特許第6778068号(P6778068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778068
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】耐熱性が改善された色素製剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/43 20160101AFI20201019BHJP
   C09B 61/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   A23L5/43
   C09B61/00 C
   C09B61/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-191064(P2016-191064)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-50542(P2018-50542A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安部 聖子
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−263650(JP,A)
【文献】 特開2016−137427(JP,A)
【文献】 特表2014−500782(JP,A)
【文献】 特開平11−188256(JP,A)
【文献】 J. Fd Technol.,1980年,15(5),pp.501-514
【文献】 Food Chemistry,1980年,5(1),pp.81-90
【文献】 FOOD AND BIOPRODUCTS PROCESSING,2014年,92(1),pp.89-97
【文献】 J Appl Phycol,2016年 4月,28(2),pp.1063-1070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D7/00−9/06,
A23L5/40−5/49,
A23L27/00−27/60,
A23L31/00−33/29,
B01J13/00−13/22,
C09B1/00−62/84
CAPlus/REGISTRY/WPIDS/FSTA(STN),
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビートレッド又はスピルリナ青色素を含有する水相と、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂を含有する油相とを乳化して油中水型乳化組成物を得る工程と、該油中水型乳化組成物を乾燥する工程とを含むことを特徴とする色素製剤の耐熱性の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が改善されたビートレッド製剤及びスピルリナ青色素製剤並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベニコウジ色素、コチニール色素等の色素が、広く加工食品に使用されている。これらの色素は耐熱性を有しており、加熱工程を経て製造される加工食品にも問題なく使用されている。しかし同じ天然色素であっても、ビートレッド及びスピルリナ青色素は熱に弱いことで知られており、製造中に長時間加熱される加工食品に使用すると、退色又は変色してしまうという問題があった。したがって、ビートレッド及びスピルリナ青色素の耐熱性を改善する技術が求められていた。
【0003】
ビートレッドの耐熱性を改善するために、ビートレッドの油溶化物と酸化防止剤とからなることを特徴とする食品用着色剤(特許文献1)、ビートレッドの油溶化物と、酸化防止剤と、ブドウ種子抽出物とを含有する、製造の際に加熱される加工食品用の着色剤であって、上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対する上記ブドウ種子抽出物の含有量が0.1質量部以上であることを特徴とする着色剤(特許文献2)等が検討されているが、未だ十分に満足しうる技術は見出されていない。また、スピルリナ青色素についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−129615号公報
【特許文献2】特開2012−183043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加工食品等の着色に用いられる、耐熱性が改善されたビートレッド製剤及びスピルリナ青色素製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ビートレッド及びスピルリナ青色素を特定の乳化剤で食用油脂中に乳化させ、さらに乾燥して水分含有量を一定量以下にして得られる色素製剤が、耐熱性が改善されたものであることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)からなっている。
(1)ビートレッド又はスピルリナ青色素を含有する固体相が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂を含有する油相に分散している油性組成物であって、上記固体相中の水分含有量が15質量%以下である油性組成物であることを特徴とする色素製剤。
(2)ビートレッド又はスピルリナ青色素を含有する水相と、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂を含有する油相とを乳化して油中水型乳化組成物を得る工程と、該油中水型乳化組成物を乾燥する工程とを含むことを特徴とする色素製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の色素製剤は耐熱性を有しており、製造中に長時間加熱される加工食品にも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いられるビートレッドは、アカザ科ビートの赤い根より得られる色素であり、その主成分はイソベタニン及びベタニンである。
【0010】
ビートレッドとしては、甜菜紅色素(商品名;青島鵬遠康華天然産物社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明にはこれを用いることができる。
【0011】
本発明に用いられるスピルリナ青色素は、ユレモ科スピルリナの全藻より得られる色素であり、その主成分はフィコシアニンである。
【0012】
スピルリナ青色素としては、リナブルーG1(商品名;DICライフテック社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明にはこれを用いることができる。
【0013】
本発明における固体相は、ビートレッド又はスピルリナ青色素を含有するものであって、水分含有量が15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。水分含有量がこの範囲内であると、色素製剤の耐熱性が改善するため好ましい。尚、本発明における固体相にアルコール等の揮発性成分が含まれる場合は、該揮発性成分は水分とみなす。
【0014】
固体相中の水分含有量は、本発明の色素製剤中の水分は全て固体相中に含まれているとみなして、次式に基づいて求められる。
【0015】
【数1】
【0016】
上記式中の「本発明の色素製剤中の油相質量」は、公知の方法にて本発明の色素製剤中の油溶性成分含有量を測定し、該含有量を本発明の色素製剤中の油相含有量とみなして、求めることができる。
【0017】
上記式中の「本発明の色素製剤中の水分質量」は、加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)を用いて本発明の色素製剤中の水分含有量を測定することにより求めることができる。
【0018】
尚、水分を除いた固体相質量があらかじめ判明している場合、本発明の色素製剤中の水分は全て固体相中に含まれているとみなして、固体相中の水分含有量を次式に基づいて求めることもできる。
【0019】
【数2】
【0020】
本発明における固体相は、油相に分散した状態である。油相に分散した状態の固体相のメジアン径は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.02〜3μmであることがより好ましく、0.03〜0.5μmであることがさらに好ましい。
【0021】
本発明における固体相のメジアン径は、例えば、色素製剤をヘキサンに分散させて試験液を調製し、該試験液中の固体相のメジアン径を動的光散乱式粒径分布測定装置(型式:LB−500;堀場製作所社製)等を用いて測定することにより求めることができる。測定条件としては、粒子径基準を体積、試料屈折率を1.600、分散媒屈折率を1.376として設定することができる。
【0022】
本発明に用いられるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、ポリグリセリンと縮合リシノール酸とのエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。該ポリグリセリンとしては、平均重合度が2〜15程度のものが挙げられる。好ましくは平均重合度が3〜10程度のものである。具体的には、例えば、トリグリセリン、テトラグリセリン又はヘキサグリセリン等が好ましく挙げられる。該縮合リシノール酸は、リシノール酸を加熱し、重縮合反応させて得られる混合物である。該縮合リシノール酸としては、平均重合度が2〜10程度のものが挙げられる。好ましくは平均重合度が3〜6程度のものである。
【0023】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては、下記乳化力試験における乳化相の割合が70%以上であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを用いることが好ましい。特に、カマボコ等の水分含有量の多い加工食品では、該割合は、好ましくは80%以上である。該割合が80%以上であると、本発明の色素製剤の耐熱性がさらに改善される。これは、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの該乳化相の割合が高い程、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルによりビートレッド又はスピルリナ青色素がより強固に覆われることになり、該色素が加工食品中の水分の影響を受けにくくなるためと考えられる。
<乳化力試験>
1)500mL容ビーカーに菜種サラダ油(商品名;岡村製油社製)200g及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステル0.80gを入れて混合し、60℃に加温して油相とする。
2)1)の油相をミキサー部と邪魔板との間隙を2.5cmに固定した乳化機(型式:T.K.ホモミクサーMARKII 2.5型;プライミクス社製)を用いて3000rpmで撹拌しながら、該油相に60℃に加温した精製水200gを90秒間かけて加える。
3)さらに、60℃に調温しながら10000rpmで3分間撹拌して油中水型乳化組成物を得る。
4)3)で得た油中水型乳化組成物を100mL容有栓メスシリンダーに100mL入れ37℃の恒温器で120時間保存する。保存後、油相、乳化相及び水相に分離したメスシリンダーの内容物について乳化相の体積(mL)を測定し、次式に基づいて乳化相の割合(%)を計算する。
【0024】
【数3】
【0025】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては、例えば、SYグリスターCR−500(商品名;上記乳化力試験での乳化相の割合75%、阪本薬品工業社製)、Palsgaard 4150(商品名;上記乳化力試験での乳化相の割合89%;パルスガード社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0026】
本発明に用いられる食用油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はないが、例えばオリーブ油、ごま油、こめ油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、パーム油、パームオレイン、パーム核油、ひまわり油、ぶどう油、綿実油、やし油、落花生油等の植物油脂が好ましい。食用油脂の中でもごま油、こめ油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、ひまわり油、ぶどう油及び綿実油からなる群より選択される一種以上の植物油脂のサラダ油がさらに好ましく、菜種サラダ油が特に好ましい。本発明においては、食用油脂を一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0027】
本発明の色素製剤中には、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、例えば、ビートレッド又はスピルリナ青色素以外の色素、ショ糖又はフルクトース等の糖類、酸化防止剤(例えば、酵素処理ルチン、酵素処理ヘスペリジン、アスコルビン酸ナトリウム、抽出トコフェロール、アスコルビン酸パルミチン酸エステル等)、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル以外の乳化剤等を添加しても良い。
【0028】
本発明の色素製剤は、ビートレッド又はスピルリナ青色素を含有する水相と、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂を含有する油相とを乳化して油中水型乳化組成物を得る工程と、該油中水型乳化組成物を乾燥する工程とを含む製造方法により製造することができる。このような色素製剤の製造方法も、本発明の1つである。製造方法の一例を下記に示す。
【0029】
本発明では、先ずビートレッド又はスピルリナ青色素を含有する水相とポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂を含有する油相とを乳化して油中水型乳化組成物を得る。具体的には、食用油脂にポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを加え、40〜90℃、好ましくは50〜80℃に加温して溶解し、油相とする。該油相を撹拌しながら、この中に10〜70℃、好ましくは20〜60℃で溶解したビートレッド又はスピルリナ青色素並びに水又は含水アルコールからなる水相をゆっくり加え、例えばクレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)等を用いて、回転数6000〜20000rpm、撹拌時間1〜60分間で乳化する方法により油中水型乳化組成物を得ることができる。
【0030】
上記水相100質量%中の、ビートレッド又はスピルリナ青色素の含有量に特に制限はないが、例えばビートレッド(色価500換算)又はスピルリナ青色素(色価180換算)が通常0.1〜60質量%、好ましくは1〜50質量%であり、残余が水又は含水アルコールとなるように調整するのが好ましい。水相中のビートレッド又はスピルリナ青色素、並びに水又は含水アルコールの含有量がこのような範囲であると、十分な量のビートレッド又はスピルリナ青色素が溶解した水相を調製可能であるため好ましい。尚、上記水相の調製に用いられる水としては、例えば蒸留水、イオン交換樹脂処理水(イオン交換水)、逆浸透膜処理水及び限外ろ過膜処理水等の精製水並びに水道水等の飲料水等が挙げられる。また、上記水相の調製に用いられる含水アルコールのアルコールとしては、例えばエタノール、メタノール等の一価アルコール等が挙げられる。含水アルコールを使用する場合は、水:アルコール(体積比)を99:1〜60:40とすることが好ましく、97:3〜80:20とすることがより好ましい。
【0031】
上記油相100質量%中の、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂の含有量に特に制限はないが、例えばポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが通常0.1〜70質量%、好ましくは0.5〜60質量%、より好ましくは1〜50質量%であり、残余が食用油脂となるように調整するのが好ましい。油相中のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び食用油脂の含有量がこのような範囲であると、乳化安定性が良好な油中水型乳化組成物が得られるため好ましい。
【0032】
上記油相に加える水相の比率(質量比)は、例えば、油相1に対して0.01〜2とすることが好ましい。より好ましくは、油相1に対して水相を0.05〜1加える。このような範囲であると、乳化安定性が良好な油中水型乳化組成物が得られるため好ましい。
【0033】
上記油中水型乳化組成物を製造するための装置としては特に限定されず、例えば、撹拌機、加熱用のジャケット及び邪魔板等を備えた通常の撹拌・混合槽を用いることができる。装備する撹拌機としては、例えばTKホモミクサー(プライミクス社製)又はクレアミックス(エムテクニック社製)等の高速回転式ホモジナイザーが好ましく用いられる。また、これらの装置で乳化した液を高圧式均質化処理機を使用して、さらに均質化しても良い。ここで高圧式均質化処理機としては、例えばAPVゴーリンホモジナイザー(APV社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、スターバースト(スギノマシン社製)又はナノマイザー(ナノマイザー社製)等を好ましく使用することができる。上記均質化処理機に代えて、例えば超音波乳化機等の均質化処理機を用いても良い。
【0034】
次いで、上記油中水型乳化組成物を乾燥して固体相中の水分含有量を15質量%以下とすることにより、耐熱性が改善された本発明の色素製剤が得られる。該乾燥の方法としては特に制限はないが、例えば、減圧乾燥、凍結乾燥等が挙げられ、減圧乾燥が好ましい。
【0035】
減圧乾燥では自体公知の減圧乾燥装置を使用することができ、減圧乾燥装置の使用条件に特に制限はないが、減圧乾燥時の密閉系内の真空度は、通常100〜50000Pa、好ましくは1000〜40000Paであり、減圧乾燥時の密閉系内の温度は、通常20〜90℃、好ましくは40〜75℃である。減圧乾燥する時間は、通常10〜180分、好ましくは30〜120分である。
【0036】
本発明の色素製剤は、例えば、パン類、食用油脂加工品類、和洋菓子類、水産加工品類、畜肉加工品類、調味料類等の加工食品及び口紅等の化粧品の着色に使用できる。また、本発明の色素製剤は、加工食品中に含まれる水分含有量の多少に拘らず使用することができる。水分含有量の多い加工食品としては、例えば、カマボコ、ハム・ソーセージ、団子、大福餅、パン、ケーキ、グミ、ジャム、フラワーペースト等が挙げられる。水分含有量の少ない加工食品としては、例えば、チョコレート、食用油脂加工品類(パン用クリーム等)、フレーバーオイル、粉末調味料等が挙げられる。
【0037】
本発明の色素製剤を用いて加工食品を着色する方法に特に制限はなく、自体公知の方法により実施することができる。本発明の色素製剤の加工食品に対する添加量は、その色価や加工食品の種類等により異なるが、加工食品100質量%中、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜3.0質量%である。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<ビートレッド製剤の製造>
[製造例1]
1)菜種サラダ油(岡村製油社製)108g及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:SYグリスターCR−500;阪本薬品工業社製)18gを300mL容トールビーカーに入れて60℃に加温し、スパーテルで撹拌して溶解して油相とした。
2)ビートレッド粉末(商品名:甜菜紅色素;色価500;水分含有量2.7質量%;青島鵬遠康華天然産物社製)18.9gをイオン交換水35.1gに溶解して60℃に加温して水相とした。
3)1)で得た油相をクレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて4500rpmで撹拌しながら、2)で得た水相を該油相に加え、更に該クレアミックスにて60℃、12000rpmの条件で10分間撹拌し、油中水型乳化組成物を得た。
4)3)で得た油中水型乳化組成物のうち100gを500mL容ナス型フラスコに入れ、ダイヤフラム真空ポンプ(型式:V−700;日本ビュッヒ社製)を用いて、温度60℃の条件で該フラスコ内の真空度を30000Paから徐々に2500Paとし、さらに2500Paで45分間減圧乾燥し、ビートレッド製剤1を80.8g得た。該剤の水分含有量を加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)で測定したところ0.7質量%であり、固体相中の水分含有量を算出したところ、5質量%となった。
【0040】
[製造例2]
製造例1のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:SYグリスターCR−500;阪本薬品工業社製)18gに替えて、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:Palsgaard 4150;パルスガード社製)18gを使用したこと以外は、製造例1と同様に製造し、ビートレッド製剤2を80.7g得た。該剤の水分含有量を加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)で測定したところ0.6質量%であり、固体相中の水分含有量を算出したところ、5質量%となった。
【0041】
[製造例3]
製造例1と同様の方法で油中水型乳化組成物を調製し、油中水型乳化組成物のうち100gを500mL容ナス型フラスコに入れ、ダイヤフラム真空ポンプ(型式:V−700;日本ビュッヒ社製)を用いて、温度60℃の条件で該フラスコ内の真空度を30000Paから徐々に10000Paとし、さらに10000Paで5分間減圧乾燥することにより、ビートレッド製剤3を94.8g得た。該剤の水分含有量を加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)で測定したところ15.4質量%であり、固体相中の水分含有量を算出したところ、59質量%となった。
【0042】
また、後述するビートレッド製剤の耐熱性の評価では、市販のビートレッド油中水型乳化組成物(色価20;水分含有量18質量%)をビートレッド製剤4として、ビートレッド水溶液〔ビートレッド粉末(商品名:甜菜紅色素;色価500;水分含有量2.7質量%;青島鵬遠康華天然産物社製)35gを、水65gに溶解させたもの〕をビートレッド製剤5として用いた。
尚、ビートレッド製剤4は、水分含有量が18質量%であって15質量%を超えていることから、固体相中の水分含有量が15質量%以下ではないビートレッド製剤であり、ビートレッド製剤5は油中水型乳化組成物ではないビートレッド製剤である。
【0043】
ここで、ビートレッド製剤1及び2は本発明の実施例であり、ビートレッド製剤3〜5は、それらに対する比較例である。
【0044】
<チョコレートにおけるビートレッド製剤の耐熱性の評価>
準チョコレート(商品名:ルセーラホワイトチョコレート;日新化工社製)を40℃に加熱し、ビートレッド製剤1〜4のいずれかを表1に示す添加量加えて混合し、各50gの着色チョコレートを得た。着色チョコレートを15gずつ2個のプラスチックカップに小分けし、1個は20℃で冷やし、未加熱チョコレートを得た。もう1個は100℃の通風乾燥機で加熱し、着色チョコレートが90℃に達温後、90℃で40分間加熱し、よくかき混ぜた後20℃で冷やし固め、加熱チョコレートを得た。
尚、表1の添加量は、用いたビートレッドの色価換算での色素量が同じになるよう調整されている。
【0045】
【表1】
【0046】
未加熱チョコレートと加熱チョコレートについて、分光測色計(型式:CM−700d、コニカミノルタセンシング社製)を用いて色調(L*a*b*値)を測定し(測定径:直径8mm)、未加熱チョコレートのa*値から加熱チョコレートのa*値を減じた値(以下「a*値の差」という)を算出した。また、測定された色調及び次式に基づいて、未加熱チョコレートと加熱チョコレートのL*a*b*色差(ΔE*(ab))を算出した。
a*値の差、L*a*b*色差(ΔE*(ab))のぞれぞれを、表2に示す。
【0047】
【数4】
【0048】
上記式中、L*は数値が大きい程、明るい色であることを表す。a*は正の数値の場合、数値が大きい程、赤みの強い色であることを表す。b*は正の数値の場合、数値が大きい程、黄みが強い色であることを表す。ΔE*(ab)は数値が大きい程、変色の程度が大きいことを表す。
尚、測定した未加熱チョコレート及び加熱チョコレートのa*値は、全て正の数値であった。
【0049】
【表2】
【0050】
表2の結果から明らかなように、ビートレッド製剤1及び2を用いて着色したチョコレートは、赤みの減少の程度を示すa*値の差、及びL*a*b*色差(ΔE*(ab))の双方が、固体相中の水分含有量が15質量%超であるビートレッド製剤3及び市販のビートレッド製剤であるビートレッド製剤4で着色したチョコレートよりも小さく、相対的にビートレッド製剤の耐熱性が改善されていた。
【0051】
<カマボコにおけるビートレッド製剤の耐熱性の評価>
白身魚すり身(商品名;大冷社製)を解凍し、フードプロセッサー(型式:MK−K48;パナソニック社製)を用いて均一になるまで破砕した。破砕した該調理すり身に、ビートレッド製剤1及び2、4及び5のいずれかを表3に示す添加量加え、スパーテルで均一になるまで混合し、各100gの着色すり身を得た。
得られた着色すり身90gをナイロン製の耐熱袋(15×24cm)に入れて真空包装し、該袋内の着色すり身を厚さ約10mmに均一に整え、5℃で約18時間保存した。着色すり身を真空包装から取り出し、半分に切り、1つは未加熱カマボコとした。もう1つは90℃のウォーターバスで30分間加熱し、加熱カマボコを得た。
尚、表3の添加量は、用いたビートレッドの色価換算での色素量が同じになるよう調整されている。
【0052】
【表3】
【0053】
未加熱カマボコと加熱カマボコについて、分光測色計(型式:CM−700d、コニカミノルタセンシング社製)を用いて色調(L*a*b*値)を測定し(測定径:直径8mm)、未加熱カマボコのa*値から加熱カマボコのa*値を減じた値(以下「a*値の差」という)を算出した。結果を表4に示す。尚、測定した未加熱カマボコ及び加熱カマボコのa*値は、全て正の数値であった。
【0054】
【表4】
【0055】
表4の結果から明らかなように、ビートレッド製剤1及び2を用いて着色したカマボコは、赤みの減少の程度を示すa*値の差が、市販のビートレッド製剤であるビートレッド製剤4及び市販のビートレッド製剤を用いたビートレッド製剤5で着色したカマボコよりも小さく、相対的にビートレッド製剤の耐熱性が改善されていた。
【0056】
<スピルリナ青色素製剤の製造>
[製造例1]
1)菜種サラダ油(岡村製油社製)108g及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:Palsgaard 4150;パルスガード社製)18gを300mL容トールビーカーに入れて50℃に加温し、スパーテルで撹拌して溶解して油相とした。
2)スピルリナ青色素粉末(商品名:リナブルーG1;色価180;水分含有量1.4質量%;DICライフテック社製)10.8gをイオン交換水43.2gに溶解して50℃に加温して水相とした。
3)1)で得た油相をクレアミックス(型式:CLM−0.8S;エム・テクニック社製)を用いて4500rpmで撹拌しながら、2)で得た水相を該油相に加え、更に該クレアミックスにて50℃、12000rpmの条件で10分間撹拌し、油中水型乳化組成物を得た。
4)3)で得た油中水型乳化組成物のうち100gを500mL容ナス型フラスコに入れ、ダイヤフラム真空ポンプ(型式:V−700;日本ビュッヒ社製)を用いて、温度45℃の条件で該フラスコ内の真空度を30000Paから徐々に2500Paとし、2500Paで25分間減圧乾燥し、さらに温度50℃の条件とし、2500Paで45分間減圧乾燥することにより、スピルリナ青色素製剤1を76.3g得た。該剤の水分含有量を加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)で測定したところ0.5質量%であり、固体相中の水分含有量を算出したところ、6質量%であった。
【0057】
[製造例2]
製造例1と同様の方法で油中水型乳化組成物を調製し、油中水型乳化組成物のうち100gを500mL容ナス型フラスコに入れ、ダイヤフラム真空ポンプ(型式:V−700;日本ビュッヒ社製)を用いて、温度45℃の条件で該フラスコ内の真空度を30000Paから徐々に13000Paとし、13000Paで7分間減圧乾燥し、さらに2500Paで25分間減圧乾燥することにより、スピルリナ青色素製剤2を79.9g得た。該剤の水分含有量を加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)で測定したところ5.0質量%であり、固体相中の水分含有量を算出したところ、40質量%であった。
【0058】
[製造例3]
製造例1と同様の方法で油中水型乳化組成物を調製し、油中水型乳化組成物のうち100gを500mL容ナス型フラスコに入れ、ダイヤフラム真空ポンプ(型式:V−700;日本ビュッヒ社製)を用いて、温度45℃の条件で該フラスコ内の真空度を30000Paから徐々に13000Paとし、13000Paで7分間減圧乾燥し、さらに2500Paで2分間減圧乾燥することにより、スピルリナ青色素製剤3を92.2g得た。該剤の水分含有量を加熱乾燥式水分計(型式:MX−50;エー・アンド・デイ社製)で測定したところ17.7質量%であり、固体相中の水分含有量を算出したところ、73質量%であった。
【0059】
ここで、スピルリナ青色素製剤1は本発明の実施例であり、スピルリナ青色素製剤2及び3は、それらに対する比較例である。
【0060】
<チョコレートにおけるスピルリナ青色素製剤の耐熱性の評価>
準チョコレート(商品名:ルセーラホワイトチョコレート;日新化工社製)を40℃に加熱し、スピルリナ青色素製剤1〜3を表5に示す添加量加えて混合し、各50gの着色チョコレートを得た。着色チョコレートを15gずつ2個のプラスチックカップに小分けし、1個は20℃で冷やし、未加熱チョコレートを得た。もう1個は100℃の通風乾燥機で加熱し、着色チョコレートが90℃に達温後、90℃で40分間加熱し、よくかき混ぜた後15℃で冷やし固め、加熱チョコレートを得た。
尚、表5の添加量は、用いたスピルリナ青色素の色価換算での色素量が同じになるよう調整されている。
【0061】
【表5】
【0062】
未加熱チョコレートと加熱チョコレートについて、分光測色計(型式:CM−700d、コニカミノルタセンシング社製)を用いて色調(L*a*b*値)を測定し(測定径:直径8mm)、未加熱チョコレートのb*値の絶対値から加熱チョコレートのb*値の絶対値を減じた値(以下「b*値の差」という)を算出した。また、測定された色調及び次式に基づいて、未加熱チョコレートと加熱チョコレートのL*a*b*色差(ΔE*(ab))を算出した。b*値の差、L*a*b*色差(ΔE*(ab))のぞれぞれを、表6に示す。
【0063】
【数5】
【0064】
上記式中、L*は数値が大きい程、明るい色であることを表す。a*は負の数値の場合、数値が小さい程、緑みの強い色であることを表す。b*は負の数値の場合、数値が小さい程、青みの強い色であることを表す。ΔE*(ab)は数値が大きい程、変色の程度が大きいことを表す。
尚、測定した未加熱チョコレート及び加熱チョコレートのb*値は、全て負の数値であった。
【0065】
【表6】
【0066】
表6の結果から明らかなように、スピルリナ青色素製剤1を用いて着色したチョコレートは、青みの減少の程度を示すb*値の差、及びL*a*b*色差(ΔE*(ab))の双方が、固体相中の水分含有量が15質量%超であるスピルリナ青色素製剤2及び3で着色したチョコレートよりも小さく、相対的にスピルリナ青色素製剤の耐熱性が改善されていた。