特許第6778372号(P6778372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6778372ポリイソプレノイドの製造方法、ベクター、形質転換植物、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778372
(24)【登録日】2020年10月14日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】ポリイソプレノイドの製造方法、ベクター、形質転換植物、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20201026BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20201026BHJP
   C12N 15/82 20060101ALI20201026BHJP
   C12P 5/02 20060101ALI20201026BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20201026BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20201026BHJP
   B29D 30/00 20060101ALI20201026BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20201026BHJP
   B60C 1/00 20060101ALN20201026BHJP
【FI】
   C12N15/29
   C12N15/54
   C12N15/82 122Z
   C12P5/02ZNA
   A01H1/00 A
   A01H5/00 A
   B29D30/00
   !C12N9/10
   !B60C1/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2016-563140(P2016-563140)
(86)(22)【出願日】2016年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2016069172
(87)【国際公開番号】WO2017002818
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-131024(P2015-131024)
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-54541(P2016-54541)
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】井之上 ゆき乃
(72)【発明者】
【氏名】伏原 和久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征司
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲
(72)【発明者】
【氏名】中山 亨
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−221306(JP,A)
【文献】 特開2011−052146(JP,A)
【文献】 特開2014−227487(JP,A)
【文献】 特開2015−136296(JP,A)
【文献】 Eur. J. Biochem., 2003, Vol.270, p.4671-4680
【文献】 J. Biol. Chem., 2015.01.23, Vol.290, No.4, p.1898-1914
【文献】 Plant J., Published online 2015.04.21, Vol.82, p.903-912
【文献】 EMBO J., 2011, Vol.30 p.2490-2500
【文献】 高橋征司,天然ゴム高生産へ弾みをつける,生物工学会誌,2015,93(3),p.155
【文献】 山下哲 ほか著,パラゴムノキのゴム粒子に含まれる天然ゴム合成酵素の解析,イソプレノイド研究会例会講演要旨集,2014.09.12,Vol.24,p.17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 5/02
C12N 15/09
A01H 1/00
A01H 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させる結合工程を含むポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項2】
前記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質が、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位、及びこれに相当する位置にアスパラギン酸残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位、及びこれに相当する位置にグリシン残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位、及びこれに相当する位置にアルギニン残基を、並びに、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における89位、及びこれに相当する位置にアスパラギン残基を、有するものである請求項1記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項3】
前記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(A):
DGNXRXAKK (A)
(上記アミノ酸配列(A)中、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(A)と、X及びXを除く7アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列である請求項1又は2記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項4】
前記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における81位から97位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(B):
TX1112AFSX1314NX1516RX171819EV (B)
(上記アミノ酸配列(B)中、X11〜X19は同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(B)と、X11〜X19を除く8アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項5】
前記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種が、植物由来である請求項1〜4のいずれかに記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項6】
前記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種が、パラゴムノキ由来である請求項5記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項7】
前記結合工程が、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードするmRNA、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行い、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させる工程である請求項1〜6のいずれかに記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項8】
前記無細胞蛋白合成溶液が、胚芽抽出物を含む請求項7記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項9】
前記胚芽抽出物が、小麦由来である請求項8記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項10】
前記無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度が、5〜50g/Lである請求項7〜9のいずれかに記載のポリイソプレノイドの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程、前記ポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリイソプレノイドの製造方法によりポリイソプレノイドを製造する工程、前記ポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法。
【請求項13】
乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、並びに、該プロモーターに機能的に連結されたシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクター。
【請求項14】
前記乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターが、Rubber Elongation Factor(REF)をコードする遺伝子のプロモーター、Small Rubber Particle Protein(SRPP)をコードする遺伝子のプロモーター、Hevein2.1(HEV2.1)をコードする遺伝子のプロモーター、及び、MYC1 transcription factor(MYC1)をコードする遺伝子のプロモーターからなる群より選択される少なくとも1種である請求項13載のベクター。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のベクターが導入された形質転換ゴム産生植物。
【請求項16】
請求項13又は14に記載のベクターをゴム産生植物に導入することにより、該植物におけるポリイソプレノイドの生産量を向上させる方法。
【請求項17】
請求項13又は14に記載のベクターをゴム産生植物に導入して形質転換植物を製造する工程、該形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、該ポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
【請求項18】
請求項13又は14に記載のベクターをゴム産生植物に導入して形質転換植物を製造する工程、該形質転換植物によりポリイソプレノイドを製造する工程、該ポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソプレノイドの製造方法、ベクター、形質転換植物、空気入りタイヤの製造方法、及びゴム製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴム(ポリイソプレノイドの1種)は、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)や桑科植物のインドゴムノキ(Ficus elastica)などのゴム産生植物を栽培し、その植物体が有する乳管細胞で天然ゴムを生合成させ、該天然ゴムを植物から手作業により採取することにより得られる。
【0003】
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴムは、パラゴムノキをほぼ唯一の採取源としている。パラゴムノキは東南アジアや南米などの限られた地域でのみ生育可能な植物である。更に、パラゴムノキは、植樹からゴムの採取が可能な成木になるまでに7年程度を要し、また、天然ゴムを採取できる期間は20〜30年に限られる。今後、開発途上国を中心に天然ゴムの需要の増大が見込まれているが、上述の理由によりパラゴムノキによる天然ゴムの大幅な増産は困難である。そのため、天然ゴム資源の枯渇が懸念されており、パラゴムノキの成木以外の安定的な天然ゴムの供給源やパラゴムノキにおける天然ゴムの生産効率の改善が望まれている。
【0004】
天然ゴムは、イソペンテニル二リン酸(IPP)を基本単位とし、シス−1,4−ポリイソプレン構造をとっており、天然ゴムの生合成にはその構造からシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)が関係していると考えられている。例えば、パラゴムノキでは複数のCPTの存在が確認されており、Hevea Rubber transferase 1(HRT1)、Hevea Rubber transferase 2(HRT2)などが知られている(例えば、非特許文献1、2参照。)。また、タンポポの一種であるゴムタンポポ(Taraxacum brevicorniculatum)ではCPTの発現量を抑えることにより、ゴムの合成量が低下することが知られている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0005】
また、これまでに天然ゴムの生合成に関わるタンパク質の研究として、Rubber Elongation Factor(REF)、Small Rubber Particle Protein(SRPP)が注目されてきた(例えば、非特許文献4、5参照。)。しかしながら、これらのタンパク質とCPTとの関係は解明されていない。
他方、ヒトCPTにおけるドリコール生合成において、Nogo−B receptor(NgBR)が関与していることが示唆されている(例えば、非特許文献6参照。)。
【0006】
他方、近年の遺伝子工学の発展に伴い、天然の植物体に所望の外来遺伝子を導入することによって形質の改変を図ることが可能となってきている。例えば、特許文献1では、パラゴムノキのプレニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を植物に導入して形質転換することで、ゴムの生産性の向上が期待できるとしている。
【0007】
ただし、植物体への外来遺伝子の導入として、乳管以外の部位で遺伝子発現が促されると、植物体の代謝や乳液の生産に負荷をかけ、悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、乳管で特異的に遺伝子発現を促すプロモーターの探索が行われている(例えば、特許文献2、非特許文献7及び8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5035871号公報
【特許文献2】特開2010−119373号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Rahaman他、BMC Genomics、2013年、第14巻
【非特許文献2】Asawatreratanakul他、EuropeanJournal of Biochemistry、2003年、第270巻、4671〜4680ページ
【非特許文献3】Post他、Plant Physiology、2012年、第158巻、1406〜1417ページ
【非特許文献4】Hillebrand他、PLoS ONE、2012年、第7巻
【非特許文献5】Priya他、Plant Cell Reports、2007年、第26巻、1833〜1838ページ
【非特許文献6】K.D.Harrison他、The EMBO Journal、2011年、第30巻、2490〜2500ページ
【非特許文献7】P.Priya他、Plant Science、2006年、第171巻、470〜480ページ
【非特許文献8】Sandeep Kumar Tata他、Industrial Crops and Products、2012年、第40巻、219〜224ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、パラゴムノキの成木以外の安定的な天然ゴムの供給源の開発やパラゴムノキにおける天然ゴムの生産効率の改善が望まれており、また、天然ゴムの生産量を向上させることを目的として、遺伝子組換え技術の開発が検討されているが、現状、天然ゴムの生合成機構、特にその調節機構には未解明の部分が多く、天然ゴムの大幅な増産のためにはまだまだ多くの工夫の余地がある。そのような中で、上記課題を解決するための一つのアプローチとして、天然ゴムの生合成においてCPTの活性の安定化及び増強を図ることにより天然ゴムの増産を目指す方法が考えられる。
【0011】
本発明は、前記課題を解決し、生体外で、ゴム粒子のゴム合成活性を増強させ、天然ゴムの増産を可能にする、ポリイソプレノイドの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、前記課題を解決し、遺伝子組換え技術により植物体に導入することでポリイソプレノイドの生産量を向上させることができるベクターを提供することを目的とする。また、該ベクターが導入された形質転換植物、並びに、該ベクターを植物に導入することにより、該植物におけるシス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドの生産量を向上させる方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させる結合工程を含むポリイソプレノイドの製造方法に関する。以降、この発明を本発明の第1の発明とし、第1の本発明とも称する。
【0014】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位、及びこれに相当する位置にアスパラギン酸残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位、及びこれに相当する位置にグリシン残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位、及びこれに相当する位置にアルギニン残基を、並びに、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における89位、及びこれに相当する位置にアスパラギン残基を、有するものであることが好ましい。
【0015】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(A):
DGNXRXAKK (A)
(上記アミノ酸配列(A)中、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(A)と、X及びXを除く7アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列であることが好ましい。
【0016】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における81位から97位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(B):
TX1112AFSX1314NX1516RX171819EV (B)
(上記アミノ酸配列(B)中、X11〜X19は同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(B)と、X11〜X19を除く8アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列であることが好ましい。
【0017】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種は、植物由来であることが好ましい。
【0018】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種は、パラゴムノキ由来であることが好ましい。
【0019】
上記結合工程は、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードするmRNA、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行い、ゴム粒子に、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させる工程であることが好ましい。
【0020】
上記無細胞蛋白合成溶液は、胚芽抽出物を含むことが好ましい。
【0021】
上記胚芽抽出物は、小麦由来であることが好ましい。
【0022】
上記無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度は、5〜50g/Lであることが好ましい。
【0023】
第1の本発明はまた、上記第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び上記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0024】
第1の本発明はまた、上記第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び上記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法に関する。
【0025】
本発明はまた、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結されたNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターに関する。以降、この発明を本発明の第2の発明とし、第2の本発明とも称する。
【0026】
第2の本発明はまた、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、並びに、該プロモーターに機能的に連結されたシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターにも関する。
【0027】
上記乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターは、Rubber Elongation Factor(REF)をコードする遺伝子のプロモーター、Small Rubber Particle Protein(SRPP)をコードする遺伝子のプロモーター、Hevein2.1(HEV2.1)をコードする遺伝子のプロモーター、及び、MYC1 transcription factor(MYC1)をコードする遺伝子のプロモーターからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
第2の本発明はまた、上記いずれかのベクターが導入された形質転換植物に関する。
【0029】
第2の本発明はまた、上記いずれかのベクターを植物に導入することにより、該植物におけるシス型イソプレノイドの生産量を向上させる方法に関する。
【0030】
第2の本発明はまた、上記いずれかのベクターを植物に導入することにより、該植物におけるポリイソプレノイドの生産量を向上させる方法に関する。
【0031】
第2の本発明はまた、上記いずれかのベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び上記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0032】
第2の本発明はまた、上記いずれかのベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び上記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0033】
第1の本発明によれば、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させる結合工程を含むポリイソプレノイドの製造方法であるので、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させることで、CPTファミリー蛋白質の活性が安定化、増強されることが予想される。その結果、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、より効率的に反応槽(試験管、プラントなど)内でゴムを生産することが可能となる。
【0034】
第1の本発明の空気入りタイヤの製造方法は、第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び上記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であるので、ポリイソプレノイド製造時の製造効率が高い手法で得られたポリイソプレノイドから空気入りタイヤを製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮して空気入りタイヤを製造することができる。
【0035】
第1の本発明のゴム製品の製造方法は、第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び上記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法であるので、ポリイソプレノイド製造時の製造効率が高い手法で得られたポリイソプレノイドからゴム製品を製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮してゴム製品を製造することができる。
【0036】
第2の本発明のベクターは、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、及び、該プロモーターに機能的に連結されたNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターである。また、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーター、並びに、該プロモーターに機能的に連結されたシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターである。そして、該ベクターを植物に導入することにより、該ベクターに含まれる、ポリイソプレノイド生合成に関わる蛋白質をコードする遺伝子が乳管特異的に発現し、当該植物におけるシス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドの生産量を向上させることができる。
【0037】
第2の本発明の空気入りタイヤの製造方法は、第2の本発明のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び上記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であるので、ポリイソプレノイド生産量の向上した形質転換植物から得られるポリイソプレノイドから空気入りタイヤを製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮して空気入りタイヤを製造することができる。
【0038】
第2の本発明のゴム製品の製造方法は、第2の本発明のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び上記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法であるので、ポリイソプレノイド生産量の向上した形質転換植物から得られるポリイソプレノイドから空気入りタイヤを製造するため、植物資源を有効に利用でき、環境に配慮してゴム製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】CPT、及びNgBRがゴム粒子上でゴム合成を行っている様子を示す推測図である。
図2】ポリイソプレノイドの生合成経路の一部を示す模式図である。
図3】実施例において透析法を行っている様子を示す概略図である。
図4】実施例1〜3(図4の(a))、参考例1〜4(図4の(b))、参考例5〜6(図4の(c))において合成された超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布の測定結果を表すグラフである。
図5】種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行った様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書においては、第1の本発明と第2の本発明を合わせて本発明ともいう。まず、第1の本発明について説明し、続いて第2の本発明について説明する。
(第1の本発明)
第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法は、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させる結合工程を含む。
本発明者らは、生体外で、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させることで、ゴム粒子のゴム合成が活性化することを初めて見出した。なお、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の組み合わせが直接的にゴム合成に関与していることは本発明者らが今回初めて見出したことである。CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質は、図1に示すようにゴム粒子上に配置され、ゴム合成を行っているものと推測される。図1には、一例として、CPTファミリー蛋白質としてCPTが、NgBRファミリー蛋白質としてNgBRが描かれており、基質のイソペンテニル二リン酸(IPP)がCPTにより重合され、ゴム粒子中に天然ゴムが合成される様子が模式的に示されている。
したがって、第1の本発明の製造方法のように、生体外で(例えば、反応槽(試験管、プラントなど)内で)、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させることで、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、より効率的に反応槽(試験管、プラントなど)内でゴムを生産することができる。
なお、第1の本発明の製造方法は、上記結合工程を含む限りその他の工程を含んでいてもよく、また、各工程は1回行われてもよいし、複数回繰り返し行われてもよい。
また、第1の本発明において、ゴム粒子に結合するCPTファミリー蛋白質、NgBRファミリー蛋白質の量は特に限定されない。
【0041】
ここで、本明細書において、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質が結合するとは、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の全部又は一部がゴム粒子中に取り込まれる又はゴム粒子の膜構造に挿入される、といったことを意味するが、これに限らず、ゴム粒子表面又は内部に局在する等の場合をも意味する。また更には、上述のようにゴム粒子に結合している蛋白質とCPTファミリー蛋白質、NgBRファミリー蛋白質が複合体を形成し、複合体としてゴム粒子上に存在する場合もゴム粒子に結合しているとの概念範囲に含まれる。
【0042】
上記ゴム粒子の由来は特に限定されず、例えば、パラゴムノキ、ロシアンタンポポ、グアユール、ノゲシ、インドゴムノキなどのゴム産生植物のラテックス由来であればよい。
【0043】
また、上記ゴム粒子の粒子径も特に限定されず、所定の粒子径のものを分取して用いてもよいし、様々な粒子径のものが含まれた状態のものを使用してもよく、所定の粒子径のものを分取して用いる場合であっても、用いられるゴム粒子としては、粒子径の小さいSmall Rubber Particles(SRP)を用いてもよいし、粒子径の大きいLarge Rubber Particles(LRP)を用いてもよい。
【0044】
上記所定の粒子径のゴム粒子を分取する方法としては、通常行われる方法を採用することができるが、例えば、遠心分離処理、より好ましくは多段階の遠心分離処理、を行う方法などが挙げられる。具体的には、500〜1500×gでの遠心分離処理、1700〜2500×gでの遠心分離処理、7000〜9000×gでの遠心分離処理、15000〜25000×gでの遠心分離処理、40000〜60000×gでの遠心分離処理を順に行う方法が挙げられる。なお、各遠心分離処理の処理時間としては、20分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、40分以上が更に好ましい。一方、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。また、各遠心分離処理の処理温度としては、0〜10℃が好ましく、2〜8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
【0045】
上記結合工程においては、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質がゴム粒子に結合される。
【0046】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、その由来は特に制限されず、微生物由来であっても、動物由来であっても、植物由来であってもよいが、植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。最も好ましくはいずれもパラゴムノキ由来であることである。また、上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、及び、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の由来が同じ種であることも好適な形態の1つである。
【0047】
上記植物としては、特に限定されず、例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;ノゲシ(Sonchus oleraceus)、オニノゲシ(Sonchus asper)、ハチジョウナ(Sonchus brachyotus)等のSonchus属;セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)、アキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. asiatica)、ミヤマアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa)、キリガミネアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa f. paludosa)、オオアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. gigantea)、オオアワダチソウ(Solidago gigantea Ait. var. leiophylla Fernald)等のSolidago属;ヒマワリ(Helianthus annuus)、シロタエヒマワリ(Helianthus argophyllus)、ヘリアンサス・アトロルベンス(Helianthus atrorubens)、ヒメヒマワリ(Helianthus debilis)、コヒマワリ(Helianthus decapetalus)、ジャイアントサンフラワー(Helianthus giganteus)等のHelianthus属;タンポポ(Taraxacum)、エゾタンポポ(Taraxacum venustum H.Koidz)、シナノタンポポ(Taraxacum hondoense Nakai)、カントウタンポポ(Taraxacum platycarpum Dahlst)、カンサイタンポポ(Taraxacum japonicum)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)、ロシアンタンポポ(Taraxacum koksaghyz)、Taraxacum brevicorniculatum等のTaraxacum属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parthenium argentatum)、アメリカブクリョウサイ(Parthenium hysterophorus)、ブタクサ(Parthenium hysterophorus)等のParthenium属;レタス(Lactuca sativa)、ベンガルボダイジュ、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)等が挙げられる。
【0048】
なお、本明細書において、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、イソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素である。具体的には、例えば、植物では、図2に示すようなポリイソプレノイド生合成経路によってポリイソプレノイドが生合成されるが、当該経路のうち、CPTファミリー蛋白質は、図2中の点線の枠で囲まれた部分の反応を触媒する酵素と考えられている。CPTファミリー蛋白質の特徴としては、Cis IPPS domain(NCBI Accession No.cd00475)に含まれるアミノ酸配列を有することである。
【0049】
本明細書において、イソプレノイド化合物とは、イソプレン単位(C)を有する化合物を意味する。また、cis型イソプレノイドは、イソプレン単位がシス型に結合したイソプレノイド化合物を有する化合物であり、例えば、cis−ファルネシル二リン酸、ウンデカプレニル二リン酸、天然ゴムなどが挙げられる。
【0050】
ここで、種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行った様子を示す概略図を図5に示すが、Shota Endo et.al.,Biochimica et Biophysica Acta,No.1625(2003)p.291−295や、Masahiro Fujihashi et.al.,PNAS,Vol.98,No.8(2001)p.4337−4342等の文献から、図5中の囲みA(配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1においては、41位から49位に相当)、囲みB(配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1においては、81位から97位に相当)が種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質で保存性の高い保存領域の一部であり、保存領域とは、同様の配列(構造)を有する部位を意味し、蛋白質において同様の機能を有する部位であると推察される領域である。そして特に、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位に相当する位置はアスパラギン酸残基が保存され(図5中の(1))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位に相当する位置はグリシン残基が保存され(図5中の(2))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位に相当する位置はアルギニン残基が保存され(図5中の(3))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における89位に相当する位置はアスパラギン残基が保存されており(図5中の(4))、これらのアミノ酸が、CPTファミリー蛋白質の酵素反応に必須のアミノ酸であり、当該位置にこれらのアミノ酸を有する蛋白質であればCPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられる。
なお、上記マルチプルシーケンスアライメントは、後述の実施例の方法により実施できる。
【0051】
すなわち、上記CPTファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位、及びこれに相当する位置にアスパラギン酸残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位、及びこれに相当する位置にグリシン残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位、及びこれに相当する位置にアルギニン残基を、並びに、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における89位、及びこれに相当する位置にアスパラギン残基を、有するものであることが好ましい。上述したように、上記CPTファミリー蛋白質がこのような配列を有していれば、CPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられ、イソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素として機能することができ、ゴム粒子にNgBRファミリー蛋白質と共に結合させることで、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、ゴム粒子中に天然ゴムを合成することが可能となる。
【0052】
上記CPTファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(A):
DGNXRXAKK (A)
(上記アミノ酸配列(A)中、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(A)と、X及びXを除く7アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列であることがより好ましい。更に好ましくは、上記アミノ酸配列(A)中、XがH、GもしくはRを表し、また、XがW、F、もしくはYを表すことである。
【0053】
上記アミノ酸配列(A)と、X及びXを除く7アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列は、X及びXを除く7アミノ酸残基のうちの6アミノ酸残基以上が同一であることがより好ましい。
【0054】
また、上記CPTファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における81位から97位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(B):
TX1112AFSX1314NX1516RX171819EV (B)
(上記アミノ酸配列(B)中、X11〜X19は同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(B)と、X11〜X19を除く8アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列であることがより好ましい。
更に好ましくは、上記アミノ酸配列(B)中、X11がL、V、A、もしくはIを表し、また、X12がY、F、もしくはHを表し、また、X13がS、T、I、M、もしくはLを表し、また、X14がE、D、もしくはHを表し、また、X15がWもしくはFを表し、また、X16がN、S、K、G、もしくはRを表し、また、X17がP、S、H、G、R、K、もしくはQを表し、また、X18がA、K、S、もしくはPを表し、また、X19がQ、D、R、I、E、H、もしくはSを表すことである。
【0055】
上記アミノ酸配列(B)と、X11〜X19を除く8アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列は、X11〜X19を除く8アミノ酸残基のうちの6アミノ酸残基以上が同一であることがより好ましく、7アミノ酸残基以上が同一であることが更に好ましい。
【0056】
更に、CPTファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位のアミノ酸配列(DGNRRFAKK(配列番号51))と、9アミノ酸残基のうちの6アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有することが特に好ましい。当該配列同一性としては、9アミノ酸残基のうちの7アミノ酸残基以上が同一であることがより好ましく、8アミノ酸残基以上が同一であることが更に好ましい。
【0057】
更に、CPTファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における81位から97位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における81位から97位のアミノ酸配列(TIYAFSIDNFRRKPHEV(配列番号52))と、17アミノ酸残基のうちの14アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有することが特に好ましい。当該配列同一性としては、17アミノ酸残基のうちの15アミノ酸残基以上が同一であることがより好ましく、16アミノ酸残基以上が同一であることが更に好ましい。
【0058】
具体的には、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において41位から49位に相当する保存領域は、例えば、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では25位から33位に相当し、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では29位から37位に相当し、配列番号47で示される酵母由来のSRT1では75位から83位に相当し、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では79位から87位に相当し、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では43位から51位に相当し、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは42位から50位に相当し、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では41位から49位に相当し、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では41位から49位に相当し、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では42位から50位に相当し、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では41位から49位に相当し、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では58位から66位に相当し、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では58位から66位に相当し、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは34位から42位に相当し、配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは34位から42位に相当する。
【0059】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において81位から97位に相当する保存領域は、例えば、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では65位から81位に相当し、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では69位から85位に相当し、配列番号47で示される酵母由来のSRT1では115位から131位に相当し、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では119位から135位に相当し、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では84位から100位に相当し、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは82位から98位に相当し、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では81位から97位に相当し、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では81位から97位に相当し、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では82位から98位に相当し、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では81位から97位に相当し、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では98位から114位に相当し、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では98位から114位に相当し、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは74位から90位に相当し、配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは74位から90位に相当する。
【0060】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において41位に相当するアスパラギン酸残基は、例えば、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では25位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では29位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号47で示される酵母由来のSRT1では75位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では79位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では43位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは42位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では41位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では41位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では42位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では41位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では58位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では58位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは34位のアスパラギン酸残基に相当し、配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは34位のアスパラギン酸残基に相当する。
【0061】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において42位に相当するグリシン残基は、例えば、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では26位のグリシン残基に相当し、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では30位のグリシン残基に相当し、配列番号47で示される酵母由来のSRT1では76位のグリシン残基に相当し、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では80位のグリシン残基に相当し、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では44位のグリシン残基に相当し、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは43位のグリシン残基に相当し、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では42位のグリシン残基に相当し、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では42位のグリシン残基に相当し、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では43位のグリシン残基に相当し、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では42位のグリシン残基に相当し、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では59位のグリシン残基に相当し、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では59位のグリシン残基に相当し、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは35位のグリシン残基に相当し、配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは35位のグリシン残基に相当する。
【0062】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において45位に相当するアルギニン残基は、例えば、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では29位のアルギニン残基に相当し、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では33位のアルギニン残基に相当し、配列番号47で示される酵母由来のSRT1では79位のアルギニン残基に相当し、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では83位のアルギニン残基に相当し、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では47位のアルギニン残基に相当し、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは46位のアルギニン残基に相当し、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では45位のアルギニン残基に相当し、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では45位のアルギニン残基に相当し、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では46位のアルギニン残基に相当し、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では45位のアルギニン残基に相当し、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では62位のアルギニン残基に相当し、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では62位のアルギニン残基に相当し、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは38位のアルギニン残基に相当し、配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは38位のアルギニン残基に相当する。
【0063】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において89位に相当するアスパラギン残基は、例えば、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では73位のアスパラギン残基に相当し、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では77位のアスパラギン残基に相当し、配列番号47で示される酵母由来のSRT1では123位のアスパラギン残基に相当し、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では127位のアスパラギン残基に相当し、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では92位のアスパラギン残基に相当し、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは90位のアスパラギン残基に相当し、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では89位のアスパラギン残基に相当し、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では89位のアスパラギン残基に相当し、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では90位のアスパラギン残基に相当し、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では89位のアスパラギン残基に相当し、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では106位のアスパラギン残基に相当し、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では106位のアスパラギン残基に相当し、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは82位のアスパラギン残基に相当し、配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは82位のアスパラギン残基に相当する。
【0064】
上記CPTファミリー蛋白質としては、パラゴムノキ由来のCPT(HRT1、HRT2、CPT3〜5)、シロイヌナズナ由来のAtCPT1〜9、レタス由来のCPT1〜3、Taraxacum brevicorniculatum由来のCPT1〜3、大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)、マイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)、酵母由来のSRT1、タバコ由来のDDPS、マウス由来のDDPS、ヒト由来のHDSなどが挙げられる。
【0065】
上記CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、ゴムを産生するゴム産生植物の他、ゴム産生植物以外の植物、動物、微生物等も有しており、これら由来のCPTファミリー蛋白質は当然、自然状態ではゴム合成に関与していない。にもかかわらず、本発明においては、CPTファミリー蛋白質であれば、その由来、種類等に関わらず、ゴム粒子に結合させることで、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、ゴム粒子中に天然ゴムを合成することができる。そして更に、CPTファミリー蛋白質をNgBRファミリー蛋白質と共にゴム粒子に結合させることで、さらにゴム粒子のゴム合成能力を増強させることが可能となると考えられる。これは、CPTファミリー蛋白質とNgBRファミリー蛋白質の相互作用によるものと考えられる。
すなわち、CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子がゴムを産生する植物由来であるか、それ以外の生物由来であるか、または、自然状態でゴム合成に関与しているかなどに関わらず、本発明においては、CPTファミリー蛋白質でありさえすれば、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、ゴム粒子中に天然ゴムを合成することができる。これは驚くべきことであるが、本発明者らは、CPTファミリー蛋白質の由来や種類よりも、どのような宿主に導入したのか、すなわち、CPTファミリー蛋白質をどのような環境下に発現させたのかが、ゴム合成活性においては重要である、と考えている。
【0066】
上記点について、本発明者らは、次のようなメカニズムを予想している。
すなわち、CPTファミリー蛋白質が合成する生成物が蓄積される場の、疎水度及びスペース(空間的広さ)が、合成される生成物の鎖長を決定している、と考えている。
【0067】
具体的には、大腸菌のような原核生物中では、CPTファミリー蛋白質は反応生成物を確認できない程度の活性しか示さないか、活性を示し生成物を合成できたとしても、CPTファミリー蛋白質の疎水性クレフト構造内に収容可能な程度の大きさまでしか生成物の鎖長は延びない。
【0068】
また、酵母のような真核生物中では、CPTファミリー蛋白質が合成した生成物はCPTファミリー蛋白質の疎水性クレフト構造から細胞中の脂質二重膜内(例えば、小胞体膜間など)へ移行し、脂質二重膜内に蓄積されることになり、当該環境は疎水性環境であるが、細胞中の脂質二重膜内というスペースとしてはあまり広くないところに蓄積されることから生成物の鎖長の伸長には限度がある。
【0069】
シロイヌナズナのようなゴム産生植物でない植物中でも、酵母のときと同様に、CPTファミリー蛋白質が合成した生成物は、細胞中の脂質二重膜内というスペースとしてはあまり広くないところに蓄積され、やはり合成される生成物の鎖長の伸長には限度がある。
【0070】
これに対して、CPTファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させた場合には、図1に示したように、CPTファミリー蛋白質が合成した生成物はゴム粒子中に蓄積されることになり、当該環境は疎水性環境であり、かつ、スペースとしても細胞中の脂質二重膜内よりもずっと広いことから、疎水性環境であり、かつ、スペースの制約も少ないため、生成物の鎖長は充分に延びることができ、超長鎖のポリイソプレノイド(天然ゴム)を合成できる。
【0071】
この原理のため、本発明において用いるCPTファミリー蛋白質はゴム粒子との親和性を上げるためN末端側に膜貫通領域を持っていることが望ましく、野生型として持っていない場合はCPTファミリー蛋白質のN末端側に人工的に膜貫通領域を融合させても良い。融合させる膜貫通領域のアミノ酸配列は特に限定されないが、自然界で本来ゴム粒子に結合している蛋白質が持つ膜貫通領域のアミノ酸配列であることが望ましい。
【0072】
また、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質は、N末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側でCPTファミリー蛋白質又は他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質であり、CPTファミリー蛋白質を膜上に保持することにより機能を補助する。上記NgBRファミリー蛋白質の特徴としては、N末端側に膜貫通ドメインを有し、C末端側にCis IPPS superfamily domain(NCBI Accession No.COG0020)に含まれるアミノ酸配列を有することである。
【0073】
上記NgBRファミリー蛋白質としては、パラゴムノキ由来のNgBR(HRTBP)、シロイヌナズナ由来のAtLEW1、レタス由来のLsCPTL1〜2、タンポポ由来のTbRTAなどが挙げられる。
【0074】
上記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[1]が挙げられる。
[1]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
【0075】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、上記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[2]も挙げられる。
[2]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0076】
なお、上記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1〜58個のアミノ酸、更に好ましくは1〜44個のアミノ酸、更により好ましくは1〜29個のアミノ酸、特に好ましくは1〜15個のアミノ酸、最も好ましくは1〜6個のアミノ酸、より最も好ましくは1〜3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
【0077】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
【0078】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、上記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[3]も挙げられる。
[3]配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0079】
なお、上記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号2で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0080】
上記CPTファミリー蛋白質の具体例としてはまた、下記[11]が挙げられる。
[11]配列番号32、36、41、22、14、43、47、又は50で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
【0081】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、上記CPTファミリー蛋白質の具体例としてはまた、下記[12]も挙げられる。
[12]配列番号32、36、41、22、14、43、47、又は50で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0082】
なお、上記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号32、36、41、22、14、43、47、又は50で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0083】
本明細書において、アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。
【0084】
上記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
【0085】
上記NgBRファミリー蛋白質の具体例としては、下記[4]が挙げられる。
[4]配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
【0086】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、上記NgBRファミリー蛋白質の具体例としては、下記[5]も挙げられる。
[5]配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
【0087】
なお、上記NgBRファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号4で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1〜52個のアミノ酸、更に好ましくは1〜39個のアミノ酸、更により好ましくは1〜26個のアミノ酸、特に好ましくは1〜13個のアミノ酸、最も好ましくは1〜6個のアミノ酸、より最も好ましくは1〜3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
【0088】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
【0089】
また、上述したように、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、上記NgBRファミリー蛋白質の具体例としては、下記[6]も挙げられる。
[6]配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
【0090】
なお、上記NgBRファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号4で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0091】
上記NgBRファミリー蛋白質の具体例としてはまた、下記[14]が挙げられる。
[14]配列番号24、又は16で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
【0092】
また、上述したように、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、上記NgBRファミリー蛋白質の具体例としてはまた、下記[15]も挙げられる。
[15]配列番号24、又は16で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
【0093】
なお、上記NgBRファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号24、又は16で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0094】
上記NgBRファミリー蛋白質であることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、アミノ酸配列を同定し、Cis IPPS superfamily domain(NCBI Accession No.COG0020)に含まれるアミノ酸配列を有しているかどうかを確認する方法が挙げられる。
【0095】
上記CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、CPTファミリー蛋白質をコードし、発現させてCPTファミリー蛋白質を産出できるものであれば特に制限されないが、該遺伝子としては、具体的には、下記[1]又は[2]が挙げられる。
[1]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
[2]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
【0096】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部の塩基配列は、ノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、またはPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
【0097】
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
【0098】
上記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度および温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、さらに低いストリンジェントな条件としては、上記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
【0099】
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、または変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
【0100】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号1で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0101】
上記CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子としてはまた、具体的には、下記[11]又は[12]が挙げられる。
[11]配列番号31、35、40、21、13、42、63、又は64で表される塩基配列からなるDNA
[12]配列番号31、35、40、21、13、42、63、又は64で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
【0102】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0103】
上記ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号31、35、40、21、13、42、63、又は64で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0104】
上記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
【0105】
上記NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子としては、具体的には、下記[3]又は[4]が挙げられる。
[3]配列番号3で表される塩基配列からなるDNA
[4]配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質をコードするDNA
【0106】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0107】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号3で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0108】
上記NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子としてはまた、具体的には、下記[13]又は[14]が挙げられる。
[13]配列番号23、又は15で表される塩基配列からなるDNA
[14]配列番号23、又は15で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質をコードするDNA
【0109】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0110】
上記ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号23、又は15で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0111】
上記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、NgBRファミリー蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、DNAをアミノ酸配列に翻訳した際に、Cis IPPS superfamily domain(NCBI Accession No.COG0020)に含まれるアミノ酸配列を有しているかどうかを確認する方法が挙げられる。
【0112】
また、上記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT−PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、上記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、上記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT−PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
【0113】
なお、上記結合工程においては、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質がゴム粒子に結合される限り、更にその他の蛋白質が結合されてもよい。
【0114】
上記その他の蛋白質の由来は特に制限されないが、上述した植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
【0115】
上記その他の蛋白質としては、何ら制限されずいかなる蛋白質であってもよいが、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させる観点からは、ゴム産生植物体内でもともとゴム粒子上に存在する蛋白質であることが好ましい。なお、ゴム粒子上に存在する蛋白質は、大きくゴム粒子の膜表面に結合する蛋白質であってもよいし、ゴム粒子の膜に挿入されるように結合する蛋白質であってもよいし、上記膜に結合している蛋白質と複合体を形成して膜表面上に存在することになる蛋白質であってもよい。
【0116】
上記ゴム産生植物体内でもともとゴム粒子上に存在する蛋白質としては、例えば、Rubber Elongation Factor(REF)、Small Rubber Particle Protein(SRPP)、β−1,3−グルカナーゼ、Heveinなどが挙げられる。
【0117】
上記結合工程は、生体外で、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させることができればその手段は特に制限されず、例えば、CPTファミリー蛋白質をコードするmRNA、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行い、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させる方法などが挙げられる。
【0118】
上記結合工程としては、中でも、CPTファミリー蛋白質をコードするmRNA、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行い、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させる工程であることが好ましい。
すなわち、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて(より具体的には、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを混合して)蛋白質合成を行うことで、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の結合したゴム粒子を得ることが好ましい。
なお、リポソームはリン脂質、グリセロ糖脂質、コレステロール等から構成される脂質二重膜として人工的に製造されるため、製造されたリポソームの表面には蛋白質は結合していないのに対して、ゴム産生植物のラテックスから採取されるゴム粒子も脂質膜で覆われた粒子であるが、その膜は天然由来の膜であるため、その表面には植物体内で合成された蛋白質が既に結合している。このことから、蛋白質が結合していないリポソームなどに比べて、既に蛋白質が結合しており、蛋白質で覆われた状態にあるゴム粒子に更に蛋白質を結合させるのは困難であることが予想される。また、ゴム粒子に既に結合している蛋白質が無細胞蛋白合成を阻害することも懸念される。以上のような点から、ゴム粒子共存下での無細胞蛋白合成は実現が困難であると考えられてきた。このような状況下、本発明者らは、これまでに試みられていなかった、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の無細胞蛋白合成をゴム粒子の共存下で行ったところ、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の結合したゴム粒子を製造することができることを見出した。
【0119】
上記CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて行われる蛋白質合成は、いわゆる、無細胞蛋白合成法を用いたCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の合成であり、生物学的機能を担持した(native状態の)CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を合成でき、当該無細胞蛋白合成法をゴム粒子の共存下で行うことにより、合成されるCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をnative状態でゴム粒子に結合することが可能となる。
【0120】
ここで、上記無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子との共存下、蛋白質合成を行うことで、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質が結合するとは、当該蛋白質合成により合成されたCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の各蛋白質の全部又は一部がゴム粒子中に取り込まれる又はゴム粒子の膜構造に挿入される、といったことを意味するが、これに限らず、ゴム粒子表面又は内部に局在する等の場合をも意味する。また更には、上述のようにゴム粒子に結合している蛋白質と複合体を形成し、複合体としてゴム粒子上に存在する場合もゴム粒子に結合しているとの概念範囲に含まれる。
【0121】
上記CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAはそれぞれ、翻訳されてCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を合成しうる翻訳鋳型である。
上記CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAの由来は特に制限されず、微生物由来であっても、動物由来であっても、植物由来であってもよいが、植物由来であることが好ましく、上述した植物由来であることがより好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることが更に好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが特に好ましく、最も好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。また、上記CPTファミリー蛋白質をコードするmRNA、及び、NgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAの由来が同じ種であることも好適な形態の1つである。
【0122】
上記CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAはそれぞれ、翻訳されてCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を合成しうる翻訳鋳型であればその調製方法は特に制限されないが、例えば、ゴム産生植物のラテックスからホットフェノール法などによりTotal RNAを抽出し、得られたTotal RNAからcDNAを合成し、CPTファミリー蛋白質、NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列情報を元に作製したプライマーを用いてCPTファミリー蛋白質、NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子のDNA断片を取得して、該DNA断片を元に通常行われるインビトロでの転写反応を行うことにより調製することができる。
【0123】
上記無細胞蛋白合成溶液は、上記CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む限り、その他の蛋白質をコードするmRNAを含んでいてもよい。
上記その他の蛋白質をコードするmRNAとしては、翻訳されてその他の蛋白質を発現することができるものを用いることができる。なお、その他の蛋白質としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0124】
第1の本発明における結合工程においては、ゴム粒子の共存下でCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の無細胞蛋白合成が行われることが好ましいが、当該無細胞蛋白合成は、上記無細胞蛋白合成溶液を用いて、従来と同様の方法で行うことができる。用いられる無細胞蛋白合成系としては、通常用いられる無細胞蛋白質合成手段を採用することができる。例えば、Rapid Translation System RTS500(Roshe Diagnostics社製)やProc.Natl.Acad.Sci.USA,97:559−564(2000)、特開2000−236896号公報、特開2002−125693号公報、特開2002−204689号公報に従って調製された小麦胚芽抽出液及びその無細胞蛋白質合成系(特開2002−204689号公報、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14652−14657(2002))を使用することができる。中でも、胚芽抽出物を用いる系が好ましい。すなわち、上記無細胞蛋白合成溶液が、胚芽抽出物を含むこともまた、第1の本発明の好適な実施形態の1つである。
【0125】
上記胚芽抽出物の由来は特に限定されないが、翻訳効率の観点からは、植物の蛋白質を無細胞蛋白合成法で合成する場合には植物由来の胚芽抽出物を用いることが好ましい。特に好ましくは小麦由来の胚芽抽出物を用いることである。すなわち、上記胚芽抽出物が小麦由来であることもまた、第1の本発明の好適な実施形態の1つである。
【0126】
上記胚芽抽出物の調製方法としては特に制限されず、通常の胚芽抽出物調製方法を採用することができるが、例えば、特開2005−218357号公報に記載された方法を採用すればよい。
【0127】
上記無細胞蛋白合成溶液は、更にサイクリックヌクレオシド一リン酸誘導体又はその塩(以降、単に「活性増強物質」とも称する。)を含むことが好ましい。該活性増強物質を含有することにより、蛋白質合成活性を更に増強させることができる。
【0128】
上記サイクリックヌクレオシド一リン酸誘導体又はその塩としては、無細胞蛋白合成活性を増強しうるものであれば特に制限されず、例えば、アデノシン−3’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、アデノシン−3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、アデノシン−3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩、グアノシン−3’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、グアノシン−3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、グアノシン−3’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩、8−ブロモアデノシン−3’,5’−サイクリック一リン酸(ブロモcAMP)及びその塩、8−(4−クロロフェニルチオ)アデノシン−3’,5’−サイクリック一リン酸(クロロフェニルチオcAMP)及びその塩、5,6−ジクロロ−1−β−D−リボフラノシルべンジミダゾルアデノシン−3’,5’−サイクリック一リン酸(ジクロロリボフラノシルべンジミダゾルcAMP)及びその塩、アデノシン−2’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、アデノシン−2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、アデノシン−2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩、グアノシン−2’,5’サイクリック一リン酸及びその塩、グアノシン−2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Spアイソマー)及びその塩、グアノシン−2’,5’サイクリックチオ一リン酸(Rpアイソマー)及びその塩等が挙げられる。
【0129】
上記サイクリックヌクレオシド一リン酸誘導体との塩を形成する塩基としては、生化学的に許容しうるもので、当該誘導体と塩を形成するものであれば特に制限されないが、中でも好ましいものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、トリスヒドロキシアミノメタン等の有機塩基が挙げられる。
【0130】
上記活性増強物質としては、中でも、アデノシン−3’,5’サイクリック一リン酸、アデノシン−3’,5’サイクリック一リン酸ナトリウムが特に好ましい。また、これら活性増強物質は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
上記活性増強物質は、あらかじめ上記無細胞蛋白合成溶液に加えておいてもよいが、当該溶液中で不安定である場合には、無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成反応を行う際に加えるのが好ましい。
【0132】
上記活性増強物質の添加量としては、上記無細胞蛋白合成溶液による蛋白質合成反応が活性化(増加)しうる濃度であれば特に制限されない。具体的には、反応系中の最終濃度として、通常0.1ミリモル/リットル以上であればよい。濃度の下限は、好ましくは0.2ミリモル/リットル、より好ましくは0.4ミリモル/リットル、特に好ましくは0.8ミリモル/リットルである。他方、濃度の上限は、好ましくは24ミリモル/リットル、より好ましくは6.4ミリモル/リットル、特に好ましくは3.2ミリモル/リットルである。
【0133】
上記活性増強物質を上記無細胞蛋白合成溶液に加える際の無細胞蛋白合成溶液の温度としては特に限定されないが、0〜30℃が好ましく、10〜26℃がより好ましい。
【0134】
上記無細胞蛋白合成溶液は、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNA(翻訳鋳型)に加え、蛋白質合成に必須の成分であるATP、GTP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、L型アミノ酸、カリウムイオン及びマグネシウムイオン等を含有し、更には必要に応じて活性増強物質を含むものであり、このような無細胞蛋白合成溶液を用いることにより無細胞蛋白合成反応系とすることができる。
なお、上記特開2005−218357号公報に記載された方法で調製された胚芽抽出物には蛋白質合成反応に必要とされる量のtRNAが含まれているため、当該方法により調製された胚芽抽出物を無細胞蛋白合成溶液に用いる場合には、別途調製したtRNAを追加することは必須要件ではない。すなわち、無細胞蛋白合成溶液には、必要に応じてtRNAを追加すればよい。
【0135】
第1の本発明における結合工程は、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とを共存させて蛋白質合成を行うことが好ましいものであるが、具体的には蛋白質の合成前又は合成後の適当な時期に、好ましくは蛋白質合成前に、上記無細胞蛋白合成溶液にゴム粒子を加えることにより行うことができる。
また、無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度は、5〜50g/Lであることが好ましい。すなわち、無細胞蛋白合成溶液1Lに対してゴム粒子を5〜50g共存させることが好ましい。無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度が5g/L未満であると、合成されたCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質が結合したゴム粒子を回収するために、超遠心分離等による分離処理を行った際に、ゴム層が形成されず、合成されたCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質が結合したゴム粒子を回収することが困難になる場合がある。一方、無細胞蛋白合成溶液と共存させるゴム粒子の濃度が50g/Lを超えると、ゴム粒子同士が凝集し、合成されたCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質がうまくゴム粒子に結合できなくなるおそれがある。上記ゴム粒子の濃度としてより好ましくは10〜40g/L、更に好ましくは15〜35g/L、特に好ましくは15〜30g/Lである。
【0136】
また、上記無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子との共存下での蛋白質合成は、その反応の進展に伴い、適宜ゴム粒子を追加していってもよい。ゴム粒子を上記無細胞蛋白合成溶液に加えてから例えば3〜48時間(好ましくは3〜30時間、より好ましくは3〜24時間)など無細胞蛋白合成系が活性な間、上記無細胞蛋白合成溶液とゴム粒子とが共存するようにしておくことが好ましい。
【0137】
上記ゴム粒子は、第1の本発明における結合工程に用いる前に(より好ましくは前記無細胞蛋白合成溶液と共存させる前に)前処理等の特段の処理を行う必要はない。ただし、ゴム粒子上に存在する蛋白質の内、第1の本発明の方法により結合させたいCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の割合を高めるために、予め界面活性剤によりゴム粒子から蛋白質を除去してもよい。このように、第1の本発明において用いられるゴム粒子が、第1の本発明における結合工程に用いる前に(より好ましくは前記無細胞蛋白合成溶液と共存させる前に)、界面活性剤で洗浄されたものであることもまた、第1の本発明の好適な実施形態の1つである。
【0138】
上記界面活性剤としては特に限定されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、膜上の蛋白質の変性作用が小さい点で、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好適に用いられ、両性界面活性剤が特に好適に用いられる。すなわち、上記界面活性剤が、両性界面活性剤であることもまた、第1の本発明の好適な実施形態の1つである。
これら界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系、ポリオキシアルキレンポリグルコシド系の非イオン性界面活性剤や、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0140】
上記ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノ、ジ、又はトリスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルが好適に使用される。なお、前記ポリオールとしては、炭素数2〜12の多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、グルコース、スクロース、ペンタエリトリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0141】
上記ポリオキシアルキレンエステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルロジン酸エステル等が挙げられる。
上記多価アルコール脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜12の多価アルコールの脂肪酸エステル又はポリオキシアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。より具体的には、例えば、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等)も使用可能である。これらの中でも、ソルビタン脂肪酸エステルが好適に使用される。
上記糖脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ショ糖、グルコース、マルトース、フルクトース、多糖類の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
上記アルキルポリグリコシド系の非イオン性界面活性剤としては、グリコシドとしてグルコース、マルトース、フルクトース、ショ糖などが挙げられ、例えば、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグルコシドなどが挙げられ、これらの脂肪酸エステル類も挙げられる。また、これらすべてのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
【0142】
これら非イオン性界面活性剤におけるアルキル基としては、例えば、炭素数4〜30の直鎖又は分岐した飽和若しくは不飽和のアルキル基が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられ、例えば、酸化エチレンの付加モル数が1〜50モル程度のものが挙げられる。また、前記脂肪酸としては、例えば、炭素数4〜30の直鎖又は分岐した飽和若しくは不飽和の脂肪酸が挙げられる。
【0143】
上記非イオン性界面活性剤としては、中でも、ゴム粒子の膜を安定化させた状態で、かつ蛋白質の変性作用が小さい状態で、適度に膜結合蛋白質を除去できるという理由から、ポリオキシエチレンエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)が特に好ましい。
【0144】
上記両性界面活性剤としては、例えば、四級アンモニウム塩基/スルホン酸基(−SOH)タイプ、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に可溶)、四級アンモニウム塩基/リン酸酸基タイプ(水に不溶)、四級アンモニウム塩基/カルボキシル基タイプなどの両性イオン界面活性剤が挙げられる。なお、前記の酸基は塩であってもよい。
特に、前記の両性イオン界面活性剤が一分子中に+と−の両電荷を有することが好ましく、前記の酸基の酸解離定数(pKa)が、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
【0145】
上記両性界面活性剤としては、具体的には、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホン酸(CHAPS)、N,N−ビス(3−D−グルコナミドプロピル)−コラミド、n−オクタデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−デシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−ドデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−テトラデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸{Zwittergent(商標)−3−14}、n−ヘキサデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、n−オクタデシル−N,N’−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸等のアンモニウムスルホベタイン類、n−オクチルホスホコリン、n−ノニルホスホコリン、n−デシルホスホコリン、n−ドデシルホスホコリン、n−テトラデシルホスホコリン、n−ヘキサデシルホスホコリン等のホスホコリン類、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン等のホスファチジルコリン類が挙げられる。これらの中でも、ゴム粒子の膜を安定化させた状態で適度に蛋白質を除去できるという理由から、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホン酸(CHAPS)が特に好ましい。
【0146】
上記界面活性剤の処理濃度は、使用する界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の3倍以内であることが好ましい。臨界ミセル濃度の3倍を超える濃度の界面活性剤で処理するとゴム粒子の膜安定性が低下するおそれがある。より好ましくは2.5倍以内であり、更に好ましくは2.0倍以内である。また下限としては、0.05倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましく、0.3倍以上であることが更に好ましい。
【0147】
上記無細胞蛋白合成における蛋白質合成のための反応システムまたは装置としては、バッチ(回分)法(Pratt,J.M.et al.,Transcription and Tranlation,Hames,179−209,B.D.&Higgins,S.J.,eds,IRL Press,Oxford(1984))や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞蛋白質合成システム(Spirin,A.S.et al.,Science,242,1162−1164(1988))、透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)、重層法(PROTEIOSTM Wheat germ cell−free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。その他、蛋白質合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法等も用いることができる。
【0148】
中でも、重層法は操作が簡便であるという利点はあるものの反応溶液中でゴム粒子が分散してしまい、合成されるCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をゴム粒子に効率よく結合させることが困難であるのに対して、透析法では、合成されるCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質の原料となるアミノ酸は透析膜を透過できるがゴム粒子は透過しないため、ゴム粒子の分散を防ぐことができ、効率的にゴム粒子に合成されるCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させることができることから、透析法が好ましい。
【0149】
なお、上記透析法とは、上記無細胞蛋白合成における蛋白質合成の合成反応液を透析内液とし、透析外液と物質移動が可能な透析膜によって隔離される装置を用いて、蛋白質合成を行う方法である。具体的には、例えば、翻訳鋳型を除いた上記合成反応液を必要に応じて適当時間プレインキュベートした後、翻訳鋳型を添加して、適当な透析容器に入れ反応内液とする。透析容器としては、底部に透析膜が付加されている容器(第一化学社製の透析カップ12,000等)や、透析用チューブ(三光純薬社製の12,000等)が挙げられる。透析膜は、10,000ダルトン以上の分子量限界を有するものが用いられるが、12,000ダルトン程度の分子量限界を有するものが好ましい。
【0150】
上記透析外液としては、アミノ酸を含む緩衝液が用いられる。透析外液は反応速度が低下した時点で、新鮮なものと交換することにより透析効率を上昇させることができる。反応温度及び時間は用いる蛋白質合成系において適宜選択されるが、例えば、小麦由来の胚芽抽出物を用いた系においては、通常10〜40℃、好ましくは18〜30℃、より好ましくは20〜26℃で、10分〜48時間(好ましくは10分〜30時間、より好ましくは10分〜24時間)行うことができる。
【0151】
また、上記無細胞蛋白合成溶液に含まれるCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAは、分解されやすいことから、上記蛋白質合成反応中に適宜当該mRNAを追加することで、蛋白質の合成をより効率的に行うことができる。すなわち、上記蛋白質合成反応中に、上記CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をコードするmRNAを更に加えることもまた、第1の本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、上記mRNAの添加時間、添加回数、添加量等は特に制限されず、適宜設定することができる。
【0152】
第1の本発明の製造方法においては、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させる結合工程を行った後、必要に応じてゴム粒子を回収する工程を行ってもよい。
【0153】
上記ゴム粒子回収工程は、ゴム粒子を回収することができればその手法は特に制限されず、ゴム粒子を回収する通常行われる方法により行うことができる。具体的には、例えば、遠心分離により行う方法などが挙げられる。当該遠心分離によりゴム粒子を回収する場合、その遠心力や、遠心分離処理時間、遠心分離処理温度はゴム粒子を回収できるよう適宜設定することができるが、例えば、遠心分離処理の遠心力としては、15000×g以上が好ましく、20000×g以上がより好ましく、25000×g以上が更に好ましい。一方、遠心力は大きくしすぎてもそれに見合うだけの分離効果が望めないことから、遠心力の上限としては、50000×g以下が好ましく、45000×g以下がより好ましい。遠心分離処理時間としては、20分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、40分以上が更に好ましい。一方、遠心分離処理時間を長くしすぎてもそれに見合うだけの分離効果が望めないことから、遠心分離処理時間の上限としては、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。
また、遠心分離処理温度としては、ゴム粒子に結合したCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質のタンパク活性を維持するという観点から、0〜10℃が好ましく、2〜8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
【0154】
例えば、上記無細胞蛋白合成を行った場合には、上記遠心分離処理を行うと、ゴム粒子が上層に、無細胞蛋白合成溶液が下層に分離される。その後、下層の無細胞蛋白合成溶液を除去することで、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させたゴム粒子を回収することができる。回収したゴム粒子はpHが中性の適当な緩衝液に再懸濁することで保存することができる。
【0155】
なお、上記ゴム粒子回収工程を行った後に回収されたゴム粒子は更なる特別な処理を経ずに通常の天然ゴムと同様に用いることができる。
【0156】
更に、第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドは、上記ゴム粒子を以下の固化工程に供することで回収することができる。
【0157】
上記固化工程において、固化する方法としては、特に限定されず、エタノール、メタノール、アセトン等のポリイソプレノイド(天然ゴム)を溶解しない溶媒にゴム粒子を添加する方法やゴム粒子に酸を添加する方法等が挙げられる。固化工程を行うことにより、ゴム粒子からゴム(天然ゴム)を固形分として回収できる。得られたゴム(天然ゴム)は、必要に応じて乾燥してから使用すればよい。
【0158】
このように、第1の本発明によれば、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質をゴム粒子に結合させることで、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、これにより、より効率的に反応槽(試験管、プラントなど)内でゴム(ポリイソプレノイドの1種)を生産することが可能となる。
すなわち、ポリイソプレノイドを合成する方法であって、該方法は、生体外(例えば、反応槽(試験管、プラントなど)内)で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質を、ゴム粒子に結合させる結合工程を含むポリイソプレノイドを合成する方法もまた、第1の本発明の1つである。
なお、生体外で、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質、及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を発現させた蛋白質を、ゴム粒子に結合させる結合工程については、上述したとおりである。
【0159】
なお、本明細書において、ポリイソプレノイドは、イソプレン単位(C)で構成された重合体の総称である。ポリイソプレノイドとしては、例えばセスタテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)、天然ゴムなどの重合体が挙げられる。また、本明細書において、イソプレノイドは、イソプレン単位(C)を有する化合物を意味し、ポリイソプレノイドをも含む概念である。
【0160】
(ゴム製品の製造方法)
第1の本発明のゴム製品の製造方法は、上記第1の本発明のポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び上記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
【0161】
ゴム製品としては、ゴム(好ましくは天然ゴム)を使用して製造できるゴム製品であれば特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ゴムローラ、ゴム防舷材、手袋、医療用ゴムチューブ等が挙げられる。
【0162】
ゴム製品が空気入りタイヤの場合、すなわち、第1の本発明のゴム製品の製造方法が第1の本発明の空気入りタイヤの製造方法の場合、上記生ゴム製品成形工程は、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程に、上記加硫工程は、上記生タイヤを加硫する加硫工程に相当する。すなわち、第1の本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上記ポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び上記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
【0163】
<混練工程>
混練工程では、上記ポリイソプレノイドの製造方法により得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る。
【0164】
添加剤としては特に限定されず、ゴム製品の製造に用いられる添加剤を使用できる。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、例えば、上記ポリイソプレノイド以外のゴム成分、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、オイルなどの軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等が挙げられる。
【0165】
混練工程における混練は、オープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて行えばよい。
【0166】
<生ゴム製品成形工程(タイヤの場合は生タイヤ成形工程)>
生ゴム製品成形工程では、混練工程により得られた混練物から生ゴム製品(タイヤの場合は生タイヤ)を成形する。
生ゴム製品の成形方法としては特に限定されず、生ゴム製品の成形に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、混練工程により得られた混練物を、各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、各タイヤ部材を貼り合わせ、生タイヤ(未加硫タイヤ)を成形すればよい。
【0167】
<加硫工程>
加硫工程では、生ゴム製品成形工程により得られた生ゴム製品を加硫することにより、ゴム製品が得られる。
生ゴム製品を加硫する方法としては特に限定されず、生ゴム製品の加硫に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、生ゴム製品成形工程により得られた生タイヤ(未加硫タイヤ)を加硫機中で加熱加圧して加硫することにより空気入りタイヤが得られる。
【0168】
(第2の本発明)
(ベクター)
第2の本発明のベクターは、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、又は、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターである。このようなベクターを植物に導入して形質転換を行うことにより、当該ベクターに含まれる、ポリイソプレノイド生合成に関わる蛋白質をコードする遺伝子が乳管特異的に発現し、当該植物におけるシス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドの生産量を向上させることが可能となる。これは、乳液の生産性向上のために導入した外来遺伝子の発現が乳管以外の部位で促進されると、植物体の代謝や乳液の生産に負荷がかかり、悪影響を及ぼすためと推測される。
【0169】
なお、本明細書において、プロモーターが乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するとは、所望の遺伝子を当該プロモーターと機能的に連結させて植物に導入した場合に、当該所望の遺伝子が乳管で特異的に発現されるように遺伝子発現を制御する活性を有することを意味する。ここで、乳管特異的に遺伝子が発現するとは、当該遺伝子が植物中、乳管以外の部位では全く又はほとんど発現せず、当該遺伝子が実質的に乳管でのみ専ら発現しているといえる状態を意味する。また、遺伝子をプロモーターと機能的に連結させるとは、当該プロモーターの制御を受けるように、当該プロモーターの下流に当該遺伝子配列を連結することを意味する。
【0170】
第2の本発明のベクターは、一般的に植物の形質転換用ベクターとして知られているベクターに、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターの塩基配列、並びに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列、又は、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を従来公知の方法により挿入することで作製することができる。第2の本発明のベクターを作製するために使用することができるベクターとしては、例えば、pBI系のベクターや、pGA482、pGAH、pBIGなどのバイナリーベクター、pLGV23Neo、pNCAT、pMON200などの中間系プラスミド、GATEWAYカセットを含むpH35GSなどが挙げられる。
【0171】
第2の本発明のベクターは、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターの塩基配列、並びに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列、又は、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を含む限り、その他の塩基配列を含んでいてもよい。通常、ベクターにはこれらの塩基配列に加えて、ベクター由来の配列が含まれており、更に、制限酵素認識配列、スペーサ―配列、マーカー遺伝子の配列、レポーター遺伝子の配列などが含まれる。
【0172】
上記マーカー遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。また、上記レポーター遺伝子は、植物体中での発現部位を確認するために導入するものであり、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、GUS(βグルクロニダーゼ)遺伝子、GFP(緑色蛍光タンパク質)、RFP(赤色蛍光タンパク質)等が挙げられる。
【0173】
上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、その由来は特に制限されず、微生物由来であっても、動物由来であっても、植物由来であってもよいが、植物由来であることが好ましく、上述した植物由来であることがより好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることが更に好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることがより更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。最も好ましくはいずれもパラゴムノキ由来であることである。また、上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、及び、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の由来が同じ種であることも好適な形態な1つである。
【0174】
なお、第2の本発明におけるシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、CPTファミリー蛋白質、NgBRファミリー蛋白質については、上述の第1の本発明で述べたとおりである。
【0175】
第2の本発明のベクターにおいては、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターの塩基配列、並びに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列、又は、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を含む限り、更にその他の蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を含んでいてもよい。
【0176】
上記その他の蛋白質をコードする遺伝子としては、第1の本発明において上述したものと同様のものが挙げられる。
【0177】
上記乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターとしては、Rubber Elongation Factor(REF)をコードする遺伝子のプロモーター、Small Rubber Particle Protein(SRPP)をコードする遺伝子のプロモーター、Hevein2.1(HEV2.1)をコードする遺伝子のプロモーター、及び、MYC1 transcription factor(MYC1)をコードする遺伝子のプロモーターからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0178】
なお、本明細書において、Rubber Elongation Factor(REF)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物のラテックスに存在するゴム粒子に結合するゴム粒子結合蛋白質のことであり、ゴム粒子が安定化するのに寄与する。
Small Rubber Particle Protein(SRPP)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物のラテックスに存在するゴム粒子に結合するゴム粒子結合蛋白質のことである。
Hevein2.1(HEV2.1)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物の乳管細胞に多く発現している蛋白質のことであり、ゴム粒子の凝集に関与し、抗真菌活性を有するものである。
また、MYC1 transcription factor(MYC1)は、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のゴム産生植物のラテックスで多く発現している、ジャスモン酸シグナルに関わる転写因子のことである。ここで、transcription factor(転写因子)とは、遺伝子の転写量を増加若しくは減少(好ましくは増加)させる活性を有する蛋白質を意味する。すなわち、本明細書において、MYC1は、ジャスモン酸シグナルに関わる蛋白質のうち少なくとも1種の蛋白質をコードする遺伝子の転写量を増加若しくは減少(好ましくは増加)させる活性(転写因子活性)を有する蛋白質のことである。
【0179】
(Rubber Elongation Factor(REF)をコードする遺伝子のプロモーター)
上記REFをコードする遺伝子のプロモーターは、その由来は特に制限されないが、上述した植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
【0180】
上記REFをコードする遺伝子のプロモーターは、下記[A1]〜[A3]のいずれかで表されるDNAであることが好ましい。
[A1]配列番号9で表される塩基配列からなるDNA
[A2]配列番号9で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
[A3]配列番号9で表される塩基配列と60%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
【0181】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0182】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAのように、プロモーターの塩基配列は、元の塩基配列とある程度の配列同一性を有している場合には、同様にプロモーター活性を有する場合があることが知られている。プロモーター活性を維持するための、配列番号9で表される塩基配列との配列同一性としては、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、より更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0183】
(SRPPをコードする遺伝子のプロモーター)
上記SRPPをコードする遺伝子のプロモーターは、その由来は特に制限されないが、上述した植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
【0184】
上記SRPPをコードする遺伝子のプロモーターは、下記[B1]〜[B3]のいずれかで表されるDNAであることが好ましい。
[B1]配列番号10で表される塩基配列からなるDNA
[B2]配列番号10で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
[B3]配列番号10で表される塩基配列と60%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
【0185】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0186】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAのように、プロモーターの塩基配列は、元の塩基配列とある程度の配列同一性を有している場合には、同様にプロモーター活性を有する場合があることが知られている。プロモーター活性を維持するための、配列番号10で表される塩基配列との配列同一性としては、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、より更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0187】
(HEV2.1をコードする遺伝子のプロモーター)
上記HEV2.1をコードする遺伝子のプロモーターは、その由来は特に制限されないが、上述した植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
【0188】
上記HEV2.1をコードする遺伝子のプロモーターは、下記[C1]〜[C3]のいずれかで表されるDNAであることが好ましい。
[C1]配列番号11で表される塩基配列からなるDNA
[C2]配列番号11で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
[C3]配列番号11で表される塩基配列と60%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
【0189】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0190】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAのように、プロモーターの塩基配列は、元の塩基配列とある程度の配列同一性を有している場合には、同様にプロモーター活性を有する場合があることが知られている。プロモーター活性を維持するための、配列番号11で表される塩基配列との配列同一性としては、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、より更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0191】
(MYC1をコードする遺伝子のプロモーター)
上記MYC1をコードする遺伝子のプロモーターは、その由来は特に制限されないが、上述した植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることが更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
【0192】
上記MYC1をコードする遺伝子のプロモーターは、下記[D1]〜[D3]のいずれかで表されるDNAであることが好ましい。
[D1]配列番号12で表される塩基配列からなるDNA
[D2]配列番号12で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
[D3]配列番号12で表される塩基配列と60%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNA
【0193】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、上述したのと同様である。また、上記ストリンジェントな条件についても、上述したのと同様である。
【0194】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAのように、プロモーターの塩基配列は、元の塩基配列とある程度の配列同一性を有している場合には、同様にプロモーター活性を有する場合があることが知られている。プロモーター活性を維持するための、配列番号12で表される塩基配列との配列同一性としては、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、より更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0195】
上記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAや、上記したDNAと60%以上の配列同一性を有するDNAが、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するDNAであることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法である、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、又はGFP(Green Fluorescent Protein)等をレポーター遺伝子としたレポーターアッセイなどにより確認する方法が挙げられる。
【0196】
また、上記プロモーターの塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、CTAB(Cetyl Trimethyl Ammonium Bromide)法によりゲノムDNAを抽出する。次に上記プロモーターの既知の塩基配列を基に特異的なプライマーと、ランダムプライマーを設計し、抽出したゲノムDNAを鋳型にしてTAIL(Thermal Asymmetric Interlaced)−PCR法を行って、上記プロモーターを含む遺伝子の増幅を行い、塩基配列を同定する。
【0197】
第2の本発明のベクター(乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子、又は、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクター)を植物に導入することにより、ポリイソプレノイド生合成に関わる所定の蛋白質を乳管特異的に発現するように形質転換された形質転換植物が得られる。そして、当該形質転換植物では、ポリイソプレノイド生合成に関わる所定の蛋白質が乳管特異的に発現することにより、第2の本発明のベクターが導入された植物体内で新たに該蛋白質が有する所定の酵素活性等の機能が乳管内で増強されてポリイソプレノイドの生合成経路の一部が増強され、結果的に植物体でのシス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドの生産量を向上させることができる。
【0198】
更に、本発明者らは、生体外で、ゴム粒子にCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を結合させることで、ゴム粒子のゴム合成が活性化することを初めて見出した。このことから、植物体内でCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を共発現させると、ゴム合成活性が増強することが予想される。したがって、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を共発現させた形質転換植物を用いて、ポリイソプレノイドの製造を行うことで、ポリイソプレノイドの製造量を更に増大できることが期待できる。
したがって、上記形質転換植物を、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターを植物に導入することにより作出する場合には、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターを併用することが好ましい。これにより、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターを植物に導入することで得られる形質転換植物、及び、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、Nogo−B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターと、乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターとを植物に導入することで得られる形質転換植物いずれにおいても、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質が共発現することとなるため、CPTファミリー蛋白質の活性が安定化、増強されると予想される。その結果、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を共発現させた形質転換植物は、ゴム合成活性が継続的に増強し、該形質転換植物を用いて、ポリイソプレノイドの製造を行うことで、ポリイソプレノイドの製造量をより好適に増大できるものと期待される。
なお、上記乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターに、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子を機能的に連結させた塩基配列を含むベクターとは、上記乳管特異的に遺伝子を発現させるプロモーター活性を有するプロモーターの制御を受けるように、当該プロモーターの下流に上記シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を連結したものを意味し、第2の本発明のベクターと同様の方法で得られる。
【0199】
次に、上記形質転換植物の作製方法について簡単に説明するが、このような形質転換植物は従来公知の方法により作製することができる。
【0200】
上記形質転換植物を作出するために、第2の本発明のベクターが導入される植物としては、特に限定されないが、中でも、ポリイソプレノイドを生合成できる植物でCPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質を発現させることにより、ポリイソプレノイドの生産性の向上、ポリイソプレノイドの製造量の増大が特に期待できることから、上記植物としては、ゴム産生植物が好ましい。中でも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種のゴム産生植物であることがより好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキであることである。
【0201】
第2の本発明のベクターを植物(カルスや、培養細胞、スフェロプラスト、プロトプラストといった植物細胞を含む)に導入する方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(特開昭59−140885号公報、特開昭60−70080号公報、国際公開第94/00977号)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887号公報)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856号、特許第2517813号)等を挙げることができる。中でも、アグロバクテリウムを用いる方法(アグロバクテリウム法)を用いて第2の本発明のベクターを植物に導入して形質転換植物(形質転換植物細胞)を作製するのが好ましい。
なお更には、第2の本発明のベクターを、上記DNAを導入する方法などにより、微生物、酵母、動物細胞、昆虫細胞等の、生物体、生物体の一部、器官、組織や培養細胞、スフェロプラスト、プロトプラストなどに導入することによって、シス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドを生産することも可能である。
【0202】
以上の方法等により、上記形質転換植物(形質転換植物細胞)が得られる。なお、上記形質転換植物は、上述の方法で得られた形質転換植物細胞のみならず、その子孫又はクローン、さらにそれらを継代させて得られる子孫植物の全てを含む概念である。一旦、第2の本発明のベクターが導入された形質転換植物細胞が得られれば、該形質転換植物細胞から有性生殖、無性生殖、組織培養、細胞培養、細胞融合等により子孫又はクローンを得ることが可能である。また、該形質転換植物細胞やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、不定芽、不定胚、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該形質転換植物を量産することも可能である。
【0203】
形質転換植物細胞から植物体(形質転換植物)を再生する方法としては、例えば、ユーカリでは土肥らの方法(特願平11−127025号公報)、イネではFujimuraらの方法(Fujimuraら(1995), Plant Tissue Culture Lett.,vol.2:p74−)、トウモロコシではShillitoらの方法(Shillitoら(1989), Bio/Technology,vol.7:p581−)、ジャガイモではVisserらの方法(Visserら(1989), Theor.Appl.Genet.,vol.78:p589−)、シロイヌナズナではAkamaらの方法(Akamaら(1992), Plant Cell Rep.,vol.12:p7−)が知られており、当業者であれば、これらを参照して形質転換植物細胞から植物体を再生できる。
【0204】
再生した植物体において、周知の手法を用いることで、目的の蛋白質遺伝子の発現を確認することが出来る。例えば、目的の蛋白質の発現をウエスタンブロット解析すればよい。
【0205】
上記形質転換植物から種子を得る方法としては、例えば、形質転換植物を適当な培地において発根させ、その発根体を水分含有の土を入れたポットに移植する。適当な栽培条件下で生育させ、最終的に種子を形成させて、該種子を得る。また、種子から植物体を得る方法としては、例えば、前記のようにして得られた形質転換植物由来の種子を、水分含有の土に播種し、適当な栽培条件下で生育させることにより植物体を得ることができる。
【0206】
第2の本発明では、第2の本発明のベクターを植物に導入することにより、該ベクターに含まれるポリイソプレノイド生合成に関わる蛋白質をコードする遺伝子(特に好ましくは、CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子及びNgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子)が乳管特異的に発現し、当該植物におけるシス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドの生産量を向上させることができる。具体的には、上述の方法で得られた形質転換植物細胞、形質転換植物細胞から得られたカルス、該カルスから再分化した細胞等を適当な培地で培養したり、形質転換植物細胞から再分化した形質転換植物、該形質転換植物から得られた種子から得られた植物体等を適当な栽培条件下で生育させたりすることにより、シス型イソプレノイド、ポリイソプレノイドを製造することができる。
【0207】
このように、第2の本発明のベクターを植物に導入することにより、該植物におけるシス型イソプレノイドの生産量を向上させる方法もまた、第2の本発明の1つである。また、第2の本発明のベクターを植物に導入することにより、該植物におけるポリイソプレノイドの生産量を向上させる方法もまた、第2の本発明の1つである。
【0208】
(ゴム製品の製造方法)
第2の本発明のゴム製品の製造方法は、上記第2の本発明のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び上記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
【0209】
ゴム製品としては、第1の本発明において上述したものと同様である。
【0210】
ゴム製品が空気入りタイヤの場合、すなわち、第2の本発明のゴム製品の製造方法が第2の本発明の空気入りタイヤの製造方法の場合、上記生ゴム製品成形工程は、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程に、上記加硫工程は、上記生タイヤを加硫する加硫工程に相当する。すなわち、第2の本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上記第2の本発明のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、上記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び上記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
【0211】
<混練工程>
混練工程では、上記第2の本発明のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る。
【0212】
上記第2の本発明のベクターを植物に導入することにより得られる形質転換植物から得られるポリイソプレノイドは、上記形質転換植物からラテックスを採取し、採取したラテックスを以下の固化工程に供することにより得られる。
なお、上記形質転換植物からのラテックスの採取方法は特に制限されず、通常行われる方法を採用することができるが、例えば、植物の幹を傷つけてにじみ出る乳液を回収したり(タッピング)、根など形質転換植物の一部を切断し、切断した部分からにじみ出る乳液を回収したり、切断した組織を粉砕し、有機溶媒を用いて抽出して採取したりすることができる。
【0213】
<固化工程>
上記採取されたラテックスは、固化工程に供される。固化する方法としては、特に限定されず、エタノール、メタノール、アセトン等のポリイソプレノイド(天然ゴム)を溶解しない溶媒にラテックスを添加する方法やラテックスに酸を添加する方法等が挙げられる。固化工程を行うことにより、ラテックスからゴム(天然ゴム)を固形分として回収できる。得られたゴム(天然ゴム)は、必要に応じて乾燥してから使用すればよい。
【0214】
添加剤としては特に限定されず、ゴム製品の製造に用いられる添加剤を使用できる。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、例えば、上記ラテックスから得られたゴム以外のゴム成分、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、オイルなどの軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等が挙げられる。
【0215】
混練工程における混練は、オープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて行えばよい。
【0216】
<生ゴム製品成形工程(タイヤの場合は生タイヤ成形工程)>
生ゴム製品成形工程では、第1の本発明において上述した工程と同様である。
【0217】
<加硫工程>
加硫工程は、第1の本発明において上述した工程と同様である。
【実施例】
【0218】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0219】
(実施例1)
〔HeveaラテックスからのTotal RNA抽出〕
パラゴムノキのラテックスからホットフェノール法により、Total RNAを抽出した。ラテックス6mLに100mM酢酸ナトリウム緩衝液6mL、10%SDS溶液1mLを添加し、さらに65℃で予温しておいた水飽和フェノールを12mL添加した。65℃で5分間インキュベートしたのち、ボルテックスで撹拌し、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心後、上清を新しいチューブに移し、フェノール:クロロホルム(1:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、3M酢酸ナトリウム溶液1.2mLとイソプロパノール13mLを添加し、ボルテックスで撹拌した。Total RNAを沈殿させるために、−20℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、4℃、15000rpmで10分間遠心し、上清を取除くことでTotal RNAの沈殿を回収した。回収したTotal RNAは70%エタノールで2度洗浄したのち、RNase freeの水で溶解させた。
【0220】
〔Total RNAからcDNAの合成〕
回収したTotal RNAをもとに、cDNAを合成した。cDNAの合成はPrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara)の説明書に従って行った。
【0221】
〔cDNAからCPT、及びNgBR遺伝子の取得〕
作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT、及びNgBR遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー1:5’− tttggatccgatggaattatacaacggtgagagg−3’
プライマー2:5’− tttgcggccgcttattttaagtattccttatgtttctcc−3’
を使用した。
NgBR遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー3:5’− tttctcgagatggatttgaaacctggagctg −3’
プライマー4:5’− tttctcgagtcatgtaccataattttgctgcac −3’
を使用した。
【0222】
上述の方法により、CPT遺伝子(HRT1)、及びNgBR遺伝子(HRTBP)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。HRT1の塩基配列を配列番号1に示した。HRT1のアミノ酸配列を配列番号2に示した。また、HRTBPの塩基配列を配列番号3に示した。HRTBPのアミノ酸配列を配列番号4に示した。
【0223】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM−T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM−T Easy Vectorに挿入し、pGEM−HRT1、及びpGEM−HRTBPを作製した。
【0224】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX−galを含むLB寒天培地上で培養し、青/白スクリーニング法によって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
【0225】
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス社製)を使用した。
回収したプラスミドに挿入された遺伝子の塩基配列に変異がないことをシークエンス解析により確認した。
【0226】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpGEM−HRT1を制限酵素Bam HIとNot Iで処理したのち、同様にBam HIとNot Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS―N2に挿入し、pEU−His−N2−HRT1を作製した。
同様に、pGEM−HRTBPを制限酵素Xho Iで処理したのち、同様にXho Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−MCS−TEV−His−C1に挿入し、pEU−C1−HRTBPを作製した。
【0227】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX−galを含むLB寒天培地上で培養し、コロニーPCRによって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
【0228】
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス社製)を使用した。
【0229】
〔ゴム粒子の調製〕
ゴム粒子は、5段階の遠心分離によってHeveaラテックスから調製した。Heveaラテックス900mLに、20mMのジチオスレイトール(DTT)を含む1M Tris緩衝液(pH7.5)100mLを添加し、ラテックス溶液を調製した。得られたラテックス溶液を、1000×g、2000×g、8000×g、20000×g、50000×gの異なる遠心速度で段階的に遠心分離した。遠心分離はいずれも4℃、45分で行った。50000×gでの遠心分離で残ったゴム粒子層に、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホン酸(CHAPS)を終濃度0.1〜2.0×CMC(臨界ミセル濃度CMCの0.1〜2.0倍)になるように加え、ゴム粒子を洗浄した。洗浄処理後、洗浄されたゴム粒子を超遠心分離(40000×g、4℃、45分)によって回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0230】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0231】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0232】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
透析カップ(MWCO 12000)(Bio−Teck社製)中に、以下の量をそれぞれ添加した。WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って全量60μLで反応溶液を調整した。反応溶液にゴム粒子を1〜2mg添加した。さらに、PP容器No.2(マルエム容器)にSUB−AMIX 650μLを添加した。
透析カップをPP容器No.2にはめ、26℃で蛋白合成反応を開始した。反応開始から2度のmRNAの追加と透析外液(SUB−AMIX)の交換を行った。反応は24時間行った。透析法を行っている様子の概略図を図3に示す。
【0233】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
透析カップの溶液を新しい1.5μLチューブに移し、反応後のゴム粒子を超遠心分離(40000×g、4℃、45分)によって回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0234】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を以下の方法により測定した。
まず、50mM Tris−HCl(pH7.5)、2mM DTT、5mM MgCl、15μM ファルネシル二リン酸(FPP)、100μM 1−14Cイソペンテニル二リン酸([1−14C]IPP)(比活性:5Ci/mol)、10μL ゴム粒子溶液を混合した反応溶液(Total 100μL)を調製し、30℃で16時間反応させた。
反応後、飽和NaClを200μL加え、1mLのジエチルエーテルでイソペンテノールなどを抽出した。次に、水相のポリプレニル二リン酸を1mLの食塩水飽和BuOHで抽出し、その後さらに、水相の超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)を1mLのトルエン/ヘキサン(1:1)で抽出し、放射活性を計測した。各層の放射活性は液体シンチレーションカウンターで14Cのカウントを計測した。放射活性(dpm)が高いほど、天然ゴムが多く生産されており、ゴム合成活性が高いことを示す。
結果を表1に示す。
【0235】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を下記の条件でRadio HPLCにより測定した。結果を図4の(a)に示す。
HPLCシステム:GILSON社製
カラム:TOSOH社製のTSKguardcolumn MP(XL),TSKgel Multipore HXL−M(2本)
カラム温度:40℃
溶媒:Merck社製のTHF
流速:1ml/分
UV検出:215nm
RI検出:Ramona Star(Raytest GmbH)
【0236】
(比較例1)
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0237】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS−N2を鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0238】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0239】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0240】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0241】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
結果を表1に示す。
【0242】
(比較例2)
無細胞蛋白合成において、実施例1の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したpEU−C1−HRTBPを鋳型に用いた以外は実施例1と同様にして行い、回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
結果を表1に示す。
【0243】
(実施例2)
〔レタス(Lactuca sativa)CPT、及びNgBR遺伝子の合成〕
レタス(Lactuca sativa)CPT遺伝子(LsCPT3)、及びNgBR遺伝子(LsCPTL2)はBLASTに公開されている情報をもとに、開始コドンから終始コドンまでの領域をジェンスクリプトジャパン株式会社の遺伝子合成サービスをもとに合成して作成した。後述する無細胞蛋白合成法用ベクターにクローニングするため、LsCPT3の5′末端側にはXho Iサイトを3′末端側にはKpn Iサイトを付加し、また、LsCPTL2の5′末端側にはEcoRVサイトを3′末端側にはXho Iサイトを付加した。
【0244】
上述の方法により、CPT遺伝子(LsCPT3)、及びNgBR遺伝子(LsCPTL2)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。LsCPT3の塩基配列を配列番号13に示した。LsCPT3のアミノ酸配列を配列番号14に示した。また、LsCPTL2の塩基配列を配列番号15に示した。LsCPTL2のアミノ酸配列を配列番号16に示した。
【0245】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片は、pUC57に挿入し、pUC57−LsCPT3及びpUC57−LsCPTL2を作製した。
【0246】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0247】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0248】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpUC57−LsCPT3を制限酵素Xho IとKpn Iで処理したのち、同様にXho IとKpn Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS―N2に挿入し、pEU−His−N2−LsCPT3を作製した。
同様に、pUC57−LsCPTL2を制限酵素EcoRVとXho Iで処理したのち、同様にEcoRVとXho Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−MCS−TEV−His−C1に挿入し、pEU−C1−LsCPTL2を作製した。
【0249】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0250】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0251】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0252】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0253】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0254】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0255】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0256】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0257】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(a)に示す。
【0258】
(実施例3)
〔シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)からのTotal RNA抽出〕
シロイヌナズナからホットフェノール法により、Total RNAを抽出した。実生を液体窒素で凍結後、乳鉢で破砕した後、80℃の水飽和フェノール、80℃のRNA抽出バッファー(100mM LiCl、100mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、1%SDS)をそれぞれ400μLずつ加え30秒間ボルテックスした。さらにクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を400μL加え30秒間ボルテックスした。4℃、15,000rpmで15分間遠心分離し、上層を回収した。4M LiClを500μL加え混合し、−80℃で1時間静置した。4℃、15,000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去後に得られた沈殿を400μLのDEPC処理水に溶解した。エタノールを880μL、3M NaOAcを40μL加え混合した。4℃、15,000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去後に得られた沈殿を300μLの70%エタノールで洗浄した。4℃、15,000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去後に得られた沈殿を30μLのDEPC処理水に溶解した。抽出したTotal RNAから混入したゲノムDNAを除去するため、DNase処理を行った。DNase処理にはDNase I(TaKaRa社製)もしくはDNase I recombinant,RNase−free(Roche社製)を使用した。いずれの場合もメーカー推奨の条件に従い50μLの反応溶液を調製し、37℃で30分間インキュベートした。反応後にDEPC処理水を350μLとフェノールを400μL加え混合し、室温、15,000rpmで15分間遠心分離した。上層を回収し、エタノールを880μL、3M NaOAcを40μL加え混合した。4℃、15,000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去後に得られた沈殿を300μLの70%エタノールで洗浄した。4℃、15,000rpmで遠心分離し、上清を除去後に得られた沈殿を50μLのDEPC処理水に溶解した。
【0259】
〔Total RNAからcDNAの合成〕
実施例1と同様にして行った。
【0260】
〔cDNAからCPT、及びNgBR遺伝子の取得〕
作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT、及びNgBR遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、55〜60℃で15秒、68℃で30秒を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー5:5’− ctaggatccgagatgaataccctagaag −3’
プライマー6:5’− aacggatccaactatctaatcgagc −3’
NgBR遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー7:5’− cgggatccatggattcgaatcaatcgatgcggctcctc −3’
プライマー8:5’− gcggatccaattgggaacagtagtggctgcactgactc −3’
を使用した。
【0261】
〔ベクターの構築〕
上述の方法により、CPT遺伝子(AtCPT8)、及びNgBR遺伝子(AtLEW1)が得られた。得られた遺伝子について、制限酵素BamH Iで処理したのち、同様にBamH Iで制限酵素処理したpBluescript IISK(−)に挿入し、pBS−AtCPT8及びpBS−AtLEW1を作製した。
【0262】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0263】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0264】
得られたプラスミド内の各遺伝子の配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。AtCPT8の塩基配列を配列番号21に示した。AtCPT8のアミノ酸配列を配列番号22に示した。また、AtLEW1の塩基配列を配列番号23に示した。AtLEW1のアミノ酸配列を配列番号24に示した。
【0265】
上記取得したpBS−AtCPT8及びpBS−AtLEW1を鋳型にCPT、及びNgBR遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、55〜60℃で15秒、68℃で30秒を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー23:5’− tatcccgggatgaatacc −3’
プライマー24:5’− tgaactagtctaatcgagctttttc −3’
を使用した。
NgBR遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー25:5’− acccgggatggattcg −3’
プライマー26:5’− cgcggactagtttaagttccatag −3’
を使用した。
【0266】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上述の方法により得られた遺伝子について、制限酵素Xma IとSpe Iで処理したのち、同様にXma IとSpe Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS―N2に挿入し、pEU−His−N2−AtCPT8、pEU−His−N2−AtLEW1を作製した。
【0267】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0268】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0269】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0270】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0271】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0272】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0273】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0274】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0275】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(a)に示す。
【0276】
【表1】
【0277】
表1より、CPTファミリー蛋白質、及びNgBRファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させることにより、それぞれを単独でゴム粒子に結合された場合に比べて、ゴム粒子のゴム合成能力を顕著に増強させることができることが分かる。更に、ゴム粒子にNgBRを単独で結合させた比較例2では、何も結合させなかった比較例1に比べてゴム合成活性が抑制されているように、CPTファミリー蛋白質、NgBRファミリー蛋白質の組合せによる効果は、それぞれの単独の効果を足し合わせた以上の相乗効果といえ、CPTファミリー蛋白質とNgBRファミリー蛋白質という特定の組合せとすることによって初めてゴム粒子のゴム合成能力を顕著に増強することができるという効果は、当業者であっても予測することのできない効果である。
【0278】
また、図4の(a)より、実施例1〜3において合成される天然ゴムは、同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。なお、図4の結果は、サンプル間で規格化されていないため、ピークの高さで活性を比較することはできないものである。
【0279】
(実施例4)
〔cDNAからREF遺伝子の取得〕
実施例1の〔Total RNAからcDNAの合成〕で作製した1st strand cDNAを鋳型にREF遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
REF遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー9:5’− tttctcgagatggctgaagacgaagac −3’
プライマー10:5’− tttggatcctcaattctctccataaaac −3’
を使用した。
【0280】
上述の方法により、REF遺伝子が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。REFの塩基配列を配列番号27に示した。REFのアミノ酸配列を配列番号28に示した。
【0281】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM−T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM−T Easy Vectorに挿入し、pGEM−REFを作製した。
【0282】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0283】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0284】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpGEM−REFを制限酵素Xho IとBam HIで処理したのち、同様にXho IとBam HIで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−MCS−TEV−His−C1に挿入し、pEU−C1−REFを作製した。
【0285】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0286】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0287】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0288】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−REF、並びに、実施例1の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−HRT1及びpEU−C1−HRTBPを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0289】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0290】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0291】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0292】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0293】
(実施例5)
〔cDNAからCPT遺伝子の取得〕
実施例1の〔Total RNAからcDNAの合成〕で作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー11:5’− tttggatccgatggaattatacaacggtgagagg−3’
プライマー12:5’− tttgcggccgcttattttaagtattccttatgtttctcc−3’
を使用した。
【0294】
上述の方法により、CPT遺伝子(HRT2)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。HRT2の塩基配列を配列番号31に示した。HRT2のアミノ酸配列を配列番号32に示した。
【0295】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM−T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM−T Easy Vectorに挿入し、pGEM−HRT2を作製した。
【0296】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0297】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0298】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpGEM−HRT2を制限酵素Bam HIとNot Iで処理したのち、同様にBam HIとNot Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS−N2に挿入し、pEU−His−N2−HRT2を作製した。
【0299】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0300】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0301】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0302】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−HRT2、実施例1の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−HRTBP、及び、実施例4の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−REFを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0303】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0304】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0305】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0306】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0307】
(実施例6)
〔cDNAからCPT遺伝子の取得〕
実施例1の〔Total RNAからcDNAの合成〕で作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー13:5’− atacccgggatggaaatatatac −3’
プライマー14:5’− actcccgggttattttaaatattc −3’
を使用した。
【0308】
上述の方法により、CPT遺伝子(CPT3)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。CPT3の塩基配列を配列番号35に示した。CPT3のアミノ酸配列を配列番号36に示した。
【0309】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM−T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM−T Easy Vectorに挿入し、pGEM−CPT3を作製した。
【0310】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0311】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0312】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpGEM−CPT3を制限酵素Xma Iで処理したのち、同様にXma Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS−N2に挿入し、pEU−His−N2−CPT3を作製した。
【0313】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0314】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0315】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0316】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−CPT3、実施例1の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−HRTBP、及び、実施例4の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−REFを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0317】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0318】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0319】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0320】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0321】
(実施例7)
〔cDNAからCPT遺伝子の取得〕
実施例1の〔Total RNAからcDNAの合成〕で作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー15:5’− tatcccgggatggaaata −3’
プライマー16:5’− atacccgggttacaactgc −3’
を使用した。
【0322】
上述の方法により、CPT遺伝子(CPT5)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。CPT5の塩基配列を配列番号40に示した。CPT5のアミノ酸配列を配列番号41に示した。
【0323】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM−T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM−T Easy Vectorに挿入し、pGEM−CPT5を作製した。
【0324】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0325】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0326】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpGEM−CPT5を制限酵素Xma Iで処理したのち、同様にXma Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS−N2に挿入し、pEU−His−N2−CPT5を作製した。
【0327】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0328】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0329】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0330】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−CPT5、実施例1の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−HRTBP、及び、実施例4の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−C1−REFを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0331】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0332】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0333】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0334】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0335】
(参考例1)
〔Taraxacum brevicorniculatum CPT遺伝子の合成〕
Taraxacum brevicorniculatum CPT遺伝子(TbCPT1)はBLASTに公開されている情報をもとに、開始コドンから終始コドンまでの領域をジェンスクリプトジャパン株式会社の遺伝子合成サービスをもとに合成して作成した。後述する無細胞蛋白合成法用ベクターにクローニングするため、TbCPT1の5′末端側にはXho Iサイトを3′末端側にはKpn Iサイトを付加した。
【0336】
上述の方法により、CPT遺伝子(TbCPT1)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。TbCPT1の塩基配列を配列番号42に示した。TbCPT1のアミノ酸配列を配列番号43に示した。
【0337】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片は、pUC57に挿入し、pUC57−TbCPT1を作製した。
【0338】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0339】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0340】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpUC57−TbCPT1を制限酵素Xho IとKpn Iで処理したのち、同様にXho IとKpn Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS―N2に挿入し、pEU−His−N2−TbCPT1を作製した。
【0341】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0342】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0343】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0344】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0345】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0346】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0347】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0348】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0349】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(b)に示す。図4の(b)より、参考例1において合成される天然ゴムは、実施例1〜3において合成される天然ゴムと同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。
【0350】
これらの結果から、更にNgBRファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させ、TbCPT1蛋白質とNgBRファミリー蛋白質とをゴム粒子に結合させると、ゴム粒子上でのTbCPT1蛋白質の活性が安定化、増強され、結果、ゴム粒子のゴム合成能力が増強されることが強く示唆される。
【0351】
(参考例2)
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0352】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。実施例5の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−HRT2を鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0353】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0354】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0355】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0356】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0357】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(b)に示す。図4の(b)より、参考例2において合成される天然ゴムは、実施例1〜3において合成される天然ゴムと同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。
この結果から、更にNgBRファミリー蛋白質及びREFをゴム粒子に結合させた実施例5においても、分子量分布パターンとして同等の天然ゴムが合成されていることが強く示唆される。
【0358】
(参考例3)
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0359】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。実施例6の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−CPT3を鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0360】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0361】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0362】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0363】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0364】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(b)に示す。図4の(b)より、参考例3において合成される天然ゴムは、実施例1〜3において合成される天然ゴムと同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。
この結果から、更にNgBRファミリー蛋白質及びREFをゴム粒子に結合させた実施例6においても、分子量分布パターンとして同等の天然ゴムが合成されていることが強く示唆される。
【0365】
(参考例4)
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0366】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。実施例7の〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターpEU−His−N2−CPT5を鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0367】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0368】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0369】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0370】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。
測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0371】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(b)に示す。図4の(b)より、参考例4において合成される天然ゴムは、実施例1〜3において合成される天然ゴムと同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。
この結果から、更にNgBRファミリー蛋白質及びREFをゴム粒子に結合させた実施例7においても、分子量分布パターンとして同等の天然ゴムが合成されていることが強く示唆される。
【0372】
(参考例5)
〔ヒト(Homo sapiens)CPT遺伝子の合成〕
ヒト(Homo sapiens)CPT遺伝子(HDS)はBLASTに公開されている情報をもとに、開始コドンから終始コドンまでの領域をジェンスクリプトジャパン株式会社の遺伝子合成サービスをもとに合成して作成した。後述する無細胞蛋白合成法用ベクターにクローニングするため、HDSの5′末端側にはXmaIサイトを3′末端側にはSpeIサイトを付加した。
【0373】
上述の方法により、CPT遺伝子(HDS)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。HDSの塩基配列を配列番号64に示した。HDSのアミノ酸配列を配列番号50に示した。
【0374】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片は、pUC57に挿入し、pUC57−HDSを作製した。
【0375】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0376】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0377】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpUC57−HDSを制限酵素XmaIとSpeIで処理したのち、同様にXmaIとSpeIで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS―N2に挿入し、pEU−His−N2−HDSを作製した。
【0378】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0379】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0380】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0381】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0382】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0383】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0384】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0385】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。ただし、反応時間を16時間から4時間に変更した。測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0386】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(c)に示す。図4の(c)より、参考例5において合成される天然ゴムは、実施例1〜3において合成される天然ゴムと同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。
【0387】
これらの結果から、更にNgBRファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させ、HDS蛋白質とNgBRファミリー蛋白質とをゴム粒子に結合させると、ゴム粒子上でのHDS蛋白質の活性が安定化、増強され、結果、ゴム粒子のゴム合成能力が増強されることが強く示唆される。
【0388】
(参考例6)
〔酵母(Saccharomyces cerevisiae)CPT遺伝子の合成〕
酵母(Saccharomyces cerevisiae)CPT遺伝子(SRT1)はBLASTに公開されている情報をもとに、開始コドンから終始コドンまでの領域をジェンスクリプトジャパン株式会社の遺伝子合成サービスをもとに合成して作成した。後述する無細胞蛋白合成法用ベクターにクローニングするため、SRT1の5′末端側にはXmaIサイトを3′末端側にはSpeIサイトを付加した。
【0389】
上述の方法により、CPT遺伝子(SRT1)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。SRT1の塩基配列を配列番号63に示した。SRT1のアミノ酸配列を配列番号47に示した。
【0390】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片は、pUC57に挿入し、pUC57−SRT1を作製した。
【0391】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0392】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0393】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpUC57−SRT1を制限酵素XmaIとSpeIで処理したのち、同様にXmaIとSpeIで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU−E01−His−TEV−MCS―N2に挿入し、pEU−His−N2−SRT1を作製した。
【0394】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0395】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0396】
〔ゴム粒子の調製〕
実施例1と同様にして行った。
【0397】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP1 mRNAの転写反応)〕
無細胞蛋白合成は、WEPRO7240H Expression kit((株)セルフリーサイエンス製)を使用して行った。上記〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕で獲得したベクターを鋳型に、WEPRO7240H Expression kitのプロトコルに従って、mRNAの転写反応を行った。
【0398】
〔mRNAの精製〕
転写反応後、得られたmRNAはエタノール沈殿により精製した。
【0399】
〔無細胞蛋白合成反応(STEP2 透析法による蛋白合成)〕
上記mRNAを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0400】
〔反応後のゴム粒子の回収〕
実施例1と同様にして反応後のゴム粒子を回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0401】
〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕
回収した反応後のゴム粒子のゴム合成活性を、実施例1と同様にして測定した。ただし、反応時間を16時間から4時間に変更した。測定の結果、天然ゴムが合成されており、回収した反応後のゴム粒子がゴム合成活性を有していることが確認された。
【0402】
〔合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布測定〕
上記〔反応後のゴム粒子のゴム合成活性の測定〕で合成した超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の分子量分布を、実施例1と同様にして測定した。結果を図4の(c)に示す。図4の(c)より、参考例6において合成される天然ゴムは、実施例1〜3において合成される天然ゴムと同程度のGPC溶出時間のところにピークトップがきており、分子量分布パターンとして同等といえる天然ゴムが合成されているといえる。
【0403】
これらの結果から、更にNgBRファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させ、SRT1蛋白質とNgBRファミリー蛋白質とをゴム粒子に結合させると、ゴム粒子上でのSRT1蛋白質の活性が安定化、増強され、結果、ゴム粒子のゴム合成能力が増強されることが強く示唆される。
【0404】
<酵母に導入した場合のCPTファミリー蛋白質のゴム合成能>
(参考例7)
〔酵母発現用遺伝子の取得〕
実施例1、5で得たpGEM−HRT1、pGEM−HRT2を鋳型に以下のプライマーを用いてPCRを行い、酵母発現用ベクターpJR1133にクローニングできるよう、5′末端側、3′末端側の制限酵素を共にBam HIとした、HRT1、HRT2遺伝子を得た。
HRT1及びHRT2用のプライマーとしては、
プライマー17:5’− ttaggatccatggaattatacaacgg−3’
プライマー18:5’− aacggatccttttaagtattccttatg−3’
を使用した。
【0405】
また、実施例3で得たpBS−AtCPT8を制限酵素Bam HIで処理することで、5′末端側、3′末端側の制限酵素を共にBam HIとしたAtCPT8遺伝子を得た。
【0406】
また、実施例1、3で得たpGEM−HRTBP、pBS−AtLEW1を鋳型に以下のプライマーを用いてPCRを行い、酵母発現用ベクターpGK415及びpGK425にそれぞれクローニングできるよう、5′末端側、3′末端側の制限酵素を共にXho IとしたHRTBP、5′末端側の制限酵素をSal I、3′末端側の制限酵素をBam HIとしたAtLEW1遺伝子を得た。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO社製)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
HRTBP用のプライマーとしては、
プライマー19:5’− tttctcgagatggatttgaaacctggagctg−3’
プライマー20:5’− tttctcgagtcatgtaccataattttgctgcac−3’
を使用した。
AtLEW1用のプライマーとしては、
プライマー21:5’− gtcgacatggattcgaatcaatcg −3’
プライマー22:5’− ggatccttaagttccatagttttgg −3’
を使用した。
【0407】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM−T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM−T Easy Vectorに挿入し、pGEM−HRT1(pJR1133用)、pGEM−HRT2(pJR1133用)、pGEM−AtCPT8(pJR1133用)、pGEM−HRTBP(pGK425用)、pGEM−AtLEW1(pGK425用)を作製した。
【0408】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、実施例1と同様にして行った。
【0409】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0410】
〔酵母発現用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得した各pGEM−CPTシリーズを制限酵素Bam HIで処理したのち、同様にBam HIで制限酵素処理した酵母発現用ベクターpJR1133に挿入し、pJR1133−HRT1、pJR1133−HRT2、pJR1133−AtCPT8を作製した。
【0411】
同様に上記〔ベクターの構築〕で獲得した各pGEM−NgBRシリーズを制限酵素Xho Iで処理したのち、Sal Iで制限酵素処理した酵母発現用ベクターpGK425に挿入し、pGK425−HRTBP、pGK425−AtLEW1を作製した。
【0412】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて、大腸菌DH5αを形質転換し、共にAmpを含むLB培地で培養した。
【0413】
〔プラスミドの抽出〕
実施例1と同様にして行った。
【0414】
〔酵母の形質転換〕
上記で得たプラスミドを用いて、以下の組合せで酵母SNH23−7D(MAT−α rer2−2 mf−1::ADE2 mf−2::TRP1 bar1::HIS3 ade2 trp1 his3 leu2 ura3 lys2)に形質転換した。
(1)pJR1133−HRT1&pGK425−HRTBP
(2)pJR1133−HRT2&pGK425−HRTBP
(3)pJR1133−AtCPT8&pGK425−AtLEW1
形質転換した酵母はウラシル(pJR1133セレクション用)とロイシン(pGK425セレクション用)を抜いたSD寒天培地で培養し、形質転換体を得た。
【0415】
〔酵素発現〕
上記形質転換で得られた各酵母を50mLのSC(+Lys)培地に加え、23℃、180rpmで振盪培養した。OD546=0.8に達したところで、45mLの菌液を50mLサンプリングチューブに回収した。5000×gで10分遠心後、上清を捨て、−80℃で冷凍保存した。
なお、SC(+Lys)培地の組成は以下のとおりである。
硫安:5.0g
Yeast Nitrogen Base w/o Amino acids:1.7g
Lysine HCl:30mg
Glucose:20g
滅菌水:1Lまで
【0416】
[粗酵素溶液の調製]
冷凍保存していたサンプルを氷上で溶かし、100μLのZymolyase bufferに懸濁し、23℃で15分静置した。遠心して上清を除去し、Zymolyase 100Tを2mg/mLで加えたZymolyase bufferを300μL加え、30℃、40分酵素反応させスフェロプラスト化した。遠心して上清を除去し、300μLのZymolyase bufferに懸濁した。遠心して上清を除去し、菌体をBreakage Bufferに懸濁した後、0.5mm Glass Beadsを用いて、30秒ボルテックス→30秒氷上のサイクルを3回繰り返し、細胞を破砕した。300×g、5分で遠心し未破砕細胞を除き、上清を回収した。この上清を17400×gで遠心することで、上清とペレットに分けた。ペレットをBreakage Bufferで懸濁したものを不溶性画分の粗酵素溶液とした。Zymolyase buffer、Breakage Bufferの組成は以下のとおりである。
【0417】
Zymolyase buffer:
Tris−HCl(pH 7.5) 50mM
MgCl 10mM
ソルビトール 1M
DTT 1x
【0418】
Breakage Buffer:
Tris−HCl(pH 8.0) 100mM
NaCl 150mM
DTT 1mM
Protease Inhibitor Cocktail(nacalai tesque) 1x
【0419】
〔ゴム合成活性の測定(逆相TLCによる反応生成物の分析(ポリプレニル二リン酸))〕
回収した粗酵素溶液中のゴム合成活性を以下の方法により測定した。
まず、Potassium Phosphate Buffer(pH 7.5)25mM、β−メルカプトエタノール 25mM、KF 20mM、MgCl 4mM、ファルネシル二リン酸(FPP) 10μM、1−14Cイソペンテニル二リン酸([1−14C]IPP)(比活性:60Ci/mol)50μM、粗酵素溶液 50μgを混合した反応溶液(Total 100μL)を調製し、30℃で20時間反応させた。
【0420】
飽和食塩水200μLを加えて反応を停止し、ジエチルエーテルを1mL加えてボルテックスした。15000rpmで1分間遠心した後に上層(エーテル層)を別のチューブに回収した。水層に水飽和ブタノール1mLを加えて攪拌し、その後15000rpmで1分間遠心分離して上層(ブタノール層)を回収することで、酵素反応生成物を抽出した。
【0421】
上記ブタノール層を水で洗浄した後、遠心エバポレーターを用いて溶媒を留去し、反応生成物を濃縮した。濃縮した反応生成物は以下に示す反応組成で37℃、12時間反応させることで脱リン酸化させ、対応するポリプレノールにした。
反応組成(Total 100mL):
Acetate buffer(pH 5.6) 40mM
Triton X−100 0.1%(v/v)
メタノール 40%(v/v)
ブタノール層(反応生成物) 20%(v/v)
Potato acid phosphatase(Roche) 10U
【0422】
5M NaOHを120μL加えることで反応を停止させるとともに、37℃で30分間加水分解反応を行った。ペンタンを0.7mL加えて攪拌し、ポリプレノールをペンタン層に抽出させた。15000rpmで1分間遠心分離して上層(ペンタン層)を回収し、逆相TLCプレート(LKC−18、Whatman社製)を用いて生成物を展開した。展開溶媒はアセトン/水(39:1)とした。14C標識放射性物質を含むインクでOriginとSolvent Frontの位置をマークし、Typhoon FLA 7000(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)によるオートラジオグラフィーを行い、放射性反応生成物のスポットの位置を標準物質の位置と比較することで生成物の鎖長を分析した。
結果、上記(1)〜(3)のいずれのプラスミドを用いた場合にも、炭素数90程度のイソプレン重合体が合成されていることが確認された。
【0423】
<大腸菌に導入した場合のCPTファミリー蛋白質のゴム合成能>
(参考例8)
〔大腸菌の形質転換〕
実施例1、3、5で得たpGEM−HRT1、pBS−AtCPT8、pGEM−HRT2、及び、実施例1、3で得たpGEM−HRTBP、pBS−AtLEW1を用いて当該各遺伝子をpCOLADuet1ベクターにそれぞれ導入し、それらベクターを用いて以下の組み合わせとなるよう大腸菌BL21(DE3)の形質転換を行った。
(1)HRT1−HRTBP
(2)HRT2−HRTBP
(3)AtCPT8−AtLEW1
【0424】
〔大腸菌内でのゴム合成活性の測定〕
上記〔大腸菌の形質転換〕で得た形質転換された大腸菌を用いて、参考例7と同様にして、ゴム合成活性の測定を行った。結果、上記(1)〜(3)のいずれのプラスミドを用いた場合にも、反応生成物が少なく、検出することができなかった。
【0425】
参考例7〜8のように、パラゴムノキ、又はシロイヌナズナ由来のCPTファミリー蛋白質(HRT1、HRT2、AtCPT8)を大腸菌に導入した場合には、反応生成物を確認することができなかった。次に、上記CPTファミリー蛋白質を酵母に導入した場合には、イソプレン重合体の合成が確認されたが、その鎖長は炭素数90程度であった。
【0426】
これに対して、実施例1〜7、参考例1、5、6のように、上記CPTファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させてゴム合成活性を測定すると、いずれのCPTファミリー蛋白質を用いた場合にも超長鎖ポリイソプレノイド(天然ゴム)の合成が見られた。すなわち、ゴム産生植物由来であって、乳管で発現しているといわれているCPTファミリー蛋白質(HRT1、HRT2、CPT3、CPT5、LsCPT3、TbCPT1)だけでなく、ゴム産生植物ではないシロイヌナズナ由来のAtCPT8、酵母由来のSRT1、ヒト由来のHDSを用いた場合であっても、ゴム粒子に結合させると天然ゴムを合成することが可能であった。
【0427】
これらの結果から、CPTファミリー蛋白質の由来や種類よりも、どのような宿主に導入したのか、すなわち、CPTファミリー蛋白質をどのような環境下に発現させたのかが、ゴム合成活性においては重要である、ということが示唆された。
【0428】
上記内容から、本発明者らは、次のようなメカニズムを予想している。
すなわち、CPTファミリー蛋白質が合成する生成物が蓄積される場の、疎水度及びスペース(空間的広さ)が、合成される生成物の鎖長を決定している、と考えている。
【0429】
具体的には、大腸菌のような原核生物中では、CPTファミリー蛋白質は反応生成物を確認できない程度の活性しか示さないか、活性を示し生成物を合成できたとしても、CPTファミリー蛋白質の疎水性クレフト構造内に収容可能な程度の大きさまでしか生成物の鎖長は延びない。
【0430】
また、酵母のような真核生物中では、CPTファミリー蛋白質が合成した生成物はCPTファミリー蛋白質の疎水性クレフト構造から細胞中の脂質二重膜内(例えば、小胞体膜間など)へ移行し、脂質二重膜内に蓄積されることになり、当該環境は疎水性環境であるが、細胞中の脂質二重膜内というスペースとしてはあまり広くないところに蓄積されることから生成物の鎖長の伸長には限度がある(このようにして合成されたのが、上述した炭素数が90程度の鎖長のイソプレン重合体と考えられる)。
【0431】
また、シロイヌナズナのようなゴム産生植物でない植物中でも、酵母のときと同様に、CPTファミリー蛋白質が合成した生成物は、細胞中の脂質二重膜内というスペースとしてはあまり広くないところに蓄積され、やはり合成される生成物の鎖長の伸長には限度があると考えられる。
【0432】
これに対して、CPTファミリー蛋白質をゴム粒子に結合させた場合には、図1に示したように、CPTファミリー蛋白質が合成した生成物はゴム粒子中に蓄積されることになり、当該環境は疎水性環境であり、かつ、スペースとしても細胞中の脂質二重膜内よりもずっと広いことから、疎水性環境であり、かつ、スペースの制約も少ないため、生成物の鎖長は充分に延びることができ、超長鎖のポリイソプレノイド(天然ゴム)を合成できる。
【0433】
これらのことから、CPTファミリー蛋白質であれば、その由来、種類等に関わらず、NgBRファミリー蛋白質と共にゴム粒子に結合させることで、ゴム粒子のゴム合成能力を増強させることができ、本発明の効果を得ることができることが強く示唆される。
【0434】
<in silicoによるCPTファミリー蛋白質の保存領域の推定>
図5で示される種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行い、保存性の高い配列部分(保存領域)を検索した。保存領域周辺のアライメントの結果を図5に示す。
なお、マルチプルシーケンスアライメントは、Genetyx Ver.11と呼ばれるソフトを用いて行った。
【0435】
図5中、UDP pyrophosphate synthase (Escherichia coli CPT)は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)の7位から125位を抜粋したものである。
UDP(Micrococcus luteus B−P 26 CPT)は、配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)の11位から129位を抜粋したものである。
SRT1(Yeast CPT)は、配列番号47で示される酵母由来のSRT1の57位から175位を抜粋したものである。
AtCPT5(Arabidopsis thaliana CPT5)は、配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5の61位から179位を抜粋したものである。
AtCPT8(Arabidopsis thaliana CPT8)は、配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8の25位から142位を抜粋したものである。
DDPS(Nicotiana sylvestris CPT)は、配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSの24位から140位を抜粋したものである。
HbCPT1(Hevea brasiliensis CPT)は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1の23位から139位を抜粋したものである。
HbCPT2(Hevea brasiliensis CPT)は、配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2の23位から139位を抜粋したものである。
HbCPT3(Hevea brasiliensis CPT)は、配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3の23位から139位を抜粋したものである。
HbCPT4(Hevea brasiliensis CPT)は、配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4の24位から140位を抜粋したものである。
HbCPT5(Hevea brasiliensis CPT)は、配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5の23位から139位を抜粋したものである。
LsCPT3(Lactuca sativa CPT)は、配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3の40位から156位を抜粋したものである。
TbCPT1(Taraxacum brevicorniculatum CPT)は、配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1の40位から154位を抜粋したものである。
DDPS(Mouse CPT)は、配列番号49で示されるマウス由来のDDPSの16位から132位を抜粋したものである。
HDS(Human CPT)は、配列番号50で示されるヒト由来のHDSの16位から132位を抜粋したものである。
【0436】
Shota Endo et.al.,Biochimica et Biophysica Acta,No.1625(2003)p.291−295や、Masahiro Fujihashi et.al.,PNAS,Vol.98,No.8(2001)p.4337−4342等の文献から、図5中の囲みA(配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1においては、41位から49位に相当)、囲みB(配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1においては、81位から97位に相当)が種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質で保存性の高い保存領域の一部であり、特に、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位に相当する位置はアスパラギン酸残基が保存され(図5中の(1))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位に相当する位置はグリシン残基が保存され(図5中の(2))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位に相当する位置はアルギニン残基が保存され(図5中の(3))、パラゴムノキ由来のHRT1における89位に相当する位置はアスパラギン残基が保存されており(図5中の(4))、これらのアミノ酸が、CPTファミリー蛋白質の酵素反応に必須のアミノ酸であり、当該位置にこれらのアミノ酸を有する蛋白質であればCPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられる。
【0437】
図5から、以下のことが分かる。
配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において41位から49位に相当する囲みAの保存領域は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では25位から33位に相当し、
配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では29位から37位に相当し、
配列番号47で示される酵母由来SRT1では75位から83位に相当し、
配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では79位から87位に相当し、
配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では43位から51位に相当し、
配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは42位から50位に相当し、
配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では41位から49位に相当し、
配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では41位から49位に相当し、
配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では42位から50位に相当し、
配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では41位から49位に相当し、
配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では58位から66位に相当し、
配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では58位から66位に相当し、
配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは34位から42位に相当し、
配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは34位から42位に相当する。
【0438】
配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において81位から97位に相当する囲みBの保存領域は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では65位から81位に相当し、
配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では69位から85位に相当し、
配列番号47で示される酵母由来SRT1では115位から131位に相当し、
配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では119位から135位に相当し、
配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では84位から100位に相当し、
配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは82位から98位に相当し、
配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では81位から97位に相当し、
配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では81位から97位に相当し、
配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では82位から98位に相当し、
配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では81位から97位に相当し、
配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では98位から114位に相当し、
配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では98位から114位に相当し、
配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは74位から90位に相当し、
配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは74位から90位に相当する。
【0439】
配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において41位に相当するアスパラギン酸残基(1)は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では25位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では29位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号47で示される酵母由来のSRT1では75位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では79位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では43位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは42位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では41位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では41位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では42位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では41位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では58位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では58位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは34位のアスパラギン酸残基に相当し、
配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは34位のアスパラギン酸残基に相当する。
【0440】
配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において42位に相当するグリシン残基(2)は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では26位のグリシン残基に相当し、
配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では30位のグリシン残基に相当し、
配列番号47で示される酵母由来のSRT1では76位のグリシン残基に相当し、
配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では80位のグリシン残基に相当し、
配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では44位のグリシン残基に相当し、
配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは43位のグリシン残基に相当し、
配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では42位のグリシン残基に相当し、
配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では42位のグリシン残基に相当し、
配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では43位のグリシン残基に相当し、
配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では42位のグリシン残基に相当し、
配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では59位のグリシン残基に相当し、
配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では59位のグリシン残基に相当し、
配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは35位のグリシン残基に相当し、
配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは35位のグリシン残基に相当する。
【0441】
配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において45位に相当するアルギニン残基(3)は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では29位のアルギニン残基に相当し、
配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では33位のアルギニン残基に相当し、
配列番号47で示される酵母由来のSRT1では79位のアルギニン残基に相当し、
配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では83位のアルギニン残基に相当し、
配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では47位のアルギニン残基に相当し、
配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは46位のアルギニン残基に相当し、
配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では45位のアルギニン残基に相当し、
配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では45位のアルギニン残基に相当し、
配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では46位のアルギニン残基に相当し、
配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では45位のアルギニン残基に相当し、
配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では62位のアルギニン残基に相当し、
配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では62位のアルギニン残基に相当し、
配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは38位のアルギニン残基に相当し、
配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは38位のアルギニン残基に相当する。
【0442】
配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において89位に相当するアスパラギン残基(4)は、配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では73位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では77位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号47で示される酵母由来のSRT1では123位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では127位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では92位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは90位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では89位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では89位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では90位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では89位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では106位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では106位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは82位のアスパラギン残基に相当し、
配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは82位のアスパラギン残基に相当する。
【0443】
(配列表フリーテキスト)
配列番号1:パラゴムノキ由来のHRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号2:パラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列
配列番号3:パラゴムノキ由来のHRTBPをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号4:パラゴムノキ由来のHRTBPのアミノ酸配列
配列番号5:プライマー1
配列番号6:プライマー2
配列番号7:プライマー3
配列番号8:プライマー4
配列番号9:パラゴムノキ由来のRubber Elongation Factorをコードする遺伝子のプロモーターの塩基配列
配列番号10:パラゴムノキ由来のSmall Rubber ParticleProteinをコードする遺伝子のプロモーターの塩基配列
配列番号11:パラゴムノキ由来のHevien2.1をコードする遺伝子のプロモーターの塩基配列
配列番号12:パラゴムノキ由来のMYC1 transcription factorをコードする遺伝子のプロモーターの塩基配列
配列番号13:レタス由来のLsCPT3をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号14:レタス由来のLsCPT3のアミノ酸配列
配列番号15:レタス由来のLsCPTL2をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号16:レタス由来のLsCPTL2のアミノ酸配列
配列番号17:プライマー5
配列番号18:プライマー6
配列番号19:プライマー7
配列番号20:プライマー8
配列番号21:シロイヌナズナ由来のAtCPT8をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号22:シロイヌナズナ由来のAtCPT8のアミノ酸配列
配列番号23:シロイヌナズナ由来のAtLEW1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号24:シロイヌナズナ由来のAtLEW1のアミノ酸配列
配列番号25:プライマー9
配列番号26:プライマー10
配列番号27:パラゴムノキ由来のREFをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号28:パラゴムノキ由来のREFのアミノ酸配列
配列番号29:プライマー11
配列番号30:プライマー12
配列番号31:パラゴムノキ由来のHRT2をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号32:パラゴムノキ由来のHRT2のアミノ酸配列
配列番号33:プライマー13
配列番号34:プライマー14
配列番号35:パラゴムノキ由来のCPT3をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号36:パラゴムノキ由来のCPT3のアミノ酸配列
配列番号37:パラゴムノキ由来のCPT4のアミノ酸配列
配列番号38:プライマー15
配列番号39:プライマー16
配列番号40:パラゴムノキ由来のCPT5をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号41:パラゴムノキ由来のCPT5のアミノ酸配列
配列番号42:Taraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号43:Taraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1のアミノ酸配列
配列番号44:シロイヌナズナ由来のAtCPT5のアミノ酸配列
配列番号45:大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)のアミノ酸配列
配列番号46:マイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)のアミノ酸配列
配列番号47:酵母由来のSRT1のアミノ酸配列
配列番号48:タバコ由来のDDPSのアミノ酸配列
配列番号49:マウス由来のDDPSのアミノ酸配列
配列番号50:ヒト由来のHDSのアミノ酸配列
配列番号51:パラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位のアミノ酸配列
配列番号52:パラゴムノキ由来のHRT1における81位から97位のアミノ酸配列
配列番号53:プライマー17
配列番号54:プライマー18
配列番号55:プライマー19
配列番号56:プライマー20
配列番号57:プライマー21
配列番号58:プライマー22
配列番号59:プライマー23
配列番号60:プライマー24
配列番号61:プライマー25
配列番号62:プライマー26
配列番号63:酵母由来のSRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号64:ヒト由来のHDSをコードする遺伝子の塩基配列
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]