【文献】
Welding a Go-Kart Frame with FANUC's ARC Mate 120iC Arc Welding Robot,YouTube,FANUC America Corporation,2014年 4月25日,URL,https://www.youtube.com/watch?v=eFfDX3oyPkQ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多関節ロボットのアーム同士は、アーム駆動用のモータの電源線や信号線等の各種のケーブル類を束ねるハーネスが、関節部付近のアーム外側で、一方のアームから他方のアームへ向けて配設される。このような多関節ロボットの各アームは、可動範囲が広くなるほどトーチ姿勢の自由度が高まるため、ロボットの原点姿勢からの正回転方向は勿論、逆回転方向についての可動範囲も広く設計される。
しかし、アームが逆回転方向に駆動される場合、アームに接続されているハーネスの曲げ半径が、局所的にハーネスの許容曲げ半径よりも小さい曲げ半径にされる場合が生じる。また、捩れによる外力がハーネスに負荷されたり、ハーネスがアーム同士に挟まれたりする。そのため、アーム外側のハーネスをアーム内に導入する開口部は、アーム同士を連結するアーム関節部から離して配置せざるを得ない。しかし、アーム関節部が、アーム駆動用のモータを内蔵している場合には、モータによる駆動部材等が配置される部位に開口部を設けることはできず、開口部はモータ駆動に影響を受けない固定部位に配置する必要がある。そこで、開口部の配置スペースを確保するために、アーム関節部をモータの配置位置から外れた関節中心から離れた位置まで延在させることになる。その結果、アーム関節部が大型化し、アーム関節部の重量が増大して駆動時における振動の発生原因となる。例えば、6軸ロボットの場合、下部アームと上部アームとを連結するアーム関節部には、上部アームの第3駆動軸を回転駆動するモータと、手首旋回用の第4駆動軸を回転駆動するモータとが共に収容されるものがある。その場合、ハーネスの引き回しのためにアーム関節部の大型化は避けられない。
【0005】
そこで本発明は、ハーネスの曲げ半径の縮小やアーム同士の干渉を生じさせることなく、アーム関節部を小さくできるロボットアームのハーネス接続構造、及び多関節溶接ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1アームと、前記第1アームの先端部に、アーム関節部を介して基端側が回転可能に連結された第2アームと、前記第1アームの前記先端部から延設され、前記第2アームの前記アーム関節部でアーム内部に導入されるハーネスと、を備え、前記第1アームの前記先端部は、前記ハーネスの長手方向一方の側を保持するハーネス保持部を有し、前記アーム関節部は、前記ハーネスの長手方向他方の側を、
前記アーム関節部内に固定するハーネス固定部を有
し、前記ハーネス固定部は、前記ハーネスの長手方向他方の側を、前記第2アームの先端側から基端側に向
かって、前記第2アームの長手軸
に対して傾斜
して挿入した姿勢で前記アーム関節部内に固定
されるようにガイドする傾斜面を有し、前記ハーネスは、前記ハーネス固定部から前記第2アームの先端側へ延出され、湾曲して前記ハーネス保持部に保持されている、
ロボットアームのハーネス接続構造である。
【0007】
また、前記ハーネスは、前記ハーネス固定部により傾斜されて生じる湾曲が、前記ハーネスの許容曲げ半径以上であり、前記ハーネスの湾曲内側表面に対する曲率半径の円弧ラインの径方向内側に、前記第1アームの先端部が配置されることが好ましい。
このロボットアームのハーネス接続構造によれば、上部アームがいかなる姿勢であっても、ハーネスの曲げにより生じる損傷を防止できる。また、仮にハーネスが許容曲げ半径にまで湾曲された場合でも、ハーネスと下部アームの先端部との干渉が避けられる。
【0008】
また、前記第1アームは、第1ストッパ部を有し、前記第2アームは、前記第2アームの回転方向先方で前記第1ストッパ部に突き当たる第2ストッパ部を有し、前記第2ストッパ部は、前記第2アームの前記ハーネスがアーム内に導入される開口部
及びハーネスよりも前記回転方向先方に配置されることが好ましい。
このロボットアームのハーネス接続構造によれば、アームが駆動された際に、第1ストッパと第2ストッパとの間にハーネスが挟まれることを防止できる。
また、ロボットアームのハーネス接続構造は、前記ハーネス固定部と前記第1アームとの間に、前記第2ストッパ部の支持部が配置され、前記支持部は、前記第2アームの長手方向に関して、前記第2ストッパ部の配置側と反対側に前記傾斜面と繋がるガイドを有するのが好ましい。
【0009】
また、前記ハーネスは、前記第2アームを回転駆動するモータに接続される導電線が内挿されることが好ましい。
このロボットアームのハーネス接続構造によれば、モータに接続される信号線や電源線等の導電線が、小さな曲率半径で湾曲されることなくハーネス内に収容され、長期にわたり導電線を確実に保護できる。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記のロボットアームのハーネス接続構造を有する多関節溶接ロボットである。
この多関節溶接ロボットによれば、アーム関節部が軽量化され、振動の発生が抑制さえるため、高精度な溶接が行える。
【0011】
また、上記多関節溶接ロボットにおいて、ベース上に鉛直方向に沿った第1駆動軸回りに旋回可能に設けられた旋回部と、前記旋回部に水平方向に沿った第2駆動軸を介して基端部が連結された前記第1アームと、前記第1アームの先端部に、前記第2駆動軸と平行な第3駆動軸回りに回転可能に連結された前記第2アームと、を備えてもよい。
この多関節溶接ロボットによれば、慣性力が生じやすい第3駆動軸を有する第2アームのアーム関節部を小型軽量化でき、モータ駆動に起因するエンドエフェクタ側での振動発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハーネスの曲げ半径の縮小やアーム同士の干渉を生じさせることなく、アーム関節部を小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は溶接システムの全体構成図である。
溶接システム100は、多関節溶接ロボット11と、制御装置13と、溶接電源15と、教示コントローラ17を備える。多関節溶接ロボット(以降、溶接ロボットと略称する)11の先端軸には、エンドエフェクタ19が接続される。本構成のエンドエフェクタ19は、溶接トーチ21を有するトーチ支持部23である。また、エンドエフェクタ19としては、トーチ支持部23の他に、溶接トーチをウィービング動作させる2軸ウィーバーや、切断機等の他のツールも採用できる。
【0015】
制御装置13は、教示コントローラ17から入力された教示データに基づいて、溶接ロボット11を駆動する。この制御装置13は、CPUが、ROMやRAM、ハードディスク等の記憶部に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、溶接システム100の各部の制御を行うコンピュータ装置である。
【0016】
溶接トーチ21の先端には、フラックス入りワイヤ、ソリッドワイヤ等の消耗式電極である溶接ワイヤ20が、ワイヤパック14から不図示のワイヤ送給装置によって繰り出されることで供給される。溶接電源15は、電源ケーブル16を通じて溶接トーチ21、及びワークWと接続される。溶接トーチ21には、制御装置13からの指令によって、溶接ロボット11内に配設されたパワーケーブルを通じて溶接電流が供給される。また、溶接トーチ21には、シールドガスが供給され、溶接時の大気の巻き込みを保護する。また、溶接トーチ21にはトーチ冷却用の冷却水も供給される。
【0017】
制御装置13は、溶接ロボット11を駆動して、溶接トーチ21を溶接位置に移動させる。また、制御装置13は、溶接ワイヤ20の先端とワークWとの間に溶接電源15からの溶接電流を供給して、シールドガス雰囲気にされた溶接トーチ21の先端の溶接ワイヤ20とワークWとの間にアークを発生させる。そして、アークを発生させながら、溶接ロボット11を溶接トーチ21が予め教示した軌跡通りに移動するように駆動する。これにより、ワークWが溶接される。
【0018】
次に、溶接システム100の溶接ロボット11の構成について、更に詳細に説明する。
図2は溶接ロボットの一例を示す外観斜視図、
図3は
図2に示す溶接ロボットの駆動軸を模式的に示す説明図である。
ここで示す溶接ロボット11は、一般的な6つの駆動軸を有する6軸ロボットである。溶接ロボット11は、ここで例示する6軸ロボットの以外にも、例えば7軸ロボットや、他の構成の多軸ロボットであってもよい。
【0019】
溶接ロボット11は、ベース31と、ベース31上で鉛直方向に沿った第1駆動軸S1回りに旋回可能に設けられた旋回部33と、水平方向に沿った第2駆動軸S2を介して一端部が旋回部33と連結され、第2駆動軸S2回りに回転自在な下部アーム(第1アーム)35と、を備える。更に溶接ロボット11は、下部アーム35の他端部に第2駆動軸と平行な第3駆動軸S3を介して接続された上部アーム(第2アーム)37と、上部アーム37に設けられ、第4駆動軸S4によりアーム軸線回りに回転可能な手首旋回部39と、手首旋回部39に第5駆動軸S5を介して接続される手首曲げ部41と、手首曲げ部41の先端に第6駆動軸S6を有して接続される手首回転部43と、を備える。これら下部アーム35、上部アーム37及び手首旋回部39、手首曲げ部41、手首回転部43は、多関節アームを構成する。
【0020】
多関節アームの最先端軸となる手首回転部43の第6駆動軸S6と、溶接トーチ21との間には、前述のトーチ支持部23が配置される。
【0021】
溶接ロボット11の第1駆動軸S1〜第6駆動軸S6は、それぞれ図示しないサーボモータ等の駆動モータにより駆動される。これら駆動モータは、それぞれ制御装置13(
図1参照)から駆動信号が入力され、各駆動軸の回転角度が制御される。これにより、溶接トーチ21が、X,Y,Z空間で所望の姿勢に位置決め可能となっている。
【0022】
図4は下部アーム35と上部アーム37とが連結されるアーム関節部49の拡大斜視図、
図5は
図4のアーム関節部49の上視図である。
下部アーム35の先端部51に固定された第3駆動軸S3となる軸体(不図示)には、上部アーム37の基端部53のアーム関節部49が支持される。アーム関節部49は、上部アーム37を第3駆動軸S3回りに駆動するS3モータ(不図示)と、上部アーム37の先端側を第4駆動軸S4回りに駆動するS4モータが内蔵された、1つのブロック体として構成される。つまり、上部アーム37は、基端側のアーム関節部49と、アーム関節部49に第4駆動軸S4回りに回転可能に支持され、先端部に手首旋回部39が取り付けられた回転軸部45と、を有して構成される。
【0023】
下部アーム35の先端部51から上部アーム37のアーム関節部49までのアーム外側には、ハーネス55が設けられる。ハーネス55は、下部アーム35の先端部51でアーム内側からアーム外側に導出され、上部アーム37の基端側のアーム関節部49でアーム外側からアーム内部に導入される。このハーネス55は、外表部が保護管からなり、保護管内にS3モータ及びS4モータへの信号線や電源線等、各種の導電線が内挿される。なお、ハーネス55は、下部アーム35の外側に配置されていてもよく、いずれの場合も下部アーム35の先端部51から上部アーム37に向けて延設される。
【0024】
ハーネス55の長手方向一方の側は、下部アーム35の先端部51における第3駆動軸S3の軸方向に関して、アーム関節部49が配置された側と反対の外側面47に沿って配置され、下部アーム35の先端部51に設けたハーネス保持部57に保持される。ハーネス保持部57は、図示例のように下部アーム35の筐体に設けた開口であってもよく、下部アーム35の外側面47に設けた結束帯等の支持部材であってもよい。ハーネス保持部57は、ハーネス55を、下部アーム35の長手方向に繰り出し及び縮退を可能に、下部アーム35の先端部51で保持する。
【0025】
ハーネス55の長手方向他方の側は、アーム関節部49に形成されたハーネス固定部59に固定される。ハーネス固定部59は、第3駆動軸S3の径方向外側に向けて突出した環状壁部61と、環状壁部61の頂面を覆う蓋部63とを有する。環状壁部61の、第3駆動軸S3の軸方向に関して下部アーム35側となる対向壁部65には、ハーネス55をアーム外側からハーネス固定部59内に導入する開口部67が形成される。ハーネス固定部59内では、開口部67から内部に導入されたハーネス55の先端が、固定具69によって取付面71に固定される。なお、蓋部63は、図示しないねじ等の締結部材によって環状壁部61に固定される。
【0026】
図5に示すように、ハーネス55は、上部アーム37の先端部から基端部53側に向けて、上部アーム37の長手軸(第4駆動軸S4)から傾斜角αで傾斜させてアーム関節部49内に挿入される。挿入されたハーネス55の先端は、ハーネス固定部59の取付面71に、長手軸から傾斜した姿勢で固定される。換言すれば、ハーネス55は、アーム関節部49の開口部67から上部アーム37の先端側に向けて下部アーム35側に傾斜角αで傾斜して延設される。
【0027】
図6は上部アーム37が溶接ロボット11の原点姿勢(図中点線で示す)から逆回転方向に駆動される様子を示す斜視図、
図7は
図6のV1方向から見た下部アーム35及び上部アーム37の斜視図である。
上記のハーネス接続構造を有するアーム関節部49とハーネス55によれば、ハーネス55は、アーム関節部49から上部アーム37の逆回転方向の後方に向けて延出されることになる。そのため、上部アーム37が原点姿勢から逆回転方向に約−180°の反転位置に駆動されても、ハーネス55は、局所的に小さな曲率半径で湾曲することなく、下部アーム35の先端部51から滑らかなカーブを描いてアーム関節部49のハーネス固定部59まで配置される。
【0028】
ところで、従来のハーネス接続構造においては、ハーネス固定部59の対向壁部65にハーネス55が垂直に導入されていた。そのため、上部アーム37が逆回転方向に駆動された場合、ハーネス55がZ型に捩れ、局所的に小さな曲率半径で湾曲していた。しかし、本構成のハーネス接続構造によれば、下部アーム35からアーム関節部49までの領域のハーネス55が、回転移動方向に沿って配置され、Z型に変形する等のハーネス55の捩れが軽減される。また、上部アーム37が正回転方向に駆動されても、ハーネス55に局所的に小さな湾曲が生じることがない。
【0029】
また、本構成の溶接ロボット11は、
図2に示すように、下部アーム35と上部アーム37が、上部アーム37の下部アーム35に対する可動範囲を決定する第1ストッパ部73、第2ストッパ部75、第3ストッパ部77(
図4参照)を有する。第1ストッパ部73は、下部アーム35に設けられる。第2ストッパ部75は、アーム関節部49に設けられ、第3駆動軸S3を中心とする上部アーム37の逆回転方向先方で第1ストッパ部73に突き当たる。また、第3ストッパ部77は、アーム関節部49に設けられ、上部アーム37の正回転方向先方で第1ストッパ部73の背面側に突き当たる。
【0030】
図5に示すように、第2ストッパ部75は、ハーネス55がハーネス固定部59内に導入される開口部67よりも逆回転方向の先方に配置される。これにより、ハーネス55は、第2ストッパ部75よりも逆回転方向の後方に配置され、しかも、ハーネス固定部59から上部アーム37の先端側に向けて延出されるため、第1ストッパ部73と第2ストッパ部75との間に挟まれることがない。
【0031】
次に、上記のハーネス接続構造について、より詳細に説明する。
図8は上部アーム37の下部アーム35に対する各回転位置におけるハーネス固定部59の開口部67の位置関係を示す説明図である。
上部アーム37が原点姿勢(θ=0°)から第3駆動軸S3を中心に逆回転方向に駆動され、反転位置(θ=−180°)に配置された場合、ハーネス固定部59の開口部67は下部アーム35と重ならない。しかし、上部アーム37を更に逆回転方向に駆動して、開口部67が下部アーム35に重なる位置(θ=θc)に達した場合には、ハーネスが上部アーム37と下部アーム35との間に挟まれないようにする必要がある。
【0032】
図9は参考例として示す
図8のV2方向から見た下部アーム35と上部アーム37の模式的な下視図である。
ここで、上部アーム37に形成されたハーネス固定部59の対向壁部65と、下部アーム35のアーム関節部49に対面する内側面81との間に、隙間が殆どなく、ハーネス55が第3駆動軸S3と略平行にハーネス固定部59内に導入される場合を考える。この場合、上部アーム37の第3駆動軸S3を中心とする回転駆動によって、開口部67の開口領域が、下部アーム35の側面部83よりも下部アーム35の長手方向に直交する幅方向(図中上下方向)の内側の領域、つまり、図中の下部アーム35の上下方向幅内に入り込もうとする。すると、開口部67に導入されたハーネス55が、下部アーム35の側面部83に挟まれて、ハーネス55に剪断力が負荷される。
【0033】
図10は本構成のハーネス接続構造における
図8のV2方向から見た下部アーム35と上部アーム37の模式的な下視図である。
ここでは、ハーネス固定部59の対向壁部65と、下部アーム35の内側面81との間に配置される第2ストッパ部75の支持部76における、第2ストッパ部75の配置側と反対側に、ハーネス55をガイドする傾斜面76aを設け、開口部67からハーネス55を傾斜させて突出させた場合を考える。
【0034】
この場合、上部アーム37の原点姿勢において、開口部67が、第4駆動軸S4から傾斜角αだけ傾斜した傾斜面を有して形成され、支持部76の傾斜面76aと同じ傾斜で繋がることで、ハーネス55は、開口部67から下部アーム35の側面部83に向けて緩やかに湾曲して配置される。そのため、ハーネス55に、大きな剪断力が作用することはない。
【0035】
また、
図5に示すように、開口部67から下部アーム35に向けて突出するハーネス55は、開口部67の傾斜面、及び支持部76の傾斜面76aによって、第4駆動軸S4から傾斜して、緩やかに湾曲された状態で配置される。このハーネス55の湾曲の曲率半径をR、曲率中心をO、ハーネス55の直径を2rとすると、ハーネス55の湾曲内側表面における最小曲率半径Rtは、Rt=R−rで表される。
【0036】
ここで、ハーネス55の湾曲の曲率半径Rは、ハーネス55の許容曲げ半径以上であることが好ましい。その場合、上部アーム37がいかなる姿勢であっても、ハーネス55の曲げにより生じる損傷を防止できる。また、ハーネス55が許容曲げ半径となった場合でも、上記した最小曲率半径Rtの円弧ラインの径方向内側に、下部アーム35の先端部51が配置されていることが好ましい。つまり、ハーネス55の曲率半径中心Oから下部アーム35の側面部83までの距離Bは、許容曲げ半径がRである場合の最小曲率半径Rtより小さいことが好ましい。この構成によれば、仮にハーネス55が許容曲げ半径にまで湾曲された場合でも、ハーネス55と下部アーム35の先端部51との干渉が避けられる。
【0037】
以上説明したように、本構成のハーネス接続構造によれば、
図10に示すように、上部アーム37の原点姿勢において、開口部67を下部アーム35の側面部83よりも下部アーム35の幅方向内側に配置される。これにより、アーム関節部49の第4駆動軸S4方向に関する長さ(図示例では第3駆動軸S3から上部アーム37の回転軸部45とアーム関節部49との境界までの距離La1で示す)を、
図9に示す参考例の場合の距離Laよりも短縮できる。
【0038】
したがって、
図10に示すハーネス接続構造によれば、アーム関節部49が第3駆動軸S3方向の軸長が短縮されて、アーム関節部49の小型化と重量の軽減を図れる。よって、アーム駆動時におけるアーム慣性に起因する振動の発生を抑制できる。そのため、このハーネス接続構造を有する溶接ロボットによれば、意図した通りの高品位な溶接加工を実現でき、得られる溶接品の品質を向上できる。
【0039】
特に、2軸ウィーバーを用いて溶接トーチ21をウィービング動作させる場合には、モータ駆動によるアーム慣性等に起因する溶接トーチ21の無用な振動が抑制され、より高精度な揺動動作を実現できる。
【0040】
また、アーム関節部49の回転状態によらず、ハーネス55と下部アーム35の先端部51との干渉が回避でき、ハーネス55が損傷を受けることを未然に防止できる。
【0041】
なお、仮に第3駆動軸S3から第4駆動軸S4の軸間距離に余裕が持てれば、
上部アーム37の基端側(下部アーム35側)から、上部アーム37内にハーネス55を導入すれば、上部アーム37の前後両方向への動作範囲を大きくできる。しかし、その場合には、第3駆動軸S3と第4駆動軸S4とのアーム関節部49の上下高さが増すため、ロボット剛性の低下につながり、適切な溶接トーチの移動精度の確保が難しくなる。更に、ハーネス55が被溶接物(ワーク)に近づくことになる為、ロボット動作中のハーネス55へ損傷の可能性が高まることになる。そして、第3駆動軸S3を中空構造の減速機を用いて、中空孔からハーネスを引き入れることも考えられるが、その場合はコストが高くなる。
【0042】
これに対して本構成のロボットアームのハーネス接続構造によれば、ロボット剛性を低下させず、ハーネス55の損傷を防止して、高精度な駆動を低コストで実現できる。
【0043】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0044】
上記のロボットアームのハーネス接続構造として、溶接ロボットに適用した例を示したが、これに限らず、部材の切断、組立て、移載、搬送等の各種の動作を行う産業ロボットのロボットアームにも本構成を適用できる。
【0045】
また、ハーネスに挿通される導電線等の配線部材は、モータ駆動用に限らず、シールドガスや冷却水を溶接トーチに向けて供給するパイプや、アーク発生用の溶接電力を供給する電源ケーブル等、他の部材が混在、又は単独で配置されていてもよい。