【文献】
ACS Applied Materials & Interfaces,2014年 8月 8日,Vol.6, No.17,p.15040-15051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機光電素子用化合物は、薄膜の状態で50nm〜100nmの半値幅(full width at half maximum:FWHM)を有する吸光曲線を示すことを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
前記n型半導体化合物は、サブフタロシアニン、フラーレン若しくはフラーレン誘導体、チオフェン若しくはチオフェン誘導体、或いはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の有機光電素子。
前記活性層は、前記真性層の一方の面に配設されるp型層及び前記真性層の他方の面に配設されるn型層のうちの少なくともいずれか一方を更に備えることを特徴とする請求項12に記載の有機光電素子。
前記半導体基板と前記有機光電素子との間に配設され、青色の波長領域の光を選択的に吸収する青色フィルター及び赤色の波長領域の光を選択的に吸収する赤色フィルターを有するカラーフィルター層を更に備えることを特徴とする請求項17に記載のイメージセンサー。
前記有機光電素子である緑色光電素子、青色の波長領域の光を選択的に吸収する青色光電素子及び赤色の波長領域の光を選択的に吸収する赤色光電素子が積層されることを特徴とする請求項16に記載のイメージセンサー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子用化合物を提供することにある。
また、本発明の目的は、緑色の波長領域の光を選択的に吸収して効率を改善させた有機光電素子を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記有機光電素子用化合物を含むイメージセンサー及び電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による有機光電素子用化合物は、下記一般式1で表わされる。
【化1】
前記一般式1において、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、フェニル基又はナフチル基であり、但しAr
1及びAr
2のうちの少なくともいずれか一方はナフチル基であり、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
R
aは、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
pは、1又は2の整数であり、
nは、0又は1であり、
mは、1〜4の整数であり、
前記有機光電素子用化合物内の芳香族環の数は、7つである。
【0007】
前記有機光電素子用化合物は、下記一般式2で表わされ得る。
【化2】
前記一般式2において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
mは、1〜4の整数である。
【0008】
前記有機光電素子用化合物は、下記一般式3で表わされ得る。
【化3】
前記一般式3において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
mは、1〜4の整数である。
【0009】
前記有機光電素子用化合物は、下記一般式4で表わされ得る。
【化4】
前記一般式4において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
R
aは、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
pは、1又は2の整数であり、
mは、1〜4の整数である。
【0010】
前記有機光電素子用化合物は、下記一般式5で表わされ得る。
【化5】
前記一般式5において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
R
aは、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
pは、1又は2の整数であり、
mは、1〜4の整数である。
【0011】
前記有機光電素子用化合物は、薄膜における最大の吸収波長(λ
max)が約530nm〜約570nmの範囲にあり得る。
前記有機光電素子用化合物は、薄膜の状態で約50nm〜約100nmの半値幅(full width at half maximum:FWHM)を有する吸光曲線を示し得る。
前記有機光電素子用化合物は、p型半導体化合物であり得る。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様による有機光電素子用化合物は、前記一般式1で表わされ、530nm〜570nmにおいて最大の吸収波長(λ
max)を有する。
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による有機光電素子は、対向する第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設され、前記一般式1で表わされる有機光電素子用化合物を含む活性層と、を備える。
【0014】
前記活性層は、n型半導体化合物を更に含み得る。
前記n型半導体化合物は、サブフタロシアニン、フラーレン若しくはフラーレン誘導体、チオフェン若しくはチオフェン誘導体、或いはこれらの組み合わせであり得る。
前記活性層は、前記一般式1で表わされる有機光電素子用化合物を含む真性層を備え得る。
前記活性層は、前記一般式1で表わされる有機光電素子用化合物を含むp型層を備え得る。
前記活性層は、前記真性層の一方の面に配設されるp型層及び前記真性層の他方の面に配設されるn型層のうちの少なくともいずれか一方を更に備え得る。
前記活性層は、緑色光を選択的に吸収する第2のp型半導体化合物を更に含み得る。
【0015】
前記第2のp型半導体化合物は、下記一般式9の化合物であり得る。
【化9】
前記一般式9において、
R
21〜R
23は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C30の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換のC6〜C30の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換のC1〜C30の脂肪族ヘテロ環基、置換若しくは無置換のC2〜C30の芳香族ヘテロ環基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、チオール基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリールチオ基、シアノ基、シアノ含有基、ハロゲン基、ハロゲン含有基、置換若しくは無置換のスルホニル基、置換若しくは無置換のアミノスルホニル基、或いはこれらの組み合わせであり、R
21〜R
23は、それぞれ独立して存在するか、或いは隣り合う二つが融合されて環を形成し、
L
1〜L
3は、それぞれ独立して、単一結合、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーレン基、2価の置換若しくは無置換のC3〜C30のヘテロ環基、或いはこれらの組み合わせであり、
R
31〜R
33は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC3〜C30のヘテロ環基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアミン基、置換若しくは無置換のシリル基、或いはこれらの組み合わせである。
【0016】
上記目的を達成するためになされた一態様によるイメージセンサーは、前記有機光電素子を備える。
【0017】
前記イメージセンサーは、青色の波長領域の光を感知する複数の第1の感光素子及び赤色の波長領域の光を感知する複数の第2の感光素子が集積された半導体基板と、前記半導体基板の上部に配設され、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する前記有機光電素子と、を備え得る。
前記イメージセンサーは、前記半導体基板と前記有機光電素子との間に配設され、青色の波長領域の光を選択的に吸収する青色フィルター及び赤色の波長領域の光を選択的に吸収する赤色フィルターを有するカラーフィルター層を更に備え得る。
前記イメージセンサーは、少なくとも一つの感光素子が集積された半導体基板と、前記半導体基板の上部に配設される前記有機光電素子と、を備え得る。
前記感光素子は、青色の波長領域の光を感知する第1の感光素子及び赤色の波長領域の光を感知する第2の感光素子を備え、前記第1の感光素子及び前記第2の感光素子は、半導体基板に垂直方向に積層され得る。
前記イメージセンサーは、前記有機光電素子である緑色光電素子、青色の波長領域の光を選択的に吸収する青色光電素子及び赤色の波長領域の光を選択的に吸収する赤色光電素子が積層され得る。
【0018】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による電子装置は、前記有機光電素子用化合物を含むイメージセンサーを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子用化合物を提供し、且つ有機光電素子用化合物により緑色の波長領域の波長選択性を高めて効率を改善させた有機光電素子とイメージセンサー及び電子装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明する実施形態に限定されるものではなく、他の形態に具現化可能である。
【0022】
図中、様々な層及び領域の厚さは、明確性を図るために誇張されている。明細書全体に亘って同じ構成部分に対しては同じ図面符号を付する。なお、層、膜、領域、板などの構成部分が他の構成部分の「上」にあるとした場合、それは、他の構成部分の「真上」にある場合だけではなく、これらの間に更に他の構成部分がある場合も含む。逆に、ある構成部分が他の構成部分の「直上」にあるとした場合には、これらの間に他の構成部分がないことを意味する。
【0023】
図中、本発明の実施形態を明確に説明するために、本発明に関係のない部分についての説明は省略し、明細書全体に亘って同一又は類似の構成要素に対しては同じ図面符号を付する。
【0024】
また、本明細書において、別途に断わりのない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S、及びPから選ばれるヘテロ原子を1つ〜3つ含むものを意味する。
【0025】
更に、本明細書において、別途に断わりのない限り、「置換」とは、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Br、Cl、又はI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基とその塩、スルホン酸基とその塩、リン酸とその塩、C1〜C20のアルコキシ基、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C2〜C20のアルキニル基、C6〜C30のアリール基、C7〜C30のアラルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、C1〜C20のヘテロアルキル基、C3〜C20のヘテロアラルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C15のシクロアルケニル基、C6〜C15のシクロアルキニル基、C2〜C20のヘテロシクロアルキル基、及びこれらの組み合わせから選ばれる置換基により置換されることを意味する。
【0026】
更にまた、本明細書において、別途に断わりのない限り、「芳香族環」とは、共役構造を形成する置換若しくは非置換の5員〜8員環構造、例えば置換若しくは非置換の5員又は6員環構造を意味する。ここで、環構造は、N、O、S、及びPから選ばれるヘテロ原子を1個〜3個含む。以下、一実施形態による有機光電素子用化合物について説明する。
また、本明細書において、別途に断わりのない限り、「シアノ含有基」とは、少なくとも一つの水素がシアノ基により置換されたC1〜C30のアルキル基、C2〜C30のアルケニル基、又はC2〜C30のアルキニル基を意味する。
また、本明細書において、別途に断わりのない限り、「ハロゲン含有基」とは、少なくとも一つの水素がハライド基(−F、−Cl、−Br、又は−I)により置換されたC1〜C30のアルキル基、C2〜C30のアルケニル基、又はC2〜C30のアルキニル基を意味する。
【0027】
一実施形態による有機光電素子用化合物は、下記一般式1で表わされる。
【0029】
上記一般式1において、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、フェニル基又はナフチル基であり、但しAr
1及びAr
2のうちの少なくともいずれか一方はナフチル基であり、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
R
aは、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
pは、1又は2の整数であり、
nは、0又は1であり、
mは、1〜4の整数、例えば1〜3の整数であり、
上記有機光電素子用化合物内の芳香族環の数は、7つである。
【0030】
上記一般式1において、mが2以上である場合、それぞれのR
4は互いに同一であるか又は異なる。
【0031】
上記一般式1において、nが0である場合、Ar
1及びAr
2はナフチル基である。この場合、有機光電素子用化合物は、下記一般式2で表わされる。
【0033】
上記一般式2において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
mは、1〜4の整数、例えば1〜3の整数である。
【0034】
上記一般式1において、nが0である場合、Ar
1及びAr
2はナフチル基であり、ナフチル基の2位に窒素(N)が結合される。この場合、有機光電素子用化合物は、下記一般式3で表わされる。
【0036】
上記一般式3において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
mは、1〜4の整数、例えば1〜3の整数である。
【0037】
上記一般式2及び一般式3において、mが2以上である場合、それぞれのR
4は互いに同一であるか又は異なる。
【0038】
上記一般式1において、nが1である場合、Ar
1及びAr
2のうちのいずれか一方はナフチル基であり、他方はフェニル基である。この場合、有機光電素子用化合物は、下記一般式4で表わされる。
【0039】
【化4】
上記一般式4において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
R
aは、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
pは、1又は2の整数であり、
mは、1〜4の整数、例えば1〜3の整数である。
【0040】
上記一般式1において、nが1である場合、Ar
1及びAr
2のうちのいずれか一方はナフチル基であり、他方はフェニル基であり、ナフチル基の1位に窒素(N)が結合される。この場合、有機光電素子用化合物は、下記一般式5で表わされる。
【0042】
上記一般式5において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
R
aは、水素、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のハロアルキル基、ハロゲン、又はCNであり、
pは、1又は2の整数であり、
mは、1〜4の整数、例えば1〜3の整数である。
【0043】
上記一般式4又は一般式5において、mが2以上である場合、それぞれのR
4は互いに異なり、pが2である場合、それぞれのR
aは互いに同一であるか又は異なる。
【0044】
他の実施形態によると、上記一般式1で表わされ、530nm〜570nmにおいて最大の吸収波長(λ
max)を有する有機光電素子用化合物が提供される。
【0045】
ハロゲンとは、F、Cl、Br、又はIを意味し、ハロアルキル基とは、アルキル基の水素のうちの少なくとも一つがF、Cl、Br、又はIにより置換されたものを意味する。ハロアルキル基の具体例としては、フルオロアルキル基、例えばペルフルオロアルキル基が挙げられる。
【0046】
本有機光電素子用化合物は、分子内に電子供与体部分及び電子受容体部分を一つの分子に含んで双極子特性を有する。本有機光電素子用化合物は、化合物の全体的に共役構造を形成する芳香族環が7個存在する。芳香族環の数が7個未満である場合、最大の吸収波長が青色に移動して緑色光の選択的な吸収性が低下する。なお、芳香族環の数が7個を超える場合には最大の吸収波長が赤色に移動して緑色光の選択的な吸収性が低下する。
【0047】
また、本有機光電素子用化合物は、必須的に上記一般式1におけるNに結合される置換基としてのAr
1及びAr
2のうちの少なくともいずれか一方がナフチル基である構造を有する。上記一般式1におけるAr
1及びAr
2のうちの少なくともいずれか一方の置換基がナフチル基である場合、薄膜状態で分子間の相互作用を低減して薄膜の製造に際しての分子間の凝集現象を防ぐ。このような分子間の凝集は、吸光曲線の波長を赤色に移動させ、その結果、吸収ピークも広くなる。このため、本有機光電素子用化合物は、Ar
1及びAr
2のうちの少なくともいずれか一方がナフチル基である構造を有することにより、緑色波長領域に対する選択性を高めることができる。これに対し、Ar
1及びAr
2が芳香族基ではないアルキル基であるか、或いはAr
1及びAr
2が両方ともフェニル基である場合、化合物構造が平面性を有して吸光曲線の半値幅が過度に広くなる。また、Ar
1及びAr
2のうちのいずれか一方がフェニル基であり、他方がビフェニル基である場合、即ちナフチル基が存在しない場合、ビフェニル基のフェニル基とフェニル基との間の共役構造が途切れて好適な共役長さを提供することができない。更に、Ar
1及びAr
2が互いに融合してN−含有環を形成する場合にも化合物構造が平面性を有して吸光曲線の半値幅が過度に広くなる。Ar
1及びAr
2の芳香族基がSを含むヘテロアリール基である場合に吸光曲線の波長が赤色に向かって移動する虞があり、N又はOのヘテロ原子を含む場合に化合物の安定性が低下する虞がある。
【0048】
本有機光電素子用化合物は、薄膜状態で約50nm〜約100nm、具体的に約50nm〜約90nmの比較的に小さい半値幅を有する吸光曲線を示す。ここで、半値幅とは、最大の吸光地点での高さの半分に対応する波長の幅であり、「半値幅が小さい」とは、狭い波長領域の光を選択的に吸収して波長選択性が高いことを意味する。上記範囲の半値幅を有することにより、緑色の波長領域に対する選択性を高めることができる。上記薄膜は、真空条件で蒸着された薄膜である。
【0049】
本有機光電素子用化合物は、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する化合物であり、約530nm〜570nmにおいて最大の吸収波長(λ
max)を有する。
【0050】
本有機光電素子用化合物は、約5.2〜約5.5eVの最高被占分子軌道(HOMO)レベルを有し、約1.9〜約2.3eVのエネルギーバンドギャップを有する。上記範囲の最高被占分子軌道(HOMO)レベル及びエネルギーバンドギャップを有することにより、緑色の波長領域において光を効果的に吸収するp型半導体化合物に適用可能であり、その結果、高い外部量子効率(external quantum efficiency:EQE)を有することで光電変換効率を改善することができる。
【0051】
本有機光電素子用化合物は、約300〜約1,500、より具体的に約350〜約1,200、更に具体的に約400〜約900の分子量を有する。上記範囲の分子量を有することにより、化合物の結晶性を防ぎながらも蒸着による薄膜の形成に際して化合物の熱分解を効果的に防ぐことができる。
【0052】
本有機光電素子用化合物は、約200℃以上、より具体的に250℃以上、更に具体的に約280℃以上の融点を有する。上記範囲の融点を有する場合、膜を安定的に蒸着することができ、分解物が低減して光電変換性能に優れた有機光電素子を提供することができる。
【0053】
以下、図面を参照しながら、有機光電素子用化合物を含む一実施形態による有機光電素子について説明する。
【0054】
図1は、一実施形態による有機光電素子を示す断面図である。
【0055】
図1を参照すると、本実施形態による有機光電素子100は、対向する第1の電極10及び第2の電極20と、第1の電極10と第2の電極20との間に配設される活性層30と、を備える。
【0056】
第1の電極10及び第2の電極20のうちのいずれか一方はアノードであり、他方はカソードである。第1の電極10及び第2の電極20のうちの少なくともいずれか一方は透光電極であり、透光電極は、例えば、インジウム錫酸化物(indium tin oxide:ITO)やインジウム亜鉛酸化物(indium zinc oxide:IZO)などの透明導電体であり、薄い厚さの単一層又は複数層の金属薄膜で製作される。第1の電極10及び第2の電極20のうちのいずれか一方が不透光電極である場合、例えばアルミニウム(Al)などの不透明導電体で製作される。
【0057】
活性層30は、p型半導体化合物及びn型半導体化合物が含まれてpn接合を形成する層であり、外部から光を受けて励起子を生成した後、生成された励起子を正孔及び電子に分離する層である。
【0058】
活性層30は、上記一般式1で表わされる化合物を含む。有機光電素子用化合物は、活性層30においてp型半導体化合物として適用される。
【0059】
有機光電素子用化合物は、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する化合物であり、有機光電素子用化合物を含む活性層30は、約530nm〜約570nmにおいて最大の吸収波長(λ
max)を有する緑色波長の光を選択的に吸収する。
【0060】
活性層30は、約50nm〜約100nm、具体的に約50nm〜約90nmの比較的に小さい半値幅(FWHM)を有する吸光曲線を示す。これにより、活性層30は、緑色の波長領域の光に対して高い選択性を有する。
【0061】
活性層30は、pn接合を形成するためのn型半導体化合物を更に含む。
【0062】
n型半導体化合物は、サブフタロシアニン、フラーレン若しくはフラーレン誘導体、チオフェン若しくはチオフェン誘導体、或いはこれらの組み合わせである。
フラーレンの例としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、これらの混合物、フラーレンナノチューブ等がある。フラーレン誘導体とは、フラーレンに置換基を有する化合物を意味する。フラーレン誘導体は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの置換基を含む。アリール基とヘテロ環基の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン(furan)環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン(indolizine)環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン(isobenzofuran)環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン(imidazopyridine)環、キノリジン(quinolizidine)環、キノリン環、フタラジン(phthalazine)環、ナフチリジン(naphthyridine)環、キノキサリン(quinoxaline)環、キノキサゾリン(quinoxazoline)環、イソキノリン(isoquinoline)環、カルバゾール(carbazole)環、フェナントリジン(phenanthridine)環、アクリジン(acridine)環、フェナントロリン(phenanthroline)環、チアントレン(thianthrene)環、クロメン(chromene)環、キサンテン(xanthene)環、フェノキサチイン(phenoxathin)環、フェノチアジン(phenothiazine)環、又はフェナジン(phenazine)環がある。
【0063】
サブフタロシアニンは、下記一般式6で表わされる。
【0065】
上記一般式6において、
R
11〜R
13は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC3〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ハロゲン含有基、或いはこれらの組み合わせであり、
a、b、及びcは、1〜3の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、例えばF又はClである。
【0066】
ハロゲンとは、F、Cl、Br、又はIを意味し、ハロゲン含有基とは、アルキル基の水素のうちの少なくともいずれか一方がF、Cl、Br、又はIにより置換されたものを意味する。
【0067】
チオフェン誘導体は、例えば下記一般式7又は一般式8で表わされるが、これらに限定されない。
【0070】
上記一般式7及び一般式8において、
T
1、T
2、及びT
3は、置換若しくは無置換のチオフェン部を有する芳香族環であり、
T
1、T
2、及びT
3は、それぞれ独立して存在するか、或いは融合され、
X
3〜X
8は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC3〜C30のヘテロ環基、シアノ基、或いはこれらの組み合わせであり、
EWG
1及びEWG
2は、それぞれ独立して、電子吸引基である。
【0071】
例えば、上記一般式7において、X
3〜X
8のうちの少なくともいずれか一方は、電子吸引基、例えばシアノ基である。
【0072】
活性層30は、緑色光を選択的に吸収する第2のp型半導体化合物を更に含む。第2のp型半導体化合物としては、下記一般式9の化合物が挙げられる。
【0074】
上記一般式9において、
R
21〜R
23は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換のC1〜C30の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換のC6〜C30の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換のC1〜C30の脂肪族ヘテロ環基、置換若しくは無置換のC2〜C30の芳香族ヘテロ環基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーロキシ基、チオール基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリールチオ基、シアノ基、シアノ含有基、ハロゲン基、ハロゲン含有基、置換若しくは無置換のスルホニル基(例えば、置換若しくは無置換のC0〜C30のアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキルスルホニル基、又は置換若しくは無置換のC6〜C30のアリールスルホニル基)、或いはこれらの組み合わせであり、R
21〜R
23は、それぞれ独立して存在するか、或いは隣り合う二つが融合されて環を形成し、
L
1〜L
3は、それぞれ独立して、単一結合、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキレン基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリーレン基、2価の置換若しくは無置換のC3〜C30のヘテロ環基、或いはこれらの組み合わせであり、
R
31〜R
33は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキル基、置換若しくは無置換のC6〜C30のアリール基、置換若しくは無置換のC3〜C30のヘテロ環基、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアミン基(例えば、置換若しくは無置換のC1〜C30のアルキルアミン基、又は置換若しくは無置換のC6〜C30のアリールアミン基)、置換若しくは無置換のシリル基、或いはこれらの組み合わせである。
【0075】
緑色光を選択的に吸収する第2のp型半導体化合物は、上記一般式1の有機光電素子用化合物100重量部に対して約500〜約1500重量部で含まれることが好ましい。
【0076】
活性層30は、単一層又は複数層である。活性層30は、例えば、真性層(instrinsic layer:I層)、p型層/I層、I層/n型層、p型層/I層/n型層、p型層/n型層などの様々な組み合わせである。
【0077】
真性層(I層)は、上記一般式1の有機光電素子用化合物及びn型半導体化合物が約1:100〜約100:1の厚さ比で混合されて含まれる。例えば、上記範囲内において約1:50〜50:1の厚さ比で含まれてもよく、また上記範囲内において約1:10〜10:1の厚さ比で含まれてもよく、更に上記範囲内において約1:1の厚さ比で含まれてもよい。上記範囲の組成比を有することにより、効果的な励起子の生成及びpn接合の形成に有利である。
【0078】
p型層は、上記一般式1の半導体化合物を含み、n型層は、n型半導体化合物を含む。
【0079】
活性層30は、約1nm〜約500nmの厚さ、例えば上記範囲内において約5nm〜300nmの厚さを有する。上記範囲の厚さを有することにより、光を効果的に吸収し、正孔及び電子を効果的に分離及び伝達することにより光電変換効率を効果的に改善することができる。最適な膜厚は、例えば活性層30の吸収係数を考慮して決定され、少なくとも約70%以上、例えば約80%以上、例えば約90%の光を吸収する厚さを有する。
【0080】
有機光電素子100は、第1の電極10及び/又は第2の電極20側から光が入射して活性層30が所定の波長領域の光を吸収すると、内部で励起子が生成される。励起子は活性層30において正孔及び電子に分離され、分離された正孔は第1の電極10及び第2の電極20のうちのいずれか一方であるアノード側に移動し、分離された電子は第1の電極10及び第2の電極20のうちの他方であるカソード側に移動して有機光電素子に電流が流れる。
【0081】
以下、
図2に基づき、他の実施形態による有機光電素子について説明する。
【0082】
図2は、他の実施形態による有機光電素子を示す断面図である。
図2を参照すると、本実施形態による有機光電素子200は、上述した実施形態と同様に、対向する第1の電極10及び第2の電極20と、第1の電極10と第2の電極20との間に配設される活性層30と、を備える。
【0083】
しかし、本実施形態による有機光電素子200は、上述した実施形態とは異なり、第1の電極10と活性層30との間及び第2の電極20と活性層30との間にそれぞれ配設される電荷補助層40、45を更に備える。電荷補助層40、45は、活性層30において分離された正孔及び電子を移動しやすくして効率を高める。
【0084】
電荷補助層40、45は、正孔を注入しやすくする正孔注入層(hole injecting layer:HIL)、正孔を輸送しやすくする正孔輸送層(hole transporting layer:HTL)、電子の移動を阻止する電子遮断層(electron blocking layer:EBL)、電子を注入しやすくする電子注入層(electron injecting layer:EIL)、電子を輸送しやすくする電子輸送層(electron transporting layer:ETL)、及び正孔の移動を阻止する正孔遮断層(hole blocking layer:HBL)から選ばれる少なくとも一種を備える。
【0085】
電荷補助層40、45は、例えば、有機物、無機物、又は有無機物を含む。有機物は、正孔又は電子の特性を有する有機化合物であり、無機物は、例えば、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、ニッケル酸化物などの金属酸化物である。
【0086】
正孔輸送層(HTL)は、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、PEDOT:PSS)、ポリアリールアミン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(poly(N−vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン(N,N,N’,N’−tetrakis(4−methoxyphenyl)−benzidine、TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(4−bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl−amino]biphenyl、α−NPD)、m−MTDATA、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)−triphenylamine、TCTA)、及びこれらの組み合わせから選ばれるいずれか一種を含むが、これらに限定されない。
【0087】
電子遮断層(EBL)は、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、PEDOT:PSS)、ポリアリールアミン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(poly(N−vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン(N,N,N’,N’−tetrakis(4−methoxyphenyl)−benzidine、TPD)、4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(4−bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl−amino]biphenyl、α−NPD)、m−MTDATA、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)−triphenylamine、TCTA)、及びこれらの組み合わせから選ばれるいずれか一種を含むが、これらに限定されない。
【0088】
電子輸送層(ETL)は、例えば、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、NTCDA)、バトクプロイン(bathocuproine、BCP)、LiF、Alq3、Gaq3、Inq3、Znq2、Zn(BTZ)2、BeBq2、及びこれらの組み合わせから選ばれるいずれか一種を含むが、これらに限定されない。
【0089】
正孔遮断層(HBL)は、例えば、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、NTCDA)、バトクプロイン(BCP)、LiF、Alq3、Gaq3、Inq3、Znq2、Zn(BTZ)2、BeBq2、及びこれらの組み合わせから選ばれるいずれか一種を含むが、これらに限定されない。
【0090】
電荷補助層40、45のうちのいずれか一方は、省略可能である。
【0091】
本有機光電素子は、太陽電池、イメージセンサー、光検出器、光センサー、及び有機発光ダイオードなどに適用可能であるが、これらに限定されない。
【0092】
以下、図面を参照しながら、本有機光電素子を適用したイメージセンサーの一例について説明する。ここでは、イメージセンサーの一例である有機CMOSイメージセンサーについて説明する。
【0093】
図3は、一実施形態による有機CMOSイメージセンサーを概略的に示す斜視図であり、
図4は、
図3の有機CMOSイメージセンサーの断面図である。
【0094】
図3及び
図4を参照すると、一実施形態による有機CMOSイメージセンサー300は、感光素子50B、50R、伝送トランジスター(図示せず)と電荷保存場所55が集積された半導体基板310、下部絶縁層60、カラーフィルター層70、上部絶縁層80、及び有機光電素子100を備える。
【0095】
半導体基板310は、シリコン基板であり、感光素子50B、50R、伝送トランジスター(図示せず)、及び電荷保存場所55が集積される。感光素子50R、50Bは、光ダイオードである。
【0096】
感光素子50B、50R、伝送トランジスター、及び/又は電荷保存場所55は、画素毎に集積され、例えば図示のように、感光素子50B、50Rは青色画素及び赤色画素に含まれ、電荷保存場所55は緑色画素に含まれる。
【0097】
感光素子50B、50Rは光を感知し、感知された情報は伝送トランジスターにより転送され、電荷保存場所55は後述する有機光電素子100に電気的に接続され、電荷保存場所55の情報は伝送トランジスターにより転送される。
【0098】
図面には、感光素子50B、50Rが並設される構造を例示的に示すが、これに限定されるものではなく、青色感光素子50B及び赤色感光素子50Rが垂直に積層される。
【0099】
半導体基板310の上には、金属配線(図示せず)及びパッド(図示せず)が形成される。金属配線及びパッドは、信号の遅延を減らすために低い比抵抗を有する金属、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(g)、及びこれらの合金で製作されるが、これらに限定されない。また、上記構造に限定されるものではなく、金属配線及びパッドが感光素子50B、50Rの下部に配設されてもよい。
【0100】
金属配線及びパッドの上には、下部絶縁層60が形成される。下部絶縁層60は、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素などの無機絶縁物質、或いはSiC、SiCOH、SiCO、及びSiOFなどの低誘電率(low K)物質で製作される。下部絶縁層60は、電荷保存場所55を露出させるトレンチを有する。トレンチには、充填材が詰め込まれる。
【0101】
下部絶縁膜60の上には、カラーフィルター層70が形成される。カラーフィルター層70は、青色画素に形成される青色フィルター70Bと、赤色画素に形成される赤色フィルター70Rと、を備える。実施形態では、緑色フィルターを備えない例について説明するが、場合によって緑色フィルターを備えてもよい。
【0102】
カラーフィルター層70は、場合によって省略可能であり、例えば、青色感光素子50B及び赤色感光素子50Rが垂直に積層される構造では、青色感光素子50B及び赤色感光素子50Rが積層深さに応じて各波長領域の光を選択的に吸収することから、カラーフィルター層70を備えなくてもよい。
【0103】
カラーフィルター層70の上には、上部絶縁層80が形成される。上部絶縁層80は、カラーフィルター層70による段差を除去して平坦化させる。上部絶縁層80及び下部絶縁層60は、パッドを露出させるコンタクト孔(図示せず)と、緑色画素の電荷保存場所55を露出させる貫通口85と、を有する。
【0104】
上部絶縁層80の上には、上述した有機光電素子100が形成される。有機光電素子100は、上述したように、第1の電極10、活性層30、及び第2の電極20を備える。
【0105】
第1の電極10及び第2の電極20は両方とも透明電極であり、活性層30は、上述した通りである。活性層30は、緑色の波長領域の光を選択的に吸収することから、緑色画素のカラーフィルターに取って代わる。
【0106】
第2の電極20側から入射した光は、活性層30において緑色の波長領域の光が主として吸収されて光電変換され、残りの波長領域の光は第1の電極10を通過して感光素子50B、50Rで感知される。
【0107】
上述したように、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子が積層された構造を有することから、イメージセンサーを小型化させて小型化イメージセンサーを具現することができる。
【0108】
図4には、
図1の有機光電素子100を備える例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図2の有機光電素子200を備える場合にも同様に適用可能である。
図5は、このような構造のイメージセンサーの構造を示すものであり、
図2の有機光電素子200を適用した有機CMOSイメージセンサー400を示す断面図である。
【0109】
図6は、他の実施形態による有機CMOSイメージセンサーを概略的に示す断面図である。
【0110】
図6を参照すると、本実施形態による有機CMOSイメージセンサー500は、上述した実施形態と同様に、感光素子50B、50R、伝送トランジスター(図示せず)、及び電荷保存場所55が集積された半導体基板310、絶縁層80、及び有機光電素子100を備える。
【0111】
しかし、本実施形態による有機CMOSイメージセンサー500は、上述した実施形態とは異なり、青色感光素子50B及び赤色感光素子50Rが積層され、且つカラーフィルター層70が省略される。青色感光素子50B及び赤色感光素子50Rは、電荷保存場所(図示せず)に電気的に接続され、伝送トランジスターにより転送される。青色感光素子50B及び赤色感光素子50Rは、積層深さに応じて各波長領域の光を選択的に吸収する。
【0112】
上述したように、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子が積層された構造を有し、且つ赤色感光素子及び青色感光素子が積層された構造を有することから、イメージセンサーを更に小型化させて小型化イメージセンサーを具現することができる。また、上述したように、有機光電素子100は、緑色の波長選択性を高めることから、緑色を除く波長領域の光を余計に吸収して発生するクロストークを減らして感度を高めることができる。
図6には、
図1の有機光電素子100を備える例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図2の有機光電素子200を備える場合にも同様に適用可能である。
【0113】
図7は、他の実施形態による有機CMOSイメージセンサーを概略的に示す斜視図である。
【0114】
図7を参照すると、本実施形態による有機CMOSイメージセンサーは、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する緑色光電素子(G)、青色の波長領域の光を選択的に吸収する青色光電素子(B)、及び赤色の波長領域の光を選択的に吸収する赤色光電素子(R)が積層された構造を有する。
【0115】
図面には、赤色光電素子、緑色光電素子、及び青色光電素子がこの順に積層された構造を示すが、本発明はこれに限定されるものではなく、積層順序は種々に変更可能である。
【0116】
緑色光電素子は、上述した有機光電素子100であり、青色光電素子は、対向する電極と、これらの間に介在されて青色の波長領域の光を選択的に吸収する有機物質を含む活性層と、を備え、赤色光電素子は、対向する電極と、これらの間に介在されて赤色の波長領域の光を選択的に吸収する有機物質を含む活性層と、を備える。
【0117】
上述したように、緑色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子、赤色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子、及び青色の波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子が積層された構造を有することから、イメージセンサーを更に小型化させて小型化イメージセンサーを具現することができると共に、感度を高めてクロストークを低減させることができる。
【0118】
本イメージセンサーは、様々な電子装置に適用可能であり、例えば、モバイル電話、デジタルカメラなどに適用されるが、これらに限定されない。
【0119】
以下、実施例を挙げて上述した実施形態についてより詳細に説明する。但し、下記の実施例は単に説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0121】
<合成例1>
下記一般式1aの化合物を下記反応式1に従い合成する。
【0124】
化合物(1a−1)5g(13.18mmol)及び化合物(1a−2)2.215g(15.15mmol)を3口丸底フラスコに入れた後、真空状態で8時間乾燥させた後にN
2ガスでパージする。上記反応物にエタノール100mlを添加してピペリジンを滴加した後、75〜80℃で6時間還流する。常温(25℃)まで冷却させた後に水を添加する。粉末が形成されると、ろ過した後にカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン/酢酸エチル)で精製する。ジクロロメタン及びヘキサンを用いて再結晶化させて化合物(1a)を得る(5.0g、歩留まり率:75%)。
【0125】
図8は、上記一般式1aの化合物の
1H NMRデータを示すグラフである。
【0126】
<合成例2>
下記一般式1bの化合物を下記反応式2に従い合成する。
【0129】
化合物(1b−1)5g(15.18mmol)及び化合物(1b−2)3.425g(17.46mmol)を3口丸底フラスコに入れた後、真空状態で8時間乾燥させた後にN
2ガスでパージする。上記反応物にエタノール100ml及びピペリジンを滴加した後、75〜80℃で6時間還流する。常温(25℃)まで冷却させた後に水を添加する。粉末が形成されると、ろ過した後にカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン/酢酸エチル)で精製する。ジクロロメタン及びヘキサンを用いて再結晶化させて化合物(1b)を得る(6.2g、歩留まり率:80%)。
【0130】
図9は、上記一般式1bの化合物の
1H NMRデータを示すグラフである。
【0131】
<比較合成例1>
下記一般式1cの化合物を下記反応式3に従い合成する。
【0134】
化合物(1c−1)0.1g(0.512mmol)及び化合物(1a−2)0.086g(0.589mmol)を3口丸底フラスコに入れた後、真空状態で8時間乾燥させた後にN
2ガスでパージする。上記反応物にエタノール10ml及びピペリジンを滴加した後、75〜80℃で6時間還流する。常温(25℃)まで冷却させた後に水を添加する。粉末が形成されると、ろ過した後にカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン/酢酸エチル)で精製する。ジクロロメタン及びヘキサンを用いて再結晶化させて化合物(1c)を得る(0.142g、歩留まり率:83%)。
【0135】
図10は、上記一般式1cの化合物の
1H NMRデータを示すグラフである。
【0136】
<比較合成例2>
下記一般式1dの化合物を下記反応式4に従い合成する。
【0139】
化合物(1d−1)0.2g(0.716mmol)及び化合物(1a−2)0.12g(0.823mmol)を3口丸底フラスコに入れた後、真空状態で8時間乾燥させた後にN
2ガスでパージする。上記反応物にエタノール15ml及びピペリジンを滴加した後、75〜80℃で6時間還流する。常温(25℃)まで冷却させた後に水を添加する。粉末が形成されると、ろ過した後にカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン/酢酸エチル)で精製する。ジクロロメタン及びヘキサンを用いて再結晶化させて化合物(1d)を得る(0.16g、歩留まり率:55%)。
【0140】
図11は、上記一般式1dの化合物の
1H NMRデータを示すグラフである。
【0141】
<比較合成例3>
下記一般式1eの化合物(2−((5−(ジフェニルアミノ)チオフェン−2−イル)メチレン)−1H−シクロペンタ[b]ナフタレン−1,3(2H)−ジオン)を準備する。
【0143】
<比較合成例4>
下記一般式1fの化合物(2−((5−(ジフェニルアミノ)チオフェン−2−イル)メチレン)−1H−シクロペンタ[b]アントラセン−1,3(2H)−ジオン)を準備する。
【0145】
<比較合成例5>
下記一般式1gの化合物(2−((5−((3,5−ジメチルフェニル)(ナフタレン−1−イル)アミノ)チオフェン−2−イル)メチレン)−1H−インデン−1,3(2H)−ジオン)を準備する。
【0147】
<比較合成例6>
下記一般式1hの化合物(2−((5−(ジ(ナフタレン−1−イル)アミノ)チオフェン−2−イル)メチレン)−1H−シクロペンタ[b]ナフタレン−1,3(2H)−ジオン)を準備する。
【0149】
≪合成例1及び2と比較合成例1〜6による化合物の吸光特性≫
【0150】
合成例1及び2と比較合成例1〜6の化合物を高真空(<10
−7 Torr)下で0.5〜1.0Å/sの速度で熱蒸着して70nmの厚さの薄膜を準備した後、薄膜をCary 5000 UV分光計(バリアン社製)を用いて紫外線−可視光線(UV−Vis)を照射して評価する。合成例1及び2と比較合成例1〜6の化合物の薄膜状態の最大の吸収波長は、UV−2450紫外可視分光光度計(島津製作所社製)を用いて計算し、半値幅はガウスシミュレーションを用いて計算する。合成例1及び2と比較合成例2〜6の結果を表1に記載する。
【0151】
芳香族環の個数による最大の吸収波長を比較しやすくするために、比較合成例2〜4による化合物の薄膜状態の吸光曲線を
図12に示し、合成例2と比較合成例5及び6による化合物の薄膜状態の吸光曲線を
図13に示す。
【0152】
また、上記一般式1におけるAr
1及びAr
2位にナフチル基が存在するか否かによる吸光曲線を比較しやすくするために、合成例1及び2と比較合成例2及び3による化合物の薄膜状態の吸光曲線を
図14に示す。
【0154】
図12〜
図14、及び表1の結果から、合成例1及び2の化合物は、それぞれ薄膜状態で541nm及び566nmにおいて最大の吸収波長(λ
max)を有し、且つ半値幅も99nm及び94nmであるため、緑色の波長領域の光の選択的な吸収性に優れることが分かる。また、吸収波長曲線もガウス分布とほとんど同様であるということが確認される。
【0155】
これに対し、芳香族環の個数がそれぞれ5個又は6個である比較合成例2及び3の化合物は、略530nm未満で最大の吸収波長を示すため、青色波長に向かって移動したことが分かる。なお、芳香族環の個数が8個である比較合成例6による化合物は、赤色に向かって最大の吸収波長が移動したことが分かる。
【0156】
また、上記一般式1におけるAr
1及びAr
2のうちの少なくとも一方の置換基がナフチル基でない比較合成例2〜4の化合物は半値幅が大き過ぎて緑色の波長領域の選択的な吸収性が低いということが分かる。これに対し、上記一般式1におけるAr
1及びAr
2のうちの少なくとも一方の置換基がナフチル基である合成例1及び2の化合物は、ナフチル基が薄膜状態で分子間相互作用を低減して分子の凝集を抑えることにより、吸光曲線の半値幅が狭く維持される。即ち、緑色の波長領域の選択的な吸収性を増加させたことが分かる。
【0157】
≪合成例1及び2と比較合成例2による化合物の熱的特性≫
【0158】
合成例1及び2と比較合成例2による化合物の融点及び熱分解温度(thermal degradation temperature:T
d)を測定して下記表2に併記する。ここで、熱分解温度は化合物が分解され始める温度であり、化合物が本来の分子構造を維持できずに変形される温度である。一般に、熱分解温度以上においては、化合物を構成する分子内の原子が大気又は真空中に揮発されて消失されるため、熱分解温度は、化合物の初期重量が熱により0.5%減少し始める温度であると評価される。ここでは、熱重量分析(thermal gravimetric analysis:TGA)方法により測定する。
【0160】
表2の結果から、合成例1及び2の化合物は、融点及び熱分解温度が高くて化合物の熱的安定性に優れていることから、蒸着工程に好適に使用可能であるということが分かる。
【0162】
<実施例1>
ガラス基板の上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタリング法により積層して約100nmの厚さのアノードを形成し、その上に電荷補助層としてのモリブデン酸化物(MoO
x、0<x≦3)薄膜を10nmの厚さに積層する。次いで、モリブデン酸化物(MoO
x、0<x≦3)薄膜の上に合成例1による一般式1aの化合物(p型半導体化合物)及びC60(n型半導体化合物)を1:1の厚さ比で共蒸着して85nmの厚さの活性層を形成する。次いで、活性層の上にアルミニウム(Al)をスパッタリング法により積層して80nmの厚さのカソードを形成して有機光電素子を製作する。
【0163】
<実施例2>
合成例1による化合物(p型半導体化合物)の代わりに、合成例2による一般式1bの化合物(p型半導体化合物)を用いる以外は、実施例1の方法と同様にして有機光電素子を製作する。
【0164】
<比較例1〜比較例6>
合成例1による化合物(p型半導体化合物)の代わりに、それぞれ比較合成例1〜比較合成例6による一般式1c〜一般式1hの化合物(p型半導体化合物)を用いる以外は、実施例1の方法と同様にして有機光電素子を製作する。
【0165】
<実施例3>
ガラス基板の上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタリング法により積層して約100nmの厚さのアノードを形成し、その上に電荷補助層としてのモリブデン酸化物(MoO
x、0<x≦3)薄膜を20nmの厚さに積層する。次いで、モリブデン酸化物(MoO
x)薄膜の上に合成例2による一般式1bの化合物(p型半導体化合物)及び下記一般式2aのn型半導体化合物を1:1の厚さ比で共蒸着して70nmの厚さの活性層を形成する。次いで、活性層の上にアルミニウム(Al)をスパッタリング法により積層して80nmの厚さのカソードを形成して有機光電素子を製作する。
【0167】
<実施例4>
上記一般式2aのn型半導体化合物の代わりに、下記一般式2bのn型半導体化合物を用いる以外は、実施例3の方法と同様にして有機光電素子を製作する。
【0169】
<実施例5>
上記一般式2aのn型半導体化合物の代わりに、下記一般式2cのn型半導体化合物を用いる以外は、実施例3の方法と同様にして有機光電素子を製作する。
【0172】
実施例1〜5及び比較例3による有機光電素子の波長及び電圧に対する外部量子効率(EQE)を評価する。
【0173】
外部量子効率は、IPCE測定システム(マックサイエンス社製、韓国)設備を用いて測定する。先ず、Si光ダイオード(浜松ホトニクス社製、日本)を用いて設備を補正した後、実施例1及び2による有機光電素子を設備に取り付け、波長範囲約300nm〜700nmの領域において外部量子効率を測定する。
【0174】
図15及び
図16は、それぞれ実施例1及び実施例2による有機光電素子の波長及び電圧に対する外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
図17は、実施例1及び2による有機光電素子の電界に対する外部量子効率(EQE
max)を比較して示すグラフである。
図18は、比較例3による有機光電素子の波長及び電圧に対する外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【0175】
図15及び
図16を参照すると、実施例1による有機光電素子は、約530nm〜570nmの緑色の波長領域において外部量子効率(EQE)に優れているということが確認される。
図15を参照すると、3Vにおいて実施例1は71%、且つ
図16を参照すると、実施例2は69%という優れた外部量子効率を示すことが分かる。
図18を参照すると、比較例3による有機光電素子は、波長選択性及び外部量子効率が両方とも良くないということが分かる。
【0176】
図19は、実施例1及び2による有機光電素子の電圧に対する電流密度を示すグラフである。
図19を参照すると、実施例1及び2による有機光電素子は暗電流が減少する現象を示し、これより素子の特性が安定であるということが確認される。
【0177】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。