特許第6778095号(P6778095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778095
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】多気筒エンジン冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/02 20060101AFI20201019BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20201019BHJP
   F02D 17/02 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   F01P3/02 W
   F01P3/20 J
   F02D17/02 U
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-232839(P2016-232839)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-91162(P2018-91162A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 良行
(72)【発明者】
【氏名】仁科 宏健
(72)【発明者】
【氏名】松下 尚史
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−210120(JP,A)
【文献】 特開昭56−110513(JP,A)
【文献】 特開2009−008036(JP,A)
【文献】 特開2013−087758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00−11/20
F02D 13/00−28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダの一部を休止状態にすることが可能なエンジン本体を冷却する多気筒エンジン冷却装置であって、
前記エンジン本体に冷却水を流す循環経路として、
連続稼働する前記シリンダに設けられた連続稼働側冷却路と、
休止可能な前記シリンダに設けられた休止可能側冷却路と、
加熱された冷却水から熱を放出させるラジエタと、
前記ラジエタと、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路と、の間に設けられ、前記ラジエタから入力された冷却水の出力先を切り替える入力側バルブと、
前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路と、前記ラジエタと、の間に設けられ、前記ラジエタに出力する冷却水の入力先を切り替える出力側バルブと、
を備え、
前記休止可能側冷却路は、
冷却水の入出力を行う第1入出力口および第2入出力口を有し、
休止可能な前記シリンダが稼働している場合には、
前記入力側バルブは、前記ラジエタから入力された冷却水を、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路に出力させ、
前記出力側バルブは、前記ラジエタに出力する冷却水を、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路から入力させ、
前記休止可能側冷却路は、前記第1入出力口から冷却水を入力し、前記第2入出力口から冷却水を出力し、
休止可能な前記シリンダが休止している場合には、
前記入力側バルブは、前記ラジエタから入力された冷却水を、前記連続稼働側冷却路に出力させ、
前記出力側バルブは、前記ラジエタに出力する冷却水を、前記休止可能側冷却路から入力させ、
前記休止可能側冷却路は、前記第2入出力口から冷却水を入力し、前記第1入出力口から冷却水を出力する、
ことを特徴とする多気筒エンジン冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンを冷却する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンは、複数のシリンダが形成されたエンジン本体を有する。そして、たとえば自動車といった車両において動力源として用いられる。多気筒エンジンでは、シリンダに燃料および空気を供給し、この混合気を圧縮燃焼させることによりピストンを押し下げ、動力を得る。シリンダに供給する燃料(または混合気)の量を増減することにより、エンジン出力を増減することができる。
ところで、近年、燃費性能の向上などを目的として、多気筒エンジンにおいて、複数のシリンダの中の一部を休止させて動作させる気筒停止技術が研究されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−087758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一部のシリンダを休止させた場合、そのシリンダを冷却するように用いられた冷却水は、十分に暖められない。その結果、それを含む冷却水を熱回収器へ供給したとしても、熱回収器が十分に暖まらず、熱回収器での熱回収効率も低下する。
また、休止した状態で冷却水が供給されることにより、休止しているシリンダの温度は過度に低下してしまう可能性がある。その結果、たとえばエンジンの熱バランスが悪化する可能性がある。また、休止後に再稼働させた場合に、再稼働したシリンダと連続稼働していたシリンダとの間で摩擦などの動作状態が異なる可能性がある。
【0005】
このように多気筒エンジンでは、一部の気筒を休止させた場合に生じ得る二次的な課題を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る多気筒エンジン冷却装置は、複数のシリンダの一部を休止状態にすることが可能なエンジン本体を冷却する多気筒エンジン冷却装置であって、前記エンジン本体に冷却水を流す循環経路として、連続稼働する前記シリンダに設けられた連続稼働側冷却路と、休止可能な前記シリンダに設けられた休止可能側冷却路と、加熱された冷却水から熱を放出させるラジエタと、前記ラジエタと、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路と、の間に設けられ、前記ラジエタから入力された冷却水の出力先を切り替える入力側バルブと、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路と、前記ラジエタと、の間に設けられ、前記ラジエタに出力する冷却水の入力先を切り替える出力側バルブと、を備え、
前記休止可能側冷却路は、冷却水の入出力を行う第1入出力口および第2入出力口を有し、休止可能な前記シリンダが稼働している場合には、前記入力側バルブは、前記ラジエタから入力された冷却水を、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路に出力させ、前記出力側バルブは、前記ラジエタに出力する冷却水を、前記連続稼働側冷却路および前記休止可能側冷却路から入力させ、前記休止可能側冷却路は、前記第1入出力口から冷却水を入力し、前記第2入出力口から冷却水を出力し、休止可能な前記シリンダが休止している場合には、前記入力側バルブは、前記ラジエタから入力された冷却水を、前記連続稼働側冷却路に出力させ、前記出力側バルブは、前記ラジエタに出力する冷却水を、前記休止可能側冷却路から入力させ、前記休止可能側冷却路は、前記第2入出力口から冷却水を入力し、前記第1入出力口から冷却水を出力する、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0016】
本発明の多気筒エンジン冷却装置は、エンジン本体に冷却水を流す循環経路として、稼働しているシリンダを冷却した冷却水を、休止しているシリンダの冷却路へ供給する冷却経路を有する。たとえばエンジン本体がシリンダ毎に独立して設けられる複数の個別冷却路を有する場合には、稼働しているシリンダに対応する個別冷却路から、休止しているシリンダに対応する個別冷却路へ冷却水を流すようにすればよい。これにより、休止しているシリンダは、稼働しているシリンダを冷却することで加熱された冷却水により暖められる。その結果、休止後に再稼働させた場合には、再稼働したシリンダと連続稼働していたシリンダとの間で摩擦などの動作状態が均一化され、エンジン動作にアンバランスが生じ難くなり、エンジンの振動も大きくなり難くなる。経時的なエンジンの劣化を抑制できる。
また、本発明において、稼働しているシリンダを冷却した冷却水の行き先を、バルブにより、たとえば、休止しているシリンダとラジエタとの間で切り替えたり、休止しているシリンダと加熱された冷却水から熱を回収する熱回収器との間で切り替えたりする、とよい。同様に、本発明において、休止しているシリンダへ供給された冷却水は、熱交換器をバイパスしてラジエタへ循環される、とよい。これらにより、ラジエタや熱回収器に対して、休止しているシリンダにより冷却された後の冷却水が供給されなくなる。その結果、たとえば熱回収器の温度が上昇し、熱回収器での熱回収効率が向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置を用いた自動車の説明図である。
図2図2は、図1の多気筒エンジンの模式的な縦断面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置の構成図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置の構成図である。
図5図5は、図4の冷却水の循環経路での循環状態(休止加熱状態および熱回収優先状態)の説明図である。
図6図6は、図4での冷却水の循環経路の他の循環状態(フル稼働状態)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置20を用いた自動車1の説明図である。
【0020】
図1の自動車1は、車体2を有する。車体2の車幅方向両側には、車輪3が配置される。また、車体2の前部には、多気筒エンジン4、ラジエタ21、などが配置される。
自動車1は、乗員室のシート6に着座した運転手による手動運転操作により、またはナビゲーション装置31の生成経路などに基づく自動運転装置32による自動運転制御により走行する。また、手動運転中には、自動運転装置32は、運転支援制御を実施する。
【0021】
図2は、図1の多気筒エンジン4の模式的な縦断面図である。図2には、この他にもエンジン制御部18が図示されている。
【0022】
図2の多気筒エンジン4は、エンジン本体11、エンジン本体11に一列に並べて形成される4つのシリンダ12、各シリンダ12内に配置される4つのピストン13、4つのフライホイール14を有する出力軸15、各ピストン13とフライホイール14とを連結する4つのコンロッド16、を有する。また、各シリンダ12の頭部の燃焼室には、インジェクタ17が配置される。各シリンダ12では、インジェクタ17が噴射した燃料と空気との混合気をピストン13の上昇で圧縮し、図示外のプラグで燃焼させ、燃焼気体の圧力によりピストン13を押し下げる。このピストン13を押し下げる力は、コンロッド16およびフライホイール14を通じて出力軸15を回転させる。そして、基本的には、インジェクタ17から噴射する燃料の量を増やすと出力軸15の回転トルクおよび回転速度が上昇し、減らすと出力軸15の回転トルクおよび回転速度が降下する。
エンジン制御部18は、インジェクタ17から噴射する燃料の量を制御することにより、エンジン出力を制御する。
また、エンジン制御部18は、4つのインジェクタ17から同じ量の燃料を噴射させるのではなく、4つのインジェクタ17から異なる量の燃料を噴射させることもできる。具体的にはたとえば、4つのインジェクタ17の一部から燃料を噴射させるとともに、残りのインジェクタ17からの燃料噴射を休止させる。これにより、燃料の総噴出量を抑えて、燃費を向上させることができる。燃料を噴出しないインジェクタ17が設けられたシリンダ12は、燃焼をしない休止状態となる。これに対し、燃料が噴出されるインジェクタ17が設けられたシリンダ12は、燃焼をする連続稼働状態となる。
【0023】
ところで、このような多気筒エンジン4は、発熱するため、冷却装置を必要とする。冷却装置は、多気筒エンジン4の複数のシリンダ12へ冷却水を循環させて冷却する。また、冷却装置は、複数のシリンダ12を冷却することにより暖められた冷却水を集めてラジエタ21で冷却したり、熱交換器27などの熱回収器において熱を再利用したりする。熱回収器26で回収された熱は、たとえば自動車1の乗員室の暖房などに再利用される。
【0024】
しかしながら、このように多気筒エンジン4の複数のシリンダ12に対して冷却水を同様に循環させる冷却装置を、一部のシリンダ12を休止させて可動可能な多気筒エンジン4と組み合わせた場合、休止しているシリンダ12へ供給された冷却水は、シリンダ12の発熱が無いために暖まらない。その結果、それを含む冷却水を熱回収器へ供給したとしても、熱回収器が十分に暖まらず、熱回収器での熱回収効率も低下する。
また、休止した状態では、休止しているシリンダ12の温度は過度に低下してしまう可能性がある。その結果、たとえば複数のシリンダ12の間で熱バランスが悪化する可能性がある。また、休止後に再稼働させた場合に、再稼働したシリンダ12と連続稼働していたシリンダ12との間で摩擦などの動作状態が異なる可能性がある。
このように多気筒エンジン4では、一部のシリンダ12を休止させた場合に生じ得る二次的な課題を抑制することが求められている。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置20の構成図である。
【0026】
図3の多気筒エンジン4では、複数のシリンダ12は、連続稼働するシリンダ29と、休止可能なシリンダ30とを有する。そして、連続稼働するシリンダ29と、休止可能なシリンダ30とは、互いに隣接して設けられている。
図3の多気筒エンジン冷却装置20は、複数のシリンダ12が形成されたエンジン本体11を冷却するものであり、ラジエタ21、ポンプ22、連続稼働するシリンダ29に設けられた連続稼働側の個別冷却路23、休止可能なシリンダ30に設けられた休止可能側の個別冷却路24、第一バルブ25、第一バイパス冷却路26、熱交換器27、冷却系制御部28、を有する。
【0027】
連続稼働側の個別冷却路23および休止可能側の個別冷却路24で構成される複数の個別冷却路は、エンジン本体11においてシリンダ12毎に独立して分けて設けられる。個別冷却路23は、シリンダ12の周囲に冷却水を流すように形成される。なお、個別冷却路23は、シリンダ12の周囲だけでなく、燃焼室の上側のシリンダヘッドに対しても冷却水を流すように形成されてもよい。
【0028】
第一バルブ25は、冷却水の流入または流出を全開と全閉との間で切り替える。なお、第一バルブ25は、全開と全閉との間で開度を制御できるものでもよい。
【0029】
熱交換器27は、エンジン本体11の連続稼働側の個別冷却路23を通過することにより暖められた冷却水から熱を回収する。
【0030】
ラジエタ21は、図1に示すように、車体2の最前部に配置される。ラジエタ21は、外気により冷却水を冷却する。
【0031】
そして、ラジエタ21、ポンプ22、連続稼働するシリンダ29に対応する連続稼働側の個別冷却路23、熱交換器27は、冷却管によりその順番で接続される。これにより、主な循環経路が形成される。
また、第一バルブ25は、連続稼働側の個別冷却路23と、熱交換器27との間に設けられ、休止するシリンダ12に対応する休止可能な個別冷却路24の一端に接続される。また、休止可能な個別冷却路24の他端には、第一バイパス冷却路26が接続される。第一バイパス冷却路26の他端は、熱交換器27とラジエタ21との間に接続される。
【0032】
冷却系制御部28は、エンジン制御部18、ナビゲーション装置31、自動運転装置32、乗員室を加熱または冷却する空調装置33、シリンダ別温度センサ34、冷却路別温度センサ35、タイマ36が接続される。
そして、冷却系制御部28は、自動車1に設けられる各機構の情報に基づいて、循環経路での冷却水の循環を制御する。
また、このような情報としては、たとえば、エンジン本体11におけるシリンダ12(休止可能なシリンダ30)の休止状態、シリンダ12(休止可能なシリンダ30)の稼働状態、循環経路に設けられるラジエタ21の温度、熱交換器27の温度、および、回収した熱の利用状態、などがある。
【0033】
シリンダ別温度センサ34は、多気筒エンジン4のエンジン本体11において、各シリンダ12の近くに配置される。これにより、シリンダ別温度センサ34は、シリンダ12毎の温度を検出する。
【0034】
冷却路別温度センサ35は、個別冷却路23,24に設けられる。これにより、冷却路別温度センサ35は、各々の個別冷却路23,24に流れる冷却水の温度を検出する。
【0035】
タイマ36は、たとえば経過期間などの時間を計測する。
【0036】
次に、具体的な冷却制御の一例について説明する。
【0037】
冷却系制御部28は、たとえば休止状態のシリンダ12が存在する場合、またはすべてのシリンダ12が稼働状態でない場合、休止状態のシリンダ12(休止可能なシリンダ30)を暖める制御を実行する。具体的には、休止可能側の個別冷却路24へ冷却水が流れるように、第一バルブ25を開く。また、たとえば第一バルブ25から熱交換器27への流路を閉じる。
この場合、冷却水は、ポンプ22の動力により、ラジエタ21から、連続稼働側の個別冷却路23へ供給される。稼働するシリンダ29は、冷却水により冷却される。稼働するシリンダ29を冷却した冷却水は、エンジンの熱を吸収して加熱される。
その後、加熱された冷却水は、第一バルブ25から、休止しているシリンダ30に対応する休止可能側の個別冷却路24へ供給される。冷却水の熱の一部は、休止しているシリンダ30を暖めるために用いられる。休止しているシリンダ30の温度は、稼働するシリンダ29と同等または少し低い温度まで暖められ得る。その後、冷却水は、第一バイパス冷却路26を通じて、ラジエタ21へ戻される。冷却水は、熱交換器27を通過することなくバイパスして循環する。
このような制御により、休止しているシリンダ30は、その始動前に暖められる。
その後、たとえば休止しているシリンダ30を含めてエンジン本体11の全体が好適な温度まで加熱されると、冷却系制御部28は、休止状態のシリンダ30を暖める制御を止めてもよい。この場合、第一バルブ25から熱交換器27への流路を開く。また、第一バルブ25から、休止するシリンダ30に対応する個別冷却路24への流路を閉じる。
【0038】
また、たとえば乗員室の温度が低いといった回収熱の熱利用が必要である場合、冷却系制御部28は、休止状態のシリンダ30が温まっていない状態でも、熱回収を優先する制御を実行する。具体的には、第一バルブ25から熱交換器27への流路を開く。また、第一バルブ25から、休止するシリンダ30に対応する個別冷却路24への流路を閉じる。
この場合、稼働するシリンダ29の熱で暖められた冷却水は、第一バルブ25から、熱交換器27へ供給される。冷却水の熱の一部は、熱交換器27により回収して、暖房などに利用される。その後、冷却水は、ラジエタ21へ戻される。
このような制御により、エンジンの熱を回収して利用することができる。
なお、本実施形態では冷却路への流路を開閉する制御としたが、適宜、たとえば開度により流量の制御とすることができるのは当然である。
【0039】
以上のように、本実施形態では、エンジン本体11がシリンダ12毎に独立して設けられる複数の個別冷却路23,24を有し、多気筒エンジン冷却装置20は、エンジン本体11に冷却水を流す循環経路として、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水を、休止しているシリンダ30の個別冷却路24へ供給する冷却経路を有する。稼働しているシリンダ29に対応する個別冷却路23から、休止しているシリンダ30に対応する個別冷却路24へ冷却水を流す。これにより、休止しているシリンダ30は、稼働しているシリンダ29を冷却することで加熱された冷却水により暖められる。その結果、休止後に再稼働させた場合には、再稼働したシリンダ30と連続稼働していたシリンダ29との間で摩擦などの動作状態が均一化され、エンジン動作にアンバランスが生じ難くなり、エンジン本体11の振動も大きくなり難くなる。エンジン本体11の経時的な劣化を抑制できる。
また、本実施形態において、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水の行き先は、第一バルブ25により、休止しているシリンダ30と加熱された冷却水から熱を回収する熱交換器27との間で切り替えられる。また、休止しているシリンダ30へ供給された冷却水は、熱交換器27をバイパスしてラジエタ21へ循環される。これらにより、熱交換器27に対して、休止しているシリンダ30により冷却された後の温度が低い冷却水が供給されなくなる。その結果、たとえば熱交換器27の温度が上昇し、熱交換器27での熱回収効率が向上し得る。
なお、図3から熱交換器27を除去した場合、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水の行き先は、第一バルブ25により、休止しているシリンダ30とラジエタ21との間で切り替わる。この場合には、ラジエタ21へ供給される冷却水の温度が上昇し、ラジエタ21での放熱効率が向上する。
【0040】
本実施形態では、第一バルブ25を切り替えることにより、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水の行き先を、休止しているシリンダ30と、加熱された冷却水から熱を回収する熱交換器27との間で切り替える。よって、たとえばより多くの熱を回収する必要がある場合には、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水を、休止しているシリンダ30の加熱に用いることなく、熱交換器27へ供給し、効率よく熱を回収できる。
【0041】
本実施形態では、休止しているシリンダ30へ供給された冷却水は、熱交換器27をバイパスして循環される。よって、休止しているシリンダ30の加熱に用いられて温度が低下した冷却水を、熱交換器27へ供給しないようにできる。その結果、熱交換器27では、稼働しているシリンダ29で暖められた高温の冷却水のみが供給され、高い温度の下で効率よく熱を回収できる。
【0042】
本実施形態において、冷却系制御部28は、休止するシリンダ30を通過した冷却水が熱交換器27へ供給されないように制御している。よって、たとえば冷却水の温度が低い場合、熱交換器27の温度が低い場合、および熱交換器27で回収された熱を利用する場合などにおいて、冷却水や熱交換器27を効率よく短時間で暖めることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置20について説明する。以下、同様の構成については第1実施形態と同一の符号を使用し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0043】
図4は、本発明の第2実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置20の構成図である。
【0044】
図4の多気筒エンジン冷却装置20は、複数のシリンダ12が形成されたエンジン本体11を冷却するものであり、ラジエタ21、ポンプ22、第二バルブ41、連続稼働側の個別冷却路23、休止可能側の個別冷却路24、短絡冷却路42、熱交換器27、第二バイパス冷却路43、第三バイパス冷却路44、第三バルブ45、冷却系制御部28、を有する。
【0045】
そして、ラジエタ21、ポンプ22、連続稼働側の個別冷却路23は、冷却管によりその順番で接続される。これにより、主な循環経路が形成される。
熱交換器27は、連続稼働するシリンダ29に対応する個別冷却路23とラジエタ21との間に設けられる。
また、第二バルブ41は、ラジエタ21と、休止可能なシリンダ30に対応する個別冷却路24との間に設けられる。この休止機能側の個別冷却路24は、第二バイパス冷却路43により、熱交換器27とラジエタ21との間に連結される。
第三バイパス冷却路44の一端は、第二バルブ41と休止可能なシリンダ30に対応する個別冷却路24との間に連結される。第三バイパス冷却路44の他端は、第三バルブ45において、熱交換器27とラジエタ21との間に連結される。
短絡冷却路42は、連続稼働するシリンダ29に対応する個別冷却路23と、休止可能なシリンダ30に対応する個別冷却路24との間を連結する。熱交換器27は、短絡冷却路42より流路の下流側に連結されている。
【0046】
図5および図6は、図4の冷却水の循環経路での3種類の循環状態の説明図である。
図5(A)は、休止しているシリンダ30を加熱する循環状態である。
図5(B)は、休止しているシリンダ30の加熱より熱回収を優先する循環状態である。
図6は、休止可能なシリンダ30を含むすべてのシリンダ12が稼働するフル稼働状態である。
冷却系制御部28は、自動車1に設けられる機構の情報に基づいて、第二バルブ41および第三バルブ45の開閉を制御して循環状態を切り替える。
このような制御に用いることができる情報には、たとえば、エンジン本体11におけるシリンダ12の休止状態、シリンダ12の稼働状態、循環経路に設けられるラジエタ21の温度、熱交換器27の温度、回収した熱の利用状態、多気筒エンジン4の負荷状態、がある。
【0047】
そして、たとえば多気筒エンジン4を起動した直後では、多気筒エンジン4の全体が冷えている。また、休止可能な一部のシリンダ30を休止させて起動する低燃費起動の場合、稼働するシリンダ29は燃焼熱により暖められるが、休止するシリンダ30は暖まり難い。複数のシリンダ29,30の間で温度差が生じたりすると、エンジンの動作がアンバランスになり易くなる。多気筒エンジン4の運転中に一部のシリンダ30を休止させた場合にも、複数のシリンダ29,30の間で温度差が生じ易くなる。
このような場合、冷却系制御部28は、たとえばシリンダ12の休止状態の情報、シリンダ12の稼働状態の情報に基づいて、図5(A)に示すように第二バルブ41および第三バルブ45の開閉または開閉度を制御する。具体的には、第二バルブ41については、稼働するシリンダ29に対応する個別冷却路23への流路を開いたまま、休止するシリンダ30に対応する個別冷却路24への流路を閉じる。第三バルブ45については、第三バイパス冷却路44からの流路を開くとともに、熱交換器27側からの流路を閉じる。
この場合、冷却水は、ポンプ22の動力により、ラジエタ21から、稼働するシリンダ29に対応する個別冷却路23へ供給される。エンジン本体11の連続稼働するシリンダ29は、冷却水により冷却される。連続稼働するシリンダ29を冷却した冷却水は、連続稼働するシリンダ29の熱を吸収して加熱される。その後、加熱された冷却水は、短絡冷却路42を通じて、休止しているシリンダ30に対応する個別冷却路24へ供給される。冷却水の熱の一部は、休止しているシリンダ30を暖めるために用いられる。休止しているシリンダ30の温度は、稼働するシリンダ29と同等または少し低い温度まで暖められ得る。その後、冷却水は、第三バイパス冷却路44を流れ、第三バルブ45からラジエタ21へ戻される。冷却水は、熱交換器27を通過することなくバイパスして循環する。
このような制御により、休止しているシリンダ30を、稼働しているシリンダ29の排熱より暖めることができる。
なお、冷却系制御部28は、たとえば休止しているシリンダ30が稼働しているシリンダ29と同程度に暖まった場合には、図5(A)の状態から、第三バルブ45についての熱交換器27からの流路を開くようにしてもよい。これにより、休止しているシリンダ30が暖まった状態では、稼働するシリンダ29で暖められた冷却水の一部を熱交換器27へ供給し、熱交換器27で回収させた熱をたとえば乗員室の加熱に用いることができる。
【0048】
また、たとえば気温が低い冬季に乗員が乗車した場合、乗員室が冷えている。
このような場合、冷却系制御部28は、熱回収を優先するために、シリンダ12の休止状態または稼働状態の情報に加えて、たとえば循環経路に設けられる熱交換器27の温度の情報、回収した熱の利用状態についての情報に基づいて、図5(B)に示すように第二バルブ41および第三バルブ45の開閉または開閉度を制御する。具体的には、第二バルブ41については、稼働するシリンダ29に対応する個別冷却路23への流路を開いたまま、休止するシリンダ30に対応する個別冷却路24への流路を閉じる。第三バルブ45については、第三バイパス冷却路44からの流路を閉じるとともに、熱交換器27側からの流路を開く。
この場合、冷却水は、ポンプ22の動力により、ラジエタ21から、稼働するシリンダ29に対応する個別冷却路23へ供給される。稼動するシリンダ29は、冷却水により冷却される。エンジン本体11を冷却した冷却水は、エンジンの熱を吸収して加熱される。その後、加熱された冷却水は、熱交換器27へ供給され、第三バルブ45からラジエタ21へ戻される。
このような制御により、冷却水は、休止しているシリンダ30へ供給されず、そのすべてが熱交換器27へ供給される。熱交換器27および冷却水の温度は上昇し、熱交換器27での熱回収効率が向上する。
【0049】
また、たとえば多気筒エンジン4の一部のシリンダ12を休止させて走行している自動車1が坂道に差し掛かったり、高速道路へ入ったりすると、出力が不足する。
このような場合、多気筒エンジン4のエンジン制御部18は、休止しているシリンダ30を稼動させて、エンジンをフル稼働させる。冷却系制御部28は、エンジン制御部18から取得するシリンダ12の休止状態または稼働状態の切り替え情報に基づいて、図6に示すように第二バルブ41および第三バルブ45の開閉または開閉度を制御する。具体的には、第二バルブ41については、すべての個別冷却路23,24への流路を開く。第三バルブ45については、第三バイパス冷却路44からの流路を閉じるとともに、熱交換器27側からの流路を開く。
この場合、冷却水は、ポンプ22の動力により、ラジエタ21から、すべての個別冷却路23,24へ供給される。エンジン本体11において稼働するすべてのシリンダ12は、冷却水により冷却される。エンジン本体11を冷却した冷却水は、その一部は熱交換器27を経由して、第三バルブ45に集まる。その後、冷却水は、第三バルブ45からラジエタ21へ戻される。
このような制御により、稼働しているすべてのシリンダ12を、冷却することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態では、エンジン本体11に冷却水を流す循環経路として、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水を休止しているシリンダ30へ供給する冷却路を有する。よって、休止しているシリンダ30は、稼働しているシリンダ29を冷却することで加熱された冷却水により暖められる。その結果、休止後に再稼働させた場合には、再稼働したシリンダ30と連続稼働していたシリンダ29との間で摩擦などの動作状態が均一化され、エンジン動作にアンバランスが生じ難くなり、エンジンの振動も大きくなり難くなる。経時的なエンジンの劣化を抑制できる。
【0051】
本実施形態において、循環経路は、シリンダ毎に独立して設けられる複数の個別冷却路23,24を有する。そして、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水を休止しているシリンダ30へ供給する場合には、稼働しているシリンダ29に対応する個別冷却路23から、休止しているシリンダ30に対応する個別冷却路24へ冷却水を流す。よって、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水を、休止しているシリンダ30へ供給することができる。
特に、休止可能なシリンダ30に対応する個別冷却路24では、該シリンダ30が稼働している場合と休止している場合とで冷却水が逆向きに流れる。よって、稼働しているシリンダ29を冷却した冷却水を、休止しているシリンダ30へ供給するための流路は、たとえばエンジン本体11の吸気側または排気側において互いに隣接して設けられている個別冷却路23,24の間を接続すれば足りる。エンジン本体11の吸気側と排気側との間に跨るような流路は必要ない。流路の引き回しは容易である。
【0052】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…自動車(車両)
2…車体
3…車輪
4…多気筒エンジン
6…シート
11…エンジン本体
12…シリンダ
13…ピストン
14…フライホイール
15…出力軸
16…コンロッド
17…インジェクタ
18…エンジン制御部
20…多気筒エンジン冷却装置
21…ラジエタ
22…ポンプ
23…連続稼働側の個別冷却路
24…休止可能側の個別冷却路
25…第一バルブ
26…第一バイパス冷却路
27…熱交換器
28…冷却系制御部
29…連続稼働するシリンダ
30…休止可能なシリンダ
31…ナビゲーション装置
32…自動運転装置
33…空調装置
34…シリンダ別温度センサ
35…冷却路別温度センサ
36…タイマ
41…第二バルブ
42…短絡冷却路
43…第二バイパス冷却路
44…第三バイパス冷却路
45…第三バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6