特許第6777980号(P6777980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6777980ケラチンの熱凝集抑制剤、毛髪の加熱時における熱損傷抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777980
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ケラチンの熱凝集抑制剤、毛髪の加熱時における熱損傷抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20201019BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61Q5/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-200920(P2015-200920)
(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2016-113443(P2016-113443A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-254301(P2014-254301)
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 廉
(72)【発明者】
【氏名】鈴田 和之
(72)【発明者】
【氏名】白木 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 直人
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095472(JP,A)
【文献】 特開2012−240918(JP,A)
【文献】 特開2004−026770(JP,A)
【文献】 特表2006−526655(JP,A)
【文献】 特開2001−213741(JP,A)
【文献】 特開平06−287110(JP,A)
【文献】 Hoyu,Treatment,Mintel GNPD,2013年 8月,ID#:2317562
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アセチルグルコサミンが配合されたケラチンの熱凝集抑制剤。
【請求項2】
前記N−アセチルグルコサミンの配合量が1mM以上5mM以下である請求項1に記載のケラチンの熱凝集抑制剤。
【請求項3】
N−アセチルグルコサミンが配合された毛髪の加熱時における熱損傷抑制剤。
【請求項4】
前記N−アセチルグルコサミンの配合量が0.05質量%以上10質量%以下である請求項3に記載の毛髪の加熱時における熱損傷抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチンの熱凝集を抑制するための熱凝集抑制剤、及び毛髪の熱損傷を抑制するための熱損傷抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱によって蛋白質が凝集することは周知であり、その凝集は、熱によって変性状態となった蛋白質が会合することで生じる。この熱凝集を抑制する研究が行われており、研究成果が医療分野や食品加工分野で応用されている。
【0003】
蛋白質の熱凝集の抑制に関して、例えば特許文献1には、蛋白質を含む組成物に、アミノ酸エステル及び/又はポリアミンを共存させれば、その蛋白質の凝集を抑制できるとの開示がある。そして、同文献における凝集抑制の対象蛋白質としては、パーオキシダーゼ等の酸化還元酵素、エステラーゼ等の加水分解酵素等の酵素、アルブミン等の血漿蛋白質などが例として挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々な蛋白質の凝集抑制について開示されているは上記の通りであるが、ケラチンの熱凝集の抑制に関する具体的な開示はない。そのため、ケラチンの熱凝集を抑制する提案がなされることが望まれる。また、その提案があれば、ケラチンが構成蛋白質となっている毛髪の熱損傷抑制が可能となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、熱によるケラチンの凝集を抑制するための熱凝集抑制剤、及び熱による毛髪の損傷を抑制するための熱損傷抑制剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、所定のアミノ酸、糖類又は糖類誘導体の適量使用がケラチンの熱凝集抑制剤として適することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明に係るケラチンの熱凝集抑制剤は、グリシン、セリン、アスパラギン酸、リシン、アラニン、アルギニン、グルコース、トレハロース、及びN−アセチルグルコサミンから選ばれた一種又は二種以上が配合されたものである。この熱凝集抑制剤が、グルコース、トレハロース、及びN−アセチルグルコサミンから選ばれた一種又は二種以上が配合されたものであれば、その配合される量が幅広い範囲において良好な凝集抑制を実現する。
【0008】
また、本発明に係る毛髪の熱損傷抑制剤は、グリシン、セリン、アスパラギン酸、リシン、アラニン、アルギニン、グルコース、トレハロース、及びN−アセチルグルコサミンから選ばれた一種又は二種以上が配合されたものである。この熱損傷抑制剤が、グルコース、トレハロース、及びN−アセチルグルコサミンから選ばれた一種又は二種以上が配合されたものであれば、ケラチンの熱凝集抑制に好適であるから、良好な熱損傷抑制を実現する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るケラチンの熱変性抑制剤によれば、所定のアミノ酸、糖類又は糖類誘導体が配合されているから、熱によるケラチン凝集の優れた抑制効果を実現する。また、本発明に係る毛髪の熱損傷抑制剤によれば、所定のアミノ酸、糖類又は糖類誘導体が配合されているから、毛髪の熱損傷の抑制に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】グリシンによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図2】セリンによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図3】アスパラギン酸による水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図4】リシンによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図5】アラニンによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図6】アルギニンによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図7】グルコースによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図8】トレハロースによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図9】N-アセチルグルコサミンによる水溶性ケラチンの熱凝集の抑制結果を表すグラフである。
図10】電子顕微鏡で撮影した延伸後の毛髪表面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
(熱凝集抑制剤)
ケラチンの熱凝集を抑制するための本実施形態に係る熱凝集抑制剤は、所定のアミノ酸、糖類及び糖類誘導体から選ばれた一種又は二種以上が、水と配合されたものである(水の配合量は、例えば80質量%以上)。また、本実施形態の熱凝集抑制剤には、実用上許容されるのであれば、他の化合物を配合しても良い。
【0012】
所定のアミノ酸
本実施形態の熱凝集抑制剤に配合される所定のアミノ酸は、グリシン、セリン、アスパラギン酸、リシン、アラニン、及びアルギニンから選ばれたものである。この選定したアミノ酸の配合量を適宜設定することで、熱によるケラチンの凝集を抑制できる。
【0013】
本実施形態の熱凝集抑制剤における所定のアミノ酸の配合量例は、以下の通りである。グリシンの配合量は、例えば3mM以上13mM以下である。セリンの配合量は、例えば2mM以上10mM以下である。アスパラギン酸の配合量は、例えば2mM以上8mM以下である。リシンの配合量は、例えば1mM以上5mM以下である。アラニンの配合量は、例えば2mM以上11mM以下である。アルギニンの配合量は、例えば1mM以上6mM以下である。
【0014】
なお、グリシン、アスパラギン酸、セリン、リシンについては、多量配合するとケラチン凝集の抑制効果が小さくなる場合があるので、その配合量には留意が必要となる。
【0015】
所定の糖類
本実施形態の熱凝集抑制剤に配合される所定の糖類は、グルコース、及びトレハロースから選ばれたものである。この選定した糖類の配合量を適宜設定することで、熱によるケラチンの凝集を抑制できる。
【0016】
本実施形態の熱凝集抑制剤における所定の糖類の配合量例は、以下の通りである。グルコースの配合量は、例えば1mM以上5mM以下である。トレハロースの配合量は、例えば0.5mM以上3mM以下である。
【0017】
所定の糖類誘導体
本実施形態の熱凝集抑制剤に配合される所定の糖類誘導体は、N−アセチルグルコサミンである。このN−アセチルグルコサミンの配合量を適宜設定することで、熱によるケラチンの凝集を抑制できる。
【0018】
本実施形態の熱凝集抑制剤におけるN-アセチルグルコサミンの配合量は、例えば1mM以上5mM以下である。
【0019】
pH
本実施形態の熱凝集抑制剤のpHは、特に限定されないが、例えば4.0以上10.0以下である。pHを調整するためには、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤などのpH緩衝剤;塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤;などを使用した公知の方法によれば良い。
【0020】
使用時の温度
本実施形態の熱凝集抑制剤を使用する際には、ケラチンに熱が加わる。このときの熱源温度又は雰囲気温度が高いほどケラチンの凝集が生じやすくなるものの、本実施形態の熱凝集抑制剤であれば、その凝集を抑制できる。熱源温度又は雰囲気温度は、例えば50℃以上100℃以下であり、130℃以上200℃以下でも良い。
【0021】
(熱損傷抑制剤)
毛髪の熱損傷を抑制するための本実施形態に係る熱損傷抑制剤は、所定のアミノ酸、糖類及び糖類誘導体から選ばれた一種又は二種以上が、水と配合されたものである(水の配合量は、例えば80質量%以上)。また、本実施形態の熱損傷抑制剤には、実用上許容されるのであれば、他の化合物を配合しても良い。
【0022】
所定のアミノ酸
本実施形態の熱損傷抑制剤に配合される所定のアミノ酸は、グリシン、セリン、アスパラギン酸、リシン、アラニン、及びアルギニンから選ばれたものである。この選定したアミノ酸を配合することで、熱による毛髪の損傷を抑制できる。
【0023】
本実施形態の熱損傷抑制剤における所定のアミノ酸の配合量例は、以下の通りである。グリシンの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。セリンの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。アスパラギン酸の配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。リシンの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。アラニンの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。アルギニンの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0024】
所定の糖類
本実施形態の熱損傷抑制剤に配合される所定の糖類は、グルコース、及びトレハロースから選ばれたものである。この選定した糖類の配合量を適宜設定することで、熱による毛髪の損傷を抑制できる。
【0025】
本実施形態の熱損傷抑制剤における所定の糖類の配合量例は、以下の通りである。グルコースの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。トレハロースの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0026】
所定の糖類誘導体
本実施形態の熱損傷抑制剤に配合される所定の糖類誘導体は、N−アセチルグルコサミンである。このN−アセチルグルコサミンの配合量を適宜設定することで、熱による毛髪の損傷を抑制できる。
【0027】
本実施形態の熱損傷抑制剤におけるN-アセチルグルコサミンの配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下であり、良好な熱損傷の抑制と熱損傷抑制剤を安価にする観点からは、0.1質量%以上2質量%以下が良く、0.2質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0028】
任意配合される化合物
本実施形態の熱損傷抑制剤には、実用上許容される限り、毛髪に適用する化合物が任意に配合される。その任意に配合される化合物としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、シリコーン、炭化水素、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、タンパク質、還元剤、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、香料が挙げられる。
【0029】
剤型
本実施形態の熱損傷抑制剤の剤型は、特に限定されず、液状、クリーム状、ゲル状などが挙げられる。毛髪に塗布した熱損傷抑制剤が流れ落ちることを抑えるには、クリーム状又はゲル状が良い。
【0030】
粘度
本実施形態の熱損傷抑制剤の粘度は、特に限定されない。その粘度は、毛髪からの流れ落ちを抑えるためには、2000mPa・s以上が良く、4000mPa・s以上が好ましく、8000mPa・s以上がより好ましく、10000mPa・s以上が更に好ましい。また、毛髪への熱損傷抑制剤の浸透性を高めるには、その粘度は、30000mPa・s以下が良く、25000mPa・s以下が好ましく、20000mPa・s以下がより好ましい。なお、本実施形態における粘度は、B型粘度計において粘度に応じて選定したローターを使用して25℃で計測した60秒後の値を採用する。
【0031】
pH
本実施形態の熱損傷抑制剤のpHは、4.0以上7.0以下の酸性又は中性、8.0以上10.0以下のアルカリ性など、特に限定されない。pHを調整するためには、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤などのpH緩衝剤;塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水、アルカノールアミンなどのpH調整剤;などを使用した公知の方法を採用すると良い。
【0032】
毛髪の加熱
本実施形態の熱損傷抑制剤を毛髪に適用後、その毛髪に熱が加わる。このときの熱源温度が高いほど毛髪の損傷が生じやすくなるものの、本実施形態の熱損傷抑制剤であれば、その損傷を抑制できる。
【0033】
毛髪に熱を加える際には、例えば、設定温度が70℃以上である発熱体と毛髪とを接触させる。その接触は、毛髪を伸ばして直線形状に近づけるための公知のヘアアイロン、毛髪形状をウェーブ状にするためのロッド、毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロンを使用して行うと良い。
【0034】
毛髪形状を直線状に近づけるためのヘアアイロンは、ハッコー社製「ADST Premium DS」、小泉成器社製「VSI−1009/PJ」などとして公知である。この公知のヘアアイロンの発熱体の設定温度は、毛髪の形状を効率良く変形させるためには、70℃以上であり、80℃以上が良く、100℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、160℃以上が更に好ましい。一方、上記発熱体の設定温度は、毛髪の損傷を抑えるためには、230℃以下が良く、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、190℃以下が更に好ましい。
【0035】
上記の毛髪形状をウェーブ状にするためのロッドは、公知の装置に備わっており、その装置は、大広製作所社製「ODIS EX」などである。ロッドには湿潤した毛髪を巻き取り、その後に、ロッドにおける毛髪の当接面を所定温度に上昇させる。そして、ロッドの熱で毛髪を乾燥させるのが一般的である。そのロッドの設定温度は、毛髪の形状を効率良く変形させるために、70℃以上であり、80℃以上が良い。一方、ロッドの設定温度の上限は、毛髪を乾燥するための温度である100℃であると良い。
【0036】
上記の毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロンは、ハッコー社製「Digital Perming」などとして公知である。このカーリングアイロンは、発熱体の設定温度を例えば140℃以上190℃以下にして使用される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0038】
(ケラチンの熱凝集抑制効果)
水溶性ケラチンを調製し、この調製したケラチンの熱凝集抑制効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0039】
水溶性ケラチン
特開2012−121831号公報の段落0089〜0092に準じて水溶性ケラチン(ケラチンにおける−S−S−結合を−S−S−CH−COOHに変換して、ケラチンを水溶性としたもの)の水溶液を製造した。
【0040】
熱凝集抑制効果の確認
再生セルロース製透析用チューブ(分画分子量:3500)と、NaCl濃度100mMの透析液とを使用して水溶性ケラチン水溶液を透析した後、この透析後の水溶液にNaCl濃度100mMの水溶液を加えて、水溶性ケラチンが約8.6mg/ml(BSA換算)である液を得た。そして、得られた液に対して、等量のグリシンなどが所定量配合されたpH7.0の40mMクエン酸緩衝液を加え、水溶性ケラチンが配合された試料溶液を得た(試料溶液中のグリシンなどの配合量は、図1〜9参照)。
【0041】
サーマルサイクラーを用いて、試料溶液300μlを98℃で30分間加熱した。加熱後、試料溶液を4℃で15分間静置してから、遠心分離(20,000×g、15分)により、試料溶液における熱凝集した水溶性ケラチンを沈殿させ、上清100μlを分注した。そして、分光光度計(NanoDrop社製「NanoDrop 2000c」)を用いて上清画分の水溶性ケラチン濃度を決定し、加熱前の水溶性ケラチン濃度を100%としたときの残存ケラチン比を算出した。
【0042】
図1〜9は、グリシン、セリン、アスパラギン酸、リシン、アラニン、アルギニン、グルコース、トレハロース、又はN−アセチルグルコサミンが試料溶液に配合された場合、及びその配合がない場合の上記熱凝集抑制効果の確認における結果を表すグラフである。各グラフでの横軸は、試料溶液におけるグリシンなどの配合濃度を示し、縦軸は、加熱後の試料溶液における水溶性ケラチンの残存率を示す。
【0043】
(毛髪の熱損傷抑制効果)
毛髪の熱損傷抑制効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0044】
毛髪
パーマネントウェーブ処理や酸化染毛処理などの化学的処理履歴がない日本人女性の黒髪を採取し、5〜10cmの長さに3分割した毛髪を、熱損傷抑制効果を確認するための対象とした。
【0045】
熱損傷抑制剤
N-アセチルグルコサミンの10質量%水溶液、トレハロースの10質量%水溶液を、熱損傷抑制剤として調製した。また、熱損傷抑制剤の比較対象として、水を準備した。
【0046】
熱損傷抑制効果の確認
(1)調製した熱損傷抑制剤又は水に毛髪を5分間浸漬、(2)その浸漬後の毛髪を温風乾燥、(3)株式会社ハッコー製ヘアアイロン「ADST Premium DS プロ用ストレートヘアアイロン ADST Premium DS(FDS−25)」における一対の発熱体の設定温度を160℃とし、その発熱体間で上記乾燥後の毛髪を20秒間加熱、以上の(1)〜(3)の工程からなる処理を60回繰り返した。その後、処理した毛髪を、50%Rhの室内に放置してから、引張り試験機で37.5%延伸した。そして、延伸した毛髪の表面状態を電子顕微鏡で観察した。
【0047】
図10は、上記延伸後の毛髪を電子顕微鏡で観察した際の撮影画像を表す。図10において、N-アセチルグルコサミン又はトレハロースを配合した熱損傷抑制剤を使用した場合、その配合がない場合よりも、毛髪のキューティの浮きが抑えられている。つまり、N-アセチルグルコサミン又はトレハロースを配合した熱損傷抑制剤により、毛髪の熱損傷が抑制されたことを確認できる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10