(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779209
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】電子部品を有するキャリアのオーバーモールド制御用の金型、成形装置および方法ならびに成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/38 20060101AFI20201026BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20201026BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
B29C45/38 E
B29C45/27
B29C45/02
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-531553(P2017-531553)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公表番号】特表2017-537821(P2017-537821A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】NL2015050854
(87)【国際公開番号】WO2016099256
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】2013978
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】513099670
【氏名又は名称】ベシ ネーデルランズ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】BESI NETHERLANDS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】ベンローイ,ヨハネス ランベルトゥス ヘラルダス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドリール,アルベルトゥス フランシスクス ヘラルダス
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−201220(JP,A)
【文献】
特開2000−299335(JP,A)
【文献】
特開2012−192532(JP,A)
【文献】
特許第2977889(JP,B2)
【文献】
特表2008−539583(JP,A)
【文献】
特開平05−304180(JP,A)
【文献】
特開2010−149423(JP,A)
【文献】
特開平07−074193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する金型であって、
−前記金型は、少なくとも2つの金型部品を備え、そのうちの少なくとも1つの第1の金型部品は、キャリアに配置された電子部品を封止するための接触面側に凹設された少なくとも1つの金型キャビティ、および前記キャリアとの媒体密封接続によって前記金型キャビティを少なくとも部分的に囲む接触面、を備えており、
−前記金型はさらに、前記第1の金型部品の前記接触面に凹設された成形材料用の供給路を備え、
前記第1の金型部品は、
前記供給路内を通過する成形材料の量を調整するために前記供給路に設けられて前記接触面に実質的に垂直な方向に変位可能なバリア要素、
前記金型キャビティ、前記供給路および前記バリア要素を覆う箔層を設ける箔ハンドリング機構、および
前記金型キャビティおよび前記供給路とこれらを覆って設けられた箔層との間にガスを吹き付けるためのガス出口部、を備え、
前記接触面を前記キャリアに媒体密封接続させた状態で、前記箔層に覆われた前記供給路を介して液状の成形材料を前記箔層に覆われた前記金型キャビティ内に供給し、前記成形材料が少なくとも部分的に硬化され成形された前記キャリアを前記第1の金型部品から取り出すときに、
前記バリア要素は、前記箔層を介して、前記供給路において少なくとも部分的に硬化した成形材料を押し出し、
前記ガス出口部から、前記金型キャビティおよび前記供給路と前記箔層との間にガスを吹き付けるように構成されたことを特徴とする、金型。
【請求項2】
前記第1の金型部品は、前記供給路に対する前記バリア要素の相対位置を制御するための駆動部を備えることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記バリア要素が前記第1の金型部品に弾性的に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の金型。
【請求項4】
前記第1の金型部品は、それぞれが前記バリア要素に接続される複数の供給路を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金型。
【請求項5】
前記第1の金型部品は、前記接触面に凹設されて前記金型キャビティからガスを放出するために前記金型キャビティに接続された出口部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金型。
【請求項6】
前記金型キャビティ内および/または前記供給路内における支配的な圧力を検出するための少なくとも1つのセンサーを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金型。
【請求項7】
前記第1の金型部品に加えて第2の金型部品を有し、
前記第2の金型部品は、
前記キャリアの少なくとも1つの縁部を前記第2の金型部品に対してクランプするように前記第2の金型部品に対して移動可能であり、前記金型の閉鎖位置内で前記供給路に接続される追加のクランプ金型部品を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金型。
【請求項8】
電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する成形装置であって、
- 少なくとも2つの金型運搬装置および金型運搬装置の相対移動用の駆動装置を含むプレス機と、
−請求項1〜7のいずれかに記載の金型と、
−前記供給路に接続される液状成形材料用の供給部と、を備える成形装置。
【請求項9】
前記供給部は、シリンダケーシング内を移動可能なプランジャーを備えることを特徴とする請求項8に記載の成形装置。
【請求項10】
少なくとも2つの金型部品を備えた金型を用いて、電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する方法であって、
前記少なくとも2つの金型部品のうちの1つの第1の金型部品は、キャリアに配置された電子部品を封止するための少なくとも一つの金型キャビティ、前記金型キャビティを少なくとも部分的に囲む接触面、前記接触面に凹設された成形材料用の供給路、および前記供給路内を通過する成形材料の量を調整するための変位可能なバリア要素を備え、
A)前記金型キャビティ、前記供給路および前記バリア要素を覆って箔層を設けるステップと、
B)前記第1の金型部品に、電子部品を有するキャリアを、前記電子部品が前記金型キャビティによって包み込まれるように配置するステップと、
C)前記キャリアが前記少なくとも2つの金型部品の間でクランプされて、封止される前記電子部品が前記金型キャビティによって包み込まれるように、前記少なくとも2つの金型部品を互いに移動させるステップと、
D)前記箔層で覆われた前記供給路を介して前記箔層で覆われた前記金型キャビティ内に液状成形材料を供給するステップと、
E)前記第1の金型部品から前記成形材料が少なくとも部分的に硬化され成形された電子部品を有するキャリアを取り出すように、前記少なくとも2つの金型部品を離すステップと、を有し、
処理ステップD)において、前記バリア要素が液状成形材料の供給を制御するために前記供給路内で移動され、
処理ステップE)において、前記バリア要素が、前記箔層を介して、少なくとも部分的に硬化された成形材料を前記供給路の外に押すように移動され、
処理ステップE)においてはさらに、前記金型キャビティおよび前記供給路と前記箔層との間にガスを吹き付ける、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記バリア要素は、前記供給路が凹設された前記第1の金型部品の接触面に実質的に垂直な方向に移動されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つの金型部品を構成する第2の金型部品を有し、前記キャリアの少なくとも1つの縁部を前記第2の金型部品に対してクランプするように前記第2の金型部品に対して移動可能な追加のクランプ金型部品を備え、
処理ステップB)に従って電子部品を有するキャリアが前記第1の金型部品に配置された後で、処理ステップC)に従って電子部品を有するキャリアが前記2つの金型部品の間にクランプされるように前記2つの金型部品が互いに移動される前に、
前記第2の金型部品に、前記キャリアの少なくとも1つの縁部で前記キャリアがクランプされるステップを有することを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
処理ステップD)が終了した後で、前記バリア要素が、液状成形材料で満たされた前記金型キャビティを前記金型キャビティから離れて面するランナー部から分離するために前記供給路内にさらに移動されること、および、金型部品の閉鎖力が前記金型キャビティ内における成形材料への圧力を変化させる力となることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する金型に関し、金型は、少なくとも2つの金型部品を備え、そのうちの少なくとも1つの金型部品は、キャリアに配置された電子部品を封止するための接触面側に凹設された少なくとも1つの金型キャビティ、およびキャリアに媒体密封接続によって金型キャビティを少なくとも部分的に囲む接触面、を備えており、金型はさらに、金型キャビティを備える金型部品の接触面に凹設された成形材料用の供給路を備える。本発明は、また、電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する成形装置および方法、およびこの方法により成形材料で封止された電子部品を有するキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、キャリアに搭載された電子部品の封止、およびより具体的には半導体回路(チップ)/集積回路(IC)の封止は、少なくとも2つの協働する金型部品を備える封止用プレス機を利用する。金型部品の少なくとも1つの中に1または複数の金型キャビティが凹設されている。封止用の電子部品を有するキャリアを金型部品の間に配置した後で、例えば金型がキャリアをクランプするように、金型部品は互いに移動される。その後、通常は加熱された液状成形材料が、少なくとも1つの成形材料供給路(これはまた「ランナー」と呼ばれる)を通って、1または複数の金型キャビティに通常はトランスファー成形により供給される。エポキシが、通常、充填材料を有した成形材料として(また樹脂とも呼ばれて)用いられる。1または複数の金型キャビティ内における成形材料の少なくとも部分的な(化学的な)硬化の後で、金型部品が離れるように移動されて、封止された電子部品を有するキャリアは封止用プレス機から取り除かれる。その後の処理工程で、封止された製品は、例えば、ソーイング(sawing)、レーザ切断および/または水切断によって、互いに分離される。硬化された成形材料で少なくとも部分的に覆われた電子部品は、種々の用途に用いられる。成形のこの方法は、大工業的な規模で行われており、電子部品の良く制御された成形を実現している。電子部品を成形する際の問題は、1または複数の金型キャビティへの成形材料の充填の制御、および封止用プレス機からの成形品の除去制御に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、1または複数の金型キャビティへの成形材料の充填、および金型からの成形品の除去、の両方の向上された制御を実現する効率的な方法および装置を提供する目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する金型であって、金型は少なくとも2つの金型部品を備え、そのうちの少なくとも1つの金型部品は、キャリアに配置された電子部品を封止するための接触面側に凹設された少なくとも1つの金型キャビティ、およびキャリアに媒体密封接続(medium-tight connection)によって金型キャビティを少なくとも部分的に囲む接触面、を備えており、金型はさらに、金型キャビティを備える金型部品の接触面に凹設された成形材料用の供給路を備え、供給路を備える金型部品は、供給路内を通過する成形材料の量を調整するために供給路に接続されて接触面に実質的に垂直な方向に変位可能なバリア要素を備える、金型によって達成される。
【0005】
金型部品は、閉鎖位置において少なくとも1つの金型キャビティが電子部品を封止するように相互に変位可能である。成形材料(これは、また封止材料とも呼ばれる)の供給は、通常、加熱される結果、液体になり、その後、金型キャビティに圧入される成形材料を用いてプランジャーによって行われる。このような成形工程は、また、「トランスファー成形」と呼ばれる。しかしながら、本発明に関連しては、成形材料を供給する他の方法、例えば射出成形による方法なども可能である。成形材料に関しては、液体形状で供給される(液状エポキシ)成形材料の供給、または例えば、混合によって硬化する少なくとも2つの個別に供給される成分から構成される熱硬化性成形材料の供給、もまた可能である。成形材料の流量および圧力は、これにより調整できる。
【0006】
本発明の利点の1つは、変位可能なバリア要素が複数の機能を提供してもよいことである。まず、金型キャビティの最適な充填を実現するように成形材料の供給が制御されてもよい。この点において、周囲の種々の状況が供給路内の変位可能なバリア要素の最適な位置に影響を与えるだろう。それらは、とりわけ、成形材料のタイプ、成形材料の温度、成形材料源に接続された金型キャビティの数、金型部品の汚染、電子部品を有するキャリアの仕様などに依存するかもしれない。それらおよび他の変化するものから独立して、供給路内の成形材料通路の大きさが供給路内におけるバリア要素の変位の多少によって調整されてもよい。
変位可能なバリア要素の更なる利点は、供給路内における成形材料の少なくとも部分的な硬化の後で供給路内の成形材料を圧迫するようにバリア要素を用いてもよいことであり、こうすることで金型部品が離れる状況で、成形品の金型部品からの取り出しを少なくとも支援することである。成形品の金型部品からの取り出しは、「ゲート除去(degating)」とも呼ばれる。変位可能なバリア要素によって金型から成形品を取り出すために圧迫が、供給路内における成形材料にもたらされるので、変位可能なものは成形品にいかなる傷跡をも残すことがない。また他方では、圧迫が、金型キャビティに近い成形品に及ぼされてもよく、これは効率的および効果的な成形品の取り出しための支援となる。
変位可能なバリア要素を使用する更なる選択肢は、液状成形材料で金型キャビティを充填した後でありながら供給路内の成形材料が硬化する前、の供給路の遮断である。成形工程のこの早い段階(供給路内で成形材料が少なくとも部分的に硬化する前)で、供給路を遮断することにより、金型キャビティの充填の状況が供給路の遮断前の状況に(そのため例えば金型キャビティの方へ成形材料を供給する1または複数のプランジャーの状況に)、もはや依存することがない。このことは、また、キャリアをクランプするための金型部品の力(これはまた「金型部品のクランプ力」とも呼ばれる)を制御することにより、(そのため金型キャビティ内で成形材料の硬化する前に生じる)金型キャビティ内の液状成形材料にかかる圧力を制御する追加的な機会を提供する。例えば、変位可能なバリア要素を有する供給路を遮蔽することにより、成形後のクランプ力の増加によってキャビティは供給路から「隔離」されるので、成形工程は成形材料への圧力がクランプ力から独立している「圧縮成形」と比較さえしうる。利点は、金型キャビティ内における位置に対するランナーと金型キャビティとの接続の距離に応じて圧力変化がランナーから金型キャビティ内に及ぼされる状況と比較して、1または複数の金型キャビティ内の成形材料にかかる圧力が、金型キャビティ全体に渡ってより一定であることである。金型キャビティ内のより均一な圧力分散は、成形品質の向上を導く。成形工程のこの早い段階におけるランナーから金型キャビティの「隔離」の更なる利点は、成形の際に金型キャビティ内における成形材料にかかる圧力の多様さを可能にすることである(そのため、例えば、仕分け時間帯の際に一度または数度、圧力を上げることも可能である)。金型キャビティ内における成形材料の硬化の前または硬化中における成形材料の圧力制御の自由度は、成形工程の制御手段をさらに自由に選択することを可能にする。
【0007】
供給路および変位可能なバリア要素を有する金型部品は、成形材料用の供給路に対する変位可能なバリア要素の相対位置を制御するための駆動部を備えてもよい。変位可能なバリア要素の位置の制御のための駆動システムの提供は、バリア部分の使用を最適化することを可能にする。駆動される変位可能なバリア要素の代わりに、またはそれと組み合わせて、変位可能なバリア要素は、金型部品に弾性的に接続されてもよい。弾性的な接続は、金型が最も接近した状況で、変位可能なバリア要素を変位可能なバリア要素が成形材料用の供給路を閉鎖しない(または単に限定する)位置に保持する位置決め要素を備えてもよい。しかしながら金型が開かれたときに、位置決め要素は、弾性的な接続力が位置決め要素を供給路内に押しやるように、位置決め要素が対向する金型部品によってもはや支持されないように構成されてもよい。
【0008】
金型部品は、また、箔ハンドリング機構を備えてもよい。成形材料から変位可能なバリア要素をシールドするために、箔層が供給路の壁と変位可能なバリア要素との間に適用されてもよい。箔層の使用は、(液状の)成形材料が、供給路の壁と変位可能なバリア要素との間に侵入することを防ぐ。箔層はまた、金型キャビティの壁を覆ってもよい。金型部品を清潔に保つこととは別に、金型部品をシールドするための箔層の利用の更なる利点は、それが金型部品から成形品の容易な取り出しを支援することである。取り出しの第1段階は変位可能なバリア要素を起動することによって、箔の上を押すことであり、そして、金型部品から箔の部分的および/または局部的な取り出しの後で、更なる取り出しが、例えばガス圧力によってもたらされる。金型部品は従って、また、(成形品を覆う)箔材料と金型部品との間にガスを吹き付けるための少なくとも1つのガス出口部を備えてもよい。
【0009】
変位可能なバリア要素は、金型部品の接触面側に向けられた自由端上で先細の端部を備えてもよい。そのような先細の端部は、特に、成形材料がまだ完全に固まっていないときには、供給路内の成形材料を変位可能なバリア要素によって分離する機会を提供する。
【0010】
金型部品は、また、それぞれが変位可能なバリア要素に接続される成形材料用の複数の供給路を備えてもよい。多くの場合、金型は、複数の供給路を備えている。そのような金型に対する選択は、変位可能なバリア要素を備える1または複数の供給路を提供することである。状況や条件にも依存するが、複数の供給路の一部または全部のそれぞれが、個々に変位可能なバリア要素を備えてもよい。成形材料用の複数の供給路は、単一の金型キャビティに接続してもよい。本発明は、1つの金型部品内に提供される、単一の金型キャビティによる成形構成にも、複数の金型キャビティによる成形構成にも適用されてもよい。双方が少なくとも1つの金型キャビティを有する2つの金型部品の組み合わせにおいても、キャリアの対向する両面に接続し、そして、キャリアの対向する2つの面に成形材料の層を配置してもよい。加えて、成形材料用の供給路を備える金型部品は、また、接触面に凹設されて金型キャビティからガスを放出するために金型キャビティに接続された出口部を備えてもよい。
【0011】
成形条件の更なる制御のために、金型キャビティを備える金型部品は、金型キャビティ内および/または成形材料用の供給路内における支配的な圧力を検出するための少なくとも1つのセンサーを備えてもよい。
【0012】
更なる別の実施形態においては、第1の金型部品は、キャリアの少なくとも1つの縁部を第1の金型部品に対してクランプするように第1の金型部品に対して移動可能であり、金型の閉鎖位置内で成形材料用の供給部に接続される追加のクランプ金型部品を備えてもよい。このようなクランプ金型部品を含むことによって、キャリアのクランプ金型部品で覆われた側は、成形材料から離しておくことができるので、成形品の更なる処理の際に有用である。
【0013】
本発明は、また、電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する成形装置を提供する。成形装置は、少なくとも2つの金型運搬装置および金型運搬装置の相対移動用の駆動装置を含むプレス機と、本発明に従ったおよび前述した金型と、成形材料用の供給路に接続される液状成形材料用の供給部とを備える。液状成形材料の供給部は、それぞれがシリンダケーシング内を移動可能な1以上のプランジャーを備えてもよい。また、成形装置は、プレス機制御用のインテリジェント制御部、液状成形材料用の供給部、および金型内に変位可能なバリア要素を備えてもよい。そのような成形装置においては、変位可能なバリア要素は、本発明による金型に関連してすでに説明したような追加的な機能性を提供する。変位可能なバリア要素のインテリジェント制御および/または、かじ取りのために、成形装置は、(電子)インテリジェント制御システムを備えてもよい。また、そのようなインテリジェント制御システムは、液状成形材料によって金型に及ぼされる圧力が調整された閉鎖圧力により部分的にまたは完全に補償されてもよいように、キャリアに接続される金型部品の閉鎖圧力を制御する手段をシステム内に含んでもよい。
【0014】
本発明は、また、電子部品を有するキャリアを少なくとも部分的に封止する方法を提供する。この方法は、以下の処理ステップ、A)第1の金型部品に電子部品を有するキャリアを配置するステップと、B)電子部品を有するキャリアが少なくとも2つの金型部品の間でクランプされて、封止される電子部品が金型部品の接触面側に凹設された金型キャビティによって包み込まれるように、金型部品を互いに移動させるステップと、C)金型部品の接触面に凹設された液状成形材料用の供給部を介して金型キャビティ内に液状成形材料を供給するステップと、D)金型部品から少なくとも部分的に硬化され成形された電子部品を有するキャリアを取り出すように、金型部品を離すステップと、を有し、処理ステップC)の際に、変位可能なバリア要素が液状成形材料を制御するために液状成形材料用の供給部内で移動され、および、処理ステップD)の際に、変位可能なバリア要素が少なくとも部分的に硬化された成形材料を供給部の外に押すように移動される、方法である。
本方法によれば、封止材料の供給のより良い制御を実現するように、および金型から成形品の改善された取り出しを容易にするように、電子部品を有するキャリアの成形工程がさらに最適化される。変位可能なバリア要素は、液状成形材料の供給部が凹設されている金型部品の接触面に対して実質的に垂直な方向に移動されてもよい。本発明による方法の利点の更なる説明は、本発明による金型に関してすでに列挙した利点を参照されたい。金型の閉鎖の際に、金型キャビティを少なくとも部分的に囲む接触面は、金型部品の接触面とキャリアとの間の液状成形材料の漏れを防ぐために、キャリアに対して(ガスや液体のような媒体が通過できないほど緊密な)媒体密封(medium-tight)接続でよい。そのうえ、液状成形材料が実質的な逆圧を与えていない時点で接触面がキャリアに高い圧力を及ぼすのを防ぐため、および、液状成形材料が実質的な逆圧を与えている時点で接触面がキャリアに低い圧力を及ぼすのを防ぐために、金型部品によってキャリアに及ぼされる閉鎖圧力が成形材料の供給の際に制御されてもよい。成形工程が完了した後で、成形品が金型から取り除かれて、キャリアがより小さい区分に分割されてもよい。
【0015】
本方法は、処理ステップA)に従って電子部品を有するキャリアが第1の金型部品に配置された後で、および、処理ステップB)に従って電子部品を有するキャリアが2つの金型部品の間にクランプされるように金型部品が互いに移動される前に、処理ステップC)の際に液状成形材料を金型キャビティへガイドする追加金型部品を備える第1の金型部品に、キャリアの少なくとも1つの縁部でキャリアがクランプされるステップを有してもよい。このタイプの成形は、また、「上端成形(top edge moulding)」とも呼ばれており、液状成形材料が、キャリアの縁部を覆う中間金型部品の縁部の上に供給される。その利点は、キャリアの縁部が成形材料と接触せず、そのため、キャリアがその位置でクランプされることである。
【0016】
本方法は、また、金型部品の接触面に凹設された液状成形材料用の供給部を介して処理ステップC)により液状成形材料を金型キャビティ内に供給する前に、金型部品の少なくとも一部が箔層で覆われるステップを有してもよい。箔層を用いる利点は、金型を汚染からシールドし、成形品の容易な取り出しを可能にすることであり、これらは、本発明による金型部品に関してすでに詳細に述べており、その動機はここで本発明による方法に関しても参照することにより組み込まれている。
【0017】
本方法は、また、処理ステップC)が終了した後で、変位可能なバリア要素が、液状成形材料で満たされた金型キャビティを金型キャビティから離れて面するランナー部から分離するために液状成形材料用の供給部内にさらに移動されること、および、金型部品の閉鎖力が金型キャビティ内における成形材料への圧力を変化させる力となることを提供してもよい。また、本発明による方法のこの実施形態のいくつかの利点、特に硬化の際の金型キャビティ内における成形材料にかかる圧力に対する改善された制御は、前述されておりここに参照として組み込まれている。
【0018】
最終的に、本発明は、また、上記に規定された本発明による方法に従って少なくとも部分的に成形材料で封止された電子部品を有するキャリアを提供する。キャリアは、半導体ウエハー、層状基板、ガラスキャリア、または他のいかなるキャリア、または電子部品用のキャリアの組み合わせであってもよい。
【0019】
本発明は、以下の図に示す例示的な実施形態に基づいてさらに明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による金型の金型部品の斜視図である。
【
図2A】本発明による電子部品を有するキャリアを封止する方法の3つの引き続く断面図である。
【
図2B】本発明による電子部品を有するキャリアを封止する方法の3つの引き続く断面図である。
【
図2C】本発明による電子部品を有するキャリアを封止する方法の3つの引き続く断面図である。
【
図3A】本発明による金型の第2の実施形態の断面図である。
【
図3B】
図3Aに示す金型の金型部品の変位可能なバリア要素の正面図である。
【
図4】変位可能なバリア要素の別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、電子部品用キャリアの封止用金型の金型部品1の概略斜視図を示す。金型部品1内に金型キャビティ2および成形材料供給路3が凹設されており、供給路を除く接触面4が金型キャビティ2を取り囲んでいる。(ここで図示しない)成形される電子部品が金型キャビティ2内に位置するように、成形のために(この図に図示しない)キャリアが接触面4に対して配置される。その後、(また、「ランナー」とも称する)供給路3を通って液状成形材料が金型キャビティ2へ供給される。供給路3内の成形材料の流れを調整するために、従ってまた、金型キャビティ2内への成形材料の流れを調整するために、変位可能なバリア要素5が供給路3内で矢印P
1の方向に従って移動できる。変位可能なバリア要素5の移動方向は、接触面4に実質的に垂直である。変位可能なバリア要素5が供給路3内により多く移動すれば、変位可能なバリア要素5は供給路3をより多く塞ぎ、従って、その結果、成形の際に金型キャビティ2内への液状成形材料の流れは限定される。変位可能なバリア要素5を供給路3から外の方へより多く動かすことによって、供給路はより少なく塞がれ、従って金型キャビティ2内への液状成形材料の流れは増加する。
【0022】
図2Aは、成形材料が金型キャビティ13に供給される前の処理ステップを示す金型部品10および電子部品12を有するキャリア11の断面図である。金型部品10においては、成形材料用の供給路14が接触面15内に凹設されている。この図は、また、供給路14内における成形材料通路の大きさを調整するために供給路14に接続している変位可能なバリア要素16を示す。変位可能なバリア要素16は、それが部分的に供給路14を塞ぐ位置で示されている。金型部品10内におけるバリア要素16の移動用に、バリア要素16を金型部品10の接触面15に実質的に垂直な方向に動かすことができる駆動部17が組み込まれている。駆動部17の制御用に、および従って変位可能なバリア要素16の位置の制御用に、動力および制御線18が駆動部に接続されており、動力および制御線は、(この図には図示しない)インテリジェント制御システムに接続されている。また、この図に表されているのは、少なくとも供給路14および金型キャビティ13に壁を形成して、成形材料で満たされた供給路14および金型キャビティ13の充填体から金型部品10を覆う、箔層21である(
図2B参照)。箔層21は、バリア要素16が成形材料に接触しないように保ち(従って、成形材料がバリア要素に残存するためバリア要素が成形材料によって汚染されることを防いでおり)、さらに金型部品10からの成形品の容易な取り出しを助けている。
【0023】
図2Bでは、
図2Aからの金型部品10の断面図が再び示されているが、現在は、成形材料19が供給路14を通って金型キャビティに供給されて金型キャビティ13も充填している状況である。この具体的な状況においては、金型キャビティ13を充填する制御のために、バリア要素16が
図2Aに示すバリア要素16の位置に比べて供給路14からより多く離れるように(この状況では上の方に)移動されている。箔層21は金型部品10を成形材料19と接触しない状態にしている。
【0024】
また、
図2Cには
図2Aおよび
図2Bからの金型部品10の断面図が示されているが、この図は、供給路14および金型キャビティ13内の成形材料19が少なくとも部分的に硬化した後の状況を示す。バリア要素16は、この状況においては、電子部品12を有して成形されたキャリア11を金型部品10から取り出すためのプッシャー(「エジェクタ」)として用いられる。硬化された成形材料19の取り出しの際に、箔層21は成形材料19に付着されたままである。例えば、成形品20の除去には、さらに(ここでは図示しない)ガス圧システムの支援を受けてもよい。
【0025】
図3Aにおいては、完全な金型30の一部の断面図が液状成形材料用の供給部31と共に示されている。成形材料32は、シリンダケーシング34内で可動なプランジャー33によって供給される。金型30は、上型部品35および下型部品36を備える。封止用のキャリア37を配置するために、または封止されたキャリア38を除去するために、両方の金型部品35、36を離すことができる。成形材料32は、プランジャー33によって供給路39を通った後で金型キャビティ40内に移送される。この図においては、また、下型部品36に抗してキャリア37の縁部をクランプする追加的な金型部品41を備える。本実施形態では、この追加金型部品41はシリンダケーシング34に結合している。成形材料32は、従って、追加金型部品41の一部の上である供給路39を通って金型キャビティ40に流れる。上型部品35においては、変位可能なバリア要素42が供給路39に接続して組み込まれており、変位可能なバリア要素42は、ばねパッケージ43によって駆動されてもよい。ばねパッケージ43による駆動の作用の詳細な説明をまた、
図3Bに示す。ここでは、変位可能なバリア要素42が(
図3Aの断面図に対して)側面図で示されている。変位可能なバリア要素42は、金型30の最も近接した状況において下型部品36上に置かれる突出部44を備える。上型部品および下型部品35、36が離れるときには、変位可能なバリア要素42の突出部44は、下型部品による支持はもはやなくなり、従ってばね43によってもたらされる圧力が変位可能なバリア要素42を下方に押すので変位可能なバリア要素42はエジェクタの機能を果たす。
【0026】
図4には変位可能なバリア要素50の別の実施形態を示す。供給路の形状に依存して、バリア要素50がその形状に適応できるように協働している。図示された実施形態においては、変位可能なバリア要素50の接触部51が屈曲している。また、前述の図面に示された実施形態と比べて異なるのは、ここでは、駆動部52は、2つのシリンダーによって実現されていることである。
【0027】
異なる実施形態で議論された手段を互いに組み合わせてもよいことは明らかである。