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特許6778710セッター、匣鉢、熱処理炉及び熱処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778710
(24)【登録日】2020年10月14日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】セッター、匣鉢、熱処理炉及び熱処理システム
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/12 20060101AFI20201026BHJP
   F27B 9/26 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   F27D3/12 C
   F27B9/26
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-69031(P2018-69031)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178819(P2019-178819A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 隆規
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良充
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−201658(JP,A)
【文献】 実開平06−010785(JP,U)
【文献】 特開平08−313161(JP,A)
【文献】 特開2006−090579(JP,A)
【文献】 実開昭55−144996(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/12
F27B 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラを備える熱処理炉で熱処理される被処理物を載置して、前記搬送ローラによって前記熱処理炉内を搬送されるセッターであって、
前記被処理物を収容した収容体を載置可能であり、
搬送方向である第1方向の寸法は、M個(Mは2以上の自然数)の前記収容体を載置可能な寸法であり、
前記セッターを平面視したときに前記搬送方向と直交する第2方向の寸法は、N個(Nは1以上の自然数)の前記収容体を載置可能であり、
前記第1方向の寸法は、前記第2方向の寸法より大きい、セッター。
【請求項2】
搬送ローラを備える熱処理炉で熱処理される被処理物を直接収容して、前記搬送ローラによって前記熱処理炉内を搬送される匣鉢であって、
底板と、
前記底板の周縁に突設された周壁と、を備えており、
前記被処理物は、前記底板と前記周壁によって形成される空間内に直接収容され、
搬送方向である第1方向の前記底板の寸法は、平面視したときに前記搬送方向と直交する第2方向の前記底板の寸法より大きい、匣鉢。
【請求項3】
請求項1に記載のセッター又は請求項2に記載の匣鉢に収容された被処理物を熱処理する熱処理炉であって、
前記被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、
前記セッター又は前記匣鉢を前記熱処理部から搬出する搬出部と、
前記熱処理部及び前記搬出部に配置され、前記セッター又は前記匣鉢を搬送する複数の搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動可能な駆動装置と、を備えており、
前記熱処理部に配置される搬送ローラは、搬送方向に略等しいピッチで配置されていると共に、前記駆動装置によって駆動される駆動ローラであり、
前記搬出部に配置される搬送ローラのうち前記熱処理部側に配置される搬送ローラは、前記熱処理部に配置される搬送ローラより小さいピッチで配置されていると共に、前記駆動装置によって駆動されない従動ローラである、熱処理炉。
【請求項4】
被処理物を熱処理する熱処理炉と、
前記被処理物を収容して、前記熱処理炉内を搬送される搬送物と、を備えており、
前記熱処理炉は、
前記被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、
前記搬送物を前記熱処理部から搬出する搬出部と、
前記熱処理部及び前記搬出部に配置され、前記搬送物を搬送する複数の搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動可能な駆動装置と、を備えており、
前記搬送物は、搬送方向である第1方向の寸法が、前記搬送物を平面視したときに前記第1方向と垂直な第2方向の寸法より大きく、
前記熱処理部に配置される搬送ローラは、搬送方向に略等しいピッチで配置されていると共に、前記駆動装置によって駆動される駆動ローラであり、
前記搬出部に配置される搬送ローラのうち前記熱処理部側に配置される搬送ローラは、前記熱処理部に配置される搬送ローラより小さいピッチで配置されていると共に、前記駆動装置によって駆動されない従動ローラである、熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物を載置して熱処理炉内を搬送されるセッター、被処理物を収容して熱処理炉内を搬送される匣鉢、セッター又は匣鉢を搬送して被処理物を熱処理する熱処理炉、及びセッター又は匣鉢と熱処理炉とを備える熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉(例えば、ローラーハースキルン等)を用いて、被処理物を熱処理することがある。この種の熱処理炉は、複数の搬送ローラを備えており、搬送ローラに被処理物を収容した搬送物(例えば、セッターや匣鉢等)を載置した状態で搬送ローラを回転させることによって被処理物を搬送する。例えば、特許文献1には、熱処理炉の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−64189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の熱処理炉では、生産性を高くするため、搬送ローラ上に搬送方向(以下、第1方向ともいう)と垂直かつ水平な方向(以下、第2方向ともいう)に複数の搬送物を並べて載置し、これら複数の搬送物を同時に搬送することがある。このような場合には、複数の搬送物は第2方向に並んだ状態で熱処理炉内を搬入されて搬送される。しかしながら、搬送ローラには、製造時に生じる反り等の歪みが生じることがある。このため、搬送ローラに生じる歪みによって、搬送中に搬送物が傾いてしまうことがある。搬送物が傾いて搬送されると搬送物の蛇行が生じ整列が、第2方向に並んで載置される他の搬送物の搬送を妨害したり、熱処理炉内の側壁に衝突したりするという問題が生じ得る。
【0005】
本明細書は、被処理物を収容した搬送物が蛇行して搬送されることを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するセッターは、搬送ローラを備える熱処理炉で熱処理される被処理物を載置して、搬送ローラによって熱処理炉内を搬送される。セッターは、被処理物を収容した収容体を載置可能である。搬送方向である第1方向の寸法は、M個(Mは2以上の自然数)の収容体を載置可能な寸法である。セッターを平面視したときに搬送方向と直交する第2方向の寸法は、N個(Nは1以上の自然数)の収容体を載置可能である。第1方向の寸法は、第2方向の寸法より大きい。
【0007】
上記のセッターは、第1方向(搬送方向)の寸法が大きいため、搬送ローラを配置するピッチ(間隔)を大きくすることができる。これによって、熱処理炉全体に配置される搬送ローラの数が減少し、搬送中にセッターが搬送ローラを乗り継ぐ回数を減少させることができる。セッターの蛇行は、セッターが隣接する搬送ローラに乗り継ぐ際に発生し易い。このため、上記のセッターを用いることによって、セッターの蛇行を抑制することができる。また、上記のセッターは、被処理物が収容された収容体を載置して搬送するため、被処理物がセッターに直接接触しない。これによって、熱処理中にセッターと被処理物とが反応してセッターの底面の形状が変化することを回避できる。このため、セッターの蛇行を抑制することができる。
【0008】
また、本明細書に開示する匣鉢は、搬送ローラを備える熱処理炉で熱処理される被処理物を直接収容して、搬送ローラによって熱処理炉内を搬送される。匣鉢は、底板と、底板の周縁に突設された周壁と、を備えている。被処理物は、底板と周壁によって形成される空間内に直接収容される。搬送方向である第1方向の底板の寸法は、平面視したときに搬送方向と直交する第2方向の底板の寸法より大きい。
【0009】
上記の匣鉢は、第1方向(搬送方向)の寸法が大きいため、搬送ローラを配置するピッチを大きくすることができ、熱処理炉全体に配置される搬送ローラの数を減少させることができる。このため、上記の匣鉢を用いることによって、匣鉢の蛇行を抑制することができる。
【0010】
また、本明細書に開示する熱処理炉は、上記のセッター又は上記の匣鉢に収容された被処理物を熱処理する。熱処理炉は、被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、セッター又は匣鉢を熱処理部から搬出する搬出部と、熱処理部及び搬出部に配置され、セッター又は匣鉢を搬送する複数の搬送ローラと、搬送ローラを駆動可能な駆動装置と、を備えている。熱処理部に配置される搬送ローラは、搬送方向に略等しいピッチで配置されていると共に、駆動装置によって駆動される駆動ローラである。搬出部に配置される搬送ローラのうち熱処理部側に配置される搬送ローラは、熱処理部に配置される搬送ローラより小さいピッチで配置されていると共に、駆動装置によって駆動されない従動ローラである。
【0011】
また、本明細書に開示する熱処理システムは、被処理物を熱処理する熱処理炉と、被処理物を収容して、熱処理炉内を搬送される搬送物と、を備えている。熱処理炉は、被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、搬送物を熱処理部から搬出する搬出部と、熱処理部及び搬出部に配置され、搬送物を搬送する複数の搬送ローラと、搬送ローラを駆動可能な駆動装置と、を備えている。搬送物は、搬送方向である第1方向の寸法が、搬送物を平面視したときに第1方向と垂直な第2方向の寸法より大きい。熱処理部に配置される搬送ローラは、搬送方向に略等しいピッチで配置されていると共に、駆動装置によって駆動される駆動ローラである。搬出部に配置される搬送ローラのうち熱処理部側に配置される搬送ローラは、熱処理部に配置される搬送ローラより小さいピッチで配置されていると共に、駆動装置によって駆動されない従動ローラである。
【0012】
上記の熱処理システムでは、搬送物の第1方向(搬送方向)の寸法が大きい。このため、上記のセッターや匣鉢と同様の作用効果を奏することができる。また、上記の熱処理システムでは、搬出部に配置される搬送ローラのうち熱処理部側に配置される搬送ローラは、駆動装置によって駆動されない従動ローラであり、熱処理部に配置される搬送ローラより小さいピッチで配置されている。このため、上記の熱処理炉と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係る熱処理システムの概略構成を示す図であり、被処理物の搬送方向に平行な平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
図2図1のII−II線における断面図。
図3】搬送装置の構成を説明するための図。
図4】セッターを示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
図5】セッターが熱処理部から搬出部に搬送される状態を模式的に示す側面図であり、(a)はセッターが熱処理部の下流に位置する状態を示し、(b)は(a)の状態から下流に搬送され、熱処理部と搬出部との間に位置する状態を示し、(c)は(b)の状態からさらに下流に搬送され、熱処理部と搬出部との間に位置する状態を示す。
図6】実施例2の熱処理システムが備える匣鉢を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
(実施例1)
以下、実施例に係る熱処理システム100について説明する。図1に示すように、熱処理システム100は、熱処理炉10と、セッター12を備えている。セッター12は、被処理物を載置して熱処理炉10内を搬送される。熱処理炉10は、セッター12が熱処理炉10内を搬送される間に、セッター12に載置される被処理物を熱処理する。以下の説明では、熱処理炉10においてセッター12が搬送される方向(図1のYZ平面に垂直な方向)を「搬送方向」又は「第1方向」と称することがあり、水平かつ第1方向に垂直な方向(図1のXZ平面に垂直な方向)を「第2方向」と称することがある。
【0015】
図1図3を参照して、熱処理炉10について説明する。熱処理炉10は、熱処理部20と、搬入部34と、搬出部40と、搬送装置50(図3参照)を備えている。
【0016】
熱処理部20は、略直方形の箱型の炉体を備えており、炉体の内部には周囲を外壁22で囲まれた空間24が設けられている。外壁22の前端面(図1の−X側の端面)には、開口26が形成されており、外壁22の後端面(図1の+X側の端面)には、開口28が形成されている。セッター12は、搬送装置50によって開口26から熱処理部20内に搬送され、開口28から熱処理部20外へ搬送される。すなわち、開口26は熱処理部20の搬入口として用いられ、開口28は熱処理部20の搬出口として用いられる。
【0017】
空間24には、複数の搬送ローラ52と、複数のヒータ30、32が配置されている。ヒータ30は、搬送ローラ52の上方の位置に搬送方向に等間隔で配置され、ヒータ32は搬送ローラ52の下方の位置に搬送方向に等間隔で配置されている。ヒータ30,32が発熱することで、空間24内が加熱される。なお、本実施例では、ヒータ30、32はそれぞれ搬送方向に等間隔で配置されているが、このような構成に限定されない。ヒータは、例えば、被処理物の種類や熱処理部20の熱処理の条件等に合わせて、所望の位置に適宜変更して配置してもよい。また、本実施例では、空間24内にヒータ30、32を配置しているが、このような構成に限定されない。空間24内を加熱できればよく、例えば、空間24内にガスバーナー等を設置してもよい。
【0018】
図2に示すように、熱処理部20では、セッター12は第2方向に複数並べて搬送される。本実施例では、熱処理部20(すなわち、熱処理炉10全体)において、3つのセッター12を第2方向に並べて搬送する。このため、本実施例では、熱処理部20の第2方向の寸法は、セッター12を第2方向に3つ並べた寸法より大きくされているが、熱処理部20の第2方向の寸法は、特に限定されない。熱処理部20の第2方向の寸法は、セッター12を第2方向に3つより多く並べて搬送可能な大きさであってもよい。また、熱処理部20の第2方向の寸法は、セッター12を第2方向に2つ並べて搬送可能な大きさであってもよいし、セッター12を第2方向に複数並べることなく、第2方向に1つのセッター12を搬送可能な大きさであってもよい。なお、セッター12は、搬送方向に所定の間隔を空けて熱処理部20に連続して搬入される。このため、セッター12は、第2方向だけでなく搬送方向にも並んで配置されていることになる。
【0019】
搬入部34は、熱処理部20の上流側(すなわち、搬送方向の上流側であり、図1では熱処理部20の−X方向)に位置している。搬入部34は、熱処理炉10の外部から運ばれるセッター12を受け取り、受け取ったセッター12を熱処理部20の空間24内に搬入する。搬入部34には、搬送ローラ52が設置されており、熱処理炉10の外部から運ばれたセッター12を搬送ローラ52によって搬送する。
【0020】
搬出部40は、熱処理部20の下流側(すなわち、搬送方向の下流側であり、図1では熱処理部20の+X方向)に位置している。搬出部40は、熱処理部20の空間24からセッター12を搬出し、搬出されたセッター12を熱処理炉10の外部に受け渡す。搬出部40には、搬送ローラ52が設置されており、セッター12を搬送ローラ52によって空間24外に搬送する。
【0021】
搬送装置50は、搬入部34に運ばれたセッター12を、搬入部34から開口26を通って熱処理部20の空間24内に搬送する。さらに、搬送装置50は、空間24内において、開口26から開口28までセッター12を搬送する。そして、搬送装置50は、空間24から開口28を通って搬出部40までセッター12を搬送する。図3に示すように、搬送装置50は、複数の搬送ローラ52と、第1駆動装置54と、第2駆動装置56と、制御装置58を備えている。セッター12は、搬送ローラ52によって搬入部34から搬出部40まで搬送される。
【0022】
搬送ローラ52は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に伸びている。本実施例では、複数の搬送ローラ52は全て同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。例えば、熱処理部20の搬送方向の距離が比較的長いと、熱処理部20に設置される搬送ローラ52を回転させるために複数の駆動装置が設置されることがある。このような場合には、搬送ローラ52の直径は、接続される駆動装置毎に異なっていてもよい。搬送ローラ52の軸線方向の寸法は、熱処理部20の第2方向の寸法より大きい(図2参照)。搬送ローラ52は、熱処理部20、搬入部34及び搬出部40に複数配置されている。以下、図3に示すように、複数の搬送ローラ52のうち、搬入部34及び熱処理部20に配置され、第1駆動装置54に接続されているものを搬送ローラ52aとし、搬出部40に配置され、第1駆動装置54及び第2駆動装置56のいずれにも接続されていないものを搬送ローラ52bとし、搬出部40に配置され、第2駆動装置56に接続されているものを搬送ローラ52cとして区別することがある。
【0023】
搬送ローラ52aは、搬入部34及び熱処理部20に配置されている。搬送ローラ52aは、搬送方向に一定のピッチP1で等間隔に配置されている。搬送ローラ52aのピッチP1は、セッター12が搬入部34又は熱処理部20に配置されるとき(すなわち、セッター12が搬送ローラ52aのみに載置されるとき)、セッター12が常に所定の数の搬送ローラ52a上に載置されるように設定されている。本実施例では、搬送ローラ52aのピッチP1は、セッター12が常に4本の搬送ローラ52a上に載置されるように設定されている。搬送ローラ52aは、その軸線回りに回転可能に支持されており、第1駆動装置54の駆動力が伝達されることによって回転する。
【0024】
搬送ローラ52bは、搬出部40の熱処理部20側(図3の−X側)に配置されている。搬送ローラ52bは、搬送方向に一定のピッチP2で等間隔に配置されており、搬送ローラ52bのピッチP2は、搬送ローラ52aのピッチP1より小さくされている。本実施例では、搬送ローラ52bのピッチP2は、搬送ローラ52aのピッチP1の約1/2にされている。搬送ローラ52bは、その軸線回りに回転可能に支持されており、第1駆動装置54及び第2駆動装置56のいずれにも接続されていない。このため、搬送ローラ52bは、搬送ローラ52b上をセッター12が搬送される際に、セッター12の下面と搬送ローラ52bとの間に生じる摩擦力によって回転する。搬送ローラ52bが配置される範囲(すなわち、最も熱処理部20に近い位置に配置される搬送ローラ52bと、最も熱処理部20から遠い位置に配置される搬送ローラ52bとの間の距離)は、セッター12の搬送方向の寸法L1より小さくされている。上述したように、搬送ローラ52bは、第1駆動装置54及び第2駆動装置56のいずれにも接続されていない。このため、セッター12が搬送ローラ52bのみに載置されることがないように、搬送ローラ52bの数が設定される。本実施例では、搬送ローラ52bは3本配置されている。
【0025】
搬送ローラ52cは、搬送ローラ52bの下流側(図3の+X側)に配置されている。搬送ローラ52cは、搬送方向に一定のピッチP1で等間隔に配置されている。すなわち、搬送ローラ52cは、搬入部34及び熱処理部20に配置される搬送ローラ52aと同一のピッチP1で配置されている。搬送ローラ52cは、その軸線回りに回転可能に支持されており、第2駆動装置56の駆動力が伝達されることによって回転する。
【0026】
第1駆動装置54は、搬送ローラ52aを駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。第1駆動装置54は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ52aに接続されている。第1駆動装置54の駆動力が動力伝達機構を介して搬送ローラ52aに伝達されると、搬送ローラ52aは回転するようになっている。動力伝達機構としては、公知のものを用いることができ、例えば、スプロケットとチェーンによる機構が用いられている。第1駆動装置54は、搬送ローラ52aが略同一の速度で回転するように、搬送ローラ52aのそれぞれを駆動する。第1駆動装置54は、制御装置58によって制御されている。
【0027】
第2駆動装置56は、搬送ローラ52cを駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。第2駆動装置56は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ52cに接続されている。第2駆動装置56の駆動力が動力伝達機構を介して搬送ローラ52cに伝達されると、搬送ローラ52cは回転するようになっている。動力伝達機構としては、公知のものを用いることができ、例えば、スプロケットとチェーンによる機構が用いられている。第2駆動装置56は、出力を調整することによって、搬送ローラ52cの回転速度を変更することができる構成となっている。第2駆動装置56の出力を調整することによって、第2駆動装置56に接続される搬送ローラ52cは、第1駆動装置54に接続される搬送ローラ52aと略同一の速度で回転したり(以下、低速回転ともいう)、第1駆動装置54に接続される搬送ローラ52aより高速で回転したり(以下、高速回転ともいう)する。第2駆動装置56は、制御装置58によって制御されている。
【0028】
図4を参照して、セッター12について説明する。図4に示すように、セッター12は、略矩形の平板状である。セッター12の上面には、箱状の匣鉢14が複数載置される。なお、匣鉢14の種類や形状は特に限定されない。本実施例では、搬送方向(図2のX方向)の寸法と第2方向(図2のY方向)の寸法が共に300mmの匣鉢14を用いている。匣鉢14内には、被処理物が収容される。被処理物としては、例えば、セラミックス製の誘電体(基材)と電極とを積層した積層体や、リチウムイオン電池の正極材や負極材等が挙げられる。セッター12は、その上面に被処理物が収容された匣鉢14が載置された状態で熱処理炉10内を搬送される。匣鉢14を直接搬送ローラ52に載置して熱処理炉10内を搬送させると、熱処理部20の雰囲気ガスや雰囲気温度の設定条件又は被処理物の種類等によって、匣鉢14と被処理物とが反応して匣鉢14の底面の形状が変化することがある。匣鉢14の底面と搬送ローラ52とが直接接触する場合、匣鉢14の底面の形状が変化すると、匣鉢14は蛇行し易くなる。被処理物を収容した匣鉢14をセッター12に載置して熱処理炉10内を搬送させることによって、被処理物を搬送するために用いる搬送物(すなわち、セッター12)の蛇行を抑制することができる。
【0029】
セッター12の搬送方向(図2のX方向)の寸法L1は、匣鉢14の搬送方向の寸法の2倍より大きくされている。セッター12の第2方向(図2のY方向)の寸法L2は、匣鉢14の第2方向の寸法より大きく、かつ、セッター12の搬送方向の寸法L1より小さくされている。セッター12を上記のような寸法にすることによって、セッター12の上面には、2個以上の匣鉢14が載置可能とされる。本実施例では、セッター12の搬送方向の寸法L1は640mmであり、セッター12の第2方向の寸法L2は320mmである。このため、セッター12の上面に、搬送方向に2個、かつ、第2方向に1個(すなわち、合計2個)の匣鉢14が載置可能となっている。セッター12の搬送方向の寸法L1を匣鉢14の搬送方向の寸法より大きくすることによって、匣鉢14を直接搬送ローラに載置して熱処理炉内を搬送させる場合と比較して熱処理炉10内に配置する搬送ローラ52のピッチを大きくでき、セッター12を搬送できる。このため、熱処理炉10内に配置する搬送ローラ52の数を少なくすることができる。これによって、熱処理炉10内の搬送中にセッター12が搬送ローラ52を乗り継ぐ回数を減少させることができる。搬送ローラ52には製造上の反りが生じることがあるため、搬送中のセッター12は搬送ローラ52を乗り継ぐ際に蛇行し易い。このため、セッター12が搬送ローラ52を乗り継ぐ回数を減少させることによって、セッター12の蛇行を抑制することができる。また、熱処理部20内に配置される搬送ローラ52の数が少なくなることによって、熱処理部20内を効率よく加熱することができる。
【0030】
上述したように、搬送ローラ52aのピッチP1を大きくすると、セッター12が搬送ローラ52を乗り継ぐ回数を減少させることができ、セッター12の蛇行を抑制することができる。一方で、搬送ローラ52aのピッチP1を小さくすると、セッター12を支持する搬送ローラ52の数が増えるため、安全性を向上させることができる。このため、セッター12の搬送方向の寸法L1は、搬送ローラ52aのピッチP1の4倍以上であってもよい。このような寸法にすることによって、熱処理部20及び搬入部34に配置される搬送ローラ52aが1本折損した場合であっても、熱処理部20及び搬入部34を搬送されるセッター12が搬送ローラ52aから落下することを回避することができる。
【0031】
なお、本実施例では、セッター12の上面に、搬送方向に2個の匣鉢14が載置可能とされているが、このような構成に限定されない。セッター12の搬送方向に2個以上の匣鉢14が載置可能であり、かつ、セッター12の搬送方向の寸法L1が、セッター12の第2方向の寸法L2より大きくされていればよく、セッター12の上面に載置可能な匣鉢14の数は限定されない。例えば、セッター12の搬送方向の寸法L1は、匣鉢14を3個以上載置可能な寸法であってもよいし、セッター12の第2方向の寸法L2は、匣鉢14を2個以上載置可能な寸法であってもよい。すなわち、セッター12は、匣鉢14を3個以上載置可能であってもよい。
【0032】
次に、被処理物を熱処理する際の熱処理炉10の動作について説明する。被処理物を熱処理するためには、まず、ヒータ30、32を作動させて、空間24の雰囲気温度を設定した温度とする。次いで、被処理物を収容した匣鉢14を載置した3つのセッター12を、熱処理炉10の外部から搬入部34に設置される搬送ローラ52上にそれぞれ移動させる。このとき、セッター12は第2方向に3つ並べて載置される。次いで、第1駆動装置54を作動させて、搬入部34から開口26を通って、第2方向に並べた3つのセッター12を熱処理部20の空間24内に搬送する。空間24内に搬送されたセッター12は、空間24内を開口26から開口28まで搬送される。これによって、被処理物は熱処理される。そして、熱処理されたセッター12は、開口28を通って搬出部40に搬送され、搬出部40から運び出される。
【0033】
図5を参照して、セッター12の熱処理部20から搬出部40への搬送についてさらに詳細に説明する。上述したように、熱処理部20(及び搬入部34)に配置される搬送ローラ52aは、第1駆動装置54に接続されており、搬出部40(詳細には、搬出部40の下流側)に配置される搬送ローラ52cは、第2駆動装置56に接続されている(図3参照)。そして、第2駆動装置56は、出力を調整することによって、搬送ローラ52cを第1駆動装置54に接続される搬送ローラ52aと略同一の速度で回転(すなわち、低速回転)させたり、搬送ローラ52aより高速で回転(すなわち、高速回転)させたりするように駆動している。具体的には、第2駆動装置56は、セッター12の一部が搬送ローラ52a上に載置されている間、搬送ローラ52cを低速回転させ、セッター12全体が搬送ローラ52a上に載置されていない状態になると、搬送ローラ52cを高速回転させる。このため、第2方向に複数並べて載置されるセッター12が搬送方向にずれていると、第2方向に複数並べて載置されるセッター12の全てが搬送ローラ52a上に載置されていない状態になるまで、搬送ローラ52cを低速回転から高速回転に変更できない。このような搬送ローラ52cの低速回転から高速回転への変更のタイミングを調整するために、搬送ローラ52aと搬送ローラ52cの間に、第1駆動装置54及び第2駆動装置56のいずれにも接続されていない搬送ローラ52b(以下、「従動ローラ52b」ともいう)が配置されている。
【0034】
図5(a)に示すように、セッター12は、熱処理部20(及び搬入部34)では、第1駆動装置54に接続される搬送ローラ52a(以下、「駆動ローラ52a」ともいう)のみに当接する。このため、熱処理部20(及び搬入部34)では、セッター12は駆動ローラ52aによって搬送される。熱処理部20からセッター12の一部が搬出されると、セッター12は、上流側(図5の−X側)において駆動ローラ52a上に当接し、下流側(図5の+X側)において従動ローラ52b上に当接する(図示省略)。このような状態では、セッター12はセッター12の上流側で当接する駆動ローラ52aによって搬送され、従動ローラ52bはセッター12との摩擦力によって回転する。すなわち、駆動ローラ52aと従動ローラ52bは、セッター12との間に滑りが生じていない状態で回転している。
【0035】
図5(b)に示すように、セッター12がさらに下流側に搬送されると、セッター12は、上流側において駆動ローラ52aに当接し、中間において従動ローラ52bに当接し、下流側において第2駆動装置56に接続される搬送ローラ52c(以下、「駆動ローラ52c」ともいう)に当接する。図5(b)では、セッター12は、3本の従動ローラ52bに当接すると共に、2本の駆動ローラ52aと、1本の駆動ローラ52cに当接している。このような状態では、第2駆動装置56は駆動ローラ52cを低速回転させる出力で駆動しており、駆動ローラ52cは駆動ローラ52aと略同一の速度で回転している。したがって、セッター12は、駆動ローラ52aが回転する速度と対応する速度で搬送される。このとき、従動ローラ52bは、セッター12との摩擦力によって回転し、セッター12の搬送速度と対応する速度で回転する。したがって、セッター12と従動ローラ52bとの間に滑りは生じておらず、セッター12が搬送ローラ52上に安定して支持される。
【0036】
図5(c)に示すように、セッター12がさらに下流側に搬送されると、セッター12は、3本の従動ローラ52bに当接すると共に、3本の駆動ローラ52cに当接する。このような状態では、セッター12は、セッター12に当接する3本の駆動ローラ52cによって搬送される。したがって、セッター12は、駆動ローラ52cが回転する速度と対応する速度で搬送される。このような状態になると、第2駆動装置56は、駆動ローラ52cを低速回転させる出力から高速回転させる出力に変える。これによって、セッター12は、搬出部40を高速搬送される。このとき、従動ローラ52bは、セッター12との摩擦力によって回転し、セッター12の搬送速度と対応する速度で回転する。したがって、セッター12と従動ローラ52bとの間に滑りは生じておらず、セッター12が搬送ローラ52上に安定して支持される。
【0037】
上述したように、セッター12は第2方向に複数並べて搬送される。このため、第2方向に複数並べて載置されるセッター12の全てが駆動ローラ52a上に載置されていない状態になると、駆動ローラ52cは低速回転から高速回転に変更される。例えば、各従動ローラ52b間にセンサが配置されており、センサによって第2方向に複数並んで搬送される各セッター12が検出される。各セッター12のうちのいずれかが駆動ローラ52a上に載置されている間は、駆動ローラ52cは、低速で回転される。そして、全てのセッター12が駆動ローラ52aから従動ローラ52bに移動したことが検出されると、駆動ローラ52cの回転速度は、低速から高速に変更される。本実施例では、従動ローラ52bのピッチP2は、駆動ローラ52a、52cのピッチP1より小さくされている。このため、各従動ローラ52b間に設置されるセンサが短い間隔で設置される。従動ローラ52bのピッチを駆動ローラ52a、52cのピッチP1と同様に大きくすると、各従動ローラ52b間に設置されるセンサの間隔が広くなる。すると、第2方向に複数並べて載置されるセッター12の全てが駆動ローラ52a上に載置されていない状態になっても、これを検出するまでにタイムロスが生じる。したがって、従動ローラ52bのピッチP2を小さくすることによって、第2方向に複数並べて載置されるセッター12の全てが駆動ローラ52a上に載置されていない状態を迅速に検出することができ、駆動ローラ52cの回転速度を迅速に変更することができる。
【0038】
また、搬出部40の熱処理部20側に従動ローラ52bを配置することによって、回転速度が異なる駆動ローラ52が隣接して配置されることを回避することができる。これによって、第2方向に複数並べて搬送されるセッター12が搬送方向にずれた場合であっても、セッター12の搬送速度の切り替えをスムーズに行うことができる。また、従動ローラ52bのピッチP2は、駆動ローラ52a、52cのピッチP1より小さくされているため、セッター12の搬送速度が切り替わる際にセッター12に当接する従動ローラ52bの数を増加させることができる。このため、セッター12の搬送速度の切り替えをよりスムーズに行うことができる。
【0039】
(実施例2)
上記の熱処理システム100では、被処理物(詳細には、被処理物を収容した匣鉢14)を載置したセッター12を熱処理炉10内に搬送して被処理物を熱処理していたが、このような構成に限定されない。例えば、熱処理条件や被処理物の種類によって、匣鉢114の底面の形状が変形しにくい場合には、熱処理炉10内に匣鉢114を直接搬送してもよい。なお、本実施例の熱処理システムは、熱処理炉10内に匣鉢114を直接搬送する点が実施例1の熱処理システム100と相違しており、その他の構成については略同一となっている。そこで、実施例1の熱処理システム100と同一の構成については、その説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、匣鉢114は箱状であり、底板114aと、底板114aの周縁から上方に(図6の+Z方向に)向かって突設される周壁114bを備えている。被処理物は、底板114aと周壁114bによって形成される空間114c内に直接収容される。匣鉢114は、例えば、金属製であり、底板114a及び周壁114bの板厚は一定である。底板114a及び周壁114bの板厚は特に限定されないが、本実施例では、約2mmである。なお、匣鉢114は金属製に限定されるものではなく、例えば、セラミック等の耐火物で形成されていてもよい。また、匣鉢をセラミック等の耐火物で形成する場合には、底板の板厚を周壁の板厚より厚くしてもよい。これによって、底板の強度が増し、匣鉢と被処理物とが反応して匣鉢の底面の形状が変化することを抑制することができる。また、匣鉢114の高さ方向(図6のZ方向)の寸法Hは、匣鉢114内に収容した被処理物が搬送中に飛び出すことがない寸法であれば特に限定されない。本実施例では、匣鉢114の高さ方向の寸法Hは80mmである。
【0041】
匣鉢114の搬送方向(図6のX方向)の寸法L3は、匣鉢114の第2方向(図6のY方向)の寸法L4より大きくされている。匣鉢114の搬送方向の寸法L3及び匣鉢114の第2方向の寸法L4は特に限定されないが、本実施例では、匣鉢114の搬送方向の寸法L3は640mmであり、匣鉢114の第2方向の寸法L4は320mmである。匣鉢114の搬送方向の寸法L3が、匣鉢114の第2方向の寸法L4より大きくされていることによって、熱処理炉10内に配置する搬送ローラ52のピッチを大きくすることができ、熱処理炉10内に配置する搬送ローラ52の数を少なくすることができる。これによって、匣鉢114の蛇行を抑制することができる。
【0042】
熱処理炉10内において匣鉢114が搬送される際には、被処理物の上面が略平坦となるように、被処理物を匣鉢114内に収容する。例えば、匣鉢114の搬送前に、被処理物が収容された状態の匣鉢114を振動させることによって被処理物の上面を略平坦にしてもよいし、匣鉢114の上方の複数箇所から被処理物を落下させることによって収容してもよい。被処理物の上面が略平坦にすることによって、匣鉢114内に収容された被処理物を均等に熱処理することができる。
【0043】
なお、匣鉢114の搬送方向の寸法L3は、搬送ローラ52aのピッチP1の4倍であってもよい。このような寸法にすることによって、熱処理部20及び搬入部34に配置される搬送ローラ52aが1本折損した場合であっても、熱処理部20及び搬入部34を搬送されるセッター12が搬送ローラ52aから落下することを回避することができる。
【0044】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
10:熱処理炉
12:セッター
14、114:匣鉢
20:熱処理部
22:外壁
24:空間
26、28:開口
30、32:ヒータ
34:搬入部
40:搬出部
50:搬送装置
52:搬送ローラ
54:第1駆動装置
56:第2駆動装置
58:制御装置
100:熱処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6