(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備え、使用時に該基材層が剥離され、該ナノファイバ層が肌の表面に貼付されて使用されるナノファイバシートであって、
前記ナノファイバ層は、その周縁端の厚みが0.1μm以上10μm以下であり、且つ該周縁端から内方に向かって漸次厚みが増加するグラデーション領域を3mm以上有している、ナノファイバシート。
前記ナノファイバ層の平面視形状が、曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状、複数の直線部分を輪郭に含む形状、又は該曲線部分と該直線部分とを輪郭に含む形状である、請求項1〜5の何れか1項に記載のナノファイバシート。
前記ナノファイバ層が前記基材層に隣接して配置されており、前記基材層は、ナノファイバの繊維径よりも大きな幅の複数の凹部又は凸部を該ナノファイバ層と対向する面に有している、請求項1〜7の何れか1項に記載のナノファイバシート。
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備え、該ナノファイバ層は、その周縁端の厚みが0.1μm以上10μm以下であり、且つ該周縁端から内方に向かって漸次厚みが増加するグラデーション領域を3mm以上有しているナノファイバシートの使用方法であって、
対象物の表面に前記ナノファイバ層を当接させ、且つ該ナノファイバ層を湿潤させた状態で使用する、ナノファイバシートの使用方法。
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備え、該ナノファイバ層は、その周縁端の厚みが0.1μm以上10μm以下であり、且つ該周縁端から内方に向かって漸次厚みが増加するグラデーション領域を3mm以上有しているナノファイバシートの使用方法であって、
対象物の表面に前記ナノファイバ層を当接させ、前記基材層を剥離して使用する、ナノファイバシートの使用方法。
前記テーパー状の周縁領域は、前記極薄シートの前記周縁端から内方に向かって幅5mm以内の領域に形成されている、請求項16〜24の何れか1項に記載の積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1〜
図3に、本発明のナノファイバシートの一実施形態を示す。
ナノファイバシート10は、
図1に示すように、基材層12と、高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層11とを備えている。ナノファイバ層11の一方の面には基材層12が配置されている。
【0013】
ナノファイバシート10におけるナノファイバ層11は、高分子化合物のナノファイバを含む層である。本明細書においてナノファイバとは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に10nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(ナノ繊維の塊、ナノ繊維の交差部分、ポリマー液滴)を除いた繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
【0014】
本実施形態のナノファイバ層11は、
図2に示すように、基材層12が位置する側とは反対側の面に起伏を有している一方、基材層12と対向する面は平坦である。以下、ナノファイバ層11における、基材層12が位置する側とは反対側の面を第1面S1、基材層12と対向する面を第2面S2という。本実施形態のナノファイバ層11は、
図3に示すように、第1面S1側が内方に向かって隆起した構造を有している。なお、ナノファイバ層11は非常に薄いものであるが、説明の便宜上、
図2及び
図3においてはナノファイバ層11が非常に大きく描かれている。
【0015】
ナノファイバ層11の周縁端17は、平面視においてナノファイバ層11の輪郭を成している。本実施形態において前記周縁端17は、ナノファイバ層11において最も厚みが最小となる部分である。
ナノファイバ層11は、その周縁端17の厚みD1が0.1μm以上10μm以下である。ナノファイバ層11において、その周縁端17の厚みD1が位置によって異なっている場合、該周縁端17の厚みの最小値及び最大値が上記の範囲内であることが好ましい。
前記周縁端17の厚みD1(
図2参照)は、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、また10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下であり、また好ましくは0.3μm以上9μm以下、より好ましくは0.5μm以上8μm以下である。前記の周縁端17の厚みD1は、以下の〔ナノファイバ層の三次元形状の測定方法〕により、測定することができる。
【0016】
〔ナノファイバ層の三次元形状の測定方法〕
ナノファイバ層11の周縁端17の厚みD1は、ナノファイバ層の第1面の表面の三次元形状を、レーザー式三次元形状測定システム(例えば、コムス社製、測定システムEMS2002AD−3D、及びキーエンス社製 変位センサLK−2000の組合せ)を用いることによって、測定される。先ず、基材層をオートステージ上に載置してナノファイバシートをセットする。次いで、オートステージをX軸方向に移動させながら、レーザー変位計を走査させ、所定の計測ピッチX
Pでナノファイバ層の第1面の表面の高さを計測する。そして、オートステージをX軸と直交するY軸方向に、計測ピッチY
Pずらして、オートステージをX軸方向に移動させながら、レーザー変位計を走査させ、所定の計測ピッチX
Pでナノファイバ層の第1面の表面の高さを計測する動作を繰り返すことにより、ナノファイバ層の第1面の表面形状データを得る。X軸方向の計測ピッチは0.235mmとし、Y軸方向の計測ピッチY
Pは0.350mmとし、高さ(Z軸)方向の分解能は0.1μmとする。また、測定範囲は、平面視、即ちX軸方向及びY軸方向においてナノファイバ層全体が含まれる範囲とし、対象物に応じて計測ピッチは適宜変更しても差し支えない。以上の測定を無荷重下にて行う。そして、測定された三次元形状データに基づいて、ナノファイバ層における周縁端の厚みの測定を行う。以下に前記周縁端との厚みの測定方法の詳細を説明する。特に断らない限り、以下の説明において「厚み」は、三次元形状データに基づいて測定した値のことを意味する。
【0017】
〔周縁端の厚みの測定方法〕
先ず、平面視におけるナノファイバ層の輪郭形状を表す平面輪郭線を求める。平面輪郭線は、前記三次元形状データに基づいて取得してもよく、顕微鏡等を用いたナノファイバの拡大観察によって取得してもよい。ナノファイバを含むナノファイバ層は、表面から飛び出した繊維が存在すること、及び局所的に繊維の少ない部分や多い部分が形成されていることが一般的であるので、前記三次元形状データに基づいて得られる厚み等の測定値を位置ごとにプロットしたグラフ、具体的には平面輪郭線や後述する断面輪郭線又は80%厚み等高線がノイズを含んでいることがある。斯かるノイズを除去する観点から、平面輪郭線、断面輪郭線又は80%厚み等高線に対し、多項近似式による近似曲線化処理を行う。当該処理により複数の近似曲線が得られる場合は、三次元形状データに最も近い近似曲線を選択する。次いで、平面輪郭線を近似曲線化した平面輪郭曲線を三次元形状データに対応させ、該三次元形状データにおけるナノファイバ層の周縁端を特定し、該周縁端の厚みを測定する。
【0018】
なお簡易的には、ナノファイバ層11の周縁端17の厚みD1は、接触式の膜厚計〔例えば、ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(R5mm超硬球面測定子)〕を使用することによって測定することもできる。測定時に測定対象に加える荷重は0.01Paとする。
【0019】
ナノファイバ層11は、その周縁端17から内方に向かって漸次厚みが増加するグラデーション領域Gを有している。グラデーション領域Gは、周縁端17から内方に向かって隆起している領域であり、ナノファイバ層11の周縁端17を含んでいる。グラデーション領域Gは、ナノファイバ層11の第1面S1を平面視したとき、後述する内方領域Mの輪郭の中央線CLに直交する直交線に沿う断面において、該内方領域Mに向かって傾斜している領域である(
図2参照)。前記直交線に沿う断面は、例えば、
図1におけるII−II線断面である。このような断面は、前述した三次元形状データに基づいて求められる。グラデーション領域の特定方法について以下に詳述する。
【0020】
〔グラデーション領域の特定方法〕
先ず、前記三次元形状データにおいて、厚みが最大となる位置を頂点位置として特定し、該頂点位置におけるナノファイバ層の厚みを求める。次いで、前記三次元形状データに基づき、厚みが頂点位置の厚みの80%となる領域の輪郭を示す等高線(以下、「80%厚み等高線」ともいう)を求め、該等高線の位置を、前記平面輪郭曲線とともに前記三次元形状データに反映させる。例えば、
図11に示すように、前記三次元形状データに平面輪郭曲線C0及び80%厚み等高線C80を反映させる。この80%厚み等高線は、前述した近似曲線化処理を行ったものを用いる。次いで、平面輪郭曲線上の任意の位置を第1のポイントとし、該平面輪郭曲線の周長を10等分する第1〜第10のポイントを該平面輪郭曲線上に設定する。
図11に示す符号N1〜N10は、第1〜第10ポイントの一例である。次いで、第1〜第10のポイントそれぞれにおいて、前記三次元形状データにおけるナノファイバ層の断面輪郭線を求める。断面輪郭線は、平面視において平面輪郭曲線上の第1〜第10のポイントそれぞれと前記80%等高線とを最短距離で結ぶ線分に沿って、前記三次元形状データのナノファイバ層を切断したときの断面の輪郭線である。次いで、第1〜第10のポイントそれぞれにおける断面輪郭線に対し、前述した近似曲線化処理を行い、断面輪郭曲線を取得する。次いで、得られた各断面輪郭曲線に、これと対応する第1〜第10のポイントの位置を反映させて、断面輪郭曲線におけるナノファイバ層の周縁端の位置を特定する。次いで、得られた各断面輪郭曲線において、周縁端からナノファイバ層の内方に向かって漸次厚みが増加する領域であって、その幅が3mm以上の傾斜領域を特定する。当該幅は、断面輪郭曲線における、周縁端から頂点位置までの長さ、又は周縁端から後述する最大厚み部までの長さである。また、断面輪郭曲線において漸次厚みが増加するパターンとしては、例えば直線状に増加するパターンや、シグモイド曲線や指数関数曲線等のように曲線状に増加するパターン、多段的に増加するパターン等が挙げられる。そして、第1〜第10のポイントのうち、前記傾斜領域を有する断面輪郭曲線が確認されたポイントの数を計測する。計測した傾斜領域を有する断面輪郭曲線のポイント数を「n」としたとき、「(n/10)×100(%)」により、第1〜第10のポイントの合計10箇所に対する、傾斜領域を有する断面輪郭曲線の数の割合(%)を求めることができる。即ち、ナノファイバ層の周縁全長に対してグラデーション領域を何%有しているのかを判断することができる。例えば、第1〜第10のポイントのうち、5箇所で前記傾斜領域を有する断面輪郭曲線が確認された場合、測定対象のナノファイバ層は、該ナノファイバ層の周縁全長に対しグラデーション領域を50%有するものと判断することができる。
後述するグラデーション領域Gにおける最大厚み部15の厚みや傾斜角度等といった、グラデーション領域G及び内方領域Mの各寸法は、特に断りがない限り、前記傾斜領域を有する各ポイントの断面輪郭曲線から求められる測定値の算術平均値とする。
【0021】
本実施形態におけるナノファイバ層11は、前記グラデーション領域Gと、該グラデーション領域Gに囲まれた内方領域Mとを有している。本実施形態のナノファイバ層11は、
図2に示すように、グラデーション領域Gの厚みが一方向に向かって漸次増加しているのに対し、内方領域Mにおける厚みは実質的に一定である。したがって内方領域Mは、位置によって厚みが若干異なっていることが許容される。例えば平均厚みに対して±25%程度の範囲で厚みが異なることが許容される。本実施形態において内方領域Mの厚みと、グラデーション領域Gの最大厚み部15の厚みD3(
図2参照)とは同じ厚みである。グラデーション領域Gの最大厚み部15とは、グラデーション領域Gの厚みが最大となる部分であり、グラデーション領域Gの内方領域M側の端である。内方領域Mは、ナノファイバ層11の頂点位置における厚みに対する厚みが、好ましくは80%以上の領域、より好ましくは90%以上の領域である。内方領域Mは、前述の断面輪郭曲線に基づいて特定できる。ナノファイバ層11は、本実施形態のようにグラデーション領域Gと内方領域Mとを有するものであってもよく、内方領域を有さずに周縁端と頂点位置との間にグラデーション領域のみを有するものであってもよい。
【0022】
製造性と取り扱い性の観点から、平面視におけるナノファイバ層11の最大長は、500mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。上記と同様の観点から、平面視におけるナノファイバ層11の最大長は10mm以上であることが好ましい。前記「最大長」は、平面視におけるナノファイバ層11の最大差し渡し長さである。
【0023】
ナノファイバ層11を対象物の表面に付着させる付着性をより向上させる観点から、ナノファイバ層11の周縁全長を100%とした場合、該周縁全長のうち、グラデーション領域Gが存在する部分の合計長さは60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。上記と同様の観点から、ナノファイバ層11の周縁全長に亘ってグラデーション領域Gが存在していることが好ましい。
ナノファイバ層11の周縁全長に対するグラデーション領域Gが存在する部分の合計長さの割合は、測定の便宜上、前述した〔グラデーション領域の特定方法〕で求めた第1〜第10のポイントの合計10箇所に対する、傾斜領域を有する断面輪郭曲線の数の割合(%)として算出することができる。例えば、傾斜領域を有する断面輪郭曲線の数が「6」である場合、ナノファイバ層11の周縁全長に対するグラデーション領域Gが存在する部分の合計長さは「60%」となる。
【0024】
ナノファイバシート10の厚み方向に沿う断面において、内方領域Mは、その幅W2(
図2参照)が200mm以下であり、好ましくは150mm以下である。内方領域Mの幅W2は、前記断面におけるグラデーション領域Gの最大厚み部15間の距離である。本実施形態におけるナノファイバシート10は、ナノファイバ層11に内方領域Mを有しているが、ナノファイバシート10は、内方領域Mを有していなくともよい。即ち、ナノファイバシート10は、前記断面におけるグラデーション領域Gの最大厚み部15間の距離W2が実質0mmであり、周縁端17から頂点位置に向かって厚み漸次増加するグラデーション領域のみを有するものであってもよい。この場合、グラデーション領域Gの内方端である最大厚み部が頂点位置となる。
【0025】
ナノファイバ層11は、その周縁端17と、グラデーション領域Gの最大厚み部15との間隔W1が3mm以上である。ナノファイバ層の周縁端17と、前記最大厚み部15との間隔W1は、周縁端17からグラデーション領域Gの厚みが最大となる部分までの離間距離であり、グラデーション領域Gの幅である。即ち、ナノファイバ層11は、グラデーション領域Gを3mm以上有している。ナノファイバ層11において周縁端17と、前記最大厚み部15との間隔W1、あるいは該周縁端17と頂点位置との間隔W1が、ナノファイバ層11周縁の位置によって異なっている場合、前記間隔W1の最小長さが3mm以上であればよい。以下、ナノファイバ層11における周縁端17と、前記最大厚み部15との間隔、あるいは周縁端17と前記最大厚み部15との間隔を、グラデーション領域Gの幅W1ともいう。
【0026】
ナノファイバシート10は、基材層12を剥離し、ナノファイバ層11を、肌等の対象物に貼付して使用する。
ナノファイバシート10は、グラデーション領域Gを有するナノファイバ層11の周縁端の厚みを0.1μm以上10μm以下とし、グラデーション領域Gの幅W1を3mm以上とすることにより、肌等の対象物に貼付した状態において、ナノファイバ層11の外縁が目立たず、該ナノファイバ層11を視認し難いものとなる。このようなナノファイバシート10のナノファイバ層11を肌に貼付することにより、例えば、肌のシミや皺を効果的に隠蔽することができ、しかもナノファイバ層11の存在が認識され難い。また、肌に貼付したナノファイバ層11の上からファンデーション等の化粧料を付着させても、ナノファイバ層11の外縁(周縁端)が目立ち難く、肌に馴染んだ見た目となり、自然な仕上がりとなる。
【0027】
他方、厚みが一定のナノファイバ層からなる化粧用シートを貼付すると、該化粧用シートの外縁が目立ち、該化粧用シートの存在が容易に認識されてしまうことがあり、また肌に貼付した前記化粧用シートの上からファンデーション等の化粧料を付着させると、前記外縁が一層目立つとともに、肌とは異なる色味を呈することがあり、前記化粧用シートを視認し易くなる。また、ナノファイバ層の最大厚みが小さいほど、シミや皺を隠蔽する効果が得られ難くなる。
【0028】
シミや皺を隠蔽する効果をより確実に奏させる観点から、グラデーション領域Gにおける最大厚み部15の厚みD3は、好ましくは5.1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは100μm以下であり、また好ましくは5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下、さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。
また、上記と同様の観点から、ナノファイバ層11の頂点位置における厚みは、前記最大厚み部15の厚みD3の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0029】
上述したようにグラデーション領域Gは、ナノファイバシート10の厚み方向Zに沿う断面において傾斜している。肌に貼付したナノファイバ層11をより目立ち難くする観点から、グラデーション領域Gの傾斜角度θ(
図4参照)は、好ましくは0.001°以上、より好ましくは0.002°以上であり、また好ましくは10°以下、より好ましくは8°以下であり、また好ましくは0.001°以上10°以下、より好ましくは0.002°以上8°以下である。グラデーション領域Gの傾斜角度θは、前記直交線に沿う断面において、ナノファイバ層の周縁端17及びグラデーション領域Gの最大厚み部15を結ぶ仮想直線Lpの水平面に対する傾斜角度である(
図4参照)。前記の傾斜角度θはグラデーション領域Gにおける最大厚み部15の厚みD3、グラデーション領域Gの幅W1、及びナノファイバ層11の周縁端17と最大厚み部15との厚みの差D2から換算することができる。前記周縁端17及び前記最大厚み部15は、前述した〔周縁端の厚みの測定方法〕及び〔グラデーション領域の特定方法〕により特定することができる。
【0030】
肌のシミや皺の隠蔽効果を向上させ、且つナノファイバ層をより目立たなくさせる観点から、グラデーション領域Gにおける最大厚み部15の厚みD3(
図2参照)の周縁端17の厚みD1に対する比率(D3/D1)は、5000以下であることが好ましく、4000以下であることが更に好ましい。例えば50以上であることが好ましく、100以上であることが更に好ましい。また、50以上5000以下であることが好ましく、100以上4000以下であることが更に好ましい。
また、上記と同様の観点から、ナノファイバ層11の頂点位置における厚みは、周縁端17の厚みD1に対する比率が、前記D3/D1の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0031】
上記と同様の観点から、グラデーション領域Gにおける周縁端17と最大厚み部15との厚みの差D2(
図2参照)は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下であり、また好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下である。グラデーション領域Gの最大厚み部15は、グラデーション領域の内方端、即ち前記傾斜領域の内方端である。グラデーション領域Gの内方端と周縁端との厚みの差は、同領域Gの周縁端17と最大厚み部15との厚みの差D2に相当する。
【0032】
ナノファイバ層の肌への貼付性を向上させる観点から、ナノファイバ層11の平面視形状が、曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状、複数の直線部分を輪郭に含む形状、又は該曲線部分と該直線部分とを輪郭に含む形状であることが好ましい。例えば、曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状としては、平面視形状が、楕円形等の曲率が複数種類の曲線部分を含む形状や、曲率の異なる複数の曲線部分が凹凸を形成する形状(
図1参照)等が挙げられる。また、複数の直線部分を輪郭に含む形状としては、平面視形状が矩形、三角形、四角形、六角形等の多角形状や、矢印形、星形等が挙げられる。更に、曲線部分と直線部分とを輪郭に含む形状としては、扇形、涙形、半円形、ハート形等が挙げられる。このような形状のナノファイバ層11は、顔等のような複雑な形状に追従し易く、貼付し易い。
【0033】
前記貼付性をより向上させる観点から、平面視におけるナノファイバ層11の輪郭線は、該輪郭線の全長のうちの半分超の長さの部分が曲線によって構成されていることが好ましい。この場合、対象物の表面に対するナノファイバ層11の追従性をより向上させる観点から、平面視におけるナノファイバ層11の輪郭線は、該輪郭線の全長のうち、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の長さの部分が曲線によって構成されており、該輪郭線の全長が曲線によって構成されていることがさらに一層好ましい。前記平面視におけるナノファイバ層11の輪郭線は、前述の〔周縁端の厚みの測定方法〕における平面輪郭曲線により特定することができる。
【0034】
基材層12とはナノファイバシートの保形性を維持可能な層であり、単一の層であってもよく、多層であってもよい。
基材層12としては、例えばポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂を始めとする合成樹脂製のフィルムや、不織布等の繊維シートを用いることができる。基材層12を、ナノファイバ層11に対して剥離可能に積層する場合には、フィルムにおけるナノファイバ層11との対向面に、シリコーン樹脂の塗布やコロナ放電処理などの剥離処理を施しておくことが、剥離性を高める観点から好ましい。また、剥離性を高める観点から、合成樹脂製のフィルム等を基材層12として用いる場合、該フィルムの表面に、粉又は粒を散布させて形成される粉又は粒の層を設けることが好ましい。
【0035】
本実施形態のナノファイバシート10は、使用前はナノファイバ層11と基材層12とが一体化しているが、使用時にナノファイバ層11と基材層12とを層間剥離させて、基材層12を取り除く。ナノファイバ層11と基材層12とを剥離する作業性を向上させる観点から、基材層12は通気性を有していることが好ましい。これにより、ナノファイバ層11と基材層12との間に空気が入り、ナノファイバ層11と基材層12とを剥離し易くすることができる。
【0036】
通気性を有する基材層12としては、繊維シート、スポンジを用いることが好ましい。具体的には繊維シートは、各種の不織布、織布、編み地、紙、メッシュシート及びそれらの積層体などである。不織布としては、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布及びスパンレース不織布などを用いることができるが、これらに限られない。これらの不織布やメッシュシートを構成する繊維ないしストランドは、その太さが、ナノファイバの範疇であってもよく、あるいはそれよりも太いものであってもよい。また、繊維としては、繊維形成性の合成樹脂からなる繊維や、コットン及びパルプなどのセルロース系の天然繊維を用いることができる。スポンジは、具体的には合成樹脂又は天然樹脂を発砲させた多孔性材料、例えば発泡樹脂からなるものである。合成樹脂又は天然樹脂としては、例えばウレタン、ポリエチレン、メラミン、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができるが、これらに限られない。発泡樹脂は通気性を有する形態を形成し得るものであれば、種々の材料を用いることができる。
ナノファイバ層11を肌に容易に貼付する観点から、基材層12は不織布であることが好ましい。
【0037】
ナノファイバ層11に隣接して配置されている基材層12は、ナノファイバの繊維径よりも大きな幅の複数の凹部又は凸部をナノファイバ層11と対向する面に有していることが好ましい。斯かる構成は、基材層12が通気性を有していない場合に、ナノファイバ層11と基材層12とを剥離する作業性を向上させる点で有利である。
【0038】
基材層12の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下であり、また好ましくは5μm以上20mm以下、より好ましくは10μm以上15mm以下である。
【0039】
ナノファイバシート10は、美容液等の液成物をナノファイバ層11が含んだ状態で使用されてもよい。この場合、美容液等の液成物によってナノファイバ層11が溶解することを防止する観点から、ナノファイバ層11は水不溶性であることが好ましい。水不溶性とは、1気圧・23℃の環境下において、ナノファイバ層11を1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したナノファイバ層11の0.5g超が溶解しない性質を有するものをいい、好ましくは0.8g超が溶解しない性質を有するものをいう。言い換えると、水不溶性とは、1気圧・23℃の環境下において、ナノファイバ層11を1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したナノファイバ層11の0.5g未満が溶解する性質を有するものをいい、好ましくは0.2g未満が溶解する性質を有するものをいう。
【0040】
ナノファイバ層11は、繊維形成可能な高分子化合物を含むナノファイバが堆積することにより形成される。ナノファイバ層11を水不溶性にする観点から、ナノファイバ層11は、繊維形成可能な高分子化合物として、水不溶性高分子化合物のナノファイバを含むことが好ましい。斯かる構成により、ナノファイバ層に化粧料に用いられる水溶性成分を含ませても、該ナノファイバ層11の保形性を維持することができる。水不溶性高分子化合物としては、例えばナノファイバ形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、あるいはポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
ナノファイバ層11は、水溶性高分子化合物のナノファイバを含んでいてもよい。水溶性高分子化合物としては、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、水溶性ナイロン、水溶性ポリエステル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
ナノファイバ層11は、上述した水不溶性高分子化合物及び水溶性高分子化合物以外の他の高分子化合物を含んでいてもよい。他の高分子化合物としては一般に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が挙げられる。これらの高分子化合物は単独で又は複数混合して用いることができる。
【0043】
ナノファイバ層11を水不溶性にする場合、ナノファイバ層11に含まれる水不溶性高分子化合物は該ナノファイバ層11の全質量に対して好ましくは50質量%超、より好ましくは80質量%以上であり、ナノファイバ層11に含まれる水溶性高分子化合物は該ナノファイバ層11の全質量に対して好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%以下である。
【0044】
ナノファイバ層11は、ナノファイバのみから構成されていてもよく、あるいはナノファイバに加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、ナノファイバ以外の物質であって、化粧料に用いられる成分を用いることができる。例えば、薬用成分、保湿成分、各種ビタミン、香料、紫外線防御剤、界面活性剤、着色顔料、体質顔料、染料、安定剤、防腐剤、及び酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分は単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ナノファイバ層11がナノファイバに加えて他の成分を含んでいる場合には、ナノファイバ層11に占めるナノファイバの含有量は、好ましくは40質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上90質量%以下である。
ナノファイバ層11における他の成分の含有量は、好ましくは5質量%以上60質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0045】
ナノファイバ層11が、他の成分を含むナノファイバによって形成されている場合、例えば、当該ナノファイバは、水溶性高分子化合物と他の成分とが水に完全に溶解した状態下で混合して調製することによって得られる。また、前記ナノファイバは、中空部を有するナノファイバを用いて、他の成分を乳化した乳化成分を該中空部に含有させることでも得られる。他の成分の反応の種類によっては、ナノファイバに単独で含有させてもよく、2種以上の成分を含有させてもよい。
【0046】
肌のシミや皺を効果的に隠蔽する観点から、ナノファイバ層11の内方領域Mの坪量は0.01g/m
2以上、より好ましくは0.1g/m
2以上であり、また好ましくは50g/m
2以下、より好ましくは40g/m
2以下であり、また好ましくは0.01g/m
2以上50g/m
2以下、より好ましくは0.1g/m
2以上40g/m
2以下である。ナノファイバ層11の内方領域Mの坪量は、内方領域Mから10mm×10mmの測定片を切り出し、はかりで該測定片の質量を計量し、該測定片の面積(100mm
2)で除法して算出することで測定することができる。また、上記と同様の観点から、ナノファイバ層11の頂点位置における坪量は、前記内方領域Mの坪量の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0047】
上述した本実施形態において、内方領域Mはその全域に亘って厚みが実質的に一定であったが、内方領域Mは、
図5及び
図6に示すように、位置によって厚みが異なっていてもよい。
図5及び
図6に示す実施形態は、矛盾しない限り、上述した実施形態のナノファイバシートの説明が適宜適用される。
図5に示すナノファイバシート10aは、内方領域Mの第1面S1側に深さがそれぞれ異なる複数の凹部18を有している。内方領域Mの凹部18における厚みD5(
図5参照)は、グラデーション領域Gの最大厚み部15の厚みD3より小さい。ナノファイバ層11の密着性を向上させる観点から、内方領域Mの凹部18における厚みD5(
図5参照)は、前記最大厚み部15の厚みD3に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下であり、また好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは60%以上90%以下である。
また、ナノファイバ層11のシミや皺の隠蔽性を向上させる観点から、内方領域Mの凹部18における厚みD5(
図5参照)が、好ましくは5.1μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下であり、また、好ましくは5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下である。内方領域Mの凹部18における厚みD5が凹部18毎に異なる場合、内方領域Mの凹部18における厚みD5の最小値が上記の範囲内であることが好ましい。
【0048】
また、内方領域Mは、
図6に示すナノファイバシート10bのように、厚みがグラデーション領域Gの最大厚み部15より大きい部分を形成する凹部19aの他に、厚みが該最大厚み部15より小さい部分を形成する凹部19bを有していてもよい。以下、内方領域Mにおいて、グラデーション領域Gの最大厚み部15よりも厚みが大きい部分を形成する凹部19aを浅凹部19aともいい、グラデーション領域Gの最大厚み部15よりも厚みが小さい部分を形成する凹部19bを深凹部19bともいう。この内方領域Mは、浅凹部19aよりも外方であって、内方領域Mの周縁に沿うように深凹部19bが形成されている。更に内方領域Mは、深凹部19bの底部から内方に向かって漸次厚みが増加している。即ち、
図6に示す実施形態においてナノファイバ層11は、その周縁に沿って形成されたグラデーション領域G1と、該グラデーション領域G1よりも内方側であり、且つ内方領域Mの周縁に沿うように形成されたグラデーション領域G2とを有している。
【0049】
ナノファイバ層11のシミや皺の隠蔽性を向上させる観点から、内方領域Mは、浅凹部19aにおける厚みD7(
図6参照)が、グラデーション領域Gの最大厚み部15の厚みD3よりも大きいことを前提として、好ましくは5.1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下であり、また好ましくは5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下である。内方領域Mの浅凹部19aにおける厚みD7が浅凹部毎に異なる場合、該厚みD7の最小値が上記の範囲内であることが好ましい。
【0050】
上記と同様の観点から、内方領域Mは、最大厚み部15の厚みD3及び浅凹部19aにおける厚みD7よりも深凹部19bにおける厚みD9が小さいことを前提として、深凹部19bにおける厚みD9(
図6参照)が、好ましくは5.1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下であり、また好ましくは5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下である。内方領域Mの深凹部19bにおける厚みD9が深凹部毎に異なる場合、該厚みD9の最小値が上記の範囲内であることが好ましい。
【0051】
ナノファイバ、即ち繊維が基材層上に直接堆積された場合、ナノファイバ層11が隣接して基材層12に配される。ナノファイバ層11と基材層12は隣接して配されていなくてもよく、例えば、後述する
図7に示すように、対象物の表面に貼付け可能な粘着層が基材層12とナノファイバ層11との間に介在していてもよい。
また、ナノファイバシートを肌に容易に貼付する観点から、ナノファイバシートは、対象物の表面に貼付け可能な粘着層13を備えることが好ましい。粘着層13は、ナノファイバ層11を肌等の対象物に取り付けるために用いられる。粘着層13は、基材層12とナノファイバ層11との間、即ちナノファイバ層11の第2面S2側に配されていてもよく、又はナノファイバ層11の基材層12とは反対側の面、即ちナノファイバ層11の第1面S1側に配されていてもよい。
粘着層13の粘着力を維持する観点から、
図7に示すように、粘着層13はナノファイバ層11の第2面S2側に配されていることが好ましい。
図7に示すナノファイバシート10cは、粘着層13と基材層12との層間を剥離した後、該粘着層13を肌に貼付して使用される。
粘着層13がナノファイバ層11の第1面S1側に配されたナノファイバシートは、基材層12とナノファイバ層11との層間を剥離した後、あるいは剥離する前に、粘着層13を肌に貼付して使用される。
【0052】
粘着層13を構成する粘着剤としては、オキサゾリン変性シリコーン系や、アクリル樹脂系、オレフィン樹脂系、合成ゴム系等の粘着剤を用いることができる。粘着力を高く保つ観点から、粘着層13を構成する粘着剤としては、アクリル樹脂系を用いることが好ましい。
【0053】
粘着層13における粘着剤の厚みは特に制限されない。ナノファイバ層11を肌により確実に貼付し、且つナノファイバシートの肌触りや使用感を向上させる観点から、粘着層13における粘着剤の厚みは、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは50nm以上であり、また好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、また好ましくは10nm以上100μm以下であり、より好ましくは50nm以上50μm以下である。
【0054】
ナノファイバシート10cにおいて、ナノファイバ層11、基材層12、粘着層13のうち何れかが剥離可能であってもよく、各層がそれぞれ独立して剥離可能になっていてもよい。具体的には、基材層12と、粘着層13及びナノファイバ層11との間が剥離可能であってもよく、基材層12及び粘着層13と、ナノファイバ層11との間が剥離可能であってもよく、それぞれの層が独立して剥離可能であってもよい。剥離可能な層を形成するためには、剥離対象の層と剥離対象でない層との間にファンデルワールス力や静電力等を発生させた状態下で積層したり、剥離対象の層における剥離対象でない層と対向する面にシリコーン樹脂の塗布やコロナ放電処理等の剥離処理を施したりすることで行うことができる。
【0055】
次に本発明のナノファイバシートの使用方法をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図8(a)〜(c)に、
図1に示すナノファイバシート10を用いた、ナノファイバシートの使用方法の一実施態様を示す。
【0056】
ナノファイバシート10の使用方法においては、該ナノファイバシート10を対象物の表面に付着、即ち貼付させて使用する。ナノファイバシート10の対象物は、ナノファイバ層11の貼付対象物である。前記対象物は、主としてヒトの皮膚(肌)であるがその他に、歯、歯茎、毛髪、非ヒト哺乳類の皮膚(肌)、歯、歯茎、枝や葉等の植物表面等が挙げられる。
図8(a)〜(c)に示す使用方法においては、顔の目の下の部位にナノファイバシート10を貼付して使用するが、貼付する位置はこれに限られない。
【0057】
ナノファイバシート10はその使用時において、ナノファイバ層11の第1面S1又は第2面S2が対象物の表面と対向するように、ナノファイバ層11を該表面に当接させ、付着させる。例えば、
図8(a)に示すように、ナノファイバシート10のナノファイバ層11の第1面S1を肌に付着させる。この場合、基材層12側の面が肌とは反対側となる。
ナノファイバシートが上述した粘着層を備える場合、ナノファイバ層11の粘着層側の面と対象物の表面とが対向するように、該粘着層を該表面に付着させる。即ち、ナノファイバシートが粘着層を備える場合、ナノファイバ層11は、粘着層13を介して対象物の表面に貼付される。
【0058】
図8に示すナノファイバシート10の使用方法では、対象物の表面にナノファイバ層11を付着させた後、
図8(b)に示すように、該ナノファイバ層11から基材層12を剥離して除去する。これにより、
図8(c)に示すように、対象物の表面にはナノファイバ層11のみが貼付される。
【0059】
対象物の表面に前記ナノファイバ層を当接させ、且つ該ナノファイバ層を液状物で湿潤させた状態で使用することが好ましい。前記「湿潤させた状態」とは、ナノファイバ層11に液成物を含ませることで、該ナノファイバ層11を湿らせた状態を意味する。
液状物は、20℃において液状の物質のことを意味する。液状物としては、例えば水、水溶液及び水分散液等の液体、増粘剤で増粘されたジェル状物、20℃で液体又は固体の油、該油を10質量%以上含有する油剤、及び、該油とノニオン性界面活性剤等の界面活性剤とを含む乳化物(O/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン)などが挙げられる。
【0060】
上述の液状物が20℃で液体のポリオールを含む場合、該ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000以下のポリエチレングリコール、グリセリン及びジグリセリンから選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
【0061】
上述の液状物が20℃において液体の油を含む場合、該油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、及び流動イソパラフィンから選ばれる一種又は二種以上の炭化水素油;ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル等の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステル、及びトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンなどのトリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセライド)から選ばれる一種又は二種以上のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン及び高級アルコール変性オルガノポリシロキサンから選ばれる一種又は二種以上のシリコーン油等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく二種以上を複数組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上述の液状物が20℃において固体の油を含む場合、該油としては、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、及びセラミド等から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
【0063】
ナノファイバ層11を前述の液状物で湿潤させた状態で使用する方法としては、対象物の表面を液状物で湿潤させた状態で、該表面にナノファイバ層11を付着させる方法(1)や、対象物の表面にナノファイバ層11を付着させた状態で、該ナノファイバ層11を液状物で湿潤させる方法(2)、ナノファイバ層11を液状物で湿潤させた状態で、対象物の表面にナノファイバ層を付着させる方法(3)等が挙げられる。対象物の表面とナノファイバ層11の表面とを接触させる前後で、これら表面の何れかに液状物を適用させて湿潤させると、ナノファイバ層が水分を吸収し、ナノファイバ層11がより透明化して、その周縁端17をより目立たなくさせることができる。
前記方法(1)において、液状物を適用して湿潤させた対象物の表面に、ナノファイバ層11を接触させると、ナノファイバ層11の毛管力によって、対象物の表面の液状物をナノファイバ層11に移行させることができる。
【0064】
前記方法(1)〜(3)の何れかにおいて、対象物の表面又は対象物の表面に貼付されたナノファイバ層11を液状物で湿潤させた状態にするためには、液状物を該表面に塗布又は噴霧すればよい。塗布又は噴霧される液状物としては、ナノファイバシート10を付着させる温度において液体成分を含み、且つその温度における粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度)が5000mPa・s程度以下の粘性を有する物質が用いられる。そのような液状物としては、例えば水、水溶液、20℃において液状のエステル油、炭化水素油、シリコーン油、グリセリンやプロピレングリコール等の20℃において液状のポリオール、及びこれらから選ばれる1種又は2種以上を含む水分散液等が挙げられる。また、O/Wエマルション等の乳化液、増粘性多糖類等をはじめとする各種の増粘剤で増粘された水性液等も液状物として用いることができる。
【0065】
本実施態様におけるナノファイバシートの使用方法では、前述のように、ナノファイバ層11を対象物の表面に貼り付けて使用する。本使用方法は、ナノファイバ層11を対象物の表面に貼り付けて、該対象物の外観、又は表面状態を改善する目的で使用される。例えば、対象物が肌である場合、ナノファイバ層11を肌に貼り付けて、肌のシミや皺を隠蔽することにより、肌の外観を改善することができる。また、ナノファイバ層11を肌に貼り付けて、ファンデーションののり、即ちファンデーションの塗布具合を良好にすることで、肌の表面状態を改善することができる。
【0066】
次に本発明のナノファイバシートの製造方法を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図9には、
図1に示すナノファイバ層11の製造方法に用いられる電界紡糸装置の一実施形態が模式的に示されている。
図9に示す電界紡糸装置100は、原料液を吐出するノズル20と、該ノズル20との間に電界を生じさせる対向電極30と、原料液から生成されたナノファイバFを集積する捕集部40と、ノズル20を移動させる移動機構50とを具備している。原料液は、ナノファイバの原料樹脂の溶液又は分散液を意味する。
【0067】
電界紡糸装置100は、原料樹脂の溶液又は分散液(以下、これらを総称して「原料液」ともいう。)をノズル20から吐出して、電界紡糸によって細径の繊維Fを形成する。ノズル20は、後述する移動機構50に取り付けられている。ノズル20は、原料液供給部(不図示)から供給される原料液を吐出する部材であり、該原料液供給部と原料液供給路(不図示)を介して繋がっている。原料液供給部は、圧力負荷装置等の公知の手段によって、原料液をノズル20に定量的に供給可能になされており、さらに原料液をノズル20に連続的に又は断続的に供給する。
【0068】
本実施形態においてノズル20は、金属などの導電性材料から構成されており、電圧印加部32と電気的に接続されている。即ち、ノズル20は正又は負の電圧が印加できるようになっている。
【0069】
対向電極30は、金属等の導電性材料から構成される部材であり、ノズル20と対向するように配されている。対向電極30は、直流高圧電源などの電圧印加部32と電気的に接続されて、電圧が印加できるようになっている。これにより、ノズル20と対向電極30との間に電界を生じさせることができるようになっている。また、対向電極30は、直流高圧電源などの電圧印加部32と電気的に接続されて、電圧も印加できる。本実施形態において対向電極30は、後述する捕集部40でもある。
【0070】
電界紡糸装置100では、ノズル20に正電圧を印加するか、対向電極30に負電圧を印加するか、又はこれらの両方を行って、ノズル20と対向電極30との間に電位差を生じさせる。ノズル20に負電圧を印加するか、対向電極30に正電圧を印加するか、又はこれらの両方を行って、ノズル20と対向電極30との間に電位差を生じさせることも好ましい。ノズル20と対向電極30との間に加わる電位差、即ちノズル20と捕集部40との間に加わる電位差は、原料液の帯電性を向上させる観点から、1kV以上、特に10kV以上とすることが好ましく、放電を防止する観点から、100kV以下、特に50kV以下とすることが好ましい。
【0071】
捕集部40は、原料液を電気的に延伸して生成したナノファイバFを集積する部材である。本実施形態において捕集部40は、ノズル20と対向するように配されている。また、前記捕集部40は、前述の対向電極30であり、接地又は電圧印加部32と電気的に接続されて、電圧が印加できるようになっている。即ち、本実施形態においてはノズル20と捕集部40との間に電界を生じさせることができるようになっている。
【0072】
移動機構50は、ノズル20を平面方向に移動可能に構成されている。本実施形態において移動機構50は、ノズル20を保持するスライダ51と、X軸方向及びY軸方向それぞれに沿うレール53,55とを備え、該レール55上を該レール53が移動し、該レール53上をスライダ51が移動する。移動機構50は、制御部(不図示)と電気的に接続されており、制御部に入力されたノズルの移動軌道のデータに基づき、あるいは操作者がコントローラーを介して制御部に入力した操作信号に基づき、ノズル20を移動させながら、ナノファイバFを捕集部40上に堆積させることが可能になされている。制御部には、ノズルの移動軌道のデータが入力されているか、又は入力可能になされている。制御部への前記移動軌道のデータの入力は、USBメモリ等の記録媒体を介して入力可能であってもよいし、インターネットやイントラネット等のネットワークを介して入力可能であってもよい。
【0073】
本実施形態において電界紡糸装置100は、非導電性材料から構成される台60を具備し、該台60の上には対向電極30である捕集部40が載置されている。移動機構50は、台60が配された範囲内において、ノズル20を平面方向に移動可能になされている。
【0074】
本実施形態のナノファイバシートの製造方法では、上述した構成を具備する電界紡糸装置100を用いて、電界紡糸法により原料液から生じたナノファイバFを捕集部上に堆積させる。電界ノズル20と対向電極30との間に電界を生じさせた状態下で、ノズル20に原料液を供給し、該ノズルから原料液を吐出させる。この際、電界紡糸装置100は、移動機構50によってノズル20を移動させながら、原料液を吐出させる。吐出された原料液は、電気的斥力、原料液に含まれる溶媒の蒸発を繰り返して、ナノファイバFを形成しながら対向電極30に引き寄せられるように紡糸される。前記ナノファイバは対向電極30でもある捕集部40に堆積し、ナノファイバの堆積体を形成する。この堆積体がナノファイバ層11となる。
【0075】
原料液としては、繊維形成可能な高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いることができる。繊維形成可能な高分子化合物としては、上述したナノファイバの高分子化合物が用いられる。
【0076】
原料液には前記高分子化合物以外に、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を適宜配合することができる。
原料液の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は複数混合して用いることができる。
【0077】
上述したナノファイバ層11は、基材層12となるシート状物に、直接又は粘着層を介して積層される。ナノファイバ層11及び基材層12は、接着剤を用いた接着、圧着、超音波シールによる接合、レーザーによる融着、ヒートシールによる熱融着等の固着により一体化される。また、ナノファイバシートが粘着層を備える場合、ナノファイバ層11及び基材層12、並びに基材層12及び粘着層の何れか一方又は双方は、前記固着により一体化される。
【0078】
ナノファイバ層11が、上述したように内方領域Mにおける厚みが大きく、グラデーション領域Gにおける厚みが一方向に向かって漸次増加している場合、グラデーション領域Gを容易に形成する観点から、ノズル20を平面方向に移動させながら繊維Fを堆積することが好ましく、ノズル20が所定の周回軌道を描くように、該ノズル20を平面方向に移動させながら繊維Fを堆積することがより好ましい。例えば、繊維Fの堆積位置が部分的に重複する軌道を描くようにノズル20を移動させて繊維Fを堆積すること、または繊維Fの堆積時間若しくは堆積量を堆積位置毎に異ならせながらノズル20を移動させて繊維Fを堆積することが挙げられる。これにより、ナノファイバF(繊維)の堆積量を部分的に異ならせることができ、一方向に繊維Fの堆積量が漸次増加した堆積量分布を有するグラデーション領域Gを形成することができる。特にグラデーション領域Gを効率的に形成する観点から、ナノファイバFの堆積時間を堆積位置毎に異ならせながらノズル20を移動させてナノファイバFを堆積することが好ましい。また、ノズル20に代えて、対向電極30を平面方向に移動させてもよい。
【0079】
上述したナノファイバシートは、ノズル20又は対向電極30を移動させず、ナノファイバF(繊維)の紡糸方向を変化させ、繊維Fの堆積量が漸次増加するグラデーション領域Gを形成して、製造してもよい。例えば、ノズル20に、空気流を噴出する空気流噴出部を備え、繊維Fの堆積位置が所望の位置となるよう、空気流を繊維Fに吹きつけながら堆積することが挙げられる。
【0080】
ノズル20の先端の形態(不図示)、即ち吐出孔の横断面形状は、特に制限されず、例えば円状の平面又は鋭角部を有するように形成されていてもよい。
図9に示すように、ノズル20を円柱状とした場合、繊維Fの堆積を効率的に行う観点から、ノズル20の先端における直径は0.1mm以上20mm以下が好ましく、0.1mm以上15mm以下であることが好ましい。
原料液供給路の供給端は、ノズル20の近傍に配置されていることが好ましく、例えばノズル20から10mm以内の範囲に供給端を配置することが好ましい。
【0081】
グラデーション領域Gを容易に形成する観点から、電界紡糸装置100におけるノズル20の先端と対向電極30との離間距離は、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上とすることができ、また、好ましくは350mm以下、より好ましくは300mm以下とすることができる。
【0082】
以上の説明は、電界紡糸法によってナノファイバを製造し、基材層の一面にナノファイバを堆積させてナノファイバシートを製造することに関するものであったが、本発明は、ナノファイバ以外の繊維、例えばナノファイバよりも太い繊維に適用することができる。また本発明は静電スプレーによって製造され、捕集部によって捕集される粒子にも適用することができる。
【0083】
詳細には、本発明は、基材層と、該基材層の一方の面に配置された極薄シートとを備える積層シートを包含する。極薄シートは、繊維又は粒子の堆積物から構成されていることが好ましい。つまり極薄シートは、繊維シート又はフィルム状シートであることが好ましい。極薄シートを構成する繊維又は粒子は、該繊維又は粒子の原料液をノズルから吐出させ、該原料液から生じさせることができる。原料液から繊維を生じさせる場合、その方法に特に制限はなく、例えば溶融紡糸法を採用することができる。
原料液から生じた繊維の太さは例えば10nm以上とすることが好ましく、0.1μm以上とすることが更に好ましく、0.3μm以上とすることが一層好ましい。また原料液から生じた繊維の太さは、30μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることが更に好ましく、1μm以下とすることが一層好ましい。原料液から生じた繊維の太さは、特に、10nm以上30μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上3μm以下とすることが更に好ましく、0.3μm以上1μm以下とすることが一層好ましい。
原料液に含まれる繊維の原料は、上述したナノファイバ層11を構成する原料と同様とすることができる。
【0084】
一方、粒子の大きさは例えば0.01μm以上とすることが好ましく、0.1μm以上とすることが更に好ましく、1μm以上とすることが一層好ましい。また粒子の大きさは、200μm以下とすることが好ましく、100μm以下とすることが更に好ましく、10μm以下とすることが一層好ましい。粒子の大きさは、特に、0.01μm以上200μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上100μm以下とすることが更に好ましく、1μm以上10μm以下とすることが一層好ましい。粒子の大きさは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D
50で表される。
原料液に含まれる粒子の原料は、ナノファイバを構成する原料と同様とすることができる。
【0085】
極薄シートは、それが繊維の堆積物から構成されている場合及び粒子の堆積物から構成されている場合の何れであっても、その厚みが5.1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、また極薄シートは、その厚みが500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。特に極薄シートは、その厚みが5.1μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上400μm以下であることが更に好ましい。
【0086】
積層シートにおいては、基材層と極薄シートとは剥離可能に積層されている。上述したナノファイバシート10と同様に、積層シートは粘着層を備えていることが好ましい。粘着層は、基材層と極薄シートとの間、又は極薄シートの基材層とは反対側の面に配されていることが好ましい。
【0087】
極薄シートは、該極薄シートが適用される被適用部位に応じた輪郭形状を有していることが好ましい。極薄シートが適用される被適用部位に特に制限はなく、上述したナノファイバシート10と同様に、例えばヒトの身体の表面部位(すなわち皮膚)、歯、歯茎、毛髪、非ヒト哺乳類の皮膚(肌)、歯、歯茎、あるいは、枝や葉等の植物表面等が挙げられるが、これらの被適用部位に限られない。
【0088】
極薄シートを例えばヒトの身体の表面部位に適用する場合には、用途に応じた輪郭形状、又は該表面部位に応じた輪郭形状を有するように極薄シートを形成することが好ましい。例えば極薄シートを目の下の部位に適用する場合には、該極薄シートとして、
図1に示すような、屈曲部を一箇所有する長円形の輪郭を有するものを用いることがフィット性の向上の観点から好ましい。同様の観点から、極薄シートを頬に適用する場合には、該極薄シートとして、各角が丸みを帯びているか、及び/又は、各辺が外方に向けて弧状になっている三角形の輪郭を有するものを用いることが好ましい。更に同様の観点から、極薄シートを額に適用する場合には、該極薄シートとして、略楕円形の輪郭を有するものを用いることが好ましい。また、例えばヒトの身体の表面におけるシミやほくろ、肌色むらを補正する用途で極薄シートを用いる場合、円形、楕円、角の丸い四角形又はそれらの組合せ形状を用いることができる。
【0089】
極薄シートがどのような輪郭形状を有する場合であっても、該極薄シートの輪郭線は、該輪郭線の全長のうちの半分超の長さの部分が曲線によって構成されていることが、該極薄シートと、該極薄シートが適用される部位とのフィット性が向上する観点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、極薄シートの輪郭線は、該輪郭線の全長のうちの60%以上、特に70%以上、とりわけ80%以上の長さの部分が曲線によって構成されていることが好ましい。極薄シートの輪郭線がすべて曲線によって構成されていてもよい。斯かる輪郭線は、前述の〔周縁端の厚みの測定方法〕における平面輪郭曲線により特定することができる。
【0090】
極薄シートは、その周縁端から内方に向かって厚みが漸次増加する、テーパー状の周縁領域を有している。「テーパー状」とは、極薄シートをその厚み方向に沿って見たときの周縁領域の断面形状のことである。「テーパー状の周縁領域」は、先に述べた「グラデーション領域G」と同じ意味である。
【0091】
テーパー状の周縁領域は、極薄シートの周縁端から内方に向かって幅5mm以内の領域に形成されていることが好ましい。「テーパー状の周縁領域の幅」とは、先に説明したナノファイバシートにおけるグラデーション領域Gにおける幅W1と同じ意味である。テーパー状の周縁領域の幅は、該周縁領域の何れにおいても同じであってもよく、あるいは位置によって異なっていてもよい。テーパー状の周縁領域の幅が位置によって異なっている場合、最小幅が5mm以内であることが好ましい。
【0092】
極薄シートは、テーパー状の周縁領域よりも内方の位置に、該周縁領域で囲まれた内方領域も有している。内方領域は、周縁領域と異なり厚みが実質的に一定の領域である。極薄シートの厚みというときには、内方領域での厚みを意味する。内方領域の厚み、すなわち極薄シートの厚みは5.1μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることが更に好ましい。また極薄シートの厚みは、500μm以下とすることが好ましく、400μm以下とすることが更に好ましい。極薄シートの厚みは、特に、5.1μm以上500μm以下とすることが好ましく、10μm以上400μm以下とすることが更に好ましい。
【0093】
上述のとおり内方領域は厚みが実質的に一定の領域である。したがって内方領域は、位置によって厚みが若干異なっていることが許容される。例えば平均厚みに対して±25%程度の範囲で厚みが異なることが許容される。
【0094】
極薄シートの厚み方向に沿う断面において、内方領域は、その幅が好ましくは100mm以下であり、更に好ましくは50mm以下であり、一層好ましくは30mm以下である。内方領域の幅の最小値は好ましくは0mmであり、すなわち内方領域が存在していなくてもよい。「内方領域の幅」とは、先に説明したナノファイバシートにおける「内方領域Mの幅W2」(
図2参照)と同じ意味である。
【0095】
極薄シートにおける内方領域の厚み及び周縁領域の厚みは、先に説明した〔ナノファイバ層の三次元形状の測定方法〕、〔周縁端の厚みの測定方法〕、〔グラデーション領域の特定方法〕に従い測定できる。この測定方法は、先に説明したナノファイバシートにおけるグラデーション領域Gの厚み及び内方領域Mの厚みの測定にも適用できる。
【0096】
積層シートにおける基材層は、極薄シートの周縁端から外方に向かって延出する領域(この領域を「延出領域」ともいう。)を有していることが好ましい。このことは、先に説明したナノファイバシート10において、
図1ないし
図3に示すとおり、基材層12が、ナノファイバ層11の周縁端から外方に向かって延出する領域を有していることと同じである。積層シートにおける基材層が延出領域を有していることで、基材層からの極薄シートの剥離を容易に行うことができる。
【0097】
積層シートにおける基材層は、極薄シートの周縁端の全域から延出していてもよく、あるいは該周縁域の一部から延出していてもよい。何れの場合であっても、延出領域の延出の程度は位置によって異なっていてもよく、あるいは同じであってもよい。基材層は、極薄シートの周縁端の全域から延出しており、且つ延出領域の延出の程度が位置によらず同じである場合には、極薄シートの輪郭形状と、基材層の輪郭形状とは略相似形となる。両者の輪郭形状が相似形である利点は次のとおりである。極薄シートは、その厚みが非常に薄いので目視が容易でない場合がある。これに対して、極薄シートの輪郭形状と、基材層の輪郭形状とは略相似形であると、目視が容易な基材層の輪郭形状を視認することで、極薄シートの存在及び基材シートからの剥離を容易に行うことができる。
【0098】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下のナノファイバシート、その使用方法、及び積層シートを開示する。
<1>
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えるナノファイバシートであって、
前記ナノファイバ層は、その周縁端の厚みが0.1μm以上10μm以下であり、且つ該周縁端から内方に向かって漸次厚みが増加するグラデーション領域を3mm以上有している、ナノファイバシート。
【0099】
<2>
前記周縁端の厚みは、0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、また9μm以下、好ましくは8μm以下であり、また0.3μm以上9μm以下、好ましくは0.5μm以上8μm以下である、前記<1>に記載のナノファイバシート。
<3>
前記グラデーション領域における内方端である最大厚み部の厚みD3は、好ましくは5.1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下であり、また好ましくは5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下である、前記<1>又は<2>に記載のナノファイバシート。
<4>
前記グラデーション領域の傾斜角度は、0.001°以上、好ましくは0.002°以上であり、また10°以下、好ましくは8°以下であり、また0.001°以上10°以下、好ましくは0.002°以上8°以下である、前記<1>〜<3>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<5>
前記グラデーション領域における内方端と前記周縁端との差が5μm以上である、前記<1>〜<4>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<6>
前記グラデーション領域における内方端と前記周縁端との厚みの差は、5μm以上、好ましくは10μm以上であり、また500μm以下、好ましくは400μm以下であり、また5μm以上500μm以下、好ましくは10μm以上400μm以下である、前記<1>〜<5>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<7>
前記グラデーション領域における内方端である最大厚み部の厚みD3の前記周縁端の厚みD1に対する比率(D3/D1)は、50以上、好ましくは100以上であり、また5000以下、好ましくは4000以下であり、また50以上5000以下、好ましくは100以上4000以下である、前記<1>〜<6>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<8>
前記ナノファイバ層の平面視形状が、曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状、複数の直線部分を輪郭に含む形状、又は該曲線部分と該直線部分とを輪郭に含む形状である、前記<1>〜<7>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<9>
前記ナノファイバ層が前記基材層に隣接して配置されており、前記基材層は通気性を有している、前記<1>〜<8>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<10>
前記ナノファイバ層が前記基材層に隣接して配置されており、前記基材層は、ナノファイバの繊維径よりも大きな幅の複数の凹部又は凸部を該ナノファイバ層と対向する面に有している、前記<1>〜<9>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<11>
前記基材層がスポンジである、前記<1>〜<10>の何れか1に記載のナノファイバシート。
【0100】
<12>
前記ナノファイバ層は水不溶性である前記<1>〜<11>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<13>
前記ナノファイバ層に含まれる水不溶性高分子化合物は50質量%超、好ましくは80質量%以上であり、該ナノファイバ層に含まれる水溶性高分子化合物は好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%以下である、前記<12>に記載のナノファイバシート。
<14>
前記ナノファイバ層がナノファイバに加えて他の成分を含み、該ナノファイバ層に占めるナノファイバの含有量が、40質量%以上95質量%以下、好ましくは70質量%以上90質量%以下であり、
前記ナノファイバ層における他の成分の含有量が、5質量%以上60質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下である、前記<1>〜<13>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<15>
前記ナノファイバ層は、前記グラデーション領域に囲まれた内方領域とを有し、該内方領域は凹部を有しており、
前記内方領域の前記凹部における厚みは、前記最大厚み部の厚みに対して、50%以上、好ましくは60%以上であり、また100%以下、好ましくは90%以下であり、また50%以上100%以下、好ましくは60%以上90%以下である、前記<1>〜<14>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<16>
前記内方領域の前記凹部における厚みが、5.1μm以上、好ましくは10μm以上であり、また500μm以下、好ましくは400μm以下であり、また5.1μm以上500μm以下、好ましくは10μm以上400μm以下である、前記<15>に記載のナノファイバシート。
<17>
前記内方領域は、前記凹部として、前記グラデーション領域の内方端である最大厚み部よりも厚みが大きい部分を形成する浅凹部と、該最大厚み部よりも厚みが小さい部分を形成する深凹部とを有しており、
前記内方領域の前記浅凹部における厚みは、5.1μm以上、好ましくは10μm以上であり、また500μm以下、好ましくは400μm以下であり、また5.1μm以上500μm以下、好ましくは10μm以上400μm以下である、前記<15>又は<16>に記載のナノファイバシート。
<18>
前記深凹部における厚みが、5.1μm以上、好ましくは10μm以上であり、また500μm以下、より好ましくは400μm以下であり、また、5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下である、前記<17>に記載のナノファイバシート。
<19>
対象物の表面に貼付け可能な粘着層を備えており、
該粘着層が、前記基材層と前記ナノファイバ層との間、又は前記ナノファイバ層の前記基材層とは反対側の面に配されている、前記<1>〜<15>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<20>
前記<1>〜<15>の何れか1に記載のナノファイバシートの使用方法であって、
対象物の表面に前記ナノファイバ層が貼付された状態において、該ナノファイバ層を湿潤させた状態で使用する、ナノファイバシートの使用方法。
<21>
対象物の表面を液状物で湿潤させた状態で、該表面に前記ナノファイバ層を付着させる、前記<20>に記載のナノファイバシートの使用方法。
<22>
対象物の表面に前記ナノファイバ層を付着させた状態で、該ナノファイバ層を液状物で湿潤させる、前記<20>に記載のナノファイバシートの使用方法。
<23>
前記ナノファイバ層を液状物で湿潤させた状態で、対象物の表面に前記ナノファイバ層を付着させる、前記<20>に記載のナノファイバシートの使用方法。
【0101】
<24>
基材層と、該基材層の一方の面に配置された厚み5.1μm以上500μm以下の極薄シートとを備える積層シートであって、
前記極薄シートは、該極薄シートが適用される部位に応じた輪郭形状を有しており、
前記極薄シートは、その周縁端から内方に向かって厚みが漸次増加するテーパー状の周縁領域を有しており、
前記基材層は、前記極薄シートの前記周縁端から外方に向かって延出する領域を有している、積層シート。
<25>
前記極薄シートは、ヒトの身体の表面部位に応じた輪郭形状を有している、前記<24>に記載の積層シート。
<26>
前記極薄シートは、高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層により形成されている、前記<24>又は<25>に記載の積層シート。
<27>
前記極薄シートの周縁端の厚みは、0.1μm以上10μm以下である、前記<24>〜<26>の何れか1に記載の積層シート。
<28>
前記テーパー状の周縁領域は、前記極薄シートの前記周縁端から内方に向かって幅5mm以内の領域に形成されている、前記<24>〜<27>の何れか1に記載の積層シート。
<29>
前記極薄シートの輪郭線は、該輪郭線の全長のうちの半分超の長さの部分が曲線によって構成されている、前記<24>〜<28>の何れか1に記載の積層シート。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0103】
〔実施例1〜9〕
図1に示すように、曲率の異なる複数の曲線部分が凹凸を形成する平面視形状のナノファイバ層をグラデーション領域の幅が3mm以上、または4mm以上になるように製造した。このナノファイバ層は、その平面視形状における最大長さが30mmであった。具体的には、上述した製造方法によりポリビニルブチラール(PVB;積水化学工業株式会社製、S−LEC B BM−1)のナノファイバからなるナノファイバ層を形成した。ナノファイバの太さは100nmであった。ナノファイバ層は、PVBを12%含み、エタノールを61.25%、1−ブタノールを26.25%、4級塩系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「サニゾールC」)0.5%を含む原料液を用いて、エレクトロスピニング法によって形成した。エレクトロスピニング法の実施条件は、電圧30kV、ノズルの先端と対向電極との離間距離200mm、吐出量1ml/hとした。電界紡糸による繊維の堆積は、ノズルを平面方向に移動させながら行った。得られたナノファイバ層について、上述した測定方法により、ナノファイバ層の周縁端の厚みD1、グラデーション領域の幅W1、最大厚み部15の厚みD3を測定した。また、傾斜角度θはグラデーション領域Gにおける周縁端17と最大厚み部15との厚みの差D2と、グラデーション領域Gの幅W1とから算出した。測定結果及び計算結果を下記表1に示す。実施例1〜5における個々のナノファイバ層は、該ナノファイバ層の全域においてグラデーション領域の幅W1が目視で等しいものであった。また実施例6〜9における個々のナノファイバ層は、該ナノファイバ層の全域においてグラデーション領域の幅W1が目視で等しいものであった。また、何れの実施例においても、ナノファイバ層は、平面視における輪郭線の全長のうち曲線によって構成された部分が占める割合(%)が100%であった。即ち、ナノファイバ層は、平面視における輪郭線の全長が曲線によって構成されているものであった。
【0104】
[比較例1及び2]
ナノファイバ層は、PVBを12%、エタノールを88.0%含む原料液を用いた点、及びナノファイバ層の周縁端の厚みを12μm又は15μmとした点、グラデーション領域Gの最大厚み部の厚みD3を15μm又は20μmとした点以外は実施例1と同様の条件でエレクトロスピニング法によって形成した。ナノファイバの太さは500nmであった。測定結果を下記表1に示す。
【0105】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたナノファイバ層について、肌に貼り付けた状態における、ナノファイバ層の視認性及びファンデーションを塗布したナノファイバ層の外観を以下の方法で評価した。それらの評価結果を下記表1に示す。
【0106】
〔ナノファイバ層の視認性〕
被験者の上腕内側部に、5mL/cm
2の美容液(商品名:ライズ ローション II(さっぱり)、花王株式会社製)を付与して湿潤状態にし、その部位に、ナノファイバ層の第1面、即ち隆起した面を付着させた。次いで、貼付したナノファイバ層を目視し、その視認性の評価を以下の基準で行った。評価結果を表1に示す。
A:ナノファイバ層全体の透明度が高く、ナノファイバ層を視認し難くする点で非常に優れている。
B:ナノファイバ層の周縁端に透明度があり、ナノファイバ層を視認し難くする点で優れている。
C:ナノファイバ層の透明度が低く、容易に視認可能であり、ナノファイバ層を視認し難くする点で優れていない。
【0107】
〔ファンデーションを塗布したナノファイバ層の外観〕
上記〔ナノファイバ層の視認性〕にて、肌に貼り付けたナノファイバ層の上から、0.71mg/cm
2のパウダーファンデーション(商品名:ソフィーナ プリマヴィスタ パウダーファンデーション<モイストタッチ> ベージュオークル05、花王株式会社製)を塗布した。次いで、ナノファイバ層を目視し、その外観の評価を以下の基準で行った。評価結果を表1に示す。
A:ナノファイバ層が周囲の肌に馴染み、自然な仕上がりである。
B:ナノファイバ層の周縁が目立って周囲の肌に馴染まず、不自然な仕上がりである。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示すように、各実施例におけるナノファイバ層は、肌に貼付した状態で視認し難く、上からファンデーションを塗布しても肌に馴染んで自然な仕上がりとなる。これに対し、各比較例におけるナノファイバ層は、肌に貼付するとその存在が目立ち、視認可能である。さらに各比較例におけるナノファイバ層は、上からファンデーションを塗布すると、周囲の肌とは異なる色味を呈するため、肌に馴染まず、不自然な仕上がりとなる。
【0110】
ナノファイバ層を肌に貼り付けた状態において、該ナノファイバ層による肌のシミや皺の隠蔽性、及びナノファイバ層の上からファンデーションを塗布した場合のナノファイバ層による肌のシミや皺の隠蔽性について、以下の方法を用いて評価した。
【0111】
〔シミや皺の隠蔽性〕
上記〔ファンデーションを塗布したナノファイバ層の外観〕と同様の方法により、肌のシミや皺のある部位に、ナノファイバ層を貼付し、その上からファンデーションを塗布した。次いで当該部位におけるシミや皺を目視し、その隠蔽性の評価を以下の基準で行った。
3:肌のシミや皺が見えなくなるほど隠蔽される。
2:肌のシミや皺がうっすらと見えるが、視認し難い。
1:肌のシミや皺が容易に視認可能である。
【0112】
上記〔シミや皺の隠蔽性〕の評価は、実施例4のナノファイバ層と、実施例10のナノファイバ層とを用いて行った。実施例10のナノファイバ層は、グラデーション領域の最大厚み部の厚みD3を50μmとした以外は、実施例4と同様の方法により製造した。評価結果を以下の表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
本発明におけるナノファイバ層は、該ナノファイバ層の上からファンデーションを塗布することで、その隠蔽性は向上する。例えば、実施例4及び10では、シミや皺を効果的に隠すことができた。また、グラデーション領域の最大厚み部の厚みを増加させることにより、シミや皺を見えなくなるほど隠蔽することができた。
【0115】
[参考例]
実施例1と同様の手順にて、頂点位置における厚みが41μmであるナノファイバ層を製造した。斯かるナノファイバ層は、平面視における輪郭が
図1に示すものと同様のものであった。製造したナノファイバ層について、前述した方法で三次元形状データを取得し、これに基づいて断面輪郭曲線を示すグラフを求めた。得られたグラフのうち、
図1のII−II線の位置に対応する断面の断面輪郭曲線を
図10に示す。
図10に、断面輪郭曲線とともに、ナノファイバ層の周縁端CP、グラデーション領域G、及び頂点位置CTを示す。
図10に示す断面輪郭曲線において、周縁端の厚みD1は4.5μmであり、グラデーション領域は該周縁端CPから頂点位置までシグモイド曲線状に厚みが増加するものであった。