(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778596
(24)【登録日】2020年10月14日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】圧接コネクタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20201026BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20201026BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20201026BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20201026BHJP
H01R 12/55 20110101ALI20201026BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R43/02 B
H01R43/16
H01R12/57
H01R12/55
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-232042(P2016-232042)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-88377(P2018-88377A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】村山 丈剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 征宣
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩典
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−001583(JP,A)
【文献】
特開2016−115549(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/217253(WO,A1)
【文献】
特表平08−508613(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/051183(WO,A1)
【文献】
特開2010−040373(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/057734(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 12/55
H01R 12/57
H01R 43/02
H01R 43/16
H01R 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部導通部と、前記基部導通部から立ち上がる螺旋構造部とが、弾性を有する導電性の板材で形成されている圧接コネクタにおいて、
前記螺旋構造部は、前記基部導通部の異なる位置から立ち上がる第1螺旋部と第2螺旋部を有しており、前記第1螺旋部の先部に接触部が設けられ、前記第2螺旋部の先部に、基部側から前記接触部に対向する支え部が設けられており、
前記接触部と前記支え部とが固定されていることを特徴とする圧接コネクタ。
【請求項2】
前記接触部と前記支え部とが溶接されて固定されている請求項1記載の圧接コネクタ。
【請求項3】
前記第1螺旋部と前記第2螺旋部は、前記基部導通部の対向する位置から立ち上がっている請求項1または2記載の圧接コネクタ。
【請求項4】
前記第1螺旋部と前記第2螺旋部は、前記基部導通部から先部に向かう周回方向が同じ向きである請求項3記載の圧接コネクタ。
【請求項5】
前記接触部から前記第1螺旋部が延び出る方向と、前記支え部から前記第2螺旋部が延び出る方向とが、互いに逆方向である請求項1ないし4のいずれかに記載の圧接コネクタ。
【請求項6】
前記基部導電部は平面形状が矩形状であり、
前記第1螺旋部と前記第2螺旋部は、前記基部導電部の平面形状の前記矩形状の角部で曲げられて、前記基部導電部の平面形状に倣うように形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の圧接コネクタ。
【請求項7】
基部導通部と、前記基部導通部から立ち上がる第1螺旋部および第2螺旋部とが、導電性の板材で形成されている圧接コネクタの製造方法において、
前記基部導通部の異なる位置から前記第1螺旋部と前記第2螺旋部とを立ち上げて、それぞれを螺旋状に形成するとともに、前記第1螺旋部の先部に接触部を、前記第2螺旋部の先部に、基部側から前記接触部に対向する支え部を形成し、
前記接触部と前記支え部とを溶接して固定することを特徴とする圧接コネクタの製造方法。
【請求項8】
前記接触部と前記基部導通部を互いに接近する方向に加圧し、少なくとも前記第1螺旋部を変形させて、前記接触部と前記支え部を互いに当接させた状態で、前記接触部と前記支え部とをレーザー溶接する請求項7記載の圧接コネクタの製造方法。
【請求項9】
前記基部導通部に穴または切欠きが形成されており、前記穴または切欠きから、前記接触部と前記支え部との接触部に向けてレーザーを照射して溶接を行う請求項8記載の圧接コネクタの製造方法。
【請求項10】
前記穴または切欠きは、前記基部導通部の中心位置からレーザーの照射側に偏った位置に形成されている請求項9記載の圧接コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の板材で螺旋構造部を形成した圧接コネクタに係り、特に、安定した弾性反発力を発揮でき、また螺旋構造部の変形を防止しやすい構造の圧接コネクタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、導電性の板材で形成された圧接コネクタが記載されている。
この圧接コネクタは、下側平板部と上側平板部および上側平板部の下側に位置する補助上側平板部を有している。下側平板部と上側平板部との間に第1バネ部が設けられ、下側平板部と補助上側平板部との間に第2バネ部が設けられている。第1バネ部と第2バネ部は、共に下側平板部から立ち上がるように折り曲げられて螺旋状に形成されており、それぞれのバネ部を形成している平板部の板面は、荷重作用方向に延びる中心線とほぼ平行に向けられている。
【0003】
上側平板部に荷重が作用すると、上側平板部を有する第1バネ部が下側平板部に向けて圧縮変形するとともに、上側平板部で補助上側平板部が押され、補助上側平板部を有する第2バネ部も下側平板部に向けて圧縮変形する。そのため、第1バネ部と第2バネ部とで大きな弾性反力を発揮させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−1583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された圧接コネクタは、第1バネ部と第2バネ部とが、下側平板部から互いに独立して折り曲げられているため、それぞれのバネ部の変形後のスプリングバックにより、上側平板部と補助上側平板部との相対位置を高精度に保つことが難しい。したがって、螺旋構造の寸法のばらつきが発生しやすく、圧接コネクタ毎に圧縮時の弾性反発力のばらつきを最小限に保つのが難しかった。また、第1バネ部と第2バネ部が互いに拘束されていないため、圧接コネクタの保管時や、圧接コネクタを電子機器などに実装する工程で、圧接コネクタに対して不用意に無理な外力が作用したときに、各バネ部が互いに開くなどの変形が生じるおそれもあった。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、螺旋構造部を構成する第1螺旋部と第2螺旋部を互いに拘束させることで、常に安定した接触圧を得ることができ、螺旋構造の変形も生じにくい圧接コネクタおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基部導通部と、前記基部導通部から立ち上がる螺旋構造部とが、導電性の板材で形成されている圧接コネクタにおいて、
前記螺旋構造部は、前記基部導通部の異なる位置から立ち上がる第1螺旋部と第2螺旋部を有しており、前記第1螺旋部の先部に接触部が設けられ、前記第2螺旋部の先部に、基部側から前記接触部に対向する支え部が設けられており、
前記接触部と前記支え部とが固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の圧接コネクタは、前記接触部と前記支え部とが溶接されて固定されているものである。
【0009】
本発明の圧接コネクタは、前記第1螺旋部と前記第2螺旋部が、前記基部導通部の対向する位置から立ち上がっているものが好ましい。
【0010】
本発明の圧接コネクタは、前記第1螺旋部と前記第2螺旋部の、前記基部導通部から先部に向かう周回方向が同じ向きである。
【0011】
また、本発明の圧接コネクタは、前記接触部から前記第1螺旋部が延び出る方向と、前記支え部から前記第2螺旋部が延び出る方向とが、互いに逆方向であることが好ましい。
【0012】
本発明は、前記基部導電部は平面形状が矩形状であり、
前記第1螺旋部と前記第2螺旋部は、前記基部導電部の平面形状の前記矩形状の角部で曲げられて、前記基部導電部の平面形状に倣うように形成されているものである。
【0013】
次に、本発明は、基部導通部と、前記基部導通部から立ち上がる第1螺旋部および第2螺旋部とが、導電性の板材で形成されている圧接コネクタの製造方法において、
前記基部導通部の異なる位置から前記第1螺旋部と前記第2螺旋部とを立ち上げて、それぞれを螺旋状に形成するとともに、前記第1螺旋部の先部に接触部を、前記第2螺旋部の先部に、基部側から前記接触部に対向する支え部を形成し、
前記接触部と前記支え部とを溶接して固定することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の圧接コネクタの製造方法は、前記接触部と前記基部導通部を互いに接近する方向に加圧し、少なくとも前記第1螺旋部を変形させて、前記接触部と前記支え部を互いに当接させた状態で、前記接触部と前記支え部とをレーザー溶接することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の圧接コネクタの製造方法は、前記基部導通部に穴または切欠きが形成されており、前記穴または切欠きから、前記接触部と前記支え部との接触部に向けてレーザーを照射して溶接を行うものである。
【0016】
この場合に、前記穴または切欠きは、前記基部導通部の中心位置からレーザーの照射側に偏った位置に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の圧接コネクタは、基部導通部から板材が立ち上がるように曲げられて、第1螺旋部と第2螺旋部が形成されており、第1螺旋部の先部に設けられた接触部と、第2螺旋部の先部に設けられた支え部とが固定されている。これにより、第1螺旋部と第2螺旋部の相対位置を精度よく決めることができ、螺旋構造部の寸法のばらつきを規制できる。また、第1螺旋部と第2螺旋部が、互いに連結されたまま圧縮変形するため、第1螺旋部の先部の接触部を加圧したときに、第1螺旋部のばね定数と第2螺旋部のばね定数とを合算したばね定数で、接触部に対して弾性反発力を発揮させることができる。
【0018】
基部導通部から互いに独立して曲げられている第1螺旋部と第2螺旋部とが互いに拘束されているため、圧接コネクタが保管されているときや、電子部品などに組み付ける工程などにおいて、螺旋構造部に外力が作用したときに、第1螺旋部と第2螺旋部が、独立して変形するのを防止しやすい。
【0019】
また、本発明の圧接コネクタの製造方法は、第1螺旋部の先部に設けられた接触部と、第2螺旋部の先部に設けられた支え部とを、レーザー溶接などで確実に固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態の圧縮コネクタを先部側から見た平面図、
【
図2】本発明の実施の形態の圧縮コネクタを、荷重が作用していない状態で示す斜視図、
【
図3】
図2に示す圧接コネクタをIII−III線で切断した半断面斜視図、
【
図4】本発明の実施の形態の圧縮コネクタを、荷重が作用している状態で示す斜視図、
【
図5】本発明の実施の形態の圧接コネクタを、導電性の板材から曲げ加工した状態を示す断面図、
【
図6】
図5に示す曲げ加工後の圧接コネクタの接触部と支え部とを溶接する工程を説明する断面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態の圧接コネクタ1は、導電性の金属板材をプレス加工で折り曲げて成形されている。金属板材は、銅または銅合金であり、実施の形態ではコルソン合金(Cu−Ni−Si合金)で形成されている。
【0022】
圧接コネクタ1は、
図1に示す平面形状でのX方向とY方向の寸法が、それぞれ2mm×2mm以下で、好ましくは1.5mm×1.5mm以下、
図2に示すように荷重が作用していない自由状態でのZ方向の高さ寸法が1.5mm以下で、好ましくは1mm程度である。
【0023】
この圧接コネクタ1は複数個が回路基板に実装されるなどして、回路基板どうしの接続部や回路基板とICなどの電子素子との接続部、あるいは回路基板と配線ケーブル(フレキシブル配線ケーブル)との接続部などに使用される。
【0024】
図2と
図3に、荷重が作用していない自由状態の圧接コネクタ1が示されている。圧接コネクタ1は、基部側(Z1側)に基部導通部2が設けられている。基部導通部2は、X−Y平面と平行であり、その下面2aが回路基板の導電性のランド部などに半田付けされる。基部導通部2は平面形状が矩形状であり、
図1に示すように、X方向の寸法とY方向の寸法がほぼ同じである。ただし、X方向の寸法とY方向の寸法が相違していてもよい。
【0025】
図1と
図2に示すように、基部導通部2のX1側に向く辺から第1螺旋部10が立ち上がっており、X2側に向く辺から第2螺旋部20が立ち上がっている。第1螺旋部10と第2螺旋部20は、基部導通部2の互いに対向する側部から立ち上がっている。この実施の形態では、第1螺旋部10と第2螺旋部20とで、螺旋構造部が構成されている。
【0026】
図1と
図2に示すように、第1螺旋部10は、基部導通部2のX1側の辺から先部側(Z2側)へ垂直に折り曲げられて立ち上がる螺旋基部11と、螺旋基部11から湾曲部12で曲げられてX2方向に延びるY2側板部13と、Y2側板部13から湾曲部14で曲げられてY1方向に延びるX2側板部15と、X2側板部15から湾曲部16で曲げられてX1方向に延びるY1側板部17とが連続して形成されている。
【0027】
第1螺旋部10は、螺旋基部11からY1側板部17にかけて、細長く連続して延びる板部で形成されている。
図2に示すように、第1螺旋部10は、これを構成する板部の幅寸法を二分する中心線WO1が、螺旋基部11からY1側板部17に向かうにしたがって先部側(Z2側)に立ち上がっていく螺旋構造である。
【0028】
第1螺旋部10の先部側(Z2側)には、Y1側板部17から折り曲げられた接触部18が設けられている。接触部18には、X−Y平面とほぼ平行な上面部18aと、上面部18aの3つの辺から基部方向(Z1方向)に曲げられたフランジ部18bが一体に形成されており、上面部18aの中央部に接触凸部18cが形成されている。各図では、接触凸部18cの中心を通って、螺旋構造部の圧縮方向(Z方向)に延びる仮想線が中心線Oとして示されている。
【0029】
接触部18に基部方向に向かう荷重が作用すると、第1螺旋部10では、螺旋基部11の一部からY1側板部17までの範囲で捩じり変形と板幅方向の撓み変形が発生して、Z1方向に向けて弾性的に圧縮変形する。ただし、フランジ部18bが形成された接触部18は、容易に歪むことがなく、荷重を受け続けることができる。
【0030】
第2螺旋部20は、基部導通部2のX2側の辺からZ2方向へ向けて垂直に折り曲げられて立ち上がる螺旋基部21と、螺旋基部21から湾曲部22で曲げられてX1方向に延びるY1側板部23と、Y1側板部23から湾曲部24で曲げられてY2方向に延びるX1側板部25と、X1側板部25から湾曲部26で曲げられてX2方向に延びるY2側板部27とが連続して形成されている。
【0031】
第2螺旋部20は、螺旋基部21からY2側板部27にかけて、細長く連続して延びる板部で形成されている。
図2に示すように、第2螺旋部20は、これを構成する板部の幅寸法を二分する中心線WO2が、螺旋基部21からY2側板部27に向かうにしたがって先部側(Z2側)に立ち上がっていく螺旋構造である。
【0032】
図1に示すように、第1螺旋部10の湾曲部12,14,16と、第2螺旋部20の湾曲部22,24,26は、いずれも矩形状の基部導通部2の角部に沿ってほぼ直角に曲げられているため、第1螺旋部10と第2螺旋部20は、平面視において、基部導通部2の外形に沿った矩形状に形成されている。このように螺旋構造部を矩形状にすると、X方向とY方向の寸法を限られた大きさにしても、螺旋軌跡を長く確保でき、第1螺旋部10と第2螺旋部20のばね定数を設定しやすくなる。
【0033】
図3に示すように、第2螺旋部20の先部側(Z2側)には、Y2側板部27から折り曲げられた支え部28が設けられている。支え部28は、X−Y平面とほぼ平行な平板部である。前記接触部18に基部方向の荷重が与えられていない自由状態で、支え部28は、接触部18の上面部18aの下面に溶接されて固定されている。
【0034】
上記構造の圧接コネクタ1は、第1螺旋部10の先部の接触部18と第2螺旋部20の先部の支え部28とが互いに固定されているため、第1螺旋部10と第2螺旋部20との相対位置にばらつきが生じにくい。
図5に示すように、接触部18と支え部28とが固定される前の状態では、基部導通部2から第1螺旋部10と第2螺旋部20とを折り曲げてそれぞれを螺旋状に成形した直後に、スプリングバックによって第1螺旋部10と第2螺旋部20とが互いに離れようとし、第1螺旋部10と第2螺旋部20の相対位置にばらつきが発生しやすい。しかし、実施の形態の圧接コネクタ1は、接触部18と支え部28とが固定されているため、第1螺旋部10と第2螺旋部20との相対位置を均一にでき、圧接コネクタ1の寸法のばらつきを規制できる。
【0035】
また、圧接コネクタ1を保管しているとき、または圧接コネクタ1を電子機器などに実装する工程において、誤って螺旋構造部に触れることがあると、
図5に示すように、接触部18と支え部28とが固定されていないものでは、第1螺旋部10と第2螺旋部20のそれぞれが、独立して変形するおそれがあった。特に、第1螺旋部10と第2螺旋部20が互いに離れる方向に変形しやすかった。これに対し、実施の形態の圧接コネクタ1は、接触部18と支え部28とが固定されているため、第1螺旋部10と第2螺旋部20とが互いに離れて変形することがない。すなわち、螺旋構造部の強度が高くなり、螺旋構造部が変形しにくくなる。
【0036】
次に、上記構造の圧接コネクタ1の接触動作は以下の通りである。
接触部18に基部方向に向かう荷重が作用すると、第1螺旋部10で、螺旋基部11からY1側板部17までの範囲で捩じり変形と板幅方向の撓み変形が発生して、Z1方向へ向けて弾性的に圧縮変形する。このとき、接触部18に固定されている支え部28も基部方向に押されるので、第2螺旋部20においても、螺旋基部21の一部からY2側板部27までの範囲で捩じり変形と板幅方向の撓み変形が発生して、Z1方向に向けて弾性的に圧縮変形する。
図4に、第1螺旋部10と第2螺旋部20とが圧縮変形した状態が示されている。
【0037】
螺旋構造部では、第1螺旋部10と第2螺旋部20とが固定されているため、接触部18にZ1方向への荷重が与えられたときに、第1螺旋部10と第2螺旋部20が一緒に同じ距離だけZ1方向へ圧縮変形できるようになる。
図5に示すように、接触部18と支え部28とが連結されていない状態では、接触部18がZ1方向へ押されたときに、接触部18と支え部28との間に滑りが生じるなどして、第2螺旋部20にZ1方向の荷重を正確に作用させることができないことがある。これに対し、実施の形態の圧接コネクタ1は、第1螺旋部10と第2螺旋部20とが常に一体となって変形するため、第1螺旋部10のばね定数と第2螺旋部20のばね定数を合算したばね定数に基づいて、接触部18に弾性反発力を発揮させることができる。よって、圧接コネクタ1毎の弾性反発力を均一化できる。
【0038】
次に、前記圧接コネクタ1の製造方法を説明する。
コルソン合金などの導電性の金属板材をプレス加工で打ち抜いて、基部導通部2と、基部導通部2から一体に延びる一対の細幅の板材を成形し、この板材をZ2方向に向けて折り曲げ、それぞれを螺旋状に変形させて、第1螺旋部10および第2螺旋部20を成形するとともに、第1螺旋部10の先部に接続部18を一体に形成し、第2螺旋部20の先部に支え部28を一体に形成する。なお、打ち抜き後の折り曲げ成形による第1螺旋部10、第2螺旋部20、接続部18、支え部28の製造工程については特に順序は問わない。
【0039】
図5に、完成前の圧接コネクタ1aが示されている。この圧接コネクタ1aには、基部導通部2と、第1螺旋部10および第2螺旋部20が形成されているが、第1螺旋部10の先部の接触部18と、第2螺旋部20の先部の支え部28は未だ固定されていない。このとき、支え部28は、接触部18からZ1方向へ少し離れている。あるいは、支え部28が接触部18の下面に接触していてもよい。
【0040】
接触部18と支え部28とを溶接する工程では、
図6に示すように、第1治具31と第2治具32を使用する。第1治具31には中央部に位置決め凹部31aが形成されている。位置決め凹部31aは、Z2方向に向かうにしたがって径が徐々に狭くなるテーパ面である。
図5に示すように曲げ加工された完成前の圧接コネクタ1aは、先部を下向きとし、接触部18のフランジ部18bを位置決め凹部31aのテーパ面に突き当てて、第1治具31上で圧接コネクタ1aを位置決めする。このとき、圧接コネクタ1aの中心線Oが、第1治具31の下面または上面と垂直な向きとなるように位置決めする。
【0041】
図6に示すように、第2治具32を、基部導通部2の下面2aに突き当て、第2治具32をZ2方向へ押圧し、圧接コネクタ1aを、基部導通部2と接触部18とが接近する方向へ少し圧縮変形させる。その結果、少なくとも第1螺旋部10が圧縮変形させられ、好ましくは第2螺旋部20も圧縮変形させられて、接触部18の下面に支え部28が当接させられる。
【0042】
この状態で、接触部18と支え部28とがレーザー溶接(レーザースポット溶接)で互いに接合されて固定される。基部導通部2の中央部には穴2bが開口している。あるいは基部導通部2に凹部が形成されている。さらに、第2治具32にも穴32aが形成されており、あるいは凹部が形成されている。レーザービームLBを、第2治具32の穴32aおよび基部導通部2の穴2bを経て、接触部18と支え部28との当接部に向けて照射する。このレーザービームLBのエネルギーによって、接触部18と支え部28との当接部において金属板材が溶融し、接触部18と支え部28とが溶接されて固定される。
【0043】
レーザービームLBを、基部導通部2の穴2bを経て、支え部28に照射してレーザー溶接を行うことで、接触部18のZ2方向に向く上面部18aに変形や窪みまたは突部などの欠陥部が現れにくくなる。よって、接触部18の上面部18aと、対向する電極などとの接触と導通性が良好になる。さらに、
図6に示すように、レーザービームLBを中心線Oに対して角度θだけ傾けた状態で支え部28に照射することで、レーザービームLBの反射戻りを防止し、エネルギーを効率良く集中させて、溶接作業を行うことができる。
【0044】
また、レーザービームLBを中心線Oから傾けた状態で、接触部18と支え部28との当接部にレーザーエネルギーを効率良く与えるためには、穴2bまたは切欠き部の開口中心を、中心線Oよりも、レーザービームLBの照射側へ偏らせることが好ましい。このように構成すると、接触部18と支え部28との当接部に照射されるレーザースポット径を可能な限り大きくして、十分なエネルギーで溶接を行うことができる。また、穴2bや切欠き部の開口面積を必要以上に大きくする必要がないため、基部導通部2の強度が低下するのを抑制できる。
【0045】
なお、前記実施の形態では、レーザービームLBのエネルギーによって、接触部18と支え部28との当接部において金属板材を溶融させて溶接固定しているが、本発明は前記溶接に限られるものではなく、接着剤や半田によって接触部18と支え部28とを固定し、あるいはカシメ加工を施すなどして機械的結合によって接触部18と支え部28とを固定してもよい。
【0046】
図6に示すように、第1治具31と第2治具32を使用し、圧接コネクタ1aの螺旋構造部を圧縮させることで、接触部18の下面に支え部28を確実に調節させた状態で溶接作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 圧接コネクタ
2 基部導通部
10 第1螺旋部(螺旋構造部)
11 螺旋基部
18 接触部
20 第2螺旋部(螺旋構造部)
21 螺旋基部
28 支え部
31 第1治具
32 第2治具
O 中心線