(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐熱性熱伝導性組成物は、硬化触媒を含み、前記のマトリックス樹脂成分は、付加硬化型シリコーンポリマーである請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性熱伝導性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子を含み、耐熱性向上剤として、ベンズイミダゾロン系化合物を含む耐熱性熱伝導性組成物である。マトリックス樹脂は、シリコーンゴム、シリコーンゲル、アクリルゴム、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。この中でもシリコーンは耐熱性が高いことから好ましく、エラストマー、ゲル、パテ、及びグリース、オイルから選ばれ、硬化システムは過酸化物、付加、縮合等いかなる方法を用いてもよい。また、周辺への腐食性がないこと、系外に放出される副生成物が少ないこと、深部まで確実に硬化することなどの理由により、付加硬化型シリコーンポリマーが好ましい。
【0011】
前記熱伝導性粒子は、アルミナ,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、シリカなどの無機粒子が好ましい。これらの無機粒子は、単独でも複数種類組み合わせて添加してもよい。熱伝導性粒子は、マトリックス樹脂を100質量部としたとき、100〜4000質量部添加するのが好ましく、さらに好ましくは500〜3000質量部である。
【0012】
本発明で使用する熱伝導性粒子は一部または全部がシランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤は予め熱伝導性粒子と混合して前処理しておいてもよく、マトリックス樹脂と硬化触媒と熱伝導性粒子を混合する際に添加してもよい(インテグラルブレンド法)。インテグラルブレンド法の場合には、本発明の耐熱性熱伝導性組成物に使用される表面処理されていない熱伝導性粒子100質量部に対し、シランカップリング剤を0.01〜10質量部添加するのが好ましい。表面処理することでマトリックス樹脂に充填されやすくなるとともに、熱伝導性粒子へ硬化触媒が吸着されるのを防ぎ、硬化阻害を防止する効果がある。これは保存安定性に有用である。
【0013】
本発明で使用するベンズイミダゾロン系化合物は、耐熱性熱伝導性組成物100質量部に対し、0.001〜5質量部添加するのが好ましく、より好ましくは0.001〜3質量部、さらに好ましくは0.001質量部以上0.5質量部未満である。0.001質量部未満では耐熱性向上効果が少なく、5質量部を超えると耐熱性効果はあるが、コスト的に不利となる。
【0014】
前記ベンズイミダゾロン系化合物は、その骨格にベンズイミダゾロン部位を含んでいれば良く、ベンズイミダゾロン系化合物にはベンズイミダゾロン系顔料も含まれる。ベンズイミダゾロン系顔料としては、英国染料染色学会および米国繊維科学技術・染色技術協会が共同で存率しているカラーインデックス(CI)名と番号で示される、Pigment Yellow 120(以下PY)、PY151、PY154、PY175、PY180、PY181、PY194、Pigment Orange 36(以下PO)、PO60、PO62、PO72、Pigment Red 171(以下PR)、PR175、PR176、PR185、PR208、Pigment Violet 32(以下PV32)、Pigment Brown 25(以下PBr25)等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系顔料の一例として、Pigment Yellow 181の構造を下記(化1)に示す。この化合物は4’−カルバモイル−4−[1−(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イルカルバモイル)アセトニルアゾ]ベンズアニリドで示される化合物である。ベンズイミダゾロン系化合物を加えると耐熱性が向上するメカニズムについては定かではないが、高温で発生する熱ラジカル等の熱分解の原因となる物質をこの化合物が吸収したり、抑制することによると思われる。
【0016】
前記耐熱性熱伝導性組成物は、硬化後のアスカーC硬度が70以下であるのが好ましく、さらに好ましくは50以下である。アスカーC硬度が70以下であれば、硬度(軟らかさ)は十分である。
【0017】
本発明における耐熱性は、温度150℃または220℃における暴露時間250時間以上経過後のアスカーC硬さの上昇率で評価し、ベンズイミダゾロン系化合物無添加に比べて硬さ上昇率が、80%以下に抑えられていることが好ましく、さらに好ましくは61%以下に抑えられていることであり、硬さ上昇率が80%以下であれば、実用的に耐熱性は十分である。
【0018】
本発明の耐熱性熱伝導性組成物はシートに成形されているのが好ましい。シート成形されていると電子部品等へ実装するのに好適である。前記耐熱性熱伝導性シートの厚みは0.2〜10mmの範囲が好ましい。また、耐熱性熱伝導性シートの熱伝導率は0.8W/m・K以上が好ましく、さらに好ましくは1.0W/m・K以上である。熱伝導率0.8W/m・K以上であれば、発熱部からの熱を放熱体に熱伝導するのに適している。
【0019】
前記耐熱性熱伝導性組成物の絶縁破壊電圧(JIS K6249)は、11〜16kV/mmであるのが好ましい。これにより、電気的絶縁性の高い耐熱性熱伝導性シートとすることができる。
【0020】
前記耐熱性熱伝導性組成物の体積抵抗率(JIS K6249)は、10
10〜10
14Ω・cmであるのが好ましい。これにより、電気的絶縁性の高い耐熱性熱伝導性シートとすることができる。
【0021】
本発明の耐熱性熱伝導性組成物は、下記(A)〜(E)成分を含み、及び任意成分として(F)(G)(H)成分等を混合し、架橋することが好ましい。
(A)ベースポリマー成分:1分子中にアルケニル基が結合したケイ素原子を平均2個以上含有するオルガノポリシロキサン
(B)架橋成分:1分子中に水素原子が結合したケイ素原子を平均2個以上含有するオルガノポリシロキサンが、前記A成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.01〜3モル
(C)触媒成分:白金族系金属触媒であり、A成分と白金族系金属触媒の合計に対して金属原子重量単位で0.01〜1000ppmの量
(D)熱伝導性粒子:付加硬化型シリコーンポリマー成分(A成分+B成分)100質量部に対して100〜4000質量部
(E)ベンズイミダゾロン系化合物:耐熱性熱伝導性組成物100質量部に対し、0.001〜5質量部
(F)付加硬化型シリコーンポリマー成分(A成分+B成分)100質量部に対してさらにアルキルトリアルコキシシランを0.1〜10質量部添加しても良い。
(G)付加硬化型シリコーンポリマー成分(A成分+B成分)100質量部に対してさらに無機粒子顔料0.1〜10質量部添加しても良い。
(H)付加硬化型シリコーンポリマー(A成分+B成分)100質量部に対してさらに付加硬化反応基を持たないオルガノポリシロキサン0.5〜50質量部添加しても良い。
【0022】
以下、各成分について説明する。
(1)ベースポリマー成分(A成分)
ベースポリマー成分は、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、アルケニル基を2個含有するオルガノポリシロキサンは本発明のシリコーンゲル組成物における主剤(ベースポリマー成分)である。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個以上有する。粘度は25℃で10〜100,000mPa・s、特に100〜10,000mPa・sであることが作業性、硬化性などから望ましい。
【0023】
具体的には、下記一般式(化2)で表される1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンを使用する。側鎖はアルキル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである。25℃における粘度は10〜100,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0025】
式中、R
1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
2はアルケニル基であり、kは0又は正の整数である。ここで、R
1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。R
2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2〜8、特に2〜6のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。一般式(化2)において、kは、一般的には0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する正の整数である。
【0026】
A成分のオルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3〜30個、好ましくは、3〜20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10〜100,000mPa・s、特に100〜10,000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0027】
アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(化3)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1〜3個のアルケニル基を有し(但し、この分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が、両末端合計で3個未満である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基を、(例えばジオルガノシロキサン単位中の置換基として)、少なくとも1個有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって)、上記でも述べた通り25℃における粘度が10〜100,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0029】
式中、R
3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。R
4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5はアルケニル基であり、l,mは0又は正の整数である。ここで、R
3の一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0030】
また、R
4の一価炭化水素基としても、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。R
5のアルケニル基としては、例えば炭素数2〜8、特に炭素数2〜6のものが好ましく、具体的には前記式(化2)のR
2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。
【0031】
l,mは、一般的には0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0032】
(2)架橋成分(B成分)
本発明のB成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この成分中のSiH基とA成分中のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよく、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2〜1000、特に2〜300程度のものを使用することができる。
【0033】
水素原子が結合するケイ素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも非末端(途中)でもよい。また、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前記一般式(化2)のR
1と同様の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
【0034】
B成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては一般式下記(化4)が例示できる。
【化4】
【0035】
上記の式中、R
6は互いに同一又は異種のアルキル基、フェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシ基、水素原子であり、少なくとも2つは水素原子である。Lは0〜1,000の整数、特には0〜300の整数であり、Mは1〜200の整数である。
【0036】
(3)触媒成分(C成分)
C成分の触媒成分は、本組成物の硬化を促進させる成分である。C成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金酸、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族系金属触媒が挙げられる。C成分の配合量は、硬化に必要な量であればよく、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができる。A成分と白金族系金属触媒の合計に対して金属原子重量として0.01〜1000ppm添加するのが好ましい。
【0037】
(4)熱伝導性粒子(D成分)
本発明のD成分は、付加硬化型シリコーンポリマー成分(A成分+B成分)100質量部に対して、100〜4000質量部添加するのが好ましい。これにより耐熱性熱伝導性組成物及び耐熱性熱伝導性シートの熱伝導率を0.8W/m・K以上とすることができる。熱伝導粒子としては、アルミナ,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム及びシリカから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものを使用できる。熱伝導性粒子の比表面積は0.06〜15m
2/gの範囲が好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。平均粒子径を用いる場合は、0.1〜100μmの範囲が好ましい。粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。
【0038】
熱伝導性粒子は平均粒子径が異なる少なくとも2つの無機粒子を併用してもよい。このようにすると大きな粒子径の間に小さな粒子径の熱伝導性無機粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性が高くなるからである。
【0039】
無機粒子は、R
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるシラン化合物、もしくはその部分加水分解物で表面処理するのが好ましい。前記のアルコキシシラン化合物(以下単に「シラン」という。)は、一例としてメチルトリメトキシラン,エチルトリメトキシラン,プロピルトリメトキシラン,ブチルトリメトキシラン,ペンチルトリメトキシラン,ヘキシルトリメトキシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキサデシルトリメトキシシラン,ヘキサデシルトリエトキシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエトキシシラン等のシラン化合物がある。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。
【0040】
(5)ベンズイミダゾロン系化合物(E成分)
E成分は、粉末のまま添加しても良く、樹脂とマスターバッチ化して使用しても良い。マスターバッチに使用する樹脂はシリコーンポリマーが好ましく、硬化性シリコーンポリマーでも反応基のないシリコーンポリマーでも良く、またその両方を使用したものでも良い。
【0041】
(6)その他添加剤
本発明の組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えばベンガラ、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、難燃助剤、硬化遅延剤などを添加してもよい。着色、調色の目的で有機或いは無機粒子顔料を添加しても良い。フィラー表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。また、付加硬化反応基を持たないオルガノポリシロキサンを添加しても良い。25℃での粘度が10〜100,000mPa・s、特に100〜10,000mPa・sであることが作業性から望ましい。
【実施例】
【0042】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。各種パラメーターについては下記の方法で測定した。
<熱伝導率>
耐熱性熱伝導性シリコーンゲルシートの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置1は
図1Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ2を2個の試料3a,3bで挟み、センサ2に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ2の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ2は先端4が直径7mmであり、
図1Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極5と抵抗値用電極(温度測定用電極)6が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。
【数1】
<硬さ>
作製した耐熱性熱伝導性シリコーンゲルシートの硬さは、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)アスカーC硬度に従い測定した。
<耐熱性>
作製した耐熱性熱伝導性シリコーンゲルシートを重ねて厚さを10mm以上になるよう試験ブロックを用意し、金網の上においた状態で150℃または220℃の熱風循環式オーブンに投入し、所定の時間経過した後取り出し、室温まで冷やした後、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)アスカーC硬度に従い硬さを測定した。
耐熱性は、150℃または220℃に曝露後のアスカーC硬さの上昇率で評価した。
上昇率は下記の式(数2)で算出した。
[数2]
上昇率(%)=[ | B´-B | / | A´-A | ]×100
A :耐熱向上剤無添加サンプルの初期硬さ
A´:150℃または220℃曝露後の耐熱向上剤無添加サンプルの硬さ
B :耐熱向上剤を添加したサンプルの初期硬さ
B´:150℃または220℃にA´と同時間曝露後の耐熱向上剤添加サンプルの硬さ
※A、Bのサンプルは、耐熱添加剤の有無以外同一の配合及び加工方法とした。
【0043】
(実施例1〜2、比較例1)
1.材料成分
(1)マトリックス樹脂
硬化後シリコーンゲルとなる2液付加硬化型シリコーンポリマーを使用した。一方の液(A液)には、ベースポリマー成分(A成分)と白金族系金属触媒(C成分)が含まれており、他方の液(B液)には、ベースポリマー成分(A成分)と架橋剤成分(B成分)であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが含まれる。
【0044】
(2)熱伝導性粒子
表1に記載の熱伝導性粒子を使用した。平均粒径が10μm以下のアルミナ粒子は、シランカップリング剤で表面処理されたものを用いた。これにより、白金族系金属触媒(C成分)の触媒能である硬化反応が損なわれることを防いだ。なお、平均粒子径は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)である。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。表中の数値は各粒子の平均粒子径である。
【0045】
(3)白金族系金属触媒
白金族系金属触媒として、白金−ビニルシロキサン錯体を使用した。尚、上記の通り2液付加硬化シリコーンポリマーには白金族系金属触媒が含まれている。各実施例のシリコーン組成物において、ベースポリマー成分(A成分)と前記白金族系金属触媒の合計に対する前記白金族系金属触媒の量は、いずれも、白金原子重量換算で0.01〜1000ppmの範囲の値とした。
【0046】
(4)ベンズイミダゾロン系化合物
ベンズイミダゾロン系化合物として、前記Pigment Yellow 181を耐熱性熱伝導性組成物100質量部に対して表1に示す量を計量して添加した。
【0047】
2.耐熱性熱伝導性組成物
各材料について表1に示す量を計量し、それらを混練装置に入れてコンパウンドとした。
尚、表1において、各材料の量を、2液付加硬化シリコーンポリマーを100質量部(100g)とした場合の量(質量部)で記載しているが、いずれの耐熱性熱伝導性組成物においても、2液付加硬化シリコーンポリマー100質量部(100g)に対する、熱伝導性粒子、その他の成分の添加量は、各々、既述の本発明における好ましい量を満たしている。ただし、比較例1は、ベンズイミダゾロン系化合物を添加しない以外は実施例1と同様に実施した。
【0048】
3.シート成形加工
離型処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで前記耐熱性熱伝導性組成物を挟み込み、ロールプレス機にて厚み2.0mmのシート状に成形し、100℃、15分加熱硬化し、耐熱性熱伝導性シリコーンゲルシートを成形した。耐熱性の評価は、温度150℃で実施した。以上の条件を表1、結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例3、比較例2)
熱伝導性粒子の添加量を表3に示す以外は実施例1と同様に実施した。条件を表3、結果を表4に示す。
【0052】
(比較例3)
顔料として、下記(化5)に示すイソインドリノン系顔料:Pigment Yellow 110(PY110):4,5,6,7−テトラクロロ−3−[[4−[(1−オキソ−4,5,6,7−テトラクロロ−2H−イソインドール−3−イリデン)アミノ]フェニル]イミノ]−2H−イソインドール−1(3H)−オンを添加した以外は実施例1と同様に実施した。条件と結果を表3〜4に示す。
【化5】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
(実施例4、比較例4)
熱伝導性粒子と添加剤の添加量を表5に示す以外は実施例1と同様に実施した。条件を表5、結果を表6に示す。この例は、アルミナ粒子だけではなく、窒化アルミニウムを配合した。また、硬さ特性を調整するための添加剤としてジメチルシリコーンポリマー(粘度100mPa・s)も添加した。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
(実施例5〜9、比較例5〜7)
熱伝導性粒子と耐熱向上剤の種類および添加量を表7に示す以外は実施例1と同様にシートを作製し、耐熱性の評価は温度220℃で実施した。条件を表7、表8、結果を表9に示す。
比較例5(アントラキノン類化合物添加)は硬化不良が発生し、シート硬さが低下した。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
(実施例10〜14、比較例7)
熱伝導性粒子と耐熱向上剤添加量を表7に示す以外は実施例1と同様に実施した。耐熱性の評価は温度220℃で実施した。条件を表10、結果を表11に示す。
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
以上の実施例のとおり、熱伝導性組成物及び熱伝導性シートにおいて、ベンズイミダゾロン系化合物を添加することにより、耐熱性が向上することが確認できた。
マトリックス樹脂と熱伝導性粒子を含む耐熱性熱伝導性組成物であり、耐熱性向上剤としてベンズイミダゾロン系化合物を含む。前記ベンズイミダゾロン系化合物は、ベンズイミダゾロン系顔料が好ましく、耐熱性熱伝導性組成物100質量部に対し、0.001〜5質量部添加するのが好ましい。前記マトリックス樹脂成分は、シリコーンポリマーが好ましい。前記耐熱性熱伝導性組成物は、硬化後のアスカーC硬度が70以下が好ましい。これにより、金属原子を含まない耐熱向上剤を使用し、高温時にも硬くなりにくい耐熱性熱伝導性組成物及び耐熱性熱伝導性シートを提供する。