特許第6779071号(P6779071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779071
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20201026BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B60C11/01 A
   B60C13/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-174701(P2016-174701)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-39368(P2018-39368A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年5月1日、NITTO TIRE U.S.A.INC.において開示
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 友紀子
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−137865(JP,A)
【文献】 特開平11−291718(JP,A)
【文献】 米国特許第06533007(US,B1)
【文献】 特公昭47−017641(JP,B1)
【文献】 特開2013−119277(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03056356(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向に延びるサイドウォール部と、
タイヤ径方向の外側にトレッド面を有し、前記サイドウォール部のタイヤ径方向の外側端に連接されるトレッド部と、を備え、
前記トレッド部は、タイヤ径方向の外側に配置されるトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向の内側に配置される少なくとも一つのベルトプライと、を備え、
前記トレッドゴムは、タイヤ幅方向の外側端まで延びる複数の溝と、前記複数の溝に区画されることにより、タイヤ周方向に並列される複数のブロックと、を備え、
前記サイドウォール部は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備え、
前記突出部は、タイヤ幅方向視において、少なくとも一部が前記複数のブロックのうち一つとタイヤ径方向で重なるように、配置され、
前記複数の突出部の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部を備え、
前記少なくとも一つの突出部は、最もタイヤ径方向の内側に配置される前記ベルトプライのタイヤ幅方向の外側端の位置に対して、タイヤ径方向の内側に配置される内側領域と、タイヤ径方向の外側に配置される外側領域と、に区分され、
前記外側領域における前記開口部の深さは、前記内側領域における前記開口部の深さよりも、深い、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記突出部の実表面積に対する前記開口部の開口面積の総和の比率においては、前記外側領域の当該比率は、前記内側領域の当該比率よりも、大きい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側領域における突出部の最大突出高さは、前記内側領域における突出部の最大突出高さよりも、大きい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの突出部は、前記外側領域に配置される前記開口部に収容される凸部を備え、
前記凸部は、タイヤ径方向に沿って延びる、請求項1〜3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備える空気入りタイヤが、知られている(例えば、特許文献1)。斯かる構成によれば、突出部が泥をせん断する際の抵抗や突出部と岩との間の摩擦等により、泥濘地や岩場でのトラクション性能が向上し、また、ゴム厚みの増加により、耐外傷性能が向上する。
【0003】
ところで、突出部の存在により、タイヤにおける重量バランスが不均一になり易い。これにより、例えば、タイヤ製造時(加硫時)に、ゴムが円滑に流れず、所望のタイヤ形状に対して欠け(ベア)が発生したり、また、例えば、車両装着時に、ユニフォミティが低下し、車両の振動や騒音の原因となったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−264962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、重量バランスの不均一を抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォール部と、タイヤ径方向の外側にトレッド面を有し、前記サイドウォール部のタイヤ径方向の外側端に連接されるトレッド部と、を備え、前記トレッド部は、タイヤ径方向の外側に配置されるトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向の内側に配置される少なくとも一つのベルトプライと、を備え、前記トレッドゴムは、タイヤ幅方向の外側端まで延びる複数の溝と、前記複数の溝に区画されることにより、タイヤ周方向に並列される複数のブロックと、を備え、前記サイドウォール部は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備え、前記突出部は、タイヤ幅方向視において、少なくとも一部が前記複数のブロックのうち一つとタイヤ径方向で重なるように、配置され、前記複数の突出部の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部を備え、前記少なくとも一つの突出部は、最もタイヤ径方向の内側に配置される前記ベルトプライのタイヤ幅方向の外側端の位置に対して、タイヤ径方向の内側に配置される内側領域と、タイヤ径方向の外側に配置される外側領域と、に区分され、前記外側領域における前記開口部の深さは、前記内側領域における前記開口部の深さよりも、深い。
【0007】
また、空気入りタイヤにおいては、前記突出部の実表面積に対する前記開口部の開口面積の総和の比率においては、前記外側領域の当該比率は、前記内側領域の当該比率よりも、大きい、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記外側領域における突出部の突出量は、前記内側領域における突出部の突出量よりも、大きい、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤにおいては、前記少なくとも一つの突出部は、前記外側領域に配置される前記開口部に収容される凸部を備え、前記凸部は、タイヤ径方向に沿って延びる、という構成でもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上の如く、空気入りタイヤは、重量バランスの不均一を抑制することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、同実施形態に係る空気入りタイヤの要部正面図(タイヤ径方向視図)である。
図3図3は、同実施形態に係る空気入りタイヤの要部側面図(タイヤ幅方向視図)である。
図4図4は、図3のIV−IV線の要部拡大断面図である。
図5図5は、同実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図であって、接地した際の形状を示す図である。
図6図6は、同実施形態に係る内側領域における開口部の開口面積の領域を示す図である。
図7図7は、同実施形態に係る外側領域における開口部の開口面積の領域を示す図である。
図8図8は、同実施形態に係る内側領域における突出部の実表面積の領域を示す図である。
図9図9は、同実施形態に係る外側領域における突出部の実表面積の領域を示す図である。
図10図10は、他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図11図11は、図10のXI−XI線の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図9を参酌して説明する。なお、各図(図10及び図11も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
図1に示すように、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1は、ビード11aを有する一対のビード部11を備えている。そして、タイヤ1は、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12の各々のタイヤ径方向D2の外側端に連接され、地面と接するトレッド面13aをタイヤ径方向D2の外側に有するトレッド部13とを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着される。
【0014】
また、タイヤ1は、一対のビード11a,11aの間に架け渡されるカーカス層14と、カーカス層14の内側に配置され、空気が充填されるタイヤ1の内部空間に面するインナーライナー15とを備えている。カーカス層14及びインナーライナー15は、ビード部11、サイドウォール部12、及びトレッド部13に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0015】
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3(例えば、図2及び図3参照)は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D3である。なお、第2の方向D2の一方向側D2aは、タイヤ径方向D2の内方側であり、他方向側D2bは、タイヤ径方向D2の外方側である。また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0016】
ビード11aは、環状に形成されるビードコア11bと、ビードコア11bのタイヤ径方向D2の外側に配置されるビードフィラー11cとを備えている。例えば、ビードコア11bは、ゴム被覆されたビードワイヤ(例えば、金属線)を積層して形成され、ビードフィラー11cは、硬質ゴムを、タイヤ径方向D2の外側に向けてテーパ状にして形成されている。
【0017】
ビード部11は、リムに接触する外表面を構成すべく、カーカス層14のタイヤ幅方向D1の外側に配置されるリムストリップゴム11dを備えている。サイドウォール部12は、外表面を構成すべく、カーカス層14のタイヤ幅方向D1の外側に配置されるサイドウォールゴム12aを備えている。
【0018】
トレッド部13は、トレッド面13aを構成するトレッドゴム13bと、トレッドゴム13bとカーカス層14との間に配置されるベルト部13cとを備えている。ベルト部13cは、複数(図1においては、4つ)のベルトプライ13dを備えている。例えば、ベルトプライ13dは、平行配列した複数本のベルトコード(例えば、有機繊維や金属)と、ベルトコードを被覆するトッピングゴムとを備えている。
【0019】
カーカス層14は、少なくとも1つ(図1においては、2つ)のカーカスプライ14aで構成されている。カーカスプライ14aは、ビード11aを巻き込むようにビード11aの周りで折り返されている。また、カーカスプライ14aは、タイヤ周方向D3に対して略直交する方向に配列した複数のプライコード(例えば、有機繊維や金属)と、プライコードを被覆するトッピングゴムとを備えている。
【0020】
インナーライナー15は、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れている。なお、サイドウォール部12において、インナーライナー15は、カーカス層14の内周側に密接しており、インナーライナー15及びカーカス層14間には、他の部材は介在していない。
【0021】
例えば、最も内周側に配置されるカーカスプライ14aとタイヤ内周面(インナーライナー15の内周面)との間の距離において、サイドウォール部12の当該距離は、トレッド部13の当該距離の90%〜180%である。より具体的には、サイドウォール部12の当該距離は、トレッド部13の当該距離の120%〜160%である。
【0022】
なお、サイドウォール部12は、タイヤ最大幅となる位置(具体的には、カーカス層14のタイヤ幅方向D1の外側同士間の距離のうち、最大距離となる位置)とタイヤ径方向D2で同じになる位置12bを、外表面に備えている。以下、当該位置12bを、タイヤ最大幅位置12bという。
【0023】
また、サイドウォール部12は、ビードフィラー11cのタイヤ径方向D2の外側端11eと、タイヤ径方向D2で同じになる位置12cを、外表面に備えている。以下、当該位置12cを、ビードフィラー外側端位置12cという。
【0024】
さらに、サイドウォール部12は、複数のベルトプライ13dのうち、最もタイヤ径方向D2の内側に配置されているベルトプライ13dにおける、タイヤ幅方向D1の外側端13eと、タイヤ径方向D2で同じになる位置12dを、外表面に備えている。以下、当該位置12dを、ベルト端位置12dという。
【0025】
図2図4に示すように、トレッド部13は、タイヤ幅方向D1の外側端まで延びる複数の溝2と、複数の溝2に区画されることにより、タイヤ周方向D3に並列される複数のブロック3とを備えている。また、サイドウォール部12は、プロファイル面(基準面)S2からタイヤ幅方向D1に突出する複数の突出部4と、プロファイル面S2からタイヤ幅方向D1に突出し、タイヤ周方向D3に沿って延びる環状突起部5とを備えている。
【0026】
突出部4は、サイドウォール部12の少なくともタイヤ径方向D2の外側に配置されている。これにより、突出部4は、泥濘地や砂地において、車両の重みによりタイヤ1が沈降し、泥や砂に埋没した状態で接地したり、また、岩場において、凹凸の岩に接地したりできる。即ち、突出部4は、泥濘地、砂地、及び岩場といった悪路において、接地する。なお、突出部4は、平坦な道路において、通常走行時に接地しない。
【0027】
また、突出部4は、サイドウォール部12のビードフィラー外側端位置12c(図1参照)よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。具体的には、突出部4は、サイドウォール部12のタイヤ最大幅位置12b(図1参照)よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0028】
突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、少なくとも一部が複数のブロック3のうち一つとタイヤ径方向D2で重なるように、配置されている。即ち、突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ径方向D2で一つのブロック3のみと重なっている。そして、例えば、突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ径方向D2で、ブロック3とタイヤ周方向D3の25%以上(好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上)の範囲で重なっている。
【0029】
突出部4のタイヤ径方向D2の外側端4aは、ブロック3のトレッド面13aより、タイヤ径方向D2の内側である。これにより、ブロック3のトレッド面13aと、突出部4のタイヤ径方向D2の外側端4aとにより、凹凸形状が形成されている。
【0030】
ところで、凹凸形状が存在することにより、面やエッジの成分が形成される。そして、泥、砂、岩に接地する部分に、凹凸形状が形成されることにより、泥、砂、岩に接地する面積が、大きくなったり、また、その凹凸形状による面やエッジが、さまざまな位置の泥、砂、岩に接地し易くなったりする。このように、泥、砂、岩に接地する部分に、凹凸形状が形成されることで、トラクション性能が向上する。
【0031】
突出部4は、開口部6,7を備えている。これにより、突出部4の存在により重量が増加する一方、開口部6,7が重量の増加を抑えているため、突出部4の存在に起因する重量バランスの不均一を抑制している。また、開口部6,7の存在により、面やエッジの成分が増加するため、トラクション性能が向上する。なお、第1及び第2開口部6,7は、タイヤ幅方向D1視で、それぞれ四角形状に形成されている。
【0032】
開口部6,7は、突出部4のタイヤ径方向D2の両端縁から離れて配置されている。さらに、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の両端縁から離れて配置されている。これにより、突出部4の開口部6,7周りの剛性を高めることができるため、突出部4によるトラクション性能を維持することができている。例えば、開口部6,7の開口縁と突出部4の端縁との間の幅寸法は、1.5mm以上(好ましくは、2.0mm以上)である。
【0033】
また、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心を含むように、配置されている。具体的には、開口部6,7のタイヤ周方向D3の中心位置は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心位置と一致している。そして、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心に対して線対称の形状となっている。これにより、タイヤ周方向D3において、重量バランスが不均一になることを抑制するため、車両装着時のユニフォミティが低下することを抑制できる。
【0034】
突出部4は、ベルト端位置12dに対して、タイヤ径方向D2の内側に配置される内側領域4bと、タイヤ径方向D2の外側に配置される外側領域4cとに区分されている。本実施形態においては、ベルト端位置12dが、環状突起部5と同じ位置であるため、内側領域4bは、環状突起部5よりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されており、外側領域4cは、環状突起部5よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0035】
また、突出部4は、二つの開口部6,7を備えている。具体的には、突出部4は、タイヤ径方向D2の内側に配置される第1開口部6と、タイヤ径方向D2の外側に配置される第2開口部7とを備えている。第1開口部6は、環状突起部5よりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されており、第2開口部7は、環状突起部5よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。即ち、第1開口部6は、内側領域4bに配置されており、第2開口部7は、外側領域4cに配置されている。
【0036】
ところで、図5に示すように、車両に装着されたタイヤ1は、地面20に接した際に、車両の重量などにより、変形する。なお、図5において、二点鎖線は、変形前の形状を示し、実線は、変形後の形状を示している。このとき、タイヤ1は、一般的に、ベルト端位置12dを基準に、異なる変形をする。
【0037】
具体的には、内側領域4bは、実線矢印で示すように、側方を向くように変形する一方、外側領域4cは、破線矢印で示すように、地面20を向くように変形する。したがって、外側領域4cの第2開口部7は、例えば、地面20の表面に溜まる泥と接地する際のトラクションに有利に作用する。
【0038】
そこで、図4に戻り、外側領域4cにおける第2開口部7の深さ(最大深さ)は、内側領域4bにおける第1開口部6の深さ(最大深さ)よりも、深くなっている。これにより、第2開口部7の面が大きくなるため、第2開口部7が泥をせん断する際の抵抗が大きくなる。したがって、泥濘地でのトラクション性能を向上させることができる。
【0039】
また、外側領域4cにおける突出部4の突出量(最大突出量)は、内側領域4bにおける突出部4の突出量(最大突出量)よりも、大きくなっている。これにより、第2開口部7の開口面積が大きく、また、第2開口部7の深さが深くなっているにも関わらず、外側領域4cのゴム体積が確保されている。したがって、外側領域4cの耐外傷性能の低下を抑制することができる。
【0040】
さらに、図6図9に示すように、外側領域4cにおける、突出部4の実表面積(図9の網掛け線領域)A4に対する第2開口部7の開口面積(図7の網掛け線領域)の総和A2の比率(A2/A4)は、内側領域4bにおける、突出部4の実表面積(図8の網掛け線領域)A3に対する第1開口部6の開口面積(図6の網掛け線領域)の総和A1の比率(A1/A3)よりも、大きくなっている。これにより、泥が第2開口部7に導入し易くなるため、第2開口部7における泥のせん断が発生し易くなる。したがって、泥濘地でのトラクション性能を向上させることができる。
【0041】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向D2に延びるサイドウォール部12と、タイヤ径方向D2の外側にトレッド面13aを有し、前記サイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外側端に連接されるトレッド部13と、を備え、前記トレッド部13は、タイヤ径方向D2の外側に配置されるトレッドゴム13bと、前記トレッドゴム13bのタイヤ径方向D2の内側に配置される少なくとも一つのベルトプライ13dと、を備え、前記トレッドゴム13bは、タイヤ幅方向D1の外側端まで延びる複数の溝2と、前記複数の溝2に区画されることにより、タイヤ周方向D3に並列される複数のブロック3と、を備え、前記サイドウォール部12は、タイヤ幅方向D1に突出する複数の突出部4を備え、前記突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、少なくとも一部が前記複数のブロック3のうち一つとタイヤ径方向D2で重なるように、配置され、前記複数の突出部4の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部6,7を備え、前記少なくとも一つの突出部4は、最もタイヤ径方向D2の内側に配置される前記ベルトプライ13dのタイヤ幅方向D1の外側端13eの位置に対して、タイヤ径方向D2の内側に配置される内側領域4bと、タイヤ径方向D2の外側に配置される外側領域4cと、に区分され、前記外側領域4cにおける前記開口部7の深さは、前記内側領域4bにおける前記開口部6の深さよりも、深い。
【0042】
斯かる構成によれば、突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、少なくとも一部が複数のブロック3のうち一つとタイヤ径方向D2で重なるように、配置されている。したがって、ブロック3と突出部4とのタイヤ幅方向D1の位置関係(例えば、凹凸形状)により、トラクション性能が発揮される。
【0043】
また、突出部4の存在により、当該部分のゴム重量が大きくなる。そこで、複数の突出部4の少なくとも一つは、開口部6,7を備えている。これにより、突出部4の存在に起因する重量バランスの不均一を抑制することができている。しかも、開口部6,7の面やエッジにより、トラクション性能が発揮される。
【0044】
ところで、サイドウォール部12においては、一般的に、最もタイヤ径方向D2の内側に配置されるベルトプライ13dのタイヤ幅方向D1の外側端13eの位置を基準に、タイヤ径方向D2の外側である外側領域4cは、地面20を向くように変形する。そこで、外側領域4cにおける開口部7の深さは、内側領域4bにおける開口部6の深さよりも深くなっている。
【0045】
これにより、外側領域4cの開口部7の面が大きくなるため、例えば、外側領域4cの開口部7が泥をせん断する際の抵抗が大きくなる。したがって、泥濘地でのトラクション性能をさらに効率的に向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記突出部4の実表面積A3,A4に対する前記開口部6,7の開口面積の総和A1,A2の比率においては、前記外側領域4cの当該比率(A2/A4)は、前記内側領域4bの当該比率(A1/A3)よりも、大きい、という構成である。
【0047】
斯かる構成によれば、突出部4の実表面積にA3,A4対する開口部6,7の開口面積の総和A1,A2の比率においては、外側領域4cの当該比率(A2/A4)が、内側領域4bの当該比率(A1/A3)よりも大きくなっているため、例えば、泥が外側領域4cの開口部7に導入し易くなる。これにより、外側領域4cの開口部7における泥のせん断がさらに発生し易くなるため、泥濘地でのトラクション性能をさらに効率的に向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記外側領域4cにおける突出部4の突出量は、前記内側領域4bにおける突出部4の突出量よりも、大きい、という構成である。
【0049】
斯かる構成によれば、外側領域4cにおける突出部4の突出量が、内側領域4bにおける突出部4の突出量よりも大きくなっているため、例えば、外側領域4cのゴム体積が小さくなることを抑制することができる。これにより、例えば、外側領域4cの耐外傷性能の低下を抑制することができている。
【0050】
なお、空気入りタイヤは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0051】
図10及び図11に示すように、空気入りタイヤ1においては、前記少なくとも一つの突出部4は、前記外側領域4cに配置される前記開口部7に収容される凸部8を備え、前記凸部8は、タイヤ径方向D2に沿って延びる、という構成でもよい。
【0052】
斯かる構成によれば、複数の突出部4の少なくとも一つが、開口部7に収容される凸部8を備えているため、凸部8の面やエッジにより、トラクション性能が発揮される。そして、凸部8がタイヤ径方向D2に沿って延びているため、例えば、凸部8が泥に浸かっている際に、凸部8の面が泥をせん断する際の抵抗が、大きくなる。これにより、泥濘地でのトラクション性能を向上させることができる。
【0053】
凸部8は、先端部が平面状となるように、形成される、という構成である。例えば、凸部8は、断面形状が台形状となるように、形成される、という構成である。斯かる構成によれば、凸部8の先端部が平面状であるため、凸部8の剛性が大きくなる。これにより、例えば、凸部8の面やエッジによるトラクション性能を効果的に発揮させることができるため、トラクション性能を効果的に向上させることができる。また、例えば、凸部8が欠損することを抑制することができるため、耐外傷性能の低下を抑制することができる。
【0054】
凸部8の突出量は、開口部7の深さよりも小さくなっている。また、凸部8の突出量は、開口部7の深さの1/2以上としている。そして、凸部8は、先端部に配置される頂面8aと、頂面8aと所定の交差角度θ1で成す側面8bとを備えている。なお、当該交差角度θ1は、105°以上で且つ130°以下であることが好ましい。これにより、凸部8の剛性を確保することができる。
【0055】
なお、凸部8は、外側領域4cに配置される開口部7だけでなく、内側領域4bに配置される開口部6にも、収容されていてもよい。また、凸部8は、タイヤ径方向D2に沿って延びる、という構成だけでなく、タイヤ周方向D3に沿って延びる、という構成でもよい。
【0056】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、突出部4の実表面積A3,A4に対する開口部6,7の開口面積の総和A1,A2の比率においては、外側領域4cの当該比率(A2/A4)は、内側領域4bの当該比率(A1/A3)よりも、大きい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、外側領域4cの当該比率(A2/A4)は、内側領域4bの当該比率(A1/A3)よりも、小さい、という構成でもよい。また、例えば、外側領域4cの当該比率(A2/A4)は、内側領域4bの当該比率(A1/A3)と、同じ、という構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、外側領域4cにおける突出部4の突出量は、内側領域4bにおける突出部4の突出量よりも、大きい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、外側領域4cにおける突出部4の突出量は、内側領域4bにおける突出部4の突出量よりも、小さい、という構成でもよい。また、例えば、外側領域4cにおける突出部4の突出量は、内側領域4bにおける突出部4の突出量と、同じ、という構成でもよい。
【0058】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、一つの突出部4に対して二つ備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部は、一つの突出部4に対して一つ又は三つ以上備えられている、という構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、タイヤ幅方向D1視で、四角形状に形成されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部は、タイヤ幅方向D1視で、円形状(真円形状、楕円形状)に形成されている、という構成でもよい。また、例えば、開口部は、タイヤ幅方向D1視で、三角形状又は五角形以上の多角形状に形成されている、という構成でもよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、全ての突出部4に備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部6,7は、複数の突出部4の少なくとも一つに備えられていればよい。なお、開口部6,7は、複数の突出部4の少なくとも1/4に備えられている構成が好ましく、少なくとも1/3に備えられている構成がより好ましく、少なくとも1/2に備えられている構成がさらに好ましい。
【0061】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、突出部4は、全て同じ形状であり、開口部6,7は、全て同じ形状である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、突出部4は、複数の異なる形状を備え、それぞれタイヤ周方向D3に順番に配置されている、という構成でもよい。また、例えば、開口部6,7は、複数の異なる形状を備え、それぞれの突出部4にタイヤ周方向D3に順番に配置されている、という構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、突出部4のタイヤ径方向D2の両方の端縁からそれぞれ離れて配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部6,7は、突出部4のタイヤ径方向D2の一方の端縁のみから離れて配置されている、という構成でもよい。
【0063】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の両方の端縁からそれぞれ離れて配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の一方の端縁のみから離れて配置されている、という構成でもよい。
【0064】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、突出部4は、一対のサイドウォール部12の両方に備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、突出部4は、一対のサイドウォール部12のうち一方に備えられている、という構成でもよい。例えば、突出部4は、一対のサイドウォール部12のうち、車両装着時に外側に配置されるサイドウォール部12に、少なくとも備えられている、という構成でもよい。
【0065】
また、空気入りタイヤ1においては、突出部4が、一対のサイドウォール部12の両方に備えられている構成に対して、開口部6,7は、一方側のサイドウォール部12の突出部4にのみ備えられている、という構成でもよく、両方のサイドウォール部12の突出部4に備えられている、という構成でもよい。例えば、開口部6,7は、一対のサイドウォール部12のうち、車両装着時に外側に配置されるサイドウォール部12の突出部4に、少なくとも備えられている、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…空気入りタイヤ、2…溝、3…ブロック、4…突出部、4a…外側端、4b…内側領域、4c…外側領域、5…環状突起部、6…第1開口部、7…第2開口部、8…凸部、8a…頂面、8b…側面、11…ビード部、11a…ビード、11b…ビードコア、11c…ビードフィラー、11d…リムストリップゴム、11e…外側端、12…サイドウォール部、12a…サイドウォールゴム、12b…タイヤ最大幅位置、12c…ビードフィラー外側端位置、12d…ベルト端位置、13…トレッド部、13a…トレッド面、13b…トレッドゴム、13c…ベルト部、13d…ベルトプライ、13e…外側端、14…カーカス層、14a…カーカスプライ、15…インナーライナー、20…地面、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D2a…タイヤ径方向の内方側、D2b…タイヤ径方向の外方側、D3…タイヤ周方向、S1…タイヤ赤道面、S2…プロファイル面
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