(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、杭体を構成する杭構成部材自体に複雑な形状で専用の鋼管用継手を設けて鋼管杭の端部同士を接続する必要があった。しかも、この専用の鋼管用継手に設けられる固定ピンを押圧して鋼管杭をかしめる際には、鋼管杭用継手とは別体で、かつ専用のかしめ治具が用いられる。そのため、複雑な形状の鋼管杭用継手自体やかしめ治具のコストや、鋼管杭用継手の加工コストがかかるという問題があった。
また、上述した特許文献1では、鋼管杭の鋼管を押圧してかしめるため、かしめ治具に極めて大きな押圧力が必要となってしまい、かしめ治具が大型化してコストが増大するとともに、施工にかかる手間も増えて工期がかかるという問題があった。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、杭構成部材に複雑な加工を施すことなく、容易に接続することが可能であり、施工にかかるコストや工期の低減を図ることができる杭構成部材の継手方法、杭体の構築方法、圧入機、及び爪部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭構成部材の継手方法は、杭体を構成する杭構成部材同士を、互いに重ねて接続する杭構成部材の継手方法であって、一方の前記杭構成部材に設けられた第1接続部と、他方の前記杭構成部材に設けられた第2接続部と、を重ねて配置する杭構成部材配置工程と、前記杭体の周面に対して押圧可能に設けられた押圧部によって、前記杭構成部材配置工程で重ねて配置された前記第1接続部及び前記第2接続部のうち少なくとも一方を押圧して塑性変形させることにより、前記杭構成部材同士を接続する継手工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、一方の杭構成部材に設けられた第1接続部と、他方の杭構成部材に設けられた第2接続部と、を重ね合わせて配置する。次に、杭体の周面に対して押圧可能に設けられた押圧部によって第1接続部及び第2接続部のうち少なくとも一方を押圧して塑性変形させることにより、第1接続部と第2接続部とが一体的に接続された状態となり、杭構成部材同士を連結させることができる。このように押圧部で押圧するだけの簡単な継手方法により杭構成部材同士を容易かつ効率的に接続することができるので、施工にかかるコストや工期の低減を図ることができる。
ここで、杭構成部材の第1接続部及び第2接続部は、複雑な形状とする必要がない。また、押圧部についても第1接続部及び第2接続部のうち少なくとも一方を押圧して塑性変形可能な押圧力をもたせた構造とすればよく、複雑な接続装置を用いる必要がないことから、コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明に係る杭構成部材の継手方法は、前記第1接続部に貫通穴または凹部が設けられ、前記杭構成部材配置工程の後において、前記杭体の周面を把持するチャック部を有する把持装置の該チャック部によって前記杭構成部材同士を把持し、前記押圧部を前記第2接続部における前記貫通穴または前記凹部に重なる位置に対向させて配置する押圧部位置決め工程を有し、前記継手工程において、前記押圧部によって前記第2接続部を前記第1接続部に向けて塑性変形させることにより、前記第2接続部の塑性変形部を前記貫通穴または前記凹部に挿入させて係合させ、前記杭構成部材同士を接続するようにしたことが好ましい。
【0011】
この場合には、貫通穴または凹部が形成された第1接続部を備える一方の杭構成部材と、第2接続部を備える他方の杭構成部材とを重ね合わせて配置する。次に、杭体の周面を把持するチャック部を有する把持装置のチャック部によって杭構成部材同士を把持し、押圧部を第2接続部における貫通穴または凹部に重なる位置に対向させて配置する。その後、押圧部によって第2接続部を第1接続部に向けて塑性変形させることにより、第2接続部の塑性変形部を貫通穴または凹部に挿入させて係合する。これにより、第1接続部と第2接続部とが一体的に接続された状態となり、杭構成部材同士を連結させることができる。
ここで、一方の杭構成部材の第1接続部に形成する貫通穴または凹部については、第2接続部に重ね合わせ可能な位置に形成すれば足り、複雑な形状とする必要がない。
【0012】
また、本発明に係る杭構成部材の継手方法は、前記杭構成部材を挟んだ前記押圧部と反対側に、前記杭体の周面に当接する反力壁を有する杭変形防止装置が設けられ、前記継手工程において、前記押圧部によって前記第1接続部及び前記第2接続部のうち少なくとも一方を押圧する際に、前記反力壁を前記杭体の周面に当接させることが好ましい。
【0013】
このような継手方法とすることで、押圧部によって第1接続部及び第2接続部のうち少なくとも一方を押圧して塑性変形させる際に、杭構成部材における押圧部による押圧側と反対側の周面に杭変形防止装置の反力壁が当接した状態で配置されているので、杭構成部材の塑性変形部を除く周囲の部分の変形を抑制することができる。
また、押圧部による押圧時における杭構成部材に生じる変形が抑えられるので、塑性変形部を所望の寸法、形状により確実に形成することができる。
【0014】
また、本発明に係る杭体の構築方法は、上述した杭構成部材の継手方法を使用し、前記杭体の周面を把持するチャック部を有する圧入機によって杭体を地盤に圧入して設置する杭体の構築方法であって、前記杭体を構成する一方の杭構成部材を前記チャック部により把持して地盤に圧入する圧入工程と、前記圧入工程で圧入された一方の杭構成部材に設けられた第1接続部に対して他方の杭構成部材に設けられた第2接続部を重ねて配置する配置工程と、前記圧入機に設けられた押圧部により、前記配置工程で重ねて配置された前記第1接続部及び前記第2接続部のうち少なくとも一方を押圧して塑性変形させることにより、前記杭構成部材同士を接続する継手工程と、を有することを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、圧入機のチャック部によって杭体を構成する一方の杭構成部材を把持して地盤に圧入し、圧入された一方の杭構成部材に対して他方の杭構成部材を重ねて配置する。次に、圧入機に設けられた押圧部により杭構成部材の一方を他方に向けて塑性変形させることにより、一方の杭構成部材を他方の杭構成部材に係合させて連結することができる。このように押圧部で押圧するだけの簡単な構築方法により杭構成部材同士を容易かつ効率的に接続して杭体を構築することができるので、施工にかかるコストや工期の低減を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る圧入機においては、杭体を把持して地盤に圧入させる圧入機であって、前記杭体の周面を把持可能なチャック部と、前記杭体の周面を押圧して該杭体を塑性変形させることが可能な押圧部と、を備えることを特徴としている。
【0017】
この場合には、圧入機に押圧部が設けられているので、押圧部に必要な押圧力として圧入機のチャック部に使用される把持力を利用できるため、別途専用の押圧部を備えた装置を設ける必要がなくなり、工期およびコストの低減を図ることができる。
【0018】
また、本発明に係る圧入機においては、前記チャック部は、前記杭体の周面に当接させるチャック爪を有し、前記押圧部は、前記チャック爪の前記杭体の周面と当接する当接面から出没可能に設けられていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、チャック爪に収容されている押圧部を杭体の周面のうち杭構成部材同士の接続部分に対向させた位置に配置させた後、押圧部をチャック爪の当接面から突出させ、チャック部で前記接続部分を含む杭体を把持する。これにより、当接面から突出した押圧部によって杭体の周面を押圧して杭体を塑性変形させることにより、杭構成部材同士が一体的に接続される。
この場合には、押圧部がチャック爪の内部に出没可能に収容されているため、押圧部に必要な押圧力として圧入機のチャック部に使用される把持力を利用できるため、別途専用の押圧部を備えた装置を設ける必要がなくなり、工期およびコストの低減を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る圧入機は、前記押圧部を前記杭体の周面の所定位置に位置決めさせる位置決め手段が設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、例えば貫通穴が形成された一方の杭構成部材の第1接続部の外周側に、他方の杭構成部材の第2接続部を重ね合わせて配置し、その第2接続部を押圧部によって塑性変形させて貫通穴に挿入させて係合する際に、押圧部を位置決め手段によって第2接続部における貫通穴に重なる位置に対向するように位置決めすることができる。つまり、押圧部が位置決め手段によって位置決めされるので、適宜な押圧位置によって杭体を塑性変形させることができる。
【0022】
また、本発明に係る爪部材は、杭体を把持して圧入させる圧入機における前記杭体の周面を把持可能なチャック部に設けられて、前記杭体の周面に当接される爪部材であって、前記杭体の周面に当接させる当接面を有し、前記当接面から出没可能に設けられ、前記杭体の周面を押圧して該杭体を塑性変形させることが可能な押圧部を備えることを特徴としている。
【0023】
この構成によれば、チャック爪に収容されている押圧部を杭体の周面のうち杭構成部材同士の接続部分に対向させた位置に配置させた後、押圧部をチャック爪の当接面から突出させ、チャック部で前記接続部分を含む杭体を把持する。これにより、当接面から突出した押圧部によって杭体の周面を押圧して杭体を塑性変形させることにより、杭構成部材同士が一体的に接続される。
この場合には、押圧部がチャック爪の内部に出没可能に収容されているため、押圧部に必要な押圧力として圧入機のチャック部に使用される把持力を利用できるため、別途専用の押圧部を備えた装置を設ける必要がなくなり、工期およびコストの低減を図ることができる。
【0024】
また、本発明に係る爪部材は、前記チャック部には、前記杭体の軸方向及び周方向に移動可能なチャックフレームが設けられ、前記チャックフレームに対して着脱可能に設けられていることが好ましい。
【0025】
この場合には、押圧部を備えた爪部材をチャック部のチャックフレームに対して着脱可能であることから、一般的に使用される圧入機の爪部材のみを押圧部を備えた爪部材に簡単に付け替えることが可能である。そのため、従来使用していた圧入機を利用して、上述したような押圧部による押圧によって杭体の接続部分を塑性変形させて杭構成部材同士を容易に接続することができ、特殊な圧入装置を設ける必要がない。
また、本発明では、杭径、杭厚等の杭体の条件に合った形状、かつ押圧部を備えた爪部材を選択してチャックフレームに装着すればよい利点がある。
【発明の効果】
【0026】
本発明の杭構成部材の継手方法、杭体の構築方法、圧入機、及び爪部材によれば、杭構成部材に複雑な加工を施すことなく、容易に接続することが可能であり、施工にかかるコストや工期の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態による杭体を示す概要図である。
【
図2】本発明の実施の形態による継手構造を示す側面図である。
【
図3】
図2に示す継手構造において、接続部で鋼管を分離した状態を示した側面図である。
【
図4】本実施の形態による継手方法において圧入工程を示す説明図である。
【
図5】
図4に示すI−I線断面図であって、継手方法において圧入工程における鋼管の継手方法を示す図である。
【
図6】
図5に示すII−II線断面図であって、継手方法において圧入工程における鋼管の継手方法を示す図である。
【
図7】
図6に示すチャック爪における押圧部の要部拡大図である。
【
図8】チャック爪を当接面側から見た正面図である。
【
図9】
図8に示すIII−III線矢視図であって、チャック爪の側面図である。
【
図10】
図8に示すIV−IV線矢視図であって、チャック爪を上方から見た図である。
【
図11】
図8に示すV−V線矢視図であって、チャック爪を下方から見た図である。
【
図12】チャック爪を反力サポート部側から見た背面図である。
【
図13】
図8に示すVI−VI線断面図であって、チャック爪の縦断面図である。
【
図14】
図8に示すVII−VII線断面図であって、チャック爪の水平断面図である。
【
図15】
図8に示すVIII−VIII線断面図であって、チャック爪の水平断面図である。
【
図16】押圧時において鋼管内に第1杭変形防止装置を配置した状態の継手方法を説明するための水平断面図である。
【
図17】本実施の形態による継手方法において配管工程を示す説明図であって、
図4の圧入工程に続く図である。
【
図18】本実施の形態による継手方法において配管工程を示す説明図であって、
図17の配管工程に続く図である。
【
図19】本実施の形態による継手方法において継手工程を示す説明図であって、
図18の配管工程に続く図である。
【
図20】
図19に示す継手工程において、押圧部を爪本体の当接面から突出させた状態を示す水平断面図であって、
図16に対応する図である。
【
図21】
図20に示すIX−IX線断面であって、押圧部を爪本体の当接面から突出させた状態を示す縦断面図である。
【
図22】
図21に示すチャック爪における押圧部の要部拡大図である。
【
図23】
図19に示す継手工程において、押圧部を進出させて下端継手部を押圧させた状態を示す水平断面図であって、
図20に対応する図である。
【
図24】
図23に示すX−X線断面であって、押圧部を進出させて下端継手部を押圧させた状態を示す縦断面図である。
【
図25】
図24に示すチャック爪における押圧部の要部拡大図である。
【
図26】継手方法において圧入工程における鋼管の継手方法を示す図である。
【
図27】第1変形例による継手構造において、接続部で鋼管を分離した状態を示した側面図であって、
図3に対応する図である。
【
図28】第2変形例による継手構造を示す図であって、
図27に対応する図である。
【
図29】第3変形例による第2杭変形防止装置を配置した状態の継手方法を説明するための水平断面図であって、
図16に対応する図である。
【
図30】他の実施の形態による継手方法を説明するための側面図である。
【
図31】
図30に示すXI−XI線矢視図であって、継手方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態による杭構成部材の継手方法、杭体の構築方法、圧入機、及び爪部材について、図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態による杭構成部材の継手方法および杭体の構築方法で用いる圧入機により構築される杭体100を示している。
図1に示すように、杭体100は、本実施の形態では鋼管杭であり、上端部100aを地上部に突出させるようにして、所定のピッチで複数本が地盤A内に配されている。各杭体100は、杭構成部材である鋼管101を、杭体100の軸線L100に沿う方向である軸線方向Pに複数連結して構成されている。鋼管101は、管状の本体部102と、本体部102の上端となる一端に溶着により接続され、外径が本体部102の内径と略等しい管状に形成された上端継手部103と、を有している。
【0030】
図2及び
図3に示すように、杭体100は、鋼管101の上端継手部103(第1接続部)に、当該鋼管101の上に配置される上方の鋼管101の下端継手部104(第2接続部)が外嵌され、杭体100の軸線方向Pに直交する方向となる径方向Q(
図7参照)に重ね合わされた接続部1により接続されている。
また、本実施の形態において、鋼管101の本体部102と上端継手部103とは、互いを溶接した溶接部によって接合されている。なお、
図1に示すように、最上部に位置する鋼管101は、その上方に鋼管101を配していないことから、本体部102の上端には上端継手部103は設けられていない。
ここで、本実施の形態では、必要に応じて、圧入された下方に位置する鋼管101を下方鋼管101Aとし、その下方鋼管101Aに接続される鋼管101を上方鋼管101Bとして以下説明する。
【0031】
上端継手部103には、周方向R(
図5参照)に沿って同一の間隔をあけて配置された複数の貫通穴10が形成されている。これら貫通穴10は、上端継手部103における外周面103aから内周面103bまで略同一径として円形に形成されている(
図7参照)。貫通穴10は、軸線方向Pに沿って間隔をあけた2箇所に配置されている。下方鋼管101Aの上端継手部103の貫通穴10は、上方鋼管101Bが外嵌した状態で、上方鋼管101Bの下端継手部104によって径方向Q(
図7参照)の外側から塞がれて重なり合っている。なお、下方鋼管101Aと上方鋼管101Bの周方向Rの相対的な位置が決められていない。そのため、双方の鋼管101A、101B同士における周方向Rの位置合わせが不要な接続構造となっている。
【0032】
次に、上述した杭体100を地盤Aに圧入する際に使用する圧入機200の一例を説明する。
図4に示すように、圧入機200は、本体部201と、本体部201に設けられて圧入時に生じる反力を受ける反力受けを把持する支持部202と、本体部201に対して軸線方向Pとなる杭体100の圧入方向Mに移動可能に設けられたチャックフレーム203(把持装置)と、を備える。支持部202は、互いに近接、離間することにより鋼管101の内周面に対して嵌合、離脱することが可能な基礎把持部202aを有する。本実施形態では、3つの鋼管101を反力受けとすることができるように、3つの基礎把持部202aを有する。
なお、
図4では既に設置済みの3つの鋼管101を反力受けとしているが、反力受けとして必要な本数が設置されていない場合には、鋼管101に相当する反力受けを予め設置して支持部202で把持する。
【0033】
支持部202は、本体部201に対して、圧入方向Mと交差する方向Nに移動可能に設けられている。本体部201には、支持部202を移動させる基礎移動駆動部(不図示)が設けられている。このため、反力受けとなる鋼管101を把持した状態で本体部201に対して図示しない基礎移動駆動部により支持部202を相対移動させることにより、本体部201を設置済みの鋼管101に対して移動させて新たな設置位置Sに鋼管101を圧入していくことが可能となる。なお、基礎把持部202aは圧入時に生じる反力を受けることができる程度に設ければよく、その数は任意に変更可能である。
【0034】
チャックフレーム203は、チャックフレーム203を圧入方向Mに移動させるメインシリンダ204と、圧入する鋼管101を把持するチャック部205と、を備えている。
図5及び
図6に示すように、チャック部205は、環状に複数(ここでは4つ)配されたチャック爪20(爪部材)と、チャック爪20を鋼管101に向かって進退させるチャックシリンダ208と、を備えている。圧入する鋼管101は、環状に配されるチャック爪20の配列の内部に挿入され、4つのチャック爪20によって略全周の範囲が把持される。
【0035】
チャックシリンダ208は、シリンダロッド208aを有しており、1つのチャック爪20において幅方向の中央で軸線方向Pに沿って間隔をあけた2箇所に設けられている。そして、チャックシリンダ208の駆動力によりチャック爪20を進出させることで、チャック20の当接面21aを鋼管101の外周面に所定の圧力で当接させて鋼管101を把持することが可能であるとともに、チャック爪20を後退させることで鋼管101を把持した状態を解除することが可能である。
【0036】
チャックフレーム203には、チャック部205を圧入する鋼管101の軸線L100回りに回転させるチャック回転駆動部(不図示)が設けられている。このため、チャック爪20により鋼管101を把持した状態で、図示しないチャック回転駆動部及びメインシリンダ204を駆動させれば、鋼管101を軸線L100回りに回転させながら、圧入方向Mに地盤Aに対して押し込み(すなわち回転圧入)または引き抜きを行うことが可能となっている。
4つのチャック爪20は、それぞれチャックシリンダ208に対して個別に着脱可能に設けられている。
【0037】
ここで、チャック爪20について、
図5〜
図15を用いて具体的に説明する。このうち
図8は、チャック爪20を当接面21a側から見た正面図である。
図9は、チャック爪20の側面図であり、
図8における紙面左側から見た図であるが、紙面右側から見た図も同じ側面をなしている。また、
図10はチャック爪20の上面図であり、
図11はチャック爪20の下面図、
図12はチャック爪20の背面図である。つまり、
図8〜
図12は、チャック爪20の6面図を示している。
【0038】
チャック爪20は、
図5及び
図6に示す圧入する鋼管101の外周面の曲率と対応する曲率に形成された当接面21aを有する爪本体21と、鋼管101(本実施の形態では上方鋼管101B)の外周面を押圧して塑性変形させることが可能な押圧部22と、押圧部22の反力を受ける反力サポート部23と、を備えている。
爪本体21は、当接面21aと同じ曲率で湾曲した板状に形成されている。爪本体21には、内周面を構成する当接面21aの反対側の外周面21bに反力サポート部23が固定されている。
【0039】
押圧部22は、爪本体21に内装されており、当接面21aにおいて幅方向の中央に配置され、軸線方向Pに沿って間隔をあけた2箇所に設けられている。一対の押圧部22は、それぞれ油圧配管251(
図12参照)に接続された押圧シリンダ25によって爪本体21の当接面21aから所定の突出長をもって出没可能に設けられている。押圧部22の突出寸法としては、押圧部22によって押圧され塑性変形した径方向Qの外側に位置する鋼管101が、内側の上端継手部103の貫通穴10に挿入可能な適宜な寸法に設定されている。各爪本体21に内装される一対の押圧部22は、それぞれ押圧シリンダ25によって単独または連動で駆動する。
【0040】
また、押圧部22は、
図7に示すように、その先端部22aの先端形状が鋼管の101の上端継手部103に形成される貫通穴10よりも小径となる円形に形成されている。ここで、押圧部22の外径は、鋼管101の厚さ、強度、チャックシリンダ208の駆動力等によって設定される。そして、一対の押圧部22、22同士の中心C2、C2同士の離間寸法は、鋼管101の上端継手部103に形成される貫通穴10、10の中心C1、C1同士の間隔に略一致している。
【0041】
反力サポート部23は、爪本体21の外周面21bに設けられ、押圧シリンダ25の基端部25a(
図13参照)が固定されている。反力サポート部23は、
図12における径方向Qの外側から見て矩形状に形成された箱形状をなし、四方の側面23aのそれぞれから爪本体21の外周面21bに向かうに従い漸次、側面23aから離れるように傾斜する支持板231が取り付けられている。反力サポート部23の内側には、天面23b側からチャックシリンダ208が装着されている。
【0042】
そして、爪本体21の当接面21aには、この当接面21aにおける外周縁側の位置に、チャック部205で鋼管101を把持する際に鋼管101の外周面に係止させるための複数の埋込み爪24が配設されている。埋込み爪24は、当接面21aよりも僅かに突出するように配されている。
【0043】
また、
図4に示す圧入機200には、押圧部22を杭体100の周面における軸線方向P及び周方向Rの所定位置に位置決めさせる位置決め手段(図示省略)が設けられている。この位置決め手段として、例えばセンサーを用いるものや、機械的な嵌合によるもの等を採用することができる。位置決め手段がセンサーの場合には、例えば予め鋼管101の所定位置に被検知部を備えておき、この被検知部を検出可能なセンサーを
図8に示す爪本体21に設けておく構成とすることができる。この場合、センサーと押圧部22との位置が一定となるので、センサーで前記被検知部を検出した位置でチャック爪20を停止させることで、押圧部22を鋼管101を挟んだ貫通穴10に対向する位置に位置決めすることができる。
また、位置決め手段が機械的な嵌合による場合には、例えば鋼管101とチャックフレーム203とを凹凸の嵌合により機械的に位置決めする構成がある。つまり、鋼管101の外周面に凸部(又は凹部)を設けておき、これに嵌合する凹部(又は凸部)をチャックフレーム203やチャック爪20に設ける構成とすることができる。
【0044】
図16には、鋼管101同士の接続時の状態を示す水平断面図であって、この接続時に使用される第1杭変形防止装置300が鋼管101内に配置された状態を示している。
第1杭変形防止装置300は、下方鋼管101Aの上端継手部103と上方鋼管101Bの下端継手部104とが重なる接続部1を挟んだ押圧部22と反対側(本実施の形態では鋼管101内)に、下方鋼管101Aの内面(上端継手部103の内周面103b)を面で押さえる保持サポート板303(反力壁)を有している。つまり、第1杭変形防止装置300は、支持本体301と、支持本体301に伸縮自在に設けられた複数(ここでは4つ)の保持ジャッキ302と、保持ジャッキ302の突出先端に設けられた前述の保持サポート板303と、を備えている。
【0045】
支持本体301は、軸線方向Pの一方から見た平面視で略正方形状に形成され、不図示の吊り部を有し、この吊り部にワイヤを係止させることで、クレーン等の揚重機械によって吊り下げ可能に設けられている。
保持ジャッキ302は、支持本体301の四隅の角部に配置され、径方向Qに伸縮自在に設けられている。
【0046】
保持サポート板303は、径方向Qの外側に向けて突出可能に設けられている。なお、
図16では、紙面の上下方向に配置される保持サポート板303、303は、上端継手部103の内周面103bに当接した状態を示しており、紙面の左右方向に配置される保持サポート板303、303は、上端継手部103の内周面103bに当接しない状態を示している。保持サポート板303には、圧入する鋼管101の内周面の曲率と対応する曲率に形成されたサポート面303aが形成されている。これにより、押圧部22による押圧時には、鋼管101の接続部1がチャック爪20の当接面21aと保持サポート板303のサポート面303aによって挟持されることになる。
なお、第1杭変形防止装置300の場合にも、押圧部22の位置決め手段と同様に、鋼管101内の所定の位置で固定するための位置決め手段を設けておくことが良い。この場合も、センサーを用いるものや、機械的に嵌合させるものを採用することができる。
【0047】
次に、上記のような圧入機200によって鋼管101同士を接続する継手方法について、鋼管101を接続して構成される杭体100の構築方法に含めて説明する。
図4は、既に複数の杭体100が地盤Aに設置された状態で、次の杭体100を設置する状態を示している。杭体100の地盤Aへの設置は、本実施の形態の杭体100の構築方法を構成する圧入工程S10と、配置工程S20と、継手工程S30とを実施することにより行われる。
【0048】
圧入工程S10では、まず、圧入機200により鋼管101(下方鋼管101A)を地盤Aに回転させながら圧入(回転圧入)する。
このような圧入機200により、
図4に示すように、下方鋼管101Aを圧入していく。そして、下方鋼管101Aの上端継手部103の直下部分をチャック部205で把持可能な位置まで下方鋼管101Aの圧入を完了したら、次工程として本実施の形態における継手方法による配置工程S20及び継手工程S30を実施する。
【0049】
配置工程S20は、前工程で圧入した下方鋼管101A(鋼管101)に対して、当該下方鋼管101Aに接続する上方鋼管101Bを、双方の継手部103、104を重ねて配置する杭構成部材配置工程S21と、杭構成部材配置工程S21の後において、押圧部22を接続部1における貫通穴10に重なる位置に対向させて配置する押圧部位置決め工程S22と、を有している。
【0050】
杭構成部材配置工程S21では、先ず圧入機200において本体部201に対してチャックフレーム203を上昇させることで、チャック部205を、圧入工程S10で圧入した下方鋼管101Aから上方に離間した位置まで移動させる。次に、
図17に示すように、図示しないクレーン等によって新たに接続する上方鋼管101Bを吊り込み、圧入機200のチャック爪20を、チャック部205に挿入した上方鋼管101Bに対して進出させることにより、上方鋼管101Bを把持する。
【0051】
次に、
図18に示すように、圧入機200において、本体部201に対してチャックフレーム203を下降させることにより、チャック部205で把持した上方鋼管101Bを下降させ、圧入工程S10で圧入した下方鋼管101Aの上端継手部103に上方鋼管101Bの下端継手部104を外嵌させる。
ここで、圧入機200を利用して、接続する上方鋼管101Bを把持することにより、既に圧入した下方鋼管101Aと、接続する上方鋼管101Bの軸線L100を一致させることができ、下方鋼管101Aの上端継手部103を上方鋼管101Bの下端継手部104に容易に嵌合させることができる。
【0052】
次に、押圧部位置決め工程S22を実施する。
押圧部位置決め工程S22では、
図5、
図6及び
図19に示すように、杭構成部材配置工程S21の後において、4つのチャック爪20とそれぞれに設けられる押圧部22を収容させた状態で、各押圧部22を上方鋼管101Bの下端継手部104における貫通穴10に重なる位置に対向させて配置する。このとき押圧部22は、周方向Rで90度ずつずらした4箇所の位置に押圧部22が位置決めされることになる。なお、爪本体21の当接面21aは、上方鋼管101Bの外周面から径方向Qの外側に離間した状態である。ここで、本実施の形態では、上端継手部103の外側に下端継手部104が外嵌しており、貫通穴10が下端継手部104によって覆われていて、接続部1の外周側から貫通穴10が見えない状態となっている。そのため、押圧部22の位置決めは、例えば検出センサ(上述した位置決め手段)を用いて、予め鋼管101の所定箇所に設けた被検出部を検出することで、
図7に示すように貫通穴10の中心C1と押圧部22の中心C2とを同軸線上に一致させることができる。
【0053】
次に、継手工程S30を実施する。
継手工程S30では、先ず、
図16に示すように、鋼管101A、101Bの接続部1を挟んだ押圧部22と反対側、すなわち下方鋼管101Aの内周側の所定位置に第1杭変形防止装置300を配置し、保持ジャッキ302を伸張させて4つの保持サポート板303、303、…を径方向Qの外側に向けて張り出して下方鋼管101Aの上端継手部103の内周面103bに当接させておく。このときの保持サポート板303の位置は、上述した押圧部位置決め工程S22で位置決めした押圧部22に鋼管101を介して対向する位置となり、下端継手部104の塑性変形部104Aが挿入される貫通穴10を保持サポート板303のサポート面303aで径方向Qの内側から塞いだ状態となる。
【0054】
次に、
図20〜
図22に示すように、チャック爪20の押圧シリンダ25を駆動させて4つの爪本体21に設けられる押圧部22のそれぞれを当接面21aから所定の突出量で突出させる。この状態で、
図23〜
図25に示すように、チャックシリンダ208を駆動させてチャック爪20を径方向Qの内側に向けて進出させることで、4つのチャック爪20で鋼管101を把持した状態となる。このときのチャック爪20の移動とともに当接面21aから突出した押圧部22も同時に鋼管101に向けて進出されるため、チャックシリンダ208による駆動力に応じた力で押圧部22により上方鋼管101Bの下端継手部104を押圧し、その下端継手部104における押圧された部分を上端継手部103に向けて貫通穴10に挿入させるように塑性変形させることができる。そして、上方鋼管101Bの下端継手部104に形成される塑性変形部104Aが、下方鋼管101Aの貫通穴10に挿入されて係合するので、鋼管101A、101B同士が接続されることになる。なお、
図20〜
図25では、第1杭変形防止装置300が省略されている。
ここで、チャックシリンダ208による駆動力は、押圧部22によって一定の力で下端継手部104を押し込むために、予め設定した力となるように管理することが望ましい。
なお、各押圧部22の突出量を一定させておくことで、押圧時の鋼管101が受ける押し込み力が周方向Rでバランスされ、鋼管101の変形を防ぐことができる。
【0055】
さらに、継手工程S30において、
図16に示すように、押圧部22によって下端継手部104を押圧して塑性変形させる際に、鋼管101における押圧部22による押圧側と反対側の周面、すなわち鋼管101の内周面に第1杭変形防止装置300の保持サポート板303が当接した状態で配置されているので、鋼管101の塑性変形部104Aを除く周囲の部分の変形を抑制することができる。
また、押圧部22による押圧時における杭体100(鋼管101)に生じる変形が抑えられるので、塑性変形部104Aを所望の寸法、形状により確実に形成することができる。
【0056】
ここまでの工程により上端継手部103に形成される複数の貫通穴10のうち、周方向Rの4箇所の貫通穴10に下端継手部104で押圧された塑性変形部104Aが係合される。そして、本実施の形態では、上端継手部103に形成されるすべての貫通穴10に対して塑性変形部104Aを係合させる。
具体的には、塑性変形部104Aを上記4箇所の貫通穴10に係合させた後、チャックシリンダ208を駆動させてチャック爪20を径方向Qの外側へ移動させて鋼管101に対する把持状態を解放する。そのため、押圧部22の鋼管101に対する押圧状態も解除される。次に、押圧部22を周方向Rの一方向に周回させて上述した押圧部位置決め工程S22を行い、塑性変形部104Aを係合させた貫通穴10に対して周方向Rに隣り合う貫通穴10に対応する位置に押圧部22を位置決めした後、再び継手工程S30を行う。このような押圧部位置決め工程S22と継手工程S30とを繰り返し実施することで、上端継手部103の周方向Rに形成される全ての貫通穴10に下端継手部104の塑性変形部104Aを係合させることで、一方の鋼管101と他方の鋼管101との接続が完了となる。
【0057】
次に、再び圧入工程S10を実施する。
すなわち、
図26に示すように、圧入機200において、鋼管101を把持しながらチャック部205を回転させ、また、チャックフレーム203を下方に移動させることで、鋼管101を回転させつつ圧入させる。そして、チャックフレーム203のストローク分だけ鋼管101を圧入させたら、一度チャック部205による鋼管101の把持を解除させる。次に、チャック部205を上方に移動させた後に再びチャック部205によって鋼管101を把持して回転させながら圧入していく。これを繰り返して、下方鋼管101Aの上端継手部103の直下部分がチャック部205で把持可能な位置となるまで下方鋼管101Aを圧入したら本圧入工程S10を完了とし、再び配置工程S20、及び継手工程S30を実施する。
このように、圧入工程S10、配置工程S20、及び継手工程S30を繰り返し、予定の本数の鋼管101を接続して圧入し、必要に応じて打ち下げ装置(図示省略)等を介して所定位置(計画レベル)まで圧入したら杭体100の1本あたりの全工程が完了し、所定の長さの杭体100が地盤Aに設置されることになる。
【0058】
次に、上述した本実施の形態の杭構成部材の継手方法、杭体100の構築方法、圧入機200、及びチャック爪20(爪部材)の作用について、図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、
図6に示すように、圧入された下方鋼管101Aに設けられた上端継手部103に、上方鋼管101Bの下端継手部104を外嵌させることで、双方の継手部103、104を重ね合わせて配置する。次に、
図20及び
図21に示すように、上方鋼管101Bの下端継手部104における貫通穴10に重なる部分に対向するように、チャック爪20に収容されている押圧部22を配置する。その後、
図23及び
図24に示すように、押圧部22をチャック爪20の当接面21aから突出させ、その押圧部22によって下端継手部104の周面を押圧し、下端継手部104における押圧された部分を杭体100の径方向Qで上端継手部103に向けて塑性変形させることにより、下端継手部104の塑性変形部104Aを貫通穴10に挿入させて係合する。これにより、上端継手部103と下端継手部104とが一体的に接続された状態となり、鋼管101A、101B同士を連結させることができる。
【0059】
このように本実施の形態では、押圧部22で押圧するだけの簡単な継手方法により杭構成部材をなす鋼管101A、101B同士を容易かつ効率的に接続することができるので、施工にかかるコストや工期の低減を図ることができる。
ここで、各鋼管101の上端継手部103及び下端継手部104は、複雑な形状とする必要がなく、また、押圧部22についても上端継手部103及び下端継手部104のうち少なくとも一方(本実施の形態では下端継手部104のみ)を押圧して塑性変形可能な押圧力をもたせた構造とすればよく、複雑な接続装置を用いる必要がないことから、コストを低減することができる。
また、一方の鋼管101の上端継手部103に形成する貫通穴10については、他方の鋼管101の下端継手部104に重ね合わせ可能な位置に形成すれば足り、複雑な形状とする必要がない。
【0060】
本実施の形態によれば、圧入機200におけるチャック爪20の爪本体21の内部に押圧部22が出没可能に収容されているので、押圧部22に必要な押圧力として圧入機200のチャック部205に使用されるチャックシリンダ208の把持力を利用できるため、別途専用の押圧部を備えた装置を設ける必要がなくなり、工期およびコストの低減を図ることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、例えば貫通穴10が形成された一方の鋼管101の上端継手部103の外周側に、他方の鋼管101の下端継手部104を重ね合わせて配置し、その下端継手部104を押圧部22によって塑性変形させて貫通穴10に挿入させて係合する際に、押圧部22を位置決め手段によって下端継手部104における貫通穴10に重なる位置に対向するように位置決めすることができる。つまり、押圧部22が位置決め手段によって位置決めされるので、適宜な押圧位置によって杭体100を塑性変形させることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、押圧部22を備えたチャック爪20をチャック部205のチャックフレーム203に対して着脱可能であることから、一般的に使用される圧入機200のチャック爪20のみを押圧部22を備えたチャック爪20に簡単に付け替えることで実現可能である。そのため、従来使用していた圧入機を利用して、上述したような押圧部22による押圧によって杭体100の接続部分を塑性変形させて鋼管101、101同士を容易に接続することができ、特殊な圧入装置を設ける必要がない。
また、本実施の形態では、杭径、杭厚等の杭体の条件に合った形状、かつ押圧部22を備えたチャック爪20を選択してチャックフレーム203に装着すればよい利点がある。
【0063】
以上、本発明による杭構成部材の継手方法、杭体の構築方法、圧入機、及び爪部材の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0064】
例えば、本実施の形態では、接続部1において、鋼管101の外周側から押圧部22で押圧する方法としているが、鋼管101の内周側から押圧部22で押圧する方法とすることも可能である。また、貫通穴10が形成される部位として、本実施の形態では圧入した下方鋼管101Aの上端継手部103としているが、これに限定されず、上方鋼管101Bの下端継手部104に貫通穴10を設けるようにしてもよい。この場合、押圧部22を備えた装置を鋼管101の内側に配置し、押圧部22を径方向Qの外側に向けて進出させることで内側の上端継手部103を押圧して外側に凸となるように塑性変形させ、その塑性変形部を外側の下端継手部104の貫通穴10に挿入させて係合させることができ、上述した実施の形態と同様に鋼管101、101同士を接続することができる。
【0065】
また、上端継手部103が下方鋼管101Aに設けられ、この上端継手部103が上方鋼管101Bの下端継手部104の内側に挿入されて接続するものとしたが、下端継手部104が下方鋼管101Aの上端継手部103の内側に挿入して接続するものとしても良い。さらに、上端継手部103は、本体部102よりも小径であることに限定されず、大径にすることも可能である。
そして、鋼管101の構成についても、上述した実施の形態に限定されることはない。例えば、本実施の形態において、上端継手部103が鋼管101の本体部102に溶接部により接合された構成となっているが、
図27に示す第1変形例による杭体100Aのように、本体部102の上端部分をプレス加工により縮径して形成した縮径筒105を上端継手部とすることも可能である。つまり、
図27に示すように、下方鋼管101Aは、本体部102と、本体部102よりも小径かつ筒状の縮径筒105と、が段差部105aを介して連設されており、縮径筒105には複数の貫通穴10が形成されている。
【0066】
さらに、鋼管101の内周側から押圧部22で押圧する場合には、第1杭変形防止装置300の反力壁をなす保持サポート板303に押圧シリンダとともに押圧部22を内装する構成とすることも可能である。この場合、押圧する際には、押圧部22を保持サポート板303のサポート面303aから突出させた後に、保持ジャッキ302を駆動させることで、保持サポート板303とともに押圧部22を鋼管101側へ進出させることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、下方鋼管101Aの上端継手部103に複数の貫通穴10を形成し、それら貫通穴10に上方鋼管101Bの下端継手部104の塑性変形部104Aを係合させる継手方法を一例としているが、貫通穴10を設けることに制限されるものではなく、この貫通穴10を設けない構成による継手方法を採用するようにしてもよい。
つまり、本実施の形態では、互いに重ねて配置した鋼管101A、101Bの一方(外周側)の下端継手部104のみを押圧により塑性変形させているが、重ねて配置した内周側と外周側の両方の鋼管101A、101Bを外周側又は内周側から押圧部で同時に押圧して塑性変形させることで、双方の鋼管101A、101B同士が重なって係合した塑性変形部を形成することができる。この場合、押圧部で塑性変形させる鋼管101の厚さが互いに接続される上端継手部103と下端継手部104の厚さとなるため、大きな押し付け力を確保する必要がある。
【0068】
さらに、上述した実施の形態では、継手工程S30の手順として、先に押圧部22を爪本体21の当接面21aから突出させ、その状態でチャックシリンダ208を駆動させてチャック爪20を鋼管101に向けて進出させる方法としているが、このような手順に限定されることはない。例えば、先にチャックシリンダ208を駆動させてチャック爪20で鋼管101を把持した状態、すなわち当接面21aを鋼管101の周面に当接させてから、押圧シリンダ25を駆動して押圧部22を突出させて下端継手部104を押圧して塑性変形させるようにしてもよい。この場合、押圧シリンダ25の駆動力が押圧部22の押し込み力となるので、上述した実施の形態のようにチャックシリンダ208の駆動力を押し込み力にする場合の対象とする鋼管101の厚さよりも薄い鋼管を使用する場合等に適している。
【0069】
さらにまた、本実施の形態では、押圧部22が爪本体21に一体的に内装された構成であって、チャック爪20の把持力を利用して押圧部22の押圧力として利用する構成となっているが、これに限定されず、押圧部22と爪本体21とが別体で設けられていても良い。さらには、押圧部22が圧入機200に設けられていないものであってもよい、この場合には、押圧部22の押圧力は、チャック爪20の把持力とは別で設ける必要があるが、押圧部によって鋼管101に塑性変形を形成する方法であることには変わりはない。
【0070】
また、本実施の形態では、上端継手部103に形成される貫通穴10のすべてに下端継手部104の塑性変形部104Aを挿入させているが、必ずしも全ての貫通穴10を使って係合させることはなく、接続強度が確保できる場合には、一部の貫通穴10に対する塑性変形部104Aの係合を省略することも可能である。例えば、本実施の形態のように貫通穴10が軸線方向P(上下方向)に沿って2つ配列される場合には、周方向Rに沿って上下交互に(千鳥状に)貫通穴10の係合を行うようにしてもよい。
【0071】
また、貫通穴10は、円形の貫通孔として説明したがこれに限るものではない。例えば、矩形の穴など異なる形状としても良い。また、貫通穴10として、貫通していない凹部であっても良い。要は、押圧部22側に開口する凹部であれば良く、必ずしも鋼管101の厚さ方向に貫通した構成であることに制限されることはない。そして、貫通穴10の構成は、上端継手部103の周方向Rに所定のピッチで軸線方向Pに二列に配されているものとしたが、軸線方向Pに一列でも三列以上に配されていても良いし、周方向Rのピッチも適宜変更することが可能である。
【0072】
また、
図28に示す第2変形例による杭体100Bは、上述した
図27のプレス加工により縮径筒105を形成したものであって、互いに周方向Rに位置を異なるように交互に(千鳥状に)貫通穴10を配置したものである。この場合には、貫通穴10が斜めにずれているため、杭体100Bに作用する軸線方向Pのせん断力が貫通穴10の係合部分に作用しにくい構成となるという効果を奏する。
なお、本第2変形例のように千鳥状に貫通穴10を配置する場合においても、プレス加工された縮径筒105に限らず、上端継手部が鋼管101の本体部102に溶接部により接合された継手部に適用することができる。
【0073】
さらに、第1杭変形防止装置300の構成についても本実施の形態のように径方向Qに伸縮する保持ジャッキ302を備えた構成であることに限定されることはない。例えば、
図29に示す第3変形例の第2杭変形防止装置300Aは、鋼管101の内周側に配置され、周方向Rに一定の間隔をあけて設けられる4つの保持サポート板303を備えている。
これら保持サポート板303は、鋼管101に略同軸に設けられる環状支持部306の外周面306aに固定されている。環状支持部306は、周方向Rに二つに分割された略半リング状の第1リング306Aと第2リング306Bを有し、第1リング306A及び第2リング306Bが略環状となるように連結部(第1連結部307Aと第2連結部307B)により連結されている。第1連結部307Aは、軸線方向Pを回転軸として第1リング306A及び第2リング306Bのそれぞれの一端部同士を回転可能に支持するヒンジ部である。第2連結部307Bは、第1リング306A及び第2リング306Bのそれぞれの他端部同士を連結する拡張シリンダである。つまり、環状支持部306は、第2連結部307Bの駆動により拡縮する構成となっている。そのため、保持サポート板303を下方鋼管101Aの上端継手部103の内周面103bに当接させる際には、所定位置で第2連結部307Bのシリンダを伸張させることで、環状支持部306が拡径されて4つの保持サポート板303を上端継手部103の内周面103bに当接させることができる。
【0074】
さらにまた、本実施の形態では、圧入する杭体100を圧入機200を使用した杭構成部材の継手方法の適用例として説明したが、このような継手方法であることに限定されることはない。
例えば、
図30に示す他の実施の形態による杭構成部材の継手方法では、杭搬送装置400(例えばパイルランナー:技研製作所社製)に押圧部40(
図31参照)を備え、杭体100を横向きにして一方向に連続して配列された複数の既設杭Bの上端部に沿って移動可能な杭体100の搬送装置である。ここで、使用する鋼管101は、上述の実施の形態と同様のものとする。
【0075】
杭搬送装置400は、既設杭B上に沿って移動自在に設けられた走行装置401と、走行装置401に支持され軸線方向Pを横向きにして配置される鋼管101を外周側から把持可能な把持装置402と、を備えている。走行装置401は、把持装置402に対して走行方向の前後それぞれに配置されている。走行装置401は、駆動ローラ(不図示)を備えた駆動モータ403と、上面視で既設杭Bを杭搬送装置400の移動方向に直交する方向の両側から挟持した状態で支持し、複数の押えローラ405を有する側方ガイド404と、を備えている。側方ガイド404は、前記駆動ローラの駆動に伴って既設杭Bの側面を押えローラ405が転動することで、既成杭Bを挟持した状態を維持したまま移動する。
【0076】
把持装置402は、内側に鋼管101を挿入可能な筒状の把持フレーム406と、把持フレーム406の内周側において周方向に複数(ここでは4つ)配置され鋼管101を把持するチャック爪407と、を備えている。チャック爪407は、鋼管101に向かって進退させるチャックシリンダ(図示省略)と、を備えている。これにより把持される鋼管101は、周方向に配されるチャック爪407の配列の内部に挿入され、4つのチャック爪407によって略全周の範囲が把持される。そして、チャック爪407には、押圧部40が押圧シリンダ(図示省略)とともに内装されている。
【0077】
このような杭搬送装置400を使用した継手方法について説明する。
先ず、杭構成部材配置工程において、把持装置402の把持フレーム406の内側に、軸線方向Pを横向きにした一方の鋼管101Aと他方の鋼管101Bとを接続部1で重ねて配置する。次いで、継手工程において、杭体100の周面に対して押圧可能に設けられた押圧部40によって他方の鋼管101の下端継手部104を押圧して塑性変形させ、その塑性変形部を一方の鋼管101の上端継手部103に形成される貫通穴10に挿入させて係合させることにより、鋼管101、101同士を接続する。なお、詳細な継手方法に関しては、上述した実施の形態と同様のため、ここでは省略する。
【0078】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。