特許第6779011号(P6779011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779011
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】ブラシ用ブリッスル
(51)【国際特許分類】
   A46D 1/05 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
   A46D1/05
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-256446(P2015-256446)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-118939(P2017-118939A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】比屋定 拓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
【審査官】 村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−144230(JP,A)
【文献】 特開2006−141991(JP,A)
【文献】 特開2005−000310(JP,A)
【文献】 特開2014−087637(JP,A)
【文献】 特開2007−167297(JP,A)
【文献】 特開平10−057149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00〜17/08
A46D 1/00〜99/00
A61C 17/22〜17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるブラシ用ブリッスルであって、
先端に向かって断面積が減少するテーパー形状部分を先端側に備えており、
先端から300μmの領域における表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなっており、
先端から5mmの位置を中心とした、軸方向の300μmの領域における表面の算術平均粗さRaが、0.07〜0.4μmとなっており、
前記先端から300μmの領域における表面の算術平均粗さRaと、前記先端から5mmの位置を中心とした軸方向300μmの領域における表面の算術平均粗さRaとの差が、0.1〜0.6μmとなっているブラシ用ブリッスル。
【請求項2】
前記テーパー形状部分以外の部分の最大直径が、130〜250μmとなっている請求項1記載のブラシ用ブリッスル。
【請求項3】
前記先端から300μmの領域における表面の算術平均粗さRaの、前記テーパー形状部分以外の部分の最大直径に対する比(Ra/最大直径)が、1×10-3〜6×10-3となっている請求項2記載のブラシ用ブリッスル。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のブラシ用ブリッスルの製造方法であって、前記ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるブリッスルの先端部を、アルカリ剤を含む薬液に浸漬して、先端から300μmの領域における表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなるように加工する工程を含むブラシ用ブリッスルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のブラシ用ブリッスルが、ヘッド部に植毛されるブリッスルの少なくとも一部として植設されている歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ用ブリッスル、該ブラシ用ブリッスルの製造方法、及び歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば歯ブラシ等の、清掃用又は洗浄用のブラシ具に用いられる樹脂製のブリッスル(ブラシ毛材)として、ポリアミド(ナイロン6−10、ナイロン6−12)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等によるブリッスルが一般に用いられているが、近年、耐久性に優れるポリエステル樹脂である、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)によるブリッスルが種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。PTTは、伸長回復性に優れ、低い応力で伸長すると共に、その回復力も高いことから、例えば歯ブラシのブリッスルとして用いた場合、ナイロン(登録商標)やPBTを用いたブリッスルと比較して、柔らかい感触が得られると共に、耐久性に優れている。
【0003】
また、ブリッスルの先端側部分を、先端に向かって断面積が減少するテーパー形状に形成することにより、例えば歯間や歯周ポケットなどの極く狭い部分にまで毛先部を届かせて、これらの部分の歯垢等の汚れを効果的に除去できるようにしたブリッスルが知られており、これに加えて、テーパー形状の先端側部分に豆痕状や蛇腹状の凹凸を形成することで、例えば歯垢等の歯の汚れの掻き出しによる除去効果を高めた歯ブラシも開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、PTTによるブリッスルに関しても、先端側部分を、先端に向かって断面積が減少するテーパー形状に形成すると共に、テーパー形状の先端側部分の表面に凹凸を形成することで、天然獣毛によるブリッスルと同様の、しなやかさと、化粧料や薬剤の優れた保持性が得られるようにしたブリッスルも開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−80958号公報
【特許文献2】特開平8−47423号公報
【特許文献3】特開2006−141911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PTTによるブリッスルは、そのゴム状弾性による柔軟性及び復元性によって、ナイロン(登録商標)やPBTを用いた細いブリッスルと比較して、より太いブリッスルでも、同様の柔らかい感触を得ることが可能であるが、その一方で、清掃部への当たりも柔らかいために清掃実感に欠ける虞がある。
【0007】
また、特許文献3のブリッスルのように、PTTによるブリッスルの先端側部分をテーパー形状に形成すると共に、図6に示すような1〜12μm程度の深い凹凸を形成した場合には、獣毛のような柔らかさによって、かえって清掃性等を損なうことになる。
【0008】
本発明は、柔らかい感触を得ることができると共に、先端側部分が細かい凹凸にも入りやすく、且つ清掃時の摩擦力を向上することが可能となり、柔らかな感触と清掃実感とを両立することができると共に、摩擦力の高さにより化粧料や剤に対する優れた保持性を得ることのできるブラシ用ブリッスル、該ブラシ用ブリッスルの製造方法、及び該ブラシ用ブリッスルを用いた歯ブラシに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるブラシ用ブリッスルであって、先端に向かって断面積が減少するテーパー形状部分を先端側に備えており、先端から300μmの領域における表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなっているブラシ用ブリッスルに関する。
【0010】
また、本発明は、上記ブラシ用ブリッスルの製造方法であって、前記ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるブリッスルの先端部を、アルカリ剤を含む薬液に浸漬して、先端から300μmの領域における表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなるように加工する工程を含むブラシ用ブリッスルの製造方法に関する。
【0011】
さらに、本発明は、上記ブラシ用ブリッスルが、ヘッド部に植毛されるブリッスルの少なくとも一部として植設されている歯ブラシに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブラシ用ブリッスル、又は該ブラシ用ブリッスルを用いた歯ブラシによれば、柔らかい感触を得ることができると共に、清掃時や洗浄時における高い摩擦力により清掃実感が得られ、極く狭い部分の汚れに対しても優れた除去効果を得ることができると共に、かかる高い摩擦力により化粧料や剤に対する優れた保持性を得ることができる。
【0013】
また、本発明のブラシ用ブリッスルの製造方法によれば、上記ブラシ用ブリッスルを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るブラシ用ブリッスルを用いた清掃用又は洗浄用のブラシ具である歯ブラシの略示側面図である。
図2図1の歯ブラシの植毛台に設けられた植毛穴の配置の一例を示す拡大略示上面図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るブラシ用ブリッスルを説明する部分破断拡大略示側面図である。
図4】本発明の好ましい一実施形態に係るブラシ用ブリッスルの先端部のマイクロスコープによる観察画像である。
図5】本発明の好ましい一実施形態に係るブラシ用ブリッスルの毛先部のマイクロスコープによる観察画像である。
図6】従来のブラシ用ブリッスルの毛先部のマイクロスコープによる観察画像である。
図7】比較例1のブラシ用ブリッスルの毛先部のマイクロスコープによる観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係るブラシ用ブリッスル10(図3参照)は、清掃用又は洗浄用のブラシ具として、好ましくは図1及び図2に示す歯ブラシ20の、ヘッド部(植毛台)21に植設される各々の毛束(タフト)15を構成する、複数本のブリッスル16の少なくとも一部として用いられる。すなわち、本実施形態では、歯ブラシ20は、把持部22と、ヘッド部21とこれらを連結する首部23とからなる歯ブラシ本体24の、ヘッド部21に設けられた複数の植毛穴25に、複数本のブリッスル16を束ねて形成された複数の毛束15を、各々植設(植毛)することによって構成される。これによって、本実施形態のブラシ用ブリッスル10は、ヘッド部21に植毛されるブリッスル16の少なくとも一部として植設される。本実施形態のブラシ用ブリッスル10は、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなり、図3に示すように、先端側にテーパー形状部分11を備え、少なくとも毛先部12の表面が所定の算術平均粗さを備えていることによって(図4図5参照)、柔らかい感触を得ることができると共に、例えば歯間や歯周ポケットや歯肉溝等の、極く狭い部分の歯垢等の汚れに対して、高い摩擦力により優れた除去効果を発揮できるようになっている。
【0016】
そして、本実施形態のブラシ用ブリッスル10は、清掃用又は洗浄用のブラシ具として、好ましくは歯ブラシ20に用いられる、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるブリッスル(ブラシ毛材)10であって、図3図5に示すように、先端に向かって断面積が減少するテーパー形状部分11を先端側に備えており、先端から300μmの領域である毛先部12の表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなっている。
【0017】
また、本実施形態では、好ましくは、ブラシ用ブリッスル10における、先端から5mmの位置を中心とした、軸方向の300μmの領域における表面の算術平均粗さRaが、0.07〜0.4μmとなっている。
【0018】
ここで、本実施形態のブラシ用ブリッスル10を形成するための、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂は、好ましくはポリトリメチレンテレフタレートを65質量%〜100質量%含む樹脂であり、より好ましくは80質量%〜100質量%含む樹脂である。
【0019】
本実施形態では、歯ブラシ20のヘッド部21に植設される各々の毛束15を構成するブリッスル16は、少なくとも一部として、好ましくは全部が、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなるブラシ用ブリッスル10となっている。本実施形態では、ブラシ用ブリッスル10は、先端側に、先端に向かって断面積が減少するテーパー形状部分11を備えている。ブラシ用ブリッスル10は、テーパー形状部分11以外の部分が、130〜250μm(約5〜10mil)の太さ(直径)の円形の断面形状を備える部分となっている。これによって、ブラシ用ブリッスル10は、テーパー形状部分11以外の部分の最大直径が、好ましくは130〜250μmとなっており、より好ましい最大直径は150〜220μmである。
【0020】
また、本実施形態では、ブラシ用ブリッスル10のテーパー形状部分11は、先端に向かって断面積が減少する部分となっており、後述する、アルカリ剤を含む薬液に先端部を浸漬する化学処理による方法によって、ブリッスル10の先端側に容易に設けることができる。テーパー形状部分11は、先端からの長さL2が、ブリッスル10のヘッド部21の表面からの植毛高さLの25〜80%の長さとなるように設けられていることが好ましく、30〜70%の長さとなるように設けられていることが更に好ましく、40〜60%の長さとなるように設けられることがより一層好ましい。ブリッスル10のヘッド部21の表面からの植毛高さLは、歯肉にソフトな感触を与える点、歯間等への挿入性、及びブリッスル10にしなやかさを与える観点等から、例えば9〜15mmとすることができ、好ましくは10〜14mmとすることができ、更に好ましくは11〜13.5mmとすることができる。
【0021】
ブラシ用ブリッスル10における、テーパー形状部分の長さは、ブリッスルの中心軸の長さである。テーパー形状部分の長さは、テーパー形状部分11の直径が、テーパー形状部分11以外の部分の最大直径の95%の大きさとなった位置をテーパー開始部11aとして、テーパー開始部11aから先端部12までの長さであり、先端が曲がっている場合は、曲がった部分を伸ばした状態の長さとして、ブリッスルの中心軸の長さを測定する。テーパー形状部分11の長さは、歯間や歯周ポケットなどの、極く狭い部分への到達性の向上と、柔らかさを得る観点から、好ましくは4〜10mmであり、より好ましくは5〜8mmである。
【0022】
そして、本実施形態では、ブラシ用ブリッスル10のテーパー形状部分11の先端から300μmの領域である毛先部12における、表面の算術平均粗さRaが、図4及び図5に示すように、0.2〜1μmとなっている。ここで、ブラシ用ブリッスル10のテーパー形状部分11の表面の算術平均粗さRaは、例えばJIS規格B0601(2013年改定版)に従って測定、及び計算された平均粗さである。また、テーパー形状部分11の先端から300μmの毛先部12の領域は、好ましくは市販のマイクロスコープによって、1枚の画像による測定画像を得ることが可能な大きさの領域である。
【0023】
ブラシ用ブリッスル10のテーパー形状部分11の毛先部12における表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなっていることにより、テーパー形状部分における化粧料や剤に対する保持力を向上させることが可能になり、また、清掃時の汚れ除去性能を向上させることが可能になる。また、テーパー形状部分11の毛先部12における表面の算術平均粗さRaは、凹凸によって表面の摩擦力を向上させ、清掃面に付着した汚れを除去しやすくし、及び/または表面積の増大によってブリッスル表面に化粧料や剤を保持しやすくするという観点から、0.25μm以上となっていることが好ましく、0.3μm以上となっていることが更に好ましい。テーパー形状部分11の毛先部12における表面の算術平均粗さRaは、表面の凹凸に起因する皮膚や粘膜への過度な摩擦感を感じないようにし、或いはブリッスル10の弾力性を確保する観点から、0.8μm以下となっていることが好ましく、0.7μm以下となっていることが更に好ましく、0.6μm以下となっていることがより一層好ましい。テーパー形状部分11の毛先部12における表面の算術平均粗さRaは、凹凸による摩擦力を向上させつつ、ブリッスル10の弾力性を確保する観点から、0.25〜0.8μmとなっていることが好ましく、0.3〜0.7μmとなっていることが更に好ましく、0.3〜0.6μmとなっていることがより一層好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、好ましくは、テーパー形状部分11の先端から300μmの領域である毛先部12における表面の算術平均粗さRaの、テーパー形状部分11以外の部分の最大直径に対する比(Ra/最大直径)が、1×10-3〜6×10-3となっている。これによって、ブリッスル10の柔らかな感触を保持しながら、歯間等の隙間に入りやすくし、かつ歯の表面等の清掃面への摩擦力を向上させることが可能になる。毛先部12における表面の算術平均粗さRaの、テーパー形状部分11以外の部分の最大直径に対する比(Ra/最大直径)は、ブリッスル10の適度な弾力性を確保し、毛先部12の微細な凹凸による清掃性能を確保し、化粧料や剤の保持性を確保する観点から、1.5×10-3〜5×10-3となっていることが好ましく、1.85×10-3〜4×10-3となっていることが更に好ましい。
【0025】
さらに、本実施形態では、好ましくは、テーパー形状部分11の先端から5mmの位置を中心とした、ブラシ用ブリッスル10の軸方向の300μmの領域における表面の、例えばJIS規格B0601(2013年改定版)に従って測定、及び計算された算術平均粗さRaが、0.08〜0.7μmとなっている。このように、毛先部12から離れるに従って平均粗さRaが小さくなることによって、ブリッスル10の適度な弾力性を十分に確保しながら、毛先部12の摩擦力を向上させて、清掃性能、及び化粧料や剤の保持性を効果的に向上させることができる。テーパー形状部分11の先端から5mmの位置を中心とした軸方向の300μmの領域における表面の算術平均粗さRaは、上述のようにブリッスル10の柔らかさや適度な弾力を確保する観点から、0.1〜0.35μmとなっていることが好ましく、0.15〜0.3μmとなっていることが更に好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、ブラシ用ブリッスル10のテーパー形状部分11の先端から300μmの領域である毛先部12における、表面の算術平均粗さRaと、先端から5mmを中心とした軸方向の300μmの領域における表面の算術平均粗さRaとの差は、先端部分の摩擦力を確保しながら、ブリッスル10の弾性を維持する観点から、0.1〜0.6μmであることが好ましく、0.15〜0.45μmであることがより好ましく、0.15〜0.3μmであることが更に好ましい。
【0027】
本実施形態では、ブラシ用ブリッスル10のテーパー形状部分11は、上述のように、アルカリ剤を含む薬液に先端部を浸漬する化学処理による方法によって、ブリッスル10の先端側に容易に設けることができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を溶解することが可能な溶剤を用いて、ブリッスル10の先端部を処理する化学処理による方法によって、ブリッスル10の先端側に容易に設けることができる。ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を溶解することが可能な溶剤として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムによるアルカリ性水溶液等の、アルカリ剤を含む薬液を用いることができる。
【0028】
アルカリ剤を含む薬液にブラシ用ブリッスル10の先端部を浸漬して、テーパー形状部分11を形成する方法は、例えば使用する薬液の種類、ブリッスル10の先端部を浸漬する際の浸漬速度、浸漬を繰り返す回数等を適宜調整して、先端から300μmの領域における毛先部12の表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなるように加工する工程を含んでいる。これによって、テーパー形状部分11の毛先部12の表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなるように、ブラシ用ブリッスル10を容易に形成することが可能になる。また同様に、テーパー形状部分11における先端から5mmの位置を中心とした、軸方向の300μmの領域の表面の算術平均粗さRaが、0.08〜0.7μmとなるように加工する工程を含ませることにより、テーパー形状部分11における先端から5mmの位置を中心とした、軸方向の300μmの領域の表面の算術平均粗さRaが、0.08〜0.7μmとなるように、ブラシ用ブリッスル10を容易に形成することが可能になる。
【0029】
本実施形態では、上述の構成を備えるブラシ用ブリッスル10を複数本束ねて形成された複数の毛束15を、歯ブラシ本体24のヘッド部21に設けられた複数の植毛穴25に、各々植設(植毛)することによって歯ブラシ20が形成される。毛束15を植設する方法としては、例えば、毛束15を平線で2つ折りにして打ち込む方法や、融着植毛等、公知の各種の植毛方法を採用することが可能である。
【0030】
なお、本実施形態では、好ましくは各々の毛束15を構成するブリッスル16の全部が、上述の構成を備えるブラシ用ブリッスル10となっているが、本実施形態のブラシ用ブリッスル10は、各々の毛束15を構成するブリッスル16のうちの、少なくとも一部として含まれていれば良い。また、本実施形態のブラシ用ブリッスル10は、しなやかな変形によって毛束15が歯面に追従し、かつ歯間や歯周ポケット等の極く狭いすき間に毛先が入りやすくなると同時に、柔らかな感触を確保する観点から、各々毛束15のブリッスル16に、10〜100%の割合で含まれていることが好ましく、50〜100%の割合で含まれていることが更に好ましく、80〜100%の割合で含まれていることがより一層好ましい。
【0031】
そして、上述の構成を備える本実施形態のブラシ用ブリッスル10及び歯ブラシ20によれば、柔らかい感触を得ることができると共に、高い摩擦力により極く狭い部分の汚れに対する優れた除去効果を得ることが可能になると共に、清掃実感が得られ、且つ化粧料や剤に対する優れた保持性を得ることが可能になる。
【0032】
すなわち、本実施形態によれば、ブラシ用ブリッスル10は、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなり、図3に示すように、先端に向かって断面積が減少するテーパー形状部分11を先端側に備えており、図4及び図5に示すように、先端から300μmの領域である毛先部12の表面の算術平均粗さRaが、0.2〜1μmとなっている。
【0033】
したがって、本実施形態のブラシ用ブリッスル10によれば、ポリトリメチレンテレフタレートのゴム状弾性による優れた柔軟性及び復元性に加えて、先端側にテーパー形状部分11を備えていることで、柔らかい感触を容易に得ることが可能になる。
【0034】
また、テーパー形状部分11の毛先部12の表面に、図6に示す特許文献3のブリッスルのテーパー形状部分の毛先部に形成された、1〜12μm程度の深さの粗い凹凸と比較して、図4及び図6に示すような、算術平均粗さRaが0.2〜1μmの微細な凹凸が形成されているので、歯間や歯周ポケットや歯肉溝等の極く狭い部分に毛先部12を届かせて、これらの部分の歯垢等の汚れを除去する際に、毛先部12の耐久性を確保しながら、微細な凹凸による高い摩擦力によって、清掃実感が得られると共に、優れた除去効果を得ることが可能になり、且つ例えば歯磨き剤等の剤に対する優れた保持性を得ることが可能になる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明のブラシ用ブリッスルは、歯ブラシ用のブリッスルとして用いる必要は必ずしも無く、例えば化粧料塗布用ブラシ、身体洗浄用ブラシ、靴磨き用ブラシ、衣類清掃用ブラシ等の、その他の種々の清掃用又は洗浄用のブラシ具に植設されるブリッスルとして用いることができる。本発明のブラシ用ブリッスルは、毛先部の表面の摩擦力が高く、適度な弾力を備えており、洗浄用ブラシ、清掃用ブラシに植設されるブリッスルに好適であり、歯肉への柔らかさの観点から、歯ブラシにより好適に用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により、本発明のブラシ用ブリッスルをさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例の記載によって何ら制限されるものではない。
【0037】
〔実施例1、2の歯ブラシ〕
ヘッド部に植設される毛束を構成するブリッスルの全てが、上記実施形態のブラシ用ブリッスルと同様のブリッスルとなっている、図1及び図2に示す歯ブラシと同様の歯ブラシを、実施例1及び実施例2の歯ブラシとした。実施例1の歯ブラシでは、ブラシ用ブリッスルは、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を用いて形成されており、基端部における太さ(直径)が、7mil(約180μm)となっている。実施例2の歯ブラシでは、ブラシ用ブリッスルは、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を用いて形成されており、基端部における太さ(直径)が、7mil(約180μm)となっている。実施例1の歯ブラシのブラシ用ブリッスル、及び実施例2の歯ブラシのブラシ用ブリッスルの基端部における太さ(最大径)、テーパー長、毛先部の平均表面粗さ、毛先から5mmの平均表面粗さ、摩擦力(動摩擦力)、毛穴面積あたりの摩擦力(動摩擦力)、及び毛穴の直径を表1に示す。
【0038】
〔比較例1、2の歯ブラシ〕
ヘッド部に植設される毛束を構成するブリッスルの全てが、表1に示すブラシ用ブリッスルと同様のブリッスルとなっている、図1及び図2に示す歯ブラシと同様の歯ブラシを、比較例1の歯ブラシとした。比較例1の歯ブラシでは、ブラシ用ブリッスルは、ポリブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を用いて形成されており、基端部における太さ(直径)が、7mil(約180μm)となっていると共に、先端部が薬液を用いた化学処理によってテーパー加工されていることにより、図7に示すように、毛先部の表面が滑らかな状態となっている。比較例2の歯ブラシでは、ブラシ用ブリッスルは、ポリブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を用いて形成されており、基端部における太さ(直径)が、6mil(約150μm)となっていると共に、先端部が薬液を用いた化学処理によってテーパー加工されている。なお、比較例2の歯ブラシは、比較例1の歯ブラシよりもブリッスルの先端部の表面粗さが大きく、かつ、摩擦力を測定する際の毛穴が大きいものを用いた。
【0039】
実施例1、2の歯ブラシ、及び比較例1、2の歯ブラシについて、以下の方法によって、ブラシの摩擦力(動摩擦力)について評価すると共に、ブラシの柔らかさ、毛のコシ、歯の隙間への入り易さ、及び汚れ落ち感について評価した。評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
〔ブラシの摩擦力の評価〕
ブラシの毛束をたて一列とし、アクリル板の上に寝かせて載せる。往復度測定装置(新東科学(株)、HEIDON TRIBOGEAR/摩擦測定 TYPE−33)を用いて、毛束の毛先から4mmの位置から毛先まで、荷重50g、移動速度1000mm/s、移動距離4mmにおける動摩擦力を測定した。なお、測定子の表面に人工皮膚(シリコーンゴム製)を付けて測定を行った。3回の測定結果の平均値を表1に示す。
〔ブラシの柔らかさ等の評価〕
実施例1、2の歯ブラシ、及び比較例1、2の歯ブラシを用いて3名でブラッシングを行い、毛の柔らかさ、毛のコシ、歯の隙間への入り易さ、及び汚れ落ち感について下記の評価基準により評価を行った。3名の協議の結果を表1に示す。
・柔らかさ
3:柔らかくてしなやかな感触
2:柔らかいがしなやかさに欠ける
1:柔らかいが歯茎等に刺激を感じる
・毛のコシ
3:毛にコシがある
2:毛にコシがややある
1:毛にコシが無い
・歯の隙間への入り易さ
3:歯の隙間に入り易い
2:歯の隙間にやや入り易い
1:歯の隙間に入りにくい
・汚れ落ち感
3:汚れ落ち感が強い
2:汚れ落ち感がある
1:汚れ落ち感が弱い
【0042】
評価の結果、実施例1、2の歯ブラシは、柔らかな感触でありながら、しなやかであり、しかも適度な弾力により毛にコシがあると感じられ、その結果、歯間に入り易く、汚れ落ち感にも優れる。これに対して比較例1は、毛先が隙間に入る感覚は得られるが、剛性により毛のコシが感じられ、歯肉に若干の刺激を感じ、比較例2は柔らかいがコシが無く、歯の隙間への入りやすさ、汚れ落ちの感触に欠ける評価であった。
【符号の説明】
【0043】
10 ブラシ用ブリッスル
11 テーパー形状部分
11a テーパー開始部
12 毛先部
15 毛束
16 ブリッスル
20 歯ブラシ
21 ヘッド部
22 把持部
23 首部
24 歯ブラシ本体
25 植毛穴
θ テーパー角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7