命の改善及びより少ない変動を可能にし得る物理的特性を有するフィルムの使用を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、微生物培養培地内に存在する寒天の量の減少を可能にするフィルムの使用を提供することである。
【0009】
本発明の第3の目的は、コストが抑えられた薄い柔軟性のあるフィルムの使用を提供することである。
【0010】
本発明の第4の目的は、微生物培養培地用の包装小袋を作製するための、容易にシール可能なフィルムの使用を提供することである。
【0011】
本発明の第5の目的は、特に透明性と感触に関して、美的外観に関する基準を満たし得るフィルムの使用を提供することである。
【0012】
本発明の第6の目的は、引張強度及び弾性変形に関する基準を満たし得るフィルムの使用を提供することである。
【0013】
本発明の第7の目的は、特に水蒸気バリア性能力に関して、温度条件がどうであれ、貯蔵寿命の改善を可能にし得る物理的特性を有するフィルムの使用を提供することである。
【0014】
本発明の第8の目的は、特に水蒸気バリア性能力に関して、温度条件がどうであれ、寒天の重量損失速度の減少を可能にし、且つ時間の経過とともに寒天の重量損失速度のより優れた安定性を可能にする物理的特性を有するフィルムの使用を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、再利用可能及び/又は再密封可能な包装を作製することを可能にするフィルムの使用を提供することである。
【0016】
とりわけこれらの目的は、第1に、少なくとも1つの微生物培養培地を包装するポリマーフィルムの使用に関連する本発明によって達成され、前記フィルムは、ポリエチレンテレフタレートの少なくとも1つの層及びポリエチレンなどの少なくとも1つのヒートシール層を含み、前記フィルムは、10.0g/m×24時間と80.0g/m×24時間の間、好ましくは、10.0g/m×24時間と60.0g/m×24時間の間、より好ましくは、10.0g/m×24時間と30.0g/m×24時間の間の平均水蒸気透過性を有する。
【0017】
「ポリマーフィルム」という用語は、大きさの制限なく、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料の少なくとも1つの層を含む材料を意味することが意図されている。それぞれ固有の特質を有する幾つかの層を含むフィルムを得るため、このようなフィルムは、押出成形又は共押出成形によって作製され得る。
【0018】
本発明で記載されたポリマーフィルムの水蒸気透過性の様々な測定値は、規格NF ISO2528(09/2001)に従って、38℃及び90%の相対湿度で決定される。
【0019】
単位面積あたりの重量の様々な測定値は、UNE−EN ISO536方法を使用して決定される。
【0020】
「培養培地」という用語は、支持体上に堆積された微生物の生存及び/又は成長に要するすべての成分を含む培地を意味することが意図されている。実際には、当業者は、完全に周知され且つ当業者の範囲内にある基準に従って、標的微生物に応じて培地を選択する。培養培地は、脱水形態又は寒天の形態であってもよい。寒天の形態の場合、培養培地はペトリ皿に含まれる。ペトリ皿は、一般的に、寒天とも呼ばれる寒天培養培地が熱い間に注がれる基部と、蓋とからなる。幾つかのペトリ皿を積み上げることができるように、基部及び蓋の外部部分は協同する。一般的に、包装及び輸送のために10皿のスタックが作られる。
【0021】
「ヒートシール層」という用語は、フィルムの少なくとも1つの側面上に2つの重ね合せた端部を熱作用の下で少なくとも部分的に固定し得るポリマー層を意味することが意図されている。好ましくは、固定する工程は、100と170℃の間の温度でヒートシールによって実行される。このような層を構成し得る材料の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリ塩化ビニルである。
【0022】
ポリエチレンテレフタレート層及びポリエチレンなどの少なくとも1つのヒートシール層を有するフィルムを使用する1つの利点は、培養培地のための、再利用可能及び/又は再密封可能な、非伸縮性の包装を得ることである。ポリ塩化ビニルフィルムなどの伸縮性フィルムを使用するときとは違って、ヒートシールによって形成された包装は、一旦開けられても1つ又は複数の培養培地を収容又は維持し続けることができる。したがって、オペレーターは、1つ又は複数の培養培地を落下させるリスクなく、包装とその含有物を容易に移動させることができる。伸縮性フィルムは、包装を開けたときに破れることで知られており、それ故にその後続けて取り扱うことができない。更に、この種類の包装によって包まれた培地には、開けた後にもはや適切に積み重ねて維持されないというリスクがある。
【0023】
有利には、本発明に従って使用されるフィルムは、非伸縮性フィルムである。より有利には、本発明に従って使用されるフィルムを非伸縮性にするため、フィルムのヒートシール層は非伸縮性である。
【0024】
好ましくは、使用されるフィルムは、測定方向(縦方向又は横方向)がどうであれ、250%未満の破壊伸び率を有する。より好ましくは、使用されるフィルムは、測定方向(縦方向又は横方向)がどうであれ、125%未満の破壊伸び率を有し、延性があまりない。
【0025】
好ましくは、使用されるフィルムは、測定方向(縦方向又は横方向)がどうであれ、40N/15mm(ASTM D−882)の最小引裂強さを有する。より好ましくは、使用されるフィルムは、測定方向(縦方向又は横方向)がどうであれ、50N/15mm(ASTM D−882)の最小引裂強さを有し、それにより、強度を増す。
【0026】
本発明に係るフィルムを使用する別の利点は、包装されたバッチが何であれ、培養培地の貯蔵寿命の保証が可能になることである。これは、本発明に従って使用されたフィルムの水蒸気透過性が同一の製造バッチに対して少しも変動しないからである。特に、これは、これらのフィルムがコーティング層を有さず、押出成形又は複合化によって直接得ることができるからである。
【0027】
10.0g/m×24時間と30.0g/m×24時間の間の平均水蒸気透過性によって、貯蔵条件に応じて培養培地の特に長い貯蔵寿命、具体的には6か月を越える貯蔵寿命を保証することが可能となり、それと同時に、培養培地又は包装された培地の品質を保ち、規則に準拠した態様で使用することが可能となる。
【0028】
1つの好適な特性によれば、少なくとも1つの微生物培養培地を包装するために使用されるフィルムは、透明である。この透明性により、特に、開けることなく包装された培養培地をどうにかして特定することが可能になる。この透明性により、特に、バーコードリーダー又は任意の他の撮像手段を用いて、培養培地の支持体の上にあるバーコードを認識することが可能になる。別の利点は、包装を開ける前に、培養培地の優れた品質を確認しながら、培養培地の外見の任意の欠点及び/又は汚染を探すことができることである。
【0029】
有利には、少なくとも1つの微生物培養培地を包装するために使用されるフィルムは、ポリエチレンテレフタレートの第2の層を含む。この第2の層によって、小袋を製造することができるように材料をシールすることが可能になる。このため、溶媒(ポリウレタン)−系二成分型(PU)接着剤(solvent (polyurethane)−based two−component (PU) adhesive)を使用して2つの層が組み合わされる。第2の層は、イソフタル酸に基づくAPET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)のためのラッカーによってシール可能となる。
【0030】
代替的に、アクリル系接着剤など、ポリエチレンテレフタレートの2つの層の接着を可能にする他の接着剤を使用することができる。好ましくは、接着剤は、フィルムのmにつき数グラムの割合、より好ましくは、2g/mと3g/mの間の割合で分布される。
【0031】
別の好適な特性によれば、少なくとも1つの微生物培養培地を包装するために使用されるフィルムは、少なくとも1つの微細穿孔(microperforate)された層を含む。
【0032】
「微細穿孔」とは、10μmと50μmの間の大きさを有する穿孔を開けることによって、ポリマー層の水蒸気透過性を修正することができる任意の手段を意味することが意図されている。穿孔の数と間隔によって、制御された態様でポリマー層の水蒸気透過性を修正することを更に可能になる。好ましくは、微細穿孔は、レーザーによって生成される。より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートの単層が微細穿孔される。更により好ましくは、且つフィルムがポリエチレンテレフタレートの2つの層を含む場合、これらの2つの層は微細穿孔される。
【0033】
別の好適な特性によれば、少なくとも1つの微生物培養培地を包装するために使用されるフィルムは、20と80μmの間、好ましくは30と50μmの間、より好ましくは20と40μmの間の厚みを有する。20と80μmの間の厚みによって、破れに対する耐性及び許容可能な視覚的外観を保証することが可能となり、フィルムによって形成された小袋内に包装された培養培地の種類をオペレーターが容易に視覚化することが可能となる。30と50μmの間、又は20と40μmの間の厚みによって、許容可能な視覚的外観を保証しながらも、購買コストと材料の使用を抑えることが可能となり、包装された培養培地の外見及び破れに対する所望の耐性に厚みの範囲を調整することが可能となる。
【0034】
本発明の別の主題は、少なくとも1つの微生物培養培地の包装を目的としている小袋を作製するための上述のポリマーフィルムの使用に関する。
【0035】
本発明の別の主題は、少なくとも1つの培養培地を包装する方法に関し、この方法は、
− 1つ又は複数の培養培地を上述のフィルムの上、前記フィルムのヒートシール層の上に置く工程、
− ヒートシール層が互いに向き合うように、1つ又は複数の培養培地を、自由なままのフィルムの一部又は他のフィルムで覆う工程、
− 1つ又は複数の培養培地がこのように形成された小袋内に閉じ込められるように、1枚のフィルム又は2枚のフィルムの端部を固定する工程
を含む。
【0036】
好ましくは、1つ又は複数のフィルムは事前に殺菌される。殺菌の方法は、ガンマ線及び/又はベータ線からなる群から得られた放射線による照射であってもよい。
【0037】
好ましくは、固定する工程は、100と170℃の間の温度でのヒートシール工程である。
【0038】
別の好適な特性によれば、本発明に係る包装方法は、
− このように得られた小袋を第2の小袋の内部に置く工程、及び
− 前記第2の小袋をシールする工程
を更に含む。
【0039】
別の好適な特性によれば、本発明に係る包装方法は、
− このように得られた第2の小袋を第3の小袋の内部に置く工程、及び
− 前記第3の小袋をシールする工程
を更に含む。
【0040】
別の好適な特性によれば、本発明に係る包装方法の前記第2及び/又は第3の小袋は、セロハン、ポリオレフィン、及びポリアミドを含む群から得られた材料からなる。
【0041】
別の好適な特性によれば、本発明に係る包装方法の前記第2及び/又は第3の小袋は、ポリエチレンテレフタレートの少なくとも1つの層及びポリエチレンなどの少なくとも1つのヒートシール層を含むフィルムからなり、前記フィルムは、10.0g/m×24時間と80.0g/m×24時間の間、好ましくは、10.0g/m×24時間と60.0g/m×24時間の間、より好ましくは、10.0g/m×24時間と30.0g/m×24時間の間の平均水蒸気透過性を有する。
【0042】
本発明の別の主題は、更に、アイソレータ又は層流フード内で少なくとも1つの培養培地を包装するための上述のフィルムの使用に関連する。この種類の用途においてこのようなフィルムを使用することの利点は、包装内に存在する1つ又は複数の培養培地を損傷、或いは、分析のために培養培地上に存在する任意の微生物を破壊するリスクなく、前記フィルムによって形成された包装の外側を除染することができることである。実際のところ、このようなフィルムは、過酸化水素(H)又は過酢酸(C)など、アイソレータ内で使用される主要な除染ガスに対しては、不透過性である。
【0043】
本発明の目的及び利点は、図面を参照して以下の実施例を読むことによってより明白に理解される。これらの実施例は、決して限定的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】バッチ1から4の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、2から8℃の間の温度で貯蔵されている。
図2】バッチ1から4の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、常温で貯蔵されている。
図3】バッチ1から4の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、30から35℃の間の温度で貯蔵されている。
図4】バッチ5から8の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、2から8℃の間の温度で貯蔵されている。
図5】バッチ5から8の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、常温で貯蔵されている。
図6】バッチ5から8の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、30から35℃の間の温度で貯蔵されている。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施例1:
ペトリ皿の様々なバッチが形成される。各バッチは、出願人によって製造され且つビオメリューの問い合わせ名 Count−Tact(商標)GTSで販売されているTSA(トリプケースソイ寒天)型の寒天培養培地を10個含む。
【0046】
第1のバッチであるBATCH1は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、32μmの厚みを有するFILM Aと呼ばれるPET/PEフィルムから作製された小袋内に包装される。このフィルムは、20μmの厚み及び18.4g/mから+/−12%までの単位面積あたりの重量を有する直鎖状低密度ポリエチレンの透明層、2.5g/mから+/−0.6g/mまでの単位面積あたりの重量を有する(全断面)接着剤の層、並びに12μmの厚み及び16.8g/mから+/−4%までの単位面積あたりの重量を有するPETの透明層から構成される。
【0047】
このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。
【0048】
第2のバッチであるBATCH2は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、27μmの厚みを有するFILM Bと呼ばれる、2つのPET/PET層を含むフィルムから作製された小袋内に包装される。このフィルムは、17g/mから+/−7%までの単位面積あたりの重量及び12μmの厚みを有するPETの第1の層、3g/mの単位面積あたりの重量を有する(全断面)接着剤の層、並びに20g/mから+/−7%までの単位面積あたりの重量及び15μmの厚みを有するPETの第2の層から構成される。このように形成されたフィルムの様々な機械的特性は、以下の表1で示されている。
【0049】
【0050】
このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。
【0051】
第3のバッチであるBATCH3は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、40μmの厚み及び約55g/m2×24時間の水蒸気透過性を有し、基準FILM Cを有するポリアミドフィルムから作製された小袋内に包装される。このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。この種類の包装は、従来より使用されている。
【0052】
第4のバッチであるBATCH4は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、40μmの厚み及び約55g/m2×24時間の水蒸気透過性を有し、且つ更に基準FILM Cを有するポリアミドフィルムから作製された3つの小袋内に連続的に包装される。この種類の包装は、第2の従来技術を含む。
【0053】
フィルムA及びBの水蒸気透過率は、上述の基準に従って5つの測定値によって決定される。結果を以下の表2に示す。
【0054】
【0055】
最初の3つのバッチの第2及び第3の小袋を形成するのに使用されるセロハンフィルムは、3つの小袋によって形成されたアセンブリの透過性に対して影響を与えない。実際には、それらの水蒸気透過性は、約600g/m×24時間である。
【0056】
このように形成された4つのバッチの3つのスタックは、それぞれ、幾つかの温度条件に従って次に5週間貯蔵される。したがって、各バッチの第1のスタックは、2と8℃の間の温度で貯蔵される。各バッチの第2のスタックは、更に常温で貯蔵される。各バッチの第3のスタックは、30と35℃の間の温度で最終的に貯蔵される。
【0057】
貯蔵及び包装条件に応じた寒天の重量損失速度を決定するため、各バッチの各スタックの第1の皿と最後の皿の重量が毎週測定される。各バッチの各スタックの総重量も更に毎週測定される。寒天の重量のモニタリングによって、寒天によって失われた水の量が示される。
【0058】
これらの測定値の結果は、以下の表で且つ図に関連して示される。
【0059】
表3は、2と8℃の間の温度で貯蔵されたスタックに対して週ごとに測定された、各バッチの皿1及び皿10の寒天の重量のモニタリングを示す。
【0060】
【0061】
表4は、常温で貯蔵されたスタックに対して週ごとに測定された、各バッチの皿1及び皿10の寒天の重量のモニタリングを示す。
【0062】
表5は、30と35℃の間の温度で貯蔵されたスタックに対して週ごとに測定された、各バッチの皿1及び皿10の寒天の重量のモニタリングを示す。
【0063】
【0064】
図1は、バッチ1から4の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、2から8℃の間の温度で貯蔵されている。
【0065】
図2は、バッチ1から4の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、常温で貯蔵されている。
【0066】
図3は、バッチ1から4の皿が全部そろったスタックの重量を週ごとに測定した値を示す。この図で示されたバッチのスタックは、30と35°Cの間の温度で貯蔵されている。
【0067】
標準プラスチックフィルムを使用する小袋とは違って、BATCH1及びBATCH2においてFILM A及びFILM Bを使用する小袋の内部の凝結の許容可能レベルを維持しながら、寒天の重量損失速度に関する結果が得られた。
【0068】
したがって、表2、3、及び4並びに図1、2、及び3では、バッチBATCH3及びBATCH4で示された参照方法に比べて、BATCH1及びBATCH2のフィルムFILM A及びFILM Bの使用を通した寒天の重量損失速度の減少を示す。更に、フィルムFILM A及びFILM Bの使用は、スタック内の皿の位置に応じて、寒天の重量損失に影響を与えないことが示された。実際に、スタックの第1の皿及び最後の皿の間では、寒天の重量損失速度の著しい変動が観察されない。
【0069】
貯蔵条件がどうであれ、寒天の重量損失速度の減少が更に示されている。寒天の重量損失速度に対する温度の影響は、バッチBATCH3及びBATCH4の小袋の作製に使用されるフィルムに比べて、減少する。実際、すべて貯蔵条件を考慮すると、FILM A及びFILM Bを使用するバッチに対して、寒天の重量損失が減少する。フィルムFILM A及びFILM Bにおいて常温で貯蔵されたバッチのスタックは、BATCH3及びBATCH4に比べて、1週間が過ぎるとともに、特に重量において微妙な減少を示す。BATCH3に比べて、フィルムFILM A及びFILM Bにおいて30から35℃の間の温度で貯蔵されたバッチのスタックも同様である。
【0070】
最後に、貯蔵条件がどうであれ、寒天の重量損失速度のより優れた安定性も示され、バッチBATCH3及びBATCH4に対して実行された測定では、時間の経過とともに寒天の重量損失速度においてより大きな変動が示された。
【0071】
実施例2:
ペトリ皿の様々なバッチが形成される。各バッチは、出願人によって製造され且つビオメリュー参照番号43811のTrypcase Soy Agar 3PTMの下で販売されている90mmのLock Sure(商標)皿型の10個の寒天培養培地を含む。
【0072】
第5のバッチであるBATCH5は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、32μmの厚み及び約18g/m×24時間の水蒸気透過性を有するFILM Dと呼ばれるPET/PEフィルムから作製された小袋内に包装されている。このフィルムは、20μmの厚み及び18.4g/mから+/−12%までの単位面積あたりの重量を有する直鎖状低密度ポリエチレンの透明層、2.5g/mから+/−0.6g/mまでの単位面積あたりの重量を有する(全断面)接着剤の層、並びに12μmの厚み及び16.8g/mから+/−4%までの単位面積あたりの重量を有するPETの透明層から構成される。このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。
【0073】
第6のバッチであるBATCH6は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、27μmの厚み及び約25g/m×24時間の水蒸気透過性を有するFILM Eと呼ばれる2つのPET/PET層を含むフィルムから作製された小袋内に包装されている。このフィルムは、17g/mから+/−7%までの単位面積あたりの重量及び12μmの厚みを有するPETの第1の層、3g/mの単位面積あたりの重量を有する(全断面)接着剤の層、並びに20g/mから+/−7%までの単位面積あたりの重量及び15μmの厚みを有するPETの第2の層から構成される。このように形成されたフィルムの様々な機械的特性は、以下の表6で示されている。
【0074】
【0075】
このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。
【0076】
第7のバッチであるBATCH7は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、30μmの厚み及び約5g/m×24時間の水蒸気透過性を有する配向ポリプロピレンフィルムから作製された小袋内に包装されている。このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。
【0077】
第8のバッチであるBATCH8は、10枚のペトリ皿のスタックを3つ含み、各スタックは、30μmの厚み及び50g/m×24時間と80g/m×24時間の間の水蒸気透過性を有し、且つ従来技術に由来する基準FILM Gを有するポリアミドフィルムから作製された小袋内に包装されている。このように形成された第1の小袋は、次いで、セロハンフィルムから作製された2つの連続する小袋内に包装される。
【0078】
第2及び第3の小袋の形成に使用されるセロハンフィルムは、3つの小袋によって形成されたアセンブリの透過性に対して影響を与えない。実際、その水蒸気透過性は、約600g/m×24時間である。
【0079】
このように形成された4つのバッチの3つのスタックは、それぞれ、以下のプロトコル(表7)に従って、ヒートショックのシーケンスを経験する。
【0080】
【0081】
このヒートショックのシーケンスに続いて、スタックは、以下の条件に従って、18週間貯蔵される:
− 各バッチの第1のスタックが、2と8℃の間の温度で貯蔵される。
− 各バッチの第2のスタックが、常温(AT)で貯蔵される。
− 各バッチの第3のスタックが、30と35℃の間の温度で最終的に貯蔵される。
【0082】
第1の包装を形成する各小袋における滲出スコアが、以下の表8の基準にしたかって観察される。
【0083】
【0084】
このスコアは、T0で決定される。すなわち、ヒートショックのシーケンスに続いて、且つ、更に1、2、3、4、5、7、10、12、15、及び18番目の週で週1回決定される。以下の表9では、各小袋につき各週、貯蔵条件に応じてこれらの観察のスコアが要約されている。
【0085】
【0086】
したがって、本発明に係るフィルムD及びEは、2から8℃の温度及び常温で最適な挙動を示し(許容可能スコアの0又は1)、30から35℃の温度で非常に正確な挙動を示すことが示された。逆に、フィルムGは、2から8℃の温度及び常温で、小袋内の滲出を著しく劣化させる(スコアは1を上回るため、許容可能ではなく、範囲外にあり、この状態が数週間続く)。更に、蓋と皿との間に望まれない吸引効果が現れることに注意されたい。
【0087】
貯蔵及び包装の条件に応じて、寒天の重量損失速度を決定するため、各バッチの各スタックの第1の皿及び最後の皿の重量も、1、2、3、4、5、7、10、12、15、及び18番目の週に測定される。各バッチの各スタックの総重量も毎週測定される。寒天の重量のモニタリングによって、寒天によって失われた水の量が示される。
【0088】
各バッチの10個の皿のスタック(「全体システム」と呼ばれる)の重量のこれらの測定値の結果は、貯蔵条件に従って、図4、5、及び6で示される。各バッチに対応する測定値から得られた直線状の回帰曲線が描かれている。このように得られたアフィン関数は、対応する曲線を描くことを可能にする。xは、貯蔵日数、yは、スタックの重量を示す。得られた各曲線は、各バッチに対応して提示される。これらの曲線により、特に、水分損失速度を見積もり、スタック及び含まれる培地の最大貯蔵寿命を予想することが可能となる。
【0089】
これらの結果では、先行技術のフィルムGと比べて、本発明に係るフィルムD及びEに対して制限された寒天重量損失が明らかに示されている。したがって、包装された培地の滲出をこのように制御することにより、先行技術によって提示された貯蔵寿命より遥かに長い貯蔵寿命、具体的には、貯蔵条件に応じて、9か月から1年の貯蔵寿命を予想することが可能となる。フィルムGの推奨貯蔵寿命は、現時点では17週間である。
【0090】
フィルムFの場合、培養培地によって滲み出た水分が小袋内に残り、包装された培地の使用を不可能にするため、自然に廃棄される。
【0091】
これらの結果により、ペトリ皿内に注入し得る寒天の量の減少を予測することが可能となり、更に現状の基準を守りつつ貯蔵寿命を確実なものとすることが可能となる。逆に、本発明に係るフィルムを使用して、注入された寒天と似た量を維持して、貯蔵寿命の延長を達成することができる。したがって、本発明に係るフィルムの使用によって、製造コストの減少及び/又は培養培地の貯蔵寿命の延長が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6