(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明者らは、ポリマー型の撥水成分として、長鎖アルキル基を側鎖に持つビニル系単量体を主体とする重合物を乳化し、得られた撥水剤により撥水加工処理した紙が、高温環境に長時間保管しても撥水度が低下しにくい点に着目し、本発明に到達した。本発明の紙用撥水剤は、撥水性に優れるため、例えば、低い処理量でも、高い撥水性を得ることができる。このため、例えば、印刷工程時の印刷面の汚れ改善と耐熱撥水性を両立できる。
【0013】
前記長鎖アルキル基を有するビニル系単量体の構成割合は、例えば、前記ポリマーを構成する単量体単位の全量に対して80〜100重量%または90〜100重量%である。
【0014】
前記長鎖アルキル基を有するビニル系単量体は、例えば、アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方を含む。前記アクリレートおよびメタクリレートは、前記ビニル系単量体の主要成分であることが好ましい。なお、前記「主要成分」は、前記アクリレートおよびメタクリレートが、前記ビニル系単量体の全量に対して、例えば50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、または90重量%以上であることをいう。
【0015】
本発明の紙の製造方法は、例えば、前記撥水加工処理後の表面に印刷をしても良い。
【0016】
本発明の紙の製造方法は、例えば、前記紙が、板紙であっても良い。
【0017】
[1.紙用撥水剤]
つぎに、本発明の紙用撥水剤の成分等の例について説明する。
【0018】
(1) 撥水ポリマー
本発明の紙用撥水剤は、前述のとおり、長鎖アルキル基を有するビニル系単量体を重合成分として含み、かつ、前記長鎖アルキル基を有するビニル系単量体のアルキル基の炭素数が14以上であるポリマー(以下「撥水ポリマー」という場合がある。)を含有することを特徴とする。前記ビニル単量体は、前記撥水ポリマーの主要重合成分であることが好ましい。本発明において、ポリマーの「重合成分」は、前記ポリマーの単量体単位であって、「主要重合成分」は、前記ポリマーを構成する単量体単位の全量に対して、例えば、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、または90重量%以上である単量体単位をいう。前記長鎖アルキル基を有するビニル系単量体としては、例えば、下記化学式(1)または(2)で表されるビニル系単量体が挙げられる。
【0021】
前記化学式(1)および(2)中、Xは、HまたはCH
3である。また、R
1およびR
2は、それぞれ、炭素数14〜24の直鎖または分枝アルキル基であり、炭素数14〜24の直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0022】
前記化学式(1)において、X=Hであり、R
1がC
18H
37(直鎖、ステアリル基)であるモノマーは、ステアリルアクリレートを示す。
【0023】
前記化学式(1)において、X=CH
3であり、R
1がC
18H
37(直鎖、ステアリル基)であるモノマーは、ステアリルメタクリレートを示す。
【0024】
前記化学式(2)において、X=Hであり、R
2がC
15H
31(直鎖、ペンタデシル基)であるモノマーは、パルミチン酸ビニルを示す。
【0025】
前記ビニル系単量体が配合されていない場合、または、前記ビニル系単量体のアルキル基の炭素数が14より短い場合は、ポリマーを使用した撥水剤の撥水性が低くなる。前記ビニル系単量体のアルキル基の炭素数の上限値は、特に限定されないが、例えば、24以下である。また、前記ビニル系単量体のアルキル基の炭素数は、14〜22がより好ましい。
【0026】
本発明の紙用撥水剤において、前記撥水ポリマーは、前記長鎖アルキル基を有するビニル系単量体(アルキル基の炭素数が14以上)のみからなるホモポリマーでも良いし、他のモノマーとのコポリマー(共重合体)でも良い。コポリマーの場合は、ブロック共重合体でもランダム共重合体でも良い。また、前記他のモノマーは、特に限定されない。前記長鎖アルキル基を有するビニル系単量体の構成割合は、前述のとおり、前記撥水ポリマーを構成する単量体単位の全量に対して80〜100重量%または90〜100重量%であることが、撥水性の観点から好ましい。
【0027】
また、前記撥水ポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の重合法により製造(合成)できる。
【0028】
(2)他の成分
本発明の紙用撥水剤は、前記撥水ポリマー以外の他の成分を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記他の成分は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。
【0029】
前記他の成分は、例えば、水を含んでいても良い。本発明の紙用撥水剤は、例えば、前記撥水ポリマーが水中に分散(乳化)した状態であっても良い。前記水の含有率は、特に限定されないが、本発明の紙用撥水剤の全重量に対し、例えば、50重量%以上であり、例えば、80重量%以下である。
【0030】
前記他の成分は、例えば、パラフィン(パラフィンワックス)を含んでいても良い。パラフィンを配合することで、例えば、乳化安定性がさらに向上する。前記パラフィン(パラフィンワックス)としては、特に限定されないが、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、酸化パラフィン等が挙げられる。また、前記パラフィン(パラフィンワックス)に加え、またはこれに代えて、他のワックスを用いても良い。前記他のワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックスに代表される天然ワックスや、牛脂硬化油、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の長鎖アルキルエステルなどが挙げられる。これらのワックスは、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。前記ワックスの使用量は、特に限定されないが、前記撥水ポリマーと前記ワックスとの合計重量に対し、前記撥水ポリマーの重量が、例えば、30重量%以上、または50重量%以上であり、例えば、100重量%以下、または90重量%以下である。
【0031】
前記他の成分は、例えば、石油樹脂を含んでいても良い。石油樹脂を含むことで、例えば、紙用撥水剤の撥水性および乳化安定性がさらに向上する。本発明において、前記石油樹脂は、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、あるいはこれらの混合系石油樹脂およびこれらの樹脂成分をマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の二塩基酸等でアニオン変性した樹脂が挙げられる。脂肪族系石油樹脂としては、ブテン、イソブテン、ペンテン、ペンタジエン、イソプロピレン等から得られる石油樹脂が挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、クマロン−インデン等から得られる石油樹脂が挙げられる。脂環式系石油樹脂としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のモノマーから得られる石油樹脂が挙げられる。また、本発明において、前記石油樹脂としては、他に、ロジン系樹脂(ガムロジン、ロジンエステル、ロジン誘導体)類、テルペン系樹脂等が挙げられる。前記ロジン系樹脂類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジン等のロジンおよびこれらをマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の二塩基酸でアニオン変性した樹脂や、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル等が挙げられる。前記テルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂や、α−ピネン、β−ピネン等のテルペン類とスチレン等の芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂等が挙げられる。これらの石油樹脂は、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。前記石油樹脂の使用量は、特に限定されないが、前記撥水ポリマーと前記ワックスと前記石油樹脂との合計重量に対し、前記石油樹脂の重量が、例えば、50重量%以上、または60重量%以上であり、例えば、85重量%以下、または80重量%以下である。
【0032】
前記他の成分は、例えば、脂肪酸を含んでいても良い。脂肪酸を含むことで、例えば、前記脂肪酸の塩が乳化剤として働き、乳化安定性の向上に寄与するという効果が得られる。脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。前記脂肪酸の使用量は、特に限定されないが、前記撥水ポリマーの重量に対し、例えば、0重量%以上、または5重量%以上であり、例えば、25重量%以下、または15重量%以下である。
【0033】
前記他の成分は、例えば、乳化剤を含んでいても良い。乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤が挙げられ、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)ステアリルエーテル、POEオレイルエーテル等のPOEアルキルエーテル型や、POEモノステアレート、POEソルビタンモノラウレート等のPOE脂肪酸エステル型等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としてはカルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、リン酸エステル型等が挙げられる。前記乳化剤の使用量は、特に限定されないが、前記撥水ポリマーの重量に対し、例えば、0重量%以上であり、または15重量%以上であり、例えば、60重量%以下であり、45重量%以下である。
【0034】
前記他の成分は、例えば、塩基を含んでいても良い。塩基を含むことで、例えば、前記塩基が前記脂肪酸との塩を形成し乳化剤として働くという効果が得られる。前記塩基としては、無機塩基でも有機塩基でも良く、1種類のみ用いても複数種類併用しても良い。前記無機塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。前記有機塩基としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アミノアルコール等が挙げられる。
【0035】
本発明の紙用撥水剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、前記各成分を全て混合して乳化させることで製造できる。
【0036】
[2.撥水加工処理をした紙]
本発明の紙の製造方法は、前述のとおり、紙の表面に、前記本発明の紙用撥水剤により撥水加工処理することを特徴とする。これによって、前記本発明の紙用撥水剤により表面に撥水加工処理をした、本発明の紙を製造できる。また、本発明の紙の製造方法は、前述のとおり、例えば、前記撥水加工処理後の表面に印刷をしても良い。これによって、さらに、前記撥水加工処理後の表面に印刷をした紙を製造できる。
【0037】
また、本発明において、「紙」は、前述のとおり、板紙であっても良い。本発明において、「板紙」は、厚手の紙をいう。前記厚手の紙は、例えば、複数枚の紙が積層されて形成されている紙であっても良い。本発明において、「紙」は、特に限定されないが、例えば、包装紙、新聞紙、書籍・雑誌、コピー用紙等が挙げられる。本発明において、「板紙」は、特に限定されないが、例えば、段ボール、紙箱・紙容器、建材用原紙等が挙げられる。
【0038】
本発明の紙用撥水剤の用途は、特に限定されず、どのような紙に使用しても良い。しかしながら、本発明の紙用撥水剤によれば、前述のとおり、撥水性の高さとインク汚染性の低さとの両立が可能である。したがって、本発明の紙用撥水剤は、特に、表面に印刷が施される紙の、印刷前の撥水加工処理用に適している。
【0039】
撥水加工処理の方法は、特に限定されないが、例えば、紙または板紙の表面に本発明の紙用撥水剤を塗付し、乾燥させれば良い。前記紙または板紙の表面に対する本発明の紙用撥水剤の塗付量は、特に限定されないが、例えば、紙用撥水剤中の固形分の重量に換算して、0.05g/m
2以上、または0.2g/m
2以上であり、例えば、3g/m
2以下、または1.5g/m
2以下である。なお、本発明の紙用撥水剤中の前記「固形分」は、例えば、本発明の紙用撥水剤から水を除いたすべての成分をいう。乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、80〜160℃、または100〜140℃であり、乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、10秒〜10分間、または30秒〜5分間である。また、印刷方法は、特に限定されず、例えば、一般的なフレキソ印刷、オフセット印刷またはグラビア印刷等で良いが、フレキソ印刷が特に好ましい。
【実施例】
【0040】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0041】
1.撥水剤の製造方法
(1)撥水ポリマーの重合方法(溶液重合)
・合成例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、ベヘニルアクリレート 100重量部、トルエン 100重量部を仕込んだ。反応系内の酸素を窒素で十分に置換し、次いで、前記混合物を70℃まで昇温した後、反応容器に少量のトルエンに溶解させたラジカル重合開始剤AIBN 0.3重量部を投入した。次いで75〜80℃の温度範囲で8時間重合反応を進行させた。反応終了後、室温まで冷却し、撥水ポリマーであるポリマーAを得た。
【0042】
・合成例2〜10
使用するモノマーを、下記表1に示すモノマー種類・比率に変更した以外は合成例1と同様の方法で調製し、重合物として、撥水ポリマーであるポリマーB〜Jをそれぞれ得た。
【0043】
(2)ポリマーの分子量測定
合成例1〜10で得られたポリマーA〜Jについて、重量平均分子量はウォーターズ社製の分析モジュールWaters e2695、検出器Waters 2414、データ処理Empower2 ソフトウェア(商品名)を用いて測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
(3)撥水剤の製造方法
・実施例1
加熱によって溶剤成分を除去した前記ポリマーAを9重量部、パラフィンワックス(商品名「パーバン1320」、エクソンモービル有限会社製)2重量部、石油樹脂(商品名「クイントンD−200」、日本ゼオン株式会社製13重量部、商品名「ハリタック4740」、ハリマ化成株式会社製6重量部)19重量部、混合脂肪酸(商品名「糠脂肪酸」、築野食品工業株式会社製)0.6部、乳化剤(商品名「ブラウノンSR−706」POEステアリルエーテル(EO=6モル)、青木油脂工業株式会社製)2.0部、48%水酸化カリウム水溶液1.3重量部、トリエタノールアミン1.3重量部を混合して90〜95℃に加温し均一に混合した。次に、あらかじめ沸騰させた温水64.8重量部を3g/minの流速で徐々に加えて転相乳化を20分間行なった後、室温まで冷却し、撥水剤(撥水剤組成物)を得た。
【0046】
・実施例2〜9
前記ポリマーAに代えて前記ポリマーB〜Hをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の方法で乳化し撥水剤組成物を得た。
【0047】
・実施例10
ポリマーAとパラフィンワックスを使用しない代わりに、ポリマーCを11重量部使用した以外は、実施例1と同様の方法で乳化し撥水剤組成物を得た。
【0048】
・比較例1
ポリマーを使用せず、パラフィンワックスを11重量部使用した以外は、実施例1と同様の方法で乳化し撥水剤組成物を得た。
【0049】
・比較例2
前記ポリマーAに代えて前記ポリマーJを用いた以外は、実施例1と同様の方法で乳化し撥水剤組成物を得た。
【0050】
・実施例11〜13
ポリマーDおよびパラフィンの配合量を変更した以外は、実施例4と同様の方法で乳化し撥水剤組成物を得た。
【0051】
・実施例14〜15
ポリマーD、パラフィンおよび石油樹脂の配合量を変更した以外は、実施例4と同様の方法で乳化し撥水剤組成物を得た。
【0052】
2.インク汚染性評価
(1)撥水剤を処理した試験片の作製方法
撥水剤処理量が0.2g/m
2(=ライナー単位面積当たりの撥水剤固形分の重量)となるように、撥水剤を坪量280g/m
2のライナー(段ボール)にガラス棒で塗工した後、循環乾燥器にて120℃で1分間乾燥し撥水ライナー(本発明の紙)を得た。
【0053】
(2)インク汚染性の評価方法
上記撥水処理試験片に黒色の水性フレキソインキ(商品名「FK−Flemio DF−260 黒」、サカタインクス株式会社製)の87.5%水溶液をマイヤーバーNo.12で塗工し、10秒後のインク塗工面に白色塗工紙を貼り合せ5kgの荷重で圧着し、試験片から剥がしたときの白色塗工紙面のインク汚れを目視で確認した。評価結果は、下記のとおり、○△×の三段階評価とした。
○:撥水加工処理していない試験片でのインク汚れ状態と同等(インク汚れが、ほとんどない)
△:撥水加工処理していない試験片でのインク汚れ状態よりも汚れている
×:撥水加工処理していない試験片でのインク汚れ状態よりも著しく汚れている
【0054】
3.撥水性評価
(1)撥水紙の製造方法
撥水剤処理量が0.2g/m
2となるように、撥水剤を坪量280g/m
2のライナーにガラス棒で塗工した後、循環乾燥器にて120℃、1分間で乾燥し撥水紙を得た。
【0055】
(2)撥水性の評価方法
上記方法で製造した撥水紙を、160℃に設定した循環乾燥器内で30分加熱処理し、その後、撥水性の評価試験に供した。これは、撥水加工処理した撥水ライナーを工業的に大量生産する場合、巻き取られて保管される際にロール内部に熱がこもりやすいので、その状態を再現するためである。前記加熱処理後、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68:2000に規定される方法に準じて撥水度を測定した。具体的には、上記方法で作成した撥水紙を45°に傾斜させ、垂直方向に10mm離したところからイオン交換水を滴下し(1滴:約0.1ml)、流下の跡を観察した。撥水性は、下記表2の評価基準に従ってR0〜R10で評価した。R以降の数字が最も小さい撥水度(例;R0)が、最も撥水性が低く、R以降の数字が最も大きい撥水度(例;R10)が、最も撥水性が高い。R7以上を撥水性良好とする。
【0056】
【表2】
【0057】
下記表3〜7に、実施例1〜15および比較例1〜2の撥水剤(撥水剤組成物)の組成を、前記インク汚染性および撥水性の評価結果とともに示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
表3〜7に示したとおり、実施例1〜15は、全て、撥水性がR7〜R10の範囲であり、インク汚染性が○であり、いずれも良好な結果が得られた。撥水性については、前述のとおり、160℃という高温で30分という長時間加熱処理したにもかかわらず、撥水剤被膜の耐熱性が高かったため、高い撥水性が得られた。これに対し、比較例1および2は、いずれも、撥水性がR6またはR6−7と、実施例に対し劣っており、かつ、インク汚染性は△で不良であった。
【0064】
なお、表5は、撥水ポリマーおよびパラフィンの組成比を変化させた例(実施例3、実施例9、および比較例1)の結果を示している。同表に示すとおり、実施例3、実施例10、および比較例1は、撥水ポリマー(ポリマーC)およびパラフィンの使用量(重量部)がそれぞれ異なる以外は、同じ組成である。同表に示したとおり、パラフィンを2.0重量部加えた実施例3も、パラフィンを加えなかった実施例10も、同様に撥水性の高さとインク汚染性の低さとが両立できていた。これに対し、パラフィンを11.0重量部加え撥水ポリマーを加えなかった比較例1では、撥水性がR6と不良であり、かつ、インク汚染性が△と不良であった。また、比較例2では、ポリマーJを構成するモノマー(ラウリルアクリレート)のアルキル炭素数が12と少ないために、前述のとおり、撥水性がR6−7と実施例に対し劣っており、インク汚染性も△で不良であった。
【0065】
また、表6は、撥水ポリマーおよびパラフィンの組成比を変化させた別の例(実施例4、11、12および13)を示している。同表に示すとおり、実施例4、11、12および13は、撥水ポリマー(ポリマーD)およびパラフィンの使用量(重量部)がそれぞれ異なる以外は、同じ組成である。同表に示すとおり、いずれの実施例も良好な撥水性が得られたが、ポリマー/(ポリマー+パラフィン)比率(撥水ポリマーとパラフィンワックスとの合計重量に対する撥水ポリマーの重量比率)が高いほど、高い撥水性が得られた。
【0066】
また、表7は、石油樹脂/(石油樹脂+ポリマー+パラフィン)比率(撥水ポリマーとパラフィンワックスと石油樹脂との合計重量に対する石油樹脂の重量比率)を変化させた例(実施例14、4および15)を示している。同表に示すとおり、実施例14、4および15は、撥水ポリマー(ポリマーD)および石油樹脂の使用量(重量部)がそれぞれ異なる以外は、同じ組成である。同表に示すとおり、いずれの実施例も良好な撥水性が得られたが、石油樹脂/(石油樹脂+ポリマー+パラフィン)比率が高いほど撥水性が高い傾向があった。この理由は明らかではないが、乳化安定性がさらに向上したためと推測される。なお、撥水ポリマーを加えなかった場合(比較例1)は撥水性が劣っていたことは、表4および5に示したとおりである。
【0067】
なお、前記表3に示したとおり、撥水ポリマーを構成するモノマーにおいて、直鎖C18アクリレートホモポリマーを使用した実施例2、および、分岐C18アクリレートを使用した実施例3は、いずれも同様に撥水度がきわめて高かったことが確認された。