(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料ガスを燃焼させて例えば発電機を駆動するガスエンジンと、ガスエンジンから排出される排ガスを駆動源としてガスエンジンに圧縮空気を送り込む過給機とを備えたガスエンジンシステムが知られている。
【0003】
ところで、ガスエンジンとして、シリンダの燃焼室内に供給された燃料ガスと圧縮空気の混合気に種火(点火プラグによる火花やパイロット油の自発火)によって点火する火炎伝播方式のガスエンジンを用いた場合には、燃焼室の壁面近くで燃料ガスが燃え残り、その未燃燃料ガスが排ガスと共にガスエンジンから排出される。例えば、燃料ガスとしてメタンを主成分とする天然ガスを用いた場合には、排ガス中の未燃燃料ガスに多くのメタンが含まれる。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1には、触媒を用いて排ガス中の未燃燃料ガスを酸化させることが開示されている。触媒は、ガスエンジンから過給機への排ガス流路中に設置される。過給機で膨張される前の排ガスの温度は高いために、ガスエンジンから過給機の上流への排気系に触媒を設置すれば、過給機の下流側に触媒を設置するよりも、触媒によって未燃燃料ガスをより効果的に酸化させることができる。
【0005】
一般に、エンジンの冷間始動直後の触媒は、当該触媒が好適な排ガス浄化能力を発揮する温度条件から遥かに低い常温である。したがって、エンジンの始動時には、エンジンの排気系に触媒が設置されていても、大気放出される排ガスには多くの未燃燃料ガスが含まれている。そこで、エンジンの始動時に触媒の温度を速やかに上昇させて、触媒の排ガス浄化能力をより早く確保することが提案されている。例えば、特許文献2では、エンジンの排気系に設けられた触媒が冷えた状態にあるときには、エンジンの膨張工程で燃料噴射を行い、排気通路に未燃燃料と酸素とを供給し、この未燃燃料と酸素とを触媒で反応させて触媒の温度を速やかに上昇させるように構成された内燃機関の燃料噴射制御装置が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスエンジンの燃料として広く用いられている天然ガスの主成分は、炭素数1の炭化水素(メタン)である。参考までに、ガソリンエンジンの燃料であるガソリンの主成分は、炭素数7−10の炭化水素の混合物である。炭素数の小さな炭化水素は、炭素数の大きな炭化水素と比較して、触媒での触媒反応に関する活性化状態のエネルギー値が高い。これは、炭素数の小さな炭化水素のC−C(炭素−炭素)結合は、炭素数の大きな炭化水素のC−C結合と比較して強固であり、C(炭素)を引き抜く際により大きなエネルギーが必要となるためである。つまり、炭素数の小さな炭化水素は、炭素数の大きな炭化水素と比較して、触媒反応が起こりにくく反応速度も低い。したがって、特許文献2に記載された技術をガスエンジンに適用させて、ガスエンジンの冷間始動直後に燃料ガスをガスエンジンの排気系に供給しても、触媒を早期に活性化させることは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、ガスエンジンからの排気系に触媒を備えたガスエンジンシステムにおいて、ガスエンジンの冷間始動直後に触媒をより早期に活性化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明
の一態様に係るガスエンジンシステムは、
ガスエンジンと、
前記ガスエンジンと接続され、当該ガスエンジンから排出される排ガスが導通される排気管と、
前記排気管と接続された過給機と、
前記排気管から前記過給機へ至る流路中に配置され、前記ガスエンジンから排出される排ガス中の未燃燃料ガスを酸化させる触媒と、
前記触媒の温度を測定する触媒温度測定手段と、
前記排気管から前記触媒へ至る流路へ前記触媒の活性化促進剤を供給する触媒活性化装置と、
前記触媒温度測定手段で計測された触媒温度が所定の閾値よりも低いときに前記活性化促進剤が供給されるように前記触媒活性化装置を動作させる第1機能部を有する制御装置と
、
前記排気管から前記触媒を通らずに前記ガスエンジンの給気側へ排ガスを送るバイパス管とを備え、
前記活性化促進剤が、前記触媒での触媒反応に関する活性化状態のエネルギー値が前記ガスエンジンの燃料ガスよりも低い炭化水素を含
み、
前記過給機は、前記ガスエンジンに隣接して配置されて、前記排気管に向かう方向以外の方向に開口する排ガス入口を有し、
前記排気管は、前記ガスエンジンの上方に配置されて、前記過給機に向かう方向以外の方向に開口する第1排ガス出口を有し、
前記ガスエンジンは、前記過給機に向かう方向に開口する給気口を有するものである。
【0010】
上記ガスエンジンシステムによれば、システムの冷間起動直後などの、触媒の温度が、当該触媒が活性化されて望ましい浄化能力を発揮するような温度範囲(以下、至適温度範囲という)に満たないときに、活性化促進剤が排気管から触媒へ至る流路に供給される。そして、触媒と活性化促進剤が接触し、活性化促進剤の触媒反応が起こると、その反応熱で触媒の温度が上昇する。活性化促進剤は、ガスエンジンの排ガス中の未燃燃料ガスと比較して、触媒の温度が至適温度範囲より低い状況でも触媒反応が起こりやすい。よって、活性化促進剤が供給されない場合と比較して、触媒の温度を速やかに至適温度範囲まで昇温させることができ、触媒をより早期に活性化させることができる。
【0012】
上記構成によれば、システムの冷間起動直後などの触媒の温度が至適温度範囲に満たないときに、ガスエンジンの冷えた排ガスの一部又は全部を、触媒を通さずにガスエンジンの給気側へ流すことができる。これにより、触媒が冷えた排ガスと接触しないか、或いは、触媒と接触する冷えた排ガスの流量が減少するので、触媒の温度上昇が冷えた排ガスにより妨げられることを抑制することができる。また、排気管の排ガス出口と過給機の排ガス入口の開口方向により、過給機がガスエンジンに隣接して配置されていても、排気管の排ガス出口から過給機の排ガス入口まで配管を通すルートを自由に決定することができる。すなわち、過給機をガスエンジンに隣接して配置したままで、触媒コンバータをガスエンジンから過給機への排ガス流路中に配置することができる。そして、このように配置されたガスエンジン、過給機、及び触媒コンバータにおいて、排気管とガスエンジンの給気口とを繋ぐように設けられるバイパス管は比較的短いものとなる。よって、システムを簡易且つコンパクトに構成することができる。
【0013】
上記ガスエンジンシステムにおいて、前記排気管は、前記過給機に向かう方向に開口する第2排ガス出口を更に有し、前記バイパス管の上流側端部が前記第2排ガス出口と接続されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、バイパス管の管路をより短くすることができ、バイパス管の配管を単純化することができる。したがって、システムを簡易且つコンパクトに構成することができる。
【0015】
上記ガスエンジンシステムが、前記バイパス管内の流路中に設けられたバイパス弁を更に備え、前記制御装置が、前記触媒温度測定手段で計測された触媒温度が所定の閾値よりも低いときに、前記バイパス弁の開度が増加するように前記バイパス弁を動作させるように構成された第2機能部を有することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、システムの冷間起動直後などの触媒の温度が至適温度範囲に満たないときに、ガスエンジンの冷えた排ガスの一部又は全部はバイパス管を通じて触媒を通らずにガスエンジンの給気側へ送られる。これにより、触媒が冷えた排ガスと接触しないか、或いは、触媒と接触する冷えた排ガスの流量が減少するので、触媒の温度上昇が冷えた排ガスにより妨げられることを抑制することができる。さらに、ガスエンジンの給気中の未燃燃料ガス濃度が増加して空気過剰率が低下するので、ガスエンジンの排ガスの温度が通常運転時よりも高くなる。そして、触媒がより高い温度の排ガスと接触することと、より高い温度の排ガス中の未燃燃料ガスが触媒反応を起こすこととにより、触媒の昇温が促進される。この結果、触媒を至適温度範囲までより速やかに昇温させることができ、触媒をより早期に活性化させることができる。
【0017】
上記ガスエンジンシステムが、前記触媒の上流側で前記ガスエンジンの排ガスの酸素濃度を計測する酸素濃度計測手段と、前記ガスエンジンの給気量を計測する給気量計測手段とを更に備え、
前記制御装置が、前記触媒温度測定手段で計測された触媒温度が所定の温度よりも低いときに、前記酸素濃度計測手段で計測された酸素濃度と前記給気量計測手段で計測された給気量とに基づき、空気過剰率を通常運転時の空気過剰率から減少させるために前記ガスエンジンの給気量、給気中の酸素濃度、及び前記ガスエンジンの燃料噴射量の少なくとも1つを調整するように構成された第3機能部を有することが好ましい。
また、ガスエンジンシステムは、
ガスエンジンと、
前記ガスエンジンと接続され、当該ガスエンジンから排出される排ガスが導通される排気管と、
前記排気管と接続された過給機と、
前記排気管から前記過給機へ至る流路中に配置され、前記ガスエンジンから排出される排ガス中の未燃燃料ガスを酸化させる触媒と、
前記触媒の温度を測定する触媒温度測定手段と、
活性化促進剤が前記触媒での触媒反応に関する活性化状態のエネルギー値が前記ガスエンジンの燃料ガスよりも低い炭化水素を含み、前記排気管から前記触媒へ至る流路へ前記活性化促進剤を供給する触媒活性化装置と、
前記触媒の上流側で前記ガスエンジンの排ガスの酸素濃度を計測する酸素濃度計測手段と、
前記ガスエンジンの給気量を計測する給気量計測手段と、
前記触媒温度測定手段で計測された触媒温度が所定の閾値よりも低いときに、前記活性化促進剤が供給されるように前記触媒活性化装置を動作させる第I機能部と、前記触媒温度測定手段で計測された触媒温度が所定の温度よりも低いときに、前記酸素濃度計測手段で計測された酸素濃度と前記給気量計測手段で計測された給気量とに基づき、空気過剰率を通常運転時の空気過剰率から減少させるために前記ガスエンジンの給気量、給気中の酸素濃度、及び前記ガスエンジンの燃料噴射量の少なくとも1つを調整するように構成された第II機能部と有する制御装置とを、備えるものであってよい。
【0018】
上記構成によれば、システムの冷間起動直後などの触媒の温度が至適温度範囲に満たないときに、ガスエンジンの空気過剰率が減少する。ガスエンジンは通常運転時と比較して燃料リッチな状態で燃焼する結果、ガスエンジンからの排ガスの温度が通常運転時よりも高くなる。そして、触媒がより高い温度の排ガスと接触することと、より高い温度の排ガス中の未燃燃料ガスが触媒反応を起こすこととにより、触媒の昇温が促進される。この結果、触媒を至適温度範囲までより速やかに昇温させることができ、触媒をより早期に活性化させることができる。
【0019】
上記ガスエンジンシステムが、前記触媒を加熱するヒーターを更に備えていることが好ましい。この構成によれば、システムの冷間起動直後などの触媒の温度が至適温度範囲に満たないときに、ヒーターで触媒を加熱することができる。したがって、触媒を至適温度範囲までより速やかに昇温させることができ、触媒をより早期に活性化させることができる。
【0020】
上記ガスエンジンシステムにおいて、前記活性化促進剤が、油、酸素、酸素富化空気、水素、及び前記燃料ガスのうち少なくとも1つを含んでいることが好ましい。この構成によれば、油、酸素、酸素富化空気、水素及び前記燃料ガスのうち少なくとも1つが触媒と接触する。油、水素、及び燃料ガスのうち少なくとも1つを含む活性化促進剤が触媒と接触することにより、活性化促進剤が触媒反応を起こし、その反応熱により触媒の温度が上昇する。また、酸素及び酸素富化空気のうち少なくとも1つを含む活性化促進剤が触媒と接触することにより、触媒が活性化する温度を低下させることができる。よって、触媒を至適温度範囲までより速やかに昇温させることができ、触媒をより早期に活性化させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、システムの冷間起動直後などの触媒の温度が至適温度範囲に満たないときに、触媒を至適温度範囲までより速やかに昇温させることができるので、触媒をより早期に活性化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1,
図2(a)及び2(b)に、本発明の実施形態に係るガスエンジンシステム1が示されている。本実施形態は、4ストロークガスエンジンに適したレイアウトを実現するためのものである。
【0024】
ガスエンジンシステム1は、燃料ガスを燃焼させる4ストロークガスエンジン2と、ガスエンジン2により駆動される発電機15とを備えている。さらに、ガスエンジンシステム1は、ガスエンジン2に隣接して配置された過給機5と、過給機5のコンプレッサとガスエンジン2の間の流路に設けられたエアクーラー12と、ガスエンジン2と過給機5のタービンの間の流路に設けられた触媒コンバータ6と、エンジン制御装置80とを備えている。上記において、過給機5がガスエンジン2に「隣接して配置」されていることは、ガスエンジン2の輪郭を、ガスエンジン2の中心からの長さ、幅及び高さが1.5倍となるように拡大した空間内に、過給機5の少なくとも一部が存在することをいう。
【0025】
ガスエンジン2は、クランクシャフト22と、クランクシャフト22の大部分を収容するエンジンフレーム21とを含んで構成されている。クランクシャフト22のエンジンフレーム21から張り出している端部は、フライホイール14を介して発電機15と連結されている。フライホイール14は、ガスエンジン2の起動時に図示しないエアモータであるスタータモータにより駆動される。
【0026】
図3に示されるように、エンジンフレーム21には、複数のシリンダ3が組み込まれている。本実施形態では、シリンダ3がクランクシャフト22の軸方向に二列で配列されている。一方の列のシリンダ3と他方の列のシリンダ3は鉛直方向に対して同一の角度で傾斜している。クランクシャフト22の軸方向から見たときのシリンダ3間の角度は鋭角であり、シリンダ3はV字状をなしている。但し、一方の列のシリンダ3と他方の列のシリンダ3は鉛直方向に対して異なる角度で傾斜していてもよい。また、クランクシャフト22の軸方向から見たときのシリンダ3間の角度が直角であり、シリンダ3がL字状をなしていてもよい。さらには、シリンダ3は一列で配列されていてもよい。
【0027】
各シリンダ3には、当該シリンダ3内に配置されたピストン33とシリンダヘッド32との協働により形成された燃焼室30が設けられている。シリンダヘッド32には、給気ポート3aと排気ポート3bが形成されている。また、シリンダヘッド32には、給気ポート3aの燃焼室30への開口を開閉する給気弁34及び排気ポート3bの燃焼室30への開口を開閉する排気弁35が設けられているとともに、給気ポート3a内に燃料ガスを噴射する燃料弁36が設けられている。燃料ガスは、例えばメタンを主成分とする天然ガスである。
【0028】
エンジンフレーム21の一方の列のシリンダ3と他方の列のシリンダ3の間には、クランクシャフト22の軸方向に延びる給気室2aが形成されている。各シリンダ3の給気ポート3aは、第1連絡管2cにより給気室2aと接続されている。給気室2aの真上には、クランクシャフト22の軸方向に延びる排気管4が配置されている。各シリンダ3の排気ポート3bは、第2連絡管2bにより排気管4と接続されている。
【0029】
図1に戻って、過給機5は、排気管4の発電機15側と反対側の端部からクランクシャフト22の軸方向に離れた位置に配置されている。換言すれば、過給機5はガスエンジン2を挟んで発電機15と反対側に配置されている。以下では、説明の便宜のために、クランクシャフト22の軸方向を前後方向(特に、過給機5側を前方、発電機15側を後方)というとともに、前後方向と直交する水平方向を左右方向(特に、
図1の紙面と直交する方向の手前側を右方、奥側を左方)という。
【0030】
過給機5は、空気入口51及び空気出口52を有するコンプレッサと、排ガス入口53及び排ガス出口54を有するタービンとを含む。過給機5の空気入口51より上流側には、過給機5の空気流量を測定するためのエアフローメータ79が設けられている(
図5、参照)。本実施形態では、空気入口51が左向きに開口しており、空気出口52が斜め下向きに開口している。一方、排ガス入口53は上向きに(排気管4に向かう方向以外の方向に)開口しており、排ガス出口54は前向きに開口している。
【0031】
エアクーラー12は、過給機5の真下であってガスエンジン2の前方に配置されている。過給機5の空気出口52は第1給気管11によりエアクーラー12と接続されており、エアクーラー12は第2給気管13によりガスエンジン2の給気口45と接続されている。給気口45は、前向き(過給機5に向かう方向)に開口している。第1給気管11は、斜め下向きから斜め横向きに滑らかに折れ曲がっており、第2給気管13は、前後方向に延びる直線状である。エアクーラー12からガスエンジン2の給気口45の間には、給気スロットル弁78が設けられている(
図5、参照)。給気スロットル弁78は、例えば、ステップモータを用いて開度変更が可能な電子制御式のものであり、その開度に応じてガスエンジン2の給気室2aへ給入される空気の量(給気量)が変化する。
【0032】
触媒コンバータ6は、発電機15の上方に配置されている。換言すれば、触媒コンバータ6は、排気管4を挟んで過給機5と反対側に配置されている。触媒コンバータ6は、前向きに開口する入口と後向きに開口する出口を有し、ガスエンジン2から排出される排ガス中の未燃燃料ガスを酸化させる触媒65を内蔵する。
【0033】
排気管4の後端部には、後向きに(過給機5に向かう方向以外の方向に)開口する排ガス出口41が設けられており、排気管4の前端部には、前向きに開口する第1バイパス口(第1排ガス出口)42及び第2バイパス口(第2排ガス出口)44が設けられている。そして、排気管4の排ガス出口41は第1接続管71により触媒コンバータ6の入口と接続されており、触媒コンバータ6の出口は第2接続管72により過給機5の排ガス入口53と接続されている。これらの第1接続管71、触媒コンバータ6及び第2接続管72により、排気管4の排ガス出口41から過給機5の排ガス入口53へ至る流路が構成されている。そして、触媒コンバータ6は、排気管4の排ガス出口41から過給機5の排ガス入口53へ至る流路中に配置されている。
【0034】
第1接続管71は、前後方向に延びる直線状である。一方、第2接続管72は、触媒コンバータ6及び排気管4の上方で前後方向に延びる直線部と、触媒コンバータ6の出口から直線部の上流端へ至る180度屈曲部と、直線部の下流端から過給機5の排ガス入口53へ至る90度屈曲部を含む。なお、図示は省略するが、第1接続管71及び第2接続管72には、熱膨張を吸収するための伸縮部材が適所に組み込まれていてもよい。
【0035】
排気管4の第1バイパス口42は、排気系バイパス管7の上流側端部と接続されている。排気系バイパス管7の下流側端部は、触媒コンバータ6の出口と過給機5の排ガス入口53とを繋ぐ第2接続管72と接続されている。排気系バイパス管7により、触媒コンバータ6を通さずに、排気管4から過給機5の上流側へ排ガスを送ることができる。第2接続管72において、触媒コンバータ6の出口と排気系バイパス管7との接続部との間には、触媒コンバータ6から過給機5への排ガスの流れを許容する逆止弁88が設けられている。この逆止弁88は、定常時は開放されているが、後述する触媒コンバータ6の触媒65のメンテナンス時に閉止される。
【0036】
排気管4の第2バイパス口44は、バイパス管8の上流側端部と接続されている。バイパス管8の下流側端部は、エアクーラー12とガスエンジン2の給気口45とを繋ぐ第2給気管13と接続されている。バイパス管8により、触媒コンバータ6を通らずに、排気管4からガスエンジン2の給気側へ排ガスを送る排気再循環(EGR)用の流路が形成される。但し、バイパス管8はガスエンジン2の排ガスをガスエンジン2の給気側へ送ることができればよいので、バイパス管8の下流側端部は、過給機5の給気側又は第1給気管11と接続されていてもよい。また、バイパス管8の下流側端部は、過給機5の排気側と接続されていてもよい。また、排気管4には、2つのバイパス口42,44が設けられているが、排気管4に1つのバイパス口を設け、このバイパス口に分岐ジョイントを介して排気系バイパス管7とバイパス管8との両方を接続してもよい。
【0037】
排気管4からの排ガスは、通常は第1接続管71を通じて触媒コンバータ6に導かれ、特殊な状況で排気系バイパス管7を通じて触媒コンバータ6を通らずに過給機5の上流側へ導かれ、主に空気過剰率の調整のためにバイパス管8を通じてガスエンジン2の給気側へ導かれる。この排ガスの流れを操作するために、第1接続管71に流量調節手段又は流路切換手段としての排気弁75が設けられ、排気系バイパス管7に流量調節手段又は流路切換手段としての排気バイパス弁85が設けられ、バイパス管8に流量調節手段としてのバイパス弁76が設けられている。これらの弁75,76,85は、本実施形態においてはいずれもバタフライ弁が採用されているが、弁75,76,85の構造はこれに限定されない。
【0038】
上記ガスエンジンシステム1の構成によれば、過給機5がガスエンジン2に隣接して配置されていても、排気管4の排ガス出口41と過給機の排ガス入口53の開口方向により、排気管4の排ガス出口41から過給機5の排ガス入口53まで配管を通すルートを自由に決定することができる。すなわち、触媒コンバータ6がどのような位置に配置されていても、触媒コンバータ6を排気管4の排ガス出口41及び過給機5の排ガス入口53と接続することができる。換言すれば、過給機5をガスエンジンに隣接して配置したままで、触媒コンバータ6をガスエンジン2から過給機5への排ガス流路中に配置することができる。そして、このように配置されたガスエンジン2、過給機5、及び触媒コンバータ6において、排気管4とガスエンジン2の給気口45とを繋ぐように設けられたバイパス管8は、比較的短いものとなる。よって、ガスエンジンシステム1の煩雑化及び巨大化を抑制することができる。
【0039】
次に、
図4を参照して、触媒コンバータ6の構成を詳細に説明する。触媒コンバータ6は、触媒65が収容される筐体60を備えている。筐体60は、前後方向に延びる筒状の筐体本体部62と、筐体本体部62に向かって拡大する上流側フード部61と、筐体本体部62から縮小する下流側フード部63を含む。本実施形態では、筐体本体部62の断面形状が矩形状であるが、筐体本体部62の断面形状は例えば円形状であってもよい。触媒65は筐体本体部62に収容されている。触媒65は、金属製の担体基材に、触媒活性成分を担持したコート材をコーティングしたものである。担体基材は、例えば、ステンレス製のメタルハニカムや、波板と平板が交互に積層された金属製構造体であってよい。触媒活性成分は、例えば、白金やパラジウムなどからなる金属微粒子であってよい。
【0040】
筐体60の内部は、触媒65を支持する格子部材64によって複数の小部屋に仕切られている。そして、各小部屋に、複数の触媒65が排ガスの流れ方向に積層された状態で配置されている。触媒65は、筐体本体部62を筐体60の他の部分から取り外せば、容易に筐体本体部62へ着脱することができる状態となる。触媒65の交換に際して、排気弁75及び逆止弁88を閉止して排気バイパス弁85を開放することにより、ガスエンジンシステム1の運転中でも触媒コンバータ6を解体して触媒65を交換することができる。
【0041】
触媒コンバータ6の筐体60には、触媒65を加熱するためのヒーター19が設けられている。ヒーター19は、筐体60の筐体本体部62の周囲に設けられた電熱線18等で構成されている。ヒーター19は、電熱線18に電流が流れると発熱し、この熱によって触媒65を加熱するように構成されている。
【0042】
触媒コンバータ6には、温度センサ67が設けられている(
図5、参照)。温度センサ67は、触媒65の温度を測定するための触媒温度計測手段である。さらに、触媒65の上流にラムダセンサ82が設けられている(
図5、参照)。ラムダセンサ82は、触媒65へ流れる排ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度計測手段である。
【0043】
触媒コンバータ6の上流側フード部61には、触媒65に向かって活性化促進剤を噴出する触媒活性化装置9が設けられている。触媒活性化装置9は、例えば、上流側フード部61の上方で左右方向に延びる主管91と、主管91から垂れ下がって上流側フード部61内に入り込む複数の枝管92で構成される。各枝管92には、後向きのノズルが一定のピッチで設けられている。主管91へは、第1活性化促進剤源93から供給管95を介して活性化促進剤が供給される。なお、本実施例に係る触媒活性化装置9は、活性化促進剤を触媒65へ向けて噴射するように構成されているが、排気弁75から触媒65までの流路において活性化促進剤が噴出されるように構成されていてもよい。この構成であっても、ガスの流れにより活性化促進剤が触媒65を通過するので、活性化促進剤を触媒65に向けて噴射する場合と同様の効果が期待できる。
【0044】
活性化促進剤は、触媒65での触媒反応に関する活性化状態のエネルギー値が、ガスエンジン2の燃料ガスの主成分よりも低い炭化水素、又は、その炭化水素を主成分とする気体又は液体である。ガスエンジン2の一般的な燃料ガスは天然ガスであり、天然ガスの主成分はメタンである。メタンは、炭素数が1の炭化水素である。炭素数の少ない炭化水素ほど、触媒65での触媒反応が起こりにくい(酸化しにくい)。燃料ガスの主成分がメタンであるときには、触媒65での触媒反応に関する活性化状態のエネルギー値がメタンよりも低い炭化水素が、活性化促進剤に含まれる。このような炭化水素は、例えば、炭素数が2以上のアルカンである。その中でも、気体状のアルカン、すなわち、炭素数が2−4のアルカン(エタン、プロパン、及びブタン)がより望ましい。
【0045】
また、活性化促進剤には、油、酸素、酸素富化空気、水素、及び燃料ガスのうち少なくとも1つが含まれていてもよい。本実施形態においては、触媒活性化装置9の主管91に、第1活性化促進剤源93と、第2活性化促進剤源96とが供給管95によって並列的に接続され、第1活性化促進剤源93から上記炭化水素が、第2活性化促進剤源96から油、酸素、酸素富化空気、水素、及び燃料ガスのうち少なくとも1つが、それぞれ供給される。そして、触媒活性化装置9は、第1活性化促進剤源93からの活性化促進剤と、第2活性化促進剤源96からの活性化促進剤とが、枝管92のノズルから併せて噴出するように構成されている。なお、第1活性化促進剤源93からの活性化促進剤の供給量は、供給管95に設けられた弁等の供給量調整手段94により調整され、第2活性化促進剤源96からの活性化促進剤の供給量は、供給量調整手段97によって調整される。
【0046】
上記の通り、1つの触媒活性化装置9が、2種以上の活性化促進要素を含む活性化促進剤を排気管4から触媒65へ至る流路へ供給するよう構成されていることにより、ガスエンジンシステム1の構造をより単純化することができる。但し、ガスエンジンシステム1が複数の触媒活性化装置9を備え、各触媒活性化装置9が異なる活性化促進要素を含む活性化促進剤を、排気管4から触媒65へ至る流路へ供給するように構成されていてもよい。また、触媒活性化装置9が備える活性化促進剤源は、2つ以上であってもよい。
【0047】
続いて、
図5を参照して、ガスエンジンシステム1の制御構成について説明する。エンジン制御装置(ECU)80は、ガスエンジンシステム1の運転に関わる演算と制御を行うプロセッサである。エンジン制御装置80は、図示されないCPU、ROM、RAM、A/D変換器、及び入出力インターフェースなどを含んで構成される。エンジン制御装置80には、温度センサ67、エアフローメータ79、及びラムダセンサ82などの各種計器が電気的に接続されており、これらの計器から検出信号がエンジン制御装置80へ送られる。また、エンジン制御装置80には、排気弁75、バイパス弁76、排気バイパス弁85、燃料弁36、及び給気スロットル弁78の各弁の開閉アクチュエータと、触媒活性化装置9の供給量調整手段94,97と、ヒーター19とが電気的に接続されており、エンジン制御装置80からこれらの機器へ制御信号が送られる。エンジン制御装置80では、各種計器からの検出信号に基づき、ガスエンジン2の運転に関わる各種制御が行われる。以下では、エンジン制御装置80がシステムの起動時に行う触媒暖機制御について詳細に説明する。
【0048】
エンジン制御装置80のCPUでROMに記憶された所定のプログラムが実行されることにより、次に説明する触媒暖機制御が行われる。エンジン制御装置80は、触媒活性化装置9の動作を制御する機能部、ヒーター19の動作を制御する機能部、ガスエンジン2の空気過剰率を制御する機能部の各機能部を少なくとも備えている。各機能部は、エンジン制御装置80で実行されるプログラムを格納したメモリや制御回路として構成され得る。触媒暖機制御では、効果的に触媒を早期に暖機させるために、これらの各機能部を機能させる。
【0049】
図6は、エンジン制御装置80による触媒暖機制御のフローチャートである。
図6に示されるように、エンジン制御装置80は、ガスエンジンシステム1の起動時に、まず、温度センサ67により検出された触媒温度を取得する(ステップS1)。エンジン制御装置80は、検出された触媒温度と所定の閾値とを比較する(ステップS2)。なお、所定の閾値とは、触媒65が活性化されて望ましい浄化能力を発揮するような温度範囲(至適温度範囲)の下限値又はそれより大きな値である。触媒65の至適温度範囲は、触媒により、また、触媒反応により異なる。
【0050】
検出された触媒温度が所定の閾値に満たなければ(ステップS2でYES)、エンジン制御装置80は、活性化促進剤の供給を開始するように触媒活性化装置9を動作させる(ステップS3)。これにより、触媒活性化装置9の枝管92に設けられたノズルから触媒65へ向けて活性化促進剤が噴出される。そして、排気管4から触媒65へ至る流路内へ供給された活性化促進剤と触媒65とが接触し、触媒65の活性化が促される。
【0051】
触媒65と活性化促進剤に含まれる炭化水素とが接触し、活性化促進剤中の炭化水素の触媒反応(発熱反応)が起こると、その反応熱で触媒65の温度が上昇する。活性化促進剤に含まれる炭化水素は、ガスエンジン2の排ガス中の未燃燃料ガスと比較して、触媒65の温度が至適温度範囲より低い状況でも触媒反応が起こりやすい。よって、活性化促進剤が供給されない場合と比較して、触媒の温度を速やかに至適温度範囲まで昇温させることができ、触媒をより早期に活性化させることができる。
【0052】
活性化促進剤には、上記炭化水素に加えて又は代えて、霧状の油、酸素、酸素富化空気、水素、及び燃料ガスのうち少なくとも1つが含まれていてもよい。例えば、活性化促進剤に霧状の油、燃料ガス、及び水素のうち少なくとも1つの要素が含まれる場合は、その要素が触媒65と接触し、その要素の触媒反応が生じる。その結果、反応熱により触媒65の温度が速やかに上昇する。また、例えば、活性化促進剤に酸素又は酸素富化空気が含まれる場合には、触媒65が活性化される温度が所定の閾値より下がる。その結果、触媒65が所定の閾値より低い温度であっても、より多くの排ガス中の未燃燃料ガスが触媒反応を起こし、その反応熱により触媒65の温度が速やかに上昇する。
【0053】
続いて、エンジン制御装置80は、ヒーター19を作動させる(ステップS4)。ヒーター19の電熱線18に電流が流され、高温となった電熱線18からの熱伝導により触媒65が加熱される。その結果、ヒーター19による加熱が無い場合と比較して、触媒65の温度が速やかに上昇する。
【0054】
さらに、エンジン制御装置80は、空気過剰率λを所定の値まで低下させる(ステップS5)。なお、ガスエンジン2の通常運転時の空気過剰率λの目標値は2程度であり、触媒暖気制御時には、空気過剰率λの目標値が1.0〜1.8までの範囲に含まれる所定の値とされる。空気過剰率λが減少すると、ガスエンジン2が通常運転時と比較して燃料リッチな状態で燃焼する結果、ガスエンジン2からの排ガスの温度が通常運転時と比較して高くなる。そして、触媒65がより高い温度の排ガスと接触することと、より高い温度の排ガス中の未燃燃料ガスが触媒反応を起こすこととにより、触媒65の昇温が促進される。
【0055】
空気過剰率λは、少なくとも、ラムダセンサ82で計測された排ガスの酸素濃度と、エアフローメータ79で計測された給気量とに基づき、燃料弁36、バイパス弁76、及び給気スロットル弁78の各弁の開度を調整することによって、目標値に近づくように制御される。空気過剰率λを減少させるために、エンジン制御装置80は、給気スロットル弁78の開度の減少、及びバイパス弁76の開度の増大のうち少なくとも一方を行うように、これらの弁78,76の開閉アクチュエータを動作させる。給気スロットル弁78の開度が減少すると、ガスエンジン2の給気空気量が減少する。バイパス弁76の開度が増大すると、ガスエンジン2の排ガスの一部が触媒コンバータ6及び過給機5を通さずにガスエンジン2の給気側へ送られるので、過給機5による過給圧が低下する。加えて、ガスエンジン2の給気中の未燃燃料ガス濃度が増加する。
【0056】
さらに、バイパス弁76の開度が増大することによって、冷間始動直後のガスエンジン2の冷えた排ガスが触媒65と接触しないか、或いは、触媒65と接触する冷えた排ガスの流量が減少する。したがって、触媒の温度上昇が冷えた排ガスにより妨げられない。
【0057】
エンジン制御装置80は、温度センサ67により検出された触媒温度を継続的に取得する(ステップS6)。上述のように触媒65の温度が上昇し、やがて、触媒65の温度は所定の閾値以上、即ち、至適温度範囲内となる。検出された触媒温度が所定の閾値以上となると(ステップS7でNO)、エンジン制御装置80は、活性化促進剤の供給を停止するよう触媒活性化装置9を動作させ(ステップS8)、ヒーター19を停止させ(ステップS9)、空気過剰率λを通常運転時の目標値まで増加させる(ステップS10)。なお、上記ステップS3〜S5と、上記ステップS8〜S10とは、それらのステップの間で順序が入れ換わったり、それらのステップのうちいずれか1つ以上が実行されたりしても構わない。
【0058】
以上説明した通り、本実施形態に係るガスエンジンシステム1では、ガスエンジン2の冷間始動直後などの触媒65の温度が至適温度範囲に満たないときに、触媒65の温度上昇を促進させるための処置がなされる。したがって、前記処置がなされない場合と比較して、触媒65の温度は速やかに至適温度範囲まで上昇し、触媒65がより早期に活性化されることで触媒浄化能力をより早く確保することができる。
【0059】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0060】
例えば、上記実施形態に係る触媒コンバータ6は、排気管4を挟んで過給機5と反対側に配置されている。この配置によれば、触媒コンバータ6と排気管4の排ガス出口41とを最短距離で接続することができる。但し、
図7に示されるように、触媒コンバータ6が排気管4の上方に配置されていてもよい。この場合、排気管4の排ガス出口41は上方に向けて開口し、この排ガス出口41と触媒コンバータ6の上流側フード部61とが90度ベント管で接続されている。この配置によれば、排気管4の上方の比較的に使い道のないスペースを利用して触媒コンバータ6を配置することができる。