(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車と本体フレームの相対移動に伴い、自動車の形状を車形データとして取り込む車形検出手段と、該車形検出手段から取り込んだ車形データに基づいて車体面に作用する洗車処理装置と、自動車の端部を検出する車端検出器とを備えた洗車機において、
前記車形検出手段は、複数の発光素子を上下に配列した発光部と、該発光部の発光素子と対向する複数の受光素子を上下に配列した受光部とからなるセンサ部と、発光素子の発光に伴う受光素子での受光レベルによって車体の有無を検出する検出部を備え、
車体の有無を判断する受光レベルのしきい値を、前記車端検出器で自動車の端部を検出する前後で変更可能であり、自動車の端部が検出されているときのしきい値が大きくなり、自動車の端部が検出されていないときのしきい値が小さくなることを特徴する洗車機。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を基に説明する。
図1は洗車場における洗車機の側面図である。
1は本体フレームで、門型に形成され、レール2・2上を自動車Aを跨ぐように往復走行する。本体フレーム1は、
図1に示すように、通常、レール2・2で与えられる走行範囲の後端部に停止し、この位置から洗車を開始する。本体フレーム1には、ブラシ装置3・4・4,散水ノズル5a・5b・5c,ブロワノズル6・7・7をはじめ、送風ユニット・給水ユニット(図示しない)等の洗車処理装置が備えられ、走行に伴って水,洗剤,ワックス等を散布してブラッシングする洗浄作業やブロワノズルより空気を吹き付ける乾燥作業を行う。
【0013】
ここで、洗車を受ける自動車Aは、本体フレーム1の走行範囲となる洗車エリアの前方から進入し、本体フレーム1の前方位置に停車して洗車を受けた後、洗車エリアの後方から退場する。すなわち、自動車は前進走行して進入し、洗車後は同じく前進走行して退場するもので、洗車機利用客が自動車に乗ったまま洗車を受けて通り抜ける、いわゆるドライブスルーによる洗車を可能にしている。
【0014】
前記ブラシ装置は、本体フレーム1前側に位置し車体上面に沿って昇降し同上面をブラッシングする上面ブラシ装置3と、上面ブラシ装置3の後方に位置し車体に対して接離(開閉)動作して車体の前後面および側面をブラッシングする左右一対の側面ブラシ装置4・4とからなる。なお、このブラシ装置3・4・4は散水ノズル5a・5b・5cと共にブロワノズル6・7・7より本体1前側にあって、洗浄部Wを形成している。
【0015】
散水ノズル5a・5b・5cは、ブラシ装置によるブラッシングと前後して洗浄水や洗剤・ワックス等の液剤の希釈水を通常圧で散布する低圧ノズル5a・5bと、車体の砂・泥等を落とすよう洗浄水や液剤希釈水を高圧噴霧する高圧ノズル5cとからなっている。高圧ノズル5cは、ブラッシングに先立って車体の砂・泥等を落とし、砂・泥等をブラシで擦り付けて車体に洗車傷を発生させないようスプレー洗浄するもので、ブラシ装置3・4・4より前側で後述の車形検出装置10の後方に位置している。これら散水ノズル5a・5b・5cは、本体1と別体として設置される公知の給水装置(図示しない)から送水を受けており、また給水装置に公知の温水ボイラ(図示しない)が接続されて、冬などの寒冷期には洗浄水として温水が供給される。
【0016】
前記ブロワノズルは、各ブラシ装置3・4・4の後方にあって、車体上面に沿って昇降し同上面に空気を吹き付けて乾燥をはかる上面ブロワノズル6と、該上面ブロワノズル6より更に本体1後方に位置し車体側面に空気を吹き付けて乾燥をはかる左右一対の側面ブロワノズル7・7とからなり、本体1の後側に乾燥部Dを形成している。
【0017】
8は走行エンコーダで、走行モータ9の出力軸に取り付けられ、本体フレーム1が単位距離走行するごとにパルス信号を出力し、このパルス信号をカウントすることにより本体フレーム1の移動距離を検出する。10は車形センサで、本体フレーム1のブラシ装置よりも前方に備えられ、複数の発光素子L1〜Lnを上下に配列した発光部10aと、複数の受光素子R1〜Rnを上下に配列した受光部10bとを自動車を幅方向に挟んで対向させてなり、複数の発光素子と複数の受光素子との間で光信号(赤外光)の授受を行い、受光素子での受光レベルに応じて車体の有無を検知し、車体の上面位置を検出する。
【0018】
11は車形センサ10の下部に設けられ、自動車の入車を検出する入車センサ、12は本体フレーム1後面に取り付けられ、自動車の退車を検出する退車センサである。各センサ11・12は、自動車の端部を検出可能な高さに取り付けられ、いずれも発光部と受光部を車幅方向に対向させて一組の光軸を形成し、その光軸の透光/遮光によって車体の有無を出力するビームセンサからなり、それぞれている。尚、各センサ11・12は、ビームセンサ以外の赤外線や超音波を用いた車体検出センサでも代用できる。
【0019】
13は洗車エリアの入場口に設置される洗車受付装置で、前面に備えられる受付操作パネル14により洗車内容の選択や洗車料金の精算等の操作を行うものである。15は洗車エリアの入場口を開閉するゲート装置で、自動車の進入を禁止/許可する。16は洗車エリアの退場口後方に設置される案内表示器で、洗車受付時には自動車の入場を誘導し、洗車中には洗車動作の進行状況等を表示し、洗車終了時には自動車の退場を案内する。受付操作パネル14には、洗車コースキー・洗車スタートキー・洗車ストップキーといった各種入力キーが備えられ、顧客の希望に添った洗車形態が設定できるようになっている。
【0020】
図2は実施例の制御系を示すブロック図である。
20は洗車制御部、21は受付制御部、22は洗車駆動部である。
洗車制御部20は、走行エンコーダ8・車形センサ10・入車センサ11・退車センサ12からの信号に基づき予めプログラムされたシーケンスに従って、本体フレーム1の走行モータ9、ブラシ3・4・4、散水ノズル5a・5b・5cおよびブロワノズル6・7・7の作動を制御する。受付制御部21は、洗車受付装置13の受付操作パネル14において受け付けた洗車を洗車制御部20に出力し、ゲート装置15の開閉、案内表示器16の表示切替を行う。洗車駆動部22は、洗車制御部20からの信号を受けて各洗車処理装置を駆動する。
【0021】
洗車制御部20には、走行エンコーダ8のパルス信号から本体フレーム1の走行位置を検出する走行検出部23と、走行エンコーダ8のパルス信号をトリガに車形センサ10を駆動して自動車の高さ位置を検出する車形検出部24と、走行検出部23と車形検出部24の検出結果から車形データを作成する車形データ作成部25と、各種データを記憶するデータ記憶部26と、車形データに沿って洗車処理装置を制御する動作制御部27とを備えている。
【0022】
これにより、洗車制御部20では、走行エンコーダ8からのパルス信号を受けて、走行検出部23で本体フレーム1の走行位置を検出するとともに、車形検出部24で車体の上面位置を検出し、車形データ作成部25で本体フレーム1の走行位置と車体の上面位置とを対応させて車形データを作成してデータ記憶部26に記憶し、車形データに基づいて動作制御部27でブラシなどの洗車処理装置を制御する。
【0023】
図3は車形検出部24を示すブロック図である。
車形検出部24は、車形センサ10の発光部10aを駆動する発光駆動部28と、車形センサ10の受光部10bを駆動する受光駆動部29と、受光部9bの受光素子で取得した受光レベルを検出する受光検出部30と、受光レベルに基づいてその素子の高さ位置で車体が検出されたか否かを判定する車体判定部31と、受光レベルに基づき車体検出の判断をするためのしきい値を設定するしきい値設定部32とを備えている。
【0024】
ここで、しきい値とは、発光素子が発光したことによって対応の受光素子で受ける受光量の増加分と対比される数値であり、発光により受光量がしきい値以上増加すれば透光(車体なし)と判断し、増加分がしきい値に達しなければ遮光(車体あり)と判断する。よって、しきい値を大きくするほど(車体あり)を判定しやすくなり、しきい値を小さくするほど(車体なし)を判定しやすくなる。
【0025】
このしきい値は、自動車が無い状態で発光素子を発光させる前の受光レベルと発光させた後の受光レベルとの差分受光レベルを取得し、この差分受光レベルに対して洗車内容・洗車状況を考慮して設定される。洗車前で自動車が無い状態での受光レベルを取得することにより、各素子の器差や汚れ付着による性能差を把握した上で、素子毎に最適なしきい値が設定される。
【0026】
車形検出部24では、発光駆動部28で上方の発光素子L1から下方の発光素子Lnへ走査するように順次に光信号を出力させ、これと同期して受光駆動部29で発光素子と対応する受光素子R1〜Rnにて光信号を受信し、受光検出部30で光信号の受光レベル(受光量)を取得し、車体判定部31においてしきい値設定部32で設定したしきい値と比較して車体の有無を検知している。
【0027】
以下、本実施態様の動作について、
図4〜7を用いて説明する。
洗車受付装置13の受付操作パネル14で洗車内容を受け付け洗車開始入力を受けると、受付制御部21でゲート装置15を開き、案内表示器16により自動車の入場を案内する表示を行うとともに、受付操作パネル14で受け付けた洗車内容を洗車制御部20に送信する。
【0028】
洗車制御部20は、受付制御部21から洗車信号を受信すると、自動車が洗車位置に停止したことを検知して受け付けた洗車内容に沿って洗車を開始する。尚、自動車が洗車位置に停止したことを検知する手段としては、特に図示しないが、タイヤの乗り入れを検知するタイヤスイッチや、本体フレーム1の前方に突出して停車検知スイッチ等が知られている。
【0029】
洗車が開始すると、本体フレーム1が往行を始めるとともに、車形センサ10で車体を検知する前にしきい値設定を実行する。
図4はしきい値設定のフローチャート図である。
しきい値設定は、受光部10bの走査駆動部29のみを駆動し(1)、発光素子Lを発光させる前の受光素子Rの受光レベルraを取り込み(2)、続いて発光部10aの走査駆動部28と受光部10bの走査駆動部29を同期駆動し(3)、発光素子Lを発光させた時の受光素子Rの受光レベルrbを取り込む(4)。そして、処理(2)で取り込んだ受光レベルraと、処理(4)で取り込んだ受光レベルrbとの差分受光レベルrcを算出し(5)、この差分受光レベルrcを基準値として、第1割合を乗じた第1しきい値SLを設定するとともに(6)、第2割合を乗じた第2しきい値SHを設定し(7)、受光素子R1の判別しきい値としてデータ記憶部26に記憶する(8)。以後、この処理(1)〜(8)までの動作を繰り返し、各受光素子R1〜Rnにそれぞれ2つの判別しきい値SL1〜SLn,SH1〜SHnを設定する(9)。
【0030】
しきい値設定がなされると、本体フレーム1の往行に伴い、車形センサ10による車形データ作成が行われる。
図5は車形データ作成のフローチャート図である。
本体フレーム1の走行に伴い、走行エンコーダ8からのパルス信号を受信すると(10)、発光素子L1を発光させる前の受光素子R1の受光レベルra1と、発光素子L1を発光させた時の受光素子R1の受光レベルrb1とを取り込んで、その差分受光レベルrc1を算出し、しきい値設定で設定した第1しきい値SL1と比較する。その結果、差分受光レベルrc1が第1しきい値SL1よりも高ければ透光(車体なし)と判断し、第1しきい値SL1よりも低ければ遮光(車体あり)と判断して車体を検知する(11)。
【0031】
この処理を発光素子Ln−受光素子Rnまで連続的に行い、車体なしを「0」、車体ありを「1」とする1走査分の2値画像データを作成する(12)。そして、こうした1走査分の2値画像データを、走行エンコーダ8がパルス信号を出力する毎に作成していき、本体フレーム1が往行するまで実行すると、横軸を本体フレーム1の移動ピッチ、縦軸を光軸の配列ピッチとしたマトリックス画面に、透光を「0」、遮光を「1」という2値化された車形データを当てはめた2値画像データが作成される。
【0032】
本体フレーム1が往行していき、入車センサ11が車体非検出に転じると(13)、それまでの第1しきい値SLから第2しきい値SHに切り替えて車形検出する(14)。入車センサ11で車体が非検出になっても車形検出を継続するのは、入車センサ11の高さで検出される車体端部よりも後方に、リアタイヤやリアミラー等が取り付けられている可能性があるためである。
【0033】
その後、本体フレーム1の往行に合わせて処理(12)と同様に2値画像データを作成していき(15)、車体なしの2値画像データが所定数連続したら(16)、車形検出は終了となり、車体後端位置を確定させる。その後、本体フレーム1が工程中に使用する洗車処理装置(1往行では側面ブラシ装置4)が車体後端位置に達して洗浄を終了すると、1往行が終了となる。
【0034】
図6は車形データ作成時の本体フレーム1の動作を示している。
本体フレーム1が洗車待機位置P1にあって、自動車が所定の洗車位置に停止された状態から洗車を開始し、本体フレーム1が入車スイッチ11で車体検知しなくなる位置P2まで走行する間は、第1しきい値SLで車体検出を行い、本体フレーム1が車形センサ10で車体検出しなくなる位置P3まで走行する間は、第2しきい値SHで車体検出を行う。
【0035】
このように本発明は、車体を検出している時(P1〜P2)には、装備品の抜けを防止する目的で第1しきい値SLを使用し、車体端部以降(P2〜P3)の検出時に水滴や湯気の付着による影響を軽減する目的で第2しきい値SHを使用している点に特徴を有している。
【0036】
洗車中には、発生した水滴や湯気により受光レベルが減衰することが予想され、この減衰の程度は、本体フレームにおける各部の位置や構造によっても異なるが、出願人の試験によれば、通常の洗車で40%程度、水滴や湯気の付着により80%程度の減衰を確認している。
【0037】
そのため、基準値の30%とするしきい値で車体検出を行った場合、
図7(a)に示すように、車形センサ10に水滴や湯気が付着した箇所が遮光(車体あり)となるため、自動車の後端が確定できず、車形異常として洗車が停止するエラーが発生してしまう。
【0038】
一方、洗車中の水滴や湯気の発生を見越して、基準値の10%とするしきい値で車体検出を行った場合、
図7(b)に示すように、水滴や湯気による減衰が小さな状況にあっては、わずかな受光量で「車体なし」と判断してしまうため、厚さのない装備品(アンテナ等)を光が透過し、車体として認識できなくなってしまう。
【0039】
そこで、本発明では、
図7(c)に示すように、装備品の抜けを防止するためのしきい値として、基準値の30%とした第1しきい値SLを設定し、水滴や湯気の付着による影響を防止するためのしきい値として、基準値の10%とした第2しきい値SHを設定し、入車センサ11が車体検出している間は、第1しきい値で車体判定を行い、入車センサ11が車体非検出となったら、第2しきい値で車体判定を行い、装備品と車体後端を確実に検出できるようにしている。
【0040】
受光レベルの減衰は、実行する洗車コースや洗車条件によっても左右される。例えば、高圧スプレー5cを使用する洗車コースでは、飛散水の影響で70%の減衰が見込まれ、寒冷時のように湯気の発生が危惧される洗車条件では、80%の減衰が見込まれる。
【0041】
そのため、
図8に示すように、高圧スプレーを使用する洗車コースを実行する場合、第1しきい値を基準値の20%とし、第2しきい値を基準値の10%としている。また、湯気の発生が見込まれる寒冷時には、第1しきい値を基準値の15%程度とし、第2しきい値を基準値の10%としている。尚、高圧スプレーを使用する洗車で且つ湯気の発生が見込まれる場合には、実質的に洗車しながらの車形検出が不可能と判断し、車形検出工程のみを先に実行する。この場合、洗浄水を使用しないのでしきい値を基礎データの40%程度に設定すれば良い。これらのしきい値は、各素子毎に算出・設定されてデータ記憶部26に記憶される。
【0042】
この実施例は以上のように構成されるものであるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。例えば、実施例ではドライブスルー式の門型洗車機に適用した例を示すが、洗車機としてはドライブスルーである必要はないし、自動車をコンベアで搬送する連続式洗車機や、ブラシを使用せず高圧スプレーだけで洗車するブラシレス洗車機などにも、適用することができる。また、光軸の構成は複数パターン考えられ、発光素子と水平に対向する受光素子との水平光軸だけでなく、発光素子とn個(n=2以上)ずらした傾斜光軸でも適用することができ、傾斜の程度に応じて基準値に乗じる割合を変えるようにしても良い。更に、本体フレームの復行に伴い車形検出する場合も同様に使用できる。