(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触子又は前記支持部材の一方にねじ軸が設けられるとともに、前記接触子又は前記支持部材の他方にねじ穴が形成され、前記接触子は、前記ねじ穴への前記ねじ軸の螺合によって前記支持部材に支持され、
更に、前記ねじ軸にはナットが螺合しており、該ナットを前記ねじ穴側に締め付けることにより、前記支持部材に対して前記接触子が固定され、該ナットをねじ穴とは反対側に緩めることにより、前記支持部材に対する前記接触子の固定が解除されて、前記支持部材に対して前記接触子が回転可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工具欠損検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工具の先端に検出子を接触させることによって、当該工具先端部の欠損を検出する接触式の検出装置では、当然のことながら、工具先端部の損傷を避けるべく、検出子の硬度は工具に近い硬度を有するもののこれよりも低い硬度に設定されている。
【0006】
したがって、工具先端部を検出子の被接触面に繰り返して接触させると、接触回数が増えるに従って、工具先端部により被接触面が徐々に削られて、当該被接触面に凹部が形成されるようになる。そして、このように凹部が形成されると、工具先端部の欠損を正確に検出することができなくなるという問題を生じる。
【0007】
このため、工具先端部の欠損を正確に検出することができなくなる程度に被接触面が損傷した検出子は、これを新たなものに交換する必要があるが、上述した従来の工具折損検出装置では、このような検出子の交換が予定されていなかったため、その構造的な面から、当該検出子の交換作業が少なからず困難なものとなっており、このため、当該交換作業に長時間を要するという問題があった。また、検出子自体の費用もある程度高額であり、このため、検出子の交換に要する全体的なコストは、それなりに高額なものとなっていた。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、工具先端部に接触する部材の被接触面を、短時間で新たなものに交換可能であり、また、当該部材の全体的な交換費用を従来に比べて低減可能な工具欠損検出装置及びこれを備えた工作機械の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、
工作機械で使用される除去加工用工具の先端部の欠損を検出する装置であって、
所定位置に保持された前記工具の先端部と対峙する位置に配置される接触子と、
前記接触子を支持する支持部材を有し、該接触子が前記工具の先端部に対して接触する接触位置と、前記工具の先端部から離隔した退避位置との間で、該接触子を移動させる移動機構と、
前記接触子の移動方向において、該接触子が前記工具の先端部に接触した位置を検出する接触位置検出器と、
前記接触子の移動方向における、前記工具先端部に係る接触基準位置と、前記接触位置検出器によって検出された接触位置とを基に、該工具先端部の欠損の有無を判定する欠損判定部とを備えて成り、
前記接触子が、前記移動方向と直交する軸線周りに3つ以上の被接触面を有する多面体から構成されるとともに、該軸線を中心として回転可能、且つ前記各被接触面を前記工具先端部と正対する位置に割出し可能
(位置決め可能)に、前記支持部材によって支持された工具欠損検出装置に係る。
【0010】
この工具欠損検出装置によれば、まず、検出対象である工具先端部と対峙した接触子を、移動機構によって退避位置から接触位置に移動させることにより、この接触子が工具先端部に接触したときの、当該接触子の移動方向における当該接触子の位置(接触位置)が接触位置検出器によって検出される(この動作を検出動作と言う)。ついで、同じく移動機構により、接触子を接触位置から退避位置に復帰させる。
【0011】
そして、接触子の移動方向における当該工具先端部に係る接触基準位置と、前記接触位置検出器によって検出された接触位置とを基に、欠損判定部によって、当該工具先端部の欠損の有無が判定される。この接触基準位置は、欠損の無い正常な工具の先端部に接触子が接触したときに前記接触位置検出器によって検出される接触子の位置であり、当該工具の長さに応じて予め設定される位置である。前記欠損判定部は、この予め設定された接触基準位置と、前記検出動作によって検出された接触位置とを比較し、例えば、接触基準位置と接触位置との差が、予め設定された許容値を越えたとき、工具先端部に欠損があると判定し、一方、差が許容値内にあるときには、工具先端部に欠損が存在しないと判定する。
【0012】
そして、前記検出動作を繰り返して実行、即ち、接触子の被接触面に工具先端部を繰り返して接触させることによって、接触子の被接触面に凹部が形成され、これによって工具先端部の欠損を正確に検出することができなくなった場合、接触子を前記軸線周りに回転させて、損傷のない新たな被接触面を工具先端部と正対する位置に
位置決めし、以後、この新たな被接触面を用いて、前記検出動作を実行する。
【0013】
斯くして、本発明に係る工具欠損検出装置によれば、一の被接触面を繰り返して工具先端部に接触させることにより、当該被接触面に凹部が形成され、これにより、工具先端部の欠損を正確に検出することができなくなった場合には、接触子をその前記軸線周りに回転させるという簡単な作業で、しかも短時間の内に、損傷のない未使用の新たな被接触面を工具先端部と正対する位置に
位置決めすることができる。したがって、被接触面の交換を従来に比べて低コストで行うことができる。
【0014】
また、一つの接触子に3つ以上の被接触面を設けているので、従来に比べて、一つの接触子の使用時間を3倍以上に延ばすことができる。したがって、従来に比べて、接触子自体に要する費用を低減することができる。
【0015】
本発明に係る前記工具欠損検出装置は、前記接触子又は前記支持部材の一方にねじ軸が設けられるとともに、前記接触子又は前記支持部材の他方にねじ穴が形成され、前記接触子は、前記ねじ穴への前記ねじ軸の螺合によって前記支持部材に支持され、
更に、前記ねじ軸にはナットが螺合し、該ナットを前記ねじ穴側に締め付けることにより、前記支持部材に対して前記接触子が固定され、該ナットをねじ穴とは反対側に緩めることにより、前記支持部材に対する前記接触子の固定が解除されて、前記支持部材に対して前記接触子が回転可能となるように構成されていても良い。
【0016】
この構成の工具欠損検出装置によれば、ナットをねじ穴とは反対側に緩めることにより、支持部材に対する接触子の固定が解除されて、当該接触子が回転可能となり、この回転によって、接触子の新たな被接触面を工具先端部と正対する位置に
位置決めし、この後、ナットをねじ穴側に締め付けることによって、接触子が支持部材に固定される。このように、この構成の工具欠損検出装置によれば、ナットによる締め付けやナットを緩めるという簡単な作業によって、損傷のない未使用の新たな被接触面を工具の先端部と正対する位置に
位置決めすることができる。
【0017】
また、本発明に係る前記工具欠損検出装置は、その前記支持部材及び接触子に、該接触子の前記各被接触面がそれぞれ前記工具の先端部と正対する位置に
位置決めされたときに合致する指示マークがそれぞれ付されていても良い。
【0018】
このようにすれば、支持部材及び接触子に設けた指示マークを確認し、これらが合致するように接触子を回転させることで、容易に、損傷のない未使用の新たな被接触面を工具の先端部と正対する位置に
位置決めすることができる。
【0019】
また、本発明は、上述した各態様のいずれかの工具欠損検出装置、並びに工具交換装置を備えた工作機械であって、
前記工具交換装置は、次工具を待機位置で保持する保持部、並びに該保持部に保持された工具と主軸に装着された現工具とを交換する交換機構部を備え、
前記工具欠損検出装置は、前記接触子が、前記保持部に保持された工具の先端部と対峙するように配置されるとともに、前記移動機構が、前記保持部に保持された工具の先端部に対して接触する接触位置と、該工具の先端部から離隔した退避位置との間で、前記接触子を移動させるように構成された工作機械に係る。
【0020】
この工作機械によれば、工具交換装置の待機位置に保持される次工具、即ち、工具交換前の次工具について、その先端部の欠損を工具欠損検出装置によって検出することができる。したがって、先端部が欠損した状態の工具を用いて加工が行われるのを防止することができ、この結果、工具の欠損に起因して加工品が不良になるのを防止することができる。また、工作機械の加工と並行して工具の欠損を検出することができるので、実加工に影響を与えることなく、工具の欠損を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る工具欠損検出装置によれば、一の被接触面を繰り返して工具先端部に接触させることにより、当該被接触面に凹部が形成され、これにより、工具先端部の欠損を正確に検出することができなくなった場合には、接触子をその前記軸線周りに回転させるという簡単な作業で、しかも短時間の内に、損傷のない未使用の新たな被接触面を工具先端部と正対する位置に
位置決めすることができる。したがって、被接触面の交換を従来に比べて低コストで行うことができる。
【0022】
また、一つの接触子に3つ以上の被接触面を設けているので、従来に比べて、一つの接触子の使用時間を3倍以上に延ばすことができる。したがって、従来に比べて、接触子自体に要する費用を低減することができる。
【0023】
また、本発明に係る工作機械によれば、工具交換装置の待機位置に保持される次工具、即ち、工具交換前の次工具について、その先端部の欠損を工具欠損検出装置によって検出することができるので、先端部が欠損した状態の工具を用いて加工が行われるのを防止することができ、こうすることによって、加工品が不良になるのを防止することができる。また、工作機械の加工と並行して工具の欠損を検出することができるので、実加工に影響を与えることなく、工具の欠損を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例の工作機械1は、少なくともX軸方向及びY軸方向に移動可能に設けられた主軸2、主軸2に装着された現工具Tを、待機位置P
3に位置する次工具Tと交換する工具交換装置10、これら主軸2及び工具交換装置10を含む工作機械1の運動機構部等を制御する工作機械制御装置5、並びに、待機位置P
3に位置する前記工具Tについて、その先端部の欠損の有無を検出する工具欠損検出装置30を備えている。
【0026】
上述したように、前記主軸2は、前記X軸方向及びY軸方向に移動可能に設けられており、このX軸方向及びY軸方向に移動することで、
図1に示した工具交換位置P
1に位置決めされる。尚、主軸2の中心軸に並行であり、且つ前記X軸及びY軸の双方に直交する軸はZ軸であり、これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は当該工作機械1の送り軸方向である。そして、この主軸2のX軸、Y軸及びZ軸方向の移動は、前記工作機械制御装置5によって制御される。
【0027】
前記工具交換装置10は、ほぼ四角柱形状をした支持基台11と、この支持基台11の、前記Z軸プラス方向側の側面である前面に配設された交換機構部12と、この交換機構部12よりも前記X軸マイナス方向側に設けられた工具保持部16と、この工具保持部16よりも前記X軸マイナス方向側に設けられた工具マガジン20とを備えている。
【0028】
前記工具マガジン20は、工具Tを保持する多数の工具ポット21を備えており、本例では、この工具ポット21は、例えば、複数のスプロケット(図示せず)に掛け回されたチェーン(図示せず)によって無端環状に連結されており、一のスプロケット(図示せず)を適宜駆動モータ(図示せず)によって回転させることにより、前記工具ポット21及びチェーン(図示せず)が回動して、各工具ポット21が
図1に示した取出位置P
2に位置決めされる。そして、適宜搬送機構(図示せず)により、工具Tは、取出位置P
2に位置する工具ポット21と前記工具保持部16との間で搬送される。
【0029】
前記工具保持部16は、前記取出位置P
2側が開口した正面視U字状をした部材であり、この開口部を通して、工具Tを取出位置P
2側に抜き取るとともに、逆に、取出位置P
2側から差し込み可能に当該工具Tを保持し、また、工具Tを前記Z軸プラス側に抜き取り可能に保持する。尚、この工具保持部16によって工具Tが保持される位置が前記待機位置P
3である。
【0030】
前記交換機構部12は、前記Z軸と平行な中心軸を中心として、矢示A−B方向に回転可能、且つ前記Z軸方向に沿って進退可能に前記支持基台11に支持された交換アーム13と、この交換アーム13をZ軸方向に進退させる進退機構(図示せず)と、駆動モータ15を有し、この駆動モータ15の動力によって交換アーム13を前記矢示A−B方向に回転させる回転機構14とを備える。
【0031】
交換アーム13の両端部には、それぞれ工具Tを保持する保持部13aが設けられており、各保持部13aには、それぞれ前記矢示A方向側に開口部が形成されている。そして、この交換アーム13が後退位置に在るときに、前記回転機構14によって矢示A方向に回転されると、工具保持部16に保持された次工具T、及び前記工具交換位置P
1の前記主軸2に保持された現工具Tが、それぞれ交換アーム13の前記保持部13aに保持される。
【0032】
斯くして、この工具交換装置10によれば、以下のようにして、工具保持部16に保持された次工具Tと、主軸2に保持された現工具Tとが交換される。尚、現工具Tを保持した主軸2は前記工具交換位置P
1に位置し、取出位置P
2に位置決めされた工具ポット21から前記工具保持部16に、次工具Tが搬送されているものとする。また、交換アーム13は後退位置に位置するとともに、その回転方向の位置は、
図1に示した旋回位置(原旋回位置)であるとする。
【0033】
まず、前記回転機構14により前記交換アーム13を矢示A方向に回転させて、工具保持部16に保持された次工具T、及び主軸2に保持された現工具Tを、それぞれ対応する保持部13aに保持させる。
【0034】
ついで、前記進退機構(図示せず)により前記交換アーム13をZ軸プラス方向に前進させて、次工具Tを前記工具保持部16から抜き取るとともに、現工具Tを主軸2から抜き取る。次に、前記回転機構14により、交換アーム13を矢示A方向に180°回転させた後、前記進退機構(図示せず)により交換アーム13をZ軸マイナス方向に後退させる。これにより、交換アーム13に保持された次工具Tが主軸2に装着され、現工具Tが前記工具保持部16によって保持される。
【0035】
この後、回転機構14により交換アーム13を矢示B方向に回転させて、前記原旋回位置に復帰させるとともに、工具保持部16に保持された現工具Tを前記搬送機構(図示せず)によって、取出位置P
2の工具ポット21に搬送する。
【0036】
以上の動作によって、工具保持部16に保持された次工具Tと、主軸2に保持された現工具Tとが交換される。尚、この工具交換装置10の動作も前記工作機械制御装置5によって制御される。
【0037】
図1に示すように、前記工具欠損検出装置30は、移動機構31、接触子60、接触位置検出器50及び欠損判定部55を備えている。
【0038】
前記移動機構31は、支持プレート32、この支持プレート32の両端部にそれぞれ設けられたプーリ33,34、このプーリ33,34に巻回されたタイミングベルト35、前記プーリ33を回転させるサーボモータ36、前記タイミングベルト35に沿って配設されたリニアガイド37、このリニアガイド37に係合しこれに沿って移動するスライダ38、このスライダ38と前記タイミングベルト35とを連結する連結板39及び連結具40、前記スライダ38に取り付けられた支持ボックス44、この支持ボックス44に支持された支持ロッド41、及び前記サーボモータ36の作動を制御する移動機構制御部49などから構成される。尚、支持プレート32、プーリ33,34、タイミングベルト35、リニアガイド37、サーボモータ36、スライダ38、連結板39及び連結具40はカバー体48によって囲まれている(
図2参照)。
【0039】
前記支持プレート32は、前記工具保持部16の上方位置において、その長手方向が前記Z軸に沿って延出するように、前記支持基台11の前記X軸マイナス方向側の側面に取り付けられている。尚、この支持プレート32は、旋回動作を行う前記交換アーム13と干渉しないように、十分上方に配設されている。
【0040】
前記支持プレート32の前記X軸マイナス方向側の側面には、前記プーリ33,34が回転自在に取り付けられ、この支持プレート32の反対側の側面には、前記サーボモータ36が取り付けられている。そして、このサーボモータ36の出力軸(図示せず)が当該支持プレート32を貫通した状態で前記プーリ33に接続され、当該プーリ33を回転させる。したがって、プーリ33が駆動側、プーリ34が従動側となっている。尚、サーボモータ36には、ロータリエンコーダ51が付設されている。
【0041】
上述したように、プーリ33,34には、無端環状のタイミングベルト35が巻回されており、このタイミングベルト35が駆動プーリ33により駆動されて回動する。そして、このタイミングベルト35の下側には、前記リニアガイド37が当該タイミングベルト35と平行になるように配設され、前記支持プレート32に固定されている。
【0042】
また、前記リニアガイド37にはスライダ38が係合しており、このスライダ38には、これから下方に垂下するように、前記支持ボックス44が取り付けられている。また、このリニアガイド37は、前記連結板39及び連結具40を介して、下側の前記タイミングベルト35に連結されている。
【0043】
前記移動機構制御部49は、前記サーボモータ36の作動を制御するもので、前記ロータリエンコーダ51の出力を用いて当該サーボモータ36をフィードバック制御することにより、駆動プーリ33を介して前記タイミングベルト35を回動させ、これに連結された前記支持ボックス44を前記Z軸方向に沿ってそのプラス方向及びマイナス方向に移動させ、当該支持ボックス44のZ軸方向における位置を位置制御する。
【0044】
前記支持ロッド41は、ほぼ垂直に配設され、その上部側が前記支持ボックス44内に位置し、その下部側が支持ボックス44から垂下するように、当該支持ボックス44内に設けられた支持ブロック42によって支持されており、更に、支持ブロック42に設けられたピン43によって、Y−Z軸平面内で矢示C−D方向に揺動可能になっている(
図2参照)。また、前記支持ロッド41の上端部近傍には、前記Z軸方向に沿って、当該支持ロッド41を挟むように相互に対向して設けられた制止板45,46が配設されており、更に、制止板46と支持ロッド41との間には圧縮コイルばね47が設けられている。また、
図3に示すように、支持ロッド41の下端部には、ねじ部41aが形成されている。
【0045】
斯くして、前記支持ロッド41は、圧縮コイルばね47によって矢示C方向に付勢されとともに、制止板45によって、当該矢示C方向への揺動が規制されている。一方、支持ロッド41は、圧縮コイルばね47の付勢力に抗して、矢示D方向には揺動可能であり、当該圧縮コイルばね47の収縮量に応じて矢示D方向に揺動する。
【0046】
前記接触子60は四角柱形状を有するもので、耐摩耗性を有しながらも工具Tの先端部を傷つけないように、当該工具Tの硬度よりも若干低い硬度を有する金属から構成されている。
図3に示すように、この接触子60は、その中心部に、上下に貫通するねじ穴60aが形成されており、このねじ穴60aに前記支持ロッド41のねじ部41aが螺合された状態で、当該支持ロッド41に取り付けられている。
【0047】
また、この支持ロッド41のねじ部41aには、ナット62が螺合されており、このナット62を接触子60側に進むように回すと、当該ナット62が接触子60に締め付けられて、当該接触子60が支持ロッド41に固定される。逆に、ナット62を接触子60から離れる方向に回すことで、ナット62による締結が緩められて、接触子60は支持ロッド41の中心軸回りに回転可能となる。接触子60は前記工具保持部16に保持された工具Tの先端部から前記Z軸に沿ってそのプラス方向に延長させた位置に在り、当該接触子60を前記支持ロッド41の中心軸回りに回転させることで、その4つの外側面(被接触面)をそれぞれ前記工具保持部16に保持された工具Tの先端部に対して正対させることができるようになっている。
【0048】
斯くして、接触子60を支持ロッド41の中心軸回りに回転させることで、その各被接触面をそれぞれ前記工具保持部16に保持された工具Tの先端部に対して正対した状態に位置決めすることができ、この状態でナット62を締め込むことで、正対状態の接触子60を支持ロッド41に固定することができる。
【0049】
また、支持ロッド41には、ねじ部41aのすぐ上に、三角形をした指示マーク66が、その頂部が下を向くように付され、更に、接触子60の各被接触面の中央部上縁には、同じく三角形をした指示マーク65が、その頂部が上を向くように付されている。そして、接触子60の各被接触面は、それぞれの面に付された指示マーク65の頂部と、支持ロッド41に付された指示マーク66の頂部とが上下に一致するように、当該接触子60を回転させることで、それぞれ前記工具保持部16に保持された工具Tの先端部に対して正対した状態に位置決めされる。
【0050】
前記接触位置検出器50は、
図1及び
図2に示すように、前記サーボモータ36に付設された前記ロータリエンコーダ51、前記支持ボックス44内に設けられた近接スイッチ52、及び接触位置を検出する処理を行う接触位置検出部53からなる。
【0051】
前記近接スイッチ52は検出センサであり、前記制止板47の下方に配設されている。この近接スイッチ52は、支持ロッド41が矢示C方向に付勢され、前記制止板45によって制止された状態にあるときには、支持ロッド41は近接スイッチ52の検出領域外にあり、したがって、近接スイッチ52は支持ロッド41を検出しない。一方、支持ロッド41が矢示D方向に揺動し、その上部側が近接スイッチ52に接近して、当該近接スイッチ52の検出領域内に入ると、近接スイッチ52は支持ロッド41を検出して、その検出信号を前記接触位置検出部53に出力する。
【0052】
前記接触位置検出部53は、前記移動機構制御部49から前記Z軸方向における前記接触子60の位置を常時受信しており、前記近接スイッチ52から出力される検出信号を受信すると、そのときの前記接触子60のZ軸方向における位置(接触位置)を認識して、認識された位置データを前記欠損判定部55に送信する。
【0053】
尚、上述した移動機構制御部49は、前記工作機械制御装置5から前記工具交換装置10の動作状況を常時取得しており、取出位置P
2に位置した工具ポット21から次工具Tが工具保持部16に搬送された後、交換アーム13による工具交換が行われる前に、前記サーボモータ36を駆動して、前記支持ボックス44等をZ軸方向に沿って移動させ、
図2に示すように、前記接触子60を退避位置P
4と接触位置P
6との間で移動させる。
【0054】
退避位置P
4はZ軸プラス方向に後退した位置であり、工具Tを保持した前記交換アーム13が旋回動作をしても、交換アーム13及び工具Tが前記支持ボックス44、支持ロッド41及び接触子60等と干渉しない位置である。また、接触位置P
6はZ軸マイナス方向に前進した位置であり、接触子60が前記工具保持部16に保持された工具Tの先端部に接触することにより、支持ロッド41が矢示D方向に揺動して、当該支持ロッド41が前記近接スイッチ52によって検出される位置である。前記接触位置検出部53は、この接触位置P
6を認識して、前記欠損判定部55に送信する。
【0055】
前記移動機構制御部49は、前記ロータリエンコーダ51の出力値から、前記接触子60のZ軸方向における位置を認識している。具体的には、移動機構制御部49は、例えば、工具保持部16に保持された工具Tに対して設定される工具基準位置P
7を原点とした接触子60の位置を認識している。
【0056】
この工具基準位置P
7を原点とした接触子60の位置は、例えば、次のようにして設定される。即ち、まず、工具基準位置P
7からの長さが基準長を有するマスターツールを前記工具保持部16に保持させた状態で、前記接触子60を当該マスターツールの先端部に接触させる。そして、前記移動機構制御部49は、前記近接スイッチ52が前記支持ロッド41を検出したときの前記ロータリエンコーダ51からの出力値を、前記工具基準位置P
7(即ち、原点位置)から前記基準長だけプラスした位置として認識する。
【0057】
また、前記移動機構制御部49は、前記工具保持部16に保持された工具Tの工具長Lに応じて、前記接触子60が当該工具Tの先端部と接触しない手前の位置であるアプローチ位置P
5まで早送りで移動させ、この後、接触位置P
6、即ち、前記近接スイッチ52が検出信号を出力する位置まで、例えば、マイナス方向に距離ΔLだけ移動させる。そして、接触位置P
6まで移動させた後、接触子60を前記退避位置P
4に復帰させる。尚、前記工具保持部16に保持された工具Tの工具長Lは、前記工作機械制御装置5から取得する。
【0058】
前記欠損判定部55は、前記移動機構制御部49と同様に、工作機械制御装置5から工具保持部16に保持された工具Tの工具長Lに係るデータを工作機械制御装置5から取得し、取得した工具長Lを基に、当該工具Tの先端部に前記接触子60が接触したと判断される位置を接触基準位置として設定し、この接触基準位置と、前記接触位置検出部53から送信される接触位置P
6とを基に、当該工具Tの先端部の欠損の有無を判定する。尚、この接触基準位置は、欠損の無い正常な工具Tの先端部に接触子60が接触したときに前記接触位置検出器50によって検出される接触子の位置であり、上記のように、当該工具Tの工具長Lに応じて設定される位置である。
【0059】
欠損の有無を判定する手法には様々なものが考えられるが、本例では、前記欠損判定部55は、工具Tの工具長Lに応じて設定される接触基準位置と、前記接触位置検出部53から送信される接触位置P
6との差が、予め設定された許容値を越えたとき、工具Tの先端部に欠損があると判定し、一方、差が許容値内にあるときには、工具先端部に欠損が存在しないと判定する。そして、工具Tの先端部に欠損があると認められたときは、欠損検出信号を前記工作機械制御装置5に送信する。
【0060】
以上の構成を備えた本例の工作機械1によれば、上述したように、前記工作機械制御装置5による制御の下で、工具交換装置10を駆動することによって、主軸2に装着された現工具Tと工具保持部16に保持された次工具Tとが交換される。
【0061】
そして、主軸2に装着された現工具Tで加工が行われている間に、工具交換の準備動作として、工具マガジン20の取出位置P
2に位置決めされた工具ポット21から次工具Tが工具保持部16に搬送されたとき、この工具保持部16に保持された次工具Tに対して、工具欠損検出装置30により検出動作が実行される。
【0062】
即ち、まず、前記移動機構制御部49による制御の下で、前記サーボモータ36が駆動され、これにより、接触子60が退避位置P
4からアプローチ位置P
5まで早送りで移動し、この後、接触位置P
6、即ち、前記近接スイッチ52が検出信号を出力する位置まで移動した後、退避位置P
4に復帰する。前記アプローチ位置P
5は工具保持部16に保持された工具Tの工具長Lに応じて設定される位置で、前記移動機構制御部49は、前記工作機械制御装置5から当該工具Tの工具長Lに係るデータを取得する。
【0063】
そして、前記接触子60が接触位置P
6に至ると、これが近接スイッチ52によって検出され、この近接スイッチ52からの検出信号を受信した前記接触位置検出部53によって、当該接触位置P
6が認識され、認識された接触位置P
6に係るデータが、前記欠損判定部55に送信される。
【0064】
前記欠損判定部55では、前記工作機械制御装置5から取得される当該工具Tの工具長Lに応じて前記接触基準位置を設定し、この接触基準位置と前記接触位置検出部53から送信される接触位置P
6との差が、予め設定された許容値を越えたとき、当該工具Tの先端部に欠損があると判定し、一方、差が許容値内にあるときには、工具先端部に欠損が存在しないと判定し、更に、工具Tの先端部に欠損があると認められたときは、欠損検出信号を前記工作機械制御装置5に送信する。
【0065】
そして、前記工作機械制御装置5は、欠損判定部55から欠損検出信号を受信すると、アラームを出力して、当該欠損工具の交換を促すとともに、工具交換装置10による工具交換動作を停止させる処理を行う。
【0066】
このように、本例の工作機械1によれば、工具交換装置10が主軸2に装着された現工具Tと工具保持部16に保持された次工具Tとを交換する前に、工具欠損検出装置30によって、当該工具保持部16に保持された次工具Tの先端部の欠損を検出するようにしているので、主軸2に装着された現工具Tを用いた実加工に影響を与えることなく、これと並行して次工具Tの欠損を検出することができる。また、工具交換前の次工具Tについて、その先端部の欠損を検出することができるので、先端部が欠損した状態の工具を用いて加工が行われるのを防止することができ、こうすることによって、加工品が不良になるのを防止することができる。
【0067】
そして、本例の工作機械1では、工具欠損検出装置30による検出動作を繰り返して実行、即ち、接触子60の被接触面に工具Tの先端部を繰り返して接触させることによって、当該被接触面に凹部が形成され、これにより工具T先端部の欠損を正確に検出することができなくなると、前記ナット62を緩めて前記接触子60を回転させ、摩耗のない未使用の被接触面を工具保持部16に保持された工具Tの先端部と正対するように
位置決めし、ついで、ナット62を締め付けて、接触子60を支持ロッド41に対して固定した後、再び、工具欠損検出装置30による検出動作を実行させる。
【0068】
斯くして、本例の工具欠損検出装置30によれば、一の被接触面を繰り返して工具Tの先端部に接触させることにより、当該被接触面に凹部が形成され、これにより、工具Tの先端部の欠損を正確に検出することができなくなった場合には、ナット62を緩めた後、接触子60を支持ロッド41の軸線周りに回転させて、損傷のない未使用の被接触面を工具Tの先端部と正対する位置に
位置決めし、ついで、ナット62を締め付けて接触子60を支持ロッド41に固定するという簡単な作業により、損傷のない未使用の被接触面を工具Tの先端部と正対する位置に
位置決めすることができるので、被接触面の交換を従来に比べて短時間の内に低コストで行うことができる。
【0069】
また、接触子60は四角柱体からなり、その4つの外側面が被接触面となるので、従来に比べて、一つの接触子60の使用時間を4倍に延ばすことができ、したがって、従来に比べて、接触子60自体に要する費用を低減することができる。
【0070】
また、本例の工具欠損検出装置30では、接触子60及び支持ロッド41に、該接触子60の各被接触面がそれぞれ工具Tの先端部と正対する位置に
位置決めされたときに合致する指示マーク65,66がそれぞれ付されているので、
図4に示すように、支持ロッド41に設けた指示マーク66と、接触子60に設けた指示マーク65を確認しながら、これらが合致するように接触子60を回転させることで、容易に、接触子60の被接触面を工具Tの先端部と正対する位置に位置決めすることができる。
【0071】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、上例では、前記接触子60を四角柱体としたが、これに限定されるものではなく、三角柱体や五角柱以上の多面体であっても良い。
【0073】
また、上例では、工具欠損検出装置30は、工具交換装置10の工具保持部16に保持された工具Tの欠損を検出するように配置されているが、このような構成に限られるものではなく、前記工具マガジン20に保持された工具Tの欠損を検出するように構成されていても良い。この場合、前記移動機構31は、前記工具マガジン20内の工具ポット21に保持された工具Tの先端部に正対するように前記接触子60を保持し、この接触子60を、当該工具Tの先端部に接触する接触位置と、これから離隔した退避位置との間で移動させるように構成される。
【0074】
或いは、工具欠損検出装置30を工作機械1とは別に設けても良い。この場合、工具欠損検出部30は、前記工具保持部16に相当する構成を備えているのが好ましい。また、検出対象の工具の基準となる工具長は、適宜、前記移動機構制御部49及び接触位置検出部53に入力される。
【0075】
また、上例では、支持ロッド41にねじ部41aを形成し、接触子60にねじ穴60aを形成したが、これに限られるものではなく、接触子60にねじ軸を形成するとともに、支持ロッド41にねじ穴を形成し、接触子60のねじ軸にナット62を螺合させた状態で、このねじ軸を前記支持ロッド41のねじ穴に螺合させた構成としても良い。
【0076】
また、上例では、工作機械1を横形マシニングセンタとしたが、これに限られるものではなく、立形マシニングセンタの他、横形旋盤や立形旋盤であっても良い。