特許第6777564号(P6777564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777564
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】傾動式振動選別粉砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/14 20060101AFI20201019BHJP
   B02C 17/18 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B02C17/14 A
   B02C17/18 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-27561(P2017-27561)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-130693(P2018-130693A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】593202483
【氏名又は名称】株式会社阿部鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 兼美
(72)【発明者】
【氏名】梅本 紘成
(72)【発明者】
【氏名】森下 茂
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−171232(JP,U)
【文献】 特開2006−111523(JP,A)
【文献】 特開2006−35074(JP,A)
【文献】 特開平11−90257(JP,A)
【文献】 特開2008−93534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00−7/18、15/00−17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下側断面が円弧状をなす、多数個の粉砕媒体(9)が収容された粉砕室(2a)を内部に有し、さらに、粉砕室に対する砕料の投入口(2b)を後部に、粉砕後砕料の排出口(2c)を前部にそれぞれ有する水平配置のドラム(2)と、そのドラム(2)の前・後部の下部をそれぞれ支持する空気ばね(3)と、前記ドラム(2)を振動させる加振機(5)と、前記空気ばね(3)の内圧を制御する圧力調整装置(6)と、前記ドラム(2)の前記投入口(2b)の直下から所定距離前方に移動した位置までの領域に設けられる砕料落とし口(7)と、その砕料落とし口(7)に張られた所定メッシュのスクリーン(8)とを有し、
前記砕料投入口(2b)から前記ドラム(2)に投入された砕料のうち、所定粒径以下の砕料を前記スクリーン(8)で漉してドラム外に取り出し、前記空気ばね(3)で前記ドラム(2)を前下がりの姿勢に傾斜させ、前記スクリーン(8)によって漉し残された砕料を前記粉砕室(2a)内の粉砕媒体(9)で粉砕するように構成された傾動式振動選別粉砕機。
【請求項2】
前記空気ばね(3)が計4個設けられ、前記ドラム(2)の前側下部の左右と後側下部の左右がそれぞれその空気ばね(3)によって支持されている請求項1に記載の傾動式振動選別粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コークスなどの砕料の効率的な選別・粉砕を1台の機械で実施可能となした傾動式振動選別粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
振動ドラムを用いて砕料の粒径調整を行なう粉砕機として下記特許文献1〜3に示されるようなものが知られている。
【0003】
これ等の文献に記載された振動式粉砕機は、水平配置のドラムに砕料と粉砕媒体を投入し、加振機でドラムを振動させて砕料の粉砕を行なう。この作業は、粉砕しようとする砕料の全量をドラムに投入する方法でなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−42322号公報
【特許文献2】特開2008−93534号公報
【特許文献3】特開平11−90257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1〜3に記載されたような、従来のドラムを利用する振動式粉砕機は、上述したように、砕料の全量をドラムに投入して粉砕を行なっている。そのため、粉砕不要の粒径を有する砕料が無駄に粉砕されており、粉砕不要砕料の過剰粉砕が起こる。また、砕料の全量粉砕による過剰動力や時間のロスなども起こる。
【0006】
例えば、製鉄用焼結鉱の製造工程では、粉鉱石と、粉砕した石灰石と、同じく粉砕したコークスを混練して造粒し、これを焼結して焼結鉱を作る方法が採られており、そのような用途に利用するコークスなどは、過剰粉砕されたものは好まれない。
【0007】
また、過剰動力や時間ロスは、製品のコストアップの要因となり、これも敬遠される。
【0008】
そこで、この発明は、コークスなどの砕料を、過剰粉砕や過剰動力、時間ロスなどを防止して効率よく粉砕できるようにしたドラム利用の振動式粉砕機を実現して提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明においては、下記の傾動式振動選別粉砕機を提供する。その傾動式振動選別粉砕機は、
少なくとも下側断面が円弧状をなす、多数個の粉砕媒体が収容された粉砕室を内部に有し、さらに、粉砕室に対する砕料の投入口を後部に、粉砕後砕料の排出口を前部にそれぞれ有する水平配置のドラムと、そのドラムの前・後部の下部をそれぞれ支持する空気ばねと、前記ドラムを振動させる加振機と、前記空気ばねの内圧を制御する圧力調整装置と、前記ドラムの前記投入口の直下から所定距離前方に移動した位置までの領域に設けられる砕料落とし口と、その砕料落とし口に張られた所定メッシュのスクリーンとを有し、
前記砕料投入口から前記ドラムに投入された砕料のうち、所定粒径以下の砕料を前記スクリーンで漉してドラム外に取り出し、前記空気ばねで前記ドラムを前下がりの姿勢に傾斜させ、前記スクリーンによって漉し残された砕料を前記粉砕室内の粉砕媒体で粉砕するように構成されたものである。
【0010】
前記空気ばねは、計4個でドラムの前側下部の左右と後側下部の左右をそれぞれ支持するとよい。
【0011】
また、前記加振機は、重錘式振動発生機がよく、その重錘式振動発生機を前記ドラムの左右に取り付け、左右の重錘式振動発生機を逆回転するように駆動するとよい。
【0012】
粉砕媒体は、前記排出口から落下できない長さを持った金属ロッドが好ましいが、前記排出口を粉砕媒体の通り抜けができない構造にすれば、粉砕後砕料の粒径よりも大径の金属球なども使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の傾動式振動選別粉砕機によれば、ドラムに投入された砕料のうち、所定粒径以下の粒径(粉砕不要の粒径)を持つものが前記スクリーンによって選別され(スクリーンの網目を通過して砕料落とし口に落ちる)、スクリーンによって漉し残された砕料(粉砕が必要な砕料)のみが粉砕媒体の収容されている粉砕室に流れて粉砕される。
【0014】
このため、従来の全量粉砕に比べて粉砕する砕料の量が減少し、過剰動力や時間ロスの問題が解消される。
【0015】
また、粉砕不要の砕料は事前に選別されて取り出されることから、粉砕不要砕料の過剰粉砕の問題も解消される。
【0016】
さらに、粉砕中に空気ばねの内圧を制御してドラムを最適傾斜角にすることができ、その傾斜角の制御により、選別・粉砕効率を高めることができる。これに加えて、粉砕室での粉砕時間や粉砕室からの排出時間の短縮、粉砕済み砕料のドラム内残留量の削減などを図ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の傾動式振動選別粉砕機の一例を示す側方視断面図である。
図2図1のX−X線に沿った断面図である。
図3図1の傾動式振動選別粉砕機のドラムを傾斜させた状態の側方視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面の図1図3に基づいて、この発明の傾動式振動選別粉砕機の実施の形態を説明する。
【0019】
図1に示すように、傾動式振動選別粉砕機1は、ドラム2と、空気ばね3と、架台4と、加振機5と、前記空気ばねの内圧を調整する圧力調整装置6と、砕料落とし口7と、所定メッシュのスクリーン8と、ドラム2内に収容される複数の粉砕媒体9を組み合わせて構成されている。
【0020】
ドラム2は、少なくとも下側断面が円弧状をなす粉砕室2aを内部に有するものであって、粉砕前の砕料を内部(粉砕室2a)に投入する砕料投入口2bを後部に、粉砕後砕料の排出口2cを前部にそれぞれ有している。このドラム2は、水平姿勢を基本姿勢とする向きに配置されている。なお、排出口2cには、必要に応じて粉砕された砕料を排出できるグレーチングなどを設けることができる。使用する粉砕媒体9のサイズによっては、排出口2cに対するグレーチングなどの設置が有効になることが考えられる。
【0021】
空気ばね3は、架台4上に計4個が設けられ、そのうちの2個でドラム2の前部の左右2箇所の下部を、残りの2個でドラム2の後部の左右2箇所の下部をそれぞれ支持している。
【0022】
加振機5は、好ましいと述べた重錘式振動発生機が設けられている。その加振機(重錘式振動発生機)5は、ドラム2の外部胴の左右に取り付けており、左右の重錘式振動発生機は、逆回転するように駆動される。
【0023】
この加振機5は、砕料の種類にもよるが、例えば、製鉄用焼結鉱のコークスの粉砕に用いられる粉砕機については、ドラム2を6G以上の加速度で振動させ得る、1台当たりの出力が3.7Kw〜22Kw程度のものが採用される。
【0024】
圧力調整装置6は、各空気ばね3の内圧を制御するものであって、この圧力調整装置6
による空気ばね3の内圧制御により、ドラム2を図3に示すように前下がりの状態に傾斜させ、その傾斜の角度を適正な値に調整する。
【0025】
砕料落とし口7は、スクリーン8によって選別された砕料をドラム外に取り除くための落下口であって、砕料投入口2bの直下に設けられている。
【0026】
スクリーン8は、砕料投入口2bからドラム2の内部に投入された砕料のうち、粉砕不要の所定粒径以下の砕料を選別する篩い網である。このスクリーン8によって漉された(スクリーンの網目を通り抜けた)砕料は、砕料落とし口7からドラム2の外部に取り出され、粉砕室2aには、粉砕を必要とする漉し残された砕料のみが送り込まれる。
【0027】
これにより、粉砕不要砕料の過剰粉砕が防止され、無駄な粉砕による過剰動力や時間ロスも回避される。
【0028】
粉砕媒体9は、排出口2cからの自然落下が阻止される長さを持った金属ロッドである。粉砕室2aには、その粉砕媒体9が多数収容されており、その粉砕媒体9がドラム2の振動により躍動し、粉砕室2aに流入した砕料がその粉砕媒体9によって粉砕される。
【0029】
スクリーン8による砕料の選別時間、粉砕室2a内での粉砕時間は、ドラム2の傾斜角を変更することによって調整される。
【0030】
ドラム2の傾斜角は、圧力調整装置6で空気ばね3の内圧を制御することによってなされる。ドラム2の前後の空気ばね3の内圧に差をつけて前後の空気ばね3の伸縮量を変化させることで、ドラム2を前下がりの状態に傾斜させて傾斜角を適正角度に調整することができる。
【0031】
その傾斜角の調整は、粉砕機の運転中に行なうことができる。運転中の調整は、砕料の粉砕状況を確認しながら行なうことができ、その状況確認により、最適な傾斜角を求めて選別・粉砕の効率を高めることができる。
【0032】
また、ドラムの傾斜角調整を空気ばねで行なうので、ドラムの傾動に伴う傾動機構構成要素の消耗が無く、傾動の静粛性も確保される。
【0033】
なお、粉砕不要の砕料を事前に選別するスクリーンを粉砕用のドラムに設けることの有効性は、試作機を用いた実験によって確認済みである。
【符号の説明】
【0034】
1 傾動式振動選別粉砕機
2 ドラム
2a 粉砕室
2b 砕料投入口
2c 排出口
3 空気ばね
4 架台
5 加振機
6 圧力調整装置
7 砕料落とし口
8 スクリーン
9 粉砕媒体
図1
図2
図3