(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779084
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】関心領域における地表面変位の可視化装置及び関心領域における地表面変位の可視化プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20201026BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20201026BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20201026BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20201026BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
G01S13/90 191
G01S13/90 127
G06T1/00 285
G06T7/20
G09B29/00 F
G09B29/10 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-193130(P2016-193130)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54540(P2018-54540A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和男
(72)【発明者】
【氏名】寳楽 裕
(72)【発明者】
【氏名】三五 大輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 佳輝
(72)【発明者】
【氏名】森田 保成
【審査官】
安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−039848(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0289837(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0045513(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/016153(WO,A1)
【文献】
特表2010−522343(JP,A)
【文献】
特開平09−189762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42,
G01S 13/00−13/95,
G06T 1/00, 7/20,
G09B 29/00,29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表面の時系列画像データから変位情報を生成する変位生成手段と、
前記観測対象である地表面から関心領域を抽出する関心領域抽出手段と、
前記関心領域を予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する関心領域分割手段と、
前記変位生成手段が生成した変位情報を、前記関心領域内の分割領域毎に収集する変位情報収集手段と、
前記分割領域毎に収集された変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する代表値演算手段と、
前記分割領域毎に前記代表値を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項2】
前記変位情報に基づき、各分割領域における変位の標準偏差を演算する標準偏差演算手段を更に備え、前記表示手段は、前記標準偏差を、前記代表値とともに、または前記代表値とは別に表示する、請求項1に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項3】
前記変位生成手段は、前記関心領域における変位情報のみを生成する、請求項1または請求項2に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項4】
前記代表値が中央値である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項5】
前記関心領域が、道路または河川堤防である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項6】
前記関心領域分割手段は、前記道路または河川堤防を一定距離で分割する、請求項5に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項7】
前記関心領域が、行政区画である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項8】
前記関心領域分割手段は、前記行政区画を一定面積のメッシュに分割する、請求項7に記載の関心領域における地表面変位の可視化装置。
【請求項9】
コンピュータを、
異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表面の時系列画像データから変位情報を生成する変位生成手段、
前記観測対象である地表面から関心領域を抽出する関心領域抽出手段、
前記関心領域を予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する関心領域分割手段、
前記変位生成手段が生成した変位情報を、前記関心領域内の分割領域毎に収集する変位情報収集手段、
前記分割領域毎に収集された変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する代表値演算手段、
前記分割領域毎に前記代表値を表示する表示手段、
として機能させる、関心領域における地表面変位の可視化プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
更に前記変位情報に基づき、各分割領域における変位の標準偏差を演算する標準偏差演算手段として機能させ、前記表示手段は、前記標準偏差を、前記代表値とともに、または前記代表値とは別に表示する、請求項9に記載の関心領域における地表面変位の可視化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心領域における地表面変位の可視化装置及び関心領域における地表面変位の可視化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(SAR Synthetic Aperture Radar)は、人工衛星等に搭載され、地表面に向けて電波(マイクロ波パルス)を発射し、その反射波を観測して地表面の形状等を測定する。このようなSARによる観測を、地表面の同じ場所に対して2回以上行い、反射波の位相差をとると、地表面の時間的変化(変位)を詳細にとらえることができる(干渉SAR)。
【0003】
上記干渉SARによれば、観測対象の時間的変化(変位)を検出する(下記特許文献1参照)ことができるとともに、取得した上記反射波から相関が低い領域を抽出して低相関領域画像を生成することもできる。このような低相関領域には、地震発生時に地表面に発生した断層による変位、河川、地すべり、液状化、盛土崩壊等が含まれる。これらの場所では、河川を除いて地震等の前後における地表面の状態が大きく変化しているので、反射波間の干渉性が低下するからである(下記非特許文献1参照)。また、河川の場合は、水面の状態が常に変動しているので、元々反射波の干渉性が低く、低相関領域に含まれる。
【0004】
例えば、下記非特許文献2には、干渉SAR画像(干渉縞画像)と3時期コヒーレンス画像(低相関領域画像)とから断層の位置を示そうとしている。
【0005】
なお、下記特許文献2には、SARの時系列画像データを使用した地図情報更新支援装置等が開示され、特許文献3には、SARの時系列画像データを使用した観測対象の変化域を抽出するレーダ画像処理装置等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−3302号公報
【特許文献2】特開2008−39848号公報
【特許文献3】特開2008−46107号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】伊藤陽介・細川直史(2002)干渉SARデータを用いた地震被害度推定モデル,電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌,122,4,617-623)
【非特許文献2】石原光則・夏秋嶺・大木真人・田殿武雄・本岡毅・永井裕人・鈴木新一(2016)地球観測衛星による熊本地震の研究観測対応,日本リモートセンシング学会誌,36,3,204.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、干渉SAR画像(干渉縞画像)の利用を希望する者(特に専門知識のない一般の利用者)が、これを判読することは困難であるので、干渉SARにより得られた地表面の変位、特に関心領域の地表面の変位を、利用者向けにわかりやすく表現する技術が必要である。
【0009】
本発明の目的は、干渉SARにより得られた地表面の変位をわかりやすく表現する関心領域における地表面変位の可視化装置及び関心領域における地表面変位の可視化プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、関心領域における地表面変位の可視化装置であって、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表面の時系列画像データから変位情報を生成する変位生成手段と、前記観測対象である地表面から関心領域を抽出する関心領域抽出手段と、前記関心領域を予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する関心領域分割手段と、前記変位生成手段が生成した変位情報を、前記関心領域内の分割領域毎に収集する変位情報収集手段と、前記分割領域毎に収集された変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する代表値演算手段と、前記分割領域毎に前記代表値を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記変位情報に基づき、各分割領域における変位の標準偏差を演算する標準偏差演算手段を更に備え、前記表示手段は、前記標準偏差を、前記代表値とともに、または前記代表値とは別に表示するのが好適である。
【0012】
また、上記変位生成手段は、前記関心領域における変位情報のみを生成する構成としてもよい。
【0013】
また、上記代表値は中央値であるのが好適である。
【0014】
また、上記関心領域は、道路または河川堤防であるのが好適である。
【0015】
また、上記関心領域分割手段は、前記道路または河川堤防を一定距離で分割するのが好適である。
【0016】
また、上記関心領域は、行政区画であってもよい。
【0017】
また、上記関心領域分割手段は、前記行政区画を一定面積のメッシュに分割する構成としてもよい。
【0018】
また、本発明の他の実施形態は、関心領域における地表面変位の可視化プログラムであって、コンピュータを、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表面の時系列画像データから変位情報を生成する変位生成手段、前記観測対象である地表面から関心領域を抽出する関心領域抽出手段、前記関心領域を予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する関心領域分割手段、前記変位生成手段が生成した変位情報を、前記関心領域内の分割領域毎に収集する変位情報収集手段、前記分割領域毎に収集された変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する代表値演算手段、前記分割領域毎に前記代表値を表示する表示手段、として機能させる。
【0019】
また、上記コンピュータを、更に前記変位情報に基づき、各分割領域における変位の標準偏差を演算する標準偏差演算手段として機能させ、前記表示手段は、前記標準偏差を、前記代表値とともに、または前記代表値とは別に表示するのが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、干渉SARにより得られた地表面の変位をわかりやすく表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態にかかる関心領域における地表面変位の可視化装置を使用した、観測対象である地表面の変位抽出システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施形態にかかる関心領域における地表面変位の可視化装置の例の機能ブロック図である。
【
図3】実施形態にかかる表示制御部が表示装置に表示する関心領域の例を示す図である。
【
図4】実施形態にかかる表示制御部が表示装置に表示する関心領域の他の例を示す図である。
【
図5】実施形態にかかる表示制御部が表示装置に表示する関心領域のさらに他の例を示す図である。
【
図6】道路Rを関心領域とした場合の地表面変位の表示例を示す図である。
【
図7】河川堤防Bを関心領域とした場合の地表面変位の表示例を示す図である。
【
図8】実施形態にかかる関心領域における地表面変位の可視化装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0023】
図1には、実施形態にかかる関心領域における地表面変位の可視化装置を使用した、観測対象である地表面の変位抽出システムの構成例が示される。
図1において、人工衛星101に搭載された合成開口レーダ(SAR)等のレーダ装置により、地表面の所望範囲である観測対象のレーダ画像データを取得し、このレーダ画像データを本実施形態の関心領域における地表面変位の可視化装置102に送信する。関心領域における地表面変位の可視化装置102では、アンテナ103を介して受信したレーダ画像データを処理して観測対象である地表面の変位を解析してその結果を表示する。この場合のレーダ画像データは、異なる時刻にレーダ装置により取得されたレーダ画像データ(以後、時系列画像データという)となっている。また、関心領域における地表面変位の可視化装置102は、例えばコンピュータ上で所定のプログラムを動作させることにより実現することができる。
【0024】
なお、上記人工衛星101の数は1基に限らず、同一の撮影仕様である複数の人工衛星であってもよい。また、上記レーダ装置は、人工衛星101の他、航空機に搭載してもよい。
【0025】
図2には、実施形態にかかる関心領域における地表面変位の可視化装置の例の機能ブロック図が示される。
図2において、関心領域における地表面変位の可視化装置は、レーダ画像データ取得部10、変位生成部12、関心領域抽出部14、関心領域分割部16、変位情報収集部18、代表値演算部20、標準偏差演算部22、表示制御部24、通信部26、記憶部28及びCPU30を含んで構成されている。上記関心領域における地表面変位の可視化装置は、CPU30、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU30とCPU30の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0026】
レーダ画像データ取得部10は、人工衛星101から送信され、アンテナ103により受信された、上記観測対象である地表面のレーダ画像データを取得し、記憶部28に記憶する。この場合のアンテナ103は、本実施形態の通信部26の一部を構成する。また、上記レーダ画像データは、上述したように、異なる時刻、例えば地震等の災害の発生前後に取得されたレーダ画像データ(時系列画像データ)である。このレーダ画像データには、地表面からの反射波の位相の情報が含まれている。
【0027】
変位生成部12は、上記異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象である地表面の時系列画像データを記憶部28から読み出し、異なる時刻における地表面の変位情報を生成する。ここで、異なる時刻とは、上記時系列画像データの取得時刻が異なることをいい、例えば地震等の災害の前後をいう。変位生成部12は、異なる時刻に取得された画像データによりその時刻の間に発生した変位を演算し、変位情報として生成する。地表面の変位情報とは、レーダ装置と地表面との距離の変位に関する情報であり、時系列画像データの内、取得時刻が異なるレーダ画像データ間の位相差に基づいて算出する。変位の算出は、レーダ画像データの画素毎に行う。レーダ画像データと、数値標高モデル(DEM)を用いることにより、各画素が地表面のどの位置であるかを対応付けできるので、算出した変位が地表面のどの位置の変位であるかを把握することができる。変位情報には、当該変位の位置を表す座標情報も含まれる。この変位情報により地表面の変位(地震等の災害による変位、地盤沈下等のその他の影響による変位等)を観測することができる。なお、変位生成部12は、後述する関心領域における変位情報のみを生成する構成としてもよい。変位生成部12が生成した変位情報は、記憶部28に記憶させる。
【0028】
関心領域抽出部14は、観測対象である地表面から関心領域を抽出する。ここで、関心領域とは、利用者が変位の観測を希望する領域であり、例えば道路、河川堤防、行政区画等とすることができるが、これらに限定されない。関心領域抽出部14は、利用者がキーボード、マウス等の適宜な入力手段から入力した、関心領域を指定するための指示情報に基づいて関心領域を抽出する。関心領域抽出部14は、通信部26を介して外部のサーバ等から取得する等の方法により予め記憶部28に記憶された地図情報を読み出し、その地図情報上に抽出した関心領域を設定する。関心領域抽出部14が抽出した関心領域は、記憶部28に記憶させる。なお、利用者が希望の関心領域を指定する際には、表示制御部24が液晶表示装置その他の適宜な表示手段に、記憶部28から読み出した上記地図情報を表示させ、当該画面を介して利用者が指示情報(例えば、地図上の特定の領域を指定する情報)を入力する構成とするのが好適である。
【0029】
関心領域分割部16は、関心領域抽出部14が抽出した関心領域を記憶部28から読み出し、予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する。分割領域としては、関心領域が道路の場合、一定距離で分割した領域が好適である。一定距離としては、使用目的に応じて適宜決定できるが、例えばキロポストの設定距離である100m毎とすることができる。また、関心領域が河川堤防の場合も、一定距離で分割した領域を分割領域とするのが好適である。この場合の一定距離も使用目的に応じて適宜決定できるが、例えばキロポストの設定距離である100m〜500m毎とすることができる。さらに、関心領域が行政区画の場合は、一定の大きさ(面積)のメッシュを分割領域とするのが好適である。メッシュの大きさは使用目的に応じて適宜決定する。なお、分割領域は、以上の例に限定されず、抽出された関心領域毎に適宜設定できる。関心領域の分割の方法は、利用者がキーボード、マウス等の適宜な入力手段から入力した分割指示情報に基づき関心領域分割部16が決定する。上記分割領域及び分割指示情報は、記憶部28に記憶させる。なお、予め関心領域の分割手順を記憶部28に記憶させておき、関心領域分割部16が分割手順を記憶部28から読み出して、関心領域の分割処理を実行する構成としてもよい。
【0030】
変位情報収集部18は、変位生成部12が生成した変位情報並びに関心領域抽出部14が抽出した関心領域及び関心領域分割部16が生成した分割領域を記憶部28から読み出し、関心領域内の分割領域毎に変位情報を収集する。上述した通り、変位情報はレーダ画像データの画素毎に算出されるので、変位情報収集部18も分割領域内の画素毎に変位情報を収集する。また、各画素の変位は、変位情報に含まれる座標情報によりその位置がわかるので、変位情報収集部18は、変位が算出された各画素が関心領域内の画素であるか否か、関心領域内の画素の場合にどの分割領域に所属するものであるかを判断する。なお、変位生成部12が、関心領域における変位情報のみを生成する構成の場合には、変位情報収集部18は、どの分割領域に所属する画素の変位情報であるかを判断すればよい。また、分割領域内の変位情報は、後述する代表値演算部20の演算結果の精度及び信頼性の向上のために、分割領域毎に複数存在するのが好適である。従って、関心領域分割部16が関心領域を分割する際には、分割領域の大きさ(面積)が上記画素より十分大きくなるようにする。変位情報収集部18が分割領域毎に収集した変位情報は、記憶部28に記憶させる。また、代表値演算部20の演算結果の精度及び信頼性は、後述する標準偏差演算部22が演算した標準偏差により表すことができる。
【0031】
代表値演算部20は、変位情報収集部18が分割領域毎に収集した変位情報を記憶部28から読み出し、その変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する。代表値としては、各分割領域の変位を表すことができるものであれば採用できるが、例えば中央値(メディアン)、平均値等が挙げられ、中央値がより好適である。代表値演算部20が演算した代表値は、記憶部28に記憶させる。
【0032】
標準偏差演算部22は、変位情報収集部18が分割領域毎に収集した変位情報を記憶部28から読み出し、その変位情報に基づき、各分割領域における変位の標準偏差を演算する。標準偏差演算部22が演算した標準偏差は、記憶部28に記憶させる。
【0033】
表示制御部24は、代表値演算部20が演算した代表値を記憶部28から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して分割領域毎に代表値を表示する。また、表示制御部24は、標準偏差演算部22が演算した標準偏差を記憶部28から読み出し、上記代表値とともに、または上記代表値とは別に表示する構成とするのが好適である。代表値とともに表示とは、代表値と同じ画面上に表示することをいい、上記代表値とは別に表示とは、代表値とは別の画面に表示することをいう。ここで、代表値及び標準偏差は、その数値を表示してもよいし、数値に対応した色を予め決定しておき、この色で各分割領域を表示してもよい(色分け表示)。これにより、関心領域の地表面の変位を可視化することができる。なお、表示制御部24は、利用者が希望の関心領域を指定する際に、記憶部28から読み出した地図情報も表示させ、この地図上に関心領域を重畳して表示するのが好適である。
【0034】
利用者は、表示制御部24が表示装置に表示した分割領域毎の代表値、または代表値と標準偏差をみることにより、関心領域の地表面の変位と変位の精度及び信頼性を容易に把握することができる。この場合、代表値及び/または標準偏差により各分割領域が色分けされていると、より地表面の変位と変位の精度及び信頼性の把握が容易になる。
【0035】
通信部26は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU30が外部のサーバ等とデータをやり取りするために使用する。また、上述したように、アンテナ103を介してレーダ装置が搭載された人工衛星101とも通信する。
【0036】
記憶部28は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU30の動作プログラム等の、地表面変位の可視化装置が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部28としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部28には、主としてCPU30の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU30が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0037】
図3には、表示制御部24が表示装置に表示する関心領域の例が示される。
図3は、宅地の中を通過する道路Rを関心領域とした例であり、宅地の地図上に関心領域を重畳表示している。
図3において、関心領域である道路Rは、利用者が入力した指示情報に基づき、関心領域抽出部14が抽出したものである。この道路Rは、関心領域分割部16により、例えばキロポストが設置された100m毎に分割され、分割領域が生成されている。
図3の例では、分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5が表示されている。なお、分割領域は5個に限定されるものではない。これらの分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5毎に代表値演算部20が変位の代表値を演算しており、表示制御部24は、代表値に応じて各分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5の表示色を決定して表示する。すなわち、代表値に応じて色分け表示する。例えば、変位の代表値が0mm(変位なし)、+1〜+3mm(隆起)、−1〜−3mm(沈降)等に区分して表示色を決定する。なお、代表値の表示は、色分けではなく数値の表示としてもよい。このように、関心領域の地表面の変位のみを、分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5毎に色分けや数値等で表示することにより、レーダ画像データとして取得された関心領域の地表面の変位を利用者にわかりやすく提供することができる。
【0038】
また、表示制御部24は、標準偏差演算部22が演算した分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5毎の変位の標準偏差も表示するが、上記代表値を色分け表示する場合には、標準偏差は数値とするか、同じ関心領域を別画面に表示しつつ、各分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5を標準偏差に応じて色分け表示してもよい。また、代表値を数値で表示する際には、標準偏差を色分け表示してもよく、代表値と標準偏差を数値で表示してもよい。代表値と標準偏差を両方表示することにより、分割領域D
1、D
2、D
3、D
4、D
5の地表面の変位をより正確に把握できる。
【0039】
図4には、表示制御部24が表示装置に表示する関心領域の他の例が示される。
図4は、河川堤防Bを関心領域とした例であり、河川を表示する地図上に関心領域を重畳表示している。
図4において、関心領域である河川堤防Bも、
図3の場合と同様に、利用者が入力した指示情報に基づき、関心領域抽出部14が抽出したものである。また、関心領域分割部16により、例えばキロポストが設置された100m毎に分割され、分割領域が生成されている。
図4の例では、関心領域Iが矢印の範囲で示されており、両岸の河川堤防Bに分割領域D
1〜D
21が表示されている。なお、分割領域は、河川堤防Bの観測したい範囲を関心領域Iとし、この関心領域Iを分割したものであるので、
図4の数には限定されない。
【0040】
図3の例と同様に、代表値演算部20が演算した変位の代表値に応じて表示制御部24が各分割領域D
1〜D
21の表示色を決定して表示し、あるいは代表値の数値を表示する。また、標準偏差演算部22が演算した分割領域D
1〜D
21毎の変位の標準偏差も
図3と同様に表示する。
【0041】
図4の例では、凡例に示されるように、変位の代表値が−1〜−0mmの場合を黒色で示し、0〜+1mmを白色で示しているが、これには限定されない。また、分割領域D
13、D
14には、代表値の例では中央値がMEDとして示され、標準偏差の値がSTDで示されている。これらの数値は、全ての分割領域D
1〜D
21で示されてもよい。
【0042】
図5には、表示制御部24が表示装置に表示する関心領域のさらに他の例が示される。
図5は、市町村等の行政区画Aを関心領域とした例であり、行政区画を表示する地図が関心領域として表示されている。
図5において、関心領域は、利用者が入力した指示情報に基づき、関心領域抽出部14が抽出した行政区画Aの全部または一部である。また、関心領域である行政区画Aは、関心領域分割部16により、例えば一定の大きさ(面積)のメッシュに分割され、分割領域Dが生成されている。
【0043】
図5の場合も、
図3の例と同様に、代表値演算部20が演算した、各メッシュ(分割領域D)について求めた変位の代表値に応じて表示制御部24が各分割領域Dの表示色を決定して表示し、あるいは代表値の数値を表示する。また、標準偏差演算部22が演算した分割領域D毎の変位の標準偏差も
図3と同様に表示する。
【0044】
図6には、道路Rを関心領域とした場合の地表面の変位の表示例が示される。
図6において、道路Rは宅地地域を通過しており、関心領域抽出部14が道路Rを関心領域として抽出している。抽出された関心領域としての道路Rは、関心領域分割部16により分割され、分割領域毎に表示制御部24が変位の代表値に応じて色分け表示されている。この場合の色分けは、
図6に示された判例の区分に従って行われる。なお、
図6は白黒画像であるので各分割領域の色がわかりにくいが、カラー表示すれば明瞭に認識できる。また、代表値及び標準偏差の値を数値として表示しているので、地表面の変位をより正確に把握できる。
【0045】
図7には、河川堤防Bを関心領域とした場合の地表面の変位の表示例が示される。
図7の例では、関心領域抽出部14が河川堤防Bを関心領域として抽出している。抽出された関心領域としての河川堤防Bは、関心領域分割部16により分割され、分割領域毎に表示制御部24が変位の代表値に応じて色分け表示されている。この場合の色分けは、
図7に示された判例の区分に従って行われる。なお、
図7は白黒画像であるので各分割領域の色がわかりにくいが、カラー表示すれば明瞭に認識できる。また、代表値及び標準偏差の値を数値として表示しているので、地表面の変位をより正確に把握できる。
【0046】
図8には、実施形態にかかる関心領域における地表面の変位の可視化装置の動作例のフローが示される。
図8において、レーダ画像データ取得部10が人工衛星101から送信される、時系列画像データを、アンテナ103を介して取得し、記憶部28に記憶させると(S1)、変位生成部12が、その時系列画像データを記憶部28から読み出し、異なる時刻における地表面の変位情報を生成して記憶部28に記憶させる(S2)。
【0047】
次に、関心領域抽出部14は、利用者が入力した関心領域を指定するための指示情報に基づいて観測対象である地表面から関心領域を抽出して記憶部28に記憶させる(S3)。関心領域分割部16は、関心領域抽出部14が抽出した関心領域を記憶部28から読み出し、予め定めた範囲に分割して分割領域を生成して記憶部28に記憶させる(S4)。
【0048】
変位情報収集部18は、変位生成部12が生成した変位情報並びに関心領域抽出部14が抽出した関心領域及び関心領域分割部16が生成した分割領域を記憶部28から読み出し、関心領域内の分割領域毎に変位情報を収集して記憶部28に記憶させる(S5)。
【0049】
代表値演算部20は、S5で分割領域毎に収集された変位情報を記憶部28から読み出し、その変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算して記憶部28に記憶させる(S6)。また、標準偏差演算部22は、S5で分割領域毎に収集された変位情報を記憶部28から読み出し、その変位情報に基づき、各分割領域における変位の標準偏差を演算して記憶部28に記憶させる(S7)。
【0050】
表示制御部24は、代表値演算部20が演算した代表値を記憶部28から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して分割領域毎に代表値を表示する(S8)。また、表示制御部24は、標準偏差演算部22が演算した標準偏差を記憶部28から読み出し、上記代表値とともに、または上記代表値とは別に表示する(S9)。
【0051】
上述した、
図8の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 レーダ画像データ取得部、12 変位生成部、14 関心領域抽出部、16 関心領域分割部、18 変位情報収集部、20 代表値演算部、22 標準偏差演算部、24 表示制御部、26 通信部、28 記憶部、30 CPU、101 人工衛星、102 地表面変位の可視化装置、103 アンテナ。