(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記油圧ダンパ(31)は、前記揺動アーム(2)が揺動したときに前記支点軸(4)を中心に前記揺動アーム(2)と一体に移動するように前記揺動アーム(2)に設けられた筒状のダンパシリンダ(37)と、前記ダンパシリンダ(37)に摺動可能に挿入され、前記ダンパシリンダ(37)の内部を油圧室(38)とリザーバ室(39)とに区画するピストン(40)と、前記ピストン(40)に一端が接続され、他端が前記ダンパ当接ピン(41)に当接するダンパロッド(42)とを有する請求項1または2に記載の補機ベルト用テンショナユニット。
前記揺動アーム(2)の内部に、前記リザーバ室(39)に対して、前記ダンパシリンダ(37)の長手方向に直交する方向に隣接して位置する副リザーバ室(43)と、その副リザーバ室(43)と前記リザーバ室(39)の間を連通する連通路(44)とが形成されている請求項3に記載の補機ベルト用テンショナユニット。
前記テンションプーリ(3)は、前記揺動アーム(2)と軸方向に対向して配置され、前記揺動アーム(2)には、前記テンションプーリ(3)に対する対向面から前記テンションプーリ(3)の側に突出するプーリ軸(17)が設けられ、前記プーリ軸(17)の外周に、前記テンションプーリ(3)を回転可能に支持する転がり軸受(18)が装着されている請求項1から4のいずれかに記載の補機ベルト用テンショナユニット。
【背景技術】
【0002】
自動車の補機、たとえばオルタネータやカーエアコンやウォータポンプなどは、その回転軸がエンジンのクランクシャフトに補機ベルトで連結され、その補機ベルトを介して駆動される。この補機ベルトの張力を適正範囲に保つため、一般に、補機ベルト用テンショナユニットが使用される。
【0003】
補機ベルト用テンショナユニットとして、特許文献1の
図6に示されるものが知られている。この補機ベルト用テンショナユニットは、支点軸を中心に揺動可能に支持される揺動アームと、揺動アームが揺動したときに支点軸を中心に揺動アームと一体に移動するように揺動アームに支持されたテンションプーリと、油圧式オートテンショナとからなる。油圧式オートテンショナの下端は、エンジンブロックに固定された固定軸に回動可能に連結され、油圧式オートテンショナの上端は、揺動アームに回動可能に連結されている。
【0004】
特許文献の
図1に示されるように、油圧式オートテンショナの上端と下端の間には、揺動アームを一方の揺動方向(テンションプーリがベルトを押さえ付ける方向)に付勢するための圧縮コイルばねと、揺動アームの他方の揺動方向(テンションプーリがベルトから離れる方向)の揺動を緩衝する油圧ダンパとが、同軸上に組み込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、エンジンをコンパクト化するために、補機ベルトのレイアウトに工夫が加えられ、これに伴い、補機ベルトに張力を付与する補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースを小さくすることが求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の
図6のように、従来の補機ベルト用テンショナユニットは、揺動アームとは別個の部材である油圧式オートテンショナを使用し、その油圧式オートテンショナの上端と下端の間に、揺動アームを付勢するための圧縮コイルばねと、揺動アームの揺動を緩衝するための油圧ダンパとを一体の機構として組み込んだ構成なので、油圧式オートテンショナが上下に長いものとなり、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースが大きいという問題があった。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、取り付けスペースの小さい補機ベルト用テンショナユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明では、以下の構成の補機ベルト用テンショナユニットを提供する。
支点軸を中心に揺動可能に支持される揺動アームと、
前記揺動アームが揺動したときに前記支点軸を中心に前記揺動アームと一体に移動するように前記揺動アームで支持されたテンションプーリと、
前記揺動アームが揺動しても移動しないように位置を固定して設けられたばね当接ピンおよびダンパ当接ピンと、
前記揺動アームに取り付けられ、前記ばね当接ピンから受ける反力で前記揺動アームを一方の揺動方向に付勢するように前記ばね当接ピンを押圧する圧縮コイルばねと、
前記ダンパ当接ピンに接触するように前記揺動アームに取り付けられ、前記揺動アームの前記一方の揺動方向とは反対方向への揺動を緩衝する油圧ダンパと、
を備える補機ベルト用テンショナユニット。
【0010】
このようにすると、揺動アームを付勢するための圧縮コイルばねと、揺動アームの揺動を緩衝するための油圧ダンパとが、それぞれ揺動アームに個別に取り付けられているので、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースを小さくすることが可能である。また、揺動アームを付勢するばねとして圧縮コイルばねを採用しており、圧縮コイルばねは、一般にねじりコイルばねに比較して大きな付勢力を発生しやすいので、揺動アームを付勢するばねとしてねじりコイルばねを用いたものよりも、補機ベルト用テンショナユニットに必要とされる大きい押圧力を確保しやすい。
【0011】
前記圧縮コイルばねは、前記支点軸まわりに周方向に間隔をおいて複数設け、前記ばね当接ピンも、前記複数の圧縮コイルばねに対応して複数設けると好ましい。
【0012】
このようにすると、支点軸まわりに周方向に間隔をおいて配置された複数の圧縮コイルばねが、分担して揺動アームを付勢するので、個々の圧縮コイルばねのサイズを小さく抑えることができ、その結果、補機ベルト用テンショナユニットに必要とされる大きい押圧力を確保しつつ、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースを効果的に小さくすることが可能である。
【0013】
前記圧縮コイルばねと前記油圧ダンパは、前記支点軸に直交する同一平面上に配置すると好ましい。
【0014】
このようにすると、ねじりコイルばねに比較して一般に大きなスペースが必要とされる圧縮コイルばねを使用しながら、支点軸の軸方向に沿った補機ベルト用テンショナユニットの厚みを小さく抑えることができる。
【0015】
前記油圧ダンパとしては、前記揺動アームが揺動したときに前記支点軸を中心に前記揺動アームと一体に移動するように前記揺動アームに設けられた筒状のダンパシリンダと、前記ダンパシリンダに摺動可能に挿入され、前記ダンパシリンダの内部を油圧室とリザーバ室とに区画するピストンと、前記ピストンに一端が接続され、他端が前記ダンパ当接ピンに当接するダンパロッドとを有する構成のものを採用することができる。
【0016】
この場合、前記揺動アームの内部に、前記リザーバ室に対して、前記ダンパシリンダの長手方向に直交する方向に隣接して位置する副リザーバ室と、その副リザーバ室と前記リザーバ室の間を連通する連通路とを形成すると好ましい。
【0017】
このようにすると、油圧ダンパの長さを抑えることができるので、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースを効果的に小さくすることが可能である。
【0018】
さらに、前記テンションプーリを、前記揺動アームと軸方向に対向して配置し、前記揺動アームに、前記テンションプーリに対する対向面から前記テンションプーリの側に突出するプーリ軸を設け、前記プーリ軸の外周に、前記テンションプーリを回転可能に支持する転がり軸受を装着した構成を採用することができる。
【0019】
このようにすると、正面から見て、揺動アームとテンションプーリが重なり合った配置となるので、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースを効果的に小さくすることが可能である。
【0020】
前記ばね当接ピンと前記ダンパ当接ピンとが固定されたブラケットを更に設けると好ましい。
【0021】
このようにすると、補機ベルト用テンショナユニットをエンジンに取り付けるに際し、ブラケットをエンジンに固定するだけよく、ばね当接ピンとダンパ当接ピンとを個別にエンジンに固定する必要がない。そのため、補機ベルト用テンショナユニットをエンジンに取り付ける作業が容易である。
【発明の効果】
【0022】
この発明の補機ベルト用テンショナユニットは、揺動アームを付勢するための圧縮コイルばねと、揺動アームの揺動を緩衝するための油圧ダンパとが、それぞれ揺動アームに個別に取り付けられているので、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットの取り付けスペースを小さくすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に、この発明の実施形態の補機ベルト用テンショナユニットAを用いたベルト伝動装置の例を示す。このベルト伝動装置は、クランクシャフト50に取り付けられたクランクプーリ51と、クランクプーリ51に巻き掛けられたベルト5と、ベルト5を介してクランクプーリ51に連結されたオルタネータ52およびウォータポンプ53と、ベルト5を押圧してベルト5に張力に張力を付与する補機ベルト用テンショナユニットAとを有する。ここで、ウォータポンプ53およびオルタネータ52は自動車の補機であり、ベルト5は、クランクシャフト50の回転を補機(オルタネータ52およびウォータポンプ53)に伝達する補機ベルトである。
【0025】
図2〜
図4に示すように、補機ベルト用テンショナユニットAは、エンジンブロック8(
図4参照)に取り付けられるブラケット1と、ブラケット1に対して揺動可能に支持された揺動アーム2と、揺動アーム2に取り付けられたテンションプーリ3とを有する。
【0026】
揺動アーム2は、支点軸4を中心に揺動可能に支持されている。テンションプーリ3は、揺動アーム2が揺動したときに支点軸4を中心に揺動アーム2と一体に移動するように揺動アーム2で支持されている。テンションプーリ3の外周には、
図2に示すように、ベルト5が巻き掛けられる。
【0027】
図3に示すように、ブラケット1には、複数の貫通孔6が形成されている。
図4、
図5に示すように、ブラケット1は、貫通孔6(
図3参照)に挿入したボルト7で、エンジンブロック8に固定される。ここで、支点軸4と平行な方向に沿ってエンジンブロック8から遠い側を軸方向前側、エンジンブロック8に近い側を軸方向後側と定義する。
【0028】
図4に示すように、ブラケット1は、軸方向に直交する平板部9と、平板部9に固定して設けられた筒部10とを有する。筒部10は、両端が開口する筒状に形成されている。平板部9に対する筒部10の固定は、平板部9に形成された貫通孔11の内周に筒部10の外周を圧入することで行なわれている。筒部10は、平板部9の軸方向前面に対して軸方向前方に突出した状態に設けられている。筒部10の内周には、支点軸4の外周を回動可能に支持する筒状の滑り軸受12が嵌合している。
【0029】
滑り軸受12は、揺動アーム2に固定された支点軸4を回動可能に支持している。支点軸4は、軸方向前側から軸方向後側に向かって順に、ねじ軸部4Aと、ねじ軸部4Aに連なるストレート軸部4Bと、ストレート軸部4Bに連なる頭部4Cとを有し、ねじ軸部4Aを揺動アーム2の軸方向後面に形成されたねじ孔13にねじ込むことで、支点軸4が揺動アーム2に固定されている。ストレート軸部4Bの外径は、ねじ軸部4Aの外径よりも大きく、頭部4Cの外径は、ストレート軸部4Bの外径よりも大きい。ストレート軸部4Bの外周は円筒面であり、この円筒面が滑り軸受12の内周で摺動可能に支持されている。
【0030】
揺動アーム2の軸方向後面には、ねじ孔13を囲むように凹部14が形成されている。凹部14には、ブラケット1の筒部10が収容されている。筒部10の軸方向前端と揺動アーム2との間には、スラストワッシャ15が組み込まれている。スラストワッシャ15は、筒部10と揺動アーム2の間に作用する軸方向荷重を支持しながら、筒部10に対する揺動アーム2の揺動を許容する。また、筒部10の軸方向後端と支点軸4の頭部4Cとの間には、滑り軸受12の軸方向後端に一体に形成された鍔部16が挟み込まれている。滑り軸受12の鍔部16は、筒部10の軸方向後端と支点軸4の頭部4Cの間に作用する軸方向荷重を支持しながら、筒部10に対する支点軸4の回動を許容する。
【0031】
テンションプーリ3は、揺動アーム2と軸方向に対向して配置されている。揺動アーム2には、テンションプーリ3に対する対向面からテンションプーリ3の側(軸方向前側)に突出するプーリ軸17が設けられている。プーリ軸17の外周には、テンションプーリ3を回転可能に支持する転がり軸受18が装着されている。転がり軸受18は、テンションプーリ3の内周に固定された外輪19と、外輪19の内側に設けられた内輪20と、外輪19と内輪20の間に周方向に間隔をおいて組み込まれた複数の転動体21とを有する。転動体21は、図では玉である。
【0032】
外輪19は、テンションプーリ3の内周の円筒面に圧入して固定されている。外輪19の軸方向後側の側面は、テンションプーリ3の内周に形成された内向きのフランジ部22に接触し、この接触によって外輪19がテンションプーリ3に対して軸方向に位置決めされている。
【0033】
内輪20は、ボルト23でプーリ軸17に固定されている。ボルト23は、プーリ軸17の軸方向前端に形成されたねじ孔24にねじ込まれ、そのボルト23の頭部25で内輪20がプーリ軸17に固定されている。ボルト23の頭部25と内輪20の軸方向前側の側面との間には、ダストカバー26が挟み込まれている。ダストカバー26は、外輪19の軸方向前側の側面に対向する円盤状の部材である。ダストカバー26と外輪19の対向面間に侵入した異物は、外輪19との接触により生じる遠心力の作用で、外輪19とダストカバー26の対向面間から径方向外方に排出される。
【0034】
テンションプーリ3の外周には、ベルト5に形成された突起に係合する溝27が形成されている。溝27は、テンションプーリ3の外周を周方向に延びるV溝であり、テンションプーリ3の外周に軸方向に等間隔となるように複数設けられている。ベルト5(
図2参照)は、テンションプーリ3との接触面に、ベルト5の走行方向と平行に延びるリブが複数設けられたVリブドベルトである。
【0035】
図6に示すように、揺動アーム2の内部には、圧縮コイルばね30と油圧ダンパ31が取り付けられている。圧縮コイルばね30は、支点軸4まわりに周方向に等間隔となるように複数設けられている。各圧縮コイルばね30は、揺動アーム2に支点軸4まわりに周方向に間隔をおいて形成された複数のばね収容凹部32にそれぞれ収容されている。各圧縮コイルばね30は、一端がばね収容凹部32の内面で支持され、他端が筒状キャップ33を介してばね当接ピン34を押圧している。ばね当接ピン34は、揺動アーム2が揺動しても移動しないように位置を固定して設けられている。
【0036】
ばね当接ピン34は、複数の圧縮コイルばね30に対応して複数設けられている。すなわち、複数のばね当接ピン34は、圧縮コイルばね30の個数と同一個数設けられ、それらのばね当接ピン34が支点軸4まわりに周方向に等間隔となるように配置されている。ここで、各圧縮コイルばね30は、ばね当接ピン34から受ける反力で揺動アーム2を一方の揺動方向(
図2のテンションプーリ3がベルト5を押さえ付ける方向)に付勢している。すなわち、ばね当接ピン34から見て圧縮コイルばね30のある側の周方向(図では左回転方向)が、各圧縮コイルばね30による揺動アーム2の付勢方向となり、この各圧縮コイルばね30の付勢力によって、
図2のテンションプーリ3がベルト5を押さえ付けられる。
【0037】
図8に示すように、筒状キャップ33は、ばね収容凹部32内に設けられたガイドスリーブ35で摺動可能に支持されている。ばね当接ピン34は、ブラケット1に形成されたピン固定孔36に圧入して固定されている。ばね当接ピン34は、ブラケット1の平板部9の軸方向前面に対して軸方向前方に突出した状態に設けられ、その突出部分がばね収容凹部32に挿入された状態となっている。
【0038】
図6に示すように、油圧ダンパ31は、油圧ダンパ31と圧縮コイルばね30が支点軸4に直交する同一平面上に位置するよう揺動アーム2に組み込まれている。油圧ダンパ31は、揺動アーム2が揺動したときに支点軸4を中心に揺動アーム2と一体に移動するように揺動アーム2に設けられた筒状のダンパシリンダ37と、ダンパシリンダ37に摺動可能に挿入され、ダンパシリンダ37の内部を油圧室38とリザーバ室39とに区画するピストン40と、ピストン40に一端が接続され、他端がダンパ当接ピン41に当接するダンパロッド42とを有する。ダンパ当接ピン41は、揺動アーム2が揺動しても移動しないように位置を固定して設けられている。
【0039】
揺動アーム2の内部には、リザーバ室39に対して、ダンパシリンダ37の長手方向に直交する方向に隣接して位置する副リザーバ室43と、その副リザーバ室43とリザーバ室39の間を連通する連通路44とが形成されている。油圧室38とリザーバ室39には、空気が存在しないように作動油で満たされている。一方、副リザーバ室43には、空気と作動油とが上下二層に収容されている。
【0040】
図7に示すように、ダンパシリンダ37は、一端が開口し、他端が閉塞した有底筒状に形成されている。ダンパシリンダ37は、揺動アーム2に形成されたダンパ収容凹部45に嵌め込まれ、ダンパ収容凹部45の内周に圧入したウェアリング46でダンパ収容凹部45内に固定されている。ウェアリング46の内周は、ダンパロッド42の外周を摺動可能に支持している。また、ダンパ収容凹部45には、ダンパロッド42を摺動可能に貫通させるオイルシール47と、オイルシール47をダンパ収容凹部45から抜け止めする止め輪48とが組み込まれている。
【0041】
ピストン40は、ダンパシリンダ37の長手方向に摺動可能にダンパシリンダ37内に収容されている。ピストン40には、油圧室38とリザーバ室39を連通する油通路49が形成されている。油通路49の油圧室38の側の端部には、リザーバ室39の側から油圧室38の側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ50が設けられている。ピストン40とダンパシリンダ37の摺動面間には、微小なリーク隙間51が形成されている。油圧室38には、油圧室38の容積が拡大する方向にピストン40を押圧するピストンスプリング52が組み込まれている。
【0042】
ダンパ当接ピン41は、ブラケット1に形成されたピン固定孔53に圧入して固定されている。ダンパ当接ピン41は、ブラケット1の平板部9の軸方向前面に対して軸方向前方に突出した状態に設けられ、その突出部分にダンパロッド42の先端が当接している。
【0043】
図6に示すように、ダンパ当接ピン41から見て油圧ダンパ31のある側の周方向(図では左回転方向)が、ばね当接ピン34から見て圧縮コイルばね30のある側の周方向(図では左回転方向)と同じ方向となるように、油圧ダンパ31とダンパ当接ピン41が配置されている。これにより、油圧ダンパ31は、圧縮コイルばね30が揺動アーム2を付勢する方向とは反対の揺動方向(すなわち、
図2のテンションプーリ3がベルト5から離れる方向)の揺動アーム2の揺動を緩衝するようになっている。
【0044】
揺動アーム2には、軸方向に貫通する第1のセット孔28が形成されている。ブラケット1にも、ブラケット1の軸方向前面に開口する第2のセット孔29が形成されている。支点軸4から第1のセット孔28までの距離と、支点軸4から第2のセット孔29までの距離は同一である。そして、圧縮コイルばね30の圧縮量が増加する方向に揺動アーム2をブラケット1に対して揺動させ、第1のセット孔28の位置と第2のセット孔29の位置とを合致させた状態で、図示しない初期セットピンを第1のセット孔28と第2のセット孔29に差し込むことで、ブラケット1に対する揺動アーム2の揺動位置を保持することができるようになっている。
【0045】
次に、この補機ベルト用テンショナユニットAの動作例を説明する。
【0046】
図2に示すベルト5の張力が小さくなると、圧縮コイルばね30(
図6参照)の付勢力によって、揺動アーム2が左回転方向に揺動し、ベルト5の弛みを吸収する。このとき、
図6、
図7に示すピストン40がピストンスプリング52の付勢力によって油圧室38の容積が拡大する方向に移動する。また、チェックバルブ50が開き、油通路49を通ってリザーバ室39から油圧室38に作動油が流れる。
【0047】
一方、
図2に示すベルト5の張力が大きくなると、そのベルト5の張力によって、揺動アーム2が右回転方向に揺動し、ベルト5の緊張を吸収する。このとき、
図6、
図7に示すピストン40が油圧室38の容積を縮小する方向に移動するので、チェックバルブ50が閉じ、リーク隙間51を通って油圧室38からリザーバ室39に作動油が流れ、その作動油の粘性抵抗によってダンパ作用を生じる。
【0048】
この補機ベルト用テンショナユニットAは、揺動アーム2を付勢するための圧縮コイルばね30と、揺動アーム2の揺動を緩衝するための油圧ダンパ31とが、それぞれ揺動アーム2に個別に取り付けられているので、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットAの取り付けスペースを小さくすることが可能となっている。また、揺動アーム2を付勢するばねとして圧縮コイルばね30を採用しており、圧縮コイルばね30は、一般にねじりコイルばねに比較して大きな付勢力を発生しやすいので、揺動アーム2を付勢するばねとしてねじりコイルばねを用いたものよりも、補機ベルト用テンショナユニットAに必要とされる大きい押圧力を確保しやすくなっている。
【0049】
また、この補機ベルト用テンショナユニットAは、支点軸4まわりに周方向に間隔をおいて配置された複数の圧縮コイルばね30が、分担して揺動アーム2を付勢するので、個々の圧縮コイルばね30のサイズを小さく抑えることができ、その結果、補機ベルト用テンショナユニットAに必要とされる大きい押圧力を確保しつつ、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットAの取り付けスペースを効果的に小さくすることが可能となっている。
【0050】
また、この補機ベルト用テンショナユニットAは、圧縮コイルばね30と油圧ダンパ31を、支点軸4に直交する同一平面上に配置しているので、ねじりコイルばねに比較して一般に大きなスペースが必要とされる圧縮コイルばね30を使用しながら、支点軸4の軸方向に沿った補機ベルト用テンショナユニットAの厚みを小さく抑えることが可能となっている。
【0051】
また、この補機ベルト用テンショナユニットAは、揺動アーム2の内部に、リザーバ室39に対して、ダンパシリンダ37の長手方向に直交する方向に隣接して位置する副リザーバ室43と、その副リザーバ室43とリザーバ室39の間を連通する連通路44とを形成しているので、油圧ダンパ31の長さを抑えることが可能となっている。そのため、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットAの取り付けスペースが小さい。
【0052】
また、この補機ベルト用テンショナユニットAは、テンションプーリ3を、揺動アーム2と軸方向に対向して配置し、揺動アーム2に、テンションプーリ3に対する対向面からテンションプーリ3の側に突出するプーリ軸17を設け、プーリ軸17の外周に、テンションプーリ3を回転可能に支持する転がり軸受18を装着した構成を採用しているので、正面から見て、揺動アーム2とテンションプーリ3が重なり合った配置となる。そのため、正面から見た補機ベルト用テンショナユニットAの取り付けスペースを効果的に小さくすることが可能となっている。
【0053】
また、この補機ベルト用テンショナユニットAは、ばね当接ピン34とダンパ当接ピン41とが固定されたブラケット1を有するので、補機ベルト用テンショナユニットAをエンジンブロック8に取り付けるに際し、ブラケット1をエンジンに固定するだけよく、ばね当接ピン34とダンパ当接ピン41とを個別にエンジンブロック8に固定する必要がない。そのため、補機ベルト用テンショナユニットAをエンジンブロック8に取り付ける作業が容易である。
【0054】
上記実施形態では、揺動アーム2に支点軸4を設け、その支点軸4を回動可能に支持する滑り軸受12をブラケット1に設けたものを例に挙げて説明したが、揺動アーム2に滑り軸受12を設け、その滑り軸受12を介して揺動アーム2を回動可能に支持する支点軸4をブラケット1に設けるようにしてもよい。また、滑り軸受12にかえて転がり軸受を採用することも可能である。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。