(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光板の透過率を各波長で一定にする方法は例えば、特許文献1または特許文献2に開示されている。特許文献1は、膜厚8乃至18μmの偏光素子において410nmのクロスニコル時の透過率が0.001%乃至0.1%である偏光素子の技術を開示している。しかしながら、当該技術は、直交位の色抜けや色相を改善するだけで、平行位での各波長透過率を改善するものではない。特許文献2には、2価金属を含有する水溶性樹脂により形成されるマトリックス中に微小領域が分散された構造のフィルムからなる偏光素子の技術が開示されている。しかしながら、その技術によっても平行位と直交位の各波長の透過率が一定の偏光素子または偏光板は得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
「(1)ホウ酸を吸着し延伸された親水性高分子からなり、且つ、ヨウ素を含有する偏光機能を有する基材を含んだ偏光素子であって、
該基材を単体で測定した場合の視感度補正単体透過率Ysが40.0%乃至42.5%であり、
該視感度補正単体透過率Ysと460nmの単体透過率Ts
460との差が1%以内であり、
該視感度補正単体透過率Ysと550nmの単体透過率Ts
550との差が1%以内であり、
該視感度補正単体透過率Ysと610nmの単体透過率Ts
610との差が1%以内であり、
該基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の視感度補正直交透過率Ycが0.01%以下であることを特徴とする偏光素子;
(2)前記基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の視感度補正平行透過率Ypが33%乃至37%の範囲であり、
該平行透過率Ypと、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の460nmの平行透過率Tp
460との差が3%以内であることを特徴とする、上記(1)に記載の偏光素子;
(3)前記基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の視感度補正平行透過率Ypが33%乃至37%の範囲であり、
該平行透過率Ypと、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の295nmの透過率Tp
295とが、下記式(1)を満たし、且つ、
該平行透過率Ypと、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の360nmの透過率Tp
360とが、下記式(2)を満たすことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の偏光素子;
1.05×Yp−26≦Tp
295≦1.05×Yp−13 ・・・式(1)
1.25×Yp−26.25≦Tp
360≦1.25×Yp−16.25 ・・・式(2)
(4)前記基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の295nmの透過率Tc
295が、下記式(3)を満たし、且つ、
該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の360nmの透過率Tc
360が、下記式(4)を満たすことを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の偏光素子;
2.0×10
−30×Yp
18.6≦Tc
295≦2.0×10
−30×Yp
19.4 ・・・式(3)
4.0×10
−37×Yp
22.12≦Tc
360≦4.0×10
−37×Yp
22.67 ・・・式(4)
(5)前記基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の460nmの透過率Tc
460が0.035%以下であり、かつ、
該基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の610nmの透過率Tc
610が0.01%以下であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の偏光素子;
(6)前記基材が、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなり、
該ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの重合度が3000乃至7000であることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の偏光素子;
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の偏光素子の少なくとも片面に支持体フィルムを設けてなる偏光板;
(8)上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の偏光素子または上記(7)に記載の偏光板を備える液晶表示装置;
(9)ホウ酸を吸着し延伸された親水性高分子からなり、且つ、ヨウ素を含有する偏光機能を有する基材を含んだ偏光素子の製造方法であって、
(i)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、二色性色素を含有させ、二色性色素を含有したフィルムを得る工程と、
(ii)前記二色性色素を含有したフィルムを延伸して、延伸したフィルムを得る工程と、
(iii)前記延伸したフィルムを、塩化物含有溶液またはヨウ化物含有溶液を用いて後処理に供する工程と、
(iv)前記後処理の後、フィルムを乾燥させて前記基材を得る工程と
を含み、
前記塩化物含有溶液またはヨウ化物含有溶液の濃度が、0.1〜15重量%であることを特徴とする、製造方法」
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、各波長で一定の透過率を有する偏光素子および偏光板に関するものであり、該偏光素子および偏光板は、透過率が高く、コントラスト比が高く、かつ色再現性が非常に高い、ディスプレイ用偏光板、特に液晶ディスプレイ用偏光板として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<偏光素子>
本発明の偏光素子を作製する方法としては、例えば、親水性高分子フィルムを膨潤する工程、次いで二色性色素を含有させる染色工程、次いで必要に応じて耐水化処理工程を行い、次いで延伸工程、次に後処理工程、最後に乾燥工程を経て作製する方法が挙げられる。
【0010】
偏光素子に用いる親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂またはポリアクリル酸塩系樹脂等からなるフィルムが挙げられ、これら樹脂をキャスト等でフィルム状に製膜したものを用いる。これらのなかでもポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA」と略することもある)フィルムが好ましい。本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとヨウ素などの二色性物質とからなる偏光素子が最も好ましい。これら偏光素子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0011】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で作製することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ここで、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類又は不飽和スルホン酸類などが挙げられる。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとして用いられる。
【0012】
本発明の光学特性を向上させるためには、PVAの重合度は、3000乃至10000であることが必要であり、PVAの重合度が3000未満であると、高い偏光性能を発現することが困難となる。重合度が7000を超えるとPVAが硬くなり、製膜性や延伸性が低下し、生産性が低下するので、工業的な観点から10000以下であることが好ましい。
【0013】
PVAの重合度は、次のように測定した重合度(粘度平均重合度)を意味する。
PVA0.28gを蒸留水70gで95℃にて溶解し、0.4%PVA水溶液を作製し、30℃に冷却する。30℃の恒温水槽中で冷却して、重合度測定用サンプルとする。次いで、蒸発皿に重合度測定用サンプル10mLを105℃の乾燥機で20時間乾燥させ、重合度測定用サンプルの乾燥後重量[α(g)]を測定する。重合度測定用サンプルの濃度C(g/L)は、下記式(i)により算出する。
【0015】
更に、オストワルド粘度計に、重合度測定用サンプル、あるいは蒸留水を10mLホールピペットで投入し、30℃の恒温水槽中で15分間安定させる。投入した重合度測定用サンプルの落下秒数t
1(秒)と蒸留水の落下秒数t
0(秒)を測定し、下記式(ii)乃至式(iv)により粘度平均重合度Eを算出する。
【0019】
PVAのケン化度は、99モル%以上であることが好ましく、99.5モル%以上がより好ましい。ケン化度が99モル%未満であると、PVAが溶出し易くなり、光学特性の面内ムラ、染色工程での染色性の低下、延伸工程での切断を誘発し、生産性を著しく低下させる恐れがあり、好ましくない。
【0020】
本発明において使用されるPVAは、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステル系重合体をケン化することにより製造することができる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等を例示することができ、これらの中から1種または2種以上を選択する。これらの中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。重合温度に特に制限はないが、メタノールを重合溶媒として使用する場合は、メタノールの沸点が60℃付近であることから、60℃前後であることが好ましい。PVAは、本発明の効果が損なわれることがない限り、ビニルエステルの単独重合体のケン化物に限定されない。例えば、PVAに不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィン等を5モル%未満の割合でグラフト共重合した変性PVAlビニルエステルと、不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィン等とを15モル%未満の割合で共重合した変性ポリビニルエステルのケン化物1ホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類でPVAの水酸基の一部を架橋したポリビニルアセタール系重合体などであってもよい。
【0021】
上記のようにして得られたPVAを製膜することによって、フィルム原反を得ることができる。PVAの製膜方法としては、含水PVAを溶融押出する方法の他、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去)、キャスト製膜法(PVA水溶液を基板上に流し、乾燥)、およびこれらの組み合わせによる方法などが挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0022】
製膜の際に使用される溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N一メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、水等が挙げられ、これらに限定されない。溶剤は、1種でも良いし、2種以上を混合して使用することができる。製膜の際に用いる溶剤の量は、例えば、50〜95質量%であり、70〜95質量%が好ましいが、これら範囲に限定されない。ただし、溶剤の量が50質量%未満であると、製膜原液の粘度が高くなり、調製時の濾過や脱泡が困難となり、異物を含まず且つ欠点のないフィルム原反を得ることが困難となる。また、揮発分率が95質量%を超えると、製膜原液の粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚み制御が難しく、乾燥時の風による表面の揺らぎの影響や、乾燥時間が長くなり生産性が低下する。
【0023】
フィルム原反を製造するにあたり、可塑剤を使用してもよい。可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。可塑剤の使用量も特に制限されないが、通常はPVA100質量部に対して、5〜15質量部の範囲内が好適である。
【0024】
製膜後のフィルム原反の乾燥方法としては、例えば熱風による乾燥や、熱ロールを用いた接触乾燥や、赤外線ヒーターによる乾燥等が挙げられるが限定されない。これらの方法のうちの1種類を単独で採用してもよいし、2種類以上を組み合わせて乾燥してもよい。乾燥温度についても、特に制限はないが50〜70℃の範囲内が好ましい。
【0025】
乾燥後のフィルム原反は、その膨潤度を後述する所定の範囲に制御するために、熱処理を行うことが好ましい。製膜後のフィルム原反の熱処理方法としては、例えば熱風による方法や、熱ロールにフィルム原反を接触させる方法が挙げられ、熱により処理が出来る方法であれば特に限定されない。これらの方法のうちの1種類を単独で採用してもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。熱処理温度と時間については特に制限はないが、110〜140℃の範囲内が好ましく、おおむね1分乃至10分の処理が好適であるが、特に限定されない。
【0026】
こうして得られるフィルム原反の厚みは、20〜100μmであることが好ましく、20〜80μmがより好ましく、20〜60μmがさらに好ましい。厚みが20μm未満になると、フィルムの破断が発生し易くなる。厚みが100μmを超えると、延伸時にフィルムにかかる応力が大きくなり、延伸工程での機械的負荷が大きくなり、その負荷に耐えうるための大規模な装置が必要となる。
【0027】
フィルム原反の膨潤度Fは、180〜250%であることが好ましく、205〜235%がより好ましく、210〜230%がさらに好ましい。膨潤度Fが180%未満であると、延伸時の伸度が少なく、低倍率で破断する可能性が高くなり、充分な延伸を行うことが困難となる。また、膨潤度Fが240%を超えると、膨潤が過多となり、シワや弛みが発生し、延伸時の切断の原因となる。膨澗度Fを制御するためには、例えば、製膜後のフィルム原反を熱処理する際の、温度と時間で好適な膨潤度Fにすることが出来る。
【0028】
フィルム原反の膨澗度Fの測定方法は、以下の通りである。
フィルム原反を5cm×5cmにカットし、30℃の蒸留水1リットルに4時間浸漬する。この浸漬したフィルムを蒸留水中から取り出し、2枚のろ紙ではさんで表面の水滴を吸収させた後に、水に浸漬されていたフィルムの重さ[β(g)]を測定する。さらに、浸漬されて水滴を吸収されたフィルムを105℃の乾燥機で20時間乾燥し、デシケーターで30分間冷却した後、乾燥後のフィルムの重さ[γ(g)]を測定し、式(v)によりフィルム原反の膨潤度Fを算出する。
【0030】
以上のようにして作製された原反フィルムを用いて、以下に説明する工程を含む方法によって本発明の偏光素子を製造する。
(膨潤工程)
上述したフィルム原反はまず、フィルムを膨潤させる膨潤工程に供される。
当該工程において、膨潤は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを20〜50℃の溶液に15秒〜10分間浸漬させることによって達成される。その際の溶液は水が好ましいが、グリセリン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、または水と水溶性有機溶剤との混合溶液でも良い。膨潤工程においても皺や折れ込みの発生を防ぐために、適度に延伸していることが好ましく、その延伸倍率は好ましくは1.00〜1.50倍、より好ましくは1.10〜1.35倍である。偏光素子を作製する時間を短縮する場合には、ヨウ素、ヨウ化物処理時、染料の染色工程でも膨潤効果が得られるのでこの工程を省略しても良い。
【0031】
(染色工程)
次いで、膨潤した前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する溶液で染色する染色工程に供する。
溶液の溶媒としては水が好ましいが、特に限定されない。二色性色素としては、例えば、ヨウ素とヨウ化物との混合溶液から得られる多ヨウ素イオンや、有機化合物の二色性染料等が挙げられる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛などが用いることが出来るが、ここで示したヨウ化物に限定されない。ヨウ素とヨウ化物の混合溶液中のヨウ素濃度は0.0001〜0.5wt%、好ましくは0.001〜0.4wt%である。用いるヨウ化物の濃度は0.0001〜8wt%が好ましい。場合によっては、有機化合物の二色性染料としては例えば、非特許文献1に記載の二色性色素などを用いて、本願の求める性能を損なわない範囲で色補正を行っても良い。染料は限定されず、公知の二色性染料を用いることができる。染料濃度は特に限定されるものではないが、例えば、0.006wt%から0.3wt%程度が良い。染色性が不十分な場合には、トリポリリン酸ナトリウム、および/または芒硝(硫酸ナトリリウム)などの着色助剤を添加して染色を行うのが好ましい。また、染色温度は、5℃〜50℃、好ましくは5〜40℃、より好ましくは10℃〜30℃である。染色時間は、得られる偏光素子の透過率等に応じて適宜調節できるが、30秒〜6分程度、より好ましくは1分〜5分である。この工程においても、皺や折れ込みの発生を防ぐために、適度に延伸することが好ましい。その延伸倍率は好ましくは0.90〜2.00倍、より好ましくは1.00〜1.30倍である。
【0032】
前記染色工程において、前記二色性色素を含有する溶液に架橋剤および/または耐水化剤を添加しても良い。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型、ブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アモンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、好ましくはホウ酸が良い。添加する濃度は、例えば、ホウ酸を添加する場合には、二色性色素を含有する溶液に対して0.1〜5.0wt%、好ましくは2〜4wt%である。さらに必要に応じて、前記染色工程の後、次の延伸工程に入る前に二色性色素を含有したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄しても良い。洗浄を行う溶剤としては、一般的には水が用いられるが、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリセリンまたはそれら混合溶媒などが用いることができ、特に限定されない。また、洗浄する際の温度や時間は、目的とする偏光素子の透過率や、用いる二色性色素の種類に応じて適宜調整すればよい。
【0033】
(耐水化処理工程)
続いて、染色工程の後、染色されたフィルムに、必要に応じて耐水化処理を施す耐水化処理工程に供する。
当該工程では、架橋剤または/および耐水化剤を含有する溶液によって前記フィルムを処理する。架橋剤または/および耐水化剤としては、前記ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型、ブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリン、過酸化コハク酸、過硫酸アモンモニウム、過塩素酸カルシウム、べンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、ホウ酸が好ましい。その際の溶媒として、例えば、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリセリンまたはそれら混合溶媒などを用いることができる。架橋剤または/および耐水化剤の濃度は、例えばホウ酸水溶液の場合、該溶液中に0.1wt%〜6.0wt%程度の濃度が好ましく、2wt%〜4wt%がより好ましい。この工程での処理温度は、5℃〜60℃、好ましくは5〜45℃程度である。処理時間は1分〜5分程度が好ましい。この工程においても、皺や折れ込みの発生を防ぐために、適度に延伸することが好ましく、その延伸倍率は0.95〜1.5倍程度である。
【0034】
(延伸工程)
更に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する延伸工程に供する。
当該工程では、該フィルムを1軸延伸する。延伸方法としては、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれを使用しても良い。
【0035】
乾式延伸法の具体的方法としては例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、特に限定されない。延伸する際の温度は、常温〜180℃、湿度は20〜95%RH程度が良い。延伸は1段で行っても良く、2段処理以上の多段延伸でも良い。
【0036】
湿式延伸法は、水、水溶性有機溶剤、またはその混合水溶液中で延伸を行う方法であるが、好ましくは該水、水溶性有機溶剤、またはその混合水溶液中には、前記ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型、ブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリン、過酸化コハク酸、過硫酸アモンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム、塩化マグネシウムなどホウ酸などの架橋剤または/および耐水化剤を含有した溶液中で浸漬しながら延伸処理することが好ましく、ホウ酸水溶液中にて延伸するのがより好ましい。架橋剤または/および耐水化剤の濃度は、0.5〜8wt%が好ましく、2.0〜4.0wt%が好ましい。延伸倍率は好ましくは3〜8倍、より好ましくは5〜7倍程度である。延伸温度は好ましくは40〜60℃、より好ましくは45〜55℃である。延伸時間は好ましくは30秒〜20分、より好ましくは2分〜5分である。延伸処理は1段でも、2段以上の多段延伸であっても良い。
【0037】
延伸された二色性色素を含有したポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面には、異物が析出することや、異物が付着することがあるため洗浄しても良い。洗浄を行う溶剤としては、水、アルコール系溶剤等を用いることができるが、これらに限定されない。洗浄溶剤には、フィルムの耐久性向上を目的として、ホウ酸のような架橋剤および/または耐水化剤を含有しても良い。架橋剤および/または耐水化剤の濃度は限定されないが、例えば0.1〜10wt%である。
【0038】
(後処理工程)
次に、色相の調整、偏光特性の向上、耐久性の向上のために、上記フィルムに後処理を施す後処理工程を行う。
当該工程では、具体的には、二色性色素を含有させ、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、塩化物またはヨウ化物を含有する溶液によって処理する。塩化物またはヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛といったヨウ化物、塩化亜鉛、塩化カリウム、塩化ナトリウムといった塩化物などが挙げられ、この中の一種、もしくは二種以上を溶液に混合して処理を行う。溶液中の塩化物またはヨウ化物の濃度は好ましくは0.1〜15wt%、より好ましくは0.15〜10wt%である。この工程においても、皺や折れ込みの発生を防ぐために、適度に延伸することが好ましく、その際の延伸倍率は0.90〜1.10倍が好ましい。また処理温度は、例えば5〜50℃以下が好ましいが、より好ましくは20〜40℃である。処理時間は、例えば、1秒〜5分程度、好ましくは5秒〜30秒である。この工程において、前記架橋剤および/または耐水化剤を添加しても良い。添加する濃度は、例えば、0.5%〜10wt%である。
【0039】
ここまでの処理工程で用いる溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、1種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は水である。
【0040】
(乾燥工程)
上記後処理工程の後、乾燥工程を経ることによって本発明の偏光素子の基材が得られる。
乾燥の方法としては、例えば、自然乾燥、ロールによる圧縮やエアーナイフ、または吸水ロール等によって表面の水分を除去する方法、加熱による乾燥などが挙げられる。加熱乾燥の場合の乾燥温度としては、20〜90℃が好ましく、より好ましくは40〜70℃である。乾燥時間は30秒〜20分程度が好ましく、2分〜10分程度がより好ましい。この乾燥工程においても、乾燥に伴うポリビニルアルコール系樹脂フィルムの収縮による皺やスジの発生を防ぐために、適度に延伸するのが好ましく、その際の延伸倍率は0.95〜1.10倍が好ましい。
【0041】
上記膨潤工程、染色工程、任意の耐水化処理工程、延伸工程、後処理工程、および乾燥工程を経ることによって、偏光素子の基材が得られる。そして、このようにして得られた基材は、その単体で測定した際の視感度補正単体透過率Ysが40.0%乃至42.5%であり、視感度補正単体透過率Ysと460nmの透過率Ts
460との差が1%以内であり、視感度補正単体透過率Ysと550nmの透過率Ts
550との差が1%以内であり、視感度補正単体透過率Ysと610nmの透過率Ts
610との差が1%以内であり、該基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定して得られる視感度補正透過率Ycを0.01%以下に調整されている。
【0042】
上記特性を有する基材を備えた偏光素子を得るためには、後処理工程においてフィルムを、適した濃度を有する塩化物またはヨウ化物を含有する溶液にて処理を行うことが重要である。当該工程においては、延伸条件に合わせて溶液中の塩化物またはヨウ化物を含有させる濃度、および、その処理時間は調整される必要がある。該濃度および処理時間は、偏光素子へのヨウ素、および、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物、ならびに、塩化カリウム等の塩化物の偏光素子への含浸の状況に応じて調整されることが非常に重要である。特に、濃度は、延伸工程の延伸状態、偏光素子を作製する場の温度や湿度などにも影響されるため、非常に繊細な微調整を必要とする。通常、後処理工程で用いる塩化物含有溶液またはヨウ化物含有溶液の濃度は、水1000重量部に対して塩化物またはヨウ化物1.0重量部乃至150重量部、好ましくは1.5重量部乃至100重量部を添加して調製されたものである。
また、フィルムの収縮や膨張がなるべく発生しないように延伸された延伸倍率および/または延伸張力を保ちつつ処理することが好ましい。さらには、フィルムの搬送される速度と後処理工程の水流速度との相対速度の差がないような状態で処理することが好ましく、また、その際に処理液に超音波を用いて、偏光素子の内部まで十分に処理することがより好ましい。以上の方法により後処理工程を行い、本願の偏光素子を得ることが出来る。
【0043】
偏光素子としてより良好な製造を調整する指標としては、基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定して得られる視感度補正平行透過率Ypが33%乃至37%の範囲であり、当該透過率Ypと、基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の460nmの透過率Tp
460との差が3%以内であることである。YpとTp
460との差を3%以内にするためには、基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定して得られる295nmの透過率および360nmの透過率を調整する必要がある。295nmの透過率および360nmの透過率は、偏光素子中のI
3−、I
5−などのポリヨウ素の含有量に起因して変動すると言われている。偏光素子中のI
3−、I
5−などのポリヨウ素の含有量を調整することによって、295nmと360nmの透過率を調整でき、YpとTp
460との差を3%以内に調整することができる。
【0044】
より良好な偏光素子を製造するためには、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定して得られる視感度補正透過率Ypが33%乃至37%の範囲であり、当該透過率Ypと、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の295nmの透過率Tp
295とが、下記式(1)を満たし、且つ、前記Ypと該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の360nmの透過率Tp
360とが、下記式(2)を満たすように調整することが必要である。
【0045】
1.05×Yp−26≦Tp
295≦1.05×Yp−13 ・・・式(1)
1.25×Yp−26.25≦Tp
360≦1.25×Yp−16.25 ・・・式(2)
【0046】
さらに偏光素子の性能を向上させるため、特に、偏光素子の可視域である380nm乃至480nmの性能を向上させるには、295nm、360nmのI
3−、I
5−などのポリヨウ素の配向性を向上させることが必要であり、上記式(1)および式(2)を満たし、更に、該基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の295nmの透過率Tc
295が、下記式(3)を満たし、該基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の360nmの透過率Tc
360が、下記式(4)を満たすことがさらに好ましい。なお、下記式中、Yp
18.6、Yp
19.4、Yp
22.12およびYp
22.67の各々は、平行透過率Ypの乗数を表す。
【0047】
2.0×10
−30×Yp
18.6≦Tc
295≦2.0×10
−30×Yp
19.4 ・・・式(3)
4.0×10
−37×Yp
22.12≦Tc
360≦4.0×10
−37×Yp
22.67 ・・・式(4)
【0048】
さらに、近年のLEDバックライト光源では、460nmの青色光を、蛍光体を用いて白色に発光させていることから、460nmを中心とした透過率が偏光素子のコントラストを向上させるには重要である。特に、460nmにおいて基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の偏光素子の透過率が高いと、青色光が漏れてしまいディスプレイとして真の黒色を表現できない。また、その時、610nmの透過率が460nmと比較してある一定の透過率以下を有していないと、同様に真の黒色を表現できず、白色と黒色とのコントラストを実現することができない。そのため偏光素子の透過率は、基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の460nmの透過率が0.035%以下であり、かつ、基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の610nmの透過率が0.01%以下になるように調製することが好ましい。
【0049】
さらに、そのためには、偏光素子の基材としてポリビニルアルコール系樹脂の重合度が3000乃至10000であるポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなるフィルム原反を用いることによって本願が容易に達成できる。より好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムの重合度は、3500乃至6000であり、さらに好ましくは重合度が4500乃至6000である。
【0050】
<偏光板>
以上の工程を経て得られた本発明の偏光素子の少なくとも片面または両面に、透明保護層を設けることによって本発明の偏光板を得ることができる。具体的には、透明保護層は該保護層を形成するポリマーやフィルムを本発明の偏光素子に塗布あるいはラミネートすることによって設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマーまたはフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマーまたはフィルムが好ましい。さらには、水分遮断性が優れるものがより好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂またはそのフィルム、アクリル樹脂またはそのフィルム、ポリエステル樹脂またはそのフィルム、ポリアリレート樹脂またはそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂またはそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィンまたはその共重合体、主鎖または側鎖がイミドまたは/およびアミドの樹脂またはポリマーまたはそのフィルムなどが挙げられる。さらに、ポリビニルアルコール系樹脂は一般的に配向膜として機能することが知られているので、得られた偏光素子の表面に、例えばラビング処理、または配向膜塗布および配向処理などを適用し、液晶性を有する樹脂またはそのフィルムを設けても良い。保護フィルムの厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。これらのフィルムを偏光素子の両面に設ける場合、同じフィルムを用いても良いし、異なるフィルムを用いても良い。
【0051】
前記透明保護層であるフィルムを本発明の偏光素子とラミネートする場合、接着剤を用いることが好ましい。接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系接着剤が挙げられる。ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH−26(日本合成社製)、エクセバールRS−2117(クラレ社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。接着剤には、架橋剤および/または耐水化剤を添加しても良い。また、接着剤に無機酸若しくはその塩及び/又は有機酸を0.0001wt%から20wt%の濃度で含有しても良く、0.02から5wt%を含有することが好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤には、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体を単独で、または架橋剤と併せて混合した接着剤を用いることができる。無水マレイン酸−イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#104(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#110(クラレ社製)、イミド化イソバン#304(クラレ社製)、イミド化イソバン#310(クラレ社製)などが挙げられる。その際の架橋剤には水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX−521(ナガセケムテック社製)、テトラット−C(三井ガス化学社製)などが挙げられる。また、接着剤の添加物として、前記、緩衝剤や無機酸若しくはその塩及び/又は有機酸、亜鉛化合物、塩化物またはヨウ化物等、より好ましくは前記、緩衝剤や無機酸若しくはその塩及び/又は有機酸を接着剤成分に対し0.01から10wt%程度の濃度で含有させることにより、同様に耐久性を向上させることができる。透明保護層であるフィルムと本発明の偏光素子とを前記接着剤で貼り合せた後、加熱乾燥し、さらに熱処理することによって接着することができる。
【0052】
得られた偏光板を、例えば、液晶表示等の表示装置に貼り合わせる場合や偏光フィルターまたは偏光レンズで用いる場合には、後に非露出面となる保護層又はフィルムの表面に視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層又はフィルムを設けることもできる。これらのフィルムや表示装置に偏光板を貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
【0053】
この偏光板は、他方の表面、すなわち、保護層又はフィルムの露出面に反射防止層や防眩層、ハードコート層など公知の各種機能性層を有していてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法により、該他方の面に設けることが好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せることもできる。また、各種機能性層とは、位相差を制御する層又はフィルムとすることができる。
【0054】
以上説明した方法により、各波長で一定の透過率を有する偏光素子または偏光板を得ることができる。こうして得られた本発明の偏光素子または偏光板は、高い偏光性能、すなわち高コントラストを有しながら、可視域の各波長透過率を一定にでき、かつ、耐久性に優れるため、長期間安定した性能を維持することができる。
<液晶表示装置>
さらに、本発明の偏光板を液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス表示装置、CRT等に用いることにより、本発明の画像表示装置が得られる。特に、本発明の偏光板を、液晶ディスプレイを構成する液晶セルの両側に必要に応じて位相差フィルムと共に粘着剤で貼り合せることにより、液晶表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0056】
各実施例に示す透過率の評価は以下のようにして行った。
偏光素子又は偏光板を1枚で測定した際の各波長の透過率を単体透過率Tsとし、2枚の偏光素子又は偏光板をその吸収軸方向が同一となるように重ねた場合の各波長の透過率を平行透過率Tpとし、2枚の偏光板をその吸収軸が直交するように重ねた場合の各波長の透過率を直交透過率Tcとした。
【0057】
分光透過率Ts、TpおよびTcの各々は、分光光度計〔日立社製“U−4100”〕を用いて測定した。
【0058】
視感度補正単体透過率Ysは、400〜700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに測定された単体透過率Tsから下記式(5)により算出した。式中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλはJIS Z 8729(C光源2°視野)に基づいた等色関数を表す。
【0059】
【0060】
視感度補正平行透過率Ypは、400〜700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに測定された平行透過率Tpから下記式(6)により算出した。式中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλはJIS Z 8729(C光源2°視野)に基づいた等色関数を表す。
【0061】
【0062】
視感度補正直交透過率Ycは、400〜700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに測定された直交透過率Tcから下記式(7)により算出した。式中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλはJIS Z 8729(C光源2°視野)に基づいた等色関数を表す。
【0063】
【0064】
偏光度Pyは、視感度補正平行位透過率Yp及び視感度補正直交透過率Ycから、下記式(8)により求めた。
【0065】
【0066】
実施例1
厚みが60μm、重合度5500、けん化度99%以上のポリビニルアルコール系フィルム(クラレ社製VF−PM)を40℃の温水にて膨潤させた後、水1000重量部、ホウ酸(Societa Chimica Larderello s.p.a.社製)28.6重量部、沃素(純正化学社製)0.25重量部、ヨウ化カリウム(純正化学社製)17.7重量部を含有した水溶液により30℃で2分浸漬し染色処理を行った。染色されたフィルムを、ホウ酸3重量%を含有している溶液にて58℃で5倍延伸し、延伸の後、水1000重量部に対しヨウ化カリウム3.5重量部を添加して作製したヨウ化物含有水溶液に、延伸後の張力を保ちつつ、延伸倍率を維持し、フィルムが処理される搬送速度と処理工程の水流の速度との相対速度の差がほぼ一定状態で、20乃至40kHzの超音波を適用しながら浸漬し、後処理工程を20秒間行った。ヨウ化カリウム水溶液を20秒浸漬したフィルムは、その後、70℃の乾燥機にて10分間乾燥し、偏光素子が得られた。
【0067】
実施例2
厚みが60μm、重合度4000、けん化度99%以上のポリビニルアルコール系フィルム(クラレ社製VF−PM)を、厚みが40μm、重合度4000、けん化度99%以上のポリビニルアルコール系フィルム(クラレ社製VF−PH)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光素子を得た。
【0068】
実施例3
染色処理の時間を1分30秒としたこと以外は実施例2と同様にして、偏光素子を得た。
【0069】
実施例4
染色処理の時間を1分30秒としたこと以外は実施例1と同様にして、偏光素子を得た。
【0070】
比較例1
延伸の後、水1000重量部に対しヨウ化カリウム35重量部を添加して作製した水溶液を60rpmの速度で撹拌させながら、延伸後の倍率を維持したまま後処理工程を20秒間行ったこと以外は実施例1と同様にして、偏光素子を得た。
【0071】
比較例2
延伸の後、水1000重量部に対しヨウ化カリウム35重量部を添加して作製した水溶液を60rpmの速度で撹拌させながら、延伸後の倍率を維持したまま後処理工程を20秒間行ったこと以外は実施例2と同様にして、偏光素子を得た。
【0072】
比較例3
延伸の後、水1000重量部に対しヨウ化カリウム50重量部を添加して作製した水溶液を60rpmの速度で撹拌させながら、延伸後の倍率を維持したまま後処理工程を20秒間行ったこと以外は実施例3と同様にして、偏光素子を得た。
【0073】
比較例4
延伸の後、水1000重量部に対しヨウ化カリウム50重量部を添加して作製した水溶液を60rpmの速度で撹拌させながら、延伸後の倍率を維持したまま後処理工程を20秒間行ったこと以外は実施例4と同様にして、偏光素子を得た。
【0074】
比較例5
ポラテクノ社製ヨウ素系偏光板SKN−18242Pをジクロロメタンに浸漬し、偏光素子を抽出し、比較例サンプルとした。
【0075】
比較例6
延伸の後、フィルムを水に浸漬し、20秒間処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして偏光素子を得て、比較例サンプルとした。
【0076】
実施例1乃至4、および、比較例1乃至6で得られた偏光素子の各パラメータを表1に示す。表1に示されるパラメータは下記の通りである。
視感度補正単体透過率Ys、
視感度補正平行透過率Yp、
視感度補正直交透過率Yc、
460nmの単体透過率Ts
460、
基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の460nmの平行透過率Tp
460、
基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の460nmの直交透過率Tc
460、
550nmの単体透過率Ts
550、
610nmの単体透過率Ts
610、
基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の610nmの直交透過率Tc
610、
基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の295nmの平行透過率Tp
295、
基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の295nmの直交透過率Tc
295、
基材2枚を吸収軸方向に対して平行にして測定した場合の360nmの平行透過率Tp
360、
基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定した場合の360nmの直交透過率Tc
360。
【0077】
【表1】
【0078】
以上の結果から分かるように、実施例1乃至4の偏光素子は各波長でほぼ一定の透過率を有する偏光素子であり、単体で測定した際の視感度補正単体透過率Ysが40.0%乃至42.5%であり、視感度補正単体透過率Ysと460nmの透過率Ts
460との差が1%以内であり、視感度補正単体透過率Ysと550nmの透過率Ts
550との差が1%以内であり、視感度補正単体透過率Ysと610nmの透過率Ts
610との差が1%以内であり、該基材2枚を吸収軸方向に対して直交にして測定して得られる視感度補正単体透過率Ycが0.01%以下であることが分かる。
また、偏光素子を保護層によってラミネートすることによって偏光板を得ることが出来るが、実施例1〜4の偏光素子は吸収軸に対し平行に設置した時、380nm乃至480nmの透過率が500nmm乃至650nmの透過率と比較してほぼ一定の光学特性を有し、各波長での発光均一性が保つことが出来た。さらには、視感度補正直交透過率Ycが0.01%以下であることからも、これらの偏光素子は高いコントラストを有し、可視域の各波長透過率を一定にできる偏光素子または偏光板であることが分かった。
従って、上記方法で得られた実施例1〜4の偏光素子またはこれら偏光素子を用いて作製された偏光板は、透過率が高く、コントラスト比が高く、かつ色再現性が非常に高いディスプレイ用偏光板、特に液晶ディスプレイ用偏光板として使用することができる。また、これを用いたディスプレイは、信頼性が高く、長期に亘って高いコントラストを維持することができ、かつ、高い色再現性を有するディスプレイとなることが期待される。