特許第6778046号(P6778046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778046
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】車両部品
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/10 20060101AFI20201019BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20201019BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20201019BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   F16B5/10 K
   F16J15/10 T
   F16B5/06 M
   F16B5/07 L
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-156101(P2016-156101)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-25217(P2018-25217A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 望
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−233081(JP,A)
【文献】 特開2008−223485(JP,A)
【文献】 特開2002−316667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するボディと、前記開口部を覆うカバーとを有し、車両に搭載される車両部品であって、
前記ボディおよび前記カバーの何れか一方である第1部品は、
複数の係止爪と、
前記開口部の周囲に設けられるシール材を受ける第1座面と、
を有し、
前記ボディおよび前記カバーの何れか一方であり前記第1部品と異なる第2部品は、
前記複数の係止爪が係止した状態で前記複数の係止爪がスライド可能なスライド溝と、
前記第1座面の逆側から前記シール材を受ける第2座面と、
を有し、
前記第1部品は、前記スライド溝に沿った前記複数の係止爪のスライドに伴って、前記第2部品に対して相対的に所定の組付け方向に移動して組付け完了の位置に近づく構成であり、
前記第1座面および前記第2座面の何れか一方又は両方は、前記組付け方向に延びる基準線に対して、前記第1部品が前記組付け方向に移動するほど前記第1座面と前記第2座面とが近づく方向に傾斜していることを特徴とする車両部品。
【請求項2】
前記スライド溝には、前記第部品の第1側面に前記第1側面の縁部から直線状に延設された第1区間と、前記第1側面と逆側の第2側面に前記第2側面の縁部から直線状に且つ前記第1区間と平行な方向に延設された第2区間とが含まれ、
前記第1部品と前記第2部品とが組み付けられる際、前記複数の係止爪の一部は前記スライド溝の前記第1区間に通され、前記複数の係止爪の残りは前記スライド溝の前記第2区間に通されることを特徴とする請求項1記載の車両部品。
【請求項3】
前記第1座面の前記基準線に対する傾斜角度と前記第2座面の前記基準線に対する傾斜角度とは異なり、
前記第1部品と前記第2部品とには、前記第1座面と前記第2座面との開きが大きくなる方の部位に、前記第1座面および前記第2座面と交差する方向に互いが締結される一対の被締結部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両部品。
【請求項4】
前記第1座面の前記基準線に対する傾斜角度と前記第2座面の前記基準線に対する傾斜角度とは等しく、
前記第1部品と前記第2部品とには、前記基準線に沿った方向に互いが締結される一対の被締結部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両部品。
【請求項5】
前記シール材は弾性を有し、
前記スライド溝は、前記係止爪を前記スライド溝の幅方向へ変位可能な溝幅を有していることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有するボディと開口部を覆うカバーとを有する車両部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、例えばシリンダヘッド、クランクケース、オートマチックトランスミッションの油圧回路など、開口部にカバーが組み付けられる車両部品が幾つも備わる。通常、このような車両部品は、気密性、油密性或いは水密性が要求される。このため、車両部品のボディとカバーとの合わせ面にはガスケット或いはパッキンなどのシール材が挟まれ、カバーはボルトによりボディに締結される。
【0003】
また、本発明に関連する先行技術として、特許文献1には、係止爪と係合部との係合によってシリンダヘッドとシリンダカバーとを組み付ける構造のエンジンが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−92054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カバーを多数のボルトで締結する構造を有する車両部品は、ボルトによって重量が増すという課題がある。近年、強化プラスチックなど樹脂を用いたカバーが実用化されるなど、より一層の車両部品の軽量化が進められている。このため、ボルトの重量が部品の総重量に占める割合が大きくなり、ボルトの多用は部品の軽量化をより進める上で大きな支障となる。
【0006】
また、カバーを組み付けるためにボルトの締め付け箇所が多くなると、ボルトの部品コストおよび組付け工程の作業コストが高騰するという課題が生じる。さらに、このような構成では、車両部品が搭載される箇所にボルトを着脱するための作業スペースを多く確保する必要があり、部品のレイアウト自由度が低下するという課題が生じる。
【0007】
特許文献1の構造は、係止爪と係合部との係合によって、ボルトを使用せずにシリンダカバーをシリンダヘッドに組み付けることができる。従って、この構造を採用することで、多くのボルトを削減でき、上述したボルトの使用に起因する課題を解決できる。しかしながら、本発明者らか検討したところ、特許文献1の構造では、カバーの組付け強度を確保することが難しく、気密性、油密性、或いは水密性が要求される車両部品としての実現性が乏しいことが判明した。その原因は次のように考えられた。
【0008】
特許文献1の係止爪と係合部とを係合する構造では、係止爪の周辺の部材が撓むことで係止爪が係合部に進入し、部材の撓みが戻ることで係止爪が係合部に係合する。従って、係止爪の周辺の部材は撓みが生じる程度に剛性を低くする必要がある。一方、気密性、油密性、或いは水密性が要求される車両部品では、カバーとボディとの合わせ面の面圧を高くしてシール性を高くしなければならない。しかし、組付けのために係止片の周辺の部材の剛性を低くすると、係止爪による係合強度が低下し、合わせ面の高い面圧に耐えることが困難となる。このような理由から、気密性、油密性、或いは水密性が要求される車両部品に、特許文献1の構造を採用することは難しいと考えられた。
【0009】
さらに、特許文献1に示す係止爪と係合部との係合を利用した構造では、カバーの取り外しが困難であり、それ故、再組付け性が悪く、この点からも、特許文献1の構造を車両部品に採用することが難しかった。
【0010】
本発明の目的は、ボルトの使用数を削減でき、気密性、油密性、或いは水密性の要求に十分に対応できる締結構造を有した車両部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、
開口部を有するボディと、前記開口部を覆うカバーとを有し、車両に搭載される車両部品であって、
前記ボディおよび前記カバーの何れか一方である第1部品は、
複数の係止爪と、
前記開口部の周囲に設けられるシール材を受ける第1座面と、
を有し、
前記ボディおよび前記カバーの何れか一方であり前記第1部品と異なる第2部品は、
前記複数の係止爪が係止した状態で前記複数の係止爪がスライド可能なスライド溝と、
前記第1座面の逆側から前記シール材を受ける第2座面と、
を有し、
前記第1部品は、前記スライド溝に沿った前記複数の係止爪のスライドに伴って、前記第2部品に対して相対的に所定の組付け方向に移動して組付け完了の位置に近づく構成であり、
前記第1座面および前記第2座面の何れか一方又は両方は、前記組付け方向に延びる基準線に対して、前記第1部品が前記組付け方向に移動するほど前記第1座面と前記第2座面とが近づく方向に傾斜していることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両部品において、
前記スライド溝には、前記第部品の第1側面に前記第1側面の縁部から直線状に延設された第1区間と、前記第1側面と逆側の第2側面に前記第2側面の縁部から直線状に且つ前記第1区間と平行な方向に延設された第2区間とが含まれ、
前記第1部品と前記第2部品とが組み付けられる際、前記複数の係止爪の一部は前記スライド溝の前記第1区間に通され、前記複数の係止爪の残りは前記スライド溝の前記第2区間に通されることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両部品において、
前記第1座面の前記基準線に対する傾斜角度と前記第2座面の前記基準線に対する傾斜角度とは異なり、
前記第1部品と前記第2部品とには、前記第1座面と前記第2座面との開きが大きくなる方の部位に、前記第1座面および前記第2座面と交差する方向に互いが締結される一対の被締結部が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両部品において、
前記第1座面の前記基準線に対する傾斜角度と前記第2座面の前記基準線に対する傾斜角度とは等しく、
前記第1部品と前記第2部品とには、前記基準線に沿った方向に互いが締結される一対の被締結部が設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両部品において 前記シール材は弾性を有し、
前記スライド溝は、前記係止爪を前記スライド溝の幅方向へ変位可能な溝幅を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1部品の係止爪が第2部品のスライド溝に沿ってスライドすることで、シール材を受ける第1座面と第2座面とが近づいて、第1部品と第2部品とが組付け完了の位置に近づく。従って、第1部品と第2部品とが組付け完了の位置に近づく際に、係止爪の周辺が大きく撓む必要がない。これにより、係止爪の周辺を高い剛性に設計して、係止爪とスライド溝との係合強度を高めることができ、第1座面と第2座面との面圧を高く設計できる。さらに、第1部品と第2部品とが組付け完了の位置に近づく際に、第1座面と第2座面とが近づくので、この接近によりシール材を受ける面の面圧を高くすることができる。従って、面圧を高くするために、多くのボルトを必要とせず、ボルトの使用数を削減できる。これらのことから、ボルトの使用数を削減でき、気密性、油密性、或いは水密性の要求に十分に対応できる車両部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の車両部品を示す側面図(a)と平面図(b)である。
図2図1の車両部品のA−A線断面図である。
図3図1の車両部品のB−B線断面図である。
図4】カバーとボティとの組付け工程を説明するもので、図4(a)〜図4(c)は組付け工程の第1過程〜第3過程の側面図を示す。
図5】第2実施形態の車両部品の組付け前の側面図(a)と組付け後の側面図(b)である。
図6】第3実施形態の車両部品の組付け前の側面図(a)と組付け後の側面図(b)である。
図7】周囲複数の箇所で拘束された平板の振動パターンを説明するもので、(a)は平板の拘束箇所を示す図、(b)〜(f)は一次モード〜五次モードの振動パターンのシミュレーション結果を示す図である。
図8】非拘束の平板の振動パターンを説明するもので、(a)は平板の拘束状態を示す図、(b)〜(f)は一次モード〜五次モードの振動パターンのシミュレーション結果を示す図である。
図9】周囲1点で拘束された平板の振動パターンを説明するもので、(a)は平板の拘束箇所を示す図、(b)〜(f)は一次モード〜五次モードの振動パターンのシミュレーション結果を示す図である。
図10】本発明に係る車両部品の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両部品を示す側面図(a)と平面図(b)である。図2は、図1の車両部品のA−A線断面図である。図3は、図1の車両部品のB−B線断面図である。
【0019】
第1実施形態の車両部品1は、開口部を有するボディ(第2部品に相当)2と、開口部を覆うカバー(第1部品に相当)3と、シール材4とを備える。車両部品1は、例えば、シリンダブロックおよびクランク機構を備えるエンジンユニット、或いは、オートマチックトランスミッションの油圧制御装置などである。これらの場合、ボディ2は、エンジンのシリンダヘッド、クランクケース、或いは、オートマチックトランスミッションの油圧回路などとなる。また、カバー3は、シリンダヘッドカバー、タイミングチェーンの収容空間を覆うチェーンカバー、或いは、油圧回路のカバーなどとなる。
【0020】
以下の説明では、図1(a)の紙面上の左方を前方、紙面上の上方を上方として各方向を表わす。
【0021】
ボディ2は、2つのスライド溝21(図1図3を参照)と、合わせ面24とを有する。2つのスライド溝21は、本発明に係るスライド溝の第1区間と第2区間の一例に相当する。合わせ面24は、本発明に係る第2座面の一例に相当する。
【0022】
2つのスライド溝21は、ボディ2とカバー3とが組み付けられる際に、カバー3の係止爪31が係止されて前後方向にスライドする溝である。2つのスライド溝21は、直線状であり、前後方向に長く、ボディ2の左側面(第1側面に相当)20Lと右側面(第2側面に相当)20Rとにそれぞれ設けられている。2つのスライド溝21は互いに平行である。各スライド溝21は、ボディ2の側面20L、20Rの後方の縁部から設けられている。後端から設けられることで、カバー3の係止爪31は係止片32を撓めることなくスライド溝21の後端からスライド溝21へ通すことができる。スライド溝21の溝幅b1(図3を参照)は、係止爪31が上下に変位可能な長さを有している。
【0023】
合わせ面24は、ボディ2とカバー3とが組み付けられた際に、シール材4を一方から受ける面であり、開口部29を囲むように設けられている。以下、合わせ面24を、前区分D1、左区分D2、後区分D3、および右区分D4の4つの区分に分けて説明する(図1(b)を参照)。合わせ面24の4つの区分D1〜D4は、共に平面状であり、互いに平行であり、隣接する区分が互いに連接されている。
【0024】
合わせ面24の左区分D2と右区分D4とは、一方に長い矩形状の面であり、上方から見て互いの長手方向が平行である。合わせ面24の左右の区分D2、D4は、図1(a)に示すように、基準線Lに対して傾斜を有している。基準線Lとは、ボディ2にカバー3を組み付ける際にカバー3がスライドする組付け方向と平行な線分であり、スライド溝21の長手方向(詳細にはスライド溝21の下縁に沿った方向)に相当する。合わせ面24の左右の区分D2、D4は、図4(a)と図4(b)とに示すように、カバー3が組付け完了の位置に近づくほど、ボディ2の合わせ面24とカバー3の合わせ面34とが近づく向きに傾斜している。合わせ面24の左右の区分D2、D4の長手方向は、上方から見て、スライド溝21の長手方向と平行である。合わせ面24の前区分D1および後区分D3は、左右の区分D2、D4と同様の傾斜を有している。
【0025】
図2図3に示すように、合わせ面24の前区分D1の内周側には傾斜面26が設けられている。傾斜面26は、カバー3をスライドさせてボディ2に組み付ける際に、合わせ面24の前区分D1にシール材4を導入しやすくするためのものである。傾斜面26は、合わせ面24との成す角度をたとえば30度程度の緩やかな角度にする。
【0026】
ボディ2の後部には、ボルトなどの締結部材5を介してカバー3と締結される被締結部27が設けられている。被締結部27は、カバー3の被締結部37と上下方向に並び、締結部材5によって上下方向に締め付けられる。被締結部27は、例えばネジ穴、或いは、ナット又はボルト頭部の座面を有するネジ挿通孔などである。
【0027】
カバー3は、複数の係止片32と、合わせ面34とを有する。
【0028】
複数の係止片32は、ボディ2の2つのスライド溝21に対応して、合わせ面34よりボディ2の方へ延設され、カバー3の左側部と右側部とに2つずつ設けられている。各係止片32は、ボディ2のスライド軸21に係止される係止爪31を有する。係止爪31は、ボディ2の内方に突出し、スライド溝21に係止された状態で、スライド溝21の溝方向にスライド可能な形状を有している。
【0029】
合わせ面34は、ボディ2とカバー3とが組み付けられた際に、ボディ2の合わせ面24に対向する面であり、シール材4を他方から受ける面が設けられている。以下、合わせ面34について、前区分D1、左区分D2、後区分D3、および右区分D4の4つの区分に分けて説明する。合わせ面34の4つの区分D1〜D4は、ボディ2の合わせ面24の4つの区分D1〜D4に対応する配置および形状を有している。合わせ面34の4つの区分D1〜D4は、共に平面状であり、互いに平行であり、隣接する区分が互いに連接されている。
【0030】
合わせ面34の左区分D2と右区分D4とは、一方に長い矩形状の面であり、上方から見て互いの長手方向が平行である。合わせ面34の左区分D2と右区分D4とは、基準線Lに対して平行である。合わせ面34の前後の区分D1、D3も、左右の区分D2、D4と同様に基準線Lに対して平行である。カバー3にとっての基準線Lとは、2つのスライド溝21に3つ以上の係止爪31が係止され、且つ、係止爪31がスライド溝21に沿ってスライドしたときの、カバー3の進行方向(組付け方向)を意味する。基準線Lは、同一のスライド溝21を通る複数の係止爪31を結んだ方向に相当する。
【0031】
合わせ面34には、4つの区分D1〜D4にわたって周回する経路で、シール材4を保持する溝34aが設けられている。溝34aの底面は、シール材4を他方から受ける座面であり、本発明に係る第1座面の一例に相当する。溝34aの深さは全周にわたって同一である。
【0032】
カバー3の後部には、締結部材5を介してボディ2と締結される被締結部37が設けられている。被締結部37は、ボディ2の被締結部27と上下方向に並び、締結部材5によって上下方向に締め付けられる。被締結部37は、例えばナット又はボルト頭部の座面を有するネジ挿通孔、或いは、ネジ穴などである。
【0033】
シール材4は、例えばゴム製のガスケット又はパッキンであり、弾性を有する。
【0034】
<組付け工程>
図4は、カバーとボティとの組付け工程を説明するもので、図4(a)〜図4(c)はそれぞれ組付け工程の第1過程〜第3過程の側面図を示す。
【0035】
図4(a)に示すように、ボディ2にカバー3を組み付けるには、先ず、カバー3の合わせ面34にシール材4が保持された状態で、作業者は、スライド溝21の後端から各係止片32の係止爪31を通して、カバー3を矢印前方(図4(a)の左方)へ移動する。この移動の際、ボディ2およびカバー3の合わせ面24、34の左右の区分D2、D4の間にはシール材4が挟まれ、シール材4はカバー3と共に移動する。このとき、基準線Lに対してボディ2の合わせ面24が傾斜しているので、前方ほど合わせ面24、34の間隔は小さくなり、後方ほど合わせ面24、34の間隔は大きくなる。図4(a)のカバー3の移動が途中の段階では、シール材4の前寄りの部分で、合わせ面24、34の間隔がやや狭くなりシール材4の圧縮率が小さく現れる。また、シール材4の後ろ寄りの部分ではシール材4の圧縮率はほぼゼロである。
【0036】
さらに、作業者は、カバー3のスライドを進め、図4(b)に示すように、合わせ面24、34の前後の区分D1、D3が互いに対向する位置まで移動すると、スライド完了となる。スライド完了となる直前、合わせ面24、34の前後の区分D1、D3の間には前後方向からシール材4が導入される。後区分D3では合わせ面24、34の間隔が大きいので、シール材4は余り圧縮されずにスムーズに挿入される。合わせ面24、34の前区分D1では、合わせ面24、34の間隔が小さくなっているが、合わせ面24に連なる傾斜面26があることで、シール材4が徐々に圧縮されて合わせ面24、34の間に挿入される。
【0037】
図4(b)に示すように、カバー3がスライド完了となると、基準線Lに対する合わせ面24の傾斜によって、前方ほど合わせ面24、34の間隔が小さくなり、後方ほど合わせ面24、34の間隔が大きくなる。従って、前方ほどシール材4の圧縮率が大きく、後方ほどシール材4の圧縮率が小さくなる。この段階において、前方のシール材4の圧縮率は、カバー3の組付け後の圧縮率と同程度になる。つまり、前方の係止爪31の形成位置は、この段階でこのシール材4の圧縮率が得られるように設計されている。
【0038】
次に、作業者は、図4(c)に示すように、締結部材5を用いてボディ2の被締結部27とカバー3の被締結部37とを締結する。締結部材5は、規定の締め付け強度、或いは規定の締め付け量で上下方向に被締結部27、37を締結する。この締結により、カバー3が前方の係止爪31を支点に回動し、ボディ2とカバー3との合わせ面24、34が全領域で近接する。このとき、シール材4は全領域で圧縮率が大きくなり、ボディ2の合わせ面24とカバー3の合わせ面34の溝34aの底面との間に高い面圧が発生する。これにより、車両部品1の高い空密性、油密性、或いは水密性が達成される。
【0039】
以上のように、第1実施形態の車両部品1によれば、多くのボルトを使用せずにボディ2とカバー3とを組み付けることができ、さらに、ボディ2とカバー3との間に高い面圧でシール材4を挟み込むことができる。従って、高い空密性、油密性、或いは水密性を確保しつつ、車両部品1の軽量化を図ることができる。さらに、この構成では、組付け時と逆の作業を行うことで、容易にカバー3の組み外すことができる。
【0040】
さらに、第1実施形態の車両部品1によれば、カバー3はボディ2に対して前後方向、すなわち、開口部29が臨む面に沿った方向にスライドさせて、ボディ2に組み付けることができる。従って、車両部品1を車両に搭載したときに、ボディ2の開口部に対向する方向にスペースがなくても、開口部に沿った方向にスペースがあれば、カバー3の着脱が可能となる。例えば、水平対向エンジンを搭載した車両では、シリンダヘッドの開口部はエンジン搭載室の側壁に対向する。この配置で、エンジン搭載室の余剰スペースを小さくしようとすると、シリンダヘッドの開口部と側壁との間隔は狭くなる。このような場合、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーの部分に本実施形態の車両部品1の構造を適用することができる。このような適用により、シリンダヘッドの開口部とエンジン搭載室の側壁との間が狭くても、シリンダヘッドカバーを開口部に沿った方向に移動させて容易に着脱することができる。
【0041】
さらに、第1実施形態の車両部品1によれば、設計時において、ボディ2の開口部に対して合わせ面24、34の傾斜の向き、或いは、スライド溝21と係止片32とを設ける向きを、適宜変更できる。そして、このような変更により、ボディ2に対するカバー3の組付け方向を、開口部29が臨む面に沿った方向の中から任意の方向に選択できる。従って、車両の設計時において車両部品1のレイアウト自由度が増すという効果が奏される。
【0042】
さらに、第1実施形態の車両部品1によれば、カバー3をスライド完了の位置までスライドさせたときに、合わせ面24、34の後方の部分ではシール材4の圧縮率は小さい。従って、カバー3の組付け時にシール材4の抵抗およびすり減りが少なく、良好な組付け作業性が得られるという効果が奏される。
【0043】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の車両部品の組付け前の側面図(a)と組付け後の側面図(b)である。
【0044】
第2実施形態の車両部品1Aは、第1実施形態の車両部品1と比較して、主に、後方の係止片32Aの長さと、被締結部27A、37Aの配置とが変更されている。第1実施形態の車両部品1と同様の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。車両部品1Aは、開口部29を有するボディ2Aと、開口部29を覆うカバー3Aと、シール材4とを備える。
【0045】
左右後方の2つの係止片32Aは、前方の係止片32と比較して長さが短い。また、左右後方の係止片32Aに備わる係止爪31は、左右前方の係止片32のものと比較して、合わせ面34を基準にして低い位置に設けられている。図4(b)に示すように、左右後方の2つの係止爪31は、カバー3Aの組み付け完了の状態で、スライド溝21の下縁に引っ掛かる位置に形成されている。
【0046】
被締結部27A、37Aは、ボディ2Aとカバー3Aとのそれぞれの後端部に設けられている。一対の被締結部27A、37Aは、前後方向に並び、締結部材5Aにより前後方向に締め付けられる。
【0047】
カバー3Aの合わせ面34は、上記の係止爪31の配置により、基準線Lに対して傾斜を有する。カバー3Aにとっての基準線Lとは、2つのスライド溝21に3つ以上の係止爪31が係止され、且つ、係止爪31がスライド溝21に沿ってスライドしたときの、カバー3Aの進行方向(組付け方向)を向いた線分を意味する。カバー3Aにとっての基準線Lは、同一のスライド溝21を通る複数の係止爪31を結んだ方向に相当する。カバー3Aの合わせ面34の傾斜角度は、ボディ2Aの合せ面24の傾斜角度と同一である。
【0048】
<組付け工程>
ボディ2Aにカバー3Aを組み付けるには、先ず、カバー3Aの合わせ面34にシール材4が保持された状態で、作業者は、スライド溝21の後端から複数の係止片32、32Aの係止爪31を通してカバー3Aを前方へ移動する。
【0049】
第2実施形態では、基準線Lに対して、ボディ2Aの合わせ面24と、カバー3Aの合わせ面34とが同一の傾斜角度を有している。このため、カバー3Aをスライドさせる際の各タイミングでは、合わせ面24、34が対向する部位において、合わせ面24、34の間隔はどこでも等しい。一方、この間隔は、カバー3Aが組付け完了の位置に近づくほど狭くなる。従って、カバー3Aをスライドさせる工程の前半では、合わせ面24、34の間隔は大きくシール材4の圧縮率は小さい。このため、作業者は、大きな力を要さずに、カバー3Aを途中までスライドさせることができる。一方、カバー3Aをスライドさせる工程の後半では、合わせ面24、34の間隔が小さくシール材4の圧縮率は大きい。このため、カバー3Aをスライドさせるのに大きな力が必要となるが、作業者は、締結部材5A或いは他の工具を用いてカバー3Aをスライドさせることができる。
【0050】
作業者は、カバー3Aを組付け完了の位置までスライドさせたら、或いは、スライドの終段になったら、締結部材5Aにより被締結部27A、37Aを前後方向に締め付ける。カバー3Aが組付け完了の位置までスライドすると、合わせ面24と溝34aの底面との間でシール材4が圧縮されて高い面圧が発生する。つまり、複数の係止爪31は、組付け完了の段階でシール材4の規定の圧縮率が得られるように形成位置が設計されている。このような組付け工程により、車両部品1の高い空密性、油密性、或いは水密性が達成される。
【0051】
組付け完了時には、合わせ面24、34の傾斜によって、シール材4の応力に後方を向いた成分が生じる。しかし、被締結部27A、37Aが前後方向に締結されているので、シール材4の応力によりカバー3Aが後方にずれることが抑止される。
【0052】
第2実施形態の車両部品1Aによれば、シール材4を圧縮する面圧が4つの係止爪31とスライド溝21との係止によって得られる。このため、係止爪31とスライド溝21との剛性を高めることで、非常に高い面圧を得ることができる。さらに、第2実施形態では、組付け完了時にも複数の係止爪31がスライド溝21に係止した状態が維持される。従って、係止片32、32Aの数を増やすことで、より高い面圧を得ることが可能であり、或いは、係止片32、32Aの数を増やすことで、面圧の大きさを維持したまま、個々の係止爪の強度を低くすることも可能である。また、第2実施形態では、係止爪31の係止力によって高い面圧が得られるので、第1実施形態と比較して、締結部材5Aを小さくすることができる。
【0053】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の車両部品の組付け前の側面図(a)と組付け後の側面図(b)である。
【0054】
第3実施形態の車両部品1Bは、主に、合わせ面34の溝34bの底面に傾斜を加えた点が異なり、その他の構成要素は第1実施形態或いは第2実施形態と同様である。同様の構成要素については同一符号を付して詳細な発明を省略する。車両部品1Bは、開口部29を有するボディ2Aと、開口部29を覆うカバー3Bと、シール材4とを備える。
【0055】
第3実施形態において、カバー3Bの合せ面34は基準線Lに平行である。一方、合わせ面34に設けられた溝34bは、各部で深さが異なり、溝34bの底面(シール材4の座面に相当)が基準線Lに対して傾斜している。この傾斜の角度は、ボディ2Aの合わせ面24と同一である。
【0056】
<組付け工程>
ボディ2Aにカバー3Bを組み付けるには、先ず、カバー3Bの合わせ面34にシール材4が保持された状態で、作業者は、スライド溝21の後端から複数の係止爪31を通してカバー3Aを前方へ移動する。
【0057】
第3実施形態では、基準線Lに対して、ボディ2Aの合わせ面24と、カバー3Bの溝34bの底面とが同一の傾斜角度を有している。このため、カバー3Bをスライドさせる際の各タイミングでは、合わせ面24と溝34bとが対向する部位において、合わせ面24と溝34bの底面との間隔はどこでも等しい。さらに、この間隔は、カバー3Bが組付け完了の位置に近づくほど狭くなる。
【0058】
従って、第2実施形態と同様に、カバー3Bをスライドさせる過程で、シール材4の圧縮率は次第に大きくなる。そして、カバー3Bを組付け完了の位置までスライドさせると、合わせ面24と溝34bの底面との間にシール材4が強く圧縮されて高い面圧が発生する。これにより、車両部品1の高い空密性、油密性、或いは水密性が達成される。そして、締結部材5Aにより被締結部27A、37Aが前後方向に締結されて、ボディ2Aとカバー3Bとの組み付けが完了する。
【0059】
第3実施形態の車両部品1Bによれば、第2実施形態と同様に、シール材4を圧縮する面圧が4つの係止爪31とスライド溝21との係止によって得られる。このため、係止爪31の係止力を高めることで、非常に高い面圧が得られる。また、係止片32の数を増やして、所定の面圧をより多くの係止爪31に分散することも可能である。また、第2実施形態と同様に、締結部材5Aを小さくすることができる。
【0060】
さらに、第3実施形態の車両部品1Bによれば、合わせ面34の溝34bの底面に基準線Lに対する傾斜を設けている。従って、合わせ面34の部位の厚みは前後方向で一定にできる。例えば、カバー3Bを中央の部分と縁の部分とで面一にして板状の構成とする場合、板面の大きな領域で肉厚の違いがあると、精度の高いカバー3Bの成形が難しくなる。一方、肉厚が等しい板に深さの違う溝は成形しやすい。従って、第3実施形態によれば、カバー3Bの形状を板状とする場合に、カバー3Bを高い精度で成型すること可能となる。
【0061】
<振動抑制作用>
次に、第1実施形態〜第3実施形態の構造による振動抑制作用について説明する。図7図9は、異なる条件で拘束された各平板の振動パターンを説明する図である。図7(a)、図8(a)、図9(a)は、各平板の拘束状態を示す図、図7図9の(b)〜(f)は、各拘束条件のときの一次モード〜五次モードの振動パターンのシミュレーション結果を示す図である。図中、輝度の高低により振幅の大小を示している。
【0062】
図7(a)に示すように、平板を周囲複数の箇所Pで拘束した場合、図7(b)〜図7(f)に示すように、低次モードにおける振動の腹(振幅の最大点)は板面の中央の範囲に現れる。このような振動は中央に振動エネルギが集まるため、音響ノイズとして外部に伝わりやすい。
【0063】
この図7(a)の拘束条件は、カバーの周囲を複数のボルトで締結した構造に近いモデルである。図7のシミュレーション結果から、カバーの周囲を複数のボルトで締結した従来構成では、大きな音響ノイズが発生しやすいことが分かる。
【0064】
図8(a)に示すように、平板を非拘束とした場合、図8(b)〜図8(f)に示すように、低次モードにおける振動の腹は板面の縁に現れる。このような振動パターンだは振動エネルギが周囲に分散するため、外部に伝わる音響ノイズを小さくできる。さらに、このような振動パターンでは、平板の周囲に振動を減衰する材料があれば、高い振動の減衰効果が得られる。
【0065】
図9(a)に示すように、平板を周囲の一箇所Pで拘束した場合、図9(b)〜図9(f)に示すように、低次のモードにおける振動の腹は板面の縁に現れる。このような振動パターンでは振動エネルギが分散するため、外部に伝わる音響ノイズを小さくできる。さらに、このような振動パターンでは、平板の周囲に振動を減衰する材料があれば、高い振動の減衰効果が得られる。
【0066】
図8(a)又は図9(a)の拘束条件は、第1実施形態〜第3実施形態のカバー3、3A、3Bの組付け構造に近いモデルである。なぜなら、カバー3、3A、3Bは、周囲が弾性を有するシール材4に押し付けられた状態にあり、また、係止爪31はスライド溝21の幅方向へ変位する遊びを有する。さらに、第1実施形態のカバー3は周囲の1箇所のみが締結部材5により高強度に締結されている。また、第2実施形態と第3実施形態のカバー3A、3Bは締結部材5Aにより小さな締め付け力で締結されている。カバー3、3A、3Bは車両に搭載されることから高い剛性を有し、伝わる振動エネルギは大きくなる。従って、大きな振動エネルギを基準にすれば、カバー3、3A、3Bの周囲は非拘束又は1点のみ拘束された状態に近いと見なすことができる。
【0067】
図8および図9のシミュレーション結果から、第1実施形態〜第3実施形態の車両部品1、1A、1Bによれば、カバー3、3A、3Bに振動が伝わっても、外部に伝わる音響ノイズは少なくなることが期待される。さらに、シール材4の弾性により振動の減衰効果が得られることが期待される。
【0068】
(変形例)
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明に係る車両部品はこれらの実施形態に限られない。図10は、本発明に係る車両部品の変形例を示す平面図である。上述したように、各実施形態では、合わせ面24、34の左右の区分D2、D4を前後の区分D1、D2より長い構成を例にとって説明した。しかし、図10に示すように、合わせ面24、34の左右の区分D2、D4を前後の区分D1、D2より短い構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ボディ2、2Aの合わせ面24の傾斜、カバー3Aの合わせ面34の傾斜、或いはカバー3Bの溝34bの底面の傾斜が、基準線Lに対して前方が低くなる向きの傾斜である構成を例にとって説明した。さらに、カバー3、3A、3Bが前方にスライドして組み付けられる構成を示した。しかし、これらの傾斜およびカバーのスライド方向は前後に反転させてもよい。さらに、ボディおよびカバーの組み付け構造の全体の配置を90℃回転することで、合わせ面24、34等の傾斜を左右方向の傾斜とし、カバーの組付け方向を左右方向としてもよい。
【0070】
さらに、上記実施形態では、ボディ2およびカバー3の合わせ面24、34は、4つの区分D1〜D4とも平面状としたが、左右の区分D2、D4だけ平面状とし、前後の区分D1、D3は曲面状にしてもよい。さらに、4つの区分D1〜D4は、必ずしも互いに平行である必要はなく、例えば4つの区分D1〜D4の各々で長手方向に延びる仮想的な軸を中心とする回転方向に各面が傾斜していてもよい。但し、ボディ2の合わせ面24と、カバー3の合わせ面34とで傾斜する向きおよび角度は対応させるのが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、合わせ面24、34の左右の区分D2、D4を一方に長い矩形状と説明した。しかし、合わせ面24、34の左右の区分D2、D4の形状は、外形が直線的である必要はなく、一端から他端にかけて直線的な領域を有していればよく、この直線的な領域でシール材4を受ける構成とすればよい。
【0072】
また、上記実施形態では、カバー3の合わせ面34にシール材4を保持する溝を設けた構成を示したが、溝は無くても良いし、ボディ2の合わせ面24にもシール材4を受ける溝を設けてもよい。溝がある場合、シール材の座面となる面は、溝の底面となる。この場合、実施形態の説明において合わせ面24は溝の底面と読み替えればよい。また、カバー3の合わせ面34に溝34aがない場合、シール材の座面となる面は合わせ面34となる。この場合、実施形態の説明において溝34aの底面は合わせ面34と読み替えればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ボディに2つのスライド溝21が備わる構成を示したが、2つのスライド溝を前後でつなげて1つのスライド溝としてもよい。また、上記実施形態では、ボディ2の1つの側面に1つのスライド溝21を設け、1つのスライド溝21に複数の係止爪31が通される構成を示した。しかし、1つの側面に複数のスライド溝を設け、各係止爪31が別々のスライド溝に通される構成としてもよい。複数のスライド溝は、例えば上下方向に配置を異ならせて形成することができるし、或いは、各スライド溝の長さを短くして複数のスライド溝を前後方向に配置を異ならせて形成することもできる。また、上記実施形態では、直線状に延びるスライド溝21を示したが、スライド溝の経路は、例えば、図1(a)のボディ2の側面下端から上方に延び、続いて前方(図1(a)の紙面上の左方)に延びる経路としてもよい。この場合、1つの係止爪に対応して1つのスライド溝を設けることで、ボディ2とカバー3との組付けが可能となる。その他、スライド溝の経路は様々に変更可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、ボディ2およびカバー3の側部にスライド溝21と係止片32とを設けた構成を例にとって説明した。しかし、ボディ2およびカバー3の内側面にスライド溝と係止片とを設けて、これらを組み付ける構造としてもよい。例えば、図2のボディ2の内側面において、スライド溝の経路を下端から上方に延び、続いて前方に延びる経路とする。さらに、1つの係止爪に対応して1つのスライド溝を設け、各スライド溝に対応してカバー3の内側に係止片32を設ける。これにより、スライド溝と係止爪とをボディ2の内側面で係止させることが可能となる。
【0075】
また、上記実施形態では、スライド溝が設けられる側の部品(ボディ2)において、合わせ面24が基準線Lに対して傾斜している構成を示した。しかし、スライド溝が設けられる部品(ボディ2)の合わせ面は基準線Lと平行に形成し、係止爪が設けられる側の部品(カバー3)において、合わせ面を基準線Lに対して傾斜させる構成としてもよい。この場合、カバーをボディに対して前方へスライドさせてスライド完了となったとき、前方ほど合わせ面の間隔が大きくなり、後方ほど合わせ面の間隔は小さくなる。従って、この場合には、上下方向に締結される一対の被締結部は、ボディおよびカバーの前部に設けるとよい。
【0076】
また、上記実施形態では、ボディにスライド溝を設け、カバーに係止片と係止爪とを設けた構成を例にとって説明した。しかし、ボディに係止片と係止爪とを設け、カバーにスライド溝を設けてもよい。また、上記実施形態では、弾性を有するシール材を用いた構成を示したが、シール材は金属のガスケットなど弾性が無くてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0077】
また、本発明に係る車両部品としては、エンジンユニット或いはオートマチックトランスミッションの油圧回路の他、車両に搭載される様々な部品を適用できる。また、本明細書で記した前後左右上下の方向は、図4(a)に示される車両部品を所定の向きに見た場合の方向に過ぎず、車両に搭載されたときの方向を示すものでない。
【符号の説明】
【0078】
1、1A、1B 車両部品
2、2A ボディ(第2部品)
3、3A、3B カバー(第1部品)
4 シール材
5、5A 締結部材
21 スライド溝
24 合わせ面(第2座面)
26 傾斜面
27、37 被締結部
29 開口部
31 係止爪
32 係止片
34 合わせ面
34a、34b 溝(第1座面)
L 基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10