(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中性リン酸エステル(A1)および前記中性亜リン酸エステル(A2)の合計100質量部に対して、前記中性リン酸エステル(B1)および前記中性亜リン酸エステル(B2)を合計で150質量部以上170質量部以下の量で含むことを特徴とする請求項1または2に記載の時計バンド用潤滑処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換および/または変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
<時計バンド用潤滑処理剤>
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤は、融点が80℃以上の中性リン酸エステル(A1)および/または融点が80℃以上の中性亜リン酸エステル(A2)と、融点が10℃以下であり、1分子中に下記一般式(b1−1)で表される基を2個以上有する中性リン酸エステル(B1)および/または融点が10℃以下であり、下記一般式(b2−1)で表される基を2個以上有する中性亜リン酸エステル(B2)とを含む。
【0017】
式(b1−1)および式(b2−1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0018】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤においては、1種または2種以上の中性リン酸エステル(A1)を用いてもよく、1種または2種以上の中性亜リン酸エステル(A2)を用いてもよく、1種または2種以上の中性リン酸エステル(A1)と、1種または2種以上の中性亜リン酸エステル(A2)とを混合して用いてもよい。また、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤においては、1種または2種以上の中性リン酸エステル(B1)を用いてもよく、1種または2種以上の中性亜リン酸エステル(B2)を用いてもよく、1種または2種以上の中性リン酸エステル(B1)と、1種または2種以上の中性亜リン酸エステル(B2)とを混合して用いてもよい。なお、本明細書において、中性リン酸エステル(A1)および中性亜リン酸エステル(A2)を合わせて、中性(亜)リン酸エステル(A)ともいい、中性リン酸エステル(B1)および中性亜リン酸エステル(B2)を合わせて、中性(亜)リン酸エステル(B)ともいう。
【0019】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤は、室温(20℃)において、固体状の中性(亜)リン酸エステル(A)と液体状の中性(亜)リン酸エステル(B)とを含んでおり、通常ペースト状である。
【0020】
腕時計の時計バンドに用いられる中留は、通常イオンプレーティング法、スパッタリング法などによって製造されるため、製造された中留の表面は非常に清浄である。このため、摩擦力が大きすぎて係止部の係止およびその解除ができないことがある。したがって、腕時計の装着および取り外しができないことがある。
【0021】
そこで、製造された中留に対して潤滑組成物を付着させる処理が行われている。潤滑組成物として、たとえば炭化水素および/またはエーテルと、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルと、パラフィンとを含む潤滑組成物が使用されている。この処理により、係止部が機能できるようになる。
【0022】
係止部は、中留の表に露出している部分、すなわち時計の取り外し時において視認できる部分にある。係止部を潤滑処理するためには、ここに上記潤滑組成物を付着させ、余分な潤滑組成物をふき取り、しみの発生を食い止めようとしていた。しかしながら、付着させた潤滑組成物は十分乾燥しがたく、時間の経過により流れ出し、係止部周囲に広がることがある。また、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルが分離して、係止部周囲に広がることがある。また、金属表面に付着した上記潤滑組成物は時間の経過によりしみ状に視認されやすくなる。したがって、係止部およびその周囲にしみが発生することがある。時計の製造工程においても、しみが発生すると、ふき取り作業が行われていた。
【0023】
これに対して、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤では、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)は、いずれも潤滑性に優れるため、製造された中留に付着させると、係止部が機能できるようになる。特に、中性(亜)リン酸エステル(B)は、1分子中に上記式(b1−1)で表される基を2個以上有するか、または1分子中に上記式(b2−1)で表される基を2個以上有するため、すなわちバイファンクショナルであるため、潤滑性により優れる。
【0024】
また、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤を用いると、中留の係止部を長期間潤滑できる。これは、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤が通常ペースト状であるため、付着させた場所に留まりやすいことによる。特に、バイファンクショナルの中性(亜)リン酸エステル(B)は、金属表面に吸着しやすく、付着させた場所により留まりやすい。
【0025】
さらに、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤を用いると、時間が経過してもしみ状に見えにくい。これは、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を用いることで、安定したペーストが形成されているためと考えられる。このように、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤は、中留の係止部など、視認されやすい部分に好適に用いられる。
【0026】
中性(亜)リン酸エステル(A)は、融点が80℃以上である。融点がこの範囲にあると、安定したペーストが形成できる。すなわち、中留の係止部に付着させたときに、成分が分離して流れ出すことを抑制できる。
【0027】
このような中性(亜)リン酸エステル(A)のうち、中性リン酸エステル(A1)としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマーが挙げられる。また、中性亜リン酸エステル(A2)としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーが挙げられる。
【0028】
中性(亜)リン酸エステル(B)は、融点が10℃以下である。融点がこの範囲にあると、中性(亜)リン酸エステル(A)とともに安定したペーストが形成できる。すなわち、中留の係止部に付着させたときに、成分が分離して流れ出すことを抑制できる。
【0029】
上記中性(亜)リン酸エステル(B)のうち、中性リン酸エステル(B1)としては、下記一般式(b1)で表される中性リン酸エステル(b1)が好適に用いられる。中性リン酸エステル(b1)によれば、中留の係止部を長期間潤滑でき、また、しみの発生を抑制できる。
【0031】
式(b1)中、R
b11〜R
b14は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。
【0032】
炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0033】
R
b15〜R
b18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0034】
炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0035】
中性リン酸エステル(b1)は、R
b15〜R
b18に特定の置換基を有しているため、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤の膜を強固にでき、潤滑性を向上できる。
【0036】
特に、R
b15およびR
b17が炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖状のアルキル基であり、R
b16およびR
b18が炭素原子数3〜6、好ましくは3〜4の分枝状のアルキル基であると、潤滑性をより向上できる。
【0037】
R
b191およびR
b192は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0038】
炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0039】
ただし、R
b191およびR
b192の炭素原子数の合計は、1〜5である。したがって、たとえばR
b191が水素原子のときは、R
b192は炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b191がメチル基のときは、R
b192は炭素原子数1〜4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b191がエチル基のときは、R
b192は炭素原子数2〜3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。
【0040】
特に、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤の膜がより強固になるため、R
b191が水素原子であり、R
b192が炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることがより好ましい。
【0041】
また、上記中性(亜)リン酸エステル(B)のうち、中性亜リン酸エステル(B2)としては、下記一般式(b2)で表される中性亜リン酸エステル(b2)が好適に用いられる。中性亜リン酸エステル(b2)によれば、中留の係止部を長期間潤滑でき、また、しみの発生を抑制できる。
【0043】
式(b2)中、R
b21〜R
b24は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。
【0044】
炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0045】
R
b25〜R
b28は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0046】
炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0047】
中性亜リン酸エステル(b2)は、R
b25〜R
b28に特定の置換基を有しているため、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤の膜を強固にでき、潤滑性を向上できる。
【0048】
特に、R
b25およびR
b27が炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖状のアルキル基であり、R
b26およびR
b28が炭素原子数3〜6、好ましくは3〜4の分枝状のアルキル基であると、潤滑性をより向上できる。
【0049】
R
b291およびR
b292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0050】
炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0051】
ただし、R
b291およびR
b292の炭素原子数の合計は、1〜5である。したがって、たとえばR
b291が水素原子のときは、R
b292は炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b291がメチル基のときは、R
b292は炭素原子数1〜4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b291がエチル基のときは、R
b292は炭素原子数2〜3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。
【0052】
特に、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤の膜がより強固になるため、R
b291が水素原子であり、R
b292が炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることがより好ましい。
【0053】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤に使用する場合に構造安定性がより高いと考えられるため、中性亜リン酸エステル(A2)および中性亜リン酸エステル(B2)がさらに好適に用いられる。
【0054】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤は、中性リン酸エステル(A1)および中性亜リン酸エステル(A2)の合計100質量部に対して、中性リン酸エステル(B1)および中性亜リン酸エステル(B2)を合計で100質量部以上200質量部以下の量で含み、150質量部以上170質量部以下の量で含むことが好ましい。各成分をこの量で用いると、固体状の中性(亜)リン酸エステル(A)と液体状の中性(亜)リン酸エステル(B)とを安定した状態で含むペーストとなる。融点が80℃以上の中性(亜)リン酸エステル(A)をこの量で用いると、高温(たとえば40℃以上)で放置してもペースト状態を保つことができ、流れ出しにくい。また、このような時計バンド用潤滑処理剤は、塗布しやすく、扱いやすい。一方、中性(亜)リン酸エステル(A)の量が多すぎると、中性(亜)リン酸エステル(B)と混合してもボロボロとして、ペーストが調製できず、係止部に塗布できない場合がある。また、中性(亜)リン酸エステル(B)の量が多すぎると、係止部に塗布する際に大きく広がって、余分な処理剤をふき取りきれない場合があり、後々係止部にしみが発生し得る。
【0055】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤は、通常ペースト状であり、以下の特性を有する。
25℃で、ステンレス板上の円(直径2mm)の中に、0.03gの量の時計バンド用潤滑処理剤を塗り、該ステンレス板を垂直に立てる。通常、垂直のまま5分間保持しても、塗布した時計バンド用潤滑処理剤は上記円の中に留まる。特に、中性(亜)リン酸エステル(A)の合計100質量部に対して、中性(亜)リン酸エステル(B)を合計で150質量部以上170質量部以下の量で含むと、通常、垂直のまま30分間保持しても、塗布した時計バンド用潤滑処理剤は上記円の中に留まる。上記特性がこの範囲にあると、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤によって中留の係止部を長期間潤滑でき、また、しみの発生を抑制できる。
【0056】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤は、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を含むが、溶媒を含まないことが好ましく、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)のみを含んでいてもよい。この場合は、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤が潤滑に必要な成分のみを含むため、中留の係止部をより長期間潤滑でき、また、しみの発生をより抑制できる。なお、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。なお、他の成分が含まれる場合は、たとえば中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)の合計100質量部に対して3質量部以下の量で含まれる。
【0057】
実施形態の時計バンド用潤滑処理剤の調製方法としては、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を含む組成物が得られる限り特に限定されない。たとえば、メノウ乳鉢に、固体状の中性(亜)リン酸エステル(A)および液体状の中性(亜)リン酸エステル(B)を入れて混合すると、ペースト状である実施形態の時計バンド用潤滑処理剤が調製できる。通常混合するにつれて白くなり、ペースト状になる。なお、3本ロールミルなどによって混合してもよい。時計バンド用潤滑処理剤の調製においては、該処理剤中での中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)の量比は、上述したバンド用潤滑処理剤における好ましい範囲となるようにすることが望ましい。
【0058】
<時計バンドおよび時計>
実施形態の時計バンドは、金属製の中留を有する。まず、中留の構造について、図を用いてより具体的に説明する。
図1は、中留の斜視図である。
図2は、中留の分解状態の斜視図である。
【0059】
図1に示すように、中留6は、金属製であって、6時側バンド1と12時側バンド2とに連結されている。なお、6時側バンド1および12時側バンド2には、最終的には時計本体が連結され、腕時計となる。中留6は、中折れ部材5と、中留本体6aとから構成されている。中折れ部材5は、中板3とこの中板3の端部に回動可能に連結された枠状の外板4とから構成されている。中板3の表側には係合爪9が植設してある。この係合爪9は軸部9aの端部に傘部9bが形成されている。
【0060】
図1、
図2に示すように、中留本体6aは、中留枠16と、プッシュボタン保持部材17と、スライド板18と、プッシュボタン19、20とから構成されている。
【0061】
また、スライド板18は、板本体35を備えており、この板本体35には開口部36が形成してある。この開口部36の両側縁部にはバンド長手方向に、係合歯部を構成する複数のラチェット歯37が形成してある。この場合、ラチェット歯37は、その係止側部37aを12時側バンド2側に向けて形成してある。プッシュボタン19、20は、ボタン本体38を有しており、このボタン本体38の先部の一側には切欠き部39が形成してある。この切欠き部39の先側に円弧形状の係合部40が形成してあり、切欠き部39の元側には係合突起41が形成してある。プッシュボタン19、20は、プッシュボタン保持部材17に係止され、スライド板18は、中留枠16とプッシュボタン保持部材17との間に係止される。係止部は、軸部9aおよび傘部9bを有する係合爪9と、係合部40とから構成される。
【0062】
次に、潤滑処理工程を経た中留6を有する時計の装着操作および取り外し操作(いいかえると係止部の係止操作およびその解除操作)について説明する。装着操作では、時計に手首を通した後に、中板3を外板4側に折り畳んで、中板3に設けた係合爪9を係合部40に係合する。具体的には、係合部40に軸部9aが係止する。このようにして、時計バンドを手首に装着する。一方、取り外し操作では、プッシュボタン19、20のボタン本体38を両側から押して、係合部40を押し広げて係合爪9の係合を解除し、中板3を外に開き、手首を抜く。
【0063】
実施形態の時計バンドでは、この中留6に、具体的には係止部に実施形態の時計バンド用潤滑処理剤が付着している。より具体的には、軸部9aおよび傘部9bを有する係合爪9、特に傘部9bに実施形態の時計バンド用潤滑処理剤が付着している。ここで、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)が付着していることは、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)などによって確認できる。なお、実施形態の時計バンドが有する中留は、係止部を有していればよく、上述した構造を有する中留6に限らない。さらに、係止部は、手首に腕時計を装着できればよく、上述した構造の係止部に限らない。
【0064】
また、実施形態の時計は、上記時計バンドを有する。このような時計バンドおよび時計においては、中留の係止部を長期間潤滑でき、また、しみの発生を抑制できる。なお、上記時計バンドおよび時計は、たとえば後述の時計の製造方法により製造できる。
【0065】
<時計の製造方法>
実施形態の時計の製造方法は、時計バンドの中留に、時計バンド用潤滑処理剤を付着させる時計バンドの潤滑処理工程と、上記潤滑処理工程で処理された時計バンドを用いて時計を組み立てる時計の組み立て工程とを含む。これにより、中留に、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)が付着している時計が得られる。このような時計は、中留の潤滑性に優れ、中留でのしみの発生が抑えられる。
【0066】
(潤滑処理工程)
潤滑処理工程では、通常イオンプレーティング法、スパッタリング法などによって製造され、表面が非常に清浄な中留であって、上述した構造を有する中留6を用いる。この中留6は、摩擦力が大きすぎて係止部が機能していない状態にある。
【0067】
潤滑処理工程では、中留6(具体的には係止部、すなわち軸部9aおよび傘部9bを有する係合爪9(特に傘部9b)ならびに係合部40)に、上述した時計バンド用潤滑処理剤を付着させる。具体的には、傘部9bに、楊枝または綿棒で白くなる程度に時計バンド用潤滑処理剤を塗りつける。係止部の係止操作およびその解除操作を数回繰り返して、傘部9bに圧力をかけ、傘部9b表面に、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を付着させる。係止部の係止操作およびその解除操作の繰り返しによって、係合部40にも中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を付着させる。次いで、余分に付着した時計バンド用潤滑処理剤をふき取る。このようにして、傘部9bおよび係合部40の表面を処理することができ、傘部9bおよび係合部40の表面に中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)の膜が形成される。
【0068】
あるいは、楊枝または綿棒で白くなる程度に時計バンド用潤滑処理剤を塗りつけた傘部9bを、ヒーターに向け80℃以上に加温する。時計バンド用潤滑処理剤が透明になったら加温を終了する。室温にした後、白くなった、余分に付着した時計バンド用潤滑処理剤をふき取る。次いで、係止部の係止操作およびその解除操作の繰り返しによって、係合部40にも中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を付着させる。このようにして、傘部9bおよび係合部40の表面を処理することができ、傘部9bおよび係合部40の表面に中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)の膜が形成される。
【0069】
この潤滑処理工程によって、上述した時計の装着操作および取り外し操作(いいかえると係止部の係止操作およびその解除操作)が可能になる。すなわち、係止部が機能を発揮できるようになる。また、この潤滑処理工程によれば、しみの発生が抑えられる。なお、従来の潤滑組成物(たとえば炭化水素および/またはエーテルと、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルと、パラフィンとを含む潤滑組成物)では、潤滑組成物中で中留6をボイリングして潤滑処理を行う必要があった。これに対して、実施形態の時計バンド用潤滑処理剤によれば、係止部の係止操作およびその解除操作の繰り返し、またはヒーターに向けた加温のように、簡便な工程で潤滑処理が行える。
【0070】
(組み立て工程)
組み立て工程では、上記潤滑処理工程で処理された上記中留6を用いて時計を組み立てる。具体的には、公知の部品を用いて公知の方法で行うことができる。
【0071】
実施形態の時計の製造方法に用いる中留は、係止部を有していればよく、上述した構造を有する中留6に限らない。さらに、係止部は、手首に腕時計を装着できればよく、上述した構造の係止部に限らない。また、潤滑処理工程後、組み立て工程において、6時側バンド1および12時側バンド2と中留6とを組み立ててもよい。
【0073】
[1] 融点が80℃以上の中性リン酸エステル(A1)および/または融点が80℃以上の中性亜リン酸エステル(A2)と、融点が10℃以下であり、1分子中に下記一般式(b1−1)で表される基を2個以上有する中性リン酸エステル(B1)および/または融点が10℃以下であり、下記一般式(b2−1)で表される基を2個以上有する中性亜リン酸エステル(B2)とを含み、上記中性リン酸エステル(A1)および上記中性亜リン酸エステル(A2)の合計100質量部に対して、上記中性リン酸エステル(B1)および上記中性亜リン酸エステル(B2)を合計で100質量部以上200質量部以下の量で含むことを特徴とする時計バンド用潤滑処理剤。
【0076】
(式(b1−1)および式(b2−1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0077】
上記[1]に記載の時計バンド用潤滑処理剤によれば、中留の潤滑性を向上できるとともに、しみの発生を抑えられる。
【0078】
[2] 上記中性リン酸エステル(B1)が、下記一般式(b1)で表され、上記中性亜リン酸エステル(B2)が、下記一般式(b2)で表されることを特徴とする[1]に記載の時計バンド用潤滑処理剤。
【0080】
(式(b1)中、R
b11〜R
b14は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b15〜R
b18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b191およびR
b192は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b191およびR
b192の炭素原子数の合計は、1〜5である。)
【0082】
(式(b2)中、R
b21〜R
b24は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b25〜R
b28は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292の炭素原子数の合計は、1〜5である。)
【0083】
上記[2]に記載の時計バンド用潤滑処理剤は安定性により優れるため、中留の潤滑性をより向上できるとともに、しみの発生をより抑えられる。
【0084】
[3] 上記中性リン酸エステル(A1)および上記中性亜リン酸エステル(A2)の合計100質量部に対して、上記中性リン酸エステル(B1)および上記中性亜リン酸エステル(B2)を合計で150質量部以上170質量部以下の量で含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の時計バンド用潤滑処理剤。
【0085】
上記[3]に記載の時計バンド用潤滑処理剤は安定性にさらに優れるため、中留の潤滑性をさらに向上できるとともに、しみの発生をさらに抑えられる。
【0086】
[4] 上記式(b1)中、R
b15およびR
b17が、それぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖状のアルキル基であり、R
b16およびR
b18が、それぞれ独立に炭素原子数3〜6の分枝状のアルキル基であり、R
b191が水素原子であり、かつ、R
b192が炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、上記式(b2)中、R
b25およびR
b27が、それぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖状のアルキル基であり、R
b26およびR
b28が、それぞれ独立に炭素原子数3〜6の分枝状のアルキル基であり、R
b291が水素原子であり、かつ、R
b292が炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることを特徴とする[2]または[3]に記載の時計バンド用潤滑処理剤。
【0087】
上記[4]に記載の時計バンド用潤滑処理剤によれば、強固な潤滑膜を形成できるため、中留の潤滑性をさらに向上できる。
【0088】
[5] 中留を有する時計バンドであって、上記中留に[1]〜[4]のいずれかに記載の時計バンド用潤滑処理剤が付着していることを特徴とする時計バンド。
【0089】
[6] [5]に記載の時計バンドを有する時計。
【0090】
上記[5]に記載の時計バンドおよび上記[6]に記載の時計は、中留の潤滑性に優れるとともに、しみの発生が抑えられる。
【0091】
[7] 時計バンドの中留に、時計バンド用潤滑処理剤を付着させる時計バンドの潤滑処理工程と、上記潤滑処理工程で処理された時計バンドを用いて時計を組み立てる時計の組み立て工程とを含み、上記時計バンド用潤滑処理剤が、融点が80℃以上の中性リン酸エステル(A1)および/または融点が80℃以上の中性亜リン酸エステル(A2)と、融点が10℃以下であり、1分子中に下記一般式(b1−1)で表される基を2個以上有する中性リン酸エステル(B1)および/または融点が10℃以下であり、下記一般式(b2−1)で表される基を2個以上有する中性亜リン酸エステル(B2)とを含み、上記中性リン酸エステル(A1)および上記中性亜リン酸エステル(A2)の合計100質量部に対して、上記中性リン酸エステル(B1)および上記中性亜リン酸エステル(B2)を合計で100質量部以上200質量部以下の量で含むことを特徴とする時計の製造方法。
【0094】
(式(b1−1)および式(b2−1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0095】
上記[7]に記載の時計の製造方法によれば、中留の潤滑性に優れるとともに、しみの発生が抑えられた時計が得られる。
【0096】
[8] 上記中性リン酸エステル(B1)が、下記一般式(b1)で表され、上記中性亜リン酸エステル(B2)が、下記一般式(b2)で表されることを特徴とする[7]に記載の時計の製造方法。
【0098】
(式(b1)中、R
b11〜R
b14は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b15〜R
b18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b191およびR
b192は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b191およびR
b192の炭素原子数の合計は、1〜5である。)
【0100】
(式(b2)中、R
b21〜R
b24は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b25〜R
b28は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292の炭素原子数の合計は、1〜5である。)
【0101】
上記[8]に記載の時計の製造方法によれば、中留の潤滑性により優れるとともに、しみの発生がより抑えられた時計が得られる。
【0102】
[実施例]
[実施例1−1]
中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(融点181〜184℃)を100質量部と、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を150質量部とを、メノウ乳鉢に入れて混合し、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0103】
[実施例1−2]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を100質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0104】
[実施例1−3]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を130質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0105】
[実施例1−4]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を170質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0106】
[実施例1−5]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を200質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0107】
[実施例1−6]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)(R
b21〜R
b24=トリデシル基、R
b25、R
b27=メチル基、R
b26、R
b28=t−ブチル基、R
b291=水素原子、R
b292=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0108】
[実施例1−7]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を100質量部用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0109】
[実施例1−8]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を130質量部用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0110】
[実施例1−9]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を170質量部用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0111】
[実施例1−10]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を200質量部用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0112】
[実施例1−11]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部の代わりに、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を75質量部、および中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を75質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0113】
[実施例1−12]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部の代わりに、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を85質量部、および中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を85質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0114】
[実施例1−13]
中性リン酸エステル(A1)として、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマー(融点約202℃)を100質量部と、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部とを、メノウ乳鉢に入れて混合し、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0115】
[実施例1−14]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を100質量部用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0116】
[実施例1−15]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を130質量部用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0117】
[実施例1−16]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を170質量部用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0118】
[実施例1−17]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を200質量部用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0119】
[実施例1−18]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0120】
[実施例1−19]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を100質量部用いた他は、実施例1−18と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0121】
[実施例1−20]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を130質量部用いた他は、実施例1−18と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0122】
[実施例1−21]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を170質量部用いた他は、実施例1−18と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0123】
[実施例1−22]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を200質量部用いた他は、実施例1−18と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0124】
[実施例1−23]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部の代わりに、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を75質量部、および中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を75質量部用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0125】
[実施例1−24]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部の代わりに、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を85質量部、および中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を85質量部用いた他は、実施例1−13と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0126】
[実施例1−25]
中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを100質量部の代わりに、中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを50質量部、および水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマーを50質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0127】
[実施例1−26]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を用いた他は、実施例1−25と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0128】
[実施例1−27]
中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを100質量部の代わりに、中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを50質量部、および水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマーを50質量部用い;中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部の代わりに、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を75質量部、および中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を75質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0129】
[実施例1−28]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=デシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0130】
[実施例1−29]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=ヘキサデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0131】
[実施例1−30]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=n−プロピル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0132】
[実施例1−31]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=イソプロピル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0133】
[実施例1−32]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−ペンチル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0134】
[実施例1−33]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=エチル基、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0135】
[実施例1−34]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=デシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0136】
[実施例1−35]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=ヘキサデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0137】
[実施例1−36]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=n−プロピル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0138】
[実施例1−37]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=イソプロピル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0139】
[実施例1−38]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−ペンチル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0140】
[実施例1−39]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=エチル基、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例1−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0141】
[実施例2−1〜2−12]
実施例2−1〜2−12では、中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに、中性亜リン酸エステル(A2)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(融点185℃)を用いた他は、実施例1−1〜1−12とそれぞれ同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0142】
[実施例2−13〜2−24]
実施例2−13〜2−24では、中性リン酸エステル(A1)として、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマーの代わりに、中性亜リン酸エステル(A2)として、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマー(融点202℃)を用いた他は、実施例1−13〜1−24とそれぞれ同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0143】
[実施例2−25]
中性亜リン酸エステル(A2)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを100質量部の代わりに、中性亜リン酸エステル(A2)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを50質量部、および水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーを50質量部用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0144】
[実施例2−26]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を用いた他は、実施例2−25と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0145】
[実施例2−27]
中性亜リン酸エステル(A2)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを100質量部の代わりに、中性亜リン酸エステル(A2)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを50質量部、および水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーを50質量部用い;中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を150質量部の代わりに、中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を75質量部、および中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)を75質量部用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0146】
[実施例2−28]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=デシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0147】
[実施例2−29]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=ヘキサデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0148】
[実施例2−30]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=n−プロピル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0149】
[実施例2−31]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=イソプロピル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0150】
[実施例2−32]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−ペンチル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0151】
[実施例2−33]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)の代わりに、中性リン酸エステル(b1)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=エチル基、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0152】
[実施例2−34]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=デシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0153】
[実施例2−35]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=ヘキサデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0154】
[実施例2−36]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=n−プロピル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0155】
[実施例2−37]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=イソプロピル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0156】
[実施例2−38]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−ペンチル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0157】
[実施例2−39]
中性亜リン酸エステル(B2)(中性亜リン酸エステル(b2))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスファイト)の代わりに、中性亜リン酸エステル(b2)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=エチル基、R
b192=n−プロピル基)(融点10℃以下)を用いた他は、実施例2−6と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0158】
[比較例1]
中性リン酸エステル(A1)として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに、トリステアリルフォスファイト(融点42℃)を用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0159】
[比較例2]
中性リン酸エステル(B1)(中性リン酸エステル(b1))として、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシルフォスフェート)を250質量部用いた他は、実施例1−1と同様にして、ペースト状の時計バンド用潤滑処理剤を得た。
【0160】
<評価方法および評価結果>
調製した時計バンド用潤滑処理剤を用いて、
図1および
図2に示す中留6の係止部を処理した(潤滑処理工程)。この中留6は、製造されたままであり、係止部が機能していなかった。具体的には、傘部9bに、綿棒で白くなる程度に時計バンド用潤滑処理剤を塗りつけた。係止部の係止操作およびその解除操作を数回繰り返して、傘部9bに圧力をかけ、傘部9b表面に、中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を付着させた。係止部の係止操作およびその解除操作の繰り返しによって、係合部40にも中性(亜)リン酸エステル(A)および中性(亜)リン酸エステル(B)を付着させた。次いで、余分に付着した時計バンド用潤滑処理剤をふき取った。このようにして、傘部9bおよび係合部40の表面を処理した。この処理によって、係止部が機能するようになった。なお、上記処理後において、実施例の時計バンド用潤滑処理剤を用いた係止部では、いずれも、しみは発生していなかった。
【0161】
潤滑処理工程を経た中留6について、係止部の係止操作およびその解除操作を1000回繰り返した(係止/解除操作繰り返し試験)。係止/解除操作繰り返し試験後の係止部の潤滑性、すなわち係止/解除操作がスムーズに行えるかを調べた。また、係止部にしみは発生していないかを調べた。結果を以下の評価基準で評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
潤滑性 A:係止/解除操作がスムーズに行えた
B:係止/解除操作がスムーズに行えなかった
しみの発生 A:しみは発生していなかった
B:しみが発生していた
【0162】
また、潤滑処理工程を経た中留6に対して、温度80℃で1時間加温試験を行った。加温試験後の係止部の潤滑性、すなわち係止/解除操作がスムーズに行えるかを調べた。また、係止部にしみは発生していないかを調べた。結果を以下の評価基準で評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
潤滑性 A:係止/解除操作がスムーズに行えた
B:係止/解除操作がスムーズに行えなかった
しみの発生 A:しみは発生していなかった
B:しみが発生していた
【0163】
さらに、実施例の時計バンド用潤滑処理剤について、以下の特性を調べた。25℃で、ステンレス板上の円(直径2mm)の中に、0.03gの量の時計バンド用潤滑処理剤を塗り、該ステンレス板を垂直に立てた。垂直のまま5分間および30分間保持した場合に、塗布した時計バンド用潤滑処理剤が変化したかを観察した。
【0164】
中性(亜)リン酸エステル(A)の合計100質量部に対して、中性(亜)リン酸エステル(B)を合計で100質量部、130質量部および200質量部の量で含む時計バンド用潤滑処理剤については、5分間保持後では、塗布した時計バンド用潤滑処理剤は上記円の中に留まっていた。しかし、30分間保持後では、塗布した時計バンド用潤滑処理剤は上記円の中から外へ広がっていた。一方、中性(亜)リン酸エステル(A)の合計100質量部に対して、中性(亜)リン酸エステル(B)を合計で150質量部、および170質量部の量で含む時計バンド用潤滑処理剤については、5分間保持後および30分間保持後ともに、塗布した時計バンド用潤滑処理剤は上記円の中に留まっていた。