(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<排ガス浄化触媒の製造方法>
本発明の排ガス浄化触媒の製造方法は、
ハニカム基材上にコート層を有する排ガス浄化触媒の製造方法であって、
前記ハニカム基材上に、コート層形成用スラリーをコートして、含水コート層を形成すること(含水コート層形成工程)、
前記含水コート層を、加熱空気により予備乾燥して、予備乾燥コート層を形成すること(予備乾燥工程)、及び
前記予備乾燥コート層を、過熱水蒸気により焼成して、前記コート層を形成すること(焼成工程)
を含む方法である。
【0018】
以下、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法につき、その好ましい実施形態(以下、「本実施形態」という。)を例として説明する。
【0019】
[含水コート層形成工程]
本実施形態における含水コート層形成工程は、ハニカム基材上に、コート層形成用スラリーをコートして、含水コート層を形成する工程である。
【0020】
ハニカム基材上へのコート層形成用スラリーのコートは、例えば、公知の浸漬法、押上げ法、吸引法等によって行ってよい。
【0021】
スラリーのコートを浸漬法による場合には、ハニカム基材をスラリー中に浸漬することによってコートすることができる。浸漬法における浸漬時間は任意であり、例えば1分以上2時間以下とすることができる。
【0022】
押上げ法においては、セル孔が鉛直方向となるように保持されたハニカム基材の下側に配置したスラリーを押し上げることによってコートすることができる。
【0023】
吸引法においては、セル孔が鉛直方向となるように保持されたハニカム基材に対して、その上側端又は下側端にスラリーを配置し、反対側端から吸引することによってコートすることができる。
【0024】
スラリーのコートは、スラリー媒体の凝固点以上沸点以下(水の場合0℃以上100℃以下)の任意の温度で実施してよく、例えば室温において実施してもよい。
【0025】
[予備乾燥工程]
本実施形態における予備乾燥工程は、上記のようにして形成された含水コート層を、加熱空気により予備乾燥して、予備乾燥コート層を形成する工程である。
【0026】
本実施形態の排ガス浄化触媒の製造方法においては、後述の過熱水蒸気による焼成に先立って、加熱空気を熱源として含水コート層の予備乾燥を行うことが重要である。加熱空気を予備乾燥の熱源として用いると、該予備乾燥中に水蒸気が凝縮して液体状の水を生成することがなく、従って該液体状の水によってハニカム基材のセル内でコート層が剥離してスラリーが生成するとの問題が生じないから、セルの目詰まりを防止することができる。従って、予備乾燥に使用される加熱空気における含水量は、低いことが好ましい。
【0027】
本実施形態における予備乾燥に使用される加熱空気の温度は、含水コート層の乾燥を、所望の程度にまで行うとの観点から、75℃以上、80℃以上、85℃以上、又は90℃以上であってよく、一方で、含水コート層から水分が急激に抜けることによるクラックの発生を防止する観点から、150℃以下、130℃以下、120℃以下、又は110℃以下であってよい。
【0028】
予備乾燥時間は、含水コート層の乾燥を所望の程度まで十分に行う観点から、0.5分以上、1分以上、又は2分以上であってよい。一方、過度に長い予備乾燥時間によって得られるメリットは少ないと考えられることから、予備乾燥時間は、30分以下、20分以下、又は10分以下であってよい。
【0029】
本実施形態における予備乾燥に際しては、加熱空気をハニカム基材の外表面に供給しても、優れた品質の排ガス浄化触媒を得ることができる。しかしながら、この予備乾燥において、加熱空気をハニカム基材のセル内に通過させることが、予備乾燥に要するプロセスタイムがより短縮されるとともに、均質な予備乾燥コート層を得られる点で、好ましい。
【0030】
加熱空気がセル内を通過する速度としては、基材容量1L当たり、1分当たりの加熱空気流通量として、例えば、0.1m
3/L・min以上、0.3m
3/L・min以上、又は0.5m
3/L・min以上であってよく、2.0m
3/L・min以下、1.5m
3/L・min以下、又は1.0m
3/L・min以下であってよい。上記の流通量は、予備乾燥時の温度及び圧力下における容量基準である。
【0031】
加熱空気をセル内に通過させるには、例えば、含水コート層を形成したハニカム基材の一方の端面を開放した状態で、他方の端面に連結した送風機を稼働させる方法によることができる。上記送風機は、例えば、ブロア、ファン、エジェクター等であってよい。
【0032】
上記の構成により、ハニカム基材の一方の端面と他方の端面との間に圧力差を生じさせることにより、過熱水蒸気をセル内に通過させることができる。このときの圧力差としては、例えば、0.1kPa以上、0.3kPa以上、又は0.5kPa以上であってよく、2.0kPa以下、1.5kPa以下、又は1.0kPa以下であってよい。
【0033】
本実施形態の排ガス浄化触媒の製造方法においては、上記の予備乾燥を、予備乾燥後のコート層の含水率が44質量%以下になるまで行ってよい。このことにより、後の過熱水蒸気を熱源とする焼成において、多量の水分が一気に蒸散してコート層の破壊を来たすことがなくなり、好ましい。予備乾燥後のコート層含水率は、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。一方で、この含水率を過度に減少させることのメリットは大きくないから、予備乾燥時間を短縮する観点からは、予備乾燥後のコート層含水率は、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよい。
【0034】
上記の含水率は、予備乾燥後のコート層の全質量に対する水分の質量割合である。
【0035】
[焼成工程]
本実施形態における焼成工程は、上記予備乾燥コート層を、過熱水蒸気により焼成して、コート層を形成する工程である。
【0036】
上記したとおり、従来技術においては、ハニカム基材上に形成されたコート層を焼成する際の熱源としては、一般的に加熱空気が使用されている。
【0037】
加熱空気は熱容量がさほど大きくないため、含水コート層を乾燥及び焼成するために所定温度まで昇温するには、比較的に長い時間を要する。特に焼成時には、400℃程度以上(例えば500℃)の温度が要求されることが多いため、有意に長い時間を要する。
【0038】
更に、加熱空気による焼成雰囲気は酸化性雰囲気である。従って、含水コート層中に有機成分が含まれる場合には、焼成時に該有機成分が酸化熱分解されて発熱し、コート層及びその近傍の温度が、局所的に所定の焼成温度を越えて過度に上昇することがある。このときの局所的な過度の温度上昇による熱応力によって、コート層が破損すること、例えばクラック等が発生することがある。焼成時の過度の温度上昇によってクラックが入ったコート層を有する排ガス浄化触媒の写真を、
図3に示す。
【0039】
本発明者らは、セラミック製ハニカム基材上に形成されたコート層を、500℃の設定温度にて焼成する際の温度プロファイルについてシミュレートし、熱源として加熱空気を使用した場合と加熱水蒸気を使用した場合とを比較した。該シミュレーション結果を
図4に示す。横軸の処理時間は、単位が任意の無名数(相対値)である。縦軸の物温とは、ハニカム基材の下流側中央部のコート層の温度である。
【0040】
図4を見ると、熱源として加熱空気を用いた場合には、物温上昇の立ち上がりが遅い他、一旦物温が上昇し始めると、設定温度の500℃では昇温が止まらずに、600℃を超えて過熱されていることが分かる。
【0041】
これに対して熱源として過熱水蒸気を用いた場合には、物温上昇の立ち上がりが早く、速やかに設定温度の500℃に至ることができ、該設定温度を超えて過熱される現象も見られない。
【0042】
従って、ハニカム基材上のコート層を乾燥及び焼成する際の熱源として過熱水蒸気を使用することは、焼成時間を短縮し、且つ局所的に設定温度を超えて過熱されることによるクラックの発生等の不具合が抑制された、破損部分のない好適なコート層を形成するために有用であると考えられる。
【0043】
従って、本実施形態の排ガス浄化触媒の製造方法においては、焼成の際の熱源として過熱水蒸気を利用する。このことにより、所望の焼成温度まで昇温するために要する時間を短縮することができるから、焼成工程に要する時間が短縮される。更に、焼成雰囲気を非酸化性とすることができるから、予備乾燥コート層に有機成分が含まれている場合であっても、焼成時に該有機成分の酸化分解による発熱に起因するコート層の破壊を防止することができる。
【0044】
雰囲気が非酸化性の焼成工程において、予備乾燥コート層中の有機成分は水蒸気改質反応によって分解されて蒸散するものと推察される。有機物が炭化水素である場合に推定される反応式を以下に示す。
【0046】
本実施形態における焼成工程に使用される過熱水蒸気における水蒸気のモル分率は、予備乾燥コート層に有機成分が含まれている場合に予期しない反応(特に酸化反応)の発生を抑制する観点から、高い方が好ましい。過熱水蒸気における水蒸気のモル分率は、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上であってよく、100%とすることが好ましい。
【0047】
本実施形態における焼成工程に使用される過熱水蒸気の温度は、予備乾燥コート層の乾燥、及び水蒸気改質反応による有機物の分解を十分に行う観点から、400℃以上、420℃以上、又は450℃以上であってよく、過度の加熱を避け、形成されるコート層の破壊を防止する観点から、550℃以下、530℃以下、又は500℃以下であってよい。
【0048】
焼成時間は、予備乾燥コート層の更なる乾燥、及び水蒸気改質反応による有機物の分解を十分に行う観点から、1分以上、2分以上、又は3分以上であってよい。一方、過度に長い焼成時間によって得られるメリットは少ないと考えられることから、焼成時間は、30分以下、20分以下、又は10分以下であってよい。
【0049】
本実施形態における焼成工程では、過熱水蒸気をハニカム基材の外表面に供給しても、優れた品質の排ガス浄化触媒を得ることができる。しかしながら、本実施形態の焼成工程においては、過熱水蒸気を、予備乾燥コート層が形成されたハニカム基材のセル内に通過させることが好ましい。このような実施形態をとることにより、予備乾燥コート層の昇温がより迅速化され、該層中に含有される有機成分の水蒸気改質による分解をより迅速且つ確実に行うことができ、良好且つ均質なコート層が得られることとなる。
【0050】
過熱水蒸気のセル内通過速度、過熱水蒸気をセル内に通過させる具体的方法等については、予備乾燥工程における加熱空気のセル内通過の場合について上記したところと同様であってよい。
【0051】
[好ましい実施形態の一例]
本発明の排ガス浄化触媒の製造方法の好ましい実施形態の一例を、
図1に示す。
【0052】
図1に図示した形態において、含水コート層形成工程により含水コート層が形成されたハニカム基材1は、炉体4中に設置される。炉体4は、例えば、
図1(a)に示したようにワークテーブル2上に載置される型式であってもよいし、床面と壁面と天井面とを有する筺体状の型式であってもよい。
【0053】
図1(a)の炉体4は、上部に孔を有し、該孔を介して過熱水蒸気発生装置5又は加熱空気発生装置6と接続することができる流路41が形成されている。
【0054】
図1(a)において、ワークテーブル2上にはワークトレイ3が載置されている。このワークトレイ3は、例えば円環上であってよく、円環の中央部分は中空であってよい。ワークトレイ3の中央の中空部分は、ワークテーブル2に形成された孔21を介して送風機7(エジェクター)と接続されていてよい。
【0055】
含水コート層を有するハニカム基材1は、
図1(a)に示したように、ワークテーブル2上に設置されたワークトレイ3上に載置される。ワークトレイ3は、例えば、ハニカム基材1の外径よりも大きな外径と、ハニカム基材1の外径よりも小さな内径と、を有していてよい。
【0056】
図1(b)及び(c)に、上記の装置の稼働時の様子を示した。
【0057】
稼働時には、密閉型の炉体4をワークテーブル2上に被せて、ワークトレイ3及びハニカム基材1を、炉体4中に収納する。炉体4の下側端部とワークテーブル2の上面との間には隙間はなく、略密着しており、炉体4の内外空間は流体的に遮断される。
【0058】
ワークトレイ3の上部及び底部は、それぞれ、ハニカム基体1の底部及びワークテーブル2と略密着しており、ワークテーブル2を介してワークトレイ3の中空部分と接続された送風機7の稼働により、該中空部分への減圧の印加が可能であってよい。
【0059】
図1(b)に示した予備乾燥工程では、炉体4の上部に形成された孔に加熱空気発生装置5を接続して稼働させ、加熱空気51を発生させる。これとともに、送風機7を稼働させて、ハニカム基材1の上側端面と下側端面との間に圧力差を発生させる。これらのことにより、加熱空気61がハニカム基材1のセル内を通過して、予備乾燥が行われる。このとき、ハニカム基材1の全体が設定温度に維持されるように、炉体4の加熱を行ってもよい。
【0060】
このような予備乾燥工程により、予備乾燥コート層を有するハニカム基材1を得る。
【0061】
次いで
図1(c)に示した焼成工程において、予備乾燥コート層を有するハニカム基材1は、流路41を介して過熱水蒸気発生装置6と接続された炉体4中に設置され、予備乾燥コート層の焼成が行われる。このとき、ハニカム基材1は、予備乾燥工程に使用した炉体とは別の炉体中に設置し直されてもよいし、ハニカム基材1を予備乾燥工程時と同じ炉体中に維持したまま、加熱空気発生装置5を過熱水蒸気発生装置6と取り換え、又は切り替えることにより、焼成を行ってもよい。
【0062】
この状態で、過熱水蒸気発生装置6及び送風機7を稼働させると、ハニカム基材1の下端面と上端面との間に印加される圧力差によって、過熱水蒸気発生装置6から発生した過熱水蒸気61が、ハニカム基材1のセル内部に通過して、焼成が行われる。このとき、ハニカム基体1の全体が設定温度に維持されるように、炉体4の加熱を行ってもよい。
【0063】
以上のような方法により、所望の排ガス浄化触媒を得ることができる。
【0064】
<本実施形態の適用>
上記のような好ましい実施形態に代表される本発明の方法は、ハニカム基材上にコート層を有する排ガス浄化触媒一般の製造に、広く適用することができる。しかしながら、上記した以外の事項について、特に好ましい態様を例示すれば、例えば以下のとおりである。
【0065】
[ハニカム基材]
本実施形態の方法に適用されるハニカム基材は、金属製、セラミックス(コージェライト)製等の、公知の材料から構成されるものであってよい。更に、アルミナ粒子、セリア粒子、ゼオライト粒子等の金属酸化物粒子から形成されたハニカム基材を用いてもよい。本実施形態の方法を、熱容量が大きく、且つ単位面積当たりのセル数が多い、セラミックス製の基材に適用すると、ハニカム基材を所定の温度に昇温するために要する時間が短く、セルの目詰まりを防止するとの本発明の利点を最大限に発揮されることになり、好ましい。
【0066】
ハニカム基材の形状は、典型的には、略円柱状又は略多角柱状の外形を有し、軸方向に連通する多数のセルを有する。ハニカム基材の端面の大きさは、上記略円柱又は略多角柱の底面の円相当径として、例えば、20mm以上80mm以下の範囲を例示することができる。ハニカム基材の長さは、上記略円柱又は略多角柱の高さとして、例えば、20mm以上、30mm以上、又は40mm以上であってよく、450mm以下、300mm以下、又は200mm以下であってよい。
【0067】
ハニカム基材の有するセル数は、例えば、5セル/cm
2以上、10セル/cm
2以上、又は20セル/cm
2以上であってよく、250セル/cm
2以下、200セル/cm
2以下、又は150セル/cm
2以下であってよい。
【0068】
[コート層]
本実施形態の方法によって製造される排ガス浄化触媒のコート層は、金属酸化物担体と、該金属酸化物担体に担持された貴金属を含んでいてよい。
【0069】
上記の金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、イットリウム、希土類元素等から成る群より選択される1種以上の金属原子を含む酸化物を使用してよい。貴金属としては、例えば、パラジウム、白金、及びロジウムから選択される1種以上を使用してよい。
【0070】
上記のようなコート層は、下記のようなコート層形成用スラリーを用いて、本実施形態所定の方法によって形成することができる。
【0071】
(コート層形成用スラリー)
コート層形成用スラリーは、金属酸化物担体と、貴金属の前駆体と、が適用な媒体中に分散又は溶解された液状組成物であってよい。該スラリーは、更に、上記以外の無機成分、有機成分等を含んでいてよい。
【0072】
金属酸化物担体としては、上記の金属酸化物の粒子であってよい。貴金属前駆体としては、上記の貴金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、ジケト鎖体等であってよい。上記無機成分としては、例えばベーマイト等の永続的バインダーを挙げることができる。上記有機成分としては、例えば有機ポリマー等の一時的バインダーを挙げることができる。スラリーの媒体としては水が適当である。
【0073】
コート層形成用スラリーの濃度は、形成されるコート層の所望の膜厚に応じて、適宜に設定されてよい。
【実施例】
【0074】
以下の実験例は、
図1に示した実験装置を用いて行った。以下において、ハニカム基材の「上側」及び「下側」とは、ハニカム基材を
図1の実験装置に設置した際の上下関係を基準とする。
【0075】
図1の実験装置において、ワークトレイ3を、外径がハニカム基材1の外径よりも4mm(両側に各2mm)大きく、内径がハニカム基材1の外径よりも2mm(両側に各1mm)小さく設計された円環形状を有するものとして、該ワークトレイ3上へのハニカム基材1の設置を容易化した。
【0076】
予備乾燥工程、及び焼成工程の双方において、ハニカム基材1の上側端面と下側端面との間に発生させる圧力差は0.67kPaとした。これら両工程の実施中、ハニカム基体1の全体が設定温度に維持されるように、炉体4の加熱を行った。
【0077】
ハニカム基材1、加熱空気発生装置5、過熱水蒸気発生装置6、及び送風機7としては、それぞれ、以下を使用した。
【0078】
[ハニカム基材1]
材質:セラミックス(コージェライト)製
基材形状:円筒形
基材サイズ:直径103mmφ×長さ155mm
セル形状:四角セル
セル壁厚:3mil(76.2μm)
セル数:600セル/インチ
2
基材容量:1.3L
【0079】
[加熱空気発生装置5]
メーカー:株式会社エコム
加熱空気流速:9m/sec
【0080】
[過熱水蒸気発生装置6]
メーカー:トクデン株式会社
型式:UPSS−W60
過熱水蒸気流量:60kg/h
【0081】
[送風機7]
メーカー:サンワ・エンタープライズ株式会社
型式:コンベアーバックストロング 780S−75
吸引流量:0.9m
3/min
【0082】
以下の実施例等で使用したコート層形成用スラリーは以下の組成を有するものであり、ハニカム基材に該スラリーを、焼成後のコート層厚が300〜500μmとなるように浸漬法によってコートした後、各実験に供した。
【0083】
[コート層形成用スラリー組成]
セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ):50質量%
アルミナ:35質量%
硫酸バリウム:14質量%
パラジウム:1質量%
溶媒:水
固形分濃度:26〜28質量%
【0084】
<実施例1〜3>
実施例1〜3では、上記のコート層形成用スラリーをコートした後のハニカム基材について、
図1の実験装置を用いて予備乾燥及び焼成を行い、排ガス浄化触媒を得た。
【0085】
予備乾燥には100℃の加熱空気を用い、予備乾燥時間を変更することにより予備乾燥後のコート層の含水率を調整した。焼成は、500℃の過熱水蒸気を用いて、2分行った。
【0086】
得られた各触媒におけるコート層の品質(目詰まり率)に対する予備乾燥後のコート層の含水率の影響を調べた。
【0087】
焼成後のハニカム基材の上側端面を撮影した40.95mm×40.95mmの視野において、目詰まりしたセル数の、該視野中の全セル数に対する割合を百分率で表した値を、目詰まり率として評価した。また、焼成後のハニカム基材の上側下側両端面の外観品質(色ムラの有無)を、目視により調べた。
【0088】
<比較例1>
予備乾燥工程を行わず、コート後のハニカム基材を直ちに焼成工程に供した他は、実施例1と同様にして排ガス浄化触媒を製造し、評価した。
【0089】
<比較例2>
焼成工程における焼成温度を300℃とした他は、比較例1と同様にして排ガス浄化触媒を製造し、評価した。
【0090】
<比較例3>
焼成工程において送風機7を稼働させず、バッチ炉方式の焼成を行った他は、比較例1と同様にして排ガス浄化触媒を製造し、評価した。
【0091】
上記各実施例及び各比較例における、予備乾燥及び焼成の条件、並びに得られた結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
ハニカム基材のコート後に予備乾燥を行わずに過熱水蒸気による焼成に供した比較例1及び2では、それぞれ、6.7%及び1.3%の高い目詰まり率を示したのに対して、加熱空気による予備乾燥を行った実施例1〜3の場合には、目詰まり率が顕著に減少した。特に、コート層の含水率を44質量%以下になるまで予備乾燥を行った実施例1及び2においては、極めて低い目詰まり率を示した。
【0094】
<参考例1>
本参考例1では、実施例1と同様の実験装置を用いて500℃の過熱水蒸気を供給するときのハニカム基材の昇温プロファイルについて、送風機を稼働させた場合(過熱水蒸気がハニカム基材のセル内を通過する「セル内通風」)と、送風機を稼働させなかった場合(過熱水蒸気がハニカム基材の外表面に接触する「バッチ炉方式」)との比較を行った。
【0095】
測定に使用したハニカム基材は、コート層形成用スラリーの塗布を行っていないものであり、該ハニカム基材の温度は、下側(下流側)端面から10mm上の、直径中央部分で測定した。
【0096】
結果を
図2に示した。
【0097】
図2から、バッチ炉方式によるとハニカム基材温度が450℃に達するまでに18.6分かかっていたのに対して、セル内通風によると、わずか0.7分で450℃に達し、所定温度の焼成の開始に至るまでの時間が96%短縮された。