(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記篭取り出しステップ実施後に、煮込みに用いた釜及び釜内の残調味液を浸漬ステップにリターンさせて循環使用するとともに、前記冷却ステップにおいて複数の味付き油揚げから分離した調味液を前記釜内の残調味液に加えるとともに、前記調味液調整ステップにおいて前記釜内の調味液のBrix、温度及び量を所定の初期条件になるように煮込みに使用していない新調味液を加えて調整することを特徴とする請求項2に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記篭取り出しステップ実施後に、煮込みに用いた釜及び釜内の残調味液を浸漬ステップにリターンさせて循環使用するとともに、前記調味液調整ステップにおいて煮込みに使用していない新調味液に前記冷却ステップにおいて複数の味付き油揚げから分離した調味液を加えて混合し、この混合液を前記釜内の残調味液に加えて前記油揚げの煮込みを開始する前の前記釜内の調味液のBrix、温度及び量を所定の初期条件になるように調整することを特徴とする請求項2に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記煮込みに用いた釜及び釜内の残調味液を煮込みによる残熱を有したまま浸漬ステップにリターンさせて循環使用することを特徴とする請求項3または4に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記浸漬ステップにおいて、前記複数の油揚げは表面を縦方向の姿勢とし、かつ各々の表面が互いに向かい合うように並べて前記篭に収納した状態で調味液中に浸漬させ、前記煮込みステップにおいて、加熱された調味液の上昇流が前記複数の油揚げの各々の表面に沿って流動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記篭に収納されている複数の油揚げの下方側の端面と釜の内底部との間に予め定めた間隔ができる位置に浸漬させることを特徴とする請求項6に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記調味液中での浮力により篭内で浮上した油揚げの上方側の端面の位置を篭の上面側で規制して固定端とし、油揚げの下方側の端面を篭の下面側から所定距離離間させて自由端として浸漬させることを特徴とする請求項6又は7に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記収納ステップにおいて、複数の油揚げは表面を縦方向の姿勢とし、かつ各々の表面が互いに向かい合うように並べて篭に収納し、この収納した状態のまま浸漬ステップ、煮込みステップ、液切りステップを実施することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の味付き油揚げの製造方法。
前記液切りステップにおいて、複数の油揚げを収納した篭を釜内に貯留された調味液上に吊るし、調味液を釜内に流下させることにより煮込み後の油揚げの液切りを行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の味付き油揚げの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の味付き油揚げの製造方法は、
調味液が出入り可能で、複数の油揚げを収納し保持する篭に、油揚げを収納する収納ステップと、
前記篭及びこの篭に収納された複数の油揚げを、釜に収納して前記釜に所定量貯留させた調味液中に浸漬する浸漬ステップと、
前記調味液を加熱して所定時間油揚げを煮込む煮込みステップと、
所定時間油揚げを煮込んだ後に篭及びこの篭に収納されている油揚げを前記調味液から出して調味液の液切りを行う液切りステップと、
前記調味液の液切り後に油揚げを収納した篭を前記釜から取り出す篭取り出しステップと、
前記篭取り出しステップ後に篭に収納されている複数の味付き油揚げを真空冷却により冷却する冷却ステップと、を含む味付き油揚げの製造方法であって、
前記冷却ステップにおいて、複数の味付き油揚げから分離した調味液を油揚げの煮込みに循環再使用することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の味付き油揚げの製造方法によれば、油揚げに味付けする調味液を何度も繰り返し再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用して、連続的に効率よく味付き油揚げを製造することができる。
【0012】
また、前記油揚げの煮込みを開始する前の前記釜内の調味液のBrix、温度、量を所定の初期条件になるように調整する調味液調整ステップを備えたことを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、煮込みを開始する前の調味液の状態のうち、主にBrix、温度、量(液位)を常に一定条件に調整して煮込みステップに移行させることにより、調味液の油揚げへの均一な味付けを行うことができる。
【0013】
また、前記篭取り出しステップ実施後に、煮込みに用いた釜及び釜内の残調味液を浸漬ステップにリターンさせて循環使用するとともに、前記冷却ステップにおいて複数の味付き油揚げから分離した調味液を前記釜内の残調味液に加えるとともに、前記調味液調整ステップにおいて前記釜内の調味液のBrix、温度、量を所定の初期条件になるように煮込みに使用していない新調味液を加えて調整することを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、循環使用する釜内の残調味液に冷却ステップにおいて複数の味付き油揚げから分離した調味液を加えることにより両者の調味液を何度も繰り返し循環再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用することができる。また、残調味液の移し替えの手間を省ける。したがって、味付き油揚げを連続的に効率よく製造することができる。
【0014】
また、前記篭取り出しステップ実施後に、煮込みに用いた釜及び釜内の残調味液を浸漬ステップにリターンさせて循環使用するとともに、前記調味液調整ステップにおいて煮込みに使用していない新調味液に前記冷却ステップにおいて複数の味付き油揚げから分離した調味液を加えて混合し、この混合液を前記釜内の残調味液に加えて前記油揚げの煮込みを開始する前の前記釜内の調味液のBrix、温度、量を所定の初期条件になるように調整することを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、冷却ステップにおいて複数の味付き油揚げから分離した調味液と煮込みに使用していない新調味液を混合してから釜内の残調味液に加えることにより両者の調味液を何度も繰り返し循環再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用することができる。また、残調味液の移し替えの手間を省ける。したがって、味付き油揚げを連続的に効率よく製造することができる。
【0015】
また、前記煮込みに用いた釜及び釜内の残調味液を煮込みによる残熱を有したまま浸漬ステップにリターンさせて循環使用することを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、温度の高いままの残調味液、及びこの残調味液を入れたままの釜を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用するため、残調味液の移し替えの手間を省き、さらに残熱を有効利用して煮込みステップでの、省エネルギー化、均一加熱化を図ることができる。
【0016】
また、前記浸漬ステップにおいて、前記複数の油揚げは表面を縦方向の姿勢とし、かつ各々の表面が互いに向かい合うように並べて前記篭に収納した状態で調味液中に浸漬させ、前記煮込みステップにおいて、加熱された調味液の上昇流が前記複数の油揚げの各々の表面に沿って流動するようにしたことを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、加熱された調味液の上昇流が複数の油揚げの各々の表面に沿って流動するので、篭に収納した個々の油揚げ及び複数の油揚げに亘って十分な量の調味液が均一に浸み込むとともに、色むらのない味付き油揚げを製造することができる。
【0017】
また、前記篭に収納されている複数の油揚げの下方側の端面と釜の内底部との間に予め定めた間隔ができる位置に浸漬させることを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、油揚げの表面を縦方向の姿勢とし、かつ各々の表面が互いに向き合うように並べて篭に収納した状態とし、さらに釜の内底部と油揚げの下方側の端面とに間隔を設けたことにより、釜の内底部と油揚げの下方側の端面との間隔に対流循環による調味液が確実に存在し、この調味液の加熱、及び沸騰を常に安定した状態に維持することができ、さらに調味液が油揚げの下方側の端面から互いに対向している各々の表面間に均一に入り込み、各々の表面に沿って流動する。
【0018】
また、前記調味液中での浮力により篭内で浮上した油揚げの上方側の端面の位置を篭の上面側で規制して固定端とし、油揚げの下方側の端面を篭の下面側から所定距離離間させて自由端として浸漬させることを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、沸騰気泡を含む調味液が自由端側となって拘束されていない状態である油揚げの下方側の端面に当たって特に水平方向に位置を変える動きを与え、複数の油揚げの全体が搖動する。この下方側の端面から互いに対向している表面間に調味液が一層流入しやすくなる。
【0019】
また、前記収納ステップにおいて、複数の油揚げは表面を縦方向の姿勢とし、かつ各々の表面が互いに向かい合うように並べて篭に収納し、この収納した状態のまま浸漬ステップ、煮込みステップ、液切りステップを実施することを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、収納ステップ、浸漬ステップ、煮込みステップ、液切りステップの一連の製造ステップを複数の油揚げを収納した篭の姿勢を変えることなく実施することができ、作業を簡素化し、かつ生産性の向上を図ることができる。
【0020】
また、前記液切りステップにおいて、複数の油揚げを収納した篭を釜内に貯留された調味液上に吊るし、調味液を釜内に流下させることにより煮込み後の油揚げの液切りを行うことを特徴とする味付き油揚げの製造方法としたものである。
これにより、味付け後の複数の油揚げから調味液を釜内に流下させて液切りすることができ、かつ調味液の釜への回収を効率良く行うことができる。
【0021】
また、本発明の味付き油揚げは、上記いずれかの味付き油揚げの製造方法により得られたものであり、油揚げに味付けする調味液を何度も繰り返し再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用して、連続的に効率よく製造したものとなる。
【0022】
また、本発明のいなり寿司は、食感、食味に優れた商品価値の高いものとなる。
【0023】
(実施形態の説明)
図1は本発明の味付き油揚げの製造方法が実施される調理システム1の時系列的な概略構成図、
図2は調理システム1により実施される味付き油揚げの製造方法のステップ図である。
【0024】
図1と
図2において、
図1の“A”は調味液が出入り可能な篭4に、複数の油揚げを収納し保持する収納ステップS1を、“B”及び“C”は篭4及びこの篭4に収納された複数の油揚げ31を、釜60に収納して釜60に貯留させた調味液に浸漬する浸漬ステップS2を、“D”は調味液を加熱して所定時間油揚げを煮込む煮込みステップS3を、“E”は所定時間油揚げを煮込んだ後に、篭4及びこの篭4に収納されている油揚げを前記調味液から出して調味液の液切りを行う液切りステップS5を示し、これらのステップは本発明の味付き油揚げの基本的な製造方法となるものである。なお、
図1中の“F”は釜60から篭4を取り出す篭取り出しステップS6を実施する構成を示す。
【0025】
さらに、
図2には、煮込みステップS3と液切りステップS5間に実施し、釜60内の調味液62の加熱を停止して所定時間放置する養生ステップS4、液切りステップS5後に釜60から篭4を取り出した後、篭4内の油揚げ31を冷却する冷却ステップS7、冷却ステップS7後に篭4から味の浸みた味付き油揚げ31を取り出す油揚げ取り出しステップS8、煮込みを開始する前の釜60内の調味液の成分濃度(特にBrix(糖度))、温度、量を調整する調味液調整ステップS9、の各々を付加した例として記載している。
なお、
図2に示す製造方法のステップにおいては、篭4、釜60、釜60内の調味液62等を循環再使用し、味付き油揚げを連続的に製造する状態を示す。さらに、冷却ステップS7において味付き油揚げから一部分離した調味液を循環再使用する状態を示す。
【0026】
次に
図1を参照して、先ず、調理システム1の概略構成を説明する。調理システム1は主な構成要素として、油揚げ31(本実施形態では、二枚に分割された複数の油揚げ、詳細は後述)を収納する篭4、調味液62を貯留させた釜60、この釜60の開口部に被せる蓋61、釜60の底部が載置されるローラコンベヤ2、油揚げ31を収納した篭4を複数の油揚げ31とともに調味液中に浸漬させ、蓋61を被せた釜60を加熱する加熱装置7、加熱装置7に有し釜60を連続的に搬送する搬送用コンベヤ71を備える。ローラコンベヤ2は、煮込みステップS3を実施する加熱装置7の搬送用コンベヤ71を挟んで浸漬ステップS2および養生ステップS4、液切りステップS5を実施する位置に配置し、これらのローラコンベヤ2、搬送用コンベヤ71は平面視で輪状に繋がっており、釜60は、矢印で示す方向に搬送される。
【0027】
釜60を加熱し釜60内の調味液62を加熱して所定時間、油揚げを煮込んだ釜60から篭4を取り出した後、調味液の残っている釜60および味付け後の油揚げを取り出した篭4を用いて次の加熱、煮込み調理を速やかに行えるように構成されている。
【0028】
釜60の底部が載置されるローラコンベヤ2は、釜60の搬送方向と直交する方向に沿って複数のローラが自由回転し、作業者が釜60を搬送方向に移動させる。また、搬送用コンベヤ71は一対の無端状のチェーンコンベアをモータ等で回転駆動し、このチェーンコンベア上に釜60の持ち手64a,64b(
図7参照)が載置されて自動的に搬送される。なお、ローラコンベヤ2及び搬送用コンベヤ71は、上記実施形態の構成に限られず、任意の搬送手段を採用し得る。
【0029】
加熱装置7は、加熱源としてのガスバーナ装置に形成される火炎7aによって釜60の底部を加熱する。加熱装置7は、釜60が予め定めた区間Lにある間、釜60を加熱し、調味液62を加熱して所定時間、油揚げを煮込む。加熱量は、例えば、火力と、釜60の搬送速度と、搬送路(区間L)の長さとによって決める。所定時間、油揚げを煮込んだ後、釜60は、所定時間(例えば20分)だけ蒸らし養生される。なお、釜60の底部を加熱する加熱源として、ガスバーナ装置に形成される火炎7aに限らず、電熱ヒータを用いてもよい。また、釜60内に貯留させた調味液に電熱ヒータ等を浸漬させ調味液自体を直接加熱する構成であってもよい。
【0030】
ここで、味付けに用いる油揚げの基本的な形態・定義について説明する。
味付け用の油揚げ3は、扁平な直方体形状の豆腐を高温(例えば150〜180度C)の調理油中で所定時間揚げたものであり、調理油に接触する表面から内側に調理油で揚げられた表皮層と、この表皮層の内部に調理油で揚げられていない豆腐のままの内部層を形成している。また特に、いなり寿司とする味付け用の油揚げ3は、調理油中で所定時間揚げた後、寿司飯(シャリ)を内部層に挿入しやすくするため、例えば複数の針等を用いて内部層に空気を圧入して膨らませ、柔らかい内部層のほぼ中央部に割れ目を形成させる。この後、一枚の油揚げ3を表面の中間部で切断することによって二枚に分割された油揚げ31を得る(
図1参照)。
【0031】
本実施形態において、扁平な直方体形状をしている二枚に分割された各々の油揚げ31の互いに対向側に位置する広い二面を「表面」といい、これら表面31aに直交する狭い他の4面を「端面」という。この端面31bの内、分割による切り口側を開口面31cという(
図1、
図9、
図11参照)。この開口面31cは、いなり寿司33とするとき寿司飯(シャリ)32の挿入口となる。本実施形態における例では、二枚に分割された複数の油揚げ31を篭4内に収納して味付けを行うものである。さらに、
図11には、味付け後の油揚げ31に折り目31dが形成される例を示す。なお、二面ある表面31aと開口面31cを除く各々の端面31bとの直交部は、調理油で揚げられることにより、丸みを有する形状となっている。
【0032】
また、従来味付けを行う油揚げは、油抜きされたものと油抜きされてないものとが用いられている。油抜きされた油揚げは、豆腐を高温の調理油で揚げた後、熱湯中で煮込むか又は高温蒸気を吹付けて、全体の含有油分を減少させる処理を行い、さらにこの油揚げを加圧圧縮、遠心分離等の手段により、含有水分を減少させたものである。油抜きされていない油揚げとは、調理油で揚げられたままの状態の油揚げをいい、熱湯中で煮込むか又は高温蒸気を吹付けて、全体の含有油分を減少させる処理がされていないものである。
【0033】
調理油で揚げられたままの油抜きされていない油揚げは、高温の調理油に接触し、豆腐中の水分が表面部から激しく蒸発しながら揚げられる際に表層部に細かい多くの気泡が形成されるとともに、調理油を含有したものとなる。これにより、豆腐から表層部が膨張し全体サイズが大きくなり、さらに弾力性に富み、調味液62中に浸漬させたとき大きな浮力を発生する油揚げとなる。これに対して、油抜きされた油揚げは油抜きされていない油揚げに比べ、厚み、含有油分、気泡、弾力性が減り含有水分が多くなるが、比重は調味液62よりも小さく浮力により浮上する。
【0034】
なお、本発明においては、油抜きされた油揚げと油抜きされていない油揚げの両者とも適用できる。本実施形態においては、油抜きされていない油揚げに味付けする例を主として説明する。また、油抜きされていない油揚げ31のサイズは、例えば表面の長辺が略80ミリメートル、短辺が略60ミリメートル、厚みが略10〜13ミリメートルのものを用いたがこれに限定するものではない。
【0035】
次に、調理システム1において使用される篭4の詳細構成について
図1及び
図3乃至
図6を参照して説明する。
図3は、篭4の全体構成を示し(複数の油揚げ31を収納するとき、又は取り出すときの状態)、
図4は篭4の対向する両サイドに設けられた一対の持ち手42a,42bの各構成要素を(説明の簡略化のため持ち手42bの片側のみを示す)、
図5、
図6は持ち手42a,42bの可動状態の例を示す。なお、
図5において、かっこを付した符号は、持ち手42a,42bを作業台上での横倒しの状態から移動させたときの状態を示す。
【0036】
篭4は、平面視で矩形状とし、本体40と、これに被せる蓋41と、本体40の短手方向側の両サイドに設けられ、折り畳み可能に構成された一対の持ち手42a,42bとを備え、これらはステンレス等の金属からなる所定の弾性を有する線材を用いて構成されている。なお、一対の持ち手42a,42bは本体40の短手方向側の両サイドに限定するものではなく、長手方向側の両サイドに設けてもよい。
【0037】
蓋41は本体40に対して回動支点部材(図示なし)で連結されており、開閉可能に構成している。本体40内に複数の油揚げ31を収納した後、本体40に蓋41を被せることによって、油揚げ31を本体40と蓋41の間に保持するものである。なお、蓋41は本体40に対して着脱自在に構成してもよい。
【0038】
本体40、蓋41は、例えば直径が略2〜3ミリメートルの複数の線材を格子状に構成し、線材間のピッチを略25ミリメートルとし、線材間を調味液62が出入り可能としている。また、持ち手42a,42bも調味液62の流動を阻害しないように線材で枠状に形成している。なお、本体40、蓋41の一部、及び持ち手42a,42bには、強度を増すために例えば直径が略3〜5ミリメートルの線材を用いてもよい。また線材に限らず耐熱性を有する材料であればよく、また前記数値もこれに限定するものではない。
【0039】
また、持ち手42a,42bは、調味液62中で油揚げ31の浮力によって浮上しようとする篭4を釜60内の調味液62中における上下方向の所定位置に沈下させる位置決め具43cとして機能するものである。即ち持ち手42a,42bは、篭4の運搬するための持ち手と位置決め具として機能を兼ねるものである。これにより、持ち手が篭の移動、運搬、及び釜内への挿入、取り出し作業等における取扱いを容易にする機能と、釜60の蓋61に接触して篭4の浮き上がり防止して調味液中の所定位置にまで沈下させる位置決め具43cとしての機能を兼ね備えるものとなる。なお、位置決め具43cとしての機能及び上下方向の所定位置については後述する。
【0040】
さらに、持ち手42a,42bは、篭4の本体40に固定された回動部材56a、56bを回動支点として、篭の本体40と回動可能に固定された枠状の連結部材47a、47bと、この連結部材47a、47bに固定された回動部材55a、55bを回動支点として、連結部材47a、47bと回動可能に連設された枠状のアーム43a,43bとで構成されている。即ち、持ち手42a,42bの全体は、回動部材56a、56bを回動支点として、作業台上での横倒しの状態から上方に起立した状態となる範囲で回動可能となっている。
【0041】
連結部材47a,47bは、軸としての線材48a,48bと、線材54a、54bに設けたクリップ49a,49bとを備え、回動部材55a、55bを回動支点としてアーム43a,43bの線材51a,51bに回動可能に設けられている。
図4の矢印G、
図5の矢印Hで示すように、クリップ49a,49bは、本体40に蓋41を被せた後、連結部材47a,47bを篭4側に回動させ、クリップ49a,49bが蓋41を構成する線材41aの上面に係止し、蓋41を本体40に固定する。
【0042】
連結部材47a、47bに回動可能に連設されたアーム43a,43bは、2本の線材43d,43eと、把持部44a,44bと、軸としての線材51a,51bと、鉤状のフック45a,45bと、把持部44a,44bと反対側にクリップ53a、53b、を備える。アーム43a,43bの上端は作業者が篭4を持つための把持部44a,44bとして機能する。フック45a,45bは、後述する液切りステップS5において篭4を釜60の開口部の縁66(
図10参照)に係止し、釜60内に貯留させた調味液62上に吊るすために用いられる。
【0043】
また、
図5の矢印Iで示すように、本体40に蓋41を被せて連結部材47a,47bを篭4側に回動させ、クリップ49a,49bが蓋41を構成する弾性を有する線材41aの上面に係止し、蓋41を本体40に固定した状態において、連結部材47a,47bは篭4の側面に沿って起立した状態となる。次に、アーム43a,43bを回動させ、アーム43a,43bに形成したクリップ53a、53bが本体40を構成する弾性を有する線材40aの下面に係止し、連結部材47a、47bに回動可能に連設されたアーム43a,43bは、蓋41上に突出して上方に起立した状態となる。即ち、持ち手42a,42bは、全体が上方に起立した状態を維持するように構成されている。
【0044】
なお後述するが、作業者が把持部44a,44bを持って篭4を釜60内に出し入れするとき、さらに篭4を釜60内の調味液中に浸漬させた状態、煮込み状態等のとき、持ち手42a,42bは上方に起立させた状態となっている。
【0045】
持ち手42a,42bを上方に起立させた状態から蓋41を開けるときは、作業者が把持部44a,44bを持ってアーム43a,43b同士が互いに離れる方向(外側)に引っ張る。これによって、連結部材47a,47bのクリップ49a,49b、及びアーム43a,43bのクリップ53a、53bの係止が解除され、持ち手42a,42bは作業台上での横倒しの状態となり蓋41を開けることができる。
【0046】
また、
図5の矢印Jで示すように、持ち手42a,42bを上方に起立させた状態から、連結部材47a,47bは上方に起立した状態のままとして蓋41を保持し、アーム43a,43bのみを線材51a、51b部を回動支点として被せた蓋41上(内側)に倒すことができる。アーム43a,43bを内側に倒すことによって、フック53a、53bが本体40を構成する金属線材40aとの係止が解除され、蓋41上にアーム43a,43bが載置される。
【0047】
蓋41上にアーム43a,43bを倒すことによって、
図5の矢印Jで示すように、別の篭4を上に重ねて置くことができる。このとき鉤状のフック45a,45bが積重ねる上段側の篭4の本体40の底部を構成する線材間に入って、積重ねる上段側の篭4の水平方向の移動を規制して位置決めがなされ、積重ねた複数の篭4を一単位としてまとめて運搬、保管ができ、さらには洗浄を行うことができ作業が容易となる。
【0048】
さらに、アーム43a,43bを蓋41上に倒した後、アーム43a,43bを構成する線材52a、52bを、作業者が篭4を持つための把持部として機能させることができる。これによって、複数の油揚げ31を篭4に収納後、釜60から篭4を取り出した後、および使用後の篭4を片付けるとき等において、篭4の運搬作業が容易となる。
【0049】
また、
図6に示すように、連結部材47a,47bを回動部材56a、56bを回動支点として篭4の下方に向けて倒し、さらに回動部材55a、55bを回動支点としてアーム43a,43bを横方向に倒す。この回動状態とさせたとき、アーム43a,43bのフック45a、45bの先端部、及び線材52a、52bの各々が作業台上に載置された状態となる。即ち、持ち手42a,42bが篭4の脚として機能し、篭4の本体40の底面を作業台の面から所定距離離間させることができる。
【0050】
図6に示す状態において、蓋41を開け、油揚げ31の収納および味付け後の油揚げ31の取り出しを行うこともできる。篭4の本体40の底面が作業台に直接接触しないで所定距離離間していることによって、本体40の底面を構成する線材と作業台の面との間に、油揚げ31の下方側の端面31bが噛みこまれることがなくなり、油揚げ31の破損、変形を防止することができる。なお、油揚げ31の下方側の端面31bが噛みこむことを防止するため、本体40の底面に複数の脚(図示なし)を設け、篭4の本体40の底面が作業台に直接接触しないようにしてもよい。
【0051】
なお、平面視において矩形状である篭4は、例えば、短手方向を略25センチメートル、長手方向を略45センチメートル、高さを略10センチメートルとし、ステンレス等の金属の線材で構成している。篭4の形状、サイズ等は、収納する油揚げ31および釜60の形状、サイズ等との関連によって設定するもので、特に限定するものではない。また、ステンレス等の金属に限定するものではなく、耐熱樹脂を用いてもよい。
【0052】
篭4に油揚げ31を収納する際に、
図3に示すような枠46を使用し、この枠46によって区画される各空間に複数の油揚げ31を分割して収納してもよい。これにより、後述する油揚げ31を縦方向の姿勢として篭4内に収納した場合、油揚げ31の収納姿勢が安定しやすくなるとともに、枠に沿って調味液62が流動し安定した上昇流を形成でき、調味液をより均一に味付けすることができる。なお、枠46は、枠自体を線材で作った網により構成されたものであってもよい。この場合、各油揚げの表面に、網目を介してより万遍なく調味液62が触れるため、より均一な味付けを実現することができる。
【0053】
次に、釜60、釜の蓋61、及び蓋61の位置規制手段63を
図7(a)(b)(c)を用いて説明する。
【0054】
釜60及び釜60の開口部に被せる蓋61は、
図7(a)に示すように、平面視で矩形状であり、熱伝導性に優れた例えばアルミ合金等の材質で構成されている。釜60は、底部から上方の開口部に亘って拡大するやや傾斜した縦壁を形成して所定の深さを有し、釜60の開口部の縁66、対向した短手方向に一対の持ち手64a、64bを形成している。蓋61は、釜60の開口部の縁66の内側に嵌る凸状体61bを形成している。なお、釜60、蓋61はアルミ合金等の材質に限らず他の材質であってもよい。蓋61は、煮込みステップS3、養生ステップS4等において釜60内全体の温度の均一化、安定化のために必要であり、また釜60内への異物等の混入を防止することができる。なお、篭4と釜60及び釜60の蓋61は平面視で矩形状であり、各々の長手方向と短手方向は、同一方向となっている。
【0055】
位置規制手段63は、釜60の持ち手64a,64b部にあって、蓋61の上下方向の可動範囲Mを規制する。この位置規制手段63は、持ち手64a,64b上に設けられた柱状部品65cと、この柱状部品65cに上下移動及び水平方向に回動可能に設けられたレバー65a,65bと、で構成されている。柱状部品65cは、上下方向の可動範囲Mだけ他の部分よりも直径が小さくなっている細径部分65dを有する。レバー65a,65bは、蓋61を釜60に強く圧着するものではなく、蓋61の浮き上がりを可動範囲Mだけ許容する。
【0056】
図7(a)は、釜60の開口部に蓋61を被せ、レバー65a,65bが蓋61上にない状態、
図7(b)、(c)は、蓋61上にレバー65a,65bを回動させた状態を示す。また、
図7(b)は、凸状体61bが釜60の開口部に嵌り蓋61が浮き上がっていない状態を示し、
図7(c)は、蓋61が開口部上に浮き可動範囲M内の最高位置にある状態を示す。なお、レバー65a,65bを回動させて蓋61上にない状態として蓋61を釜60から外す。
【0057】
さらに、
図7(c)は、篭4の持ち手42a,42bを上方に起立した状態で、アーム43a,43bの把持部44a,44bが釜60の蓋61の下面に接触し、調味液62中で油揚げの浮力によって浮上しようとする篭4により、蓋61が位置決め具43cとしての持ち手42a,42bを介して浮き上がってレバー65a,65bにより上下方向の位置を規制されている状態を示す。
【0058】
このとき、凸状体61bとこれよりも大きい釜60の開口部の縁66とで隙間が形成され、この隙間から矢印で示すように加熱された調味液から発生する蒸気を逃がし調味液62の吹きこぼれを防止することができる。
【0059】
また、蓋61の凸状体61bの下端と釜60の開口部の縁66の上端は上下方向において重なり代を有し、蓋61の水平方向(横方向)のずれを所定範囲内とし、蓋61の釜60からの脱落を防止する。さらに上記した位置規制手段63により、浮き上がった蓋61は水平方向を維持し傾斜することがない。
【0060】
なお、
図7(a)、(b)、(c)の状態については、浸漬ステップS2、煮込みステップS3等の製造方法のステップにおいてさらに説明する。
【0061】
次に、上記のように構成された調理システム1における味付き油揚げの製造方法を、各図を用いて時系列に順次説明する。
【0062】
先ず、収納ステップS1を主に
図1(特に矢印で示す“A”部)、
図3乃至
図5を用いて説明する。
図1、
図3に示すように、篭4は持ち手42a、42bを横に倒し、蓋41を回動させて開ける。この状態において、篭4の本体40内に複数の油揚げ31を収納する。
【0063】
油揚げ31は、各々の表面31aが縦(上下)方向である立てた状態(以下、これを「縦方向の姿勢」という)で、かつ複数の油揚げ31の各々の表面31aが互いに向かい合うように横方向に並べて列を形成し本体40内に収納する。また、油揚げ31の表面31aと同様に、開口面31cが縦(上下)方向である立てた状態となるように収納する。
【0064】
なお後述するが、煮込みステップS3において加熱された調味液62の上昇流が油揚げ31の各々の表面31a、および油揚げ31の開口面31c、この開口面31cと対向する側に位置する端面31bのそれぞれに沿って下方から上方に流動する状態となる。
【0065】
油揚げ31の各々の表面31aが互いに向かい合うように横方向に例えば20〜25枚並べ、これを1列として平面視で矩形状の篭4の短手方向に沿って(各々の表面31aが篭4の短手方向と直行する方向)本体40内に収納する。さらに、篭4の長手方向に沿って7列に亘って収納する。したがって、一つの篭4内に140〜175枚の油揚げ31を収納する。なお、複数の油揚げ31の列の収納方向を、篭4の短手方向とするか長手方向とするかは任意であるが、複数の油揚げ31の縦方向を姿勢の安定化、各々の表面31aの接触状態を一定化させるために、一列当たりの数量がより少なくなる短手方向に沿って収納することが好ましい。
【0066】
本体40内に収納された各列の両端側に位置する油揚げ31の表面31aは、本体40を構成する複数の線材によって規制される。さらに、複数の油揚げ31の各々の互いに向かい合う表面31a同士は軽く接触し、傾倒せずに縦方向の姿勢を保持するように収納する。また、複数の油揚げ31の列間は、互いに隣り合う端面31bと開口面31c同士が軽く接触又は微小な隙間を形成させて収納する。なお、油抜きされていない弾性を有する複数の油揚げ31を収納するときは、表面31a同士がやや圧接された状態として収納してもよい。
【0067】
列内においては開口面31cを同一方向(横向)として収納する。これは収納した油揚げ31の表面31aの接触状態の一定化、及び端面31bの位置がずれにくく縦方向の姿勢を安定させることができる点で好ましい。また、開口面31cの方向は、複数列に亘って同一方向として収納することが、列間の乱れを少なくし、油揚げ31の収納作業性をより統一したものとして管理できる点で好ましい。
【0068】
なお、一列当たりの油揚げ31の枚数、列数、収納方向等は一例であってこれに限定するものではない。
【0069】
篭4の本体40内に複数の油揚げ31を縦方向の姿勢として収納したとき、油揚げ31の下方側の端面31bは本体40を構成する線材(篭4の下面側)に接触する。蓋41を閉めたとき、油揚げ31の上方側の端面31bと蓋41の線材内面(篭4の上面側)とには、所定の間隔(例えば5〜15ミリメートル)を設けた状態として収納する。この間隔は、篭4内に収納した複数の油揚げ31の上下方向押さえ付けによる縦方向の変形を防止するため、及び後述する浸漬ステップS2、煮込みステップS3等時に、調味液62中において、篭4内で油揚げ31が浮上し、下方側の端面31bが本体40を構成する線材(篭4の下面側)から前記所定の間隔(
図8、H1相当)に相当する分離間し、下方側の端面31bを自由端状態とするものである。なお、前記した所定の間隔の数値は一例であってこれに限定するものではない。
【0070】
なお、前記所定の間隔を設けることは、収納ステップS1において複数の油揚げ31間に多少の寸法差があっても縦方向の圧縮による変形を生じることがなく好ましい。さらに、浸漬ステップS2、煮込みステップS3において、調味液62中で複数の油揚げ31が篭4内の範囲で所定の間隔分(H1)上方に浮上し、良好な煮込みを行うことができる(詳細は後述する)。
【0071】
複数の油揚げ31を本体40に収納した後、蓋41を本体40に被せ、連結部材47a,47bを篭4側に回動させてクリップ49a,49bを、蓋41を構成する線材41aの上面に係止させ、蓋41を本体40に固定する。さらに、アーム43a、43bを回動させて持ち手42a,42b全体を上方に起立させ持ち手42a,42bの把持部44a、44b側が篭4の上方に突出した状態として浸漬ステップS2へ移行する。
【0072】
収納ステップS1においては、油揚げ31を縦方向の姿勢で篭4に収納することにより、油揚げを横方向の姿勢で各々の表面同士を上下に積み重ねて収納する場合に較べて、篭4への油揚げ31の収納効率、収納作業が良好で、かつ上方(平面視)から複数の油揚げ31の端面の全体が見え、油揚げ31の収納枚数、各々の表面31aの接触状態の確認、管理が容易になる。
【0073】
なお、油揚げ31は、いなり寿司用には、寿司飯32を詰めるために開口面31cが必要で分割されたものとするが、その他の用途、例えば調理用の具材等では必ずしも分割されなくてもよい。また、油揚げ31の表面31aの形状は、円形、三角形等であってもよく、その表面31aを縦方向の姿勢で篭4に収納する限りにおいて、同様の効果が得られる。
【0074】
次に、収納ステップS1後に実施する浸漬ステップS2を主に
図1(特に矢印で示す“B”、“C”部)、
図7(c)、
図8(a)、(b)、(c)を用いて説明する。
図8(a)は同製造方法における浸漬ステップS2状態での釜60の長手方向に沿う側断面図、(b)は同釜60の短手方向に沿う側断面図、(c)は同篭4内での複数の油揚げの状態図である。浸漬ステップS2においては、収納ステップS1で篭4内に複数の油揚げ31を縦方向の姿勢として収納した状態のまま釜60内の調味液62中に浸漬する。
【0075】
浸漬ステップS2において、釜60内に調味液62を所定量貯留させた状態としてある。この釜60内の調味液62は、Brix(糖度)、温度の各々を初期値に調整してあり、さらに、少なくとも後段に実施する調味液62が減少していく煮込みステップS3の終了時において、篭4に縦方向の姿勢に収納した油揚げ31の上方側の端面31bが調味液62中に位置する液面レベルとなるように調整した所定量を貯留させておく。なお、調味液62に関しては、後述する調味液調整ステップS9においてさらに説明する。
【0076】
次に、釜60内に貯留させた調味液62中における油揚げ31、篭4の浮力に関連する要素を説明する。篭4に収納していない状態の油揚げ31の全体を調味液62に沈下させて浸漬したとき、調味液62よりも比重の小さい油揚げ31は浮力を受けほとんどが液面に浮上する。これに対して油揚げ31を収納していない金属線材で構成された篭4は調味液62よりも比重が大きく調味液62中に沈む。
【0077】
これらから、油揚げ31の浮上しようとする上昇力から篭4の下方への下降力(重量)を差し引いたものが複数の油揚げ31を収納した篭4としての調味液62中でのトータル浮力となる。したがって、篭4の全体重量を小さく(軽く)すればトータル浮力はより大きくなることになる。また、油揚げの31の単位体積当たりの浮力は、気泡をより多く含む油抜きされていないものの方が油抜きされたものよりも大きくトータル浮力はより大きくなることになる。なお、厳密には前記篭4の下方への下降力(重量)は、調味液62中において篭4を構成する線材の体積分の僅かな浮力を差し引いたものである。
【0078】
なお、本実施形態においては、油揚げ31は油抜きされていないもの、および油抜きされたものにかかわらず、複数の油揚げ31を収納した篭4は、前記したトータル浮力により調味液62中で浮上しようとする作用を生じるものである。
【0079】
複数の油揚げ31を縦方向の姿勢として収納したまま持ち手42a,42bを上方に起立した状態とし把持部44a、44bを持って篭4を、調味液62を貯留させた釜60内に挿入、収納する。このとき、篭4は油揚げ31の下端側の一部が調味液62に浸かり、この浸かった分の油揚げ31の浮力に基づくトータル浮力によってバランスした位置で篭4は調味液62に浮かんだ状態となる(
図1の“B”(S2)を参照)。
【0080】
この状態から、
図1の“C”(S2)に示すように釜60に蓋61を被せて、蓋61を降下させると、持ち手42a,42b(位置決め具43c)の把持部44a、44bが蓋61の下面に接触し蓋61の降下とともに篭4を押下して降下させる。
【0081】
篭4のトータル浮力よりも釜60の蓋61の重量の方が大きい場合には、
図7(b)、
図8(a)、(b)に示すように、蓋61が釜60の開口部の縁66に載置された状態となり、蓋61は位置規制手段63の可動範囲M内の最低位置にある。またこの状態においては、蓋61が釜60の開口部の縁66に載置された状態を基本位置として篭4および複数の油揚げ31は調味液62中の上下方向の所定位置に沈下し、収納された油揚げ31は、釜60に貯留させた調味液62中に全体が浸漬される。
【0082】
さらに、篭4を上下方向の所定位置に沈下させたときに、平面視における篭4の最外周の4辺の各々は、釜60の縦壁の内側面に近接させた状態とする。これにより、釜60の縦壁の内側面により篭4の水平方向(横方向)の移動を最小限として所定範囲内に規制し、調味液62中で油揚げの浮力によって浮上しようとする篭4を、釜60内の調味液62中における水平方向の所定位置に沈下させることができる。
【0083】
このように、篭4を釜60内に挿入、収納し、釜60に蓋61を被せるだけの簡単な構成、作業で、調味液62中において篭4が傾斜することなく、予め設定した上下方向及び水平方向の所定位置に精度よく沈下させることができる。
【0084】
なお、蓋61が釜60の開口部の縁66に載置された状態となるときは、蓋61には煮込み時に発生する調味液の蒸気を逃がす開口(図示なし)を設けて、調味液62の吹きこぼれを防止することが好ましい。
【0085】
また、篭4のトータル浮力よりも釜60の蓋61の重量の方が大きい場合には、蓋61は可動範囲M内の最低位置にあり、位置規制手段63のレバー65a,65bの回動操作が不要となる。この場合には、蓋61は位置規制手段63のレバー65a,65bにより上下方向の位置を規制する必要がなく位置規制手段63を設けなくともよい。
【0086】
前記したように篭4のトータル浮力よりも釜60の蓋61の重量の方が小さい場合には、篭4は持ち手42a,42b(位置決め具43c)を介して蓋61を上方に押し上げる。このままでは蓋61の姿勢が不安定となり、篭4および油揚げ31の調味液62中での上下方向の正確な所定位置に沈下させることができない。この場合には、上記したように位置規制手段63を採用、操作し、
図7(c)に示した状態とする。
【0087】
なお、篭4のトータル浮力よりも釜60の蓋61の重量の方が小さい場合であっても、蓋61の重量自体が篭4を押下させようと作用するので、作業者は蓋61を上方に押し上げようとする浮力に対抗する押下力のみを蓋61に加えるだけで簡単に作業することができ、さらに、篭4を調味液62中に沈下させて位置規制手段63を操作することができる。
【0088】
図7(c)に示した状態においては、篭4の持ち手42a,42bが上方に起立した状態で、アーム43a,43bの把持部44a,44bが釜60の蓋61の下面に接触し、調味液62中で油揚げの浮力によって浮上しようとする篭4により、蓋61が持ち手42a,42b(位置決め具43c)を介して浮き上がって位置規制手段63のレバー65a,65bにより上下方向の位置を規制され開口部上に浮き可動範囲M内の最高位置にある。これによって、蓋61の姿勢が安定し、篭4および油揚げ31を調味液62中での上下方向の正確な所定位置に沈下させることができる。
【0089】
このとき、凸状体61bとこれよりも大きい釜60の開口部の縁66とで隙間が形成され、この隙間から矢印で示すように加熱された調味液から発生する蒸気を逃がす。また、蓋61の凸状体61bの下端と釜60の開口部の縁66の上端は上下方向において重なり代を有し、蓋61の水平方向(横方向)のずれを所定範囲内とし、蓋61の釜60からの脱落を防止する。
【0090】
なお、蓋61が釜60の開口部上に浮き可動範囲M内の最高位置にある状態を基本位置として篭4および油揚げ31を調味液62中での上下方向の正確な所定位置に沈下させることができるように持ち手42a,42b(位置決め具43c)の高さ寸法を設定する。
【0091】
篭4のトータル浮力よりも釜60の蓋61の重量の方が大きい場合と、篭4のトータル浮力よりも釜60の蓋61の重量の方が小さい場合のいずれにおいても、
図7(b)、
図8(a)、(b)、
図7(c)に示すように、篭4を上下方向の所定位置に沈下させたときに、篭4の最外周の4辺各々は、釜60の縦壁の内側面に近接させた状態とする。
【0092】
これによって、釜60の縦壁の内側面により、篭4の水平方向の移動を最小限として所定範囲内に規制し、調味液62中で油揚げの浮力によって浮上しようとする篭4を、釜60内の調味液62中における水平方向の所定位置に沈下させることができる。前記近接させた状態とは、例えば釜60の縦壁の内側面と篭4の最外周の4辺各々との隙間を2〜5ミリメートルとし、これを所定範囲として釜60内での篭4の移動を規制する。
【0093】
このように、篭4を釜60内に挿入、収納し、釜60に蓋61を被せ、必要に応じて位置規制手段63のレバー65a,65bを回動させるだけの簡単な構成、作業で、調味液62中において篭4が傾斜することなく、予め設定した上下方向及び水平方向の所定位置に精度よく沈下させることができる。さらに、平面視において、釜60に対して複数の油揚げ31を無駄なく収納して数量を最大化でき、一釜当たりの油揚げ31の味付け処理数を大幅に増やし、生産性の向上を図ることができる。
【0094】
また、釜60は、底部から上方の開口部に亘って拡大するやや傾斜した縦壁を形成しているので、篭4の最外周は開口部よりも小さい。したがって、篭4は傾斜した縦壁にガイドされ篭4の釜60内への挿入、収納作業が容易となる。
【0095】
収納ステップS1において、篭4の本体40内に複数の油揚げ31を縦方向の姿勢として収納したとき、油揚げ31の下方側の端面31bは本体40を構成する線材(篭4の下面側)に接触し、油揚げ31の上方側の端面31bは篭4の蓋41を構成する線材内面(篭4の上面側)から所定の間隔(後述の
図8、H1に相当)分離間した状態としていたが、調味液62中に浸漬したときには、
図8(c)に示すように、油揚げ31の各々は浮力により浮上し、油揚げ31の上方側の端面31bは蓋41の線材内面に接触し縦方向の姿勢のまま篭4内に保持される。また、油揚げ31の下方側の端面31bは本体40を構成する線材から所定の間隔(H1)離間した状態となる。この所定の間隔(H1)は、例えば5〜15ミリメートルに設定する。これにより、調味液62中においては、油揚げ31の上方側の端面31bが固定端となり、油揚げ31の下方側の端面31bは自由端となっているものである。
【0096】
さらに、調味液62中における油揚げ31の上下方向の所定位置とは、油揚げ31の全体が調味液中に浸漬し、かつ篭4に収納されている油揚げ31の下方側の端面31bと釜60の内底部との間に予め定めた間隔(H3)ができる位置である。この間隔(H3)は、例えば20〜30ミリメートルに設定する。また、篭4の本体40の下端と釜60の内底部との間隔(H2)例えば5〜10ミリメートルができる位置となる。なお、間隔(H3)をベースとし、間隔(H1)、(H2)を振り分ければよい。油揚げ31の下方側の端面31bと釜60の内底部との間に予め定めた間隔(H3)を調味液62が自由に流動することができる。この流動作用については、次の煮込みステップS3においてさらに説明する。
【0097】
なお、篭4の本体40及び蓋41を含めた縦方向サイズが油揚げの縦方向サイズより大きくて、篭4の本体40の下端と油揚げ31の下方側の端面31bとの間隔が、比較的大きくなる場合は、篭4の本体40の下端と釜60の内底部との間隔(H2)をより小さくして浸漬させてもよい。この場合にも油揚げ31の下方側の端面31bと釜60の内底部との間に予め定めた縦方向の間隔(H3)ができる位置関係とする。
【0098】
また、油揚げ31の下方側の端面31bと釜60の内底部との間に予め定めた間隔(H3)に篭4を構成する線材が位置していても調味液62がこの線材間を自由に流動することができる。したがって、次の煮込みステップS3においても、加熱された調味液62の流動を阻害することはない。
【0099】
なお、前記したように、釜60に予め貯留させた調味液62に油揚げ31の全体が浸漬されるようにしたが、例えば、釜60の蓋61に調味液62の注入口(図示なし)を設けておき、調味液62を貯留させていない状態の釜60に、篭4を収納し、蓋61を閉め、その後に注入口から必要量の調味液62を供給してもよい。この場合には、油揚げ31を収納した篭4は、釜60の内底部に接するまで下降して収納される。この後調味液62が供給され、これによって、篭4は調味液62中での複数の油揚げ31の浮力によって上昇し、釜60の蓋61に篭4の持ち手42a,42bを構成するアーム43a,43bの把持部44a、44bが接触して篭4の上昇が規制され、篭4を調味液62中の所定位置に沈下させ、これを維持することができる。
【0100】
収納ステップS1において、複数の油揚げ31を縦方向の姿勢として収納し、持ち手42a,42bの把持部44a、44bを持って釜60内に挿入し、浸漬ステップS2においても複数の油揚げ31を縦方向の姿勢のままとして釜60内の調味液62中に浸漬させるものである。したがって、収納ステップS1から浸漬ステップS2への移行に際し、複数の油揚げ31を収納した篭4の姿勢を変えることなくスムースに作業を行うことができる。
【0101】
なお、図示しないが、収納ステップS1において、開口を有する縦方向の篭に複数の油揚げ31を横方向の姿勢としてその表面31a同士を上下に積み重ねて収納し、浸漬ステップS2において篭の姿勢を変えて複数の油揚げ31が調味液62中において縦方向の姿勢となるように浸漬させてもよいが、篭を縦方向から横方向に変更させる作業が必要となる。
【0102】
従来は、複数の油揚げ31を横方向の姿勢としてその表面31a同士を上下に積み重ねて容器(篭)に収納し、複数の油揚げ31を横方向の姿勢のままとして調味液62中に浸漬する。この状態においては、調味液62中において下段側に位置する油揚げ31の浮力は重なり合う上段側の油揚げ31に順次累積された浮力として作用する。例えば、最上段の油揚げ31の表面には、下段側に位置する複数の油揚げ31の累積された浮力を受けることになる。これにより、接触する油揚げ31の各々の表面31aには浮力による圧接作用を生じ、さらに、圧縮されることにより厚みが減少しバラツキが大きくなるとともに油揚げ31自体に含まれる気泡が押し出され浮力が安定しない。また、各々の表面31a間への調味液62の流入、流動が生じ難くなる。
【0103】
これらの作用は、横方向の姿勢としてその表面31a同士を上下に積み重ねる油揚げ31の数量が増えるほど大きくなるため、積み重ねる油揚げ31の数量を制限(例えば略5枚程度)せざるを得ず、篭(容器)への収納効率に課題がある。
【0104】
前記したような従来の浸漬状態に対して、本発明の実施形態においては、縦方向の姿勢のままの複数の油揚げ31は、その各々が単独で浮力を発生し、油揚げ31の接触する表面31a間には浮力による圧接作用を生じることがなく、圧縮により厚みが変化せず、さらに油揚げ31自体に含まれる気泡が押し出されることもない。したがって、調味液62中への浸漬時(煮込み、養生時も含む)において、複数の油揚げ31の浮力が常に安定し、且つ複数の油揚げ31を収納した篭4としての調味液62中でのトータル浮力も安定することで、複数の油揚げ31を調味液62の所定位置に確実に沈下させることができる。
【0105】
さらに、調味液62中へ浸漬させた状態において、油揚げ31の表面31a間および列間に存在していた気泡が浮力を受けて上昇し抜けて調味液62に置換された状態となり、したがって、この浸漬開始時から調味液62の流動が始まるとともに、油揚げ31の表面31a、端面31b、開口面31cの全てに調味液62が接触する。また、複数の油揚げ31は調味液62とほぼ同温度となる。このような状態とした浸漬ステップS2から、次ステップである煮込みステップS3にスムースに移行させることができる。
【0106】
以上のように、本発明の味付き油揚げの製造方法においては、蓋61を釜60に被せる動作に応じて篭4を押下することによって篭4を調味液62中の所定位置にまで沈下させる篭4と釜60の蓋61との間に介在させた位置決め具43cを備えており、浸漬ステップS2において、蓋61を釜60に被せることによって、位置決め具43cを介して調味液62中で複数の油揚げ31の浮力によって浮上しようとする篭4を沈下させて、複数の油揚げ31の全体が調味液62中に浸漬する所定位置に保持し、煮込みステップS3に移行するものである。なお、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、位置決め具43cは、篭4に取り付けられている持ち手42a,42bに限られず、釜60の蓋61の内側に篭4を押下するように取り付けた棒状部材であってもよい。位置決め具43cは、釜60の蓋61及び篭4に取り付け可能な棒状部材を用いてもよい。
【0107】
次に、前記浸漬ステップS2後に実施する煮込みステップS3を主に
図1(特に矢印で示す“D”部)、
図9(a)、(b)を用いて説明する。
図9(a)は、煮込みステップS3(
図1の“D”)での調味液が沸騰状態に達したときの釜60内の状態、
図9(b)は、煮込みが進行したときの釜60内の状態をそれぞれ示す。なお、
図9(a)、(b)は、釜60の短手方向に沿う側面視からの状態を示し、矢印は調味液62の流動状態の一例を示す。
【0108】
浸漬ステップS2の状態から蓋61を被せた複数の釜60を加熱装置7上に搬送し加熱を開始する。釜60内の調味液62は浸漬ステップS2時における初期値に調整した温度から次第に温度上昇しながら対流を開始し、やがて沸騰状態に達する。なお、複数の釜60同士を搬送方向に接触又は近接させてトンネル状とした加熱装置7内を連続的に搬送する。前記連続的に搬送する形態として、複数の釜60を一定速度で連続して移動させる方法、及び加熱装置7内に複数の釜60を所定時間一時停止させながら間欠的に移動させる方法等を含むものである。
【0109】
沸騰状態に達すると、加熱された調味液62は沸騰気泡を含みながら上昇流(気液二相流)となって縦方向の姿勢の油揚げ31の下方側の端面31bから互いに対向している表面31a間に入り込み、これら表面31aに沿って上昇し、油揚げ31の上方側の端面31bに達した後、主として篭4の外周側と釜60の内側面との隙間を通って下降流となって釜60の内底部と油揚げ31の下方側の端面31bとの間隔(
図8、H3)を通って対流循環する。このとき、釜60の内底部と篭4の本体40の底部の間隔(
図8、H2)、線材間も対流循環路となる。
【0110】
調味液62が沸騰することで、釜60の内底部からは連続的に沸騰気泡が発生することと、平面視において複数の油揚げ31が釜60内のほぼ全域に亘って収納されていることから釜60の内底部と油揚げ31の下方側の端面31bとの間隔(H3)の圧力が高まりこの圧力分布も均一になる。したがって、調味液62が均一な上昇流となって油揚げ31の下方側の端面31bから互いに対向している表面31a間に入り込む。
【0111】
図9(a)、(b)に示す沸騰状態に達したときの煮込み状態において、特に油抜きされていない油揚げ31の場合は、調理油で揚げられた表層部に細かい多くの気泡が形成されているとともに、全体が弾力性に富むので、沸騰気泡を含む調味液の上昇流が油揚げ31の互いに対向している表面31a間を押し広げながらに入り込み、これら表面31aに沿って流動しながら上昇する。また、二面ある表面31aと開口面31cを除く各々の端面31bとの直交部は、調理油で揚げられることによって、丸みを有する形状となっており、これにより油揚げ31の表面31a間に上昇する調味液が流入しやすくなる。
【0112】
このように煮込み状態において、油揚げ31の表面31aを縦方向の姿勢とし、かつ各々の表面31aが互いに向き合うように並べて篭4に収納した状態とし、さらに釜60の内底部と油揚げ31の下方側の端面31bとの間隔(H3)を設けたことにより、釜60の内底部と油揚げ31の下方側の端面31bとの間隔(H3)に対流循環による調味液62が確実に存在し、調味液62の加熱、及び沸騰を常に安定した状態に維持することができる。さらに複数の油揚げ31の下方側の端面31bから互いに対向している表面31a間に調味液が均一に入り込む。
【0113】
浸漬ステップS2で説明したように、油揚げ31の各々の表面31aが向かい合う縦方向の姿勢で篭4の中に収納され、かつ油揚げ31は浮力により浮上して、上方側の端面31bが篭4の蓋41に接し、下方側の端面31bが本体40の線材から離間(
図8、H1)し自由端側となって拘束されていない状態となる。沸騰気泡を含む調味液62が自由端側となって拘束されていない状態である油揚げ31の下方側の端面31bに当たって特に水平方向に位置を変える動きを与え、複数の油揚げ31の全体が搖動する。これにより、この下方側の端面31bから互いに対向している表面31a間に調味液62が一層入り込みやすくなる。
【0114】
さらに、沸騰気泡を含む調味液62の表面31a間での上昇過程において表面31a間に圧力変動が生じる。表面31a及び油揚げ31の厚み方向に圧力変動を受けることにより、油揚げ31の表面31aに付着した油成分、及び表皮層部の気泡、油成分と調味液62との置換が促進される。
【0115】
また、油揚げ31の互いに対向している表面31a間に限らず、篭4内に収納した複数の油揚げ31の列間にも沸騰気泡を含む調味液62が流動し、これにより、油揚げ31の縦方向の端面31b及び開口面31cにも沸騰気泡を含む調味液62の上昇流が接触し、油揚げ31の上下方向側の端面31bにも循環する調味液62が接触する。このように、油揚げ31の全ての表面31a、及び端面31b、開口面31cに沸騰気泡を含む調味液の上昇流及び循環流が接触する煮込み状態となる。
【0116】
この煮込み状態において、調理油で揚げられた油揚げ31の表面31a、端面31bの表皮層に存在する気泡、含有する油分は調味液62に置換されて味付けが進行する。さらに表皮層を浸透した調味液62及び開口面31cから侵入した調味液62が豆腐の内部層とその割れ目にも達し、水分が調味液62に置換されて味付けが進行する。
【0117】
煮込みが所定時間なされると、
図9(b)に示すように、油揚げ31は調味液62が浸み込むと同時に、気泡が抜け調味液62に置換されることで厚み、弾性が減り僅かに萎んで、表面31a間に隙間ができやすくなる。この隙間は、隣り合う油揚げ31を十分かつ均一な味付けを行うのに好都合である。従って、表面31a間に適度の隙間ができている状態の時に加熱装置7による加熱が終わるように、篭4に収納する油揚げの数量によって油揚げの密着度を調節し、かつ加熱時間や熱量などを設定することが好ましい。これにより、より一層表面31a間に加熱された調味液62の上昇流が流動しやすくなり一層均一な味付けが促進される。
【0118】
なお、煮込みステップS3において、調味液62の温度を、例えば80〜90度Cの加熱状態として煮込んでもよいが、略100度Cの沸騰状態まで加熱して煮込む場合に比べ、十分な量の調味液62を均一に浸み込ませた味付き油揚げを得るために、大幅に煮込み時間を長くする必要があり、生産性が良くない。したがって、本一実施形態のように略100度Cの沸騰状態にまで加熱して煮込むことが好ましい。
【0119】
調味液62が加熱され煮込みが進行するにしたがって、調味液62中の水分が蒸発し液位が下がるとともに、特に味付き油揚げ31の重点指標としてのBrix(糖度)が上がっていく。例えば、煮込みステップS3開始時のBrixを35とした場合、加熱装置7による釜60内の調味液62の加熱を停止する煮込みステップS3終了時のBrixは45となり、味付き油揚げに含まれる調味液と略同一となる。したがって、煮込みステップS3終了時のBrixを40〜50とした場合、煮込みステップS3開始時のBrixは30〜40とすればよいことになる。また、調味液62の液位は、煮込みステップS3の終了時においても、篭4に縦方向の姿勢に収納した油揚げ31の上方側の端面31bが調味液62中に位置しているものである。
【0120】
煮込みステップS3の終了時における釜60内の調味液62のBrixは、煮込みステップS3開始時のBrix、煮込み開始時の調味液62の温度、加熱装置7による釜60の加熱量(例えば、火力と、釜60の搬送速度と、搬送路(区間L)の長さ等)等の要素により任意に設定することができる。
【0121】
特にいなり寿司等に用いる味付き油揚げの製造においては、篭4内の個々の味付き油揚げ自体、及び複数の味付き油揚げ間に亘って、十分な量の調味液が均一に浸み込んでいるとともに、さらに、煮込み前に油揚げ31の表面31a、端面31bの色が調理油による揚げ加工によって黄色状態となっているものが、調味液62中での煮込みによって色むらのない均一な褐色状態に変化していることの両者が要求される。この褐色状態に色むらがあると見栄えが悪く顧客から見た商品価値を損ねることになる。
【0122】
これに対して、特に煮込みステップS3における作用を説明したように、篭4に収納した複数の油揚げ31の各々に調味液62が確実に接触して流動することによって、製造される篭4内に収納した個々の味付き油揚げ自体、及び全体の複数の味付き油揚げ間に亘って、バラツキなく十分な量の調味液を均一に浸み込ませ、かつ均一な褐色状態に変化させることができる。さらに、良好な歩留まりでの製造が可能となる。
【0123】
したがって、味付き油揚げとして、十分な量の調味液が均一に浸み込むとともに、色むらのないものとなる。また、いなり寿司33として、十分な量の調味液が均一に浸み込んだ味付き油揚げを用い、かつ調味液が寿司飯32に浸み込みやすくなり、食感、食味に優れた商品価値の高いものとなる。
【0124】
従来のように、複数の油揚げ31を横方向の姿勢としてその表面31a同士を上下に積み重ねて容器(篭)に収納し、複数の油揚げ31を横方向の姿勢のままとして調味液62中に浸漬し煮込みを行った場合には、調味液62中において下段側に位置する油揚げ31の浮力は重なり合う上段側の油揚げ31に順次累積された浮力として作用し、上段側の油揚げ31の表面には、下段側に位置する複数の油揚げ31の累積された浮力を受け接触する油揚げ31の各々の表面31aは浮力により圧接し、さらに圧縮される。
【0125】
このため、煮込み時には表面31a間に調味液62が十分流動、接触せず、主として油揚げ31の端面31b及びこの端面31b近傍のごく一部の表面31aにしか味付けができない。また、上下に積み重ねた油揚げ31間の味付け状態にバラツキを生じる。したがって、製造される個々の味付き油揚げ自体、及び全体の複数の味付き油揚げ間に亘って、バラツキなく十分な量の調味液62を均一に浸み込ませ、かつ均一な褐色状態に変化させることができず、さらに、製造歩留まりに課題がある。
【0126】
さらに、複数の油揚げ31を横方向の姿勢としてその表面31a同士を上下に積み重ねて容器(釜)に収納して煮込みを行った場合、上段側の油揚げ31は下段側の油揚げ31に比べて調味液62の浸み込み量が少なくなる。このため容器(釜)内で油揚げ31の上段側と下段側を入れ替えるか、容器(釜)を反転させて、できるだけ全体の油揚げ31に調味液62を浸み込ませることが必要となり、構成が複雑となり、また、取扱い作業が面倒なものとなる。
【0127】
本発明の味付き油揚げの製造方法によれば、前記従来の課題を解決することができ、簡単な構成及び作業でもって、調味液を十分かつ均一に浸み込ませ、色むらのない味付き油揚げを製造することができる。
【0128】
本発明の実施形態においては、味付けする油揚げ31には、油抜きされたもの、油抜きされていないものの両者とも適用することができる。油抜きされた油揚げ31の場合には、油揚げ31の表皮層に残存する気泡、油分、水分が調味液62に置換され味付けを行うことができる。さらに、油抜きされていない油揚げ31の場合には、前記したように煮込み時に調理油で揚げられた油揚げ31の表皮層に含まれる気泡、油分が調味液62に置換され、味付き油揚げにより多くの調味液を均一に浸み込ませることができる。
【0129】
特に、油抜きされていない油揚げ31の場合、煮込み状態において、油揚げ31中に含まれる油分が調味液62中に溶け出し、しかもこの溶け出した油分は、沸騰気泡の発生と破裂、消滅、又気液二相流として激しく流動することによって、調味液62中で油滴としては存在せず、調味液62の各成分と完全に混合(乳化)した状態となる。これにより、煮込み前の油揚げ31の表皮層に含まれる気泡、油分は溶け出し、油分が完全に混合した調味液62に置換され、煮込み後の油揚げ31には、溶け出した油分が完全に混合した調味液62が浸み込んでいる。したがって、油分及び調味液62の原液のそれぞれの単独の味が和らいだ、所謂、味がまろやかな味付き油揚げ31を得て、消費者にとって好ましいいなり寿司33とすることができる。また、軽く、弾力性を有するので篭への収納等取扱いが容易であり、油抜き工程を省くことができる。
【0130】
次に、煮込みステップS3後に実施する養生ステップS4について説明する。養生ステップS4において、釜60の加熱が停止され加熱装置7から搬出された蓋61を被せたままの釜60は、ローラコンベア2上に載置し、加熱装置7の釜60の搬入側に向かって移動させながら所定時間(例えば20分)自然放熱によって徐冷される。
【0131】
釜60の加熱が停止されると、調味液62は略100度Cから徐々に温度が下がり、養生ステップS4の終了時点においては例えば80〜90度Cとなる。このとき、釜60、蓋61、調味液62の残熱によってしばらくの間は、調味液62は弱い沸騰と対流を生じているが、温度が下がるとともに調味液62はほぼ静止した状態となる。
【0132】
調味液62がほぼ静止した状態となると、篭4内で浮上したままの縦方向の姿勢の複数の油揚げ31も静止し、調味液62の沸騰により縦方向の姿勢の油揚げ31の表面31a間、複数の列間等に存在していた気泡が上昇して抜けやすくなり、篭4内に収納した複数の油揚げ31は調味液62中に浸漬された状態となる。これにより釜60内の調味液62の油揚げ31への浸透がさらに進行して蒸らし養生され、より均一に味付けされるとともに、色むらのないより濃い褐色状態の味付き油揚げを得ることができる。したがって、この味付き油揚げを用いたいなり寿司33は、視覚的な面からも商品価値の優れたものとなる。
【0133】
また、養生ステップS4は、温度低下による次ステップである液切りステップS5における作業者の釜60の蓋61、篭4の取り扱いをより容易にするためにも実施することが好ましい。また、自然放熱により徐々に温度を下げる手段を説明したが、これに限定するものではなく、強制的な送風手段、低温室への搬入等による徐冷を行ってもよい。
【0134】
次に、養生ステップS4後に実施する液切りステップS5について
図1の“E“(S5)、
図10を用いて説明する。
【0135】
液切りの作業は、釜60の蓋61を開け、起立した篭4の持ち手42a、42bの把持部44a、44bを持って上方に引き上げるとともに、外方に引っ張って広げ、持ち手42a、42b構成するアーム43a,43bのフック45a,45bを釜60の開口部の縁66に掛けて篭4を調味液62上の液切り位置に所定時間吊るして行う。なお、蓋61は浸漬ステップS2へ移し循環再使用する。
【0136】
これによって、篭4及び篭4に収納されている油揚げ31を釜60内の調味液62中から上方に取り出して、篭4に付着した調味液及び油揚げの表面、油揚げの表面間に存在する調味液を自重により流下させて液切りを行う。この液切りされた調味液は、釜60内に残った調味液62に加わり貯留される。なお、液切りは、釜60内への油揚げ31からの調味液の流下がほぼなくなるまで行う。
【0137】
油揚げ31は、縦方向の姿勢で篭4に収納されているので、油揚げ31の表面31aが横向きで上下に積み重ねて収納される場合に較べて、液切りの効率が良い。これにより、油揚げ31の液切りと同時に、調味液62を釜60内に効率良く回収でき、釜60内に貯留されている調味液62の減少を抑えることができる。
【0138】
また、篭4、油揚げ31から流下する調味液62を受ける容器を別途用意する必要がなく、また、流下した調味液を釜60内に移し替える作業が不要となる。さらには、油揚げ31を篭4に収納した状態で液切りを行うことにより、トング等の挟持具で味付き油揚げに触れる機会を少なくし、油揚げに浸み込んでいる調味液62が少なくなるのを防ぐことができる。また、把持部44a,44bは、調味液62に直接浸漬されないので、加熱調理後に篭4を持ち上げるのに、持ち易く、手の汚れが少ない。
【0139】
さらに液切り時において、縦方向の姿勢で篭4に収納されている油揚げ31は、調味液62による浮力を受けないので油揚げ31の下方側の端面31bが自重により篭4の本体40を構成する線材に接触した状態となる。このとき縦方向の姿勢の油揚げ31はその自重により、寿司飯(シャリ)32の挿入口となる開口面31cに対して直交する向きに皺ができ、これによっていなり寿司を作る際に寿司飯32を挿入する向きに沿った折り目31dが形成される(
図11参照)。
【0140】
図11(a)は、本発明の製造方法により製造された味付き油揚げ31を示し、(b)は味付き油揚げ31に寿司飯32を詰める様子を示し、(c)は完成したいなり寿司を示す。折り目31dの付いた油揚げは、その開口面31cから折り目31dに沿って寿司飯32を挿入して詰めて、いなり寿司33を作る。これにより、寿司飯32の挿入抵抗が減少し、よりスムースに味付き油揚げ31内に寿司飯32を詰めることができる。したがって、味付き油揚げ31の破れ、裂け等の発生を防止し、良好な歩留りでのいなり寿司33の製造が可能となる。
【0141】
液切りを行った直後の油抜きをしていない場合の味付き油揚げ31の重量は、例えば煮込み前の油揚げ31の重量を1.0としたとき、2.5〜3.3倍の重量を有していた。したがって、味付き油揚げには十分、かつ大量の調味液62が浸み込んでおり、消費者にとって食味、食感に優れ、ジューシーないなり寿司を提供することができる。
【0142】
次に、篭取り出しステップS6、冷却ステップS7、油揚げ取り出しステップS8を説明する。液切りステップS5実施後に、篭4を持ち手42a、42bの把持部44a、44bを持って釜60から離脱させる篭取り出しステップS6(
図1の“F“(S6))を実施し、次に篭4内の油揚げ31を、篭4に収納した状態のままで冷却する冷却ステップS7を実施する。さらに冷却ステップS7を実施後、篭4から味付き油揚げを取り出す油揚げ取り出しステップS8を実施する。
【0143】
冷却ステップS7は、液切りステップS5、篭取り出しステップS6時において、篭4内の味付けされた複数の油揚げ31の温度が養生ステップS4終了時の温度に近い高温を維持しているため、篭4から味付き油揚げ31を作業者が取り出すやすくなる例えば50〜60度Cの温度まで低下させるものである。これによって、作業者は別の器具(例えばトング)を用いることなく素手(手袋をした状態)で簡単に篭4から味付き油揚げ31を取り出すことができ、冷却ステップS7を実施することが好ましい。
【0144】
冷却手段としては、汎用の真空冷却機(図示なし)に篭4を入れて行うと短時間で冷却することができる。味付けされた複数の油揚げ31を収納した篭4を真空冷却機の庫内に入れて所定時間減圧する。真空冷却機の庫内には着脱自在なトレイ(図示なし)を備え、このトレイに篭4を載せる。真空冷却機の庫内に入れる複数の油揚げ31を収納した篭4の個数は一個ずつでもよいし、または複数個を同じトレイに載せてもよい。減圧により、油揚げ31へ浸透している調味液62が低温沸騰し、この気化熱によって熱が奪われて冷却される。所定温度まで冷却後、真空冷却機の庫内から複数の油揚げ31を収納した篭4を取り出す。
【0145】
真空冷却機による冷却の際、低温沸騰作用により、浸透している調味液62の一部が油揚げ31から分離する。この分離した調味液は落下してトレイに溜まる。このトレイに所定量溜まった分離した調味液は釜60、または調味液調整ステップS9へ戻して循環再使用する。
これにより調味液を何度も繰り返し再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用することができる。したがって、味付き油揚げを連続的に効率よく製造することができる。なお、調味液を循環再使用する状態は後述する調味液調整ステップS9において、さらに説明する。
【0146】
冷却ステップS7を実施後に、油揚げ取り出しステップS8を実施する。この油揚げ取り出しステップS8は、
図3に示す収納ステップS1と同様に篭4の蓋41を開け、味付き油揚げ31を篭4の本体40から取り出す。篭4から取り出した味付き油揚げ31は、
図11(b)、(c)に示すように、開口面31cに寿司飯32を詰めて、いなり寿司33を作る。なお、篭4から取り出した味付き油揚げ31は、一旦複数ごとに袋に詰め、蒸気殺菌等を実施し保管、出荷していなり寿司33を作ってもよい。
【0147】
油揚げ取り出しステップS8にて味付き油揚げを取り出した篭4は、
図1の”A”(収納ステップS1)に戻して循環再使用する。さらに、篭4を取り出した釜60は、残った調味液62とともに浸漬ステップS2側に搬送し、調味液調整ステップS9において調整され、浸漬ステップS2に戻して循環再使用する。また、篭4、釜60、蓋61は循環再使用するが、再使用前に洗浄を行ってもよい。
【0148】
なお、液切りステップS5実施後に、篭取り出しステップS6、冷却ステップS7、油揚げ取り出しステップS8を順次実施する一実施形態を説明したが、例えば、液切りステップS5実施後に油揚げ取り出しステップS8を直接実施してもよい。この場合は、持ち手42a、42bを構成するアーム43a,43bのフック45a,45bを釜60の開口部の縁66に掛けて篭4を調味液62上の液切り位置に吊るしたまま、篭4の蓋41を開け、篭4の本体から味付き油揚げ31を取り出してもよい。さらに、篭4の本体40から味付き油揚げ31の取り出しを行った後、篭4を液切り位置に吊るしたまま、次に味付けを行う油揚げ31を本体40内に収納し、浸漬ステップS2を実施してもよい。この場合、篭4の本体40から取り出した複数の味付き油揚げ31を、篭4から取り出した状態として真空冷却すればよい。
また、篭取り出しステップS6実施後に冷却ステップS7を経ずに油揚げ取り出しステップS8を直接実施してもよい。
【0149】
次に、調味液調整ステップS9を説明する。
煮込みを開始する前の釜60内の調味液62の主にBrix(糖度)、温度、量(液位)を所定の初期値(条件)に調整するものである。先ず、前記篭取り出しステップS6において、篭4を取り出した後の残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環再使用する場合を説明する。
【0150】
煮込みステップS3の終了時における釜60内の調味液のBrixを目標値(例えばBrix40〜50の範囲内の所定値)としたとき、加熱装置7による加熱により調味液62中の水分が蒸発することで調味液62のBrixが上昇することを考慮し、前記目標値となるように、釜60内の残調味液62に未使用でBrixの低い新調味液を加えて、煮込みを開始する前の調味液62のBrixを初期値(例えば30〜40の範囲内の所定値)に調整する。
【0151】
また、釜60内の調味液62の温度を初期値(例えば65〜75度Cの範囲内の所定値)に調整する。篭取り出しステップS6後の釜60内の残調味液62の温度(例えば80〜90度C)と、常温(作業室の温度)レベルの複数の篭4及び篭4内に収納した油揚げ31の熱容量による調味液62の温度降下等の要素を考慮し、煮込みを開始する前の調味液62の温度を前記初期値になるように加える新調味液の温度を調整するものである。釜60内の調味液62の温度を初期値に調整することにより、煮込みステップS3における調味液62の加熱条件が安定して調味液62中の水分の蒸発量が一定となる。
したがって、煮込みステップS3の終了時における釜60内の調味液62のBrixを安定させることができ、均一な味付き油揚げを製造することができる。
【0152】
また、釜60内の残調味液62の量が減少しているため、未使用の新調味液を加えて煮込みを開始する前の調味液62の量(液位)を初期値に調整する。この調味液62の量(液位)の初期値は、例えば少なくとも煮込みステップS3の終了時、好ましくは養生ステップS4終了時に油揚げの全体が調味液に浸漬している必要量である。釜60内の残調味液62の量は、煮込みを開始する前の調味液62の量から、加熱装置7による加熱による調味液62中の水分の蒸発量、及び液切り後における複数の味付き油揚げに浸み込んだ量の減少分を差し引いたものとなる。
したがって、釜60内の残調味液62に加える未使用の新調味液の供給量は、前記減少分を供給するものである。なお、釜60内の残調味液62に新調味液を供給したとき、浸漬ステップS2において複数の油揚げ31を収納した篭4を、釜60内で上下方向に例えば複数回動かすことにより、残調味液62と新調味液を均一に混合して煮込みステップに移行することができる。
【0153】
なお、調味液調整ステップS9においては、加える未使用の新調味液は、例えば所定量をタンク(図示なし)に貯液するとともに、別途にBrix、及び温度の調整装置(図示なし)を設け、これにより、煮込みを開始する前の釜60内の調味液62のBrix、温度、量(液位)の各々を所定の初期条件に調整することができる。
また、前記加える調整用の液は、煮込み時の調味液62への様々な成分の補充と、Brix、温度、量(液位)の各要素をバランスさせた初期値に調整しやすくするために、水(湯)、煮込みに使用した調味液を加えるよりも未使用の新調味液を加えることが好ましい。
【0154】
また、残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用している味付き油揚げの製造状態から製造を停止する場合は、先ず収納ステップS1、浸漬ステップS2の実施を終了し、釜60の加熱装置7への搬入を停止する。収納ステップS1、浸漬ステップS2を経て既に加熱装置7へ搬入済の複数の釜60については、煮込みステップS3から順次各ステップを実施する。篭取り出しステップS6において、篭4を取り出した後の複数の釜60に入っている残調味液62を抜き取って容器(図示なし)等に貯蔵し、これを冷蔵又は冷凍保存して再使用する。
【0155】
容器等に貯蔵した残調味液62を再使用して再び製造を開始する場合は、別途に設けたBrix、及び温度の前記調整装置を新調味液のみの調整から、貯蔵していた残調味液62と未使用の新調味液の混合液の調整に切り替える。調整装置において煮込みを開始する前の調味液62のBrixである初期値に調整する。
さらに調整装置において、残調味液62と未使用の新調味液を混合し、これを釜60内に供給したとき、釜60内の煮込みを開始する前の調味液62の温度が初期値になるように調整する。前記調整装置で調整した煮込み用の調味液62を、釜60内に供給する。
そして、収納ステップS1から順次各ステップを実施し製造を開始する。製造を開始後、篭取り出しステップS6の実施に至ったときから、前記篭4を取り出した後の残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用する製造状態に移行する。移行後は調整装置を残調味液62と未使用の新調味液の混合液の調整から、新調味液のみの調整に切り替える。
【0156】
なお、前記調整装置により、残調味液の温度を調整し、釜60内に供給し、この後未使用の新調味液を加え、煮込みを開始する前の調味液62のBrix、温度、量(液位)の各々を初期値に調整して製造を再開してもよい。また、残調味液62と未使用の新調味液の混合液の調整と、新調味液のみの調整を、一つの調整装置を切り替えて使用せず、例えば各々の調整を専用の調整装置として使用するようにしてもよい。
【0157】
以上のように、調味液調整ステップS9において、煮込みを開始する前の調味液62の状態のうち、主にBrix、温度、量(液位)を常に一定条件に調整して煮込みステップS3に移行させることにより、調味液62の油揚げ31への均一な味付けを行うことができる。さらに、篭4を取り出した後の残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用し、これにより調味液を何度も繰り返し再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用することができる。
したがって、味付き油揚げを連続的に効率よく製造することができる。また、温度の高いままの残調味液62、及びこの残調味液62を入れたままの釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用するため、残調味液62の移し替えの手間を省き、さらに残熱を有効利用して煮込みステップS3での、省エネルギー化、均一加熱化を図ることができる。
【0158】
なお、残調味液62の温度が高い間、比較的Brixの上昇した(濃い濃度の)残調味液62に、次に味付けを行う油揚げが収納されている篭4を浸漬して前処理を行い、その後、調味液62を必要なBrixに調節する方法を採用してもよい。調味液のBrixが上昇し高温の場合、調味液は油揚げにより浸み込み易い。このことによって、味付けのために煮込みステップS3に要する時間を短縮することができる。
【0159】
次に、上記したように冷却ステップS7において、冷却手段としての真空冷却機による冷却の際、浸透している調味液62の一部が油揚げ31から分離しこの分離した調味液は落下してトレイに溜まる。このトレイに所定量溜まった調味液を油揚げの煮込みに循環再使用する場合を説明する。
【0160】
分離した調味液を上記した調味液調整ステップS9へ戻して循環再使用する場合には、未使用の新調味液を貯液するタンクに分離した調味液を供給する。調味液調整ステップS9においては、分離した調味液と未使用の新調味液を混合してこの混合液を、煮込みを開始する前の釜60内の調味液62のBrix、温度の各々を所定の初期条件になるように調整する。
【0161】
また、篭4を取り出した後の残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用するが、この釜60内の残調味液62に真空冷却機による冷却の際分離した調味液を加えてもよい。この場合には、調味液調整ステップS9により、煮込みを開始する前の釜60内の調味液62のBrix、温度、量(液位)の各々を所定の初期条件になるように調整する。
【0162】
また、上記したように、残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用している味付き油揚げの製造状態から製造を停止する場合に、篭取り出しステップS6において、篭4を取り出した後の複数の釜60に入っている残調味液62を抜き取って容器(図示なし)等に貯蔵するが、真空冷却機による冷却の際分離した調味液を、残調味液62とともに容器等に貯蔵し再使用してもよい。
【0163】
これにより、真空冷却機による冷却の際分離した調味液を何度も繰り返し再使用し、長期に亘って調味液を有効に利用することができる。したがって、味付き油揚げを連続的に効率よく製造することができる。
【0164】
さらに、篭4を取り出した後の残調味液62の入った釜60を浸漬ステップS2へリターンさせて循環使用し、これにより調味液を何度も繰り返し再使用し、加えて真空冷却機による冷却の際分離した調味液も何度も繰り返し再使用することによって、なお一層長期に亘って調味液を有効に利用することができる。したがって、味付き油揚げを連続的に効率よく製造することができる。