(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均重合度が800以上1300以下の塩化ビニル系樹脂と、数平均分子量が1000以上3000以下のポリエステル系可塑剤と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有率が35質量%以上の(メタ)アクリル系樹脂と、を含み、
前記ポリエステル系可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部以上60質量部以下であり、かつ、
前記(メタ)アクリル系樹脂の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であるインクジェット印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、又は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体との混合物である請求項1に記載のインクジェット印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アルキル部位の炭素数が2以上4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、を含む共重合体である請求項2に記載のインクジェット印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アクリル酸n−ブチルに由来する構成単位と、を含む共重合体である請求項2又は請求項3に記載のインクジェット印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アクリル酸n−ブチルに由来する構成単位と、からなる二元共重合体である請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体は、アルキル部位の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中又はフィルム中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中又はフィルム中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中又はフィルム中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
【0015】
[印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム]
本開示の印刷用塩化ビニル系樹脂フィルム(以下、適宜「塩化ビニル系樹脂フィルム」と称する。)は、平均重合度が800以上1300以下の塩化ビニル系樹脂(以下、適宜「特定塩化ビニル系樹脂」と称する。)と、数平均分子量が1000以上3000以下のポリエステル系可塑剤(以下、適宜「特定ポリエステル可塑剤」と称する。)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有率が35質量%以上の(メタ)アクリル系樹脂(以下、適宜「特定(メタ)アクリル系樹脂」と称する。)と、を含み、前記ポリエステル系可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部以上60質量部以下であり、前記(メタ)アクリル系樹脂の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下である。
【0016】
一般的に、塩化ビニル系樹脂フィルムは、可塑剤により軟質化されている。しかし、低分子量の可塑剤を多量に配合した塩化ビニル系樹脂フィルムでは、経時で可塑剤がフィルムの表面にブリードするため、印刷時にブリードした可塑剤とインクとが混じり合ってインクの定着性が損なわれることがある。一方、低分子量の可塑剤を少量配合した塩化ビニル系樹脂フィルムでは、溶剤系インクによるフィルムの膨潤が不足するため、インクの定着性が悪くなることがある。インクの定着性が損なわれると、インクの乾燥が遅くなったり、インクが滲んだりして、作業性が低下したり、見栄えが悪くなったりするといった不具合が生じることがある。
これに対して、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、インクの乾燥性に優れ、インクの滲みが抑制され、かつ、貼り適性に優れる。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムがこのような効果を奏し得る理由については、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0017】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムでは、特定塩化ビニル系樹脂と、特定量の特定ポリエステル系可塑剤と、特定量の特定(メタ)アクリル系樹脂とを含むことで、フィルム表面への可塑剤のブリードが抑制されるとともに、溶剤系インクの溶剤のフィルムへの吸収性が向上し、フィルムが適度に膨潤するため、インクの定着性が良好となると考えられる。その結果、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムでは、インクの乾燥性が向上し、かつ、インクの滲みが抑制されると考えられる。さらに、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、上記のような構成を有することで、貼り適性に優れるという効果も奏し得る。
【0018】
なお、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムに対して、特許文献1(特許第5489153号公報)に記載のポリ塩化ビニル系フィルムは、特定(メタ)アクリル系樹脂を含んでいない。本発明者らが検討したところ、例えば、特定塩化ビニル系樹脂と、特定量の特定ポリエステル系可塑剤を含み、特定量の特定(メタ)アクリル系樹脂を含まない塩化ビニル系樹脂フィルムでは、インクが乾燥し難く、かつ、インクが滲みやすいことが確認されている。
【0019】
<特定塩化ビニル系樹脂>
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、平均重合度が800以上1300以下の塩化ビニル系樹脂(即ち、特定塩化ビニル系樹脂)を含有する。
本明細書において、「塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルに由来する構成単位を含む重合体を意味する。また、「塩化ビニルに由来する構成単位」とは、塩化ビニルが付加重合して形成される構成単位を意味する。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体(即ち、ポリ塩化ビニル)、及び塩化ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂の全構成単位に占める塩化ビニルに由来する構成単位の割合は、全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0020】
塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、800以上1300以下である。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記の範囲内であると、インクの乾燥性が向上し、インクの滲みが抑制され、かつ、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性が良好となる傾向がある。なお、塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記の範囲外であると、インクが乾燥し難くなり、かつ、インクが滲みやすくなる傾向がある。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、例えば、インクの乾燥性をより向上させ、かつ、インクの滲みをより抑制する観点から、800以上1100以下が好ましい。
【0022】
本明細書において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K6721に準拠した方法により測定できる。なお、後述のとおり、特定塩化ビニル系樹脂としては、市販品を用いることができる。特定塩化ビニル系樹脂が市販品の場合には、市販品のカタログデータを優先して採用する。
【0023】
特定塩化ビニル系樹脂としては、上市されている市販品を用いてもよい。
特定塩化ビニル系樹脂の市販品の例としては、(株)カネカのカネビニール(登録商標)S1001N〔商品名、平均重合度:1050〕、カネビニール(登録商標)S1008〔商品名、平均重合度:800〕、カネビニール(登録商標)S1003〔商品名、平均重合度:1300〕、新第一塩ビ(株)のZEST PQLT〔商品名、平均重合度:800〕、ZEST P31D〔商品名、平均重合度:1000〕、ZEST PQHC〔商品名、平均重合度:1300〕、信越化学工業(株)のTK−1000〔商品名、平均重合度:1030〕、TK−800〔商品名、平均重合度:800〕、TK−1300〔商品名、平均重合度:1300〕等が挙げられる。
【0024】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、特定塩化ビニル系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定塩化ビニル系樹脂の含有率は、塩化ビニル系樹脂フィルムの全質量に対して、40質量%以上70質量%以下が好ましく、45質量%以上65質量%以下がより好ましく、50質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定塩化ビニル系樹脂の含有率が、塩化ビニル系樹脂フィルムの全質量に対して40質量%以上であると、ポリエステル可塑剤のブリードがより生じ難くなる傾向がある。その結果、インクの乾燥性がより向上し、かつ、インクの滲みがより抑制される。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定塩化ビニル系樹脂の含有率が、塩化ビニル系樹脂フィルムの全質量に対して70質量%以下であると、インクによってフィルムが十分に膨潤するため、インクの定着性がより良好となる傾向がある。その結果、インクの乾燥性がより向上し、かつ、インクの滲みがより抑制される。
【0026】
<特定ポリエステル系可塑剤>
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、数平均分子量が1000以上3000以下のポリエステル系可塑剤(即ち、特定ポリエステル系可塑剤)を、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部以上60質量部以下含む。
【0027】
ポリエステル系可塑剤としては、既述の特定塩化ビニル系樹脂と相溶性を有するものであれば、特に限定されない。
例えば、ポリエステル系可塑剤としては、フタル酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステル;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル系可塑剤としては、インクの乾燥性向上、インクの滲み抑制、及び塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性向上の観点から、脂肪族二塩基酸のポリアルキレングリコールジエステルが好ましく、アジピン酸のポリアルキレングリコールジエステルがより好ましい。
【0028】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、1000以上3000以下である。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が上記の範囲内であると、インクの乾燥性が向上し、インクの滲みが抑制され、かつ、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性が良好となる傾向がある。また、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が3000以下であることにより、ポリエステル系可塑剤が既述の特定塩化ビニル系樹脂に吸収されやすくなるため、塩化ビニル系樹脂フィルムをカレンダー法により形成する際に、ポリエステル系可塑剤のブリードが生じ難くなる。なお、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が1000未満であると、インクが乾燥し難くなり、かつ、インクが滲みやすくなる傾向がある。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、例えば、インクの乾燥性をより向上させ、かつ、インクの滲みをより抑制する観点から、1500以上2500以下が好ましい。
【0029】
本明細書において、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量(Mn)は、下記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出できる。なお、後述のとおり、特定ポリエステル系可塑剤としては、市販品を用いることができる。特定ポリエステル系可塑剤が市販品の場合には、市販品のカタログデータを優先して採用する。
【0030】
〜条件〜
測定装置:高速GPC〔HLC−8020 GPC(東ソー(株))〕
検出器:示差屈折率計(RI)
カラム:TSKguardcolumnH
XL−H 1本、TSKgel−GMH
XL
2本、TSKgel−G2000
XL 1本(東ソー(株))
カラムサイズ:7.8mmID×30cm
カラム温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:4mg/mL
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0031】
特定ポリエステル系可塑剤としては、上市されている市販品を用いてもよい。
特定ポリエステル系可塑剤の市販品の例としては、(株)ADEKAのアジピン酸系ポリエステルであるアデカサイザー(登録商標)PN−350(商品名、数平均分子量:3000)、アデカサイザー(登録商標)PN−446(商品名、数平均分子量:2000)、アデカサイザー(登録商標)PN−150(商品名、数平均分子量:1000)、三菱化学(株)のD621(商品名、数平均分子量:1200)、D623(商品名、数平均分子量:1800)、D645(商品名、数平均分子量:2200)等が挙げられる。
【0032】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、特定ポリエステル系可塑剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0033】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定ポリエステル系可塑剤の含有量は、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部以上60質量部以下である。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定ポリエステル系可塑剤の含有量が、上記の範囲内であると、インクの乾燥性が向上し、インクの滲みが抑制され、かつ、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性が良好となる傾向がある。なお、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定ポリエステル系可塑剤の含有量が、上記範囲外であると、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性が低下する傾向がある。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定ポリエステル系可塑剤の含有量は、例えば、インクの乾燥性をより向上させ、かつ、インクの滲みをより抑制する観点から、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下が好ましく、20質量部以上55質量部以下がより好ましく、25質量部以上50質量部以下が更に好ましい。
【0034】
<特定(メタ)アクリル系樹脂>
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有率が35質量%以上の(メタ)アクリル系樹脂(即ち、特定(メタ)アクリル系樹脂)を、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下含む。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおいて、特定(メタ)アクリル系樹脂は、インクの乾燥性向上及びインクの滲み抑制に寄与する。
【0035】
本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含む重合体を意味する。「(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル系単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体、及び(メタ)アクリル系単量体とこれと共重合可能な他の化合物との共重合体が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位に占める(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の割合は、全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。
(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル等の(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル系樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有率は、35質量%以上であり、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有率が35質量%以上であることで、インクの乾燥性向上及びインクの滲み抑制に寄与し得る。
(メタ)アクリル系樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有率の上限は、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性の観点から、好ましくは100質量%、即ち、(メタ)アクリル系樹脂が(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体であり、より好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下である。
【0038】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、又は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体との混合物であることが好ましく、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性がより良好となる点で、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体との混合物であることがより好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂が(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体との混合物である場合、混合物中における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有量と(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体の含有量との比率〔(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体の含有量/(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体の含有量〕は、例えば、インクの乾燥性向上及びインクの滲み抑制の観点から、35/65〜90/10が好ましく、40/60〜90/10がより好ましく、60/40〜90/10が更に好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体としては、インクの乾燥性向上及びインクの滲み抑制の観点から、アルキル部位の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体が好ましい。
アルキル部位の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
例えば、インクの乾燥性をより向上させ、かつ、インクの滲みをより抑制する観点からは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体としては、アルキル部位の炭素数が1であるメタクリル酸メチルの単独重合体が、特に好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な化合物に由来する構成単位と、を含む共重合体である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、既述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、インクの乾燥性向上及びインクの滲み抑制の観点から、アルキル部位の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル部位の炭素数が1であるメタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体、及び該単量体以外の化合物が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(但し、共重合させる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、既述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性及び製膜性の向上の観点から、アルキル部位の炭素数が2以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル部位の炭素数が4であるアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体以外の化合物としては、アクリルゴム、エチレンアクリレートゴム等が挙げられる。
アクリルゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、及びアクリル酸メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体と、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテート、アクリルグリシジルエーテル、エチリデンノルボルネン、メタクリル酸アリル等の架橋点モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、例えば、貼り適性向上の観点から、ブロック共重合体が好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な化合物に由来する構成単位として、アルキル部位の炭素数が2以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、アクリルゴムに由来する構造単位、及びエチレンアクリレートゴムに由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む場合、該構造単位は、共重合体中において、エントロピー弾性を発揮するソフトセグメントを形成し得る。一方、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、塑性変形を防止してソフトセグメントを補強するハードセグメントを形成し得る。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体が、ブロック共重合体であると、ランダム共重合体である場合に比して、エントロピー弾性を発揮するソフトセグメントが良好に形成されるため、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性がより向上する。
【0045】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、二元共重合体であってもよく、三元以上の多元共重合体であってもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、貼り適性向上の観点から、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アルキル部位の炭素数が2以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、を含む共重合体であることが好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アクリル酸n−ブチルに由来する構成単位と、を含む共重合体であることがより好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アクリル酸n−ブチルに由来する構成単位と、からなる二元共重合体であることが更に好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、アクリル酸n−ブチルに由来する構成単位と、メタクリル酸アリルに由来する構成単位と、からなる三元共重合体が特に好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体は、インクの乾燥性向上及びインクの滲み抑制の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有率が、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性向上の観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルムの製膜性向上の観点から、500000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、200000以下が更に好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系樹脂の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系樹脂を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系樹脂とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0050】
〜条件〜
測定装置:高速GPC〔HLC−8020 GPC(東ソー(株))〕
検出器:示差屈折率計(RI)
カラム:TSKguardcolumnH
XL−H 1本、TSKgel−GMH
XL
2本、TSKgel−G2000
XL 1本(東ソー(株))
カラムサイズ:7.8mmID×30cm
カラム温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:4mg/mL
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0051】
特定(メタ)アクリル系樹脂としては、上市されている市販品を用いてもよい。
特定(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例としては、(株)カネカのカネエース(登録商標)MC−732〔商品名、PMMA(59質量%)とMMA/BAゴム共重合体(41質量%)との混合物〕が挙げられる。
【0052】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、特定(メタ)アクリル系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0053】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下である。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定(メタ)アクリル系樹脂の含有量が、上記の範囲内であると、インクの乾燥性が向上し、インクの滲みが抑制され、かつ、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性が良好となる傾向がある。なお、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定(メタ)アクリル系樹脂の含有量が、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して60質量部を超えると、塩化ビニル系樹脂フィルムの貼り適性が低下する傾向がある。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム中の特定(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、例えば、インクの乾燥性をより向上させ、かつ、インクの滲みをより抑制する観点から、既述の特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、25質量部以上60質量部以下が好ましく、30質量部以上60質量部以下がより好ましく、40質量部以上60質量部以下が更に好ましい。
【0054】
<特定(メタ)アクリル系樹脂の製造方法>
特定(メタ)アクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、比較的簡単に製造できる点で、溶液重合により製造することが好ましい。
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なわれる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0055】
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等の脂肪系又は脂環族系炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類などを挙げることができる。
これらの中でも、有機溶剤としては、例えば、重合反応の容易さの点で、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が好ましい。
【0056】
特定(メタ)アクリル系樹脂の製造には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0057】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等を使用できる。
有機過酸化物としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ−i−プロピルペルオキシジカルボナト、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナト、t−ブチルペルオキシビバラト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−i−ブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体を製造する場合、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましい。
この場合の重合開始剤の使用量は、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、0.005質量部以上0.3質量部以下であり、0.01質量部以上0.1質量部以下が好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体を製造する場合、重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。
この場合の重合開始剤の使用量は、通常、単量体100質量部に対して、0.001質量部以上0.3質量部以下であり、0.01質量部以上0.1質量部以下が好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を使用できる。
【0061】
連鎖移動剤としては、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレン等の芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン誘導体類;トリブチルボラン等のボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペン等のハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒド等のアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタン等の芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ビネン、ターピノレン等のテルペン類などが挙げられる。
【0062】
<その他の成分>
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、安定剤、帯電防止剤、加工助剤、着色防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、改質剤、充填剤、希釈剤等を含有していてもよい。
【0063】
安定剤としては、特に限定されず、エポキシ系安定剤、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤、複合安定剤〔カルシウム/亜鉛系(Ca/Zn系)安定剤、バリウム/亜鉛系(Ba/Zn系)安定剤等〕、金属石ケン(脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、脂肪酸バリウム等)、シリカ化合物などが挙げられる。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムが安定剤を含む場合、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
滑剤としては、特に限定されず、金属石鹸系滑剤(ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等)、脂肪酸エステル系滑剤(ブチルステアレート、ブチルラウレート、ステアリルステアレート等)、脂肪酸系滑剤(ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等)、アミド系滑剤(エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等)、炭化水素系滑剤(流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等)、アニオン系界面活性剤などが挙げられる。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムが滑剤を含む場合、滑剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0065】
〔物性〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、降伏応力の値が、好ましくは2.0kg/mm
2以上5.0kg/mm
2以下であり、より好ましくは2.2kg/mm
2以上4.8kg/mm
2以下であり、更に好ましくは2.5kg/mm
2以上4.5kg/mm
2以下である。
降伏応力の値が上記の範囲内である塩化ビニル系樹脂フィルムは、貼り適性に優れる。
上記の降伏応力の値は、下記の方法により測定される値である。
JIS K6734に準拠した方法に従い、試験用サンプルフィルムを準備する。温度23±2℃、相対湿度65±5%の環境下、引張り速度200mm/minの条件で、引張り試験機を用いて、試験用サンプルフィルムの引張り試験を行なう。引張りの荷重の増大に伴って、引張り伸びが増大するが、引張り伸びに対して引張り荷重の増大がなくなる点(即ち、降伏点)における荷重(kg)を、引張り試験前の試験用サンプルフィルムの幅(mm)×厚み(mm)で除した値(単位:kg/mm
2)を降伏応力の値とする。
【0066】
〔用途〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、インクの乾燥性に優れ、かつ、インクの滲みが抑制されたフィルムであるため、印刷用として好適である。また、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、貼り適性に優れることから、建築資材、家具、電化製品、車両等に用いられる化粧フィルム又は装飾用フィルム、マーキングフィルム、看板用フィルム等として好ましく用いられる。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、溶剤系インクを使用して印刷した場合でも、インクの乾燥性に優れ、かつ、インクの滲みが抑制されるため、溶剤系インクを使用するインクジェット記録用樹脂フィルムとして、特に好適である。
【0067】
〔塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの一例を説明する。本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、例えば、下記の方法により製造することができる。但し、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法は、これに限定されるものではない。
特定塩化ビニル系樹脂と、特定(メタ)アクリル系樹脂と、特定ポリエステル系可塑剤と、必要に応じて、安定剤、滑剤等のその他の成分とを混合する。混合手段としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブルミキサー等が挙げられる。
次いで、得られた混合物を予備混練し、予備混練物を得る。予備混練手段としては、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、2本ロール等が挙げられる。予備混練は、150℃〜170℃の温度にて5分間〜15分間行なうことが好ましい。
次いで、得られた予備混練物を溶融混練し、溶融混練物を得る。溶融混練手段としては、例えば、1軸の混練押出機、2軸の混練押出機、2本ロール等の溶融混練機が挙げられる。溶融混練は、例えば、溶融混練手段としてロールを用いた場合、ロール温度150℃〜190℃にて5分間〜15分間行なうことが好ましい。
次いで、得られた溶融混練物を用いてフィルムを形成する。フィルムの形成方法としては、カレンダー法、押出し法等が挙げられる。これらの中でも、フィルムの形成方法としては、例えば、弾力性を有するフィルムが得られる点で、カレンダー法が好ましい。カレンダー法には、カレンダーロールが用いられ、4本のロールを用いることが好ましい。ロールの配列としては、I型、S型、逆L型、Z型、斜Z型等が挙げられる。これらの中でも、ロールの配列としては、逆L型が好ましい。ロールの温度としては、170℃〜190℃が好ましい。
【0068】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。例えば、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さは、30μm以上200μm以下が好ましく、40μm以上150μm以下がより好ましく、50μm以上100μm以下が更に好ましい。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さが30μm以上であると、取り扱いやすくなるため、作業性がより良好となる。また、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さが200μm以下であると、曲面及び凹凸に追従しやすくなるため、作業性がより良好となる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
[ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の製造]
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、酢酸エチル(EAc)200質量部、及びトルエン(TOL)100質量部を仕込んだ。次いで、別の容器にメタクリル酸メチル(MMA)480質量部を用意し、このうち120質量部を反応器に仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.06質量部を添加した。添加後、加熱し、還流温度82℃で20分間保った。この中に、更にMMA360質量部、EAc200質量部、及びAIBN0.06質量部の混合物を90分間かけて逐次滴下した。更に、還流温度83℃で60分間保った後、TOL60質量部及びAIBN1.2質量部を30分かけて逐次滴下した。更に、還流温度83℃で120分間保った後、TOLを用いて固形分45質量%に希釈し、次いで冷却し、MMA単独重合体の溶液を得た。得られたMMA単独重合体の溶液を公知の方法により乾燥し、MMA単独重合体(即ち、PMMA)を得た。
既述の方法に従い、PMMAの重量平均分子量を測定したところ、57000であった。
【0071】
[メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル系共重合体(MMA/BA系共重合体)の製造]
イオン交換水200質量部、トリデシルスルホン酸ナトリウム0.6質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.004質量部、硫酸第一鉄7水塩0.001質量部、及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム5質量%水溶液0.35質量部をガラス製セパラブルフラスコに仕込み、窒素気流中で撹拌しながら40℃に昇温した。次いで、アクリル酸n−ブチル(BA)100質量部及びメタクリル酸アリル(AMA)1.5質量部と、クメンヒドロペルオキシド0.03質量部との混合液を5時間かけて連続的に追加した。重合開始後1時間の時点で、トリデシルスルホン酸ナトリウム0.3質量部を追加し、重合開始後3時間の時点でトリデシルスルホン酸ナトリウム0.3質量部を追加した。追加終了後、同温度で1時間保持し、重合を完結させ、ゴム状重合体を得た。得られたゴム状重合体を60℃に保ち、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム5質量%水溶液0.1質量部を添加した後、メタクリル酸メチル(MMA)10.5質量部、BA0.6質量部、及びt−ブチルヒドロペルオキシド0.033質量部の混合液を1時間かけて連続的に追加した。混合液の追加終了後、1時間保持し、グラフト共重合体を得た。得られたグラフト共重合体に対して、公知の方法により塩析凝固、熱処理、及び乾燥を行ない、白色粉末状のMMA/BA系共重合体を得た。なお、得られたMMA/BA系共重合体は、MMAに由来する構成単位と、BAに由来する構成単位と、AMAに由来する構成単位と、からなる三元共重合体である。また、得られたMMA/BA系共重合体における、MMAに由来する構成単位の割合は、9.3質量%であり、BAに由来する構成単位の割合は、89.4質量%であり、AMAに由来する構成単位の割合は、1.3質量%である。
既述の方法に従い、MMA/BA系共重合体の重量平均分子量を測定したところ、58000であった。
【0072】
[塩化ビニル系樹脂フィルムの作製]
<実施例1>
塩化ビニル系樹脂〔商品名:カネビニール(登録商標)S1001N、平均重合度:1050、(株)カネカ〕100質量部と、(メタ)アクリル系樹脂〔PMMA(60質量%)とMMA/BA系共重合体(40質量%)との混合物を含む〕40質量部と、ポリエステル系可塑剤〔商品名:アデカサイザー(登録商標)PN−446、アジピン酸系ポリエステル、固形分:100質量%、数平均分子量:約2000、(株)ADEKA〕17質量部と、バリウム/亜鉛系(Ba/Zn系)安定剤〔商品名:アデカスタブ(登録商標)AC−255、ADEKA(株)〕2.0質量部と、エステル系滑材〔ブチルステアレート、川研ファインケミカル(株)〕2.0質量部と、をリボンブレンダーにて混合した。得られた混合物を、加圧ニーダーを用いて、150℃にて10分間予備混練した後、得られた予備混練物を、2本ロールを用いて、ロール温度160℃にて10分間溶融混練した。次いで、得られた溶融混練物を用いて、厚み約50μmの塩化ビニル系樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」と称する。)を形成した。フィルムの形成には、ロール温度が175℃〜185℃の逆L型に配列した4本カレンダーロールを用いた。
【0073】
<実施例2〜実施例12>
実施例1において、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びポリエステル可塑剤の種類及び/又は配合量を、表1に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、フィルムを形成した。
【0074】
<比較例1〜比較例8>
実施例1において、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びポリエステル可塑剤の種類及び/又は配合量を、表2に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、フィルムを形成した。
【0075】
実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例8のフィルムについて、以下の評価を行なった。結果を表1及び表2に示す。
【0076】
[評価]
1.インクの乾燥性
各フィルムに対して、溶剤系インクジェットプリンター(製品名:VersaCAMM VP−540ij、ローランドDG社)を用いて、R(シアン及びマゼンタの100%混色)及びG(シアン及びイエローの100%混色)のベタ印刷を行なった。得られた印刷面を指で触り、指にインクが付着するか否かを確認し、以下の評価基準に従って、インクの乾燥性を評価した。
なお、評価結果が[A]又は[B]であれば、インクの乾燥性に優れるフィルムであり、実用上問題ない。
【0077】
−評価基準−
A:印刷から3分後の時点で、指にインクが付着しない。
B:印刷から3分後の時点では、指にインクが付着するが、印刷から5分後の時点では、指にインクが付着しない。
C:印刷から5分後の時点で、指にインクが付着する。
【0078】
2.インクの滲み
上記の「1.インクの乾燥性」の評価と同様にして、ベタ印刷を行なった。得られた印刷面のRとGとの境界部分を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、インクの滲みを評価した。
なお、評価結果が[A]又は[B]であれば、インクの滲みが抑制されたフィルムであり、実用上問題ない。
【0079】
−評価基準−
A:インクの滲みが全く確認されない。
B:インクの滲みが僅かに確認される。
C:インクの滲みがはっきりと確認される。
3.降伏応力
JIS K6734に準拠した方法に従い、引張り試験を行なった。
各フィルムから切り取った試験用サンプルフィルムを用いて、温度23±2℃、相対湿度65±5%の環境下、引張り速度200mm/minの条件で、引張り試験機により引張り試験を行なった。引張りの荷重の増大に伴って、引張り伸びが増大するが、引張り伸びに対して引張り荷重の増大がなくなる点(即ち、降伏点)における荷重(kg)を、引張り試験前の試験用サンプルフィルムの幅(mm)×厚み(mm)で除した値(単位:kg/mm
2)を降伏応力の値とした。本開示では、得られた降伏応力の値を貼り適性の評価の指標とした。評価基準を以下に示す。
降伏応力の値が2.0kg/mm
2以上5.0kg/mm
2以下、即ち、評価結果が[A]であれば、貼り適性に優れるフィルムであり、実用上問題ない。
【0080】
−評価基準−
A:降伏応力の値が2.0kg/mm
2以上5.0kg/mm
2以下である。
B:降伏応力の値が2.0kg/mm
2未満であるか、又は、5.0kg/mm
2を超える。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
上記の表1及び表2における成分の詳細は、以下のとおりである。
<塩化ビニル系樹脂>
・カネビニール(登録商標)S1001N〔平均重合度:1050、(株)カネカ〕
・カネビニール(登録商標)S1008〔平均重合度:800、(株)カネカ〕
・カネビニール(登録商標)S1003〔平均重合度:1300、(株)カネカ〕
・カネビニール(登録商標)S1006〔平均重合度:650、(株)カネカ〕
・カネビニール(登録商標)S1004〔平均重合度:1400、(株)カネカ〕
<(メタ)アクリル系樹脂>
・PMMA:製造例1にて製造したMMAの単独重合体
・カネエース(登録商標)MC−732:PMMA(59質量%)とMMA/BA系共重合体(41質量%)との混合物〔(株)カネカ〕
・PMMA+MMA/BA系共重合体(60質量%+40質量%):製造例1にて製造したPMMA(60質量%)と製造例2にて製造したMMA/BA系共重合体(40質量%)との混合物
・PMMA+MMA/BA系共重合体(40質量%+60質量%):製造例1にて製造したPMMA(40質量%)と製造例2にて製造したMMA/BA系共重合体(60質量%)との混合物
・PMMA+MMA/BA系共重合体(30質量%+70質量%):製造例1にて製造したPMMA(30質量%)と製造例2にて製造したMMA/BA系共重合体(70質量%)との混合物
<ポリエステル系可塑剤>
・アデカサイザー(登録商標)PN−350〔数平均分子量:3000、アジピン酸系ポリエステル、(株)ADEKA〕
・アデカサイザー(登録商標)PN−446〔数平均分子量:2000、アジピン酸系ポリエステル、(株)ADEKA〕
・アデカサイザー(登録商標)PN−150〔数平均分子量:1000、アジピン酸系ポリエステル、(株)ADEKA〕
・アデカサイザー(登録商標)PN−160〔数平均分子量:750、アジピン酸系ポリエステル、(株)ADEKA〕
【0084】
表1に示すように、実施例1〜実施例12のフィルムはいずれも、インクの乾燥性に優れ、インクの滲みが抑制され、かつ、貼り適性に優れるフィルムであることも明らかとなった。
一方、比較例1〜比較例8のフィルムは、表2に示すように、インクの乾燥性、インクの滲み、及び貼り適性の少なくともいずれかにおいて、劣ることが明らかとなった。
【0085】
特定ポリエステル系可塑剤の含有量が、特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部未満である比較例1のフィルム及び60質量部を超える比較例2のフィルムは、15質量部以上60質量部以下であるフィルム(例えば、実施例1、実施例2、及び実施例3)と比較して、貼り適性が劣っていた。
(メタ)アクリル系樹脂を含まない比較例3のフィルムでは、インクが乾燥し難く、かつ、インクの滲みが生じた。
(メタ)アクリル系樹脂の含有量が、特定塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、60質量部を超える比較例4のフィルムは、20質量部以上60質量部以下であるフィルム(例えば、実施例2、実施例4、及び実施例5)と比較して、貼り適性が劣っていた。
(メタ)アクリル系樹脂が、PMMAの含有率が35質量%未満の(メタ)アクリル系樹脂である比較例5のフィルムでは、インクが乾燥し難く、かつ、インクの滲みが生じた。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、800未満である比較例6のフィルム及び1300を超える比較例7のフィルムでは、インクが乾燥し難く、かつ、インクの滲みが生じた。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が1000未満である比較例8のフィルムでは、インクが乾燥し難く、かつ、インクの滲みが生じた。