(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー膜と、それと離間し、かつ平行に配置されたバーとの間に、前記分散液を坦持させ、バーもしくはポリマー膜を移動させることによって金属ナノワイヤ層を形成させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
前記基板表面に前記金属ナノワイヤ層を接触するように重ね合わせてスタックとし、前記スタックを定着ローラーと加圧ローラーとの間の加圧部を通過させることによって前記金属ナノワイヤ層を前記基板に圧着し、引き続き前記加圧部から搬出されるスタックの前記ポリマー膜と前記基板とを引き剥がすことを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
前記ポリマー膜が表面に設置された回転ドラムを回転させ、その表面に前記分散液を供給して前記金属ナノワイヤ層を形成させ、前記回転ドラムの、前記分散液が供給された部分の下流側で、前記金属ナノワイヤ層を前記基板表面に圧着させることを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
前記ポリマー膜と、それと離間し、かつその表面と並行に配置されたバーを具備し、さらに前記ポリマー膜と前記バーとの間に前記分散液を坦持させる部材を具備する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態1]
まず、
図1A〜Cを用いて、第1の実施形態に係る透明電極の製造方法および製造装置について説明する。
図1A〜Cは、本実施形態に係る透明電極100の製造方法の概略図である。この透明電極の製造方法は、疎水性のポリマー膜101の上に金属ナノワイヤを含有する分散液102を直接塗布して金属ナノワイヤ層103を形成させる工程A(
図1A)と、上記ポリマー膜101の上に形成された金属ナノワイヤ層103の表面にポリマー膜103よりも親水性が高い表面を有する導電性基板104を直接圧着する工程B(
図1B)と、導電性基板104に金属ナノワイヤ103を転写する為にポリマー膜101と金属ナノワイヤ103層を剥離する工程C(
図1C)を含む。
【0012】
(工程A)
まず、疎水性のポリマー膜101の上に金属ナノワイヤを含有する分散液102を直接塗布して金属ナノワイヤ層103を形成させる。
【0013】
分散液102は、ポリマー膜101上に直接塗布される。実施形態においては、ポリマー膜と後述する基板の親水性の差を利用して転写を行うため、分散液はポリマー膜上に直接塗布される。実施形態においては、一般的に用いられる剥離層などは必要としない。
【0014】
分散液102を塗布する方法として、例えば、ポリマー膜と離間し、かつ平行に配置されたバー105との間に分散液102を坦持し、バーもしくはポリマー膜を移動させる方法が挙げられる。 ポリマー膜とバーとの間隔はポリマー膜の材質、塗布液の材質、バーの種類によって調整することができる。分散液はポリマー膜とバーとの隙間にノズルで供給したり、もしくはバーがノズルの機能を併せ持っていてもよい。
【0015】
そのほか、分散液をポリマー膜上にスプレー塗布してもよい。スプレーは複数の固定ノズルから行ってよいし、少ないノズルを往復移動させて行ってもよい。
【0016】
塗布して金属ナノワイヤ層103を形成させた後、必要に応じて加熱処理や減圧処理によって、分散媒の一部または全てを流去することもできる。
【0017】
ポリマー膜101は疎水性である。実施形態において疎水性であるとは、例えば純水の30℃での接触角が80度以上であり、好ましくは90度以上である。このようなポリマー膜を構成する材質としてはフッ素含有ポリマーが好ましい。フッ素含有ポリマーとして、炭化水素に含まれる水素の一部またはすべてがフッ素で置換されたフッ化炭化水素が典型例としてあげられる。このような炭化水素のうち、テトラフルオロエチレンの重合体が耐熱性や耐溶剤性、離型性から最も好ましい。またテトラフルオロエチレンの重合体から構成されるポリマー膜は、洗浄しやすく繰り返し使用の面からも好ましい。その他フッ素含有ポリマーとしては、フッ素含有モノマー、例えばビニリデンフルオライド、パーフルオロアルキルビニルエーテル等、の単重合体、共重合体、およびフッ素含有モノマーと炭化水素、例えばエチレンやポリプロピレンとの共重合体がある。その他の疎水性ポリマーの材料としてはシリコーン樹脂などがある。
【0018】
これらのポリマーは負に帯電しやすい。したがって金属ナノワイヤも負に帯電していると剥離しやすくなり転写しやすくなる。帯電しやすさは水中もしくは有機溶媒中でのゼータ電位の測定により見積もることができ、金属ナノワイヤの電位はポリマー膜の電位より低いことが好ましい。水中においてはpH6でのゼータ電位が二酸化炭素を含む大気中の環境から好ましい。
【0019】
金属ナノワイヤ分散液のゼータ電位は電気泳動光散乱法でマルバーン社製ゼータサイザーナノZSを用いキャピラリーセルにより測定することができる。水中でのpHは光触媒含有物や助触媒粒子を分散させた純水に希塩酸と希水酸化カリウム水溶液を添加して調整する。
【0020】
ポリマー膜のゼータ電位はマルバーン社製ゼータサイザーナノZSを用い平板ゼータ電位測定用セルによりポリスチレンラテックスをトレーサー粒子として電気泳動光散乱法で測定することができる。水中でのpHは純水に希塩酸と希水酸化カリウム水溶液を添加して調整する
【0021】
本実施形態においては、金属ナノワイヤに含まれる金属は特に限定されないが、導電性などの観点から、銀、銀合金、銅、および銅合金からなる群から選択される金属からなるナノワイヤが好ましく、銀からなるナノワイヤが特に好ましい。
【0022】
分散液に含まれる分散媒としては、水、アルコール類、またはこれらの混合物が用いられる。これらの中では水は環境的に最も好ましく、安価である。ただし、分散媒が水のみであるとポリマー膜上への塗布は一般に難しい。塗布を容易にするためには、疎水性ポリマーを高温にした上で、ノズル塗布に代えてスプレー塗布することが好ましい。
【0023】
また、分散媒としてアルコール類を用いると、分散液の表面張力が小さいため疎水性ポリマー上にも塗布しやすくなる。アルコール類のうち比較的低温で蒸発するものがより好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2―プロパノール、n−ブタノール、またはこれらの混合分散媒が好ましい。水とこれらアルコールとの混合分散媒も使用することができる。分散媒中には分散剤が混合されていてもよい。分散剤としてはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの高分子化合物、t−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノt―ブチルエーテルなどの低分子化合物が挙げられる。
【0024】
金属ナノワイヤ層103に含まれる複数のナノワイヤは、互いに一部が接触または融合して、網目状や格子状等のネットワーク状構造を形成する。こうして複数の導電性パスが形成され、全体が連なった導電クラスターが形成される(パーコレーション導電理論)。そのような導電クラスターが形成されるためには、ナノワイヤにある程度の数密度が必要とされる。一般的には、導電クラスターが形成されやすいのは、より長いナノワイヤであり、導電性が大きいのは、直径のより大きなナノワイヤである。このように、ナノワイヤを用いることによってネットワーク状構造が形成されるため、金属の量は少ないものの全体として高い導電性を示す。具体的には、実施形態におけるナノワイヤの塗設量は、一般に、0.05〜50g/m
2、好ましくは、0.1〜10g/m
2である。さらに好ましくは0.15〜1g/m
2である。この程度の密度で金属ナノワイヤが塗設されても、得られるナノワイヤ層はフレキシブルであるという利点を有している。
【0025】
金属ナノワイヤ層103は、通常、直径10〜500nm、長さ0.1〜50μmの金属ナノワイヤから構成されている。なお、金属ナノワイヤの直径および長さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)によって選られるSEM画像の解析により測定することができる。
【0026】
ナノワイヤの直径が小さすぎる場合には、ナノワイヤ自体の電気抵抗が大きくなる傾向があり、一方、直径が大きすぎる場合には、光散乱等が増大して透明性が低下するおそれがある。銀ナノワイヤの直径が20〜150nmであれば、こうした不都合は回避される。ナノワイヤの直径は、35〜120nmであることがより好ましい。
【0027】
ナノワイヤの長さが短すぎる場合には、十分な導電クラスターが形成されず電気抵抗が高くなる傾向にある。一方、銀ナノワイヤの長さが長すぎる場合には、電極等を製造する際の溶媒への分散が不安定になる傾向にある。長さが1〜40μm程度のナノワイヤであれば不都合は回避される。ナノワイヤの長さは、5〜30μmであることがより好ましい。
【0028】
金属ナノワイヤは、任意の方法で製造することができる。例えば銀ナノワイヤは、銀イオンの水溶液を種々の還元剤を用いて還元することによって、製造することができる。用いる還元剤の種類、保護ポリマーまたは分散剤、共存イオンを選択することによって、銀ナノワイヤの形状やサイズを制御できる。銀ナノワイヤの製造には、還元剤としてはエチレングリコールなどの多価アルコールを用い、保護ポリマーとしてはポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。こうした原料を用いることによって、ナノオーダーのいわゆるナノワイヤが得られる。
【0029】
なお、分散液中に、金属ナノ粒子を含ませることもできる。例えば、銀ナノワイヤ分散液中には、銀ナノ粒子が含まれていてもよい。銀ナノワイヤと銀ナノ粒子とは凝集しやすく、銀ナノ粒子は接着材として作用して、銀ナノワイヤ同士を良好に接合する。その結果、導電フィルムとしての電気抵抗を下げる働きを有する。
【0030】
(工程B)
次に、工程Aで形成された金属ナノワイヤ層103の表面に、導電性基板104を直接圧着する。圧着によって、ポリマー膜、金属ナノワイヤ層、および導電性基板のスタックが一時的に形成される。ここで、導電性基板の表面は、ポリマー膜よりも親水性が高いことが必要である。実施形態において、金属ナノワイヤ層103は、ポリマー膜と導電性基板の親水性の差を利用して転写を行うため、導電性基板の表面には一般的に用いられる接着層は不要である。
【0031】
圧着する場合の圧力は特に限定されない。ただし、この圧着は金属ナノワイヤ層と導電性基板が隙間なく密着させてスタックとすることが目的であるので、過度の圧力は不要である。
【0032】
導電性基板104としては、インジウム−スズ酸化物(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、バナジウムドープ酸化チタン等の透明導電金属酸化物、PEDOT:PSS等の導電性ポリマー、グラフェンなどの導電膜が表面に形成された基板が好ましい。またこれらの複合膜であってもよい。導電性基板の表面抵抗は金属ナノワイヤの転写により低減することが好ましい。基板の表面は無機材料からなることが好ましい。無機材料としては、例えばITO、AZO、酸化スズが挙げられる。これらの無機材料はUVオゾン処理などのドライプロセスで親水性を付与することができ、金属ナノワイヤの転写を容易にすることができる。基板には素子が作製されていてもよい。例えば太陽電池素子や有機EL素子を作製、上部の透明電極部に金属ナノワイヤ層を転写してもよい。
【0033】
グラフェンからなる導電膜は、グラフェンの単分子層(以下、単層グラフェン層という)が、平均で1層以上4層以下積層された構造を有することが好ましい。グラフェンは無置換グラフェン、窒素ドープグラフェン、またはホウ素ドープグラフェンが好ましい。このうち、無置換グラフェンおよびホウ素ドープグラフェンは陽極に好ましく、窒素ドープグラフェンは陰極に好ましい。ドープ量(N/C原子比)はXPSで測定することができ、0.1〜30atom%であることが好ましく、1〜10atom%であることがより好ましい。グラフェン層は遮蔽効果が高く、酸やハロゲンイオンの拡散を防ぐことにより金属ナノワイヤの劣化を低下することができる、さらに窒素ドープグラフェン層は窒素原子を含んでいることから酸に対するトラップ能も高いので、遮蔽効果はより高いものとなっている。
【0034】
図1Bに示される方法において、金属ナノワイヤ層を基板に直接圧着する工程は平板プレスによるものである。例えば、プレス機のポルスタプレートにポリマー膜を固定し、スライドに導電性基板を固定することで、金属ナノワイヤ層に導電性基板を圧着することができる。
【0035】
(工程C)
次に、金属ナノワイヤ層をポリマー膜から剥離させ、導電性基板に転写させる。この工程は、
図1Cに示した方法では、圧着のために印加した圧力と逆方向の力を印加することで達成される。
【0036】
具体的には、前記したようにプレス機で圧着を行った場合には、スライドをポルスタプレートから引き離す方向に移動させればよい。
その結果、金属ナノワイヤ層は相対的に親水性の高い導電性基板の表面に転写されて透明電極が製造される。
【0037】
(任意の追加工程)
金属ナノワイヤ層を転写した後、転写された金属ナノワイヤ層の表面に補助金属配線を作製する工程を含んでも良い。補助金属配線は集電に使用されるものである。この補助金属の形成に用いられる材料は、銀、金、銅、モリブデン、アルミニウムおよびこれらの合金であることが好ましい。補助金属配線の一部が導電性基板と接していることも可能であり、補助金属配線との電気的接合をより強固にすることができる。具体的には金属ナノワイヤ層の表面から補助金属配線が金属ナノワイヤ層を貫通して導電性基板に接合していても良い。また、あらかじめ補助金属配線を導電性基板上に形製しておいてもよい。
【0038】
補助金属配線層105の形状は、線状、くし状、網目状などの形状を取り得る。
【0039】
金属ナノワイヤ層を転写した後、金属ナノワイヤ層103上にポリマーもしくは絶縁性金属酸化物からなる絶縁層を設置する工程を含んでも良い。絶縁層が紫外線カット層またはガスバリア層として機能できるものであることがさらに好ましい。
【0040】
絶縁層が紫外線カット層として機能するためには、絶縁層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−n−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系化合物が挙げられる。これらは400nm以下の紫外線をカットすることができるものであることが望ましい。
【0041】
ガスバリア層は特に水蒸気と酸素を透過しにくいものが好ましく、特に水蒸気を遮断するものが好ましい。例えば、SiN、SiO
2、SiC、SiO
xN
y、TiO
2、Al
2O
3の無機物からなる層、超薄板ガラス等を好適に利用することができる。ガスバリア層の厚みは特に制限されないが、十分なガスバリア性を実現するために厚いことが好ましく、他方、フレキシブル性や柔軟性を維持するために薄いことが好ましい。このような観点から、ガスバリア層の厚さは、0.01〜3000μmの範囲であることが好ましく、0.1〜100μmの範囲であることがより好ましい。ガスバリア層の水蒸気透過量(透湿度)としては、10
2g/m
2・d〜10
−6g/m
2・dが好ましく、より好ましくは101g/m
2・d〜10
−5g/m
2・dであり、さらに好ましくは100g/m
2・d〜10
−4g/m
2・dである。尚、透湿度はJIS Z0208等に基づいて測定することができる。ガスバリア層を形成するには、乾式法が好適である。乾式法によりガスバリア性のガスバリア層を形成する方法としては、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、および誘導加熱蒸着などが挙げられる。さらには、プラズマ照射やイオンビーム照射によるアシストを組み合わせた真空蒸着法、反応性スパッタ法、イオンビームスパッタ法、ECR(電子サイクロトロン)スパッタ法などのスパッタ法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD法)、熱や光、プラズマなどを利用した化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。中でも、真空下で蒸着により膜形成する真空蒸着法が好ましい。
【0042】
[実施形態2−1]
図2を用いて、第2の実施形態の一つに係る透明電極の製造装置の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る透明電極の製造装置の構成概略図である。疎水性ポリマー膜201上に金属ナノワイヤ分散液を塗布する部材202と、該ポリマー上の金属ナノワイヤの少なくとも一部を直接基板203に圧着する圧着部材204Aと、ポリマー膜と基板との圧着を補助する圧着補助部材204Bとを具備する。
【0043】
図2において、圧着部材204Aはローラーとなっており、圧着補助部材204Bとの間に搬送されるポリマー膜および基板が重ね合わされたスタックを圧着するように配置される。圧着補助部材204Bは、図においてローラーであるが、圧着部材204Aによってスタックに加圧できるのであれば、平板状であってもよい。ただし、後述するように、連続的な透明電極の製造を可能とするためには圧着部材はローラーであることが好ましい。
【0044】
ポリマー膜201の表面に分散液を塗布した後、導電性基板203と共に圧着部材204Aおよび圧着補助部材204Bの間に搬送し圧着する。したがって、この方法によればスタックの形成と圧着とが同時に行われる。
【0045】
圧着部材204Aと圧着補助部材204Bとの間から搬出されたスタックは、直ちに剥離することができる。すなわち、ポリマー膜201と導電性基板203とをそれぞれ別の方向に引っ張ることにより、圧着部材204Aと圧着補助部材204Bとの間を起点として、それぞれに剥離される。すなわち、
図2においては圧着部材204Aと圧着補助部材204Bとが剥離部材の一部を構成している。ポリマー膜201と導電性基板203とをそれぞれ別の方向に引っ張る部材(図示せず)も剥離部材の一部である。
このような装置により、金属ナノワイヤ層が導電性基板に転写されて透明電極が製造される。
【0046】
図2に示される製造装置はロールツーロール法で連続的に製造を行う装置とすることもできる。すなわち、分散液塗布前または圧着前のポリマー膜、および圧着前の導電性基板をロールから供給し、剥離後のポリマー膜および透明電極をロールに巻き取る構成とすることができる。このような構成は、圧着の差異の圧力制御が容易であり、また圧着部材(ローラー)などの交換も容易であるためにメンテナンス性にも優れている。
【0047】
製造装置は、金属ナノワイヤ層、ポリマー膜、または基材を加熱する加熱部材をさらに具備してもよい。
【0048】
また、これらの製造装置は、分散液の塗布前にポリマー膜を洗浄する洗浄部材をさらに具備してもよい。このような洗浄部材は、刷毛、ドクターブレードなどが挙げられる。
【0049】
[実施形態2−2]
図3を用いて、別の第2の実施形態の一つに係る透明電極の製造装置の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る透明電極の製造装置の構成概略図である。疎水性ポリマー膜301上に金属ナノワイヤ分散液を塗布する塗布部材302と、該ポリマー上の金属ナノワイヤの少なくとも一部を直接基板303に圧着する圧着部材304Aと、ポリマー膜と基板との圧着を補助する圧着補助部材304Bを具備している。この装置ではポリマー膜301が回転ドラムの形状を有する圧着部材304Aの表面に設置されている。
【0050】
図3において、圧着部材304Aの表面に設置されたポリマー膜301の表面に分散液を塗布して、金属ナノワイヤ層305を形成させる。圧着部材304Aは回転し、圧着部材304Aと圧着補助部材304Bとの間に導電性基板303を引き込む。このとき、圧着部材304Aと圧着補助部材304Bとの間で、ポリマー膜301上の金属ナノワイヤ層305が導電性基板303に圧着される。したがって、この方法においても、実施形態2−1と同様にスタックの形成と圧着とが同時に行われる。
【0051】
圧着部材304Aと圧着補助部材304Bとの間から導電性基板303が引き出されるが、このとき金属ナノワイヤ層305は導電性基板に転写されている。そして、引き出されると同時に金属ナノワイヤ層はポリマー膜から剥離される。すなわち、
図3においては圧着部材304Aと圧着補助部材304Bとが剥離部材の一部を構成している。導電性基板303を引き出す部材(図示せず)も剥離部材の一部である。
【0052】
このような装置により、金属ナノワイヤ層が導電性基板に転写されて透明電極が製造される。
【0053】
実施形態を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0054】
(実施例1)
10cm角のPETフィルム上にITO層スパッタして、表面にITO層を有し、表面抵抗が300Ω/□の導電フィルムを作製する。
【0055】
直径70nmの銀ナノワイヤを水に分散させ0.3wt%の分散液を作製する。10cm角の厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレンシートを120℃の台の上に設置し、銀ナノワイヤ水性分散液をスプレー塗布して金属ナノワイヤ層を形成させる。pH6の水中でのゼータ電位はポリテトラフルオロエチレンシートが−17mV、銀ナノワイヤが−30mVである。
【0056】
100℃の台の上に上記銀ナノワイヤ層と上記ITO層が対向するスタックとし、その上に金属板を乗せてプレスして直接圧着する。次に、PETフィルムを端からはがしてポリテトラフルオロエチレンシートを剥がしてITO層上に銀ナノワイヤ層を転写する。
銀ナノワイヤ層はほぼ完全に転写され、表面抵抗が9Ω/□の透明電極が得られる。
【0057】
(実施例2)
10cm角のPETフィルム上にITOをスパッタして、表面にITO層を有し、表面抵抗が300Ω/□の導電フィルムを作製する。
【0058】
直径30nmの銀ナノワイヤをイソプロパノールに分散させ0.5wt%の分散液を作製する。10cm角の厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレンシートを60℃の台の上に設置し、直径5mmの円柱状のバーとテフロンシートの間(ギャップ:500μm)に銀ナノワイヤ分散液を坦持させる。テフロンシートとバーの間にはメニスカスが形成する。バーを5mm/sの速度で移動させ、銀ナノワイヤ分散液を塗布する。
【0059】
120℃の台の上に上記銀ナノワイヤ層と上記ITO層が対向するスタックとし、その上に金属ローラーを端から転がして直接圧着し、引き続いて剥離を行うことによってITO層上に銀ナノワイヤ層を転写する。
銀ナノワイヤ層はほぼ完全に転写され、表面抵抗が10Ω/□の透明電極が得られる。
【0060】
(実施例3)
図4に示す太陽電池セル400を作成する。
【0061】
絶縁性セラミックス層が裏面に形成されたステンレス箔401の表面を、希塩酸で処理して表面酸化膜を除去してから酸化グラフェンの水溶液をバーコーターで塗布して酸化グラフェン層を形成させる。次いで、90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンの炭素原子の一部が窒素原子に置換された2層N−グラフェン層からなる遮蔽層402に変化させる。
【0062】
N−グラフェン層402の上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含むバッファ層403(50nm厚)を形成させる。
【0063】
バッファ層403上にポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(以下、P3HTという)とC60−PCBMとを含むクロルベンゼン溶液をバーコーターで塗布し、100℃で20分乾燥することにより光電変換層404を作製する。
【0064】
光電変換層404の上にバッファ層としてC60−PCBMのトルエン溶液をバーコーターで塗布して乾燥させ、バッファ層405を形成させる。
【0065】
バッファ層405の上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン層からなる遮蔽層406に変化させる。
【0066】
遮蔽層406の表面にアモルファスITO層407(厚さ400nm)を室温スパッタで製膜する。赤外線ランプで窒素下でアニールしてITO層の一部を結晶化させる。
【0067】
直径70nmの銀ナノワイヤを水に分散させ0.3wt%の分散液を作製する。厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレンシートを120℃の台の上に設置し、銀ナノワイヤ分散液をスプレー塗布する。
【0068】
100℃の台の上にITO層407が上になるように置き、銀ナノワイヤとITOが接するように金属ローラーを転がして端から接触、剥離を行い銀ナノワイヤをITO上に転写し銀ナノワイヤ層408を作製する。
【0069】
次に銅を網目状に透明電極の10%の面積でスパッタして補助金属配線層409を作製する。全体を熱硬化性のシリコーン樹脂でコートした後加熱して厚さ40μmの絶縁層410を作製する。絶縁層の上に紫外線カットインクをスクリーン印刷して紫外線カット層411を作製する。紫外線カット層の上にCVDでシリカ層を製膜しガスバリア層412を作製する。さらに周りを封止することにより太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して5%以上のエネルギー変換効率を示す。
【0070】
(実施例4)
ポリテトラフルオロエチレンシートの代わりにポリジメチルシロキサンシートを用いることを除いては実施例1と同様にして透明電極を作製する。
銀ナノワイヤ層はほぼ転写される。ただし、実施例1に比較してわずかに転写残りが見られる。
【0071】
(実施例5)
図5に示された製造装置を用いて透明電極を作製する。
ポリテトラフルオロエチレン膜501が回転ドラム502上に設置されている。回転ドラムの内部にはヒーターが設置されている(図示せず)。金属ナノワイヤ分散液を塗布する部材503として円柱状の金属バー504とそれに金属ナノワイヤ分散液を供給するノズル505が設置されている。回転ドラムの基板の反対側には金属ローラー506が設置されており、圧着を補助する機能を有する。基板507を搬送する巻き取り装置が設置されている(図示せず)。またポリフルオロエチレン膜を洗浄するための刷毛508が設置されている。
【0072】
上記装置を用いてITO層が表面に作製されたPETフィルムロール上に銀ナノワイヤを連続的に転写し透明電極を作製する。
【0073】
以上の通り、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。