特許第6778020号(P6778020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6778020高清澄飲料および高清澄飲料の白濁防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778020
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】高清澄飲料および高清澄飲料の白濁防止方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/70 20060101AFI20201019BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20201019BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   A23L2/00 K
   A23C9/13
   A23L2/38 P
   A23L2/38 C
   A23L2/70
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-111649(P2016-111649)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-216890(P2017-216890A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−300226(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/111357(WO,A1)
【文献】 特開昭60−012930(JP,A)
【文献】 特開平05−007458(JP,A)
【文献】 特開平07−099947(JP,A)
【文献】 特開平02−005842(JP,A)
【文献】 特表2004−520851(JP,A)
【文献】 特表2007−535940(JP,A)
【文献】 特開平03−240470(JP,A)
【文献】 特開2010−227095(JP,A)
【文献】 特開2001−314152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J1/00−99/00,A23C1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII),
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性乳と、
大豆多糖類と、
を含む高清澄飲料であって、
前記酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、当該高清澄飲料全量に対して0.0001質量%以上0.009質量%以下であり、
前記大豆多糖類の含有量が、当該高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下であり、
該高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満であり、
該高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下である、高清澄飲料。
【請求項2】
該高清澄飲料の波長650nmにおける前記吸光度が0.009以下である、請求項1に記載の高清澄飲料。
【請求項3】
甘味料をさらに含む、請求項1または2に記載の高清澄飲料。
【請求項4】
酸味料をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高清澄飲料。
【請求項5】
乳風味を呈する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の高清澄飲料。
【請求項6】
容器詰めされた、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の高清澄飲料。
【請求項7】
酸性乳と、大豆多糖類と、を含む高清澄飲料の白濁防止方法であって、
記高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下であり、
前記酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、前記高清澄飲料全量に対して0.0001質量%以上0.009質量%以下となり、前記大豆多糖類の含有量が、前記高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下となり、前記高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満となるように調整する工程を含む高清澄飲料の白濁防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清澄飲料および高清澄飲料の白濁防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性乳飲料は、白濁しており、かつ独特の味わいを呈する嗜好性の高い清涼飲料の1種として知られている。この酸性乳飲料には、酸性乳に由来する乳タンパク質が不溶物として含まれている。そして、従来の酸性乳飲料中において上記乳タンパク質は、通常、複数の分子が会合してなるコロイド粒子の状態で該飲料中に分散している。言い換えれば、従来の酸性乳飲料には、乳タンパク質からなる上記コロイド粒子が、不溶物として分散された状態で存在している。
また、従来の酸性乳飲料には、上記コロイド粒子の分散状態を安定化させて、かかるコロイド粒子が凝集して沈殿することを抑制する目的で、通常、ペクチンや大豆多糖類等の増粘剤が配合されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−41018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸性乳飲料を含む各種清涼飲料の需要は、一般に、止渇する目的で消費者が該飲料を摂取する夏場などの気温が高い時期に増大する傾向にあるとされている。しかし、従来の酸性乳飲料は、不溶物として含まれている乳タンパク質による影響で、背景技術の項で述べたように白濁している。そのため、従来の酸性乳飲料は、炭酸飲料、スポーツドリンク、果実の風味を付与した水様飲料等といった透明度の高い清澄飲料と比べて、止渇飲料としての需要が低下する傾向にあった。
こうした事情を踏まえ、本発明者は、酸性乳飲料のように酸性乳特有の味わいを呈することが可能であり、かつ高清澄な清涼飲料を実現すべく、その設計指針について鋭意検討した。
【0005】
しかし、特許文献1等に記載されている従来の酸性乳飲料は、該飲料中に乳タンパク質からなるコロイド粒子が不溶物として含まれている以上、その透明度を向上させるという観点において限界を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、酸性乳を含むことを前提とした飲料の高清澄化技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来の酸性乳飲料中に不溶物として含まれていた乳タンパクからなるコロイド粒子の分散状態を改良することにより該飲料の高清澄化を図るのではなく、乳タンパク質を可溶物として飲料中に含有させることが、該酸性乳を含むことを前提とした高清澄化飲料を実現するための設計指針として有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、
酸性乳と、
大豆多糖類と、
を含む高清澄飲料であって、
前記酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、当該高清澄飲料全量に対して0.0001質量%以上0.009質量%以下であり、
前記大豆多糖類の含有量が、当該高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下であり、
該高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満であり、
該高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下である、乳風味を呈する高清澄飲料が提供される。
【0009】
さらに、本発明によれば、酸性乳と、大豆多糖類と、を含む高清澄飲料の白濁防止方法であって、
記高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下であり、
前記酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、前記高清澄飲料全量に対して0.0001質量%以上0.009質量%以下となり、前記大豆多糖類の含有量が、前記高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下となり、前記高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満となるように調整する工程を含む、乳風味を呈する高清澄飲料の白濁防止方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸性乳を含むことを前提とした飲料の高清澄化技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<酸性乳含有高清澄飲料>
本実施形態に係る酸性乳含有高清澄飲料(以下、本高清澄飲料とも示す。)は、酸性乳と、大豆多糖類と、を含むものである。かかる本高清澄飲料において、酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量は、該飲料全量に対して0.009質量%以下であり、大豆多糖類の含有量は、該飲料全量に対して0.5質量%以下である。また、本高清澄飲料のpHは、2.8以上3.5未満である。くわえて、本高清澄飲料は、該飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下であることを特徴としたものである。
【0012】
従来の酸性乳飲料は、背景技術の項で前述したように、通常白濁している。このように従来の酸性乳飲料が白濁している理由は、該飲料中に不溶物として含まれている乳タンパク質からなるコロイド粒子が、該飲料中に上記コロイド粒子の分散安定剤として配合されている成分と結合することにより肥大し、より安定した状態で分散することにより、可視化されるためであると考えられている。
【0013】
本高清澄飲料は、上述したように、該飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下の値を示すことを前提としたものである。本高清澄飲料に係る上記吸光度の値は、白濁している従来の酸性乳飲料に関して後述する値と比べて、極めて低い値である。このことから、本高清澄飲料は、酸性乳を含むことを前提とした飲料であるという点でのみ共通している従来の酸性乳飲料とは、該飲料の透明性という観点において一線を画したものであるといえる。
【0014】
本高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度は、0.02以下であるが、該飲料を透明性に優れたものとする観点から、好ましくは、0.009以下であり、より好ましくは、0.006以下であり、さらに好ましくは、0.003以下である。
ここで、白濁した状態にある従来の酸性乳飲料の波長650nmにおける吸光度は、通常、1以上の値を示す場合がほとんどである。また、酸性乳飲料とは異なるが、止渇飲料の1種として知られている従来のスポーツドリンクの波長650nmにおける吸光度は、通常、0.2程度の値を示す場合がほとんどである。このことから、本高清澄飲料は、従来の酸性乳飲料や、スポーツドリンク等と比べて、非常に透明性の高いものであるといえる。
【0015】
また、本高清澄飲料は、上述したように、該飲料のpHが2.8以上3.5未満となるように制御しつつ、該飲料全量に対する無脂乳固形分の含有量と、該飲料全量に対する大豆多糖類の含有量とのバランスを最適化した特定の構成を採用したものである。かかる構成を採用したことにより、本高清澄飲料中に酸性乳由来の乳タンパク質を可溶物として含有させることができる。また、本高清澄飲料に係る上記特定の構成によれば、該飲料中に可溶物として含まれている乳タンパク質が、不溶化することを効果的に抑制することができる。
【0016】
以下、本高清澄飲料の具体的な構成について詳説する。
【0017】
本高清澄飲料は、酸性乳を必須成分として含む。
本実施形態における酸性乳とは、pHが7未満である乳、すなわち、pHが酸性を示す乳のことを指す。具体的には、本実施形態に係る酸性乳は、pHを3.5未満に制御することができるものであれば、乳酸菌やビフィズス菌などの微生物を用いて乳原料を発酵させて調製された発酵乳であっても、果汁や酸味料等の酸性成分を用いて乳原料を発酵させることなく調製された非発酵乳であってもよい。本製造方法に係る酸性乳を調製するために用いる上記乳原料としては、乳タンパク質を含むものであれば公知のものを使用することができ、たとえば、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、本実施形態に係る酸性乳は、飲料の高清澄化という観点において本発明の目的を損なわない範囲であれば、各種栄養成分、抽出物、甘味料、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含むものであってもよい。そのため、本実施形態に係る酸性乳として、乳タンパク質が不溶物として含まれている従来の酸性乳飲料を用いてもよい。すなわち、本高清澄飲料には、酸性乳として、市販の殺菌済み酸性乳飲料を含有させてもよい。
【0019】
また、本高清澄飲料全量に対する無脂乳固形分の含有量は、0.009質量%以下であるが、かかる無脂乳固形分中に含まれる乳タンパク質が該飲料中において不溶化することを抑制する観点から、好ましくは、0.006質量%以下であり、さらに好ましくは、0.003質量%以下である。また、無脂乳固形分の含有量の下限値は、特に限定されないが、本高清澄飲料について酸性乳特有の味わいを呈することを可能とする観点から、たとえば、0.0001質量%以上としてもよいし、0.0003質量%以上としてもよい。
【0020】
本高清澄飲料は、大豆多糖類を必須成分として含む。これにより、本高清澄飲料においては、該飲料中に溶解している乳タンパク質が不溶化することを抑制することができる。言い換えれば、本高清澄飲料中に大豆多糖類を含有させた場合、該飲料中に溶解している乳タンパク質が不溶物として析出することを抑制し、結果として、該飲料が白濁化することを防ぐことができる。このように、本高清澄飲料において大豆多糖類は、乳タンパク質の水に対する可溶性を保持するための安定剤として機能している。
また、本実施形態に係る大豆多糖類は、ヘミセルロースを主成分として含むものであれば、公知のものを使用することができる。
【0021】
また、本高清澄飲料全量に対する大豆多糖類の含有量は、0.5質量%以下であるが、該飲料中に含まれる乳タンパク質が不溶化することを抑制する観点から、好ましくは、0.4質量%以下であり、さらに好ましくは、0.3質量%以下であり、最も好ましくは、0.2質量%以下である。また、大豆多糖類の含有量の下限値は、特に限定されないが、0.05質量%以上としてもよいし、0.1質量%以上としてもよい。
【0022】
本高清澄飲料のpHは、上述したように、2.8以上3.5未満である。こうすることで、本高清澄飲料中に可溶物として含まれている乳タンパク質の水に対する溶解性を保持することができる。なお、乳タンパク質の等電点は、一般に、pH4.6であることが知られている。かかる等電点の値は、上記乳タンパク質の主成分として知られているカゼインの等電点(pH4.6)に起因している。
【0023】
また、本高清澄飲料のpHの上限値は、3.5未満であるが、該飲料中に溶解している乳タンパク質が不溶物として析出することを防ぐ観点から、好ましくは、pH3.4以下であり、さらに好ましくは、pH3.3以下である。一方、本高清澄飲料のpHの下限値は、該飲料中の香気成分が劣化することを抑制する観点から、たとえば、pH2.8以上とすることができる。そのため、本高清澄飲料のpHの下限値が上記数値以上となるように制御された場合、結果として、該飲料の嗜好性を向上させることができる。
【0024】
また、本高清澄飲料には、呈味という点において該飲料の嗜好性を向上させる目的で、甘味料を含有させてもよい。上記甘味料としては、公知のものを使用することができ、たとえば、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、D−ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。
【0025】
また、本高清澄飲料には、該飲料が白濁化することを効果的に防ぐ観点から、酸味料を含有させてもよい。上記酸味料としては、公知のものを使用することができ、たとえば、クエン酸三ナトリウム、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0026】
また、本高清澄飲料には、飲料の高清澄化という観点において本発明の目的を損なわない範囲であれば、果汁、各種栄養成分、抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
【0027】
また、本高清澄飲料のBrix値は、該飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、1°以上10°以下であり、より好ましくは、3°以上9°以下であり、さらに好ましくは、4°以上8°以下である。
【0028】
また、本高清澄飲料の酸度は、該飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.05質量%以上0.3質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上0.2質量%以下である。なお、本実施形態に係る飲料の「酸度」とは、飲料に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(質量%)として表した数値を指す。
【0029】
本高清澄飲料を充填する容器は、飲料業界で公知の密封容器であれば、適宜選択して用いることができる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、アルミ、スチール等の単体もしくは複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器形状は、特に限定されるものではないが、たとえば、缶容器、ボトル容器等が挙げられる。さらに、本高清澄飲料を充填する容器の色は、特に限定されないが、無色透明であることが好ましい。
【0030】
<酸性乳含有高清澄飲料の白濁防止方法>
本実施形態に係る酸性乳含有高清澄飲料の白濁防止方法は、酸性乳と、大豆多糖類と、を含むことを前提としている飲料中に溶解している乳タンパク質が不溶化して析出することにより、該飲料が白濁化することを防ぐ手法である。ここで、本実施形態に係る酸性乳含有高清澄飲料は、かかる飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下であることを前提としている。具体的には、本実施形態に係る酸性乳含有高清澄飲料の白濁防止方法は、酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、上記酸性乳含有高清澄飲料全量に対して0.009質量%以下となり、大豆多糖類の含有量が、上記酸性乳含有高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下となり、上記酸性乳含有高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満となるように調整する工程を含むものである。
【0031】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
酸性乳と、
大豆多糖類と、
を含む酸性乳含有高清澄飲料であって、
前記酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、当該酸性乳含有高清澄飲料全量に対して0.009質量%以下であり、
前記大豆多糖類の含有量が、当該酸性乳含有高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下であり、
当該酸性乳含有高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満であり、
当該酸性乳含有高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下である、酸性乳含有高清澄飲料。
<2>
当該酸性乳含有高清澄飲料の波長650nmにおける前記吸光度が0.009以下である、<1>に記載の酸性乳含有高清澄飲料。
<3>
甘味料をさらに含む、<1>または<2>に記載の酸性乳含有高清澄飲料。
<4>
酸味料をさらに含む、<1>乃至<3>のいずれか一つに記載の酸性乳含有高清澄飲料。
<5>
酸性乳と、大豆多糖類と、を含む酸性乳含有高清澄飲料の白濁防止方法であって、
前記酸性乳含有高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下であり、
前記酸性乳に由来する無脂乳固形分の含有量が、前記酸性乳含有高清澄飲料全量に対して0.009質量%以下となり、前記大豆多糖類の含有量が、前記酸性乳含有高清澄飲料全量に対して0.5質量%以下となり、前記酸性乳含有高清澄飲料のpHが2.8以上3.5未満となるように調整する工程を含む、酸性乳含有高清澄飲料の白濁防止方法。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1〜7および比較例1に係る酸性乳含有高清澄飲料の作製>
白濁した状態にある市販の殺菌済み乳酸菌飲料に対して、下記表1に示す配合比率となるように、果糖ぶどう糖液糖と、砂糖と、食塩とを、予め水に溶解させてから添加混合した。なお、上記市販の殺菌済み乳酸菌飲料は、必要に応じて、予め水で希釈したものを使用した。次いで、得られた混合液に対して、下記表1に示す配合比率となるように大豆多糖類を溶解させてから、かかる溶液のpHが3.3となるように、クエン酸、乳酸、およびクエン酸三ナトリウムからなる所定量の酸味料を添加混合することによりpHを調整し、酸性乳含有高清澄飲料を作製した。得られた酸性乳含有高清澄飲料のBrix値は、8.0°であり、クエン酸酸度は、0.15質量%であった。
次に、得られた酸性乳含有高清澄飲料に対して、115℃で30秒間の加熱殺菌処理を実施した。次いで、加熱殺菌処理後5秒以内に、得られた殺菌処理済み酸性乳含有高清澄飲料の液温が80℃となるように、10秒間弱の冷却処理を施してから該飲料を透明な容器に充填し、2分間保持した。その後、かかる酸性乳含有高清澄飲料の液温が20℃となるように水冷し、実施例1〜7および比較例1に係る容器詰め酸性乳含有高清澄飲料を得た。
【0034】
<実施例8に係る酸性乳含有高清澄飲料の作製>
大豆多糖類を溶解させた溶液のpHが2.8となるように、クエン酸、乳酸、およびクエン酸三ナトリウムからなる所定量の酸味料を用いてpHを調整した点以外は、実施例6と同様の方法で、実施例8に係る容器詰め酸性乳含有高清澄飲料を作製した。
【0035】
<比較例2に係る酸性乳含有高清澄飲料の作製>
大豆多糖類を溶解させることなくpHを調整した点、すなわち、大豆多糖類を配合しなかった点以外は、実施例1〜7および比較例1と同様の方法で、比較例2に係る容器詰め酸性乳含有高清澄飲料を作製した。
【0036】
<比較例3に係る酸性乳含有高清澄飲料の作製>
大豆多糖類を溶解させた溶液のpHが2.8となるように、クエン酸、乳酸、およびクエン酸三ナトリウムからなる所定量の酸味料を用いてpHを調整した点以外は、比較例1と同様の方法で、比較例3に係る容器詰め酸性乳含有高清澄飲料を作製した。
【0037】
<参考例1に係る酸性乳含有飲料の作製>
大豆多糖類を配合しなかった点、pHが3.6となるように、クエン酸、乳酸、およびクエン酸三ナトリウムからなる所定量の酸味料を用いてpHを調整した点、加熱殺菌処理を実施することなく飲料の液温が20℃となるように調整した点以外は、実施例1〜7および比較例1と同様の方法で、参考例1に係る容器詰め酸性乳含有飲料を作製した。
【0038】
<参考例2に係る酸性乳含有飲料の作製>
大豆多糖類を配合しなかった点、pHが3.9となるように、クエン酸、乳酸、およびクエン酸三ナトリウムからなる所定量の酸味料を用いてpHを調整した点、加熱殺菌処理を実施することなく飲料の液温が20℃となるように調整した点以外は、実施例1〜7および比較例1と同様の方法で、参考例2に係る容器詰め酸性乳含有飲料を作製した。
【0039】
得られた各酸性乳含有高清澄飲料について、次の評価を実施した。
【0040】
・不溶物(浮遊物)の有無:各飲料の外観について、熟練したパネラーが以下の評価基準に従って目視にて評価を実施した。
◎:不溶物(浮遊物)は含まれていなかった。
○:高清澄飲料として実用上問題ないレベルであるが、極わずかの不溶物(浮遊物)が含まれていた。
×:高清澄飲料として実用上問題がある程度の量の不溶物(浮遊物)が含まれていた。
【0041】
・白濁の要否:各飲料の外観について、熟練したパネラーが以下の評価基準に従って目視にて評価を実施した。
◎:白濁していなかった。
○:高清澄飲料として実用上問題ないレベルであるが、極わずかに白濁していた。
×:高清澄飲料として実用上問題がある程度に白濁していた。
【0042】
・波長650nmにおける吸光度:分光光度計を用いて各飲料の波長650nmにおける吸光度を測定した。なお、吸光度測定は、20℃の温度条件下、石英セルを用いて実施した。下記表における「n.d.」という表記は、測定限界を下回る値であったことを示す。
【0043】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1にまとめる。
【0044】
【表1】
【0045】
各実施例の酸性乳含有高清澄飲料は、いずれも、白濁していないという点で透明性に優れており、かつ不純物量の少ない高清澄化された飲料であった。一方、比較例1および3の酸性乳含有高清澄飲料は、波長650nmにおける吸光度が0.02以下であるという点において透明性に優れたものであるが、高清澄飲料として実用上問題のあるレベルに白濁したものであった。また、比較例2の酸性乳含有高清澄飲料は、波長650nmにおける吸光度が0.02以下であるという点において透明性に優れたものであるが、不純物が沈殿しているという点で、高清澄飲料として改善の余地を有したものであった。
【0046】
pHが3.6となるように調整された参考例1の飲料は、高清澄化されることなく白濁したままの状態であることが確認された。また、pHが3.9となるように調整された参考例2の飲料は、高清澄化されることなく白濁したままの状態であることが確認された。くわえて、参考例2の飲料については、該飲料中において乳タンパク質の不溶化が進んでいることもあわせて確認された。