(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
物品や人体など種々の対象物に付着した水分などの液体の吸収を目的とした紙がある。例えば、研究室や研究機関などで実験器具などに付着した水分や汚れの拭き取りなどに用いられる産業用ワイプ、主に洟をかむ用途に用いられるティシュペーパー、排泄後の清拭に用いられるトイレットペーパー、手拭き後に用いられるペーパータオル、一般家庭の台所で使用されるキッチンペーパーなどがあり、その使用態様に応じて求められる機能や物性が異なっている。
【0003】
このような多種の清拭や水分などの液体の吸収用途に用いられる紙のなかには、生鮮食料品を取り扱う店舗や厨房等において、食材に付着した汚れの拭き取り、食材の水切り、食材から浸出するドリップの拭き取り、食材保管時に食材を包み保護する用途などに用いられる厨房用ペーパー等とも称される吸液紙がある。この種の吸液紙は、繊維原料がパルプのみのもの、パルプと化学繊維との混合品、化学繊維のみのものがある。吸液紙は、抄紙による紙と、不織布態様のものがあるが、パルプのみを原料とし、湿式抄紙法により製造される「紙」であるものが安価で市場にもっとも多く流通している。
【0004】
そして、この種の吸液紙は、業務用であることから安価であることが求められ、さらに他の清拭や水分などの液体の吸収用途に用いられる紙と異なり、生鮮食料品を包んで保管する際にその生鮮食料品の鮮度ができるかぎり保持されることが求められる。
【0005】
従来、この吸液紙は、ドライクレープ法により抄紙した後エンボス加工することで製造されている。エンボス加工による嵩高さの発現とともに、エンボス加工による紙面の凹凸の存在によって生鮮食料品との接点を少なくして鮮度を保持する。
【0006】
しかしながら、従来のドライクレープ法により抄紙した後にエンボス加工したものでは、特に生鮮食料品から浸出するドリップなど水分を吸収した際にエンボス加工による凹凸が失われ嵩が低下するとともに、ドリップを含む紙と生鮮食料品との接触面積が増加するため鮮度保持機能が低下する。
【0007】
また、この種の吸液紙では、安価であることが求められ、そのためには原料コストを抑制することが非常に有用である。すなわち、製品の坪量を低下させることが非常に効果的である。
【0008】
しかしながら、坪量を低くしようとすると、上記の水分吸収によりエンボス加工による凹凸の消失がより顕著になるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0019】
本発明に係る吸液紙は、生鮮食料品を取り扱う店舗や厨房等において食材に付着した汚れの拭き取り、食材の水切り、食材から浸出するドリップの拭き取り、食材保管時に食材を包み保護する用途などに用られる厨房用ペーパー等とも称されるものである。
【0020】
特に本発明に係る吸液紙は、例えば、野菜、鮮魚、刺身用のブロック(サク)、ブロック肉などを一時的に保管するためにこれらの食材を包んだ際に、食材の乾燥防止、食材からのドリップ(浸出液)の吸収などが行なわれ、食材の鮮度が保持されるように機能する。
【0021】
本発明に係る吸液紙は、湿式抄紙法により抄紙された所謂「紙」であり、不織布は含まれない。また、本発明に係る吸液紙は、構成繊維の少なくとも98質量%がパルプ繊維からなるものであり、特には100質量%がパルプ繊維からなるものである。パルプ繊維が100質量%であると通常の湿式抄紙法によって抄紙することが容易となり、本発明の作用効果を発現させることができる。但し湿式抄紙が可能な範囲で2質量%未満程度であれば化学繊維などを含ませることができる。
【0022】
そして、本発明に係る吸液紙では、繊維原料中の40質量%以上が針葉樹クラフトパルプである。針葉樹クラフトパルプは、繊維長が長くコシが発現しやすく、また繊維に沿って素早く水分を拡散吸収させやすい。本発明に係る吸液紙では、繊維原料の100質量%がパルプ繊維であり、その40質量%以上が針葉樹クラフトパルプで構成されているものが最も望ましい。針葉樹クラフトパルプの割合が40質量%以上であると食材からのドリップの吸収性に優れるとともに、ドリップを吸収してもへたらない適度なコシが発現できるようになる。なお、本発明に係る吸液紙は、食材に触れる用途に用いられることから古紙パルプは含まない。
【0023】
本発明に係る吸液紙における針葉樹クラフトパルプ以外のパルプ繊維としては、広葉樹クラフトパルプ、広葉樹未晒しパルプを用いることができる。なかでも、リグニン等の親油性の高い物質を含まず白色性としなやかさに優れる広葉樹クラフトパルプが望ましい。構成繊維中における広葉樹クラフトパルプの割合は58質量%以上60質量%未満である。特に、本発明に係る吸液紙では、構成繊維が、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプからなるのが望ましい。さらに、その比率は、針葉樹クラフトパルプ:広葉樹クラフトパルプが55:45〜65:35であるのが望ましい。この範囲であると針葉樹クラフトパルプによるコシと素早い吸水性、広葉樹クラフトパルプによるしなやかさのバランスがバランス良く発揮され、特に食材を包む際における食材への追従性、使用者の取り扱い性に優れたものとなる。
【0024】
他方、本発明の吸液紙の坪量は25〜38g/m
2である。プライ数は1プライである。坪量は、従来一般市販の吸液紙の坪量が40〜55g/m
2であることと比較すると非常に低坪量である。本発明に係る吸液紙は、このような低坪量であるため原料コストが低い。特に、本発明の吸液紙では坪量を30g/m
2未満とすることができる。35g/m
2未満の坪量であると原料コストが格段に低減される。なお、本発明に係る坪量は、JIS P 8124(1998)に基づいて測定した値である。
【0025】
他方、本発明に係る吸液紙は、紙厚が200〜400μmであるのが望ましい。この紙厚は、従来市販の吸液紙とほぼ同等である。本発明に係る吸液紙は、紙厚が200〜400μmであると嵩高で薄さを感じないものとなる。紙厚は、JIS P 8118(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリがないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと紙面に対し垂直に下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0026】
本発明に係る吸液紙は、特にその比容積が、8.0〜13.0cm
3/gである。好ましく8.5〜11.5cm
3/gである。比容積の値が大きいほど繊維間の空隙が大きく、吸液保持量が高い。本発明に係る吸液紙は、これまでにない原料パルプ繊維1g当たり8.0〜13.0cm
3という高い比容積を有する。本発明にかかる吸液紙は、極めてポーラスな構造である。また、高い比容積は、厚み方向にもシートの均質性が確保され、品質も良いものとなる。この特徴的な高い比容積は、後述の製造方法により達成することが可能である。比容積は、紙厚〔μm〕を坪量〔g/m
2〕により除した値〔cm
3/g〕である。
【0027】
また、本発明に係る吸液紙は、縦方向の湿潤引張強度が400〜800cNであり、横方向の湿潤引張強度が250〜500cNである。より好ましくは、縦方向の湿潤引張強度が400〜650cNであり、横方向の湿潤引張強度が300〜500cNである。本発明に係る湿潤引張強度は、JIS P 8135(1998)に基づいて測定した値を言う。なお、試験片は、長手方向長さ150mm、短手方向長さ25mmの短冊形状に裁断したものとした。本発明に係る吸液紙は、上記の湿潤引張強度であることによりドリップ吸収時においても十分な強さを有する。また、特にこの種の吸液紙は、濡れた手で取り扱うことも多いため、作業性も十分に確保できる。本発明に係る吸液紙は、特に上記の高い比容積であってポーラスな構造を有しつつも高い湿潤引張強度となっている。
【0028】
ここで、本発明に係る吸液紙は、吸水量が175〜350g/m
2であるのが望ましい。この吸水量となっていればドリップの吸収性が十分である。この吸水量は、下記の手順で測定した値である。吸水量は、試験片を縦100mm×横100mm(縦横誤差各±1mm)に裁断し試験片を用意し重量を測る。パンに深さ20mmになるように蒸留水を入れ、裁断した試験片を紙面の上まで蒸留水を浸漬させ、次いで、蒸留水中から引き上げて30秒後の重量を測定する。
【0029】
1つの試験片について5回の測定を行い、その平均値を測定値とする。吸水量=〔(吸水後の重量)−(吸水前の重量)〕×100(単位:g/m
2)
【0030】
他方、本発明に係る吸液紙は、ウェットクレープ法により形成されたクレープを有する。ウェットクレープ法によるクレープ(以下、単にウェットクレープとも言う)は、湿紙の状態で形成されるクレープであり、液体を吸収した際にもクレープが伸びがたい性質を有する。本発明に係る吸液紙では、ウェットクレープを有することにより、食材のドリップを吸収した際においてもクレープが伸びがたく表面に微細なクレープによる凹凸が維持される。このため食材を包んで保管する際に、食材からドリップが浸出してそれを吸収した際にもクレープが伸びず、凹凸が維持されて食材との接触面積が過度に高まらず鮮度保持性が高まる。
【0031】
さらに、本発明の吸液紙は、10〜50線/
25.4mm(1インチ)のバルキーワイヤーのメッシュ痕を有する。より好適には、15〜20線/
25.4mm(1インチ)のバルキーワイヤーのメッシュ痕を有する。バルキーワイヤーは、湿式抄紙において湿紙を移送するために用いられる抄紙網の一態様であり、特に、10〜50線/
25.4mm(1インチ)のバルキーワイヤーは比較的疎である。本発明者等は、バルキーワイヤーによるメッシュ痕を紙に形成するとともに、高い比容積とすることで、食材を包んで保管する際に、食材からドリップが浸出してそれを吸収した際に、ウェットクレープの作用と相まって紙面の凹凸が確実に維持されて高い鮮度保持機能が発揮される。ここで、本発明の吸液紙における特徴的なバルキーワイヤーのメッシュ痕は、
図1(A)に本発明に係る吸液紙の紙面の拡大図を示すように、表面に各ワイヤーの跡が形成されるだけでなく、ワイヤー間に存在する孔に対応する位置に、繊維が非常に疎な穴のようにも見える部分が規則的に形成されたものである(
図1(A)中にはバルキーワイヤーのワイヤー位置の一部をBWとして示す)。このメッシュ痕は、後述の製造方法により形成することができる。そして、このメッシュ痕は、
図1(B)に吸水時における紙面の拡大図を示すように、湿潤状態においても維持されることが知見された。つまり、本発明の吸液紙は、低坪量で使用繊維が少なく安価であり、しかもポーラスな構造で高いドリップの吸収性を確保しながらも、ウェットクレープとメッシュ痕によって紙面がへたり難く紙面の凹凸が維持されやすくなっており、食材に対する接触性を維持し、高い鮮度保持機能が確保される。比較のために
図2に一般的なドライクレープ紙にエンボス加工による凹凸を形成しただけの従来の吸液紙の表面の拡大図を示す。
図2の(A)が乾燥時、(B)が吸水時である。
図2の(A)、(B)を比較するとエンボス加工による凹凸は吸水によって失われやすいことが解る。但し、本発明に係る吸液紙は、エンボス加工による凹凸が形成されていてもよい。吸液紙は、上記ドリップの吸収以外にも汚れの清拭などにも用いられ、このような用途ではエンボス加工による凹凸が優れた作用を発揮する。また、エンボス加工は、食材からの剥離性が高まる効果がある。エンボス加工によって凹凸が形成されても本発明の鮮度保持機能を阻害することもないし、むしろより相乗の効果となる。エンボス加工による凹凸のパターンは、本発明では特に限定されるものではない。既知のエンボスパターンを採用することができる。
【0032】
次いで、本発明に係る吸液紙の製造方法を
図3を参照しながら説明する。
図3は、抄紙設備X1の概略図である。本発明では、抄紙原料を抄紙網10上に吐出して湿紙W1を形成する湿紙形成工程P1と、この湿紙W1を搬送する過程で湿紙の脱水を行なう脱水工程P2と、前記脱水工程P2を経た湿紙W2をロール20に移行しロール20上の湿紙W3をブレード40により引き剥がしてウェットクレープを施すとともに、バルキーワイヤー50上に移行するウェットクレープ付与工程P3と、前記バルキーワイヤー50上の湿紙W4をヤンキードライヤー60に押しつけてメッシュ痕を形成するとともにヤンキードライヤー60上に移行させる工程P4と、移行された湿紙W4をヤンキードライヤーで乾燥する工程と、を有している。以下、各工程等について詳述する。
【0033】
本発明にかかる抄紙原料は、本発明の吸液紙の構成繊維を繊維原料とするパルプスラリーであり、このパルプスラリーには、既知の方法により適宜の薬剤等が添加して調整することができる。本発明に係る吸液紙のパルプスラリーのフリーネスは、480〜588cc(CSF:カナディアンスタンダードフリーネス)であるのが望ましい。この数値は、一般的な吸液シートを製造する際の数値よりも高い数値であり、脱水性が高いものである。
【0034】
また、本発明に係る吸液紙の高い湿潤引張強度とするためにパルプスラリー中に湿潤紙力剤を添加する。その添加量は、抄紙設備及び構成繊維比にもよるが、15〜30kg/パルプtであるのが望ましい。また、乾燥紙力剤についても10〜30kg/パルプt添加するのが望ましい。これらの紙力剤の使用により所望の紙力に調整しやすくなる。なお、紙力剤は公知のなかから適宜選択することができる。
【0035】
本発明に係る吸液紙を製造するには、本発明に係る吸液紙の坪量となる量の上記抄紙原料をインレット1から抄紙網10上に吐出して湿紙W1を形成する。そして、この抄紙網10上で前記湿紙W1の脱水(脱水工程)を行う。本発明に係る製造方法においては、この抄紙網10上で脱水をするにあってプレスロールなどを用いず紙層を潰さないことが望ましい。比較的高いフリーネスの抄紙原料をプレスすることなく脱水することで湿紙W1の厚みを十分に確保しつつ脱水する。このようにすることで高い比容積を確保でき、またメッシュ痕が形成されやすくなる。
【0036】
次いで、湿紙W1は、抄紙網からロール20にピックアップし、ロール20からブレード40により引き剥がしつつバルキーワイヤー50に移送する。ここで、本発明に係る吸液紙では、高い比容積とバルキーワイヤーのメッシュ痕の形成を確実にするために上記抄紙網10での脱水をやや高めにして適度に水を含んだ状態で湿紙をバルキーワイヤーに移送するのが望ましい。ここで、本発明におけるウェットクレープ付与時の好ましいクレープ率は5〜25%である。クレープ率が5%未満では吸水性、吸油性向上の効果が少なく、かつ嵩がでない。25%超では湿潤状態での引張り強度が低下し剥離強度に劣る。なお、本実施形態では、クレープ率は、下記のように算出することができる。クレープ率:{(ヤンキードライヤーの周速
図3の60)−(ロールの周速
図3の20)}/(ヤンキードライヤーの周速)×100。
【0037】
バルキーワイヤー50上に移行した湿紙W3は、バルキーワイヤー50を移送する過程でその接触面に各ワイヤーの跡が形成される。定かではないが、ワイヤー間の隙間からの脱水によっても繊維が疎な部分が形成されると推測される。バルキーワイヤーの裏面にフェルトロールを設置して脱水を効果的に行なうようにするとよりメッシュ痕がより形成されやすくなる。
【0038】
次いで、バルキーワイヤー50から湿紙W4をヤンキードライヤー60上に移行する。この移行の際に、バルキーワイヤー50をヤンキードライヤー60に押しつけるようにして移行させる。バルキーワイヤー50の表面の規則正しい凹凸が湿紙W4の表面に転写されるとともに繊維が疎な穴部分が形成され固定される。ここでの移送は一つのタッチロール55によってバルキーワイヤー50をヤンキードライヤー60に押しつけて行なうのが望ましい。タッチロール55を一つとすることでバルキーワイヤー50の吸液シートの内部構造の改質、表面構造の改質を好適に行なわれ、また、嵩の低下を防止できる。
【0039】
ここで、本発明の用いるバルキーワイヤー50は10〜50メッシュ(線/
25.4mm(1インチ))である。バルキーワイヤー50を構成するワイヤーの太さは0.5mmφ程度である。なお、バルキーワイヤー50によって付与される湿紙の凹凸差(頂部と底部との差)は0.4〜1.0mmとするのが望ましい。これは、バルキーワイヤー50の表面構成とヤンキードライヤー60への接触圧、湿紙W4の厚さ、水分率等により調整する。
【0040】
このように、嵩高でやや高水分の湿紙をバルキーワイヤー50を介してヤンキードライヤー60に湿紙W4を移行させることでメッシュ痕が形成される。
【0041】
ヤンキードライヤー60に移行された湿紙W4は、ヤンキードライヤー表面に付着して搬送される課程で乾燥され、その後にヤンキードライヤー60からブレード61により剥がされ、適宜巻き取り工程を経て本発明にかかる吸液紙の原紙Tとされる。なお、ヤンキードライヤー60からシートW6をブレード61により剥がすようにするが、かかるブレード61はヤンキードライヤー60からシートW4を引き剥がす単なるきっかけとするものであり、この引き剥がし時には所謂ドライクレープは付与されないか、ほとんど製造される吸液シートの伸びに影響がしない程度しか付与されない。これは、前段のウェットクレープとバルキーワイヤーのメッシュ痕によって、シートW4の表面には既に凹凸があり、ヤンキードライヤーへの接着力が低下されていることによる。もちろん、ヤンキードライヤーとその後段の巻き取り手段との速度を意図的に調整して過度のドライクレープが付与されないように調整をすることもできる。
【0042】
このようにして得られた原紙Tは、さらにエンボス加工工程に移行してエンボス加工を行なっても良い。エンボス加工は、公知のスチールラバー式のエンボス加工により行なうことができる。上記の原紙又はエンボス加工後の原紙は、公知の方法によって適宜にロール状の製品にするなどして市販に供される態様とする。
【実施例】
【0043】
本発明の実施例を作成するとともに、従来例(比較例1及び2)について各物性値を測定した。各例に係る物性値及び組成は表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
まず、本発明に係る実施例と比較例とを対比してみると、実施例は坪量が格段に低い。それにも関わらず、吸水量や吸水速度、吸油量については、市販品と同等かそれ以上であり、また、紙力も十分であった。なお、吸油量は、吸水量と同様の手順で蒸留水の代わりに市販のサラダ油(日清オイリオ 日清サラダ油1300g)を用いた。
【0046】
吸水速度は、次のようにして測定した。試験片として100mm×100mmの寸法に断裁した試験片、錘(直径82mm、厚み10mm、重さ59gの円形、材質アクリル、円形の中央部に直径20mmの孔を有する)、プラスチック製の板を用意する。次に、プラスチック製の板の上に試験片を載せ、さらに、試験片の中央に錘を載せる。その後、ピペットで1mLの蒸留水を錘の孔から滴下する。試験片に接触した瞬間から、蒸留水が完全に吸収されて紙表面の反射が消えるまでの時間(秒)を吸水速度とした。
【0047】
次いで、実施例1と実施例3と比較例1とについて鮮度保持機能について試験した。鮮度保持機能に関してはK値を指標とした。K値は、主に水産物を取り扱う水産加工会社や流通業者が鮮度の管理や確認のための用いている指標であり、鮮度を数値化できる。
【0048】
本実施例における試験では、同一の柵から切り出した刺身用マグロの切り身の鮮度を測定することとした。試料は、実施例1と実施例3と比較例1とに係る吸液紙で上記のマグロの切り身をつつみさらにそれをラップフィルムで包んだ物と、ラップフィルムのみで包んだものとした。
【0049】
K値は、生物が死後時間経過とともに体内で他の物質に変化していく物質の変化量を見ることで鮮度を数値化したものである。具体的には、K値=変化後物質B/(変化前物質A+変化後物質B)を100分率で表す。例えば、変化前物質としてはアデノシン三酸やアデニル酸であり、変化後物質はイノシン酸やヒポキサンチンである。刺身の場合は、一般にK値は20%以下であれば鮮度が保持されていると判断され、生食が可能とされる。
【0050】
試験は、開始直後のK値、3時間後のK値、6時間後のK値、24時間後のK値、48時間後のK値を測定し、開始から48時間後の変化に基づいて生物の腐敗の進行などを考慮した計算式に当てはめてK値が20%を超える日にちを算出した。結果、各例におけるK値が20%を超えると判断される日数は、実施例1及び実施例3が、6日後半から7日、比較例1では、5日後半から6日、ラップフィルムのみではほぼ5日であった。
【0051】
実施例1及び実施例3と比較例1との物性値を対比してみると、本発明に係る実施例1及び実施例3では、坪量が低く原料コストを安くできる。そして、鮮度保持機能に関しては市販品よりも良好な結果となった。この結果からすると、本発明によれば、低坪量で安価でありながら優れた鮮度保持機能を有する吸液紙が提供される。