特許第6778061号(P6778061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6778061-可縮部材およびトンネル 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778061
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】可縮部材およびトンネル
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20201019BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20201019BHJP
   E21D 11/18 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   E21D11/00 Z
   E21D11/10 D
   E21D11/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-174239(P2016-174239)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-40147(P2018-40147A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一雄
(72)【発明者】
【氏名】谷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−232958(JP,A)
【文献】 特開2000−303797(JP,A)
【文献】 特開昭63−014945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル支保工を構成する吹付けコンクリートまたは鋼製支保工を横断するように配設され、前記トンネル支保工とともにトンネル支保構造を構成する可縮部材であって、
多孔質体を含むセメント系硬化体からなり、対向する二面を被加圧面とする本体部と、
前記本体部の前記被加圧面以外の面に被覆された補強体と、を備えており、
前記補強体は、前記本体部にらせん状に巻き付けられたシート材であることを特徴とする、可縮部材。
【請求項2】
前記シート材は、その縁同士が重ねられた状態でらせん状に巻き付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の可縮部材。
【請求項3】
前記シート材を前記本体部に多重に巻き付けることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の可縮部材。
【請求項4】
アーチ状あるいはリング状のトンネル支保工と、
前記トンネル支保工を横断するように配設された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の可縮部材と、を備えていることを特徴とする、トンネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可縮部材およびトンネルに関する。
【背景技術】
【0002】
NATM等の山岳トンネル工法では、掘削により露出した地山面に吹き付けられた吹付けコンクリート、地山面に沿って組み立てられた鋼製支保工および地山に打設されたロックボルト等のトンネル支保工により安全性を確保している。
大土被りのトンネルでは、トンネル周辺の地山の変形量が増大し、トンネル支保工に対して大きな応力が発生する場合がある。断層破砕帯や膨張性地山を掘進することにより形成されたトンネル等でも同様である。大きな応力が作用することが予想されるトンネルでは、トンネル支保工の剛性や強度を増加させる場合がある。また、特許文献1には、トンネル支保工の一部に形成された隙間に、体積比1.0%近い鋼繊維と中空粒子とを含有する繊維補強セメント系材料からなる可縮部材を介設し、地山の変形をこの可縮部材により吸収するトンネルの安定化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−232958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼製支保工の断面性能の向上や高剛性化や、吹付けコンクリートの増強や吹付け厚の増加等によりトンネル支保工の剛性や強度を増加させると、材料費および施工の手間が増加するとともに、トンネルの断面寸法にも影響がおよぶ。また、特許文献1の可縮部材は、材料が高価であるとともに、鋼繊維と中空粒子とを特殊な配合で混合するため、製造に手間がかかる。
そのため、本発明は、簡易かつ安価に製造することができ、なおかつ、トンネル内空の安定を確保することを可能とした可縮部材およびトンネルを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の可縮部材は、トンネル支保工を構成する吹付けコンクリートまたは鋼製支保工を横断するように配設され、前記トンネル支保工とともにトンネル支保構造を構成する。また、当該可縮部材は、対向する二面を被加圧面としていて、多孔質体を含むセメント系硬化体からなる本体部と、前記本体部の前記被加圧面以外の面に被覆された補強体とを備えており、前記補強体は、前記本体部にらせん状に巻き付けられたシート材であることを特徴としている。なお、補強体は、前記シート材の縁同士が重ねられた状態でらせん状に巻き付けられているのが望ましい。また、前記補強体は、前記シート材を多重に巻き付けて、複層構造にしてもよい。
また、本発明のトンネルは、アーチ状あるいはリング状のトンネル支保工と、前記トンネル支保工を横断するように配設された前記可縮部材とを備えていることを特徴としている。
【0006】
かかる可縮部材では、補強体によって脆性的な破壊を抑制し、本体部に適切な拘束力を与えることで、靭性を確保している。したがって、トンネル支保工を横断するように当該可縮部材を配設した場合には、本体部が変形した場合であっても、トンネルの支保構造の耐力が急激に低下することが防止される。また、補強体は、帯状のシート材を本体部にらせん状に巻き付けることにより形成されているため、本体部から剥がれ難い。そのため、本体部が変形した場合であっても、本体部の拘束効果を維持することができる。また、本体部が軸圧縮した際には、シート材が本体部の軸方向(トンネル周方向)にスライドして重なり合うので本体部に対する拘束効果が向上する。また、前記帯状のシート材を多重に巻き付けることで、拘束効果の向上および靭性の向上が期待できる。
【0007】
また、可縮部材は、多孔質材を使用することによりトンネル支保工よりも低強度の本体部が形成されている。一般的にコンクリートは強度と剛性が正の相関があり、本体部の強度が周辺のトンネル支保工の強度よりも低ければ、本体部の剛性も同様に周辺のトンネル支保工の剛性よりも小さい。したがって、地山に変形が生じた場合であっても、変形が可縮部材に集中するので、トンネルの支保構造を維持することを可能としている。
さらに、本体部は、セメント系固化材と多孔質材との混合体により構成されているため、鋼繊維を多量に含むコンクリートと比較して容易に練り混ぜることができ、製造時の手間の低減を可能としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可縮部材およびトンネルによれば、大土被りトンネルで大きな地圧が作用する地山条件でのトンネル掘削において、簡易かつ安価にトンネル内空の安定を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本実施形態に係るトンネルを示す断面図、(b)はトンネルの支保構造を示す縦断図である。
図2】(a)は可縮部材の設置状況を示す斜視図、(b)は他の形態に係る可縮部材の設置状況を示す斜視図である。
図3】可縮部材を示す斜視図である。
図4】本実施形態の可縮部材の実験結果を示すグラフである。
図5】他の形態の可縮部材の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、図1(a)に示すように、NATMにより構築するトンネル1において、トンネル支保工2の一部に可縮部材3が介設された支保構造について説明する。
本実施形態のトンネル支保工2は、図1(b)に示すように、吹付けコンクリート21、鋼製支保工22およびロックボルト23を備えている。吹付けコンクリート21および鋼製支保工22は、アーチ状(馬蹄形状)に形成されている。なお、吹付けコンクリート21および鋼製支保工22の形状は限定されるものではなく、リング状であってもよい。
【0011】
トンネル支保工2は、地山Gの掘削により露出した地山G(トンネル周囲3)に対して一次吹付け21a(吹付けコンクリート21の一部)を行った後、鋼製支保工22を建て込み、さら二次吹付け21b(吹付けコンクリート21の残り部分)およびロックボルト23の打設を行うことにより形成する。鋼製支保工22は、前回の施工サイクルで建て込まれた鋼製支保工22から所定の間隔をあけて建て込む。ロックボルト23の打設は、トンネル1の周囲の地山に対してロックボルト孔を穿孔し、このロックボルト孔にロックボルト23を挿入することにより行う。
【0012】
なお、トンネル支保工2の構成は、地山状況に応じて適宜変更することが可能である。例えば、吹付けコンクリート21の吹付け厚さや、鋼製支保工の配設ピッチや鋼材寸法等を適宜変更してもよい。また、ロックボルト23に代えてフォアポーリング工法やAGF工法等を採用してもよい。さらに、必要に応じて補助工法を組み合わせてもよい。また、吹付けコンクリート21は、必ずしも複数の層(一次吹付け21aおよび二次吹付け21b)に分ける必要はない。また、ロックボルト23は、一次吹付け21aの施工後に、鋼製支保工22の建て込みとともに打設してもよい。
【0013】
可縮部材3は、図1(a)に示すようにアーチ状に形成された吹付けコンクリート21を横断するように配設されている。本実施形態では、予め所定の位置に可縮部材3を配置した状態で地山Gに対して吹付けコンクリート21を吹き付けることで、可縮部材3を配置する。なお、可縮部材3の吹付けコンクリート21への設置方法は限定されるものではなく、例えば、吹付けコンクリート21の施工後に可縮部材を設置するための凹部を形成してもよい。または、吹付けコンクリート21の施工時に、箱抜き等により予め吹付けコンクリート21にトンネル軸方向に沿った間隙を形成しておき、この間隙に可縮部材3を配設してもよい。また、一次吹付け21aの施工後に、二次吹付け21bを横断するように可縮部材3を配置し、二次吹付け21bの施工を行ってもよい。
【0014】
本実施形態では、トンネル1の1つの横断面に対して可縮部材3が4カ所に配設されている。なお、可縮部材3の数および配置は限定されるものではない。本実施形態では、図2(a)に示すように、トンネル1の軸方向に対して、複数の可縮部材3が連続的に配設されている。隣り合う可縮部材3同士の間および可縮部材3の背面(地山Gの面)には、隙間が形成されているのが望ましい。また、可縮部材3は、間欠的に配設してもよい。また、可縮部材3は、図2(b)に示すように、鋼製支保工22を構成する鋼材22a同士の間に介設してもよい。
可縮部材3は、図3に示すように、円柱状に形成された本体部4と、本体部4の対向する二面(被加圧面)以外の面に周設(被覆)された帯状の繊維シート(シート材)5からなる補強体とを備えている。なお、可縮部材3の形状は限定されるものではなく、例えば、四角柱状であってもよい。
【0015】
本体部4は、モルタルの硬化体により形成されている。モルタルは、セメントと、多孔質材と、水とを含んでいる。本実施形態では、多孔質材として、パーライトを使用する。ここで、本明細書における「パーライト」とは、岩石材料(例えば黒曜石等の火山岩)を高温で急速に加熱発泡させてできる多孔質軽量骨材である。なお、多孔質材は、空隙を多く含む粒状体であればパーライトに限定されるものではなく、例えば、いわゆる人工軽量骨材、発泡煉石、ガラス発泡体または発泡スチロール粒を使用してもよい。また、多孔質材には、市販されている材料を使用してもよいし、可縮部材3用に製造した材料を使用してもよい。また、本体部4は、モルタルに限定されるものではなく、例えば、コンクリートであってもよい。本体部4の配合は限定されるものではないが、本体部4の圧縮強度が吹付けコンクリート21の圧縮強度よりも低くなる配合とする。なお、本体部4の圧縮強度は、多孔質材の強度に依存することが予想されるため、所望の圧縮強度が確保できる多孔質材を選定あるいは製造するのが望ましい。
【0016】
繊維シート5は、図3に示すように、その縁同士が重ねられた状態で、本体部4にらせん状に巻き付けられている。本実施形態では、繊維シート5として、ポリプロピレン繊維を縦横に織ることにより形成された織布を使用する。この織布は、いわゆる土木シートとして一般的に使用されている。繊維シート5は、上記織布を5cm巾の帯状に裁断して形成する。本実施形態では、繊維シート5を巻き付ける際の重ね合わせ代を1cmとする。なお、繊維シート5の幅および重ね合わせ代は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0017】
繊維シート5は、トンネル周方向に対して交差する方向で本体部4に巻き付ける。すなわち、本体部4のトンネル周方向の端面(被加圧面)は、繊維シート5で被覆されることなく露出している。なお、繊維シート5は、本体部4に対して、多重に巻き付けてもよい。また、繊維シート5を構成する繊維はポリプロピレンに限定されるものではなく、例えば、アラミド繊維やポリエチレン繊維等であってもよい。
本実施形態では、本体部4にプライマーを塗布して、本体部4側面の凹凸を平滑化した後、エポキシ樹脂を適量塗布する。その後、繊維シート5を巻き付けた後、可縮部材3(繊維シート5)の外周囲にエポキシ樹脂を塗布して繊維シート5に浸み込ませる。なお、プライマーは必要に応じて塗布すればよい。また、接着剤はエポキシ樹脂に限定されるものではない。さらに塗布範囲も本体部4側面全体に必ずしも塗布する必要はない。
【0018】
本実施形態の可縮部材3によれば、繊維シート5により脆性的な破壊を抑制し、本体部4に適切な拘束力を与えることで、靭性を確保している。したがって、本体部4が変形した場合であっても、トンネルの支保構造としての耐力が急激に低下することが防止されている。また、帯状の繊維シート5は、本体部4にらせん状に巻き付けられているため、本体部4がトンネル周方向に圧縮(軸圧縮)された場合であっても、繊維シート5はスライドして、たわむことなく本体部の拘束効果を維持することができる。また、本体部4が軸圧縮した際に繊維シート5がスライドすることで、繊維シート5が積層された状態となるため、側方の拘束効果が向上する。
【0019】
また、可縮部材3は、吹付けコンクリート21よりも低強度の本体部4を備えているため、外力によるトンネルの支保構造の変形を可縮部材3に集中させることができる。そのため、トンネル支保工2の変形が生じることがなく、トンネル1の覆工(支保構造)としての安全性を維持することができる。本体部4は、繊維シート5により被加圧面以外の外周囲が拘束されているため、本体部4の圧縮時に生じる側方への変形が抑制される。そのため、本体部4は三軸圧縮状態となり、降伏後も可縮部材3全体として応力が急激に低下することがない。また、骨材として、多孔質材(パーライト)を使用しているため、吹付けコンクリート21よりも低強度の本体部4を容易に形成することができる。また、本体部4は、セメント系固化材と多孔質材との混合体により構成されているため、鋼繊維を多量に含むコンクリートと比較して容易に練り混ぜることができ、製造時の手間の低減を可能としている。可縮部材3を構成する本体部4および繊維シート5は、比較的入手しやすい材料により構成されているため、安価である。
【0020】
次に、本実施形態の可縮部材3について一軸圧縮試験を行った結果について説明する。
本実験では、パーライトを骨材としたモルタルからなる円柱状の本体部4の側面(被加圧面以外の面)に、ポリプロピレン製の繊維シート5をらせん状に巻き付けた可縮部材3について、一軸圧縮試験を行った。可縮部材3は、直径φ100mm、高さH200mmの本体部4に、5cm巾の繊維シート5を重ね代1cmで巻き付けた。
本実験では、繊維シート5を一重に巻き付けたもの(実施例1)と、二重に巻き付けたもの(実施例2)について一軸圧縮試験を行った。また、比較例1として、本体部4の高さ(H200mm)と同じ幅の繊維シートを本体部4の外面に1周させた供試体についても一軸圧縮試験を行った。さらに、比較例2として本体部4にエポキシ樹脂のみを塗布した可縮部材に対しても一軸圧縮試験を行った。
試験結果を図4に示す。
【0021】
図4に示すように、エポキシ樹脂のみ(比較例2)では拘束効果がほとんどなく、本体部の降伏後、すぐに応力が低下する結果となった。一方、実施例1は、本体部4の降伏後、30%ひずみまで応力が持続する結果となった。したがって、本実施形態の可縮部材3により、本体部4の降伏後も拘束効果が得られることが確認できた。
また、比較例1と実施例1とを比較すると、比較例1では、ひずみ15%を超えたあたりから応力が低下しはじめるのに対し、実施例1はひずみが30%程度になるまで応力低下が生じなかった。これは、繊維シート5をらせん状に巻き付けることで、本体部4に軸圧縮(トンネル周方向の圧縮)が生じても、繊維シート5には剥がれが生じず、繊維シート5の破断強度まで繊維シート5が本体部4の側方変形を抑制したためによる。したがって、繊維シート5をらせん状に巻き付けることで、本体部4の拘束効果が向上することが実証された。
【0022】
また、本体部4の降伏後の硬化過程の応力−ひずみ関係の傾き(勾配)の傾向は、比較例1と実施例1との間でほとんど同じであった。そのため、繊維シート5をらせん状に巻き付けることで、本体部4の拘束効果(側方への変形抑制効果)は繊維シートを普通に巻き付けた場合(比較例1)と同じでありながら、より大きな軸ひずみまで追随できることがわかる。
ここで、「硬化過程」とは、本体部4の降伏後の軸ひずみの範囲にあって、軸圧縮変形によって生じる本体部4の側方変形が、繊維シート巻付け時の緩み、弛みを解消し、繊維シート5が本体部4の側方変形を有効に拘束しだすことによって、軸ひずみの増加に伴い軸応力が増加していく軸ひずみの範囲を意味する。
【0023】
また、繊維シート5を二重に巻いた実施例2は、一重に巻いた実施例1よりも硬化過程の勾配が大きくなる。また、実施例1が30%ひずみまで応力が持続するのに対し、実施例2では35%ひずみまで応力が持続することを達成できた。したがって、繊維シート5を二重に巻くことで、可縮部材3の靭性がより向上することがわかる。また、繊維シート5を複数層(複数回)巻き付ける場合に、層毎に繊維シートの種類を、変更することで(例えば、1重目を2700N/5cm幅、2重目を1000N/5cm幅とするなど)、硬化過程の勾配を調整することが可能であると考えられる。
【0024】
次に、パーライトを骨材としたモルタルからなる20cm角の立方体の本体部4に5cm巾の繊維シート5を重ね代1cmで巻き付けた可縮部材3について一軸圧縮試験を行った結果について説明する。本実験では、繊維シート5を一重に巻き付けたもの(実施例3)と、二重に巻き付けたもの(実施例4)について行った。試験結果を図5に示す。
図5に示すように、実施例3では40%ひずみまで応力が持続することが達成でき、実施例4では50%ひずみまで応力が持続することを達成できた。この結果、本体部4が角柱状の場合であっても、繊維シート5を二重に巻いた実施例4が、一重に巻いた実施例3よりも硬化過程の勾配が大きくなる結果となった。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、可縮部材3は、設計上で必要とされる強度において、本体部4および繊維シート5(補強体)の剛性および強度を変更することができる。
繊維シート5は、本体部4の側面を拘束することができれば、必ずしもその縁同士を重ねた状態で巻き付ける必要はない。
補強体を構成する材料は、帯状のシート材であれば、必ずしも繊維シートである必要はない。
【符号の説明】
【0026】
1 トンネル
2 トンネル支保工
21 吹付けコンクリート
22 鋼製支保工
3 可縮部材
4 本体部
5 繊維シート(補強体)
図1
図2
図3
図4
図5