(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778023
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリートの圧送性能評価システム
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20201019BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
G01N11/00 E
G01N33/38
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-115057(P2016-115057)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-9596(P2017-9596A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-127308(P2015-127308)
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】南 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】中島 良光
(72)【発明者】
【氏名】今西 秀公
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−176674(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103675245(CN,A)
【文献】
橋本 紳一郎,配管及び計測条件がコンクリートの簡易圧送性評価に与える影響,セメント・コンクリート論文集,日本,2014年,68巻 1号,p.268-274,URL,https://doi.org/10.14250/cement.68.268
【文献】
案浦侑己,コンクリートのポンプ圧送性評価手法の検討,土木学会西部支部研究発表会資料,日本,2012年 3月,p.827-828,URL,http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00074/2012/56-05-0052.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00
G01N 29/00 − 29/52
G01N 33/38
F04B 9/00 − 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプ車から送出するフレッシュコンクリートの圧送性能を評価するため
のシステムであって、
前記フレッシュコンクリートの圧送経路に配設して、前記フレッシュコンクリートの圧送方向に沿って内径が徐々に縮径する縮径部と、当該縮径部の前記フレッシュコンクリートの圧送方向の下流側に、前記フレッシュコンクリートの圧送方向に沿って内径が徐々に拡径する拡径部とを有する検知管を備えるとともに、
前記検知管に取り付けられ、前記フレッシュコンクリート中に含まれる細骨材や粗骨材が、前記検知管に接触する際に生じる力を、加速度計を用いて計測する計測手段と、
前記計測手段により計測した加速度を用いて、前記フレッシュコンクリートの圧送性能及び前記圧送経路における閉塞発生の可能性を評価する評価手段と、
を備えたことを特徴とするフレッシュコンクリートの圧送性能評価システム。
【請求項2】
前記縮径部は、最も広い断面と最も狭い断面との内空断面積の比が45%以上95%以下であり、かつ、最も広い断面の内径と当該縮径部の長さの比が25以下であることを特徴とする請求項1に記載のフレッシュコンクリートの圧送性能評価システム。
【請求項3】
前記縮径部と前記拡径部との間に、前記縮径部の最も内径が縮径した部分と同一の内径が連続する縮径連続部を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフレッシュコンクリートの圧送性能評価システム。
【請求項4】
前記検知管は、前記コンクリートポンプ車の近傍に取り付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレッシュコンクリートの圧送性能評価システム。
【請求項5】
前記検知管の水平位置よりも下方に前記センサを取り付ける、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレッシュコンクリートの圧送性能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレッシュコンクリートの圧送性能評価システムに関するものであり、詳しくは、コンクリートポンプ車から送出するフレッシュコンクリートの圧送性能を評価することにより、圧送経路の閉塞等を防止するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁上部工のように、コンクリートポンプ車から離れた場所でコンクリートを打設しなければならない工事では、コンクリートの打設位置まで輸送管を配設して、フレッシュコンクリートを圧送する必要がある。ここで、輸送管の延長距離が長い場合に、圧送するフレッシュコンクリートの品質によっては輸送管が閉塞するおそれがある。
【0003】
コンクリート構造物の構築において、コンクリートの打設中に生じる輸送管の閉塞は、構造物に不具合(未充填やコールドジョイント)を生じさせる危険性を高めるため、品質低下を招く大きな要因となる。また、急激な輸送管の閉塞に伴う事故が発生(輸送管が破裂)するおそれがある。また、閉塞した輸送管の復旧及び撤去には多大な労力と費用を要する。
【0004】
このような不都合に対応するため、輸送管を2系統配設することにより、いずれか一方の輸送管が閉塞した場合には、他方の輸送管に切り替えてフレッシュコンクリートを圧送しているのが現状である。
【0005】
また、フレッシュコンクリートを圧送する輸送管の閉塞を監視するための装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術は、輸送管の外壁側にアコースティックエミッションセンサを取り付け、圧送中のフレッシュコンクリートと輸送管の内壁との摩擦音を検出することにより、フレッシュコンクリートの材料が分離しているか否かを判断する装置である。
【0006】
具体的には、コンクリート材料分離判断手段により、アコースティックエミッションセンサが検出した摩擦音に基づいて、フレッシュコンクリートの材料が分離しているか否かを判断し、判断結果を監視結果出力手段に出力するようになっている。
【0007】
フレッシュコンクリートが良好な状態で、骨材がモルタルに覆われている場合には、輸送管内をフレッシュコンクリートが円滑に圧送され、フレッシュコンクリートと輸送管との摩擦音は小さい。一方、骨材とモルタルが分離すると、骨材が輸送管の内壁に衝突して摩擦力が高まり、輸送管の閉塞を招くおそれがあると判断することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−218183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に記載された技術は、コンクリートの材料分離(骨材とモルタルの分離)を判断する際に、閉塞が生じ易い箇所(例えば、ベント管と直管の接続部やフレキシブルホースと直管の接続部)に設けたセンサにより摩擦音を収集し、音量が大きな順でソートする。そして、管理者が、逐次閉塞トラブルが生じているか否かを調査し、閉塞トラブルが実際に発生していた場合には、フレッシュコンクリートの配合割合や使用材料を変更することにより、輸送管の経路をより適切なものとするなどの措置を取るとしている。
【0010】
しかし、このような輸送管の閉塞管理方法は現実的ではない。すなわち、特許文献1に記載された技術を用いたとしても、コンクリートの配合や圧送速度、圧送経路などのように、コンクリートを送出する際に輸送管との間に生ずる摩擦音に強く影響すると思われる要因への対処について工学的な判断を行うには不十分である。
【0011】
仮に、ベント管と直管の接続部やフレキシブルホースと直管の接続部など、ポンプ車から離れた位置における閉塞を検知できたとしても、既に圧送に不向きなコンクリート(閉塞を引き起こす可能性の極めて高いコンクリート)が輸送管に充填されており、検知後に圧送を再開することが極めて困難な状態となることが容易に推察される。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、コンクリートポンプ車から送出するフレッシュコンクリートの圧送性能を正確かつ適切に評価することにより、圧送経路の閉塞を未然に防止することが可能なフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明のフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムは、コンクリートポンプ車から送出するフレッシュコンクリートの圧送性能を評価するためのシステムであって、フレッシュコンクリートの圧送経路に配設した検知管と、検知管に取り付けた計測手段と、評価手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
検知管は、フレッシュコンクリートの圧送方向に沿って内径が徐々に縮径する縮径部と、当該縮径部のフレッシュコンクリートの圧送方向の下流側に、フレッシュコンクリートの圧送方向に沿って
内径が徐々に拡径する拡径部とを有する。
【0015】
計測手段は、検知管に取り付けられ、フレッシュコンクリート中に含まれる細骨材や粗骨材が、
検知管に接触する際に生じる力を、
加速度計を用いて計測するための手段である。
【0016】
評価手段は、計測手段により計測した
加速度を用いて、フレッシュコンクリートの圧送性能及び圧送経路における閉塞発生の可能性を評価するための手段である。
【0017】
上述した構成からなるフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムにおいて、
縮径部は、最も広い断面と最も狭い断面との内空断面積の比が45%以上95%以下であり、かつ、最も広い断面の内径と当該縮径部の長さの比が25以下であることが好ましい。
【0018】
上述した構成からなるフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムにおいて、
縮径部と拡径部との間に、縮径部の最も内径が縮径した部分と同一の内径が連続する縮径連続部を備えることが可能である。
【0019】
また、上述した構成からなるフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムにおいて、検知管は、コンクリートポンプ車の近傍に取り付けることが好ましい。
【0020】
また、上述した構成からなるフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムにおいて、検知管の水平位置よりも下方にセンサを取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムによれば、フレッシュコンクリートの圧送に負荷を与える負荷部と、当該負荷部と比較してフレッシュコンクリートに与える負荷が小さい低負荷部とを有する検知管を備えることにより、実際のフレッシュコンクリートの圧送経路において、圧送負荷の異なる箇所と同様の状態を短い区間で作り出すことができる。
【0022】
また、検知管を備えることにより、圧送経路の種類や組み合わせによらず、任意の箇所に圧送負荷の異なる状況を作り出すことができる。なお、圧送経路とは、コンクリートポンプ車のシリンダ、当該シリンダに連通接続された配管やブーム部、コンクリートポンプ車から離隔した場所までフレッシュコンクリートを輸送する輸送管等のことである。
【0023】
そして、検知管において発生する種々のデータの中から当該圧送システムを評価する上で適切な情報を用いて、圧送性能を評価することができるので、正確な評価を行うことができる。また、複数のデータを用いて評価を行うことにより、さらに評価の正確性を高めることができる。また、検知管における縮径部の諸元を規定することにより、より一層、正確な計測を行うことができる。
【0024】
また、コンクリートポンプ車の近傍に検知管を取り付けることにより、圧送の初期段階において、早期にコンクリートポンプ車から圧送されるフレッシュコンクリートの圧送性能を知ることができる。また、検知管の水平位置よりも下方にセンサを取り付けることにより、フレッシュコンクリートの圧送状態に関する情報を確実に検知することができる。
【0025】
上述したように、本発明に係るフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムを用いることにより、輸送管等からなる圧送経路の閉塞を未然に防止し、作業効率を高めることができるだけではなく、構造物の品質を高めることができる。また、圧送作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るフレッシュコンクリートの圧送性能評価システムを構成する機能手段のブロック図。
【
図2】フレッシュコンクリートの圧送経路を示す説明図。
【
図5】フレッシュコンクリートの配合及びフレッシュ性状の試験結果の説明図。
【
図6】検知管におけるフレッシュコンクリートの配合と加速度振幅のピーク値の関係を示すグラフ。
【
図7】テーパー管におけるフレッシュコンクリートの配合と加速度振幅のピーク値の関係を示すグラフ。
【
図8】検知管と水平管における加速度振幅の差に関する評価を示すグラフ。
【
図9】タンピング回数とフロー値の関係を示すグラフ。
【
図10】ベント管と水平管における加速度のピーク値に対する周波数の関係を示すグラフ。
【
図11】テーパー管と水平管における加速度のピーク値に対する周波数の関係を示すグラフ。
【
図12】検知管と水平管における加速度のピーク値に対する周波数の関係を示すグラフ。
【
図13】ベント管と水平管における加速度の差による時間経過の評価を示すグラフ。
【
図14】テーパー管と水平管における加速度の差による時間経過の評価を示すグラフ。
【
図15】検知管と水平管における加速度の差による時間経過の評価を示すグラフ。
【
図16】フレッシュコンクリートの配合及び圧送速度とシリンダの1ストローク当たりの電圧量との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係るフレッシュコンクリートの圧送性能評価システム(以下、圧送性能評価システムと略記する)の実施形態を説明する。
図1〜
図4は本発明の実施形態に係る圧送性能評価システムを説明するもので、
図1は圧送性能評価システムのブロック図、
図2はフレッシュコンクリートの圧送経路を示す説明図、
図3は検知管の構成を示す模式図、
図4は縮径部の形状を示す説明図である。
【0028】
また、
図5はフレッシュコンクリートの配合及びフレッシュ性状の試験結果の説明図、
図6は検知管におけるフレッシュコンクリートの配合と加速度振幅のピーク値の関係を示すグラフ、
図7はテーパー管におけるフレッシュコンクリートの配合と加速度振幅のピーク値の関係を示すグラフ、
図8は検知管と水平管における加速度振幅の差に関する評価を示すグラフ、
図9はタンピング回数とフロー値の関係を示すグラフ、
図10はベント管と水平管における加速度のピーク値に対する周波数の関係を示すグラフ、
図11はテーパー管と水平管における加速度のピーク値に対する周波数の関係を示すグラフ、
図12は検知管と水平管における加速度のピーク値に対する周波数の関係を示すグラフ、
図13はベント管と水平管における加速度の差による時間経過の評価を示すグラフ、
図14はテーパー管と水平管における加速度の差による時間経過の評価を示すグラフ、
図15は検知管と水平管における加速度の差による時間経過の評価を示すグラフ、
図16はフレッシュコンクリートの配合及び圧送速度とシリンダの1ストローク当たりの電圧量との関係を示す説明図である。
【0029】
<圧送性能評価システムの概要>
本発明の実施形態に係る圧送性能評価システム10は、
図1及び
図2に示すように、コンクリートポンプ車100から送出するフレッシュコンクリートの圧送性能を評価するためのシステムであって、フレッシュコンクリートの圧送経路に配設して、フレッシュコンクリートの圧送に負荷を与える負荷部と、当該負荷部と比較してフレッシュコンクリートの圧送に与える負荷が小さい低負荷部とを有する検知管120を備えている。
【0030】
フレッシュコンクリートの圧送経路とは、コンクリートポンプ車100のシリンダ110から打ち込み位置までの経路のことであり、コンクリートポンプ車100のシリンダ110、シリンダ110に連通接続された配管やブーム部(図示せず)、コンクリートポンプ車100から離隔した場所までフレッシュコンクリートを輸送する輸送管40等、種々の装置及び部材が圧送経路となる。
【0031】
また、フレッシュコンクリート中に含まれる細骨材(砂)や粗骨材(砂利)が、検知管120に接触する際に生じる力を計測する計測手段20と、計測手段20により計測した情報に基づいて、フレッシュコンクリートの圧送性能及び輸送管40等の圧送経路における閉塞発生の可能性を評価する評価手段30とを備えている。
【0032】
一般的な建築物の工事では、コンクリートポンプ車100から直接、フレッシュコンクリートを打ち込む場合が多く、コンクリートポンプ車100に装備されている配管やブーム部(図示せず)等の圧送経路における閉塞発生の可能性を評価する必要がある。この場合には、シリンダ110、配管やブーム部に検知管120を取り付ける。
【0033】
また、橋梁上部工のように、コンクリートポンプ車100から離れた場所でコンクリートを打設しなければならない工事では、コンクリートの打設位置まで輸送管40を配設して、フレッシュコンクリートを圧送する。この場合には、フレッシュコンクリートの圧送経路として、コンクリートポンプ車100からフレッシュコンクリートを送り出すためのシリンダ110と、シリンダ110に連通接続された輸送管40があり、このような圧送経路に検知管120を取り付ける。
【0034】
また、輸送管40の種類として、直管、ベント管、フレキシブル管等があり、フレッシュコンクリートの圧送経路は、水平、打ち上げ、打ち下げ、屈曲等のように、一定傾斜かつ直線的ではない。さらに、圧送するフレッシュコンクリートは、セメント、水、細骨材、粗骨材、その他の添加材等の配合割合に応じて、圧送経路における摩擦抵抗値等が異なる。
【0035】
本発明の実施形態に係る圧送性能評価システム10は、現場毎に多種多様な態様でコンクリートを打設しなければならないという実情に対応することができるシステムであり、検知管120を用いて、直管、ベント管、フレキシブル管等と同様の状態を作り出して、この検知管120において計測した計測情報を用いて、コンクリートポンプ車100から送出するフレッシュコンクリートの圧送性能を正確かつ適切に評価することにより、輸送管40等の圧送経路における閉塞を未然に防止することができる。
【0036】
<検知管>
検知管120は、フレッシュコンクリートの圧送に負荷を与える負荷部と、当該負荷部と比較してフレッシュコンクリートに与える負荷が小さい低負荷部とを有している。すなわち、検知管120は、
図3(a)〜(e)に示すように、フレッシュコンクリートの圧送方向に沿って、内径が徐々に縮径する縮径部121と、内径が徐々に拡径する拡径部123とからなり、拡径部123が低負荷部となり、縮径部121が負荷部となっている。
【0037】
また、縮径部121と拡径部123との間に、最も内径が縮径した部分と同一の内径が連続する縮径連続部122を備えていてもよいし(a)、縮径部121と拡径部123とが連続していてもよいし(b)、フレッシュコンクリートの圧送方向において、拡径部123の前側又は後側に、最も内径が拡径した部分と同一の内径が連続する拡径連続部124を備えていてもよいし(c、d)、フレッシュコンクリートの圧送方向において、拡径部123の前側及び後側に、最も内径が拡径した部分と同一の内径が連続する拡径連続部124を備えていてもよい(e)。
【0038】
このように、検知管の負荷部は、フレッシュコンクリートの圧送方向に向かって内径が徐々に縮径する縮径部であり、当該縮径部は、
図4に示すように、最も広い断面と最も狭い断面との内空断面積の比が45%以上95%以下であり、かつ、最も広い断面の内径と当該縮径部の長さの比が25以下であることが好ましい。
【0039】
<計測手段>
計測手段20は、振動計、加速度計、電気を発生するセンサ(例えば、発電素子や圧電素子等のように、振動に関わって電気を発生するセンサ)、変位計、ひずみ計、圧力計、流量計、速度計(変形や圧力に関わるセンサ)のうちの1種類、あるいは2種類以上を用いる。各センサは、フレッシュコンクリート中に含まれる細骨材や粗骨材が、輸送管40、コンクリートポンプ車100のシリンダ110、コンクリートポンプ車100に装備された配管やブーム部(図示せず)に接触する際に生じる力を計測するための装置であり、計測情報を評価手段30における評価に用いる。本実施形態では、特に、計測手段20を検知管120に取り付けるが、その他の箇所(圧送経路の適宜箇所)に取り付けることにより、さらに評価手段30における評価の精度を高めることができる。
【0040】
なお、変位計又はひずみ計による計測とは、例えば、輸送管40の周方向および軸方向における計測のことである。また、計測手段20により計測する情報は、フレッシュコンクリート中に含まれる細骨材や粗骨材が、輸送管40又はコンクリートポンプ車100のシリンダ110、配管、ブーム部に接触する際に生じる力に関するものである。また、計測手段20により計測した情報の評価に際しては、計測値そのものに加えて、時間的な変化や形状などの情報を用いることもある。
【0041】
<評価手段>
評価手段30は、計測手段20により計測した情報を取得して、各情報の種類に応じた評価を行うことにより、フレッシュコンクリートの圧送性能及び輸送管40等の圧送経路における閉塞発生の可能性を評価する。計測手段20は、上述した各センサのうちの少なくとも1種類あるいは2種類以上の組み合わせからなり、評価に用いる情報は、これらのセンサにより取得する波形、周波数、加速度、振幅、電流、電圧、抵抗、エネルギー、変位、ひずみ、圧力、流量、流速である。
【0042】
複数種類のセンサから得られる情報を組合せて計測することにより、計測精度や評価の高精度化を実現することができる。例えば、電圧値や加速度に加えて、輸送管40等の圧送経路の変位量を利用することにより、輸送管40等の圧送経路に対する圧送負荷やフレッシュコンクリートの圧送速度が判別可能となる。
【0043】
評価手段30は、パーソナルコンピュータやマイクロコンピュータやタブレット型の携帯端末及びこれにインストールしたアプリケーションプログラムにより構成することができる。また、パーソナルコンピュータやマイクロコンピュータには、付属機器として、キーボードやマウス等の入力手段50、ディスプレイ装置、プリンタ、アンプ及びスピーカ等の出力手段60を接続することができるので、指示信号の入力、評価データの出力を行うことができる。
【0044】
さらに、センサは使用時間、使用場所等に応じて出力する情報が変化することがある。したがって、評価手段30を構成するセンサの使用状況に応じて、適宜、キャリブレーションを実施して、情報の補正を行うことが好ましい。
【0045】
また、計測手段20を構成する各センサと評価手段30とは、電気ケーブルを用いて有線接続してもよいし、電波や赤外線及び中継機器を用いて無線接続してもよい。有線接続するか無線接続するかは、センサの取付位置と評価手段30との接続状態、すなわち、距離、遮蔽物の有無等に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
<検知管の配設位置>
検知管120の配設位置は、特に限定されるものではないが、
図2に示すように、コンクリートポンプ車100の近傍であることが好ましい。検知管120をコンクリートポンプ車100の近傍に取り付けることにより、圧送の初期段階において、早期にコンクリートポンプ車100から圧送されるフレッシュコンクリートの圧送性能を知ることができる。
【0047】
ここで、各センサを用いて精度の高い波形を得ようとした場合には、振動数(周波数)が低い領域の方がデータ量を少なくすることができ、情報処理としてのハンドリングが良くなる。そして、データ量を少なくすると、無線通信によりデータを遠隔収集することが可能となる。さらに、センサとしても周波数帯の低いものの方が手軽に入手できるという利点もある。
【0048】
<圧送性能の評価>
圧送ポンプ(シリンダ110)の稼働状態に応じて、シリンダ110や輸送管40等の圧送経路で圧送するフレッシュコンクリートに脈動が生じて、検知管120に取り付けたセンサの計測情報である波形、周波数、加速度、振幅、電流、電圧、抵抗、エネルギー、変位、ひずみ、圧力、流量、流速が変化する。また、フレッシュコンクリートの圧送負荷が異なる負荷部と低負荷部を有する検知管120に計測手段20を取り付けて、各種の情報を取得することにより、直管、ベント管、フレキシブル管等、種々の形状がある輸送管40等の圧送経路を模擬的に再現することができる。したがって、現場の状況に応じて、フレッシュコンクリートの圧送性能評価に必要な情報をリアルタイムで取得することができる。
【0049】
また、上述した複数種類のセンサから取得した情報を組み合わせることにより、リアルタイムで種々の演算を行い、フレッシュコンクリートの圧送速度を考慮して、フレッシュコンクリートの圧送性能を正確に評価することができる。
【0050】
上述したように、評価にはセンサの計測情報である波形、周波数、加速度、振幅、電流、電圧、抵抗、エネルギー、変位、ひずみ、圧力、流量、流速を用いる。例えば、フレッシュコンクリートの圧送速度が速くなると、輸送管40等の圧送経路内の圧送圧力が高くなるとともに、加速度の値も大きくなる傾向がある。さらに、閉塞が生じやすい配合のフレッシュコンクリートの場合に、加速度の形状は、閉塞が生じにくく順調に圧送されている配合と比較して乱れが多く、不規則な形状を示す傾向がある。
【0051】
また、フレッシュコンクリートの圧送速度が速くなると加速度や振幅が大きくなる傾向がある。さらに、閉塞が生じやすい配合のフレッシュコンクリートの場合には、加速度や振幅が、閉塞が生じにくく順調に圧送されている配合と比較して高くなる傾向がある。また、スランプが大きくなるに従って加速度や振幅が小さくなる傾向がある。
【0052】
また、直管部とベント管部で計測されたピーク値の差や比率を利用することにより(圧送負荷の異なる状況で得られたデータを比較することにより)、フレッシュコンクリートの圧送性能を評価することもできる。本実施形態では、検知管120を備えることにより、圧送経路における輸送管40等の種類や組み合わせによらず、任意の箇所に圧送負荷の異なる状況を作り出している。
【0053】
このように、波形、周波数、加速度、振幅、電流、電圧、抵抗、エネルギー、変位、ひずみ、圧力、流量、流速と、フレッシュコンクリートの圧送性能とには相関関係があるため、1種類のセンサから取得した情報、あるいは複数種類のセンサから取得した情報を組み合わせることにより、フレッシュコンクリートの圧送性能を正確かつ適切に評価することができる。
【0054】
<フレッシュコンクリートの圧送性能評価>
図5〜
図16を用いて、本実施形態に係る圧送性能評価システム10を用いたフレッシュコンクリートの圧送性能評価に関する試験結果について説明する。
図5〜
図9に検知管によるフレッシュコンクリート種類の違いの検出及び検知管と他の配管の性能差を示してある。また、
図10〜
図14に検知管の有効性及び閉塞管理の手法(時間経過の評価)を示してある。また、
図16に配合と圧送時の抵抗を電圧量に変換した電気的エネルギーの関係を示してある。
【0055】
図5〜
図16から明らかなように、本実施形態に係る圧送性能評価システム10を用いることにより、フレッシュコンクリートの圧送性能を正確に評価することができる。したがって、本実施形態に係る圧送性能評価システム10によれば、圧送経路の閉塞を未然に防止して、作業効率を高めることができる。さらに、フレッシュコンクリートの圧送性能を正確に評価しているので、当該フレッシュコンクリートを用いた構造物の品質を高めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 圧送性能評価システム
20 計測手段
30 評価手段
40 輸送管
50 入力手段
60 出力手段
100 コンクリートポンプ車
110 シリンダ
120 検知管
121 縮径部
122 縮径連続部
123 拡径部
124 拡径連続部