特許第6777890号(P6777890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777890
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】物体識別子抽出装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20201019BHJP
【FI】
   G06T7/60 300Z
【請求項の数】4
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2017-539785(P2017-539785)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】JP2016073736
(87)【国際公開番号】WO2017047306
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2019年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-183624(P2015-183624)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(72)【発明者】
【氏名】石山 塁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佑太
【審査官】 佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−197713(JP,A)
【文献】 特開2004−153405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 − 7/90
B42D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面にランダムパターンを加工する加工部と、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
を含み、
前記加工部は、液状のインク粒子を噴き付ける手段であり、
前記液状のインク粒子を噴き付ける手段は、インクジェットであり、
前記インクジェットは、微小な粒を含むインクを前記物体に吹き付けることにより円形状の第1のパターンを生成する第1のインクジェットと、前記微小な粒を含まないインクを噴きつけることにより前記第1のパターンより小さな円形状の第2のパターンを前記第1のパターン上に生成する第2のインクジェットとを有する、
物体識別子登録装置。
【請求項2】
物体の表面にランダムパターンを加工し、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記加工では、第1のインクジェットを使用して、微小な粒を含むインクを前記物体に吹き付けることにより円形状の第1のパターンを生成し、第2のインクジェットを使用して、前記微小な粒を含まないインクを噴きつけることにより前記第1のパターンより小さな円形状の第2のパターンを前記第1のパターン上に生成する、
物体識別子登録方法。
【請求項3】
物体識別子登録装置と識別照合装置とを有し、
前記物体識別子登録装置は、
物体の表面にランダムパターンを加工する加工部と、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録する登録部と、
を含み、
前記識別照合装置は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する判定部と、
を含み、
前記加工部は、液状のインク粒子を噴き付ける手段であり、
前記液状のインク粒子を噴き付ける手段は、インクジェットであり、
前記インクジェットは、微小な粒を含むインクを前記物体に吹き付けることにより円形状の第1のパターンを生成する第1のインクジェットと、前記微小な粒を含まないインクを噴きつけることにより前記第1のパターンより小さな円形状の第2のパターンを前記第1のパターン上に生成する第2のインクジェットとを有する、
物体識別子管理システム。
【請求項4】
物体識別子登録工程と識別照合工程とを有し、
前記物体識別子登録工程では、
物体の表面にランダムパターンを加工し、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録し、
前記識別照合工程では、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定し、
前記加工では、第1のインクジェットを使用して、微小な粒を含むインクを前記物体に吹き付けることにより円形状の第1のパターンを生成し、第2のインクジェットを使用して、前記微小な粒を含まないインクを噴きつけることにより前記第1のパターンより小さな円形状の第2のパターンを前記第1のパターン上に生成する、物体識別子管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体識別子抽出装置、物体識別子抽出方法、識別装置、識別方法、物体識別子登録装置、物体識別子登録方法、識別照合装置、識別照合方法、物体識別子管理システム、物体識別子管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品や商品等の物体の同一性を識別するための物体識別技術には、バーコード、シリアル番号、ICタグ等、多種多様なものが提案乃至実用化されている。そのような物体識別技術の一種として、微小な粒を含有するパターンを物体上に生成し、そのパターンを撮像して得られる画像から特徴量を抽出し、この抽出した特徴量を物体の識別子とする技術がある。
【0003】
例えば、微小な粒としてタガント(taggant:追跡用添加物)を使用し、タガントを含有するパターンを物体上に生成し、そのパターンの所定の領域を撮像して得られる画像から抽出した上記所定の領域における粒の分布を特徴量(物体の物体識別子)とすることが、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0004】
具体的には、特許文献1では、基準物体の表面の全部または一部に、タガントを混入した印刷インク等を塗布してタガント分布パターンを形成し、このタガント分布パターンを読取った画像から抽出した特徴量を当該基準物体の物体識別子とする。対象物体と照合を行う際は、読取りの向き、位置、範囲を基準物体の読み取りと同一の条件にして、対象物体上のタガント分布パターンの画像を読み取り、その画像から抽出した特徴量を基準物体の物体識別子と比較する。
【0005】
また特許文献2では、各物体上に、位置合わせの基準となる原点を設定し、その原点から右方向をX軸の正方向、下方向をY軸の正方向として定義される2次元平面の所定の領域から特徴量を抽出し、この抽出した特徴量を当該物体の物体識別子とする。ここで、所定の領域の形状として、矩形、円形、楕円形、多角形、その他特別な形状を有するロゴが例示されている。
【0006】
また特許文献3では、物体上に基準部(位置合わせマーク、ライン、企業ロゴ、枠、物体自体の縁もしくは縁の組み合わせ等)を設け、少なくとも基準部が完全に覆われるように、タガントを含有する塗料等をスプレーしてランダムなパターンを付着させる。そして、基準部の画像からタガントの分布に依存する特徴量を抽出し、それを当該物体の物体識別子とする。
【0007】
一方、生体認証技術の一つに虹彩認証がある。虹彩認証は、例えば特許文献4および特許文献5に記載されるように、カメラで撮像して得た個人の目の虹彩画像から特徴を抽出してコード化し、事前に登録された虹彩コードと照合して個人認証を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−69188号公報
【特許文献2】特開2014−6840号公報
【特許文献3】特表2007−534067号公報
【特許文献4】特表平8−504979号公報
【特許文献5】米国特許5291560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、認証技術として物体認証と生体認証とが存在するが、両者は互いに異なる技術分野を形成し発展してきた。そのため、生体認証、特に虹彩認証で培われた技術を工業製品や商品等の物体の認証に利用する考えは、これまで存在しなかった。また、虹彩認証で培われた技術を虹彩以外の物体の認証に利用しようとしても適用するのは困難であった。その理由は、物体識別のためのパターンは、矩形、円形、楕円形、多角形など、虹彩とは似ても似つかない形状をしているためである。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題、即ち虹彩認証で培われた技術を工業製品や商品等の物体の認証に適用するのは困難である、という課題を解決する物体識別子抽出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る物体識別子抽出装置は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
を含む。
【0012】
本発明の他の実施形態に係る物体識別子抽出方法は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する。
【0013】
本発明の他の実施形態に係る識別装置は、
本発明の物体識別子抽出装置によって抽出した物体識別子を用いて識別を行う。
【0014】
本発明の他の実施形態に係る照合装置は、
本発明の物体識別子抽出装置によって抽出した物体識別子を用いて照合を行う。
【0015】
本発明の他の実施形態に係る識別方法は、
本発明の物体識別子抽出方法によって抽出した物体識別子を用いて識別を行う。
【0016】
本発明の他の実施形態に係る照合方法は、
本発明の物体識別子抽出方法によって抽出した物体識別子を用いて照合を行う。
【0017】
本発明の他の実施形態に係る識別照合装置は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する判定部と、
を含む。
【0018】
本発明の他の実施形態に係る識別照合方法は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する。
【0019】
本発明の他の実施形態に係るプログラムは、
コンピュータを、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
して機能させる。
【0020】
本発明の他の実施形態に係る物体識別登録装置は、
物体の表面にランダムパターンを加工する加工部と、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
を含む。
【0021】
本発明の他の実施形態に係る物体識別登録方法は、
物体の表面にランダムパターンを加工し、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する。
【0022】
本発明の他の実施形態に係る物体識別子管理システムは、
物体識別子登録装置と識別照合装置とを有し、
前記物体識別子登録装置は、
物体の表面にランダムパターンを加工する加工部と、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録する登録部と、
を含み、
前記識別照合装置は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する判定部と、
を含む。
【0023】
本発明の他の実施形態に係る物体識別子管理方法は、
物体識別子登録工程と識別照合工程とを有し、
前記物体識別子登録工程では、
物体の表面にランダムパターンを加工し、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録し、
前記識別照合工程では、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上述した構成を有するため、虹彩認証で培われた技術を、工業製品や商品等の物体の認証に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る物体識別子抽出装置の構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る物体識別子抽出装置が実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施形態に係る物体識別子抽出装置の構成図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る物体識別子抽出装置が実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る物体識別子抽出装置が画像に対して実施する前処理の概念図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る物体識別子抽出装置の構成図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る物体識別子抽出装置が実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施形態に係る物体識別子抽出装置が画像に対して実施する前処理の概念図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る物体識別子抽出装置の構成図である。
図10】本発明の第4の実施形態に係る物体識別子抽出装置が実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の第4の実施形態に係る物体識別子抽出装置が画像に対して実施する前処理の概念図である。
図12】本発明の第5の実施形態に係る物体識別子登録装置の構成図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る物体識別子登録装置が実行する物体識別子登録方法の手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の第6の実施形態に係る物体識別子登録装置の構成図である。
図15】本発明の第6の実施形態に係る物体識別子登録装置が実行する物体識別子登録方法の手順を示すフローチャートである。
図16】本発明の第6の実施形態に係る物体識別子登録装置が記憶装置に登録するデータの構成例を示す図である。
図17】本発明の第7の実施形態に係る識別照合装置の構成図である。
図18】本発明の第7の実施形態に係る識別照合装置などを実現する情報処理装置のブロック図である。
図19】本発明の第7の実施形態に係る識別照合装置が実行する識別照合方法の手順を示すフローチャートである。
図20】本発明の第8の実施形態に係る物体識別子管理システムの構成図である。
図21】本発明の第8の実施形態に係る物体識別子管理システムが実行する物体識別子管理方法の手順を示すフローチャートである。
図22】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置の構成図である。
図23】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置において蓋が押下された状態を示す図である。
図24】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置によって物体上に加工したパターンを示す図である。
図25】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置におけるパターン撮像ユニットのブロック図である。
図26】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置におけるパターン撮像ユニットのMPUの処理手順を示すフローチャートである。
図27】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置の変形例を示す構成図である。
図28】本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置の変形例を示す構成図である。
図29】本発明の第10の実施形態に係る物体識別子登録装置の構成図である。
図30】本発明の第10の実施形態に係る物体識別子登録装置において蓋が押下された状態を示す図である。
図31】本発明の第10の実施形態に係る物体識別子登録装置によって物体上に加工したパターンを示す図である。
図32】本発明の第10の実施形態に係る物体識別子登録装置におけるパターン撮像ユニットのブロック図である。
図33】本発明の第10の実施形態に係る物体識別子登録装置におけるパターン撮像ユニットのMPUの処理手順を示すフローチャートである。
図34】本発明の第11の実施形態に係る物体識別子登録装置の構成図である。
図35】本発明の第11の実施形態に係る物体識別子登録装置において蓋が押下された状態を示す図である。
図36】本発明の第11の実施形態に係る物体識別子登録装置によって物体上に生成したパターンを示す図である。
図37】本発明の第11の実施形態に係る物体識別子登録装置におけるパターン撮像ユニットのブロック図である。
図38】本発明の第11の実施形態に係る物体識別子登録装置におけるパターン撮像ユニットのMPUの処理手順を示すフローチャートである。
図39】本発明の第12の実施形態に係る物体識別子抽出装置の構成図である。
図40】本発明の第12の実施形態に係る物体識別子抽出装置が実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る物体識別子抽出装置100は、物体110の物体識別子120を抽出する機能を有する。
【0027】
物体110は、物体識別子を抽出する対象である。物体110は、例えば工業製品や商品パッケージである。また物体110は、個人の持ち物(名刺や手帳など)あるいは個人の虹彩を除く身体の一部(例えば指など)であってもよい。物体110の何れかの面上には、平面形状が環状のランダムパターン111が加工されている。平面形状とは、ランダムパターン111の真上から見た形状のことである。ここで、ランダムパターン111が加工される物体110の面は、ランダムパターン111と視覚的に区別できる色、材質、模様等を有していることが望ましい。また、ランダムパターン111のサイズ(環状の外側境界が形成する円のサイズ)は、人の虹彩のサイズ(虹彩の外側境界が形成する円のサイズ)と同程度であってよい。但し、そのようなサイズに限定されず、ランダムパターン111のサイズは人の虹彩のサイズより小さくてもよいし、大きくてもよい。環状のランダムパターンを使用する後述する実施形態についても同様である。
【0028】
物体110の表面にランダムパターン111を加工する方法は任意である。例えば、ランダムパターン111は、微小な粒を混入した印刷インク、塗料などを、ペンやスタンプ等を使用して物体110の表面に塗布して固化させることにより生成してよい。微小な粒としては、金属粉やガラス粉などの微粒子や、特許文献1乃至3に記載されるタガントなどが使用できる。微小な粒は、ランダムパターン111を構成する材料(上記微小な粒を除く)と反射特性が異なる粒であることが望ましい。また微小な粒は、ランダムパターン111に不均一に含有していることが望ましい。或いは、ランダムパターン111は、レーザ加工機によって物体110の表面にランダムなパターンを加工することにより生成してよい。或いは、ランダムパターン111は、物体110の表面が梨地である場合、その梨地を利用して生成してよい。
【0029】
物体識別子抽出装置100は、主な機能部として、撮像部101と抽出部102とを有する。
【0030】
撮像部101は、物体110上に形成されているランダムパターン111の画像を取得する機能を有する。ここで、撮像部101は、ランダムパターン111の平面形状が写っている画像を取得する。
【0031】
抽出部102は、撮像部101によって取得された画像から、ランダムパターン111の特徴量を抽出し、この抽出した特徴量を物体110の物体識別子120として出力する機能を有する。抽出部102は、特徴量の抽出では、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズム(以下、虹彩認証アルゴリズムと記す)を使用する。
【0032】
物体識別子抽出装置100は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部101、抽出部102といった機能的手段を実現する。
【0033】
図2は物体識別子抽出装置100を用いて実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。以下、図1および図2を参照して本実施形態に係る物体識別子抽出方法について説明する。
【0034】
まず、物体識別子抽出装置100の撮像部101は、物体110上に形成されている環状のランダムパターン111の画像を取得する(ステップS101)。
【0035】
次に、物体識別抽出装置100の抽出部102は、撮像部101が取得した環状のランダムパターン111の画像から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS102)。次に、抽出部102は、抽出した特徴量を物体110の物体識別子120として出力する(ステップS103)。
【0036】
続いて、図2のステップS102の概要、即ち、環状のランダムパターン111の画像から虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する処理の概要について説明する。本実施形態では、虹彩認証アルゴリズムとして、例えばDaugmanのアルゴリズムを用いることができる。
【0037】
ステップS102の処理においては、まず、撮像部101によって取得された画像(ランダムパターン111とその周辺を含めた画像)の中から、虹彩に相当する部分の画像であるランダムパターン111の画像を抜き出す。次に、抜き出したランダムパターン111の画像に対して、所定の数学的手法に基づく非可逆な圧縮処理を施すことによって、当該ランダムパターン111固有の特徴を表す情報を含むビット列を生成する。
【0038】
このように虹彩に相当するランダムパターン111の画像に対して数学的な処理を行うことによって生成したビット列は、当該ランダムパターン111に固有な特徴が抽出されたものであり、他の物体上に形成されるランダムパターンとの比較において統計的に意味のある比較が行えるだけの基本的な情報が含まれている。上記のビット列が、本実施形態では物体識別子120となる。
【0039】
例えば、Daugmanのアルゴリズムでは、ガボールフィルタによるウェーブレット変換を用いて、虹彩画像に相当するランダムパターン111の中から、撮像部101の解像度等の性能を考慮した所定のSN比を有する空間周波数範囲を抜き出すことにより、ランダムパターン111のローカルな振幅と位相情報とを含む複素数群を取得する。そして、当該複素数群に基づいて、振幅情報を含まず、ガボール領域表現の複素数の符号ビットだけを含む2048ビットのビット列を、ランダムパターン111に対応するビット列として取得する。なお、Daugmanのアルゴリズムは、一般的な虹彩認証において広く使用されているため、そのアルゴリズムについての更に詳細な説明は省略する。
【0040】
このように本実施形態によれば、虹彩認証で培われた技術を、工業製品や商品等の物体の認証に適用することができる。即ち、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、物体識別子を抽出することができる。その理由は、物体110上に加工されたランダムパターン111の形状が虹彩と類似しているため、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、ランダムパターン111から特徴量を抽出できるためである。
一般に生体認証の技術は、高精度かつ大量の個体を認識するために種々の技術要素が開発されている。このため、本実施形態によって、それらの技術を工業製品や商品に適用することによって、低コストかつ高性能な物体識別子抽出装置を実現することができる。
また、特許文献1乃至3に記載の技術で物体識別子を抽出するには、上記の「所定の領域」の大きさ、向き、位置が正確に認識できるように、識別対象の上に、矩形やロゴなどの正確なパターンを形成する必要がある。このため、パターンの形成のために、かすれや欠けのない正確な印刷技術や高度な加工手段が必要になり、識別子を抽出するためのコストや加工時間がかかり、生産性が低下するという課題がある。特に、大量生産される工業製品・商品の識別に用いるためには、安価かつ高速に識別子を抽出する必要があり、適用できない場合が多いという課題がある。本実施形態によれば、そのような課題を解決することができる。
また、本実施形態によれば、環状のランダムパターンを付与するためにインクを1滴つけるだけ等のきわめて簡易的で低コストな手段によって、大量の工業製品や商品等の物体の認証を実現することができる。このような簡易的なランダムパターンを用いる場合、パターンの正確な形成を前提とする特許文献1乃至3に記載の技術は適用が困難である。
また、本実施形態において、環状のランダムパターン111のサイズを、人の虹彩のサイズと同程度にすることによって、人の虹彩認証システムで用いられている撮像手段(カメラ)を使用して物体認証を行うことができる。また、撮像手段とともに使用し認証精度を向上させるための様々な既存技術を物体認証に流用することができる。
なお、環状のランダムパターン111自体のサイズを、人の虹彩のサイズと同程度にする代わりに、環状のランダムパターン111の画像を当該パターンと同じ位置に存在する人の虹彩と同程度のサイズに変換する倍率補正用のコンバージョンレンズ1011を撮影部101に取り付けるようにしてよい。このようなコンバージョンレンズ1101を使用することにより、環状のランダムパターン111自体のサイズを、人の虹彩のサイズと同程度にした場合と同様の上述した効果を得ることができる。不定形状のランダムパターンや円形のランダムパターンを使用する後述する実施形態においても同様な倍率補正用のコンバージョンレンズを使用してよい。
【0041】
[第2の実施形態]
図3を参照すると、本発明の第2の実施形態に係る物体識別子抽出装置200は、物体210の物体識別子220を抽出する機能を有する。
【0042】
物体210は、物体識別子を抽出する対象であり、図1の物体110と同様のものである。物体210の何れかの面上には、不定形状のランダムパターン211が加工されている。この例では、ランダムパターン211は不定形状であるが、矩形等の所定の形状であってもよい。ランダムパターン211は、一部の領域がランダムパターンでない点状の領域212に加工されている。ここで、ランダムパターン211が加工される物体210の面は、ランダムパターン211と視覚的に区別できる色、材質、模様等を有していることが望ましい。また、点状の領域212は、ランダムパターン211の中央付近に生成されていることが望ましい。さらに、点状の領域212は、ランダムパターン211と視覚的に区別できる色、材質、模様等を有していることが望ましい。また、不定形状のランダムパターン211のサイズは、人の虹彩のサイズと同程度あるいはそれより若干大きい程度であってよい。但し、そのようなサイズに限定されず、ランダムパターン211のサイズは人の虹彩のサイズより小さくてもよいし、十分に大きくてもよい。不定形状のランダムパターンを使用する後述する実施形態についても同様である。
【0043】
物体210の表面にランダムパターン211を加工する方法は、図1の物体110の表面にランダムパターン111を加工する方法と同じでよい。また点状の領域212を加工する方法は任意である。例えば、点状の領域212は、ランダムパターン211が加工された物体210の表面に、微小な粒を混入していない通常の印刷インク、塗料などを、ペンやスタンプ等を使用して塗布して固化させることにより生成してよい。或いは、ランダムパターン211をレーザ加工機によって物体210の表面に加工する際、一部の領域に対してレーザ光が当たらないようにして物体210の本来の面のままとすることにより、点状の領域212を生成するようにしてよい。或いは、物体210が本来有する表面のランダムパターン211を利用する場合、そのランダムパターン211上に点状の領域212を加工するようにしてよい。例えば、表面が梨地の製品等に対しては、その製品の製造過程で自然に生じる表面の梨地をランダムパターンとすればよく、あえてランダムパターンを加工することはせず、単に基準となる点状の領域212を一点打てばよい。
【0044】
物体識別子抽出装置200は、主な機能部として、撮像部201と抽出部202とを有する。撮像部201は、図1の撮像部101と同様の機能を有する。
【0045】
抽出部202は、撮像部201によって取得された画像から、ランダムパターン211の特徴量を抽出し、この抽出した特徴量を物体210の物体識別子220として出力する機能を有する。抽出部202は、特徴量の抽出では、虹彩認証アルゴリズムを使用する。
【0046】
物体識別子抽出装置200は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部201、抽出部202といった機能的手段を実現する。
【0047】
図4は物体識別子抽出装置200を用いて実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。以下、図3および図4を参照して本実施形態に係る物体識別子抽出方法について説明する。
【0048】
まず、物体識別子抽出装置200の撮像部201は、物体210上に形成されている不定形状のランダムパターン211の画像を取得する(ステップS201)。
【0049】
次に、物体識別抽出装置200の抽出部202は、ランダムパターン211の画像の内、点状の領域212の中心を円の中心とする所定サイズの円の内部の画像を切り出す(ステップS202)。例えば、図5に示すように、物体210の表面に形成されている点状の領域212の中心213を中心とする半径rの円214を描画し、円214の内部の画像領域を切り出す。円214は、予め決められた固定長を半径rとする円であってよい。あるいは、円214は、ランダムパターン211の面積の所定割合(例えば数割程度)の面積を有する円であってもよい。こうして切り出された円の内部の画像は、環状のランダムパターンになる。
【0050】
次に抽出部202は、上記切り出した環状のランダムパターンの画像領域から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS203)。このステップS203において、環状の画像領域から虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する処理は、図2のステップS102と同様である。次に、抽出部202は、抽出した特徴量を物体210の物体識別子220として出力する(ステップS204)。
【0051】
このように本実施形態によれば、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、物体210上に加工された不定形状のランダムパターン211から物体識別子220を抽出することができる。その理由は、ランダムパターンの一部の領域がランダムパターンでない点状の領域212に加工されており、抽出部202は、ランダムパターンの画像の内、点状の領域の中心から所定長を半径とする円内の画像を環状の画像領域として切り出して虹彩認証アルゴリズムを適用するためである。
【0052】
[第3の実施形態]
図6を参照すると、本発明の第3の実施形態に係る物体識別子抽出装置300は、物体310の物体識別子320を抽出する機能を有する。
【0053】
物体310は、物体識別子を抽出する対象であり、図1の物体110と同様のものである。物体310の何れかの面上には、円形のランダムパターン311が加工されている。ここで、ランダムパターン311が加工される物体310の面は、ランダムパターン311と視覚的に区別できる色、材質、模様等を有していることが望ましい。物体310の表面にランダムパターン311を加工する方法は、図1の物体110の表面にランダムパターン111を加工する方法と同じでよい。また、ランダムパターン311のサイズは、人の虹彩のサイズと同程度であってよい。但し、そのようなサイズに限定されず、ランダムパターン311のサイズは人の虹彩のサイズより小さくてもよいし、大きくてもよい。円形のランダムパターンを使用する後述する実施形態についても同様である。
【0054】
物体識別子抽出装置300は、主な機能部として、撮像部301と抽出部302とを有する。撮像部301は、図1の撮像部101と同様の機能を有する。
【0055】
抽出部302は、撮像部301によって取得された画像から、ランダムパターン311の特徴量を抽出し、この抽出した特徴量を物体310の物体識別子320として出力する機能を有する。抽出部302は、特徴量の抽出では、虹彩認証アルゴリズムを使用する。
【0056】
物体識別子抽出装置300は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部301、抽出部302といった機能的手段を実現する。
【0057】
図7は物体識別子抽出装置300を用いて実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。以下、図6および図7を参照して本実施形態に係る物体識別子抽出方法について説明する。
【0058】
まず、物体識別子抽出装置300の撮像部301は、物体310上に形成されている円形のランダムパターン311の画像を取得する(ステップS301)。
【0059】
次に、物体識別抽出装置300の抽出部302は、例えば図8に示すように、ランダムパターン311の画像上に、ランダムパターン311の画像の重心を中心とする所定サイズの円形の画像312を生成する(ステップS302)。円形の画像312は、予め決められた固定の値を半径に持つ円画像であってよい。あるいは、円形の画像312は、ランダムパターン311の面積の所定割合(例えば2〜4割程度)の面積を有する円画像であってもよい。円形の画像312は、例えば黒や青などの一色で塗りつぶされた画像であり、ランダムパターンではない。このような画像処理を行うことにより、ランダムパターン311は環状になる。
【0060】
次に、抽出部302は、上記環状のランダムパターン311の画像領域から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS303)。このステップS303において、環状の画像領域から虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する処理は、図2のステップS102と同様である。次に、抽出部302は、抽出した特徴量を物体310の物体識別子320として出力する(ステップS304)。
【0061】
このように本実施形態によれば、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、物体310上に加工された円形のランダムパターン311から物体識別子320を抽出することができる。その理由は、抽出部302は、円形のランダムパターン311の画像上にそれより小さな円形の画像312を生成することにより、環状のランダムパターンを生成して虹彩認証アルゴリズムを適用するためである。
【0062】
[第4の実施形態]
図9を参照すると、本発明の第4の実施形態に係る物体識別子抽出装置400は、物体410の物体識別子420を抽出する機能を有する。
【0063】
物体410は、物体識別子を抽出する対象であり、図1の物体110と同様のものである。物体410の何れかの面上には、不定形状のランダムパターン411が加工されている。この例では、ランダムパターン411は不定形状であるが、矩形等の所定の形状であってもよい。また、ランダムパターン411が加工される物体410の面は、ランダムパターン411と視覚的に区別できる色、材質、模様等を有していることが望ましい。物体410の表面にランダムパターン411を加工する方法は、図1の物体110の表面にランダムパターン111を加工する方法と同じでよい。
【0064】
物体識別子抽出装置400は、主な機能部として、撮像部401と抽出部402とを有する。撮像部401は、図1の撮像部101と同様の機能を有する。
【0065】
抽出部402は、撮像部401によって取得された画像から、ランダムパターン411の特徴量を抽出し、この抽出した特徴量を物体410の物体識別子420として出力する機能を有する。抽出部402は、特徴量の抽出では、虹彩認証アルゴリズムを使用する。
【0066】
物体識別子抽出装置400は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部401、抽出部402といった機能的手段を実現する。
【0067】
図10は物体識別子抽出装置400を用いて実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。以下、図9および図10を参照して本実施形態に係る物体識別子抽出方法について説明する。
【0068】
まず、物体識別子抽出装置400の撮像部401は、物体410上に形成されている不定形状のランダムパターン411の画像を取得する(ステップS401)。
【0069】
次に、物体識別抽出装置400の抽出部402は、例えば図11に示すように、ランダムパターン411の画像上に、ランダムパターン411の画像の重心413を中心とする円形の画像412を生成する(ステップS402)。図11図5と類似しているが、図5の円形の画像212が物体の表面に加工されたものであるのに対して、図11の円形の画像412は画像処理によって物体の画像上に仮想的に生成されたものである点で、両者は相違する。円形の画像412は、予め決められた固定長を半径とする円の画像であってよい。あるいは、円形の画像412は、ランダムパターン411の面積の所定割合(例えば2〜4割程度)の面積を有する円画像であってもよい。円形の画像412は、例えば黒や青などの一色で塗りつぶされた画像であり、ランダムパターンではない。
【0070】
次に、抽出部402は、例えば図11に示すように、ランダムパターン411の画像の内、ランダムパターン411の画像の重心を中心とし、円形の画像412より大きなサイズの円414の内部の画像を切り出す(ステップS403)。この切り出した画像は、環状のランダムパターンの画像領域になる。円414は、予め決められた固定長を半径とする円の画像であってよい。あるいは、円414は、ランダムパターン411の面積の所定割合(例えば5〜7割程度)の面積を有する円であってもよい。
【0071】
次に抽出部402は、上記切り出した環状のランダムパターンの画像領域から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS404)。このステップS404において、環状の画像領域から虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する処理は、図2のステップS102と同様である。次に、抽出部402は、抽出した特徴量を物体410の物体識別子420として出力する(ステップS405)。
【0072】
このように本実施形態によれば、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、物体410上に加工された不定形状のランダムパターン411から物体識別子420を抽出することができる。その理由は、抽出部402は、ランダムパターン411の画像の重心を中心とする点の画像412をランダムパターンの画像411上に生成し、さらに、ランダムパターンの画像411の内、ランダムパターン411の画像の重心を中心とする所定サイズの円の内部の画像を切り出すことにより、環状のランダムパターンを生成して虹彩認証アルゴリズムを適用するためである。
【0073】
[第5の実施形態]
図12を参照すると、本発明の第5の実施形態に係る物体識別子登録装置500は、物体510の表面にランダムパターン511を加工する機能と、加工したランダムパターン511から物体510の物体識別子520を抽出する機能とを有する。
【0074】
物体510は、ランダムパターン511を加工して物体識別子を抽出する対象である。物体510は、例えば工業製品や商品パッケージである。また物体510は、個人の持ち物(名刺や手帳など)あるいは個人の虹彩を除く身体の一部(例えば指など)であってもよい。
【0075】
物体識別子登録装置500は、主な機能部として、撮像部501と抽出部502と加工部503とを有する。このうち、撮像部501と抽出部502とは、第1乃至第4の実施形態における物体識別子抽出装置100、200、300、400の撮像部101、201、301、401と抽出部102、202、302、402と同様の機能を有する。
【0076】
加工部503は、物体510の表面にランダムパターン511を加工する機能を有する。加工部503が物体510の表面にランダムパターン511を加工する方法は任意である。例えば、加工部503は、微小な粒を混入した印刷インク、塗料などを、ペンやスタンプ等を使用して物体510の表面に塗布して固化させることにより、ランダムパターン511を生成してよい。微小な粒としては、金属粉やガラス粉などの微粒子や、特許文献1乃至3に記載されるタガントなどが使用できる。微小な粒は、ランダムパターン511を構成する材料(微小な粒を除く)と反射特性が異なる粒であることが望ましい。また微小な粒は、ランダムパターン511に不均一に含有していることが望ましい。或いは、加工部503は、レーザ加工機によって物体510の表面にランダムなパターンを加工することにより、ランダムパターン511を生成してよい。或いは、加工部503は、物体510の表面が梨地である場合、その梨地を利用してランダムパターン511を生成してよい。
【0077】
ここで、加工部503は、抽出部502が第1の実施形態における抽出部102と同様の機能を有する場合、図1に示すような環状のランダムパターン111を物体510の表面に加工する。また加工部503は、抽出部502が第2の実施形態における抽出部202と同様の機能を有する場合、図3に示すような一部の領域がランダムパターンでない点状の領域になっているランダムパターン211を物体510の表面に加工する。また加工部503は、抽出部502が第3の実施形態における抽出部302と同様の機能を有する場合、図6に示すような略円形のランダムパターン311を物体510の表面に加工する。また加工部503は、抽出部502が第4の実施形態における抽出部402と同様の機能を有する場合、図9に示すような一部の領域がランダムパターンでない点状の領域になっているランダムパターン411を物体510の表面に加工する。
【0078】
物体識別子登録装置500は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部501、抽出部502といった機能的手段を実現する。
【0079】
図13は物体識別子登録装置500を用いて実行する物体識別子登録方法の手順を示すフローチャートである。以下、図12および図13を参照して本実施形態に係る物体識別子登録方法について説明する。
【0080】
まず、物体識別子登録装置500の加工部503は、物体510の表面にランダムパターン511を加工する(ステップS501)。
【0081】
次に撮像部501は、物体510上に加工されたランダムパターン511の画像を取得する(ステップS502)。
【0082】
次に抽出部502は、撮像部501が取得したランダムパターン511の画像から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS503)。このステップS503は、図2のステップS102、図4のステップS202〜S203、図7のステップS302〜S303、図10のステップS402〜S404と同様に行われる。
【0083】
最後に抽出部502は、抽出した特徴量を物体510の物体識別子520として出力する(ステップS504)。
【0084】
このように本実施形態によれば、物体510の表面にランダムパターン511を加工した後、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、上記加工したランダムパターン511から物体識別子を抽出することができる。
【0085】
[第6の実施形態]
図14を参照すると、本発明の第6の実施形態に係る物体識別子登録装置600は、物体610の表面にランダムパターン611を加工する機能と、加工したランダムパターン611から物体610の物体識別子を抽出する機能と、抽出した物体識別子を含むデータを記憶装置620に登録する機能とを有する。ここで、物体610、ランダムパターン611は、本発明の第5の実施形態における図12に示した物体510、ランダムパターン511と同じである。
【0086】
物体識別子登録装置600は、主な機能部として、撮像部601と抽出部602と加工部603と登録部604とを有する。このうち、撮像部601と抽出部602と加工部603は、第5の実施形態における撮像部501と抽出部502と加工部503と同様の機能を有する。
【0087】
登録部604は、抽出部502で抽出された物体610の物体識別子を登録済みの物体の識別情報として記憶装置620に登録する機能を有する。記憶装置620は、例えば、物体識別子登録装置600からネットワークを介してアクセス可能なサーバ装置のストレージであってよい。或いは記憶装置620は、物体識別登録装置600に接続されたローカルな記憶装置であってよい。
【0088】
物体識別子登録装置600は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部601、抽出部602、登録部604といった機能的手段を実現する。
【0089】
図15は物体識別子登録装置600を用いて実行する物体識別子登録方法の手順を示すフローチャートである。以下、図14および図15を参照して本実施形態に係る物体識別子登録方法について説明する。
【0090】
まず、物体識別子登録装置600の加工部603は、物体610の表面にランダムパターン611を加工する(ステップS601)。次に撮像部601は、物体610上に加工されたランダムパターン611の画像を取得する(ステップS602)。次に抽出部602は、撮像部601が取得したランダムパターン611の画像から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS603)。これらのステップS601〜S603は、第5の実施形態におけるステップS501〜S503と同様に行われる。
【0091】
最後に登録部604は、抽出部602によって抽出された特徴量を物体510の物体識別子520として含むデータを記憶装置620に登録する(ステップS604)。
【0092】
図16は記憶装置620に登録されているデータの例を示す。この例では、記憶装置620は、物体の物体識別子とその物体の1以上の属性値とを有するデータが記憶されている。例えば、物体が工業製品や商品パッケージなどの場合、型番、製造ロット番号、当該物体の加工に使用した機械や工具等の番号などが属性値の例である。また物体識別子は、ビット数N(≧2)のビット列である。虹彩認証アルゴリズムとしてDaugmanのアルゴリズムを使用する場合、物体識別子は2048ビットのビット列になる。
【0093】
このように本実施形態によれば、物体610の表面にランダムパターン611を加工した後、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、上記加工したランダムパターン511から物体識別子を抽出し、登録済みの物体の識別情報として記憶装置620に登録することができる。
【0094】
[第7の実施形態]
図17を参照すると、本発明の第7の実施形態に係る識別照合装置700は、物体710の識別・照合を行う機能を有する。
【0095】
物体710は、工業製品や商品パッケージなど、識別・照合の対象となる物体である。また物体710は、個人の持ち物(名刺や手帳など)あるいは個人の虹彩を除く身体の一部(例えば指など)であってもよい。
【0096】
識別照合装置700は、撮像部701と抽出部702と判定部703とを有する。このうち、撮像部701と抽出部702とは、図12に示した第5の実施形態における撮像部501と抽出部502と同様の機能を有する。
【0097】
判定部703は、抽出部702により抽出された物体710の物体識別子と記憶装置720に記憶されている登録済みの物体の物体識別子とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合の判定を行う機能を有する。記憶装置720は、例えば、第6の実施形態における記憶装置620と同じであり、登録済みの物体の個体識別子とその属性値とを有するデータが予め記憶されている。
【0098】
識別照合装置700は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部701、抽出部702、判定部703といった機能的手段を実現する。
【0099】
図19は識別照合装置700を用いて実行する識別照合方法の手順を示すフローチャートである。以下、図17及び図19を参照して本実施形態に係る識別照合方法について説明する。
【0100】
まず、識別照合装置700の撮像部701は、物体710上に加工されたランダムパターン711の画像を取得する(ステップS701)。次に、抽出部702は、撮像部701によって取得されたランダムパターン711の画像から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS702)。
【0101】
次に、識別照合装置700の判定部703は、上記抽出された物体710の物体識別子と記憶部720に記憶されている登録済みの物体の物体識別子とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・判定を行う(ステップS703)。判定部703は、例えば、Daugmanのアルゴリズムを使用する場合、物体710の物体識別子と登録済みの物体の物体識別子のビット列間のハミング距離を算出し、ハミング距離が閾値以下であれば、2つの物体識別子は同一と判定し、そうでなければ同一でないと判定する。判定部703は、物体710の物体識別子と同一の登録済みの物体の物体識別子が発見されるか、または、全ての登録済みの物体の物体識別子との比較を終えるか、何れか早く成立した方を条件として、物体の識別・判定処理の繰り返しを終了する。そして、判定部703は、判定結果730を出力する(ステップS704)。判定結果730は、識別・照合の成功の有無を表すものであってよい。また判定結果730は、成功の場合、同一と判定した登録済みの物体の個体識別子に対応して記憶部720に記憶されている物体の属性値を有していてよい。
【0102】
このように本実施形態によれば、物体710の表面に加工されたランダムパターン711から、虹彩認証アルゴリズムを使用して物体識別子を抽出し、登録済みの物体の識別情報と比較して物体の識別・照合を行うことができる。
【0103】
[第8の実施形態]
図20を参照すると、本発明の第8の実施形態に係る物体識別子管理システム800は、物体810の識別・照合のための物体識別子を管理する機能を有する。
【0104】
物体810は、工業製品や商品パッケージなど、物体識別子を付与して管理する対象である。図20では、物体識別子を付与して管理する物体810は、1個のみ図示しているが、一般には多数の物体810が管理対象となる。
【0105】
物体識別子管理システム800は、物体識別子登録装置801と識別照合装置802とから構成されている。
【0106】
物体識別子登録装置801は、物体810の表面にランダムパターン811を加工する機能と、ランダムパターン811が加工された物体810を撮像する機能と、撮像された物体810の画像の内、ランダムパターン811を含む環状の画像領域の特徴を物体810の識別情報として抽出する機能と、この抽出した物体810の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶装置820に登録する機能とを有する。この物体識別子登録装置801は、例えば、本発明の第6の実施形態に係る物体識別子登録装置600により構成されている。
【0107】
また識別照合装置802は、表面にランダムパターン811が加工された物体810を撮像する機能と、撮像された物体810の画像の内、ランダムパターン811を含む環状の画像領域の特徴を物体810の識別情報として抽出する機能と、この抽出した物体810の識別情報と記憶装置820に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する機能とを有する。この識別照合装置802は、例えば、本発明の第7の実施形態に係る識別照合装置700により構成されている。
【0108】
図21は物体識別子管理システム800を用いて実行する物体識別子管理方法の手順を示すフローチャートである。以下、図20及び図21を参照して本実施形態に係る物体識別子管理方法について説明する。
【0109】
まず、物体識別子登録装置801は、物体810の表面にランダムパターン811を加工する(ステップS801)。次に物体識別子登録装置801は、物体810上に加工されたランダムパターン811の画像を取得する(ステップS802)。次に物体識別子登録装置801は、取得したランダムパターン811の画像から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS803)。次に、物体識別子登録装置801は、抽出した特徴量を物体810の物体識別子として含むデータを記憶装置820に登録する(ステップS804)。これらのステップS801〜S804は、第6の実施形態におけるステップS601〜S604と同様に行われる。
【0110】
一方、識別照合装置802は、物体810上に加工されたランダムパターン811の画像を取得する(ステップS805)。次に、識別照合装置802は、取得したランダムパターン811の画像から、虹彩認証アルゴリズムを使用して特徴量を抽出する(ステップS806)。次に、識別照合装置802は、上記抽出した物体810の物体識別子と記憶装置820に記憶されている登録済みの物体の物体識別子とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・判定を行う(ステップS807)。次に、識別照合装置802は、判定結果830を出力する(ステップS808)。これらのステップS805〜S808は、第7の実施形態におけるステップS701〜S704と同様に行われる。
【0111】
図21のフローチャートでは、物体識別子登録装置801によるステップS801〜S804の処理に引き続いて、識別照合装置802によるステップS805〜S808の処理を実行した。しかし、そのような手順に限定されず、物体識別子登録装置801によるステップS801〜S804の処理を異なる物体810について複数回繰り返すようにしてよい。また、識別照合装置802によるステップS805〜S808の処理を異なる物体810について複数回繰り返すようにしてよい。或いは、物体識別子登録装置801によるステップS801〜S804の処理と識別照合装置802によるステップS805〜S808の処理とを異なる物体810に対して並行して行うようにしてよい。
【0112】
このように本実施形態によれば、物体810の表面にランダムパターン811を加工した後、虹彩画像から特徴を抽出してコード化する周知のアルゴリズムを使用して、上記加工したランダムパターン811から物体識別子を抽出し、登録済みの物体の識別情報として記憶装置820に登録することができる。また、本実施形態によれば、物体810の表面に加工されたランダムパターン811から、虹彩認証アルゴリズムを使用して物体識別子を抽出し、登録済みの物体の識別情報と比較して物体の識別・照合を行うことができる。
【0113】
[第9の実施形態]
本実施形態では、第6の実施形態に係る物体識別子登録装置600をより具体化した実施形態について説明する。
【0114】
図22を参照すると、本発明の第9の実施形態に係る物体識別子登録装置900は、インクペン901とパターン撮像ユニット902とを筐体903に収納した構造を有する。インクペン901は加工部603に相当し、パターン撮像ユニット902は撮像部601と抽出部602と登録部604に相当する。図示していないが、筐体903には、パターン撮像ユニット902、後述するリミットスイッチ909、910、および照明器914を作動させるためのバッテリが内蔵されている。筐体903は、内蔵したバッテリによって動作する携帯型の機器として構成されている。
【0115】
筐体903は、円筒状の容器904とこの容器904に緩く嵌め合う蓋905とから構成される。容器904の上面と下面は共に開口しており、側面の下部に明かり取り用の窓906と照明器914とが設けられている。また容器904の内側には、パターン撮像ユニット902が固定され、さらに可動ミラー908、リミットスイッチ909、910が取り付けられている。リミットスイッチ909、910のオンオフ状態は、図示しない信号線によってパターン撮像ユニット902に伝達されている。照明器914は、白色灯あるいはフラッシュランプ等で構成され、図示しない信号線を通じてパターン撮像ユニット902から伝達される信号によって点灯および消灯が制御される。
【0116】
可動ミラー908は、容器904の底面から所定長だけ上方の箇所に、紙面垂直方向に延びる軸908aを中心に回動自在に取り付けられている。また可動ミラー908は、引っ張りバネ908bによって反時計回りに付勢されており、ミラーの端部がリミットスイッチ909に当接した状態で停止している。この停止した状態において、可動ミラー908の鏡面と容器904の底面との成す角度は略45度である。そして、パターン撮像ユニット902は、その内蔵するカメラの撮像視野が可動ミラー908の鏡面中央を真横から望むように、容器904に固定されている。
【0117】
一方、蓋905は、スプリングやスポンジ等の弾性体911を介して容器904に対して上下方向に進退自在に装着されている。また、蓋905の内側には、連結材912を介して固定板913が取り付けられており、可動ミラー908の真上の固定板913の下面に、インクペン901が装着されている。
【0118】
インクペン901のペン軸は真下に延びている。蓋905が上から押下されていない状態のとき、インクペン901のペン先は、図22に示すように、可動ミラー908に接触しない位置(待機位置)にある。他方、蓋905が上から押下されている状態では、図23に示すように、蓋905と一体で上下するインクペン910のペン先は、可動ミラー908の一端を押し下げて、容器904の下面まで達する位置(生成位置)にある。ペン先によって可動ミラー908が押し下げられると、可動ミラー908の端部がリミットスイッチ909から離れ、リミットスイッチ909はオフ状態になる。またインクペン901のペン先が容器904の下面に達すると、図23に示すように、固定板913がリミットスイッチ910に当接し、リミットスイッチ910がオン状態になる。
【0119】
インクペン901は、微小な粒を混入したインクを使用したペンである。微小な粒としては、金属粉やガラス粉などの微粒子や、特許文献1乃至3に記載されるタガントなどが使用できる。微小な粒は、インクを構成する材料(当該微小な粒を除く)と反射特性が異なる粒であることが望ましい。また微小な粒は、インクに不均一に含有していることが望ましい。インクペン901としては、例えば、ラメペン、ラメ入りペン、ラメ入り蛍光マーカーなどの名称で市販されているペンを使用することができる。勿論、本発明のために専用に設計されたペンを使用してもよいし、市販のペンのインクを微小な粒を混入したインクに交換して利用してもよい。
【0120】
次に、図22および図23を参照して物体識別子登録装置900の動作を説明する。
【0121】
利用者は、物体識別子登録装置900を使って物体に個体識別のためのパターンを生成する場合、パターンを生成したい物体の上に、容器904の下面が接するように筐体903を載置する。このときの物体識別子登録装置900は図22に示すような状態であり、リミットスイッチ909はオン状態、リミットスイッチ910はオフ状態になっている。
【0122】
利用者が、物体上に載置した筐体903の蓋905を下方に押し下げていくと、図22に示す状態から図23に示す状態へと徐々に遷移していく。まず、蓋905が弾性体911の反発力に抗して下方に下がっていき、蓋905の動きに連動するインクペン901のペン先によって可動ミラー908の一端が押し下げられ、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態に変化する。利用者が、それ以上押し下げることができない位置まで蓋905をさらに押し下げると、容器904に内蔵されたインクペン901のペン先が物体の表面に接触し、ペン先から流出するインクによって物体上に小さな点が描画される。前述したように、インクには微小は粒が不均一に混入しているため、描画される点は、図24に模式的に示すように、微小な粒(図では黒丸で表している)をランダムな位置に含有する点(ドット)となる。またインクペン901のペン先が物体の表面に接触するまで蓋905が降下すると、リミットスイッチ910がオフ状態からオン状態に変化する。
【0123】
次に利用者が、蓋905を押し下げていた力を抜くと、弾性体911の反発力によって蓋905が元の位置に向かって上昇していく。その過程で、まずインクペン901のペン先が物体から離れて上昇していき、リミットスイッチ910がオン状態からオフ状態へ変化する。蓋905がさらに上昇していって図22に示す状態にいたると、可動ミラー908が引っ張りバネ908bの力によって元の位置に復帰し、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態に変化する。
【0124】
パターン撮像部902は、リミットスイッチ909、910の状態に基づいて、パターンの生成を検出し、生成したパターンを撮像するタイミングを検出する。例えば、パターン撮像部902は、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態へ変化し、その後にリミットスイッチ910がオフ状態からオン状態へ変化すると、即ち図22の状態から図24の状態へ遷移すると、インクペン901によって物体上にパターンが描画されたと判断する。またパターン撮像部902は、インクペン901によるパターンの描画が行われたと判断した後に、リミットスイッチ909がオフ状態からオン状態に変化すると、即ち図23の状態から図22の状態へ遷移すると、描画されたパターンを撮像できるタイミングになったと判断し、内蔵するカメラによって上記描画されたパターンの画像を撮像する。このとき、パターン撮像部902は必要に応じて照明器914を一時的に点灯させる。
【0125】
次にパターン撮像ユニット902について詳細に説明する。
【0126】
図25はパターン撮像ユニット902のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。この例のパターン撮像ユニット902は、カメラ9021と、MPU(Micro Processor Unit)9022と、ROM(Read Only Memory)9023と、RAM(Random Access Memory)9024と、インターフェイス回路9025と、通信回路9026と、それらを相互に接続するバス9027とから構成される。
【0127】
カメラ9021は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサやCMOS(Complemetary Metal Oxide)イメージセンサを使用したカメラを使用することができる。
【0128】
ROM9023は、MPU9022が実行するプログラム等を記憶する。RAM9024は、カメラ9021で撮像された画像データ等を記憶するために使用される。インターフェイス回路9025は、図示しない信号線を通じてリミットスイッチ909、910および照明器914に接続されている。通信回路9026は、外部装置との間で無線通信する機能を有する。
【0129】
図26はMPU9022が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下、図22乃至図26を参照して、MPU9022が実行する処理を説明する。
【0130】
MPU9022は、リミットスイッチ909の状態を、インターフェイス回路9025を通じて読み取り、オフ状態になったか否かを監視している(ステップS901)。前述したように物体識別子登録装置900は図22に示したような状態ではリミットスイッチ909はオン状態になっており、パターンを生成するために物体上に載置されて蓋905が下方に押し下げられると、インクペン901のペン先によって可動ミラー908の一端が押し下げられ、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態に変化する。MPU9022は、リミットスイッチ909がオフ状態に変化したことを検出すると、リミットスイッチ910がオン状態に変化したか否かを検出する(ステップS902)。
【0131】
利用者が、それ以上押し下げることができない位置まで蓋905をさらに押し下げたことによって、リミットスイッチ910がオン状態になると、MPU9022は、容器904に内蔵されたインクペン901のペン先が物体の表面に接触し、ペン先から流出するインクによって物体上に小さな点のパターンが描画されたと判断し、次に、リミットスイッチ909がオン状態に変化するのを監視する(ステップS903)。他方、MPU9022は、リミットスイッチ909がオフ状態になった後、リミットスイッチ910がオン状態になる前にリミットスイッチ909がオン状態に復帰した場合には(ステップS904でYES)、インクペン901によって描画されることなく蓋905が元の位置に戻されたと判断し、ステップS901の処理へと戻る。
【0132】
次にMPU9022は、ステップS903においてリミットスイッチ909がオン状態になったことを検出すると、カメラ9021に対して撮像するように指令を出す(ステップS905)。カメラ9021は、この指令に応じて画像を撮像する。なお、カメラ9021は照度が不足する場合には、インターフェイス回路9025を通じて照明器914を撮影時に一時的に点灯させる。撮影が行われる時点の物体識別子登録装置900の状態は図22に示すようになっており、カメラ9021は、インクペン901で物体上に描かれた図24に示したようなパターンの画像を、可動ミラー908を通じて真上からの画像として撮像し、撮像して得た画像データをRAM9024の所定の領域に保存する。なお、本実施形態では、インクペン901が図22に示す状態に復帰したタイミングでパターンの画像を撮像したが、インクペン901が図23に示す状態から一定の距離だけ上方に移動したタイミングで、生成されたパターンの画像を撮像するようにしてもよい。
【0133】
次にMPU9022は、RAM9024に保存された画像データを解析して、描画された点の画像から物体識別子を抽出する(ステップS906)。具体的には、MPU9022は、図6に示した第3の実施形態と同様に、図24に示したような略円形のランダムパターンの画像上にそのランダムパターンの画像の重心を中心とする円形の画像を生成することにより、環状の画像領域を生成して虹彩認証アルゴリズムを適用することにより、物体識別子を抽出する。或いは、MPU9022は、図9に示した第4の実施形態と同様に、図24に示したようなランダムパターンの画像の重心を中心とする点の画像をランダムパターンの画像上に生成し、そのランダムパターンの画像の内、上記点の中心から所定長を半径とする円内の画像を環状の画像領域として切り出して虹彩認証アルゴリズムを適用することにより、物体識別子を抽出する。次に、MPU9022は、抽出した物体識別子を含むデータを、通信回路9026を通じて外部の記憶装置(図示せず)へ登録する(ステップS907)。MPU9022は、送信データにROM9023やRAM9024に記憶された情報、例えばパターンを生成した物体に関する情報や当該物体識別子登録装置900の識別情報や現在時刻等の属性情報を含めるようにしてもよい。そして、MPU9022は、次の撮像に備えてステップS901の処理へと戻る。
【0134】
このように本実施形態によれば、パターン撮像ユニット902は、インクペン901によって物体上にパターンが生成されたことを検出して撮像を行うため、パターンの生成と撮像との間に食い違いが生じるのを防ぐことができる。
【0135】
また本実施形態によれば、物体上に生成したパターンをその真上からの画像として撮像することができる。
【0136】
また本実施形態によれば、撮像したパターンから物体識別子を抽出し、外部の記憶装置へ登録することができる。
【0137】
本実施形態では、可動ミラー908を使用したが、可動ミラー908を省略する構成にしてもよい。この場合、図27および図28に示すように、例えば、インクペン901は、その先端が容器904の下面中央の上方に位置するように固定板913に斜めに取り付ける。また、パターン撮像ユニット902は、その内蔵するカメラの撮像方向が容器904の下面中央を向くように、容器904に固定する。図27および図28に示す構成によれば、可動ミラー908が省略されるため構成が簡易になる。なお、図27および図28において、リミットスイッチ915は、リミットスイッチ909の代替であり、蓋905が押下されていない場合にオン状態になる。
【0138】
また、描画したパターンの画像にインクペン901の一部が写っても支障がないならば、インクペン901の先端が物体に接触している状態(例えば図23或いは図28の状態)で撮像を行うようにしてもよい。さらに、インクペン901のペン先を軸方向に進退自在に構成し、図22或いは図27の状態においてペン先が容器904の下面まで達するようにしておき、蓋905を押し下げるとペン先が物体に押し当てられた状態のまま縮むように構成されていてもよい。
【0139】
また本実施形態では、インクペン901を使用したが、インクペン901の代わりに、インクを適量(例えば1滴)だけ滴下させるインク滴下器や、インクを適量だけ吹き付けるインク噴射器や、インクを刷毛やフェルト材によって適量だけ塗布する塗布器を使用してもよい。あるいはインクペン901の代わりに、物体上にランダムパターンを形成するレーザ加工機を使用してもよい。
【0140】
また本実施形態では、パターンを生成しその画像を撮像する毎に、物体識別子の抽出と記憶装置への登録とを行ったが、撮像した画像を一旦メモリ(RAM等)に蓄積し、後刻に物体識別子の抽出と記憶装置への登録を行うようにしてもよい。また本実施形態では、記憶装置へ物体識別子を登録したが、それに代えて或いはそれに加えて、撮像したパターンの画像を記憶装置へ登録するようにしてもよい。
【0141】
[第10の実施形態]
本実施形態では、第6の実施形態に係る物体識別子登録装置600をより具体化した他の実施形態について説明する。
【0142】
図29を参照すると、本発明の第10の実施形態に係る個体識別装置1000は、図22を参照して説明した第9の実施形態に係る物体識別子登録装置900のインクペン901が、第1のインクジェットノズル1031、第1のインクジェット1032、第1のインクカートリッジ1033、第2のインクジェットノズル1041、第2のインクジェット1042、第2のインクカートリッジ1043に置き換えられ、パターン撮像ユニット902がパターン撮像ユニット1051に置き換えられている。その他、第9の実施形態に係る物体識別子登録装置900と同じ部材には同じ符号を付している。
【0143】
第1のインクジェットノズル1031と第2のインクジェットノズル1041は、近接して配置されており、そのノズルは容器904の下面に向かって真下に延びている。蓋905が上から押下されていない図29に示す状態のとき、第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041の先端は、可動ミラー908に接触しない位置(待機位置)にある。他方、蓋905が上から押下されている図30に示す状態では、蓋905と一体で上下する第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041の先端は、可動ミラー908の一端を押し下げて、容器904の下面近傍まで達する位置(生成位置)にある。これらのノズルによって可動ミラー908の一端が押し下げられると、可動ミラー908の端部がリミットスイッチ909から離れ、リミットスイッチ909はオフ状態になる。またノズルの先端が容器904の下面近傍に達すると、図30に示すように、固定板913がリミットスイッチ910に当接し、リミットスイッチ910がオン状態になる。
【0144】
第1のインクカートリッジ1033は、微小な粒を混入したインクを蓄えている。微小な粒としては、金属粉やガラス粉などの微粒子や、特許文献1乃至2に記載されるタガントなどが使用できる。微小な粒は、インクを構成する材料(当該微小な粒を除く)と反射特性が異なる粒であることが望ましい。また微小な粒は、インクに不均一に含有していることが望ましい。第1のインクジェット1032は、図示しない信号線を通じてパターン撮像ユニット1051から出力指令を受けると、第1のインクカートリッジ1033から供給されるインクを所定の圧力で一定時間だけ第1のインクジェットノズル1031の先端から外部に噴出させる。
【0145】
他方、第2のインクカートリッジ1043は、上述したような微小な粒が混入していないインクを蓄えている。例えば、第2のインクカートリッジ1043は、黒等の単一色の通常のインクを蓄えている。第2のインクジェット1042は、図示しない信号線を通じてパターン撮像ユニット1051から出力指令を受けると、第2のインクカートリッジ1043から供給されるインクを所定の圧力で一定時間だけ第2のインクジェットノズル1041の先端から外部に噴出させる。
【0146】
ここで、第1のインクジェットノズル1031により描画する点のサイズは、第2のインクジェットノズル1041により描画する点のサイズより十分に大きくなるように設定されている。例えば、単位時間当たりに噴出するインク量が第2のインクジェットノズル1041に比べて第1のインクジェットノズル1031の方が多くなるように、第1のインクジェット1032および第2のインクジェット1042がインクの流出量を調整するように構成されている。また、第1のインクジェットノズル1031のノズル径が第2のインクジェットノズル1041よりも大きくなっていてもよい。
【0147】
図31は、第1のインクジェットノズル1031によって物体上に点を描画し、その直後にその点の上に第2のインクジェットノズル1041によって小さな点を描画して得られるパターンを模式的に示している。図31において、領域1061が第1のインクジェットノズル1031によって描画された点に相当し、領域1062が第2のインクジェットノズル1041によって描画された点に相当する。領域1061は微小な粒(図では黒丸で表している)をランダムな位置に含有するが、領域1062は含有していない。そのため、微小な粒を含有する領域1061の形状が環状になっている。
【0148】
次に、図29乃至図31を参照して物体識別子登録装置1000の動作を説明する。
【0149】
利用者は、物体識別子登録装置1000を使って物体に個体識別のためのパターンを生成する場合、パターンを生成したい物体の上に、容器904の下面が接するように筐体903を載置する。このときの物体識別子登録装置1000は図29に示すような状態であり、リミットスイッチ909はオン状態、リミットスイッチ910はオフ状態になっている。
【0150】
利用者が、物体上に載置した筐体903の蓋905を下方に押し下げていくと、図29に示す状態から図30に示す状態へと徐々に遷移していく。まず、蓋905が弾性体911の反発力に抗して下方に下がっていき、蓋905の動きに連動する第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041によって可動ミラー908の一端が押し下げられ、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態に変化する。利用者が、それ以上押し下げることができない位置まで蓋905をさらに押し下げると、固定板913がリミットスイッチ910に当接し、リミットスイッチ910がオフ状態からオン状態に変化する。この時点で、第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041の先端が容器904の下面近傍に達する。このため、第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041の先端からインクを噴出させることにより、物体上に図31に示したようなパターンを描画することができる。
【0151】
次に利用者が、蓋905を押し下げていた力を抜くと、弾性体911の反発力によって蓋905が元の位置に向かって上昇していく。その過程で、まず第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041の先端が上昇していき、リミットスイッチ910がオン状態からオフ状態へ変化する。蓋905がさらに上昇して図29に示す状態にいたると、可動ミラー908が引っ張りバネ908bの力によって元の位置に復帰し、リミットスイッチ909がオフ状態からオン状態に変化する。
【0152】
パターン撮像部1051は、リミットスイッチ909、910の状態に基づいて、パターンの生成タイミング、生成したパターンを撮像するタイミングを検出する。例えば、パターン撮像部1051は、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態へ変化し、その後にリミットスイッチ910がオフ状態からオン状態へ変化すると、即ち図29の状態から図30の状態へ遷移すると、第1のインクジェットノズル1031および第2のインクジェットノズル1041によるパターンの生成が可能なタイミングが到来したと判断し、第1のインクジェット1032および第2のインクジェット1042を制御してパターンを生成する。またパターン撮像部1051は、パターンの生成後に、リミットスイッチ909がオフ状態からオン状態に変化すると、即ち図30の状態から図29の状態へ遷移すると、描画したパターンを撮像できるタイミングになったと判断し、内蔵するカメラにより撮像を行う。
【0153】
次にパターン撮像ユニット1051について詳細に説明する。
【0154】
図32はパターン撮像ユニット1051のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。この例のパターン撮像ユニット1051は、カメラ10511と、MPU10512と、ROM10513と、RAM10514と、インターフェイス回路10515と、通信回路10516と、それらを相互に接続するバス10517とから構成される。このうち、カメラ10511、ROM10513、RAM10514、および通信回路10516は、図25を参照して説明したカメラ9021、ROM9023、RAM9024、および通信回路9026と同様の機能を有する。インターフェイス回路10515は、図示しない信号線を通じてリミットスイッチ909、910、照明器914、第1のインクジェット1032、第2のインクジェット1042に接続されている。
【0155】
図33はMPU10512が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下、図29乃至図33を参照して、MPU10512が実行する処理を説明する。
【0156】
MPU10512は、リミットスイッチ909の状態を、インターフェイス回路10515を通じて読み取り、オフ状態になったか否かを監視している(ステップS1001)。前述したように物体識別子登録装置1000は図29に示した状態ではリミットスイッチ909はオン状態になっており、パターンを生成するために物体上に載置されて蓋905が下方に押し下げられると、第1および第2のインクジェットノズル1031、1041の先端によって可動ミラー908の一端が押し下げられ、リミットスイッチ909がオン状態からオフ状態に変化する。MPU10515は、リミットスイッチ909がオフ状態に変化したことを検出すると、リミットスイッチ910がオン状態に変化したか否かを検出する(ステップS1002)。
【0157】
利用者が、それ以上押し下げることができない位置まで蓋905をさらに押し下げたことによって、リミットスイッチ910がオン状態になると、MPU10515は、物体上へのパターンの生成が可能になったと判断し、パターンの生成を行う(ステップS1003)。具体的には、MPU10512は、最初に第1のインクジェット1032に対して指令を出し、所定時間経過後に第2のインクジェット1042に対して指令を出す。第1のインクジェット1032は、指令に応答してインクカートリッジ1033から供給されるインクを所定量だけ第1のインクジェットノズル1031の先端から噴出させることにより、物体上に大きな点を描画する。また第2のインクジェット1042は、指令に応答してインクカートリッジ1043から供給されるインクを所定量だけ第2のインクジェットノズル1041の先端から噴出させることにより、上記物体上に描かれた点内に小さな点を描画する。そして、MPU10512は、リミットスイッチ909がオン状態に変化するのを監視する(ステップS1004)。他方、MPU10512は、リミットスイッチ909がオフ状態になった後、リミットスイッチ910がオン状態になる前にリミットスイッチ909がオン状態に復帰した場合には(ステップS1005でYES)、下降中の蓋905が途中で上昇したと判断し、ステップS1001の処理へと戻る。
【0158】
次にMPU10512は、ステップS1004においてリミットスイッチ909がオン状態になったことを検出すると、カメラ10511に対して撮像するように指令を出す(ステップS1006)。カメラ10511は、この指令に応じて物体上に生成されたパターンの画像を撮像する。このときの物体識別子登録装置1000の状態は図29に示すようになっており、カメラ10511は、物体上に描かれた点の画像を可動ミラー908を通じて真上からの画像として撮像し、撮像して得た画像データをRAM10514の所定の領域に保存する。
【0159】
次にMPU10512は、RAM10514に保存された画像データを解析して、描画された点の画像から物体識別子を抽出する(ステップS1007)。具体的には、MPU10512は、図1に示した第1の実施形態と同様に、図31に示したような環状のランダムパターン1061から虹彩認証アルゴリズムを使用して物体識別子を抽出する。次に、MPU10512は、抽出した個体識別子を、通信回路10516を通じて外部の登録装置(図示せず)へ送信する(ステップS1008)。そして、MPU10512は、次のパターンの生成と撮像に備えてステップS1001の処理へと戻る。
【0160】
このように本実施形態によれば、パターン撮像ユニット1051は、第1および第2のインクジェットノズル1031、1041によって物体上にパターンが生成されたことを検出して撮像を行うため、パターンの生成と撮像との間に食い違いが生じるのを防ぐことができる。
【0161】
また本実施形態によれば、微小な粒がランダムに分布する環状のパターンを物体上に生成することができる。また、図31に示すような非対称パターンにすると、パターンの撮影時の向きが決定できるため、照合時における位置合わせや向きの推定が不要になり、照合処理の高速化が可能になる。
【0162】
また本実施形態によれば、物体上に生成したパターンをその真上からの画像として撮像することができる。
【0163】
また本実施形態によれば、撮像したパターンから物体識別子を抽出し、外部の記憶装置へ登録することができる。
【0164】
本実施形態では、可動ミラー908を使用したが、可動ミラー908を省略する構成にしてもよい。この場合、第2の実施形態の変形例を示す図27および図28と同様に、例えば、インクジェットノズル1031およびインクジェットノズル1041は、その先端が容器904の下面中央の上方に位置するように固定板913に斜めに取り付ける。また、パターン撮像ユニット902は、その内蔵するカメラの撮像方向が容器904の下面中央を向くように、容器904に固定する。このような構成によれば、可動ミラー908が省略されるため構成が簡易になる。
【0165】
また、描画した点の画像にインクジェットノズル1031およびインクジェットノズル1041の一部が写っても支障がないならば、インクジェットノズル1031およびインクジェットノズル1041の先端が物体の近傍に位置している状態(例えば図30の状態)で撮像を行うようにしてもよい。
【0166】
本実施形態では、インクジェットを使用したが、インクジェットの代わりに、インクを適量(例えば1滴)だけ滴下させることができるインク滴下器や、インクを適量だけ吹き付けることができるインク噴射器や、インクを刷毛によって適量だけ塗布することができる塗布器を2組使用してもよい。あるいはインクジェットの代わりに、物体上に環状のランダムパターンを形成するレーザ加工機を使用してもよい。
【0167】
また本実施形態では、パターンを生成しその画像を撮像する毎に、物体識別子の抽出と記憶装置への登録を行ったが、撮像した画像を一旦メモリ(RAM等)に蓄積し、後刻に物体識別子の抽出と記憶装置への登録を行うようにしてもよい。また本実施形態では、記憶装置へ物体識別子を登録したが、それに代えて或いはそれに加えて、撮像したパターンの画像を記憶装置へ登録するようにしてもよい。
【0168】
[第11の実施形態]
本実施形態では、第6の実施形態に係る物体識別子登録装置600をより具体化した他の実施形態について説明する。
【0169】
図34を参照すると、本発明の第11の実施形態に係る物体識別子登録装置1100は、図22を参照して説明した第9の実施形態に係る物体識別子登録装置900のインクペン901が、スタンプ1101に置き換えられ、パターン撮像ユニット902がパターン撮像ユニット1102に置き換えられている。また、リミットスイッチ1103が新たに設けられている。その他、第9の実施形態に係る物体識別子登録装置900と同じ部材には同じ符号を付している。
【0170】
スタンプ1101は、円柱状の心材1113の一端側に、中空円柱の形状を有するフェルト材1111を嵌め込んで固定し、またフェルト材1111の上側の心材部分にインクタンク1112を取り付けた構造を有しており、心材1113の他端側を固定板913の下面に固定することにより、蓋903の動きに連動して上下動するように構成されている。また、パターン撮像ユニット1102から延びるファイバースコープ1114が心材1113の上端の側面から下端まで貫通し、その先端部分に装着されたレンズによって取得された画像がパターン撮像ユニット1102まで伝達されるようになっている。
【0171】
インクタンク1112は、微小な粒を混入したインクを蓄えている。微小な粒としては、金属粉やガラス粉などの微粒子や、特許文献1乃至3に記載されるタガントなどが使用できる。微小な粒は、インクを構成する材料(当該微小な粒を除く)と反射特性が異なる粒であることが望ましい。また微小な粒は、インクに不均一に含有していることが望ましい。インクタンク1132に充填してあるインクは、毛細現象によりフェルト材1131に常に染み込むようになっている。
【0172】
蓋905が上から押下されていない図34に示す状態のとき、フェルト材1111の下面は、容器904の底面から離れた位置(待機位置)にある。また、この状態では、固定板913の上面がリミットスイッチ1103に当接し、リミットスイッチ1103はオン状態になっている。他方、蓋905が上から押下されている図35に示す状態では、蓋905と一体で上下するフェルト材1111の下面は、容器904の下面まで達する位置(生成位置)にある。その結果、容器904が物体上に載置されている場合、中空円柱のフェルト材1111の下面から染み出るインクによって、物体上にパターンが生成される。前述したように、インクには微小は粒が不均一に混入しているため、描画されるパターンは、図36に模式的に示すように、微小な粒(図では黒丸で表している)をランダムな位置に含有する環状のパターンになる。またフェルト材1111の下面が物体の表面に接触するまで蓋905が降下すると、リミットスイッチ910がオフ状態からオン状態に変化する。
【0173】
次に、図34および図35を参照して物体識別子登録装置1100の動作を説明する。
【0174】
利用者は、物体識別子登録装置1100を使って物体に個体識別のためのパターンを生成する場合、パターンを生成したい物体の上に、容器904の下面が接するように筐体903を載置する。このときの物体識別子登録装置1100は図34に示すような状態であり、リミットスイッチ1103はオン状態、リミットスイッチ910はオフ状態になっている。
【0175】
利用者が、物体上に載置した筐体903の蓋905を下方に押し下げていくと、図34に示す状態から図35に示す状態へと徐々に遷移していく。そして、利用者が、それ以上押し下げることができない位置まで蓋905を押し下げると、蓋905と連動して下降するスタンプ1101のフェルト材1111の下面が物体に押し当てられ、物体上に環状のパターンが生成される。また、蓋905と連動して下降する固定板913がリミットスイッチ910に当接するため、リミットスイッチ910がオン状態に変化する。
【0176】
次に利用者が、蓋905を押し下げていた力を抜くと、弾性体911の反発力によって蓋905が元の位置に向かって上昇していく。その過程で、まずリミットスイッチ910がオン状態からオフ状態へ変化する。蓋905がさらに上昇して図34に示す状態にいたると、リミットスイッチ1103がオフ状態からオン状態に変化する。
【0177】
パターン撮像部1102は、リミットスイッチ910、1103の状態に基づいて、パターンの生成を検出し、また、生成したパターンを撮像するタイミングを検出する。例えば、パターン撮像部1102は、リミットスイッチ1103がオン状態からオフ状態へ変化し、その後にリミットスイッチ910がオフ状態からオン状態へ変化すると、即ち図34の状態から図35の状態へ遷移すると、スタンプ1101によってパターンの生成が行われたと判断する。またパターン撮像部1102は、パターンの生成後に、リミットスイッチ1103がオフ状態からオン状態に変化すると、即ち図35の状態から図34の状態へ遷移すると、生成されたパターンを撮像できるタイミングになったと判断し、ファイバースコープ1113を通じて内蔵するカメラにより、生成されたパターンの画像を撮像する。
【0178】
次にパターン撮像ユニット1102について詳細に説明する。
【0179】
図37はパターン撮像ユニット1102のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。この例のパターン撮像ユニット1102は、カメラ11021と、MPU11022と、ROM11023と、RAM11024と、インターフェイス回路11025と、通信回路11026と、それらを相互に接続するバス11027とから構成される。このうち、ROM11023、RAM11024、インターフェイス回路11025、通信回路11026、およびバス11027は、図25を参照して説明したROM9023、RAM9024、インターフェイス回路9025、通信回路9026、およびバス9027と同様の機能を有する。
【0180】
カメラ11021は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを使用したカメラを使用することができる。カメラ11021にはファイバースコープ1114が接続されており、ファイバースコープ1114で取得した画像をカメラ11021で撮像する構造になっている。
【0181】
図38はMPU11022が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下、図34乃至図38を参照して、MPU11022が実行する処理を説明する。
【0182】
MPU11022は、リミットスイッチ1103の状態を、インターフェイス回路11025を通じて読み取り、オフ状態になったか否かを監視している(ステップS1101)。前述したように物体識別子登録装置1100は図34に示した状態ではリミットスイッチ1103はオン状態になっており、パターンを生成するために物体上に載置されて蓋905が下方に押し下げられると、固定板913が下降するためリミットスイッチ1103がオン状態からオフ状態に変化する。MPU11022は、リミットスイッチ1103がオフ状態に変化したことを検出すると、リミットスイッチ910がオン状態に変化したか否かを検出する(ステップS1102)。
【0183】
利用者が、それ以上押し下げることができない位置まで蓋905をさらに押し下げたことによって、リミットスイッチ910がオン状態になると、MPU11022は、容器904に内蔵されたスタンプ1101のフェルト材1111が物体の表面に押し付けられ、フェルト材1111から流出するインクによって物体上にパターンが描画されたと判断し、次に、リミットスイッチ1103がオン状態に変化するのを監視する(ステップS1103)。他方、MPU11022は、リミットスイッチ1103がオフ状態になった後、リミットスイッチ910がオン状態になる前にリミットスイッチ1103がオン状態に復帰した場合には(ステップS1104でYES)、スタンプ1101によって描画されることなく蓋905が元に戻されたと判断し、ステップS1101の処理へと戻る。
【0184】
次にMPU11022は、ステップS1103においてリミットスイッチ1103がオン状態になったことを検出すると、カメラ11021に対して撮像するように指令を出す(ステップS1105)。カメラ11021は、この指令に応じてファイバースコープ1114によって取得した画像を撮像する。なお、カメラ11021は照度が不足する場合には、インターフェイス回路11025を通じて照明器914を撮影時に一時的に点灯させる。撮影が行われる時点の物体識別子登録装置1100の状態は図34に示すようになっており、カメラ11021は、スタンプ1101で物体上に描かれた図36に示したような環状の画像を真上から撮像し、撮像して得た画像データをRAM11024の所定の領域に保存する。
【0185】
次にMPU11022は、RAM11024に保存された画像データを解析して、描画された環状の画像から物体識別子を抽出する(ステップS1106)。具体的には、MPU11022は、図1に示した第1の実施形態と同様に、図36に示したような環状のランダムパターンから虹彩認証アルゴリズムを使用して物体識別子を抽出する。次に、MPU11022は、抽出した個体識別子を含むデータを、通信回路11026を通じて外部の記憶装置(図示せず)へ登録する(ステップS1107)。MPU11022は、送信データにROM11023やRAM11024に記憶された情報、例えば当該物体識別子登録装置1100の識別情報や現在時刻等の属性情報を含めるようにしてもよい。そして、MPU11022は、次の撮像に備えてステップS1101の処理へと戻る。
【0186】
このように本実施形態によれば、パターン撮像ユニット1102は、スタンプ1101によって物体上にパターンが生成されたことを検出して撮像を行うため、パターンの生成と撮像との間に食い違いが生じるのを防ぐことができる。
【0187】
また本実施形態によれば、物体上に環状のパターンを生成することができる。
【0188】
また本実施形態によれば、物体上に生成したパターンをその真上から撮像することができる。
【0189】
また本実施形態によれば、撮像したパターンから物体識別子を抽出し、外部の記憶装置へ登録することができる。
【0190】
本実施形態では、環状のパターンを生成するようにしたが、スタンプ1101のフェルト材1111の下面の形状を変更することにより、環状以外の形状のパターンを生成することができる。
【0191】
また本実施形態では、フェルト材1111を使用したが、物体に押し当てることでインクによるパターンを形成できる部材であればフェルト材に限定されず、スポンジや布等を使用してもよい。
【0192】
また本実施形態では、パターンを生成しその画像を撮像する毎に、物体識別子の抽出と記憶装置への登録を行ったが、撮像した画像を一旦メモリ(RAM等)に蓄積し、後刻に物体識別子の抽出と記憶装置への登録を行うようにしてもよい。また本実施形態では、記憶装置へ物体識別子を登録したが、それに代えて或いはそれに加えて、撮像したパターンの画像を記憶装置へ登録するようにしてもよい。
【0193】
[第12の実施形態]
図39を参照すると、本実施形態に係る物体識別子抽出装置1200は、撮像部1201と抽出部1202とを有する。
【0194】
撮像部1201は、表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する機能を有する。抽出部1202は、撮像部1201によって撮像された物体の画像の内、ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を当該物体の識別情報として抽出する機能を有する。
【0195】
物体識別子抽出装置1200は、例えば図18に示すように、1以上のマイクロプロセッサ等の演算処理部741と、メモリやハードディスク等の記憶部742と、カメラ743とを有する情報処理装置740と、プログラム744とで実現することができる。情報処理装置740は、例えばスマートフォンであってよい。プログラム744は、情報処理装置740の立ち上げ時等に外部のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリに読み込まれ、演算処理部741の動作を制御することにより、演算処理部741上に、撮像部1201、抽出部1202といった機能的手段を実現する。
【0196】
図40は物体識別子抽出装置1200を用いて実行する物体識別子抽出方法の手順を示すフローチャートである。以下、図39及び図40を参照して本実施形態に係る物体識別子抽出方法について説明する。
【0197】
まず、物体識別子抽出装置1200の撮像部1201は、物体上に加工されたランダムパターンの画像を取得する(ステップS1201)。次に、抽出部1202は、撮像部1201によって取得された物体の画像の内、ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を当該物体の識別情報として抽出する(ステップS1202)。
【0198】
このように本実施形態によれば、虹彩認証で培われた技術を、工業製品や商品等の物体の認証に適用することができる。
【0199】
その理由は、抽出部1202が、撮像部1201によって取得された物体の画像の内、ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を当該物体の識別情報として抽出しており、ランダムパターンを含む環状の画像領域は虹彩に類似する画像領域となるためである。
【0200】
以上、本発明を幾つかの実施形態を挙げて説明したが、本発明は以上の実施形態にのみ限定されず、その他、各種の付加変更が可能である。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0201】
なお、本発明は、日本国にて2015年9月17日に特許出願された特願2015−183624の特許出願に基づく優先権主張の利益を享受するものであり、当該特許出願に記載された内容は、全て本明細書に含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明は、工業製品や商品等の物体の同一性を識別したり、照合したりする分野に利用できる。
【0203】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
を含む物体識別子抽出装置。
[付記2]
前記ランダムパターンは環状である、
付記1に記載の物体識別子抽出装置。
[付記3]
前記ランダムパターンは一部の領域がランダムパターンでない点状の領域に加工されており、
前記抽出部は、前記ランダムパターンの画像の内、前記点状の領域の中心から所定長を半径とする円内の画像を前記環状の画像領域として切り出す前処理を行う、
付記1に記載の物体識別子抽出装置。
[付記4]
前記ランダムパターンは略円形であり、
前記抽出部は、前記ランダムパターンの画像上に前記ランダムパターンの画像の重心を中心とする円形の画像を生成することにより、前記環状の画像領域を生成する前処理を行う、
付記1に記載の物体識別子抽出装置。
[付記5]
前記抽出部は、前記ランダムパターンの画像の重心を中心とする点の画像を前記ランダムパターンの画像上に生成し、前記ランダムパターンの画像の内、前記点の中心から所定長を半径とする円内の画像を前記環状の画像領域として切り出す前処理を行う、
付記1に記載の物体識別子抽出装置。
[付記6]
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する、
物体識別子抽出方法。
[付記7]
前記ランダムパターンは環状である、
付記6に記載の物体識別子抽出方法。
[付記8]
前記ランダムパターンは一部の領域がランダムパターンでない点状の領域に加工されており、
前記抽出では、前記ランダムパターンの画像の内、前記点状の領域の中心から所定長を半径とする円内の画像を前記環状の画像領域として切り出す前処理を行う、
付記6に記載の物体識別子抽出方法。
[付記9]
前記ランダムパターンは略円形であり、
前記抽出では、前記ランダムパターンの画像上に前記ランダムパターンの画像の重心を中心とする円形の画像を生成することにより、前記環状の画像領域を生成する前処理を行う、
付記6に記載の物体識別子抽出方法。
[付記10]
前記抽出では、前記ランダムパターンの画像の重心を中心とする点の画像を前記ランダムパターンの画像上に生成し、前記ランダムパターンの画像の内、前記点の中心から所定長を半径とする円内の画像を前記環状の画像領域として切り出す前処理を行う、
付記6に記載の物体識別子抽出方法。
[付記11]
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する判定部と、
を含む識別照合装置。
[付記12]
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する、
識別照合方法。
[付記13]
コンピュータを、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
して機能させるためのプログラム。
[付記14]
物体の表面にランダムパターンを加工する加工部と、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
を含む物体識別子登録装置。
[付記15]
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録する登録部を、
有する、
付記14に記載の物体識別子登録装置。
[付記16]
前記加工部は、待機位置から前記ランダムパターンの生成を行う生成位置まで移動可能に構成され、
前記撮像部は、前記加工部が前記待機位置から前記生成位置まで移動したことを検出することにより前記パターンの生成を検出する、
付記14または15に記載の物体識別子登録装置。
[付記17]
前記撮像部は、前記加工部が前記生成位置から前記待機位置に移動したタイミングで撮像を行う、
付記16に記載の物体識別子登録装置。
[付記18]
前記加工部の移動経路の途中に設けられ、前記加工された前記ランダムパターンの画像を前記撮像部に案内する可動ミラーを有する、
付記14乃至17の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記19]
前記加工部の近傍から前記加工された前記ランダムパターンの画像を取り込んで前記撮像部まで案内するファイバースコープを有する、
付記14乃至17に何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記20]
前記加工部は、微小な粒を含む液体を前記物体に付与することにより前記ランダムパターンを加工する、
付記14乃至19の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記21]
前記加工部は、ペンである、
付記14乃至19の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記22]
前記加工部は、液状のインク粒子を噴き付ける手段である、
付記14乃至19の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記23]
前記液状のインク粒子を噴き付ける手段は、インクジェットである、
付記22に記載の物体識別子登録装置。
[付記24]
前記インクジェットは、微小な粒を含むインクを前記物体に吹き付けることにより円形状の第1のパターンを生成する第1のインクジェットと、前記微小な粒を含まないインクを噴きつけることにより前記第1のパターンより小さな円形状の第2のパターンを前記第1のパターン上に生成する第2のインクジェットとを有する、
付記23に記載の物体識別子登録装置。
[付記25]
前記加工部は、スタンプである、
付記14乃至19の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記26]
前記スタンプによって前記物体上に加工される前記ランダムパターンの形状は環状である、
付記25に記載の物体識別子登録装置。
[付記27]
前記抽出部は、前記撮像して得た前記ランダムパターンの画像から、前記粒の分布に依存する特徴量を前記物体の物体識別子として抽出する、
付記14乃至26の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記28]
前記加工部は、前記物体上にランダムパターンを生成するレーザ加工機である、
付記14乃至19の何れかに記載の物体識別子登録装置。
[付記29]
物体の表面にランダムパターンを加工し、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する、
物体識別子登録方法。
[付記30]
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録する、
付記29に記載の物体識別子登録方法。
[付記31]
物体識別子登録装置と識別照合装置とを有し、
前記物体識別子登録装置は、
物体の表面にランダムパターンを加工する加工部と、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録する登録部と、
を含み、
前記識別照合装置は、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像する撮像部と、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出する抽出部と、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する判定部と、
を含む、
物体識別子管理システム。
[付記32]
物体識別子登録工程と識別照合工程とを有し、
前記物体識別子登録工程では、
物体の表面にランダムパターンを加工し、
前記ランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報を登録済みの物体の識別情報として記憶部に登録し、
前記識別照合工程では、
表面にランダムパターンが加工された物体を撮像し、
前記撮像された物体の画像の内、前記ランダムパターンを含む環状の画像領域の特徴を前記物体の識別情報として抽出し、
前記物体の識別情報と記憶部に記憶されている登録済みの物体の識別情報とを比較し、比較結果に基づいて、物体の識別・照合を判定する、
物体識別子管理方法。
[付記33]
付記1乃至5の何れかに記載の物体識別子抽出装置によって抽出した物体識別子を用いて識別を行う識別装置。
[付記34]
付記1乃至5の何れかに記載の物体識別子抽出装置によって抽出した物体識別子を用いて照合を行う照合装置。
[付記35]
付記6乃至10の何れかに記載の物体識別子抽出方法によって抽出した物体識別子を用いて識別を行う識別方法。
[付記36]
付記6乃至10の何れかに記載の物体識別子抽出方法によって抽出した物体識別子を用いて照合を行う照合方法。
[付記37]
前記環状または不定形または略円形のランダムパターンのサイズは、人の虹彩と同程度のサイズである、
付記1乃至36の何れかに記載の装置または方法。
[付記38]
前記撮影部は、前記環状または不定形または略円形のランダムパターンの画像を当該ランダムパターンと同じ位置に存在する人の虹彩と同程度のサイズに変換するコンバージョンレンズを有する、
付記1乃至36の何れかに記載の装置または方法。
【符号の説明】
【0204】
100…物体識別子抽出装置
101…撮像部
102…抽出部
110…物体
111…ランダムパターン
120…物体識別子
200…物体識別子抽出装置
201…撮像部
202…抽出部
210…物体
211…ランダムパターン
212…点状の領域
220…物体識別子
213…点状の領域の中心
214…円
300…物体識別子抽出装置
301…撮像部
302…抽出部
310…物体
311…ランダムパターン
320…物体識別子
312…円形の画像
400…物体識別子抽出装置
401…撮像部
402…抽出部
410…物体
411…ランダムパターン
420…物体識別子
413…円の中心
413…円
500…物体識別子登録装置
501…撮像部
502…抽出部
503…加工部
510…物体
511…ランダムパターン
520…物体識別子
600…物体識別子登録装置
601…撮像部
602…抽出部
603…加工部
604…登録部
610…物体
611…ランダムパターン
620…記憶装置
700…識別照合装置
701…撮像部
702…抽出部
703…判定部
710…物体
711…ランダムパターン
720…記憶装置
740…情報処理装置
741…演算処理部
742…記憶部
743…カメラ
744…プログラム
800…物体識別子管理システム
801…物体識別子登録装置
802…識別判定装置
810…物体
811…ランダムパターン
820…記憶装置
830…判定結果
900…物体識別子登録装置
901…インクペン
902…パターン撮像ユニット
903…筐体
904…容器
905…蓋
906…明かり取り用の窓
908…可動ミラー
908a…軸
908b…引っ張りバネ
909…リミットスイッチ
910…リミットスイッチ
911…弾性体
912…連結材
913…固定板
914…照明器
915…リミットスイッチ
1000…個体識別装置
1011…コンバージョンレンズ
1031…第1のインクジェットノズル
1032…第1のインクジェット
1033…第1の第1のインクカートリッジ
1041…第2のインクジェットノズル
1042…第2のインクジェット
1043…第2の第1のインクカートリッジ
1052…パターン撮像ユニット
1100…個体識別装置
1102…パターン撮像ユニット
1103…リミットスイッチ
1111…フェルト材
1112…インクタンク
1113…心材
1114…ファイバースコープ
1200…物体識別子抽出装置
1201…撮像部
1202…抽出部
図1
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