特許第6779040号(P6779040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779040
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】バイオフィルム形成抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 35/06 20060101AFI20201026BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20201026BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20201026BHJP
   A01N 25/22 20060101ALI20201026BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A01N35/06
   A01P3/00
   A01N25/00 101
   A01N25/22
   C02F1/50 510C
   C02F1/50 520K
   C02F1/50 532C
   C02F1/50 540B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-111610(P2016-111610)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-218385(P2017-218385A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 啓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健二
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雅史
(72)【発明者】
【氏名】滝川 博文
(72)【発明者】
【氏名】杉山 充
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−526388(JP,A)
【文献】 特開平10−245308(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0310478(US,A1)
【文献】 特開2014−176850(JP,A)
【文献】 特表2008−535814(JP,A)
【文献】 特開2004−196677(JP,A)
【文献】 Microbiology,2014年,Vol.83, No.6,pp.723-731
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 35/06
A01N 25/02
A01N 33/12
A01P 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノン系化合物とキレート剤とを含有し、該キノン系化合物がp−トルキノンであり、該キレート剤が1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、クエン酸及びエチレンジアミン四酢酸からなる群より選ばれる1種以上である、バイオフィルム形成抑制用組成物。
【請求項2】
前記キノン系化合物100質量部に対して、前記キレート剤0.1〜5000質量部を含有する、請求項記載のバイオフィルム形成抑制用組成物。
【請求項3】
水冷式冷却塔の冷却水におけるバイオフィルム形成抑制用の組成物である、請求項1又は2記載のバイオフィルム形成抑制用組成物。
【請求項4】
キノン系化合物とキレート剤とを水系液体に添加することを含み、該キノン系化合物がp−トルキノンであり、該キレート剤が1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、クエン酸及びエチレンジアミン四酢酸からなる群より選ばれる1種以上である、バイオフィルム形成抑制方法。
【請求項5】
前記キノン系化合物100質量部に対して、前記キレート剤0.1〜5000質量部が前記水系液体に添加される、請求項項記載の方法。
【請求項6】
前記キノン系化合物とキレート剤とを添加された前記水系液体中における該キノン系化合物の濃度が1〜1400ppmとなるように、該キノン系化合物が該水系液体に添加される、請求項4又は5項記載の方法。
【請求項7】
前記キノン系化合物とキレート剤とを添加された前記水系液体中における該キレート剤の濃度が0.05〜1000ppmとなるように、該キレート剤が該水系液体に添加される、請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記水系液体が水冷式冷却塔の冷却水である、請求項4〜7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム形成抑制用組成物、及びバイオフィルム形成抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷式冷却塔を用いた工場設備やビルの冷却システムや、冷却プールなど、水媒体を利用したシステムが従来使用されている。このようなシステムにおいて、使用する水の微生物汚染は問題である。例えば、水冷式冷却塔を用いた冷却システムにおいて、冷却水に混入した微生物は、配管中、特に熱交換器においてバイオフィルムを形成する。熱交換器に形成されたバイオフィルムは、熱交換の効率を低下させ、冷却システムの電力使用量を増加させる。バイオフィルム形成防止のためには、定期的な水の入れ替えや清掃が必要であるが、これらはシステムのメンテナンスコストを上昇させる。
【0003】
従来、水冷式冷却塔を用いた冷却システムにおけるバイオフィルム防止には、塩素系薬剤などの殺菌剤が用いられている。しかし、塩素系薬剤には配管や機器への損傷の問題があり、十分に殺菌できる濃度では使用することができず、バイオフィルム形成を長期間抑制することができない。
【0004】
特許文献1には、N−アルキル置換ヒドロキシルアミンとアルカリ金属水酸化物をキノン誘導体とともに含有するpH12以上の液体組成物をボイラー防食のために使用することが開示されている。またキノン系化合物は、抗菌性物質として知られている。例えば、特許文献2〜3には、ベンゾキノン又はヒドロキノンがブドウ球菌、アクネ菌、又はプロピオン酸菌に対する抗菌活性を有することが開示されている。特許文献4には、ベンゾキノン又はヒドロキノンの誘導体が黄色ブドウ球菌及びアクネ菌に対する抗菌活性を有することが開示されている。非特許文献1には、2位がアルキル又はアルケニル基で置換されたキノン又はヒドロキノンが、枯草菌、ミクロコッカス属又はカンジダ属菌に対する抗菌活性を示したことが開示されている。非特許文献2には、tert−ブチルヒドロキノン及びtert−ブチルベンゾキノンが、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を有し、該菌によるバイオフィルムの形成を阻止したことが開示されている。一方、上記化合物のグラム陰性菌に対する抗菌作用については、これまで報告は少なく、また報告されている抗菌活性も大きいものではなかった。非特許文献1には、グラム陰性菌に対する最小生育阻止濃度(MIC)は明記されておらず、非特許文献2には、大腸菌に対するtert−ブチルヒドロキノンの最小生育阻止濃度(MIC)が512ppmであると記載されている。特許文献4には、ジメチル及びジブチルレゾルシノールが黄色ブドウ球菌及びアクネ菌に対する抗菌活性を有することが記載されている。非特許文献3には、結核菌に対する抗菌物質として4−イソプロピルレゾルシノールが記載されている。一方、これらの化合物が大腸菌、緑膿菌のようなグラム陰性菌に対して抗菌作用を及ぼすことは、これまで明らかにされていない。特許文献5には、アクネ菌に対する抗菌物質として4−ヘキシルレゾルシノールが記載されている。また非特許文献4には、4−ヘキシルレゾルシノールがPseudomonas属菌の増殖を抑えたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−68631号公報
【特許文献2】国際公開公報第2007/096601号
【特許文献3】特表2008−535814号公報
【特許文献4】国際公開公報第2006/100496号
【特許文献5】国際公開公報第2004/091595号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Nat Prod, 1994, 57(12):1711-1716
【非特許文献2】J Antimicrob Chemother, 2013, 68(6):1297-1304
【非特許文献3】Anti-Infective Agents, 2012, 10(1):6-14
【非特許文献4】Microbiology, 2005, 74(2):128-135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水系システムでのバイオフィルム形成を効果的に抑制することができる、バイオフィルム形成抑制用組成物及びバイオフィルム抑制方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、キノン系化合物とキレート剤とが、微生物の生育を阻害しないような低濃度で使用した場合であっても、バイオフィルム形成を効果的に抑制することを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、キノン系化合物とキレート剤とを含有する、バイオフィルム形成抑制用組成物を提供する。
また本発明は、キノン系化合物とキレート剤とを水系液体に添加することを含む、バイオフィルム形成抑制方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物、及び本発明のバイオフフィルム抑制方法によれば、微生物の生育を阻害しないような低濃度で使用した場合であっても、効果的にバイオフィルム形成を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、水系液体におけるバイオフィルム形成の抑制に関する。また本発明は、水系システムにおけるバイオフィルム形成の抑制に関する。本発明は、キノン系化合物とキレート剤とを含有するバイオフィルム形成抑制用組成物を提供する。また本発明は、キノン系化合物とキレート剤とを用いるバイオフィルム形成抑制方法を提供する。
【0012】
本明細書において、「水系システム」とは、配管、タンクやプールなどを備え、そこに水系液体を流す又は貯留することによって機能するシステムをいい、例えば、水冷式冷却塔を用いた工場設備やビルの冷却システム、工業用の冷却プール、工業用の給水、貯水もしくは排水経路、排水処理設備、流湯式暖房システム、タンクやプール、ろ過設備などが挙げられる。好ましくは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物が適用される水系システムは、少なくともその一部がバイオフィルムが形成しやすい温度、例えば、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、さらに好ましくは25℃以上に達することがある水系システムである。
【0013】
本明細書において、「水系液体」とは、単なる水であってもよく、水及び他の化合物を含む液体であってもよい。当該他の化合物としては、有機溶媒、塩、抗菌抗カビ剤、防腐防黴剤、抗生物質、浸透促進剤、界面活性剤、消臭剤及び芳香剤等が挙げられる。該水系液体中の水の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、かつ好ましくは100質量%以下である。
【0014】
「水系液体」としては、好ましくは工業用に用いられる水系液体が挙げられ、より好ましくは上述した水系システムで使用される水系液体、例えば、水冷式冷却塔を用いた工場設備やビルの冷却システムに用いられる水系媒体、流湯式暖房システムに用いられる水系媒体、排水処理設備の排水、あるいは工業用の冷却プール内、工業用の給水、貯水もしくは排水経路内、又はタンクやプール内の水系液体、などを含む。
【0015】
好ましくは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物は、上記水系システムに流れる又は貯留される水系液体、及び該水系液体と接する該水系システムの設備、機器等におけるバイオフィルム形成の抑制に使用される。より好ましくは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物は、水冷式冷却塔の設備、機器、又はその中に含まれる水系液体(例えば水冷式冷却塔の冷却水)におけるバイオフィルム形成の抑制に使用される。
【0016】
上記のような水系システムに発生するバイオフィルムには、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等のPseudomonas属、Sphingomonas属、Sphingopyxis属などのグラム陰性微生物が含まれている。さらに、Klebsiella属、Flavobacterium属及びRoseomonas属のグラム陰性微生物が、水冷式冷却塔におけるバイオフィルムに存在する微生物として報告されている(Biofouling 2011,27(4)393-402、Biocontrol Science 2013,18(4)205-209)。
【0017】
従来、バイオフィルムは、殺菌剤を用いて、バイオフィルムの原因微生物を殺菌することによって防止されていた。一方、本発明においては、バイオフィルムの原因となる微生物をキノン系化合物を用いて殺菌することでバイオフィルムの形成を抑制してもよいが、キノン系化合物を低濃度で用いて、バイオフィルムの原因微生物の生育を阻止することによらずにバイオフィルム形成を抑制することもできる。原因微生物の生育を阻止することなくバイオフィルム形成を抑制する方法は、耐性菌の発生を抑え、薬剤の高濃度化による環境負荷を抑制する観点から、より好ましい。
【0018】
バイオフィルム形成抑制用組成物
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物は、キノン系化合物とキレート剤とを含有する。該キノン系化合物とキレート剤とは、協働して、バイオフィルム形成抑制のための有効成分として働く。
【0019】
(キノン系化合物)
本発明に用いられるキノン系化合物とは、2つ又は3つのケトン基を持つ1個のベンゼン環を有する化合物であり、該ベンゼン環はアルキル基で置換されていてもよい。該ベンゼン環を置換するアルキル基は、好ましくは炭素数1以上12以下、より好ましくは炭素数1以上8以下、さらに好ましくは炭素数1以上6以下、なお好ましくは炭素数1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。該ベンゼン環におけるアルキル置換基の個数は、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。各アルキル置換基は、それぞれ独立に、上述したアルキル基からなる群より選択され得る。
【0020】
本発明に用いられるキノン系化合物のベンゼン環のケトン基はヒドロキシ基に還元されていてもよく、さらに該ヒドロキシ基の1つがアルコキシ化されていてもよい。該アルコキシ基としては、炭素数1以上3以下のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0021】
本発明に用いられるキノン系化合物の好ましい例としては、水酸基又はアルキル基で置換されたヒドロキノン、水酸基又はアルキル基で置換されたp−ベンゾキノン、及びアルキルレゾルシノールが挙げられる。さらに好ましくは、本発明に用いられるキノン系化合物としては、下記の式(I)〜(III)で示される化合物が挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
上記式(I)中、R1は、水酸基、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。好ましい実施形態において、R1は、水酸基、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつR2、R3及びR4はともに水素であり、該炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はt−ブチル基である。別の好ましい実施形態において、R1はメチル基であり、R3が水素であり、かつR2及びR4は、一方がメチル基で他方が水素であるか、もしくはともにメチル基である。別の好ましい実施形態において、R1、R2、R3及びR4はともにメチル基である。
【0024】
上記式(II)中、R5は、水酸基、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を表し、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。好ましい実施形態において、R5は、炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつR6、R7及びR8はともに水素であり、該炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はt−ブチル基である。
【0025】
上記式(III)中、R9、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素、又は炭素数1〜8、好ましくは1〜6の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を表し、該直鎖もしくは分枝鎖アルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基からなる群より選択される。ただし、R9、R10及びR11が同時に水素になることはない。好ましい実施形態において、R9、R10及びR11のいずれか1つは炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつ残りはいずれも水素である。より好ましくは、R9、R10及びR11のいずれか1つは炭素数1〜5の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつ残りはいずれも水素である。さらに好ましくは、R9、R10及びR11のいずれか1つは炭素数2〜5の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつ残りはいずれも水素である。別の好ましい実施形態において、R9、R10及びR11のいずれか2つは炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、かつ残りは水素である。より好ましくは、R9、R10及びR11のいずれか2つは炭素数1〜5の直鎖アルキル基であり、かつ残りは水素である。さらに好ましくは、R9、R10及びR11のいずれか2つは炭素数2〜5の直鎖アルキル基であり、かつ残りは水素である。式(III)中、R9、R10又はR11で表される直鎖もしくは分枝鎖アルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基及びt−ブチル基からなる群より選択される。
【0026】
本発明で使用されるキノン系化合物は、上述したキノン系化合物のうちのいずれか1種であってもよく、又はそれらのいずれか2種以上の組み合わせであってもよい。好ましくは、本発明で使用されるキノン系化合物は、上記式(I)〜(III)で示される化合物のうちのいずれか1種、又はそれらのいずれか2種以上の組み合わせである。
【0027】
本発明に用いられるキノン系化合物のさらに好ましい例としては、p−トルキノン、2−メチルヒドロキノン、エチルキノール、2−ブチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、3,5−ジメチルベンゾキノン、tert−ブチルベンゾキノン等のp−ベンゾキノン及びヒドロキノン、ならびに4−ブチルレゾルシノール(ルシノール)、4−ヘキシルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、5−ペンチルレゾルシノール、2−プロピルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、及び4−イソプロピルレゾルシノール等のアルキルレゾルシノールからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。このうち、バイオフィルム形成抑制の観点からは、p−トルキノン及び2−メチルヒドロキノンからなる群から選ばれる1種以上がなお好ましい。
【0028】
(キレート剤)
本発明に用いられるキレート剤としては、カルボン酸系、リン酸系、又はホスホン酸系のキレート剤等が挙げられる。カルボン酸系キレート剤としては、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ホスホノカルボン酸、及びそれらの塩、等が挙げられる。多価カルボン酸としては、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)等が挙げられる。ホスホノカルボン酸としては、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等が挙げられる。リン酸系キレート剤としては、トリポリリン酸及びその塩等が挙げられる。ホスホン酸系キレート剤としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)等のヒドロキシホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)等のアミノホスホン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。このうち、本発明に用いられるキレート剤としては、アミノカルボン酸、ホスホノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシホスホン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。上記塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。上記塩は、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0029】
(組成)
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物は、上述のキノン系化合物とキレート剤からなる組成物であってもよいが、その他の成分を含有していてもよい。例えば、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物は、上記キノン系化合物とキレート剤以外に、両者を混合する観点から、水、有機溶媒等の溶媒を含有することができる。好ましい有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、及びそれらの混合溶媒、などが挙げられる。
【0030】
さらに、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物に含まれていてもよいその他の成分の例としては、抗菌抗カビ剤、防腐防黴剤、抗生物質、浸透促進剤、界面活性剤、消臭剤、芳香剤などが挙げられる。当該その他の成分の種類やその濃度は、キノン系化合物とキレート剤によるバイオフィルム形成抑制作用を阻害しない限り、特に限定されない。
【0031】
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中、キノン系化合物の含有量は、キノン系化合物の溶解性、及びバイオフィルム形成抑制作用の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であって、かつ好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。あるいは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中におけるキノン系化合物の含有量は、好ましくは0.1〜90質量%、より好ましくは0.5〜70質量%、さらに好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。
【0032】
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中、キレート剤の含有量は、バイオフィルム形成抑制作用の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であって、かつ好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。あるいは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中におけるキレート剤の含有量は、好ましくは0.05〜90質量%、より好ましくは0.05〜70質量%、さらに好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.3〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。
【0033】
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中におけるキノン系化合物及びキレート剤の含有量は、それぞれ、好ましくは0.1〜90質量%及び0.05〜90質量%、より好ましくは1〜50質量%及び0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜20質量%及び0.3〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%及び0.3〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%及び0.5〜20質量%である。
【0034】
さらに、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中におけるキレート剤の含有量は、バイオフィルム形成抑制作用の観点からは、キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であり、他方、経済性の観点からは、キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。
【0035】
あるいは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中におけるキレート剤の含有量は、キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜5000質量部、より好ましくは0.5〜2000質量部、さらに好ましくは1〜1000質量部、さらに好ましくは3〜700質量部、さらに好ましくは5〜500質量部、さらに好ましくは7〜300質量部である。
【0036】
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中、キノン系化合物とキレート剤との合計含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であって、かつ好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。あるいは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中におけるキノン系化合物とキレート剤との合計含有量は、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは3〜80質量%、さらに好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは7〜30質量%である。
【0037】
本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物は任意成分として有機溶媒を含んでいてもよい。当該組成物中の有機溶媒量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下であって、かつ好ましくは0質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。あるいは、本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物中における有機溶媒の含有量は、好ましくは0〜95質量%、より好ましくは0〜93質量%、さらに好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは30〜93質量%、さらに好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは50〜93質量%、さらに好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは70〜93質量%である。
【0038】
バイオフィルム形成抑制方法
本発明はまた、上述したキノン系化合物とキレート剤とを用いたバイオフィルム形成抑制方法を提供する。好ましくは、当該本発明の方法は、水系システムにおけるバイオフィルム形成抑制方法である。本発明の方法は、水系液体、好ましくは上述した水系システムで使用される水系液体に、上述したキノン系化合物とキレート剤とを添加することを含む。本発明の方法において、該水系液体には、上述したキノン系化合物とキレート剤とを含有する本発明のバイオフィルム形成抑制用組成物を添加してもよく、該組成物を水や有機溶媒等で希釈した希釈液を添加してもよく、又は上述したキノン系化合物とキレート剤とを別々に添加してもよい。このキノン系化合物とキレート剤とを添加された水系液体を、以下の本明細書において、単に「処理液」とも呼ぶ。
【0039】
本発明において、処理液中におけるキノン系化合物の濃度は、バイオフィルム形成抑制の観点からは、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、さらに好ましくは3ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは7ppm以上、さらに好ましくは8ppm以上、さらに好ましくは9ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上であり、他方、経済性の観点からは、好ましくは1400ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは270ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは60ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下である。なお本明細書において、ppmは質量ppmを表す。
【0040】
あるいは、処理液中におけるキノン系化合物の濃度は、好ましくは1〜1400ppm、より好ましくは2〜1000ppm、より好ましくは3〜500ppm、さらに好ましくは5〜270ppm、さらに好ましくは5〜200ppm、さらに好ましくは5〜150ppm、さらに好ましくは5〜100ppm、さらに好ましくは5〜70ppm、さらに好ましくは5〜60ppm、さらに好ましくは5〜50ppm、さらに好ましくは5〜40ppm、さらに好ましくは5〜30ppm、さらに好ましくは5〜20ppm、さらに好ましくは7〜20ppm、さらに好ましくは8〜20ppm、さらに好ましくは9〜20ppm、さらに好ましくは10〜20ppm、さらに好ましくは10〜15ppmである。
【0041】
なお好ましくは、本発明において、キノン系化合物は、処理液中におけるその濃度が、バイオフィルムの原因微生物の生育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)未満となる量で使用される。
【0042】
本発明において、処理液中におけるキレート剤の濃度は、バイオフィルム形成抑制の観点からは、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.3ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは2ppm以上であり、他方、経済性の観点からは、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは25ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0043】
あるいは、処理液中におけるキレート剤の濃度は、好ましくは0.05〜1000ppm、より好ましくは0.1〜500ppm、さらに好ましくは0.3〜100ppm、さらに好ましくは0.3〜70ppm、さらに好ましくは0.3〜50ppm、さらに好ましくは0.3〜40ppm、さらに好ましくは0.3〜30ppm、さらに好ましくは0.3〜20ppm、さらに好ましくは0.5〜20ppm、さらに好ましくは1〜20ppm、さらに好ましくは2〜20ppmである。
【0044】
処理液中におけるキノン系化合物及びキレート剤の好ましい濃度は、それぞれ、好ましくは1〜1400ppm及び0.05〜1000ppmであり、より好ましくは5〜200ppm及び0.3〜100ppmであり、さらに好ましくは5〜50ppm及び0.3〜30ppmであり、さらに好ましくは5〜30ppm及び0.5〜20ppmである。
【0045】
さらに、本発明において、水系液体へのキレート剤の添加量は、バイオフィルム形成抑制の観点からは、キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であり、他方、経済性の観点からは、キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。
【0046】
あるいは、本発明において、水系液体へのキレート剤の添加量は、キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは、0.1〜5000質量部、より好ましくは0.5〜2000質量部、さらに好ましくは1〜1000質量部、さらに好ましくは3〜700質量部、さらに好ましくは5〜500質量部、さらに好ましくは7〜300質量部である。
【0047】
本発明の方法において、処理液中におけるキノン系化合物とキレート剤の濃度は、常時上述した所定の範囲に維持しておく必要はなく、必要なときに、又は定期的に、上述した所定の範囲に調整し、一定時間維持すればよい。例えば、キノン系化合物とキレート剤とを、同時に又は別々に、水系液体に追加することもできる。バイオフィルム形成抑制効果の観点からは、処理液中におけるキノン系化合物及びキレート剤の濃度を、上述した所定の範囲に、好ましくは24時間以上、より好ましくは36時間以上、さらに好ましくは40時間以上維持することが望ましい。本発明の方法におけるキノン系化合物及びキレート剤の濃度を上述した所定の範囲にする時間は、好ましくは240時間以下、より好ましくは120時間以下であり得る。
【0048】
本発明の方法において処理される水系液体の温度、及び処理液の温度は、該水系液体が用いられる水系システムにあわせて適宜設定することができるが、それぞれ独立して、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、さらに好ましくは25℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
【0049】
また、本発明は、バイオフィルム形成抑制のための、キノン系化合物とキレート剤との組み合わせの使用を提供する。好ましくは、キノン系化合物とキレート剤を含む組成物がバイオフィルム形成抑制に使用される。また好ましくは、当該使用は、水系システム又は水系液体におけるバイオフィルム形成抑制のための使用である。該キノン系化合物とキレート剤の種類、使用濃度、及び使用方法は、上述したとおりである。
【0050】
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途又は方法を包含する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0051】
〔1〕キノン系化合物とキレート剤とを含有する、バイオフィルム形成抑制用組成物。
【0052】
〔2〕好ましくは、水系液体、又は水系液体を使用する水系システムにおけるバイオフィルム形成抑制に使用される、〔1〕記載の組成物。
【0053】
〔3〕キノン系化合物とキレート剤とを水系液体に添加することを含む、バイオフィルム形成抑制方法。
【0054】
〔4〕好ましくは、上記水系液体、又は上記水系液体を使用する水系システムにおけるバイオフィルム形成が抑制される、〔3〕記載の方法。
【0055】
〔5〕バイオフィルム形成抑制のための、キノン系化合物とキレート剤との組み合わせの使用。
【0056】
〔6〕上記使用が、好ましくは、水系液体、又は水系液体を使用する水系システムにおけるバイオフィルム形成抑制のための使用である、〔5〕記載の使用。
【0057】
〔7〕好ましくは、キノン系化合物とキレート剤を含む組成物が使用される、〔5〕又は〔6〕記載の使用。
【0058】
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項において、上記キレート剤は、
好ましくは、カルボン酸系、リン酸系、又はホスホン酸系のキレート剤であり、
より好ましくは、アミノカルボン酸、ホスホノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシホスホン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である。
【0059】
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項において、上記キノン系化合物は、
好ましくは、2つ又は3つのケトン基を持つ1個のベンゼン環を有する化合物であり、
該ケトン基はヒドロキシ基に還元されていてもよく、さらに該ヒドロキシ基の1つがアルコキシ化されていてもよく、
該ベンゼン環は、1〜3個、好ましくは1個のアルキル基で置換されており、
該アルキル基は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上12以下、より好ましくは炭素数1以上8以下、さらに好ましくは炭素数1以上6以下、さらに好ましくは炭素数1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であるか、なお好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基からなる群より選択される。
【0060】
〔10〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項において、上記キノン系化合物は、
好ましくは、式(I)〜(III)で示される化合物からなる群より選択される1種以上である:
【化2】
(式(I)中、R1は、水酸基、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。
より好ましくは、
1が水酸基又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつR2、R3及びR4がともに水素であるか、
1がメチル基であり、R3が水素であり、かつR2及びR4が、一方がメチル基で他方が水素であるかもしくはともにメチル基であるか、又は、
1、R2、R3及びR4はともにメチル基である;
式(II)中、R5は、水酸基、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を表し、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。より好ましくは、R5は炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつR6、R7及びR8はともに水素である;
式(III)中、R9、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素、又は炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を表す(ただし、R9、R10及びR11が同時に水素になることはない)。より好ましくは、R9、R10及びR11のいずれか1つが炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、かつ残りがいずれも水素であるか、又はR9、R10及びR11のいずれか2つが炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、かつ残りが水素である。)
【0061】
〔11〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項において、上記キノン系化合物は、
好ましくは、p−トルキノン、2−メチルヒドロキノン、エチルキノール、2−ブチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン、3,5−ジメチルベンゾキノン、tert−ブチルベンゾキノン、4−ブチルレゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、5−ペンチルレゾルシノール、2−プロピルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、及び4−イソプロピルレゾルシノールからなる群から選ばれる1種以上であり、
より好ましくは、p−トルキノン及び2−メチルヒドロキノンからなる群より選ばれる1種以上である。
【0062】
〔12〕上記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項において、好ましくは、上記キノン系化合物は、キノン系化合物とキレート剤とを添加された水系液体中での濃度が以下のとおりになるように使用される:
好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、さらに好ましくは3ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは7ppm以上、さらに好ましくは8ppm以上、さらに好ましくは9ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上であって、かつ好ましくは1400ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは270ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは60ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下;
あるいは、
好ましくは、1〜1400ppm、1〜1000ppm、1〜500ppm、1〜270ppm、1〜200ppm、1〜150ppm、1〜100ppm、1〜70ppm、1〜60ppm、1〜50ppm、1〜40ppm、1〜30ppm、1〜20ppm、1〜15ppm、2〜1400ppm、2〜1000ppm、2〜500ppm、2〜270ppm、2〜200ppm、2〜150ppm、2〜100ppm、2〜70ppm、2〜60ppm、2〜50ppm、2〜40ppm、2〜30ppm、2〜20ppm、2〜15ppm、3〜1400ppm、3〜1000ppm、3〜500ppm、3〜270ppm、3〜200ppm、3〜150ppm、3〜100ppm、3〜70ppm、3〜60ppm、3〜50ppm、3〜40ppm、3〜30ppm、3〜20ppm、3〜15ppm、5〜1400ppm、5〜1000ppm、5〜500ppm、5〜270ppm、5〜200ppm、5〜150ppm、5〜100ppm、5〜70ppm、5〜60ppm、5〜50ppm、5〜40ppm、5〜30ppm、5〜20ppm、5〜15ppm、7〜1400ppm、7〜1000ppm、7〜500ppm、7〜270ppm、7〜200ppm、7〜150ppm、7〜100ppm、7〜70ppm、7〜60ppm、7〜50ppm、7〜40ppm、7〜30ppm、7〜20ppm、7〜15ppm、8〜1400ppm、8〜1000ppm、8〜500ppm、8〜270ppm、8〜200ppm、8〜150ppm、8〜100ppm、8〜70ppm、8〜60ppm、8〜50ppm、8〜40ppm、8〜30ppm、8〜20ppm、8〜15ppm、9〜1400ppm、9〜1000ppm、9〜500ppm、9〜270ppm、9〜200ppm、9〜150ppm、9〜100ppm、9〜70ppm、9〜60ppm、9〜50ppm、9〜40ppm、9〜30ppm、9〜20ppm、9〜15ppm、10〜1400ppm、10〜1000ppm、10〜500ppm、10〜270ppm、10〜200ppm、10〜150ppm、10〜100ppm、10〜70ppm、10〜60ppm、10〜50ppm、10〜40ppm、10〜30ppm、10〜20ppm、又は10〜15ppm。
【0063】
〔13〕上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項において、好ましくは、上記キレート剤は、キノン系化合物とキレート剤とを添加された水系液体中での濃度が以下のとおりになるように使用される:
好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.3ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは2ppm以上であって、かつ好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは25ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下;
あるいは、
好ましくは、0.05〜1000ppm、0.05〜500ppm、0.05〜100ppm、0.05〜70ppm、0.05〜50ppm、0.05〜40ppm、0.05〜30ppm、0.05〜25ppm、0.05〜20ppm、0.1〜1000ppm、0.1〜500ppm、0.1〜100ppm、0.1〜70ppm、0.1〜50ppm、0.1〜40ppm、0.1〜30ppm、0.1〜25ppm、0.1〜20ppm、0.3〜1000ppm、0.3〜500ppm、0.3〜100ppm、0.3〜70ppm、0.3〜50ppm、0.3〜40ppm、0.3〜30ppm、0.3〜25ppm、0.3〜20ppm、0.5〜1000ppm、0.5〜500ppm、0.5〜100ppm、0.5〜70ppm、0.5〜50ppm、0.5〜40ppm、0.5〜30ppm、0.5〜25ppm、0.5〜20ppm、1〜1000ppm、1〜500ppm、1〜100ppm、1〜70ppm、1〜50ppm、1〜40ppm、1〜30ppm、1〜25ppm、1〜20ppm、2〜1000ppm、2〜500ppm、2〜100ppm、2〜70ppm、2〜50ppm、2〜40ppm、2〜30ppm、2〜25ppm、又は2〜20ppm。
【0064】
〔14〕上記〔1〕〜〔13〕のいずれか1項において、キノン系化合物とキレート剤とを添加された水系液体中での上記キノン系化合物及びキレート剤の濃度は、それぞれ、好ましくは1〜1400ppm及び0.05〜1000ppmであり、より好ましくは5〜200ppm及び0.3〜100ppmであり、さらに好ましくは5〜50ppm及び0.3〜30ppmであり、さらに好ましくは5〜30ppm及び0.5〜20ppmである。
【0065】
〔15〕上記〔1〕〜〔14〕のいずれか1項において、上記キレート剤の使用量は、
上記キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であって、かつ好ましくは5000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下であるか;
あるいは、
上記キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは、0.1〜5000質量部、0.1〜2000質量部、0.1〜1000質量部、0.1〜700質量部、0.1〜500質量部、0.1〜300質量部、0.5〜5000質量部、0.5〜2000質量部、0.5〜1000質量部、0.5〜700質量部、0.5〜500質量部、0.5〜300質量部、1〜5000質量部、1〜2000質量部、1〜1000質量部、1〜700質量部、1〜500質量部、1〜300質量部、3〜5000質量部、3〜2000質量部、3〜1000質量部、3〜700質量部、3〜500質量部、3〜300質量部、5〜5000質量部、5〜2000質量部、5〜1000質量部、5〜700質量部、5〜500質量部、5〜300質量部、7〜5000質量部、7〜2000質量部、75〜1000質量部、7〜700質量部、7〜500質量部、又は7〜300質量部である。
【0066】
〔16〕上記〔2〕〜〔4〕、及び〔6〕〜〔15〕のいずれか1項において、好ましくは、上記水系液体は水冷式冷却塔の冷却水である。
【0067】
〔17〕上記〔1〕、〔2〕、及び〔8〕〜〔16〕のいずれか1項において、好ましくは、上記バイオフィルム形成抑制用組成物は、水冷式冷却塔の冷却水におけるバイオフィルム形成抑制用の組成物である。
【0068】
〔18〕上記〔1〕、〔2〕、〔7〕、及び〔8〕〜〔17〕のいずれか1項において、上記バイオフィルム形成抑制用組成物における上記キノン系化合物の含有量は以下のとおりである:
好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であって、かつ好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下;
あるいは、
好ましくは、0.1〜90質量%、0.1〜70質量%、0.1〜50質量%、0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、0.5〜90質量%、0.5〜70質量%、0.5〜50質量%、0.5〜30質量%、0.5〜20質量%、1〜90質量%、1〜70質量%、1〜50質量%、1〜30質量%、1〜20質量%、3〜90質量%、3〜70質量%、3〜50質量%、3〜30質量%、3〜20質量%、5〜90質量%、5〜70質量%、5〜50質量%、5〜30質量%、又は5〜20質量%。
【0069】
〔19〕上記〔1〕、〔2〕、〔7〕、及び〔8〕〜〔18〕のいずれか1項において、上記バイオフィルム形成抑制用組成物における上記キレート剤の含有量は以下のとおりである:
好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であって、かつ好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下;
あるいは、
好ましくは、0.05〜90質量%、0.05〜70質量%、0.05〜50質量%、0.05〜30質量%、0.05〜20質量%、0.1〜90質量%、0.1〜70質量%、0.1〜50質量%、0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、0.3〜90質量%、0.3〜70質量%、0.3〜50質量%、0.3〜30質量%、0.3〜20質量%、0.5〜90質量%、0.5〜70質量%、0.5〜50質量%、0.5〜30質量%、又は0.5〜20質量%。
【0070】
〔20〕上記〔1〕、〔2〕、〔7〕、及び〔8〕〜〔19〕のいずれか1項において、上記バイオフィルム形成抑制用組成物における上記キノン系化合物及びキレート剤の含有量は、それぞれ、好ましくは0.1〜90質量%及び0.05〜90質量%、より好ましくは1〜50質量%及び0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜20質量%及び0.3〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%及び0.3〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%及び0.5〜20質量%である。
【0071】
〔21〕上記〔1〕、〔2〕、〔7〕、及び〔8〕〜〔20〕のいずれか1項において、上記バイオフィルム形成抑制用組成物における上記キレート剤の含有量は以下のとおりである:
上記キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であって、かつ好ましくは5000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下;
あるいは、
上記キノン系化合物100質量部に対して、好ましくは、0.1〜5000質量部、0.1〜2000質量部、0.1〜1000質量部、0.1〜700質量部、0.1〜500質量部、0.1〜300質量部、0.5〜5000質量部、0.5〜2000質量部、0.5〜1000質量部、0.5〜700質量部、0.5〜500質量部、0.5〜300質量部、1〜5000質量部、1〜2000質量部、1〜1000質量部、1〜700質量部、1〜500質量部、1〜300質量部、3〜5000質量部、3〜2000質量部、3〜1000質量部、3〜700質量部、3〜500質量部、3〜300質量部、5〜5000質量部、5〜2000質量部、5〜1000質量部、5〜700質量部、5〜500質量部、5〜300質量部、7〜5000質量部、7〜2000質量部、7〜1000質量部、7〜700質量部、7〜500質量部、又は7〜300質量部。
【0072】
〔22〕上記〔1〕、〔2〕、〔7〕、及び〔8〕〜〔21〕のいずれか1項において、上記バイオフィルム形成抑制用組成物は、任意成分として有機溶媒を含んでいてもよく、かつ
該組成物中の有機溶媒量は、
好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下であって、かつ好ましくは0質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であるか、あるいは
好ましくは0〜95質量%、0〜93質量%、30〜95質量%、30〜93質量%、50〜95質量%、50〜93質量%、70〜95質量%又は70〜93質量%である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
(1.試薬及び培地)
p−トルキノン(東京化成)
キレート剤
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)(東京化成)
クエン酸(キシダ化学、特級)
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(同仁化学研究所)
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)(和光純薬、一級)
R2A培地(和光純薬)
【0075】
(2.バイオフィルム抑制試験)
(2−1.試験菌の調製)
水冷式冷却塔から採取した冷却水より単離したバイオフィルム形成菌(下記2−4のバイオフィルム量の測定試験において、OD570が0.3以上となる菌)をR2A培地で30℃、16時間振とう培養した。得られた培養液の濁度(OD600)を測定し、R2A培地で希釈して103cfu/mLの懸濁液を調製した。
【0076】
(2−2.バイオフィルム形成抑制用組成物の調製)
所定量のp−トルキノンとHEDPを量りとり、溶媒(MDG)を加え、組成物を調製した。クエン酸、EDTAはMDGに溶解しなかったため、直接培養液中に添加し、併せてp−トルキノンも直接培養液に添加した。各組成物の組成を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(2−3.培養)
上記(2−1)で調製した試験菌の懸濁液を、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに150μL添加した後、上記(2−2)で調製した試験液を添加し培養を開始した。
【0079】
(2−4.バイオフィルム量の測定)
上記96ウェルマイクロプレートを30℃、48時間静置培養した後、培養液を除き水で洗浄した。続いて、各ウェルを0.1%クリスタルバイオレットで染色した後、200μLのエタノールを添加し、吸光度(OD570)を測定することによってバイオフィルム(BF)形成量を求めた。
【0080】
(2−5.結果及び考察)
BF抑制試験の結果を表2〜4に示す。実験番号2と5〜8とを比較すると、HEDPとp−トルキノンとを併用することにより、p−トルキノン単独と比べてBF抑制効果が高くなることが示された。実験番号12と15〜18とを比較すると、クエン酸とp−トルキノンとを併用することにより、p−トルキノン単独と比べてBF抑制効果が高くなることが示された。実験番号21と24〜26とを比較すると、EDTAとp−トルキノンとを併用することにより、p−トルキノン単独と比べてBF抑制効果が高くなることが示された。EDTAと比べて、HEDP及びクエン酸は、より低濃度でBF抑制効果を示した。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】