特許第6778090号(P6778090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6778090ハンガーと該ハンガーを用いたシステム天井構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778090
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ハンガーと該ハンガーを用いたシステム天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   E04B9/18 P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-226849(P2016-226849)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-84063(P2018-84063A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(72)【発明者】
【氏名】玉村 耕造
(72)【発明者】
【氏名】小谷 卓矢
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−057216(JP,U)
【文献】 特開平08−027945(JP,A)
【文献】 特開2012−154102(JP,A)
【文献】 特開2004−300781(JP,A)
【文献】 実開昭49−142415(JP,U)
【文献】 実開昭55−124513(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第02573290(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18,9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が天井スラブから垂設された吊りボルトに取り付けられ、下端部が、一対の係止孔を有する垂直片と前記垂直片の下辺に設けられ、天井板の取り付け用水平片とで構成された天井バーの前記垂直片に取り付けられるハンガーであって、
下端部に天井バーの垂直片を跨ぐ切欠部が形成され、天井バーへの跨設時に該切欠部の両側が垂直片の表裏にそれぞれ沿う左右一対のアーム部となっているハンガー本体と、
アーム部を垂直片の表裏にそれぞれ沿わせた時、該アーム部に設けられ、前記係止孔に挿入されて係止孔に係止される係止爪とで構成されていることを特徴とするハンガー。
【請求項2】
係止爪は、アーム部に設けた爪部材からの切り起こし、或いは爪部材の曲げによって設けられ、アーム部が垂直片の表裏にそれぞれ沿うように配設された時に、垂直片に対してアーム部の反対側に突き出た係止爪の爪先が係止孔の孔縁に係止する係止端となることを特徴とする請求項1に記載のハンガー。
【請求項3】
垂直片の上辺に吊持用凸条が設けられた天井バーに対して、前記吊持用凸条が表から嵌め込まれる凹溝がアーム部に設けられ、裏から嵌め込まれる凹溝がアーム部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハンガー。
【請求項4】
天井スラブに垂設された吊りボルトと、
垂直片の下辺に水平片が設けられた天井バーと、
上端側が前記吊りボルトに取り付けられ、下端部が切欠部にて前記天井バーの垂直片に跨設された請求項1のハンガーと、
前記水平片に取り付けられた天井板とで構成されたシステム天井構造であって、
一方のアーム部が垂直片の表側に沿うように配設され、他方のアーム部が垂直片の裏に沿うように配設され、
一方のアーム部の係止爪が垂直片の係止孔に挿入されて係止孔に係止され、他方のアーム部の係止爪が垂直片の係止孔に挿入されて係止孔に係止されていることを特徴とするシステム天井構造。
【請求項5】
請求項3のハンガーを用いたシステム天井構造で、
天井スラブに垂設された吊りボルトと、
垂直片の下辺に水平片が設けられ、垂直片の上辺に吊持用凸条が設けられた天井バーと、
上端側が前記吊りボルトに取り付けられ、下端部が切欠部にて前記天井バーの垂直片に跨設された請求項3のハンガーと、
前記水平片に取り付けられた天井板とで構成されたシステム天井構造であって、
一方のアーム部が垂直片の表側に沿うように配設されると共に吊持用凸条の表側に対して一方のアーム部の凹溝が嵌め込まれ、他方のアーム部が垂直片の裏側に沿うように配設されると共に吊持用凸条の裏側に対して他方のアーム部の凹溝が嵌め込まれ、
一方のアーム部の係止爪が垂直片の係止孔に挿入されて係止孔係止され、他方のアーム部の係止爪が垂直片の係止孔に挿入されて係止孔に係止されていることを特徴とするシステム天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトに取り付けられ、ねじや工具なしで天井バーにワンタッチで取り付けてシステム天井を構成することが出来るハンガー、該ハンガーを用いたシステム天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりシステム天井においては、水平片と、この水平片から立設された垂直片と、垂直片の上端に設けられた吊持用凸条とで構成された断面略逆T字状の天井バーを用い、天井スラブに垂設された吊りボルトに固定したハンガーにて天井バーの吊持用凸条を挟持・固定し、ハンガーに取り付けられた天井バーを格子状に組み合わせてシステム天井の枠組み構造を形成し、この枠組み構造に天井板を嵌め込むことによって、システム天井を完成させていた(特許文献1)。
【0003】
このシステム天井に用いられるハンガーは、下端に天井バーの吊持用凸条の一方の片面側を保持する鉤状部が設けられた板状のハンガー本体と、吊持用凸条の他方の片面側を保持する、鉤状部を有する別体の引掛金具とで構成されている。
引掛金具の上端には突起が設けられ、この突起がハンガー本体の係止孔に係止され、引掛金具に取り付けられたねじをハンガー本体にねじ込んで行くことで係止された突起を支点にてこの原理で吊持用凸条を両側から鉤状部で強固に挟持するようになっている。
【0004】
しかしながら、このハンガー本体の鉤状部と引掛金具の鉤状部は、単に平板を略コ字状に折り曲げて形成しているものに過ぎず、これらによって天井バーの吊持用凸条を挟持し、天井バーとハンガーとを結合してシステム天井の枠組み構造を構成した場合、強い地震などによって横揺れが発生して天井バーに水平方向、或いはねじれ方向の引張力が働くと、ねじが緩んで天井バーの吊持用凸条がハンガーの鉤状部の間から水平方向にスライドするようになる。その結果、天井バーで構成された枠組み構造が変形するようになり、この変形した部分から天井バーの水平片に載置された天井板が落下してシステム天井が崩壊するというようなことがあった。
なお、上記ねじによる締め付け作業は時間が掛るだけでなく、ねじの締め方にばらつきがあり、締め付けの弱い部分からねじが緩み、システム天井崩壊の原因となりやすい。
【0005】
これに対し、ハンガー自体の強度を向上させる技術として、先行技術文献2に記載の発明が提案された。
特許文献2に記載の発明は、ハンガーに逆向きのL形の切り起こし爪を2個設け、Tバーの垂直片にL形の切り起こし爪を挿入できる切り起こし爪挿通孔と、この切り起こし爪挿通孔の上辺に開口し、切り起こし爪の基部が入り込む幅の狭い係止孔を設け、L形の切り起こし爪を切り起こし爪挿通孔に挿入した後、Tバーを下げて切り起こし爪の基部を切り起こし爪挿通孔から幅の狭い係止孔に移動させて切り起こし爪のL形に曲がった先端部分を係止孔に係止することでハンガーにTバーを取り付けるというものである。
【0006】
この発明は、上記のように逆向きのL形の切り起こし爪を狭い係止孔に係止するものであるから、施工は簡単であるものの地震の揺れ方によってTバーが上下左右回転方向に揺れて切り起こし爪が係止孔と切り起こし爪挿通孔との間を上下移動し、この間に横揺れを受けると時によっては上記係止が外れて切り起こし爪挿通孔が切り起こし爪から脱落してTバーが落下するというという問題があった。
【0007】
これに対して、ハンガーに別途切り起こし片を設け、Tバーの吊持用凸条を上から押さえるようにした発明が提案されているが、上記のような係止作業後に切り起こし片を作業者が起こして吊持用凸条を上から押さえるようにしなければならず、ねじ固定による固定作業と同様、天井という高所作業で作業者に大きな負担が掛るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭61−32022号公報
【特許文献2】特開2004−197471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主たる課題は、天井バーへの装着がねじ固定作業や爪や辺の折り曲げ作業などを要せずにワンタッチで行え、構築されたシステム天井の耐震性も高いハンガーと該部材を用いたシステム天井構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、
上端部が天井スラブから垂設された吊りボルト50に取り付けられ、下端部が、一対の係止孔2d1・2d2を有する垂直片2bと前記垂直片2bの下辺に設けられ、天井板4の取り付け用水平片2cとで構成された天井バー2の前記垂直片2bに取り付けられるハンガー1であって、
下端部に天井バー2の垂直片2bを跨ぐ切欠部3が形成され、天井バー2への跨設時に該切欠部3の両側が垂直片2bの表裏にそれぞれ沿う左右一対のアーム部21a・21bとなっているハンガー本体1aと、
アーム部21a・21bを垂直片2bの表裏にそれぞれ沿わせた時、該アーム部21a・21bに設けられ、前記係止孔2d1・2d2に挿入されて係止孔2d1・2d2に係止される係止爪33a・33bとで構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、ハンガー1に地震の揺れが入力した場合、天井バー2が前後左右及び回転により、水平方向に大きく揺れたとしても、係止爪33a・33bが係止孔2d1・2d2に挿入されて係止されているので、天井バー2とハンガー1とのずれは発生しない。そして、天井バー2の垂直片2bはぞの前後からアーム部21a・21bと係止孔2d1・2d2に係止されている係止爪33a・33bとで挟まれているので、上記水平方向の揺れに対して大きな抵抗力を持つ。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハンガー1の「係止爪33a・33b」の一例で、
係止爪33a・33bは、アーム部21a・21bに設けた爪部材31a・31bからの切り起こし、或いは爪部材31a・31bの曲げによって設けられ、アーム部21a・21bが垂直片2bの表裏にそれぞれ沿うように配設された時に、垂直片2bに対してアーム部21a・21bの反対側に突き出た係止爪33a・33bの爪先が係止孔2d1・2d2の孔縁に係止する係止端35a・35bとなることを特徴とする。
【0013】
上記構成では係止爪33a・33bは垂直片2bに対して嵌め殺し状態で係止されることになり、係止爪33a・33bが破損して係止孔2d1・2d2から脱落しない限りハンガー1から天井バー2が外れるというようなことがない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のハンガー1に関し、
垂直片2bの上辺に吊持用凸条2aが設けられた天井バー2に対して、前記吊持用凸条2aが表から嵌め込まれる凹溝22aがアーム部21aに設けられ、裏から嵌め込まれる凹溝22bがアーム部21bに形成されていることを特徴とする。
【0015】
これにより水平方向の揺れに加えて上下方向の揺れが入力した場合でも、凹溝22a・22bが表裏から吊持用凸条2aを咥え込んでいるため、上下方向の揺れに対しても大きな抵抗力を示す。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1のハンガー1を用いたシステム天井構造で、
天井スラブに垂設された吊りボルト50と、
垂直片2bの下辺に水平片2cが設けられた天井バー2と、
上端側が前記吊りボルト50に取り付けられ、下端部が切欠部3にて前記天井バー2の垂直片2bに跨設された請求項1のハンガー1と、
前記水平片2cに取り付けられた天井板4とで構成されたシステム天井構造であって、
一方のアーム部21aが垂直片2bの表側に沿うように配設され、他方のアーム部21bが垂直片2bの裏に沿うように配設され、
一方のアーム部21aの係止爪33aが垂直片2bの係止孔2d1に挿入されて係止孔2d1に係止され、他方のアーム部21bの係止爪33bが垂直片2bの係止孔2d2に挿入されて係止孔2d2に係止されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3のハンガー1を用いたシステム天井構造で、
天井スラブに垂設された吊りボルト50と、
垂直片2bの下辺に水平片2cが設けられ、垂直片2bの上辺に吊持用凸条2aが設けられた天井バー2と、
上端側が前記吊りボルト50に取り付けられ、下端部が切欠部3にて前記天井バー2の垂直片2bに跨設された請求項3のハンガー1と、
前記水平片2cに取り付けられた天井板4とで構成されたシステム天井構造であって、
一方のアーム部21aが垂直片2bの表側に沿うように配設されると共に吊持用凸条2aの表側に対して一方のアーム部21aの凹溝22aが嵌め込まれ、他方のアーム部21bが垂直片2bの裏側に沿うように配設されると共に吊持用凸条2aの裏側に対して他方のアーム部21bの凹溝22bが嵌め込まれ、
一方のアーム部21aの係止爪33aが垂直片2bの係止孔2d1に挿入されて係止孔2d1に係止され、他方のアーム部21bの係止爪33bが垂直片2bの係止孔2d2に挿入されて係止孔2d2に係止されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
これによりハンガー1の天井バー2への装着位置において、ハンガー1の下端部を切欠部3にて天井バー2の上から跨がせ、そのままハンガー1を回転させると係止爪33a・33bが係止孔2d1・2d2に押し込まれ、入り切った処で係止爪33a・33bが戻って係止孔2d1・2d2に係止する。
係止爪33a・33bがアーム部21a・21bに設けた爪部材31a・31bからの切り起こし、或いは爪部材31a・31bの曲げによって設けられている場合は、係止爪33a・33bの係止端35a・35bが係止孔2d1・2d2の孔縁に嵌め殺し状で係止することになる。
即ち、ハンガー1の天井バー2への装着は、天井部というような高所での作業を工具もねじのような締結具も用いずにハンガー1の回転作業だけで行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例のハンガーを示す斜視図である。
図2図1のハンガーを天井バーに装着する状態を示す斜視図である。
図3図1のハンガーの使用態様を示す正面図である。
図4図3の右側面図である。
図5図3の平面図である。
図6図2の装着する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1及び図2に示すハンガー1はシステム天井において、天井板4を支持する略逆T字状の天井バー2を、天井スラブに取り付けられた吊りボルト50に吊り下げて固定するためのものである。
【0021】
天井バー2は、垂直片2bの下辺の両側に下辺全長に亘って水平片2cが延出した断面略逆T字状を呈する長尺部材である。そして、垂直片2bの上辺には垂直片2bより大きな幅で吊持用凸条2aがその全長に亘って必要に応じて設けられている。以下の実施例では吊持用凸条2aが設けられている場合を代表例として説明する。
【0022】
天井バー2の垂直片2bには縦長長方形の係止孔2d1・2d2が所定の間隔S2をあけて穿設されている(図2参照)。係止孔2d1・2d2間の間隔S2は後述する係止爪33a・33bの挿入端34a・34bの間隔S1と同じ幅である。なお、図示していないが、天井バー2には、長尺の主天井バーとこれに直交し、一定の間隔で主天井バー間に配置される短寸の副主天井バーとがあり、副主天井バーの主天井バーの側面に対する突き当て端部は接続金具で直交状態に接続される。本発明のハンガー1はいずれの天井バー2にも装着できる。
前記一対の係止孔2d1・2d2の形成位置は、両者が直交する上記直交位置から離れた位置で形成される。なお、1本の天井バー2に複数対の係止孔2d1・2d2を設けることも可能である。
【0023】
天井板4は、平面視正方形或いは長方形の例えばロックウール化粧吸音板が使用されるが、勿論これに限られず、石膏ボードや木質板等を用いることができる。
天井板4は天井バー2の水平片2c上に載置されて施工されたり、天井板4の側面に設けられた溝に水平片2cを差し込んで使用されるなど様々な形態がある。
【0024】
ハンガー1はハンガー本体1aと左右一対の爪部材31a・31bとで構成される。
ハンガー本体1aは、板材を折り曲げて形成された吊り持ち部10、前記吊り持ち部10にねじ止めされた左右一対のアーム部21a・21bとで構成されている。図の実施例では吊り持ち部10と左右一対のアーム部21a・21bとは別体で構成されているが、一体で構成してもよい。以下、別体の場合で説明する。
【0025】
吊り持ち部10は、吊りボルト用孔12aが中央に穿設された水平吊り板部12、該水平吊り板部12の一端を折り曲げた垂直吊り板部13、該垂直吊り板部13から吊りボルト用孔12aの直下に至る傾斜吊り板部14、該傾斜吊り板部14の下端から垂設され、アーム部21a・21bを取り付ける取付面11aが吊りボルト用孔12aの中心に一致するアーム取付板部11、これらの側辺に設けられたリブ板部15とで構成されている。アーム取付板部11にはアーム部21a・21bを螺着する一対のナット孔が穿設されている。
【0026】
アーム部21a・21bのそれぞれは、丸穴が穿設され、丸穴を用いて上記取付面11aにねじ止めされる被取付け部23a・23b、該被取付け部23a・23bの下縁から垂設されたアーム垂直片25a・25bとで構成されている。該被取付け部23a・23bの下縁に沿う、アーム垂直片25a・25bの上端にはアーム垂直片25a・25bをコ字形に屈曲して凹溝22a・22bが設けられている。凹溝22a・22bの内寸は吊持用凸条2aが嵌まり込む高さに及び深さに形成されている。上記凹溝22a・22bは逆方向に開口するように設けられている。
【0027】
アーム部21a・21bを吊り持ち部10の取付面11aにねじ止めした時、アーム垂直片25a・25b及び凹溝22a・22bの形成部分の対向内側辺がL形に切り取られてアーム垂直片25a・25bからアーム取付板部11の下縁の先端部分に至る切欠部3が形成されている。
凹溝22a・22bを含むアーム垂直片25a・25bの外側縦辺(対向内側辺の反対側の辺)はアーム取付板部11の外側縦辺より外側に伸びており、凹溝22a・22bの長さが長くなるように形成されている。
なお、上記実施例では、吊り持ち部10と左右一対のアーム部21a・21bとはねじ40にてねじ止めの例が示されているが、溶接、ろう付け、接着その他の接合でも良い。
【0028】
爪部材31a・31bは、普通鋼板或いは硬質樹脂で形成されるハンガー本体1aに対して、例えば、ばね性を持つステンレス板やばね鋼板で形成されるため、図1,2の実施例では、アーム部21a・21bとは別体に形成されている。図1,2の実施例に示す爪部材31a・31bは、ばね板材を折り曲げて形成されており、アーム垂直片25a・25bに取り付けられる被固着部31a1・31b1、前記被固着部31a1・31b1から直角に折り曲げられた爪本体32a・32b、 前記爪本体32a・32bから鋭角に折り曲げられた係止爪33a・33bとで構成されている。係止爪33a・33bの先端が係止端35a・35bであり、前記折り曲げ端が挿入端34a・34bになる。
係止端35a・35bの爪本体32a・32bに対する離間幅(開き幅)H1は、スリット状の係止孔2d1・2d2の開口幅H2より大きい。
【0029】
爪部材31a・31bは、その被固着部31a1・31b1にてアーム部21a・21bにねじ止めにより反対方向から取り付けられている。従って、爪部材31a・31bの爪本体32a・32bの突出方向は互いに逆向きで、一方の爪本体32aの突出方向は当該爪本体32aが取着されている爪部材31aの凹溝22aの開口方向であり、他方の爪本体32bの突出方向は当該爪本体32bが取着されている他方の爪部材31bの凹溝22bの開口方向である。そして、爪本体32a・32bの先端(挿入端34a・34b)で折り返された係止爪33a・33bはそれぞれ対応する凹溝22a・22b方向を向く。
なお、係止爪33a・33bは図1,2では上記のようにばね板材の折り曲げによって形成されているが、これに限られず、図3〜8に示すように爪本体32a・32bを切り起こして形成してもよい。係止爪33a・33bの先端(係止端35a・35b)は、切り放しで角の立った四角形でも良いし、丸い円弧状であってもよい。
【0030】
次に、本発明のハンガー1を用いてシステム天井を構築する場合に付いて説明する。本発明のハンガー1を取り付ける際には、まず、天井スラブに所定間隔で垂設された吊りボルト50をハンガー1の水平吊り板部12に穿設された吊りボルト用孔12aに挿通し、吊りボルト50にナット51を螺着することによって、ハンガー1を吊りボルト50の所定の高さに固定する(図2参照)。高さ調整はナット51の取着位置を適宜上下することで行える。
【0031】
次に、ハンガー1の天井バー2に対する装着位置、即ち、垂直片2bに設けられた一対の係止孔2d1・2d2の中間位置で、吊りボルト50に吊り下げられたハンガー1の切欠部3に下から天井バー2の垂直片2bを挿入する。天井バー2の吊持用凸条2aの上端が切欠部3の奥端に突き当たった処でハンガー1を回転させ、係止爪33a・33bを係止孔2d1・2d2に挿入する。(或いは、前記跨設状態で一方の係止孔2d1に対応する係止爪33aを挿入係止し、該一方の係止孔2d1を支点に跨設状態のハンガー1を回転させ、他の係止孔2d2にこれ対応する係止爪33bを挿入係止するようにしてもよい。)
この時、係止爪33a・33bの爪本体32a・32bに対する開き幅H1は、係止孔2d1・2d2の開口幅H2より大であるので、係止爪33a・33bは係止孔2d1・2d2の孔縁に押圧されて撓み、係止孔2d1・2d2を通り抜けた処で元の開き幅H1に戻り、係止孔2d1・2d2の孔縁に係止爪33a・33bの係止端35a・35bがそれぞれ係止する。係止端35a・35bが四角の場合は先端全体が当接し、円弧の場合は先端の1点で当接する。
【0032】
そしてこの時、装着されたハンガー1の一方のアーム部21aは天井バー2の垂直片2bの一方の面(係止端35aが当接している面の反対側の面)に当接し、他方のアーム部21bは反対側の面(係止端35bが当接している面の反対側の面)に当接している。同時に、天井バー2の吊持用凸条2aの一方の側面側はアーム部21aの凹溝22aに嵌まり込み、吊持用凸条2aの反対側の側面側はアーム部21bの凹溝22bに嵌まり込む。
即ち、図5,6に示すように吊持用凸条2aの一方の側面側がアーム部21aの凹溝22aに嵌まり込み、且つ当該アーム部21aが垂直片2bの一方の側面(吊持用凸条2aの凹溝22aへの嵌り込み側の側面)に当接すると、当該アーム部21aの係止爪33aは係止孔2d1を超えて垂直片2bの反対側から係止して垂直片2bを両側から挟み付ける。
そして、吊持用凸条2aの反対側の側面がアーム部21bの凹溝22bに嵌まり込み、且つ当該アーム部21bが垂直片2bの反対側の側面(吊持用凸条2aの凹溝22bへの嵌り込み側の側面)に当接すると、当該アーム部21bの係止爪33bは係止孔2d2を超えて垂直片2bの一方側から係止して垂直片2bを挟み付ける。凹溝22a・22bへの嵌まり込み深さは、吊持用凸条2aの幅の約半分である。
そして、他方のアーム部21b、凹溝22b、係止爪33b及び垂直片2b並びに係止孔2d2の関係は上記と装着位置を中心とする点対称の関係にあることを明示して説明を省略する。
【0033】
このような作業を繰り返し、複数の長尺の主たる天井バー2を複数のハンガー1にてスラブから一定の高さの位置に吊り下げ、これに直交するように副天井バー(図示せず)を所定間隔で配設し、その端部を主たる天井バー2に固定して格子構造に天井バーを組み上げる。最後に、主副天井バーの水平片2c上に天井板4を載置してシステム天井とする。
システム天井の構築手順は、上記方法の留まらず、天井板4の構造によっては図2に示すように天井板4の側面の溝4aに水平片を挿入しながら組み上げて行くこともある。
【0034】
以上のように構築されたシステム天井に例えば自身のような大きな揺れが加わった場合、システム天井は上下・前後左右且つ回転方向に揺れる。
ハンガー1は天井バー2の垂直片2bに対して装着位置を中心に点対称でその表裏から係止爪33a・33bとアーム部21a・21bにより挟み込んでいるので、係止爪33a・33bが破損して係止孔2d1・2d2から離脱しない以上、前後左右且つ回転方向の水平方向の揺れに対して耐震性を発揮する。吊持用凸条2aを点対称にて表裏から嵌まり込んでいる凹溝22a・22bも上記水平方向の揺れに対して耐震性向上に寄与する。
上下方向の揺れに対しては、点対称にて吊持用凸条2aに表裏から上下方向に隙間なく嵌まり込んでいる凹溝22a・22bが耐震に寄与する。
爪本体32a・32bの高さが係止孔2d1・2d2とほぼ等しければ上下の揺れに対して爪本体32a・32bが係止孔2d1・2d2僅かの隙で接触することになるので、この点でも上下方向の揺れに対して耐震性向上に寄与する。
【0035】
以上のように装着状態では、天井バー2の垂直片2bの表裏に点対称でアーム部21a・21bが沿うようにそれぞれ配置され、且つ係止孔2d1・2d2に挿入された、アーム部21a・21bの反対側での係止爪33a・33bによる嵌め殺しがなされ、加えて、吊持用凸条2aが点対称で凹溝22a・22bに表裏から嵌め込まれているので、前後左右及び回転方向に加えて上下方向のあらゆる揺れに対しても耐えることが出来る。
【0036】
なお、上記の場合は天井バー2に吊持用凸条2aが設けられ、アーム部21a・21bに凹溝22a・22bが設けられている場合であるが、天井バー2に吊持用凸条2aがない場合には凹溝22a・22bを設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0037】
H1:係止爪の離間幅(開き幅)、H2:係止孔の開口幅、S1:係止爪の挿入端の間隔、S2:左右一対の係止孔の間隔、1:ハンガー、1a:ハンガー本体、2:天井バー、2a:吊持用凸条、2b:垂直片、2c:水平片、2d1・2d2:係止孔、3:切欠部、4:天井板、4a:溝、10:吊り持ち部、11:アーム取付板部、11a:取付面、12:水平吊り板部、12a:吊りボルト用孔、13:垂直吊り板部、14:傾斜吊り板部、15:リブ板部、21a・21b:アーム部、22a・22b:凹溝、23a・23b:被取付け部、25a・25b:アーム垂直片、31a・31b:爪部材、31a1・31b1:被固着部、32a・32b:爪本体、33a・33b:係止爪、34a・34b:挿入端、35a・35b:係止端、40:ねじ、50:吊りボルト、51:ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6