【実施例】
【0047】
[実施例1]
[小麦アレルゲン検出用金コロイド標識抗体及びイムノクロマトストリップの作製]
(小麦アレルゲン検出用金コロイド標識抗体の作製)
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mLとなるように抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2溶液を調製した。次いで、あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調整した金コロイド溶液(シグマ社製)5mLに、上記抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2溶液を500μL加えて室温にて30分間反応した後、10%BSA溶液を635μL加えてさらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD
525=1.0になるよう調整し、小麦アレルゲン検出用金コロイド標識抗体とした。
【0048】
(小麦アレルゲン検出用抗体固定化メンブレンの作製)
PBSで4mg/mLとなるように抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、0.1%牛ゼラチン(シグマアルドリッチ社製)を含むTBS(Tris Buffered Saline)で37℃にて1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させ、小麦アレルゲン検出用抗体固定化メンブレンとした。
【0049】
(イムノクロマトストリップの組立)
上記各抗体固定化メンブレンに加えて、サンプル用担体部としてのガラスウール製サンプルパッド、液状サンプル吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順に貼り付け、小麦アレルゲン検出用イムノクロマトストリップを作製した。
【0050】
[実施例2]
[各種チョコレートにおける小麦アレルゲンの検出感度]
現行キットに使用されている抽出液の濃度範囲の組成を用い、チョコレートの種類によって、イムノクロマト法での検出感度の相違が生じるか否かを検討した。
【0051】
1)抽出液の調製
0.2%Tween20、0.5%SDS、及び0.1%チオ硫酸ナトリウムを添加したPBS(phosphate buffered saline:リン酸緩衝生理食塩水、ダルベッコPBS(日水製薬株式会社製))溶液を、抽出液として調製した。
【0052】
2)小麦タンパク質の調製
小麦タンパク質は、小麦全粒粉(日本製粉株式会社製)を用い、「アレルギー物質を含む食品の検査方法について(参考)(平成26年3月26日、消費者庁)」に記載の標準品規格の方法に従い作製した粉末から調製した。
【0053】
3)小麦タンパク質添加チョコレート試料の調製
上記小麦タンパク質をミルクチョコレート及びホワイトチョコレートにそれぞれ添加した試料を調製した。ミルクチョコレート(株式会社明治製)及びホワイトチョコレート(株式会社明治製)を湯煎により溶解した各チョコレート液に小麦タンパク質を終濃度で0ppm、2ppm、10ppm、50ppmとなるように添加し、よく混合して均一化させることにより4種類の小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料、及び、4種類の小麦タンパク質添加ホワイトチョコレート試料を調製した。また、上記抽出液に小麦タンパク質を終濃度で0、2、10、50ppmとなるように添加し、4種類のチョコレート無添加小麦タンパク質標準溶液を調製した。
【0054】
4)測定サンプルの調製
上記4種類の小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料、4種類の小麦タンパク質添加ホワイトチョコレート試料、及び4種類のチョコレート無添加小麦標準溶液について、各1gを50mLの遠沈管に量り取り、上記抽出液19mLをそれぞれ加えて撹拌することにより、12種類のチョコレート試料含有抽出液を調製した。各チョコレート試料含有抽出液を沸騰水中で10分間加熱し、冷却遠心後、それぞれの上清を12種類の測定サンプルとして調製した。
【0055】
5)イムノクロマト法による検出の確認
上記小麦アレルゲン検出用金コロイド標識抗体20μLと、展開液としてFBS30μLとを、上記12種類の測定サンプル50μLにそれぞれ加えた供試液を、上記小麦アレルゲン検出用イムノクロマトストリップに供試した。結果を表1に示す。判定はラインの強い方から順に++、+、+w、+−と表記し、陰性を−と表記した(以下同じ)。
【0056】
【表1】
【0057】
(結果)
表1から明らかなとおり、小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料では、2ppm及び10ppmにおいて小麦グリアジンは陰性(−)であり、50ppmにおいて陽性(+−)であり検出限界が大幅に低下した。一方、小麦タンパク質添加ホワイトチョコレート試料では、チョコレート無添加小麦標準溶液同様に、50ppm及び10ppmにおいて小麦グリアジンは陽性(++)であり、2ppmにおいても陽性(+)であって、ホワイトチョコレートでは検出感度が低下しないことが確認された。
【0058】
(考察)
供試したミルクチョコレートの原材料は「砂糖、カカオマス、全粉乳、ココアバター、レシチン(大豆由来)、香料」であり、ホワイトチョコレートは「砂糖、全粉乳、ココアバター、植物油脂、乳糖、バターオイル、クリームパウダー、脱脂粉乳、乳たんぱく、レシチン(大豆由来)、香料」であった。ホワイトチョコレートにはチョコレート特有の茶褐色の色調の元となるカカオマスが含まれていないことから、カカオマス由来の成分が小麦グリアジンの検出感度の低下に大きく影響していると考えられた。
【0059】
[実施例3]
[抽出液への各種タンパク質添加による小麦アレルゲンの検出感度の改善効果]
抽出液に、スキムミルク(和光純薬工業社製)、BSA(シグマアルドリッチ社製)、フィッシュゼラチン(from cold water fish skin 40-50% in H
2O、シグマアルドリッチ社製)、牛ゼラチン(シグマアルドリッチ社製)の4種のタンパク質を個別に添加することにより、ミルクチョコレートにおける小麦グリアジン検出感度を改善できるか否かを検討した。
【0060】
1)抽出液の調製
0.2%Tween20、0.1%チオ硫酸ナトリウム及び0.5%SDSを添加したPBS溶液に、
(a)スキムミルクを0%、0.5%、2.5%、又は5.0%となるように;
(b)BSAを0%、0.25%、1.25%、又は2.5%となるように;
(c)フィッシュゼラチンを0%、0.0025%、0.025%、0.25%、1.25%、又は2.5%となるように;あるいは、
(d)牛ゼラチンを0%、0.001%、0.01%、0.1%、0.5%、又は1.0%となるように;
それぞれ添加することにより、20種類の抽出液を調製した。
【0061】
2)小麦タンパク質添加チョコレート試料の調製
上記ミルクチョコレートを湯煎により溶解したミルクチョコレート液に小麦タンパク質を終濃度で50ppmとなるように添加し、よく混合して均一化させることにより50ppm小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料を調製した。また、小麦タンパク質を添加しない、小麦無添加ミルクチョコレート試料をコントロール(0ppm)として調製した。
【0062】
3)測定サンプルの調製
上記50ppm小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料及び小麦無添加ミルクチョコレート試料について、各1gを50mLの遠沈管に量り取り、上記20種類の抽出液19mLをそれぞれ加えて撹拌することにより、40種類のチョコレート試料含有抽出液を調製した。各チョコレート試料含有抽出液を沸騰水中で10分間加熱し、冷却遠心後、それぞれの上清を40種類の測定サンプルとして調製した。
【0063】
4)イムノクロマト法による検出の確認
前記小麦アレルゲン検出用金コロイド標識抗体20μLと、展開液としてFBS30μLとを、上記40種類の測定サンプル50μLにそれぞれ加えた供試液を、上記小麦アレルゲン検出用イムノクロマトストリップに供試した。結果を表2〜表5に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
(結果)
表2〜5から明らかなとおり、小麦無添加ミルクチョコレートではすべて陰性で非特異的反応は認められなかった。
(a)表2から明らかなとおり、スキムミルク濃度が0%、0.5%のときは「+−」判定でありほとんど検出できなかった。スキムミルク濃度2.5%以上で「+」判定、5.0%で「++」判定であり検出感度が高かった。
(b)表3から明らかなとおり、BSA濃度が0%、0.25%のときは「+−」判定でありほとんど検出できなかった。BSA濃度1.25%以上で「+」判定、5.0%で「++」判定であり検出感度が高かった。
(c)表4から明らかなとおり、フィッシュゼラチン濃度が0%のときは「+−」判定でありほとんど検出できなかった。フィッシュゼラチン濃度0.025%以上で「++」判定であり検出感度が高かった。
(d)表5から明らかなとおり、牛ゼラチン濃度が0%のときは「+−」判定でありほとんど検出できなかった。牛ゼラチン濃度0.01%以上で「++」判定であり検出感度が高かった。
【0069】
(考察)
スキムミルクは、2.5%以上で「+」判定となり、5%以上で「++」となった。BSAは、1.25%以上で「+」となった。一方、フィッシュゼラチンは、0.0025%以上で「+w」判定であり、0.025%以上で「++」判定となった。また、牛ゼラチンは0.01%以上で「++」判定であった。フィッシュゼラチンでは、スキムミルクの200分の一の濃度で「++」となり、牛ゼラチンは、スキムミルクの500分の一の濃度で「++」となったことから、同じタンパク質であっても、チョコレート試料中の小麦グリアジンの検出感度を上げるために必要な濃度には顕著な差があることが確認され、スキムミルクよりもゼラチンにおいて検出感度の上昇効果が顕著に高いことが確認された。
【0070】
スキムミルクは吸湿性が非常に高いため、開封して長時間立つと固まりになりやすく、また、溶けにくくなることも周知である。前記文献において、スキムミルクがキットに添付されておらず、使用者が用意する記載になっているのもその点が理由かと思われる。また、スキムミルクは乳アレルゲンであり、特に粉末スキムミルクの場合は、飛散した粉末が検査キットに付着・混入することで、誤判定が起こる可能性があるためアレルゲン検査を実施する検査室には持ち込みが禁止されている場合もある。一方、ゼラチンは、スキムミルクやBSAと比較して、使用濃度が少なくて済み、粉末としてキットに含めることも可能であるが、水溶液や濃縮水溶液の態様でキットに含めることが好ましい。そしてまた、食品工場等ではアレルゲン検査を同時に複数項目実施することを考えても、特定原材料(卵、乳、小麦、そば、落花生、甲殻類)に指定されていないゼラチンを使用することが望ましいと考えられる。また、特にフィッシュゼラチンを使用した場合は、低温でも水溶性が維持できる点で、好適に用いることができる。
【0071】
[実施例4]
[フィッシュゼラチンを添加した抽出液による小麦アレルゲンの検出限界]
これまでの検討の結果から、検出感度が高かったフィッシュゼラチンを0.25%含む抽出液を使用する場合に、ミルクチョコレート中の小麦アレルゲンを検出できる限界濃度を検討した。
【0072】
1)抽出液の調製
0.2%Tween20、0.1%チオ硫酸ナトリウム及び0.5%SDSを添加したPBSに、フィッシュゼラチンを0%又は0.25%添加し、2種類の抽出液を調製した。
【0073】
2)小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料の調製
ミルクチョコレートを湯煎により溶解したミルクチョコレート液に小麦タンパク質を終濃度で0ppm、2ppm、5ppm、10ppm、20ppm、50ppmとなるようにそれぞれ添加し、よく混合して均一化させることにより6種類の小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料を調製した。
【0074】
3)測定サンプルの調製
上記6種類の小麦タンパク質添加ミルクチョコレート試料について、各1gを50mLの遠沈管に量り取り、上記2種類の抽出液19mLをそれぞれ加えて撹拌することにより、12種類のチョコレート試料含有抽出液を調製した。各チョコレート試料含有抽出液を沸騰水中で10分間加熱し、冷却遠心後、それぞれの上清を12種類の測定サンプルとして調製した。
【0075】
4)イムノクロマト法による検出の確認
上記小麦アレルゲン検出用金コロイド標識抗体20μLと、展開液としてFBS30μLとを、上記12種類の測定サンプル50μLにそれぞれ加えた供試液を、上記小麦アレルゲン検出用イムノクロマトストリップに供試した。結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
(結果)
表6から明らかなとおり、フィッシュゼラチンが0.25%の場合は小麦タンパク質濃度が2ppm(+w)〜50ppm(++)で陽性であった。これは、一般的なアレルゲン検査キットの検出感度と同等の検出感度である。一方、フィッシュゼラチンが0%の場合は、50ppm(+−)以外は検出できず陰性(−)であった。したがって、小麦グリアジンの検出感度の低下に大きく影響すると考えられる成分が含まれているチョコレートにおいても、フィッシュゼラチンが添加されている抽出液を用いることにより、小麦タンパク質が2ppm以上含まれている場合には小麦アレルゲンを検出できることが確認された。
【0078】
[実施例5]
[落花生アレルゲン検出用金コロイド標識抗体及びイムノクロマトストリップの作製]
(落花生アレルゲン検出用金コロイド標識抗体の作製)
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mLとなるように抗落花生Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5溶液を調製した。次いで、あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調整した金コロイド溶液(シグマ社製)5mLに、上記抗落花生Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5溶液を500μL加えて室温にて30分間反応した後、10%BSA溶液を635μL加えてさらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD
525=1.0になるよう調整し、落花生アレルゲン検出用金コロイド標識抗体とした。
【0079】
(落花生アレルゲン検出用抗体固定化メンブレンの作製)
PBSで4mg/mLとなるように抗落花生Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、0.1%牛ゼラチンを含むTBSで37℃にて1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させ、落花生アレルゲン検出用抗体固定化メンブレンとした。
【0080】
(イムノクロマトストリップの組立)
上記各抗体固定化メンブレンに加えて、サンプル用担体部としてのガラスウール製サンプルパッド、液状サンプル吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順に貼り付け、落花生アレルゲン検出用イムノクロマトストリップを作製した。
【0081】
[実施例6]
[ミルクチョコレートにおける落花生アレルゲンの検出感度]
1)抽出液の調製
実施例2−1)抽出液の調製と同様の手順で抽出液を調製した。
【0082】
2)落花生タンパク質の調製
落花生タンパク質は、バージニア種(千葉県産)を用い、「アレルギー物質を含む食品の検査方法について(参考)(平成26年3月26日、消費者庁)」に記載の標準品規格の方法に従い作製した粉末から調製した。
【0083】
3)落花生タンパク質添加チョコレート試料の調製
上記落花生タンパク質をミルクチョコレートに添加した試料を調製した。ミルクチョコレート(株式会社明治製)を湯煎により溶解したチョコレート液に落花生タンパク質を終濃度で0ppm、2ppm、10ppmとなるように添加し、よく混合して均一化させることにより3種類の落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料を調製した。また、上記抽出液に落花生タンパク質を終濃度で0、2、10ppmとなるように添加し、3種類のチョコレート無添加落花生タンパク質標準溶液を調製した。
【0084】
4)測定サンプルの調製
上記3種類の落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料及び3種類のチョコレート無添加落花生標準溶液について、各1gを50mLの遠沈管に量り取り、上記抽出液19mLをそれぞれ加えて撹拌することにより、6種類のチョコレート試料含有抽出液を調製した。各チョコレート試料含有抽出液を沸騰水中で10分間加熱し、冷却遠心後、それぞれの上清を6種類の測定サンプルとして調製した。
【0085】
5)イムノクロマト法による検出の確認
上記落花生アレルゲン検出用金コロイド標識抗体20μLと、展開液としてFBS30μLとを、上記6種類の測定サンプル50μLにそれぞれ加えた供試液を、上記落花生アレルゲン検出用イムノクロマトストリップに供試した。結果を表7に示す。判定はラインの強い方から順に++、+、+w、+−と表記し、陰性を−と表記した(以下同じ)。
【0086】
【表7】
【0087】
(結果)
表7から明らかなとおり、落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料では、2ppmにおいてAra h1は陰性(−)であり、10ppmにおいて何とか検出可能(+−)となり、チョコレート無添加落花生標準溶液に比べ検出限界が大幅に低下した。かかる結果は落花生アレルゲンの場合、通常の検査では2ppmまで検出できるのに対し、チョコレート中の落花生アレルゲンの検出においては、10ppm程度ないと検出が難しいという報告と一致した。
【0088】
[実施例6]
[抽出液へのゼラチン添加による落花生アレルゲンの検出感度の改善効果]
抽出液に、フィッシュゼラチン、牛ゼラチンを個別に添加することにより、ミルクチョコレートにおける落花生Ara h1検出感度を改善できるか否かを検討した。
【0089】
1)抽出液の調製
0.2%Tween20、0.1%チオ硫酸ナトリウム及び0.5%SDSを添加したPBS溶液に、
(e)フィッシュゼラチンを0%、0.25%、又は2.5%となるように;、あるいは
(f)牛ゼラチンを0%、0.1%、又は1.0%となるように;
それぞれ添加することにより、6種類の抽出液を調製した。
フィッシュゼラチンは、45%のゼラチン成分を含む試薬であるフィッシュゼラチン(シグマアルドリッチ社製)、を用いて、上記濃度となるように添加した。
【0090】
2)落花生タンパク質添加チョコレート試料の調製
上記ミルクチョコレートを湯煎により溶解したミルクチョコレート液に落花生タンパク質を終濃度で10ppmとなるように添加し、よく混合して均一化させることにより10ppm落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料を調製した。また、落花生タンパク質を添加しない、落花生無添加ミルクチョコレート試料をコントロール(0ppm)として調製した。
【0091】
3)測定サンプルの調製
上記10ppm落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料及び落花生無添加ミルクチョコレート試料について、各1gを50mLの遠沈管に量り取り、上記6種類の抽出液19mLをそれぞれ加えて撹拌することにより、12種類のチョコレート試料含有抽出液を調製した。各チョコレート試料含有抽出液を沸騰水中で10分間加熱して、冷却遠心後、それぞれの上清を12種類の測定サンプルとして調製した。
【0092】
4)イムノクロマト法による検出の確認
前記落花生アレルゲン検出用金コロイド標識抗体20μLと、展開液としてFBS30μLとを、上記12種類の測定サンプル50μLにそれぞれ加えた供試液を、上記落花生アレルゲン検出用イムノクロマトストリップに供試した。結果を表8及び9に示す。
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
(結果)
表8及び9から明らかなとおり、落花生無添加ミルクチョコレートではすべて陰性で非特異的反応は認められなかった。
(a)表8から明らかなとおり、フィッシュゼラチン濃度が0%のときは「+−」判定でありほとんど検出できなかった。フィッシュゼラチン濃度0.25%以上で「+」判定、2.5%以上で「++」判定であり検出感度が高かった。
(d)表9から明らかなとおり、牛ゼラチン濃度が0%のときは「+−」判定でありほとんど検出できなかった。牛ゼラチン濃度が0.1%以上で「+w」判定、1.0%以上で「++」判定であり検出感度が高かった。以上の結果より、フィッシュゼラチン、牛ゼラチンが抽出液に含まれている場合において、ミルクチョコレートにおいて検出が阻害されず検出が可能であることが確認された。
【0096】
[実施例4]
[フィッシュゼラチンを添加した抽出液による落花生アレルゲンの検出限界]
これまでの検討の結果から、検出感度が高かったフィッシュゼラチンを2.5%含む抽出液を使用する場合に、ミルクチョコレート中の落花生アレルゲンを検出できる限界濃度を検討した。
【0097】
1)抽出液の調製
0.2%Tween20、0.1%チオ硫酸ナトリウム及び0.5%SDSを添加したPBSに、フィッシュゼラチンを0%又は2.5%添加し、2種類の抽出液を調製した。
【0098】
2)落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料の調製
ミルクチョコレートを湯煎により溶解したミルクチョコレート液に落花生タンパク質を終濃度で0ppm、2ppm、5ppm、10ppmとなるようにそれぞれ添加し、よく混合して均一化させることにより4種類の落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料を調製した。
【0099】
3)測定サンプルの調製
上記4種類の落花生タンパク質添加ミルクチョコレート試料について、各1gを50mLの遠沈管に量り取り、上記2種類の抽出液19mLをそれぞれ加えて撹拌することにより、8種類のチョコレート試料含有抽出液を調製した。各チョコレート試料含有抽出液を沸騰水中で10分間加熱し、冷却遠心後、それぞれの上清を8種類の測定サンプルとして調製した。
【0100】
4)イムノクロマト法による検出の確認
上記落花生アレルゲン検出用金コロイド標識抗体20μLと、展開液としてFBS30μLとを、上記8種類の測定サンプル50μLにそれぞれ加えた供試液を、上記落花生アレルゲン検出用イムノクロマトストリップに供試した。結果を表10に示す。
【0101】
【表10】
【0102】
(結果)
表10から明らかなとおり、フィッシュゼラチンが2.5%のときは落花生タンパク質濃度が2ppm(+w)まで検出が可能であった。これは、一般的なアレルゲン検査キットの検出感度と同等の検出感度であった。フィッシュゼラチンが0%のときは、10ppm以外は検出できず陰性であった。