特許第6778052号(P6778052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6778052平型導体挿入用治具及び平型導体挿入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778052
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】平型導体挿入用治具及び平型導体挿入方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20201019BHJP
   H01R 43/26 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   H01R12/72
   H01R43/26
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-160451(P2016-160451)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-29013(P2018-29013A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】水澤 翔一
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3015890(JP,U)
【文献】 特開平03−125493(JP,A)
【文献】 特開2003−101167(JP,A)
【文献】 実開昭56−176488(JP,U)
【文献】 特開2015−149269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00 −13/08
24/00 −24/86
43/027−43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平型導体の前端部を、コネクタへ向け前方へ挿入するための平型導体挿入用治具において、
挿入操作時に指で掴むためのハンドル部と、コネクタへの挿入前の平型導体の上記前端部の直後方に位置する被掛止部を該被掛止部の後方から掛止する掛止部とを有し、
上記掛止部は、前方に向け延びて設けられた爪部を有しているとともに該爪部の直上で前方に開口して上記被掛止部を受け入れる掛止溝が形成され、該爪部が該掛止溝の前端位置よりも前方へ突出していることを特徴とする平型導体挿入用治具。
【請求項2】
被掛止部が平型導体の側縁凸状部もしくは孔部、切欠部のいずれかであることとする請求項1に記載の平型導体挿入用治具。
【請求項3】
掛止部は、爪部が平型導体の被掛止部の下面側に位置したときに、平型導体の上面に対して接触可能に位置して該平型導体の上方への移動を規制する規制部を有していることとする請求項1に記載の平型導体挿入用治具。
【請求項4】
掛止部に形成された掛止溝、該掛止溝の高さ方向での溝幅が平型導体の被掛止部をその厚み方向で支持可能な寸法となっていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の平型導体挿入用治具。
【請求項5】
掛止部は、爪部の上面側に形成された掛止溝の平型導体の厚み方向での溝幅が可変となっていることとする請求項ないし請求項のうちの一つに記載の平型導体挿入用治具。
【請求項6】
掛止部は、爪部が回動可能に回動軸で支持されているとともに、該回動軸まわりに回動可能なレバーがハンドル部に設けられていて、該レバーの操作により上記爪部が回動して掛止溝の溝幅を可変としていることとする請求項に記載の平型導体挿入用治具。
【請求項7】
掛止部は、平型導体の幅方向における両側での爪部同士間の間隔が可変となっていることとする請求項ないし請求項のうちの一つに記載の平型導体挿入用治具。
【請求項8】
平型導体の前端部を、コネクタへ向け前方へ挿入するための平型導体挿入用治具を用いた平型導体挿入方法において、
挿入操作時に指で掴むためのハンドル部と、コネクタへの挿入前の平型導体の上記前端部の直後方に位置する被掛止部を該被掛止部の後方から掛止する掛止部とを有し、該掛止部に、前方に向け延びた爪部が設けられているとともに該爪部の直上で前方に開口して上記被掛止部を受け入れる掛止溝が形成され、該爪部が該掛止溝の前端位置よりも前方に突出している平型導体挿入用治具を用い、治具のハンドル部を指で掴み、掛止部の爪部で平型導体の被掛止部を掛止した後、該掛止部で被掛止部を掛止した状態で平型導体の前端部をコネクタへ正規位置まで挿入して該前端部をコネクタの係止部に係止させてから、治具の掛止部から平型導体の被掛止部が抜けるように該治具を後退させることを特徴とする平型導体挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体をコネクタへ挿入するときに用いられる平型導体挿入用治具及び平型導体挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、近来次第に小型化してきている。回路基板に取り付けられるコネクタは、FPC等の平型導体の前端部が回路基板の面に平行な状態で接続されることが多い。コネクタは小型化されており、平型導体もきわめて薄いので、平型導体の挿入のための挿入口も非常に細いスリット状をなしている。上記挿入口へ挿入されるべき平型導体の前端部は、挿入のために自由状態となっていなければならず、平型導体は挿入操作時に上記前端部よりも後方部分で指により掴まれることとなる。したがって、それより前方の自由部分は、比較的長く延びているとともに薄いので、撓みやすく、挿入口に対しての位置を定めにくい。その結果、上記挿入口への挿入は、面倒である。
【0003】
そこで、平型導体の上記挿入口への挿入を少しでも容易そして確実にするために治具を用いることがある。
【0004】
特許文献1では、スライダを用いた形式のコネクタに使用されるFPC挿入治具が開示されている。特許文献1のコネクタは、コネクタの挿入口から平型導体挿入方向手前に飛び出た位置にスライダを配しておき、平型導体の前端部をこのスライダの上面に載せるだけで挿入口に対する位置を決めることができ、しかる後に平型導体の前端部をコネクタ内方へ挿入し、引き続き、上記スライダをコネクタ内方へ押し込むことで、該スライダが平型導体を圧して平型導体と端子との間に接圧をもたらすとともに、平型導体の抜けが防止されるようになっている。特許文献1では、このスライダの押し込み作業をさらに容易として作業者が片手で作業が行えるようなFPC挿入治具を提案している。
【0005】
上記FPC挿入治具は、平型導体が前後に貫通するようにして配置して用い、該治具を片手の指で保持しつつ、同時に指が平型導体の側縁あるいは面に触れることができるようになっている。かかる状態で、治具は平型導体に対して隙間をもち、前後に移動可能である。
【0006】
使用に際しては、コネクタの挿入口から飛び出した状態にあるスライダ上に、上記治具から前方に突出している平型導体の前端部を配してから該前端部をコネクタ内の所定位置まで挿入する。
【0007】
しかる後、指を平型導体にすべらせながら指で治具をスライダの方へ前進させ、治具の前端でスライダを前方へ押し出しスライダをコネクタ内へ押し込むこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−296941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の治具は、平型導体の前端部が配されているスライダをコネクタ内に押し込むためのものであり、上記前端部をコネクタ挿入口へもたらし挿入するのには不適である。そもそも、特許文献1のコネクタでは、上記平型導体の前端部の挿入前に、スライダが挿入口から飛び出して位置しており、大きく開放されているスライダの上方から上記平型導体の前端部を配置すれば良いのでその配置作業は楽に行える。特許文献1の治具は、この配置作業後のスライダの押込み作業に有効となる。したがって、特許文献1は、スライダを有していない形式のコネクタに対する上記平型導体の前端部の挿入を容易かつ確実に行うための解決策とはならない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、平型導体の前端部をコネクタの挿入口へ容易かつ確実に挿入できる平型導体挿入用治具及び平型導体挿入方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る平型導体挿入用治具は、平型導体の前端部を、コネクタへ向け前方へ挿入する。
【0012】
かかる平型導体挿入用治具において、本発明では、挿入操作時に指で掴むためのハンドル部と、平型導体のコネクタへの挿入後に回路基板に面する上記被掛止部の下面で、コネクタへの挿入前の平型導体の上記前端部の直後方に位置する側縁凸状部もしくは切落し部として形成された被掛止部を掛止する掛止部とを有し、上記掛止部は、前方に向け延びて設けられた爪部を有していることを特徴としている。
【0013】
また、かかる平型導体挿入用治具を用いた平型導体挿入方法に係る発明は、挿入操作時に指で掴むためのハンドル部と、平型導体のコネクタへの挿入後に回路基板に面する上記被掛止部の下面で、コネクタへの挿入前の平型導体の上記前端部の直後方に位置する側縁凸状部もしくは切落とし部として形成された被掛止部を掛止する掛止部とを有し、該掛止部に、前方に向け延びた爪部が設けられた平型導体挿入用治具を用い、治具のハンドル部を指で掴み、掛止部の爪部で平型導体の被掛止部を掛止した後、該掛止部で被掛止部を掛止した状態で平型導体の前端部をコネクタへ正規位置まで挿入して該前端部をコネクタの係止部に係止させてから、治具の掛止部から平型導体の被掛止部が抜けるように該治具を後退させることを特徴としている。
【0014】
多くの平型導体は、ハウジングへの過大挿入を防止するために、ハウジングの挿入口の側縁に突き当たるように、該平型導体の前端部側縁に側縁凸状部を有している。そこで本発明の治具の爪部で該平型導体の側縁凸状部を被掛止部として下面側から掛止して支持し、その状態で平型導体の前端部を挿入口へ挿入する。このような本発明の治具を用いる際、被掛止部としての側縁凸状部は平型導体の前端縁に近く該平型導体の前端部の自由部分が短いので、該前端部での撓み量がきわめて小さく、挿入口に対する位置決めが容易となる。しかも指は、ハンドル部を掴むので、指で凸状部が見えなくなることがなく、上記凸状部そして挿入口が目視しやすいので挿入が容易かつ確実に行われる。
【0015】
本発明において、掛止部は、爪部が平型導体の被掛止部の下面側に位置したときに、平型導体の上面に対して接触可能に位置して該平型導体を規制する規制部を有していることが好ましい。こうすることで、爪部で平型導体の両側の被掛止部を掛止した際、規制部が平型導体の上面を規制して、平型導体が上方に凸弯曲するように撓むことを防止、挿入側となる平型導体の前端部での形状が平坦を維持して安定する。
【0016】
本発明において、掛止部は、爪部の上面側に前方へ向け開口する掛止溝が形成され、該掛止溝の高さ方向での溝幅が平型導体の被掛止部をその厚み方向で支持可能な寸法となっていることが好ましい。かかる形態のもとでは、平型導体の凸状部を掛止溝で支持するので、支持が安定し、挿入作業中に平型導体がどのような姿勢であっても、これを確実に支持できる。
【0017】
本発明において、掛止部は、爪部の上面側に形成された掛止溝の溝幅が可変となっていることが、さらに好ましい。このような形態のもとでは、掛止溝の溝幅が可変なので、溝幅大として被掛止部の掛止を容易とし、掛止後溝幅を小さくして掛止を確実とする。
【0018】
本発明において、掛止部は、爪部が回動可能に回動軸で支持されているとともに、該回動軸まわりに回動可能なレバーがハンドル部に設けられていて、該レバーの操作により上記爪部が回動して掛止溝の溝幅を可変とすることができる。
【0019】
本発明おいて、掛止部は、両側での爪部同士間の間隔が可変となっていることが、さらに好ましい。こうすることで、一つの治具で、幅の異なる幅の異なる複数の平型導体のいずれにも対応できることとなる。
【0020】
本発明において、上述の治具を用いることで、治具のハンドル部を指で掴み、掛止部の爪部で平型導体の被掛止部を掛止した後、該掛止部で被掛止部を掛止した状態で平型導体の前端部をコネクタへ正規位置まで挿入して該前端部をコネクタの係止部に係止させてから、治具の掛止部から平型導体の被掛止部が抜けるように該治具を後退させるようにして、平型導体の挿入を完了する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように、治具がハンドル部と掛止部とを有し、掛止部に爪部を設けて、該爪部で平型導体の前端部の直後方に位置する被掛止部を掛止し、そのまま平型導体の前端部をコネクタの挿入口へ挿入することとしたので、前端部が治具から前方へ突出する部分が短くなり撓みにくくなるので、挿入口に対する位置決めがし易く、これに加え、指はハンドル部にあって上記掛止部そして被掛止部に対し視野がひらけているので、目視による作業が容易となる。さらには、治具で被掛止部を掛止したしたまま前端部を前方へ向け押すだけで、該前端部を確実に挿入口内へ所定位置まで挿入することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態としての平型導体挿入用治具を、平型導体そしてコネクタと共に、挿入前の状態でコネクタに対し後方から見た斜視図である。
図2図1の治具を前方から見た斜視図である。
図3】治具による平型導体のコネクタへの挿入手順を示し、(A)は準備状態、(B)は凸状部の掛止状態、(C)は挿入完了状態、(D)は挿入後に治具を外した状態を示す。
図4】本発明の他の実施形態の治具の斜視図であり、(A)は平型導体の凸状部に対する掛止前、(B)は掛止時を示し、いずれも平型導体の図示は省略されている。
図5】本発明のさらに他の実施形態の治具の斜視図であり、(A)は一つの幅状態、(B)は他の幅状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本実施形態としての平型導体挿入用治具(以下、「治具」という)10と、回路基板用電気コネクタ(以下「コネクタ」という)20と、該コネクタ20へ挿入接続される平型導体Pとを、挿入接続前の状態で示す斜視図である。
【0025】
平型導体Pは、コネクタ20への挿入方向の前端部P1の上面にコネクタ20の端子(図示せず)に接触接続される回路部P1−Aを有し、上記前端部P1の両側縁にはコネクタに設けられた係止部(図示せず)が係止して平型導体Pの抜けを防止するための係止凹部P1−Bが形成されている。上記前端部P1の直後方位置には、平型導体Pの両側縁から側方へ突出して形成された側縁凸状部P2が設けられている。該側縁凸状部P2は、コネクタ20への過挿入を防止するストッパとして機能するとともに、治具10により掛止されるように用いられる。本実施形態では、この側縁凸状部P2を治具10による掛止のための被掛止部として用いるが、被掛止部P2は側縁凸状部のみならず、孔部、切欠部等の切落し部としても形成できる。
【0026】
コネクタ20は、平型導体Pの前端部P1が挿入される挿入口21がコネクタ幅方向に細長いスリット状をなして該コネクタの後面に開口して形成されている。該挿入口21内には、複数の端子(図示せず)の接触部が上記コネクタ幅方向に配列されている。該端子は上腕部と下腕部とを有し、上記接触部は、例えば、図示の形態の平型導体Pの上面の回路部P1−Aに対して弾性圧をもって接触するように上記上腕部に設けられている。
【0027】
上記コネクタ20は、端子配列範囲外となるコネクタ幅方向両端位置に係止金具(図示せず)を有している。該係止金具は、端子と同様に、上腕部と下腕部とを有し、該下腕部で平型導体の下面を支持しつつ、上腕部に下向きに形成された係止突部が上記平型導体の係止凹部P1−Bに突入して係止し、平型導体Pの抜けを防止するようになっている。上記係止金具の上腕部は弾性を有していて、平型導体をコネクタの挿入口21に挿した際に、平型導体Pの前端部P1が上記係止突部に当接することで弾性撓みを生じ、該係止突部が上方へもち上げられて平型導体Pのさらなる挿入を可能としている。該平型導体Pの前端部P1が所定位置まで挿入されると、平型導体Pはその係止凹部P1−Bが上記係止金具の係止突部の位置にきて、その結果、上腕部の弾性撓みが解除されて原位置に復帰して係止突部が係止凹部内に留まるようになる。
【0028】
上記コネクタ20には、可動部材22が設けられている。該可動部材22は、該コネクタ20の前部にて、平型導体Pの挿入を容易とする開位置(図1の状態)と、端子を平型導体Pに対し圧するとともに係止金具の係止突部が平型導体Pの係止凹部P1−Bへの進入を深める閉位置との間を回動可能に、コネクタ20のハウジングもしくはハウジングに保持されている部材により支持されている。可動部材22は閉位置にてロック機構により該閉位置が維持されるようになっている。該閉位置では、可動部材は端子の上腕部に弾性撓みを生じさせて該端子の上腕部に設けられた接触部と平型導体との間の接圧を高めた状態を維持するとともに、係止金具の係止突部が平型導体の係止凹部に深く進入した状態を維持する。
【0029】
本実施形態のコネクタ20の挿入口21へ平型導体Pの前端部P1を挿入する際に用いられる治具10は、金属製あるいは合成樹脂製で、図2に見られるように、全体として縦長な厚板部材で棒状をなしている。
【0030】
上記治具10は、ハンドル部11とその下方に位置する掛止部12とを有している。
【0031】
上記ハンドル部11は、平型導体Pの被掛止部としての側縁凸状部P2を含めた該平型導体Pの全幅にほぼ等しい幅をもつ下部13と、該下部13の上端からその幅を狭めているテーパ部14と、該テーパ部14から上方に延びる上部15とを有している。該上部15の上端には、閉位置にあるときの可動部材22を開位置へもたらす際に、可動部材22の一部に掛止して該可動部材22をロック状態からロック解除状態にするための爪状の補助掛止部16が設けられている。
【0032】
掛止部12は、上記ハンドル部11の下部13の下端から該下部13の板面に対し前方に傾斜している。該掛止部12は、上記下部13と同じ幅をもつ該掛止部12の幅方向両端部で下方へ突出し前方へ延びる爪部17を有している。該爪部17は両方の爪部17の間における掛止部12の前端面よりも前方に突出しており、該爪部17の上面とこれに対向する掛止部12の下面との間に、前方へ向け開口する掛止溝18を形成している。該掛止溝18は平型導体Pの掛止に供し、上記爪部17の上面の大きさ、すなわち前後方向長さと幅方向寸法は上記凸状部P2とほぼ同じに設定されている。また掛止溝18の溝幅(上記爪部17の上面と掛止部12の下面との間の幅)は、上記側縁凸状部P2を掛止した状態で該側縁凸状部P2を搬送できる程度に支持可能な寸法となっている。
【0033】
上記掛止部12の幅方向両端に設けられた両爪部17の間での該掛止部12の下面は、該爪部17に対し上方へ没していて平坦な規制部19を形成している。該規制部19は、平型導体Pの側縁凸状部P2が上記掛止溝18に収められたときに、該規制部19が平型導体Pの上面に接面もしくは至近して接面可能な位置に定められている。
【0034】
次に、かかる本実施形態の治具を用いた平型導体のコネクタへの挿入要領を、図1そして図3にもとづき説明する。
【0035】
先ず、治具10のハンドル部11を指で掴み、図3(A)のように治具10の掛止部12を平型導体Pの被掛止部としての側縁凸状部P2の後方位置にもたらし、しかる後、図3(B)のように、掛止部12の掛止溝18へ平型導体Pの側縁凸状部P2を収めて掛止させる。この側縁凸状部P2の掛止部12への掛止は、片方の手の指でハンドル部11を掴みながら、掛止部12の両方の爪部17の間に位置する該掛止部12の下面をなす規制部19を平型導体Pの上面(コネクタへの挿入時に上方に向く面)に位置させてから平型導体の被掛止部たる側縁凸状部P2に向けて上記平型導体Pの上面に這わせるようにして上記掛止部12の爪部17を側縁凸状部P2に掛止させる。このとき、平型導体Pを指で摘むのが困難な作業性の悪い環境においては、ハンドル部11が掛止部12から延びている当該治具を利用すると、効果的である。作業性の悪い環境とは、例えば、次のような場合が挙げられる。
【0036】
第一には、例えば、スマートフォン、デジタルカメラ等の小型電子機器において、コネクタが実装されている回路基板の実装面の反対面に沿って延びている平型導体を回路基板の端縁位置で折り返して平型導体の前端部を上記コネクタに接続する場合である。
【0037】
第二には、一般の小型電子機器において、コネクタが実装されている回路基板に対して隣接して位置する別の回路基板から延びる平型導体を上記コネクタに接続する際に、平型導体の前端部より後方部分を上方に湾曲させることで、該前端部をコネクタの挿入口の位置までもってきてからコネクタに接続する場合である。
【0038】
第三には、例えば、無人航空機のカメラモジュールと本体との接続の際、平型導体の前端部を機器内の狭い空間内で上記本体の奥まった位置にあるコネクタに接続する場合である。
【0039】
いずれの場合においても、治具のハンドル部の先に掛止部が位置している関係上、該掛止部から離れているハンドル部を掴んで操作することで、掛止部をコネクタに向け近接移動できるので、作業性が良い。
【0040】
このように上記側縁凸状部P2を掛止溝18で掛止した状態で、平型導体Pの前端部P1を可動部材22が開位置にあるコネクタ20の挿入口21へ挿入し所定位置まで前方へ押し込む(図3(C)参照)。この状態では、既述したように、コネクタ20の係止金具の係止突部が平型導体Pの係止凹部P1−Bに進入して平型導体Pのコネクタ20からの抜けが防止されている。
【0041】
しかる後、治具10を後方へ引き、抜けが防止されている平型導体Pをコネクタ20内の所定位置に残した状態で該平型導体Pの側縁凸状部P2が掛止溝18から抜けて一連の作業が終了する。
【0042】
本実施形態によれば、ハンドル部11を掴む指が掛止部12から上方に離れて位置するので、平型導体Pの側縁凸状部P2が掛止部12により掛止される様子を目視でよく確認できるので、掛止が容易かつ確実となる。また、この掛止状態では、平型導体Pの上面が治具10の規制部19の面で規制されるので、平型導体Pは上方へ向け凸弯曲することなく平坦面を維持し、その結果、平型導体Pの前端部P1の姿勢は安定し、上記側縁凸状部P2よりも前方に位置する前端部P1の距離が短いことと相俟って、該前端部P1のコネクタ20の挿入口21への挿入は容易かつ確実となる。本実施形態の治具によると、平型導体に設けられた側縁凸状部等の被掛止部は掛止部の掛止溝に進入したとき、掛止溝の対向内面に対して傾いた姿勢をとることが多く、それにより被掛止部が上記対向内面の両方に当接して掛止が良好となる。また、治具の引き抜きのときには、掛止溝の対向内面が上記被掛止部の面に対して平行となるように治具の姿勢を変えることで、容易に引き抜ける。
【0043】
次に、本発明の実施形態について図4そして図5にもとづき説明する。
【0044】
先ず、図4の実施形態では、治具10は、爪部17が掛止部12の下面(両方の爪部17の間の部分での下面)に対し可動に設けられている。治具10は、ハンドル部11そして掛止部12の幅方向中央位置にレバー収容溝11Aが前後そして下方に開放して形成されていて、該レバー収容溝11Aにはレバー11Bが可動に収められている。該レバー11Bと上記爪部17とはピン11Cにより連結されている。したがって、レバー11Bを回動すると爪部17はピン11Cを介して同量だけ回動する。その結果、爪部17の上面に形成される掛止溝18の開きが可変となる。使用に際しては、図4(A)のようにレバー11Bを前方へ回動して上記爪部を下方へ傾けることで、掛止溝18の入口部の開きを大きくして平型導体Pの側縁凸状部P2の掛止を行いやすくする。側縁凸状部P2を掛止溝18に収めた後に、レバー11Bを図4(B)の位置にまで戻して上記掛止溝18を狭めて該掛止溝18内にて側縁凸状部P2をしっかりと掛止する。
【0045】
次に、図5に示されるさらに他の実施形態では、治具10はその幅を可変としており、幅の異なる平型導体に対応可能としている。図5(A)に見られるように、治具10は左右の治具半体10−1,10−2に分割形成されていて、両方の治具半体10−1と10−2は図示しない手段、例えばピン等で分離自在に結合されている。幅の広い平型導体に際しては、分割された治具半体10−1と治具半体10−2との間にスペーサ10−3を介入させて治具10の幅を広くしている。
【0046】
上記スペーサ10−3も、治具半体10−1,10−2同士間と同様、治具半体10−1そして治具半体10−2に対してピン等の図示しない手段により分離自在に結合される。上記スペーサ10−3を各種幅の複数の部材として用意すれば、この部材だけを用意するだけで、簡単に各種幅の平型導体に対応できる。
【符号の説明】
【0047】
10 治具 19 規制部
11 ハンドル部 20 コネクタ
11B レバー P 平型導体
12 掛止部 P1 前端部
17 爪部 P2 被掛止部(側縁凸状部)
18 掛止溝
図1
図2
図3
図4
図5