特許第6779230号(P6779230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6779230改質剤を有する高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779230
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】改質剤を有する高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20201026BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20201026BHJP
   C08F 297/00 20060101ALI20201026BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08L53/00
   C08F297/00
   B29C45/00
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-556985(P2017-556985)
(86)(22)【出願日】2016年5月4日
(65)【公表番号】特表2018-515654(P2018-515654A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】US2016030795
(87)【国際公開番号】WO2016182817
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】62/159,437
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マリー・アン・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】キム・エル・ウォルトン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・シー・マンロ
(72)【発明者】
【氏名】ユシャン・フー
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−506742(JP,A)
【文献】 特表2013−542285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 6/00−297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5重量%〜45重量%の改質剤であって、
(a)前記改質剤の総重量に基づいて5重量%〜40重量%のブロック複合材料であっ て、前記ブロック複合材料は、(i)エチレン−プロピレンコポリマーと、(ii)アイ ソタクチックポリプロピレンポリマーと、(iii)前記エチレン−プロピレンポリマー と本質的に同じ組成を有するエチレン−プロピレンソフトブロック及び前記アイソタクチックポリプロピレンポリマーと本質的に同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレ ンハードブロックを含むブロックコポリマーと、を含み、前記ソフトブロックは、前記ソ フトブロックの総重量に基づいて20重量%〜80重量%のエチレンを含み、前記ブロッ クコポリマーは、前記ブロックコポリマーの総重量に基づいて20重量%〜75重量%の ハードブロックを含む、ブロック複合材料と、
(b)前記改質剤の総重量に基づいて60重量%〜95重量%のポリオレフィンコポリ マーであって、前記ポリオレフィンコポリマーは、エチレンと、C〜C10α−オレフィンのうちの少なくとも1つと、から誘導され、前記ポリオレフィンコポリマーは、AS TM D1238に従い、190℃/2.16kgにおいて10g/10分〜1500g /10分のメルトインデックス、ならびに0.850g/cm〜0.900g/cm の密度を有する、ポリオレフィンコポリマーと、を含む、改質剤と、
ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも40g/1 0分のメルトフローレートを有する30重量%〜95重量%のポリプロピレンポリマーベースと、を含む、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物であって、
前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ASTM D1238に従い、 230℃/2.16kgにおいて少なくとも25g/10分のブレンドメルトフローレー トを有し、MFR比は2.0未満であり、前記MFR比は、前記ポリプロピレンポリマーベースのメルトフローレート対前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物のブレンドメルトフローレートの比である、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を使用して形成された射出成形物品 について、ASTM D3763に従って測定された多軸衝撃延性脆性遷移温度は、0℃ 未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物及び前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物について、前記ブロック複合材料が除外されたことを除いて同じ構成成分を含む別の組成物の両方について同じ条件で多軸衝撃延性脆性遷移温度及び/またはノッチ付きアイゾット衝撃延性脆性遷移温度を測定したときに、前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を使用して形成された射出成形物品について、ASTM D3763に従って測定された前記多軸衝撃延性脆性遷移温度及び/またはASTM D256に従って測定された前記ノッチ付きアイゾット衝撃延性脆性遷移温度は、前記別の組成物を使用して形成された射出成形物品よりも少なくとも5℃低い、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ブレンドメルトフローレートは、ASTM D1238に従い、230℃/2.1 6kgにおいて30g/10分〜100g/10分である、請求項1〜3のいずれか1項 に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロック複合材料は、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて2g/10分〜100g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記改質剤の前記ブロック複合材料及び前記ポリオレフィンコポリマーは、前記改質剤 を前記ポリプロピレンポリマーベースとブレンドする前に予めブレンドされ、前記組成物は、前記ポリプロピレンポリマーに細かく分散している前記改質剤を含む、請求項1〜5 のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリプロピレンポリマーベースのメルトフローレートは、少なくとも60g/10 分である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を使用して調製された射出成形物品。
【請求項9】
前記物品は、内装または外装用途の自動車部品である、請求項8に記載の射出成形物品 。
【請求項10】
高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を調製する方法であって、
前記方法は、
改質剤を形成することであって、
(a)前記改質剤の総重量に基づいて5重量%〜40重量%のブロック複合材料であって、前記ブロック複合材料は、(i)エチレン−プロピレンコポリマーと、(ii)ア イソタクチックポリプロピレンポリマーと、(iii)前記エチレン−プロピレンと同じ 組成を有するエチレン−プロピレンソフトブロック及び前記アイソタクチックポリプロピ レンポリマーと同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレンハードブロックを含む ブロックコポリマーと、を含み、前記ソフトブロックは、前記ソフトブロックの総重量に 基づいて20重量%〜80重量%のエチレンを含み、前記ブロックコポリマーは、前記ブ ロックコポリマーの総重量に基づいて20重量%〜75重量%の前記ハードブロックを含 む、ブロック複合材料と、
(b)前記改質剤の総重量に基づいて60重量%〜95重量%のポリオレフィンコポ リマーであって、前記ポリオレフィンコポリマーは、エチレンと、C〜C10α−オレフィンのうちの少なくとも1つと、から誘導され、前記ポリオレフィンコポリマーは、A STM D1238に従い、190℃/2.16kgにおいて10g/10分〜1500 g/10分のメルトインデックス、ならびに0.860g/cm〜0.900g/cm の密度を有する、ポリオレフィンコポリマーと、をブレンドすることにより、改質剤を 形成することと、
ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも40g/1 0分のメルトフローレートを有する30重量%〜95重量%のポリプロピレンポリマーベースを、5重量%〜45重量%の前記改質剤とブレンドすることと、を含み、得られた前 記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ASTM D1238に従い、23 0℃/2.16kgにおいて少なくとも25g/10分のブレンドメルトフローレート、 及び2.0未満のMFR比を有し、前記MFR比は、前記ポリプロピレンポリマーベース のメルトフローレート対前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物のブレンドメ ルトフローレートの比である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、改質剤を有する高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィンを製造する方法、及び高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィンを組み込んだ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第8,476,366号及び同第8,686,087号に記載されているように、エラストマー部品の製造業者は、より高い生産性、改善された品質、及びより広い市場のいずれかまたはすべてを達成することを可能にする加工特性を有するエラストマーの探索を続けている。例えば、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィンブレンドを形成するための改質及び/または相溶化されたブレンドのような、熱可塑性ポリオレフィンに使用または熱可塑性ポリオレフィンとしてのブレンドが求められている。
【0003】
熱可塑性ポリオレフィンブレンドでは、高レベルの延性及びモジュラス/耐熱性及び意図された用途(長くて細い流路にわたる流動性のような)に関して容易に充填を可能にする粘度が求められている。例えば、熱可塑性ポリオレフィンブレンドは、大型射出成形部品(計器パネル、ドアパネル、Aピラーなどの内装部品、バンパーフェイシアなどの外装部品)などの自動車産業に使用され得る。さらに、自動車産業は軽量車両による燃料消費を低減するように努力しているので、軽量化することができる熱可塑性ポリオレフィン系部品をより薄く(例えば、2.5mm以下の厚さ)成形する能力も求められている。しかしながら、より低い粘度及びより高いメルトフローレートの樹脂は、許容可能な射出圧力及びクランプ圧力(例えば、既存の装置で)でより薄い部品を充填するために必要とされ得る。比較的低い粘度及びより高いメルトフローレートの熱可塑性ポリオレフィンは、ポリマーマトリックスの分子量及び/またはブレンド中のエラストマー相の分子量を低下させることによって製造され得る。しかしながら、これは、得られる成形物品の低温延性を低下させる可能性があり、これは安全性の懸念である。したがって、物品を形成するための組成物の粘度/メルトフローレートと得られる物品の低温延性とのバランスをとることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
実施形態は、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を提供すること、及び高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を調製する方法を提供することによって実現され得、該組成物は、(1)5重量%〜45重量%の改質剤であって、(a)改質剤の総重量に基づいて5重量%〜40重量%のブロック複合材料であって、該ブロック複合材料は、(i)エチレン−プロピレンコポリマーと、(ii)アイソタクチックポリプロピレンポリマーと、(iii)該エチレン−プロピレンポリマーと本質的に同じ組成を有するエチレン−プロピレンソフトブロック及び該アイソタクチックポリプロピレンポリマーと本質的に同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレンハードブロックを含むブロックコポリマーと、を含み、該ソフトブロックは、該ソフトブロックの総重量に基づいて20重量%〜80重量%のエチレンを含み、該ブロックコポリマーは、該ブロックコポリマーの総重量に基づいて20重量%〜75重量%のハードブロックを含む、ブロック複合材料と、(b)該改質剤の総重量に基づいて60重量%〜95重量%のポリオレフィンコポリマーであって、該ポリオレフィンコポリマーは、エチレンと、C3〜C10α−オレフィンのうちの少なくとも1つと、から誘導され、該ポリオレフィンコポリマーは、ASTM D1238に従い、190℃/2.16kgにおいて10g/10分〜1500g/10分のメルトインデックス、ならびに0.850g/cm〜0.900g/cmの密度を有する、ポリオレフィンコポリマーと、を含む、改質剤と、(2)ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも40g/10分のメルトフローレートを有する30重量%〜95重量%のポリプロピレンポリマーベースと、を含む。該高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも25g/10分のブレンドメルトフローレート、及び2.0未満のMFR比を有し、該MFR比は、該ポリプロピレンポリマーベースのメルトフローレート対該高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物のブレンドメルトフローレートの比である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
実施形態の特徴は、添付図面を参照してその例示的な実施形態を詳細に説明することにより、当業者にはより明らかになるであろう。
【0006】
図1】全画像について10ミクロン×10ミクロンのスケールで実施例1の形態を示す原子間力顕微鏡画像を示す。
図2】全画像について10ミクロン×10ミクロンのスケールで比較例Aの形態を示す原子間力顕微鏡画像を示す。
図3】全画像について10ミクロン×10ミクロンのスケールで実施例2の形態を示す原子間力顕微鏡画像を示す。
図4】全画像について10ミクロン×10ミクロンのスケールで比較例Bの形態を示す原子間力顕微鏡画像を示す。
図5】全画像について10ミクロン×10ミクロンのスケールで実施例5の形態を示す原子間力顕微鏡画像を示す。
図6】全画像について10ミクロン×10ミクロンのスケールで比較例Iの形態を示す原子間力顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一般に、プロピレンベースの熱可塑性ポリオレフィン組成物のメルトフローレートが増大するにつれて、衝撃性能/耐性の低下が経験される。このように、所望の低温延性性能を提供しながら、薄肉部品を成形するための容易なフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を製造することは困難であり得る。したがって、低温延性を有する物品を形成するための熱可塑性ポリオレフィン組成物の粘度/メルトフローレートの両方のバランスをとるために、ブロック複合材料(例えば、相溶化剤として)と、高いメルトインデックス(すなわち、ASTM D1238に従い、190℃/2.16kgにおいて少なくとも10g/10分のメルトインデックス)を有するポリオレフィンコポリマーとの両方を含む改質剤の使用が提案されている。改質剤は予めブレンドされ得る。
【0008】
用語
「組成物」などの用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。例えば、1つの組成物は、ランダムまたは均質なプロピレン系インターポリマーとブロック複合材料核剤の組み合わせである。
【0009】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混和性であってもなくてもよい。そのようなブレンドは相分離していてもいなくてもよい。そのようなブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で既知の他の任意の方法から決定するとき、1つ以上のドメイン構成を含んでも含まなくてもよい。
【0010】
「ポリマー」は、同一または異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される化合物を意味する。したがって、一般的な用語のポリマーは、ホモポリマーという用語を含み、通常、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマー、及び以下に定義されるインターポリマーという用語を指すのに用いられる。それはまた、インターポリマーのすべての形態、例えば、ランダム、ブロック、均質、不均質などを包含する。「エチレン/α−オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α−オレフィンポリマー」という用語は、以下に記載されるようなインターポリマーを示すものである。
【0011】
「インターポリマー」及び「コポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの一般的な用語には、古典的コポリマー、すなわち2つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー、及び3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどの両方が含まれる。
【0012】
「プロピレン系ポリマー」などの用語は、(重合可能なモノマーの総量に基づき)重合したプロピレンモノマーの大部分の重量パーセントを含むポリマーを意味し、場合によってはプロピレン系インターポリマーを形成するようにプロピレンとは異なる少なくとも1つの重合したコモノマーを含む。例えば、プロピレン系ポリマーがコポリマーである場合、プロピレンの量はコポリマーの総重量に基づいて50重量%超であってもよい。「プロピレンから誘導された単位」などの用語は、プロピレンモノマーの重合から形成されたポリマーの単位を意味する。「α−オレフィンから誘導された単位」などの用語は、α−オレフィンモノマー、特に少なくとも1つのC3−10α−オレフィンの重合から形成されたポリマーの単位を意味する。対照的に、「エチレン系ポリマー」などの用語は、(重合可能なモノマーの総重量に基づいて)重合したエチレンモノマーの大部分の重量パーセントを含むポリマーを意味し、場合によってはエチレン系インターポリマーを形成するようにエチレンとは異なる少なくとも1つの重合したコモノマーを含み得る。例えば、エチレン系ポリマーがコポリマーである場合、エチレンの量はコポリマーに対する総重量に基づいて50重量%超であってもよい。
【0013】
「ランダムプロピレン系コポリマー」などの用語は、プロピレン/α−オレフィンインターポリマーを意味し、α−オレフィンモノマーから由来する単位がポリマー鎖にわたりランダムに分布しており、これは、交互の、周期的な、またはブロックパターンのポリマー鎖にわたって分布しているのとは対照的である。例示的なランダムプロピレン系インターポリマーは、ランダムプロピレン系コポリマーである。対照的に、「均質プロピレンベースインターポリマー」など用語は、プロピレン/α−オレフィンインターポリマーを意味し、α−オレフィンモノマーから誘導された単位は、バルクポリマーのポリマー鎖にわたってランダムかつほぼ均一に分布している。
【0014】
「衝撃改質プロピレンベースのコポリマー」などの用語は、衝撃改質されたプロピレン系ポリマー組成物を意味し、その結果、室温以下での組成物のノッチ付きアイゾット衝撃強さが、添加された衝撃改質剤を含まない同じ温度での該与えられた組成物のノッチ付きアイゾット衝撃強さと比較して維持または増大される。
【0015】
「ブロック複合材料」などの用語は、ソフトコポリマー、ハードポリマー、ならびにソフトセグメント/ブロック及びハードセグメント/ブロックを有するブロックコポリマーを含む複合材料を意味し、ここで、ブロックコポリマーのハードセグメントは、ブロック複合材料中のハードポリマーと本質的に同じ組成であり、ブロックコポリマーのソフトセグメントは、ブロック複合材料のソフトコポリマーと本質的に同じ組成である。特に、ブロック複合材料は、ポリプロピレンとエチレン(エチレンプロピレンポリマー)を含むソフトポリマーとを含むハードポリマーを含む。
【0016】
「ブロックコポリマー」は、線状に結合された2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマーを指し、すなわち、ペンダントまたはグラフト様式ではなく、重合した官能基(例えば、重合したプロピレン官能基)に関してエンドツーエンドで結合(共有結合)した化学的に区別された単位を含むポリマーである。ブロックコポリマーは、同じモノマー単位の配列(「ブロック」)を含み、異なるタイプの配列に共有結合している。これらのブロックは、様々な方法、例えば、ジブロックのA−B及びトリブロック構造のA−B−A(Aは1つのブロックを示し、Bは異なるブロックを示す)で接続され得る。マルチブロックコポリマーでは、A及びBを多数の異なる方法で接続し、複数回繰り返すことができる。これは、異なるタイプの追加のブロックをさらに含むことができる。マルチブロックコポリマーは、線状マルチブロック、マルチブロックスターポリマー(すべてのブロックが同じ原子または化学成分に結合している)またはくし状ポリマーであり得、ここでBブロックは一端がA骨格に結合されている。ブロックコポリマーは線状または分岐状であり得る。ブロックコポリマーに関して、ブロックは、その中に組み込まれたコモノマーの量が異なっていてもよい。ブロックはまた、コモノマーのタイプ、密度、結晶化度、そのような組成物のポリマーに起因する結晶子の大きさ、立体規則性(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)のタイプまたは程度、位置規則性または位置不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の量、均質性、または任意の他の化学的または物理的特性において異なり得る。ブロックコポリマーは、例えば、触媒(複数可)と組み合わせたシャトリング剤(複数可)の効果によるポリマー多分散性(PDIまたはMw/Mn)、ブロック長分布及び/またはブロック数分布の独特な分布により特徴付けられる。
【0017】
「ハード」セグメント/ブロックは、重合した単位の高い結晶性ブロックを指す。「ソフト」セグメント/ブロックという用語は、重合した単位の非晶質、実質的に非晶質またはエラストマーのブロックを指す。「結晶性」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって決定するとき、一次転移または結晶融点(Tm)を有するポリマーまたはポリマーブロックを指す。この用語は、「半結晶性」という用語と交換可能に使用されてもよい。「結晶化可能な」という用語は、得られたポリマーが結晶性であるように重合することができるモノマーを指す。結晶性プロピレンポリマーは、0.88g/cc〜0.91g/ccの密度及び100℃〜170℃の融点を有し得るが、これらに限定されない。「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって決定される結晶融点を欠いているポリマーを指す。
【0018】
「アイソタクチック」は、13C−NMR分析によって決定された少なくとも70%のアイソタクチックペンタッドを有するポリマー繰り返し単位として定義される。「高アイソタクチック」は、少なくとも90%のアイソタクチックペンタッドを有するポリマーとして定義される。
【0019】
組成物
実施形態によれば、(例えば射出成形自動車部品用の)高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を形成するための組成物は、少なくともプロピレンポリマーベース及び改質剤を含む。ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも40g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレンポリマーベース。高メルトフローとは、熱可塑性ポリオレフィン組成物のブレンドメルトフローレートが、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも25g/10分(例えば、少なくとも30g/10分、少なくとも35g/10分及び/または少なくとも40g/10分)であることを意味する。メルトフローレートは、1200g/10分未満であってもよい。高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物は、2.0未満であるMFRを有し、MFR比は、ポリプロピレンポリマーベースのメルトフローレート対高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物のブレンドメルトフローレートの比である。例えば、MFR比は、0.5より大きく、0.7より大きく、及び/または1.0より大きくてもよい。MFR比の例示的な範囲は、1.00〜1.95及び1.15〜1.95を含む。
【0020】
組成物は、組成物の総重量に基づいて5重量%〜45重量%の改質剤を含む。例えば、改質剤の量は、組成物の総重量に基づいて、10重量%〜45重量%、15重量%〜40重量%、20重量%〜40重量%、25重量%〜35重量%、及び/または28重量%〜32重量%であり得る。組成物がポリプロピレン中に細かく分散された改質剤を含むように、改質剤をプロピレンポリマーベースとブレンドする前に、ブロック複合材料及びポリオレフィンコポリマーを予めブレンドしてもよい。別の例示的な実施形態では、改質剤ブレンドの成分は、物品の調製時に個々に、例えば、プロピレンポリマーベースを改質剤ブレンド成分と共に射出成形機にワンステップで供給することによって添加され得る。別の例示的な実施形態では、改質プロピレンは、改質剤ブレンドの個々の成分のすべてをプロピレンポリマーベースと共に溶融ブレンドし、次いで、レディーツーフィード(ready−to−feed)改質プロピレンとしてペレット化することによって調製され得る。次いで、このペレット化された改質プロピレンを、例えば射出成形による物品のためのプロセスに直接供給され得る。
【0021】
改質剤は、5重量%〜40重量%(例えば、10重量%〜40重量%、15重量%〜35重量%、15重量%〜30重量%、15重量%〜25重量%、及び/または18重量%〜22重量%)のブロックコポリマーを含むブロック複合材料を含む。ブロック複合材料は、1つ以上のブロック複合材料を含み得る。改質剤は、60重量%〜95重量%(例えば、60重量%〜95重量%、70重量%〜95重量%、及び/または75重量%〜85重量%)の比較的高いメルトフローレート及び比較的低い密度を有するポリオレフィンコポリマーをさらに含む。改質剤は、任意に、0重量%〜30重量%(例えば、10重量%〜30重量%、15重量%〜25重量%、及び/または18重量%〜22重量%)の少なくとも1つの追加のコポリマーを含み得る。追加のコポリマーは、ポリプロピレンと混和性であってもよい。例示的な追加のコポリマーは、The Dow Chemical CompanyからENGAGE(商標)及びVERSIFY(商標)の商品名で入手可能であり、強化ゴムセグメントKraton(登録商標)G1643M及びKraton(登録商標)G1645MグレードなどのKraton(登録商標)のファミリー指定でKraton Performance Polymersから入手可能である。例えば、追加のコポリマーは、プロピレンならびにエチレン及び/またはブテンから誘導され得る。
【0022】
組成物に関して、この理論に拘束されることを意図するものではないが、プロピレンポリマーベース(例えば、ポリプロピレンホモポリマーなど)と連続ポリプロピレン相を有するブロックコポリマーとのブレンドは、単純なポリプロピレン/エラストマーのブレンドと比較して、相対的に小さくて離散したゴムドメインをもたらすであろう。ブロックコポリマーは、プロピレンポリマーベースが低温で改善された靭性を有する衝撃改質されたとみなすことができるように組成物を相溶化することができる。したがって、結果として得られる組成物は、依然として高いメルトフローレートを有する一方、改善された衝撃改質を有するであろう。
【0023】
例えば、高メルトフロー熱可塑性組成物で形成された射出成形物品は、ASTM D3763に従って測定された多軸衝撃延性脆性遷移温度及び/またはASTM D256に従って測定されたノッチ付きアイゾット衝撃延性脆性遷移温度が0℃未満であってもよい。例えば、例示的な実施形態では、ASTM D3763に従って測定された少なくとも多軸衝撃延性脆性遷移温度は0℃未満である。実施例に関して論じたように、多軸衝撃測定は、直径4インチ(102mm)、厚さ0.125インチ(3.175mm)の射出成形ディスク上で6.7m/sで行うことができる。さらに、実施例に関して論じたように、ノッチ付きアイゾット衝撃延性脆性遷移温度は、射出成形の1〜16時間後にノッチを入れたサンプルで測定され得、23℃/50%相対湿度でノッチングした後40時間エージングしたバーを利用することができる。部品は、周囲温度より下で試験する場合、試験温度で冷凍庫に最低4時間置くことができる。
【0024】
例示的実施形態では、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物及び前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物について、前記ブロック複合材料が除外されたことを除いて同じ構成成分を含む別の組成物の両方について同じ条件で多軸衝撃延性脆性遷移温度及び/またはノッチ付きアイゾット衝撃延性脆性遷移温度を測定したときに、前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物を使用して形成された射出成形物品について、ASTM D3763に従って測定された前記多軸衝撃延性脆性遷移温度及び/またはASTM D256に従って測定された前記ノッチ付きアイゾット衝撃延性脆性遷移温度は、前記別の組成物を使用して形成された射出成形物品よりも少なくとも5℃低くあり得る。例えば、前記高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物及び前記別の組成物の両方について同じ条件で多軸衝撃延性脆性遷移温度を測定したときに、少なくとも測定された多軸衝撃延性脆性遷移温度は、前記別の組成物よりも少なくとも5℃低くあり得る。
【0025】
改質剤とプロピレンポリマーベースとのポリマーブレンドを形成する温度は、プロピレンポリマーベースの溶融温度より高くてもよい。例えば、均質な溶融ブレンドを形成するために、温度は、例えば、240℃〜270℃であってもよい。予めブレンドされた場合、改質剤を形成するための温度は、150℃〜230℃及び/または200℃〜225℃であり得る。例えば、改質剤を予備ブレンドするための温度は、改質剤及びプロピレンポリマーベースとのポリマーブレンドを形成するための温度よりも低くてもよい。改質剤及びプロピレンポリマーベースのポリマーブレンドは、ポリプロピレン中の従来の改質剤と比較して、比較的低い粘度のブレンド及び比較的高いメルトフローレートを有し得る。
【0026】
組成物は、1つ以上の任意の添加剤を含み得る。例示的な添加剤は、着色剤または顔料、充填剤、補強剤、潤滑剤、酸化防止剤、UV安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、防曇剤、流動助剤、カップリング剤、架橋剤、核形成剤、界面活性剤、溶媒、難燃剤、帯電防止剤、劣化防止剤、軟化剤、ワックス、及びこれらの組み合わせを含む。
【0027】
組成物(ポリマーブレンド)は、押出(例えば、押出コーティング)及び成形(例えば、射出成形及び回転成形)などの既知のポリマープロセスを有する物品として調製するために使用され得る。例えば、一般に、押出は、ポリマーが溶融して圧縮された高温高圧の領域を通ってスクリューに沿って連続的に推進され、最後にダイを通って押し出されるプロセスである。押出機は、単軸押出機、多軸押出機、ディスク押出機またはラム押出機であってもよい。ダイは、プロファイル押出ダイまたは押出コーティングダイであってもよい。射出成形は、様々な用途のための様々なプラスチック部品を製造するために使用される。射出成形プロセスは、構造発泡射出成形及び/またはマイクロセル射出成形を含み得る。一般に、射出成形は、所望の形状及びサイズの部品を形成するために、ポリマーが溶融され、所望の形状の逆である金型に高圧で射出されるプロセスである。金型は、鋼及びアルミニウムのような金属から作られ得る。成形は、一般に、ポリマーを溶融し、所望の形状の逆である金型に導き、所望の形状及びサイズの部品を形成するプロセスである。成形は、無加圧でも圧力支援型でもよい。例示的な実施形態では、自動車部品は、高メルトフロー熱可塑性ポリオレフィン組成物及び射出成形プロセスを使用して調製される。射出成形プロセスのカテゴリーには、構造発泡射出成形及びマイクロセル射出成形が含まれる。
【0028】
例えば、組成物は、自動車産業において、内装及び/または外装自動車用途(例えば、自動車部品)に使用する軽量及び/または薄い部品を形成するために使用され得る。例示的な自動車部品には、計器パネル、ドアパネル、ピラー、及びバンパーフェイシアが含まれる。
【0029】
ブロック複合材料
実施形態では、ブロック複合材料は、(i)エチレン−プロピレンコポリマー(ソフトポリマーとも呼ばれる)、(ii)アイソタクチックポリプロピレンポリマー(ハードポリマーとも呼ばれる)、ならびに(iii)本質的にエチレンプロピレンポリマーと同じ組成を有するエチレンプロピレンブロック(EPソフトブロック及びソフトセグメントとも呼ばれる)及び本質的にアイソタクチックポリプロピレンポリマーと同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレンブロック(iPPハードブロック及びハードセグメントとも呼ばれる)を含む、ブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーについて、ソフトブロックは、ソフトブロックの総重量に基づいて20重量%〜80重量%(例えば、30重量%〜80重量%、40重量%〜80重量%、50重量%〜80重量%、55重量%〜75重量%、60重量%〜70重量%、及び/または63重量%〜68重量%)のエチレンを含み、ソフトブロックにおける残りがプロピレンである。ブロックコポリマーのハードブロックは、5重量%未満及び/または4.5重量%未満、場合によっては0.5重量%超のエチレンを含み、残りが同様の組成を有するアイソタクチックポリプロピレンである。例えば、ハードブロックは、1.5重量%〜4.1重量%のエチレン及び/または2.1重量%〜3.5重量%のエチレンを含み得る。さらに、ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの総重量に基づいて20重量%〜75重量%(例えば、20重量%〜65重量%、20重量%〜55重量%、20重量%〜50重量%、20重量%〜40重量%、25重量%〜35重量%、及び/または28重量%〜32重量%)のハードブロックを含み、残りがソフトブロックである。
【0030】
言い換えれば、ブロックコポリマーのハードセグメントは、モノマー(すなわちアイソタクチックポリプロピレン)が95重量%超の量及び/または98重量%超の量で存在する重合単位の高結晶性ブロックを指す。ソフトセグメントは、20重量%〜80重量%のコモノマー(すなわちエチレン)及び80重量%未満のモノマー(すなわちプロピレン)を含む。例えば、ソフトセグメントは、コモノマー含有量が10mol%超の重合単位の非晶質、実質的に非晶質またはエラストマーブロックを指す。ブロックコポリマー中のハードセグメントの重量パーセントは、20重量%〜75重量%(残りはソフトセグメントである)であってもよい。
【0031】
ブロック複合材料の溶融温度は、120℃〜150℃(例えば、135℃〜145℃)であり得る。ブロック複合材料中の全エチレン含有量は、ブロック複合材料の総重量に基づいて5重量%〜70重量%(例えば、10重量%〜70重量%、25重量%〜70重量%、30重量%〜60重量%、35重量%〜55重量%、35重量%〜45重量%等)であり得る。ブロック複合材料の分子量は50,000〜1,000,000g/molであり得る。例えば、分子量は、100kg/mol〜200kg/mol(例えば、100kg/mol〜150kg/mol、105kg/mol〜130kg/mol、110kg/mol〜125kg/mol、115kg/mol〜125kg/mol、117kg/mol〜122kg/mol等)であり得る。
【0032】
iPP−EPブロックコポリマー(iPPハードブロック及びエチレン−プロピレンソフトブロックを含むポリプロピレン系オレフィンブロックコポリマー)は、プロピレンポリマーベース中にブレンドされた場合、エラストマー相のドメインサイズを減少させる相溶化溶液を提供し得る。これは、ポリプロピレンとエラストマーとの相溶化されたブレンドを形成して、古典的なブレンドで達成可能なものよりもより細かい形態を有する熱力学的に安定な組成物の広い範囲を提供し、固有の特性の組み合わせをもたらす。
【0033】
ブロック複合材料は、0.1以上1以下のブロック複合材料指数を有するものとして特徴付けられる。例えば、ブロック複合材料指数は、0.1〜0.9、0.1〜0.8、0.1〜0.7、0.1〜0.6、0.1〜0.5等であり得る。ブロックコポリマーは、約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有するものとして特徴付けられる。例えば、Mw/Mnは、1.4〜5.0、1.7〜3.5、及び/または1.7〜2.6であり得る。
【0034】
ブロック複合材料は、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて2g/10分〜500g/10分のメルトフローレートを有し得る。例えば、メルトフローレートは、2g/10分〜350g/10分、2g/10分〜250g/10分、2g/10分〜150g/10分、2g/10分〜100g/10分、2g/10分〜50g/10分、2g/10分〜30g/10分、2g/10分〜25g/10分、2g/10分〜20g/10分、2g/10分〜15g/10分、3g/10分〜10g/10分、及び/または4g/10分〜7g/10分であり得る。ブロック複合材料のメルトフローレートは、改質剤に含まれるポリオレフィンコポリマーのメルトインデックス(ASTM D1238に従い、190℃/2.16kgにおいてg/10分に基づき)未満であり得る。
【0035】
ブロック複合材料は、ブロック長の分布の可能性が最も高いブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、2つ以上のブロックまたはセグメント(例えば、2または3ブロック)を含有する。ブロック複合材料のポリマーを製造する方法において、ポリマー鎖の実質的な部分が、鎖シャトリング剤で終結されたポリマーの形態実質的にプラグフロー条件下で操作中の、少なくとも複数の反応器系列の第1の反応器,または複数にゾーン化された反応器の第1の反応器ゾーンを出るように、ポリマー鎖の寿命を延ばす方法として鎖シャトリング剤が使用され、ポリマー鎖は次の反応器または重合ゾーンにおいて異なる重合条件を受ける。それぞれの反応器またはゾーンにおける異なる重合条件は、異なるモノマー、コモノマー、またはモノマー/コモノマー(複数可)比、異なる重合温度、種々のモノマーの圧力もしくは分圧、異なる触媒、異なるモノマー勾配または識別可能なポリマーセグメントの形成を導く任意の他の差異を含む。したがって、ポリマーの少なくとも一部は、分子内に配置された2つ、3つ以上、好ましくは2つまたは3つの分化したポリマーセグメントを含む。
【0036】
ブロック複合材料ポリマーは、例えば、付加重合可能なモノマーまたはモノマーの混合物を付加重合条件下で、少なくとも1つの付加重合触媒、共触媒及び鎖シャトリング剤を含む組成物と接触させる工程を含む方法によって調製される。この方法は、定常状態重合条件下で操作される2つ以上の反応器、またはプラグフロー重合条件下で操作される反応器の2つ以上のゾーンにおいて、分化プロセス条件下で成長する少なくともいくつかのポリマー鎖の形成によって特徴付けられる。
【0037】
ブロック複合材料を製造するのに有用な好適な方法は、例えば、米国特許第8,053,529号、同第8,686,087号、及び同第8,716,400号に見出され得る。重合は、連続重合、例えば連続溶液重合として実施され得、ここで、触媒成分、モノマー、場合により溶媒、アジュバント、スカベンジャー、及び/または重合助剤を1つ以上の反応器またはゾーンに連続的に供給し、そこからポリマー生成物を連続的に除去する。この文脈で使用される「連続的」及び「連続的に」という用語の範囲内は、間欠的な反応物の添加及び少量の規則的または不規則な間隔での生成物の除去があり、そのため、時間の経過と共に、全体のプロセスが実質的に連続的であるプロセスを含む。さらに、鎖シャトリング剤(複数可)は、第1の反応器またはゾーンにおいて、第1の反応器の出口または出口の少し前で、あるいは第1の反応器またはゾーン及び第2のもしくは任意の後続の反応器またはゾーンの間で、あるいは第2のもしくは任意の後続の反応器またはゾーンのみさえをも含む重合中の任意の時点で添加され得る。例示的な鎖シャトリング剤、触媒、及び共触媒は、例えば、米国特許第7,951,882号に開示されているものである。例えば、ジアルキル亜鉛化合物である鎖シャトリング剤が使用され得る。
【0038】
触媒は、必要な金属錯体または複数の錯体を溶媒に添加することによって均質な組成物として調製され得、最終的な反応混合物と適合する希釈剤中で重合が行われる。所望の共触媒または活性化剤、及び任意にシャトリング剤は、触媒と重合すべきモノマー及び任意の追加の反応希釈剤との組み合わせの前、同時または後のいずれかで触媒組成物と組み合わされ得る。
【0039】
モノマー、温度、圧力の差異、または連結する少なくとも二つの反応器もしくはゾーン間の重合条件における差異に起因して、同じ分子内の、コモノマー含有量、結晶化度、密度、立体規則性、位置規則性または他の化学的もしくは物理的差異など異なる組成物のポリマーセグメントが、異なる反応器またはゾーンにおいて形成される。各セグメントまたはブロックのサイズは、連続ポリマー反応条件によって決定され、好ましくはポリマーサイズの最確分布である。一連の各反応器は、高圧、溶液、スラリーまたは気相重合条件下で操作され得る。
【0040】
以下の例示的なプロセスでは、連続的または実質的に連続的な重合条件を用いることができる。多重ゾーン重合では、すべてのゾーンは、溶液、スラリーまたは気相などの同じタイプの重合条件下であるが、異なるプロセス条件で操作する。溶液重合プロセスの場合、使用される重合条件下でポリマーが可溶性である液体希釈剤中に触媒成分の均質な分散液を使用することが望ましい。高圧プロセスは、100℃〜400℃の温度及び500bar(50MPa)を超える圧力で実施され得る。スラリープロセスは、不活性炭化水素希釈剤及び0℃から、得られるポリマーが不活性重合媒体中に実質的に可溶性になる温度直下までの温度を使用することができる。スラリー重合における例示的な温度は30℃であり、圧力は大気圧(100kPa)〜500psi(3.4MPa)の範囲であり得る。
【0041】
実施態様の範囲を何ら限定することなく、そのような重合プロセスを実施するための1つの手段は以下の通りである。溶液重合条件下で1つ以上のよく撹拌されたタンクまたはループ反応器操作において、重合すべきモノマーは、反応器の一部分で任意の溶媒または希釈剤と共に連続的に導入される。反応器は、任意の溶媒または希釈剤及び溶解したポリマーと共に実質的にモノマーからなる比較的均質な液相を含有する。典型的な溶媒には、C4−10炭化水素またはそれらの混合物、特にヘキサンまたはアルカンの混合物のようなアルカン、ならびに重合に使用される1つ以上のモノマーが含まれる。共触媒及び場合により鎖シャトリング剤と共に使用される触媒は、反応器液相またはそのリサイクルされた部分に最低1ヶ所で連続的または間欠的に導入される。
【0042】
反応器の温度及び圧力は、溶媒/モノマー比、触媒添加割合、ならびに冷却または加熱コイル、ジャケットまたはその両方の使用によって調整され得る。重合速度は、触媒添加割合によって制御される。ポリマー生成物中の所与のモノマーの含有量は、反応器中のモノマーの割合に影響され、これは、これらの成分の反応器へのそれぞれの供給速度を操作することによって制御される。ポリマー生成物の分子量は、任意に、温度、モノマー濃度などの他の重合変数、または前述の鎖シャトリング剤、または水素などの連鎖停止剤を制御することによって制御される。第1の反応器で調製された反応混合物がポリマー成長を実質的に停止させることなく第2の反応器に排出されるように、場合により導管または他の移送手段によって、反応器の排出への接続が、第2の反応器にされる。第1及び第2の反応器の間で、少なくとも1つのプロセス条件の差が確立される。例えば、2つ以上のモノマーのコポリマーの形成における使用、差異は、1つ以上のコモノマーの存在もしくは不在、またはコモノマー濃度の差である。一連の第2の反応器と同様に配置された追加の反応器も設けてもよい。一連の最後の反応器を出る際に、流出物を触媒、例えば水、水蒸気またはアルコールまたはカップリング剤のような触媒停止剤(catalyst kill agent)と接触させる。得られたポリマー生成物は、残留モノマーまたは希釈剤などの反応混合物の揮発性成分を減圧下でフラッシュし、必要に応じて脱揮発押出機などの装置でさらに脱揮することによって収集される。
【0043】
あるいは、上記の重合は、モノマー、触媒、シャトリング剤、温度または異なるゾーンまたはその領域の間に確立された他の勾配を備えるプラグフロー反応器において、場合によっては触媒及び/または鎖シャトリング剤の分離した添加を伴い、断熱または非断熱重合条件下での操作中で、実施され得る。
【0044】
高メルトフローポリオレフィンコポリマー
実施形態では、ポリオレフィンコポリマーは、エチレンと、C〜C10α−オレフィンのうちの少なくとも1つから誘導されるか、またはプロピレンならびにC及びC〜C10α−オレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される。例えば、ポリオレフィンコポリマーは、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブチレンコポリマー、エチレン−ヘキセンコポリマー、及び/またはエチレン−オクテンコポリマーであってもよい。ポリオレフィンコポリマーは、上述のブロック複合材料のブロックコポリマーとは異なるランダムまたはオレフィンブロックコポリマーであってもよい。オレフィンブロックコポリマーは、米国特許第7,608,668号、同第7,858,706号、及び/または同第7,858,707号に記載されている方法によって製造され得る。ポリオレフィンコポリマーは、ASTM D1238に従い、190℃/2.16kgにおいて、メルトインデックスが10g/10分〜1500g/10分であるようなメルトインデックスを有する。例えば、メルトインデックスは、10g/10分〜1000g/10分、10g/10分〜500g/10分、10g/10分〜300g/10分、10g/10分〜100g/10分、10g/10分〜50g/10分、及び/または10g/10分〜40g/10分であり得る。ポリオレフィンコポリマーは、ASTM D792に従う密度が0.854g/cm〜0.900g/cmとなるような比較的低い密度を有する。例えば、密度は、0.860g/cm〜0.890g/cm、0.860g/cm〜0.885g/cm、0.865g/cm〜0.880g/cm、0.870g/cm〜0.879g/cm、及び/または0.872g/cm〜0.876g/cmであり得る。
【0045】
ポリオレフィンコポリマーは、−30℃未満、−40℃未満及び/または−50℃未満などの低いガラス転移温度を有し得る。ガラス転移温度(Tg)は、−80℃より高くてもよい。ブルックフィールド粘度(350°F/177℃で)は、1,000cP〜25,000cP(例えば、3000cP〜20,000cP、5000cP〜20,000cP、10,000cP〜20,000cP、及び/または15,000cP〜20,000cP)であり得る。
【0046】
ポリオレフィンコポリマーは、70,000g/モル以下、50,000g/モル以下、及び/または40,000g/モル以下などの低い重量平均分子量(Mw)を有し得る。重量平均分子量(Mw)は、10,000g/モル以上、20,000g/モル以上、及び/または30,000g/モル以上であり得る。
【0047】
改質剤に使用することができる例示的なポリオレフィンコポリマーは、The Dow Chemical CompanyからENGAGE(商標)及びINFUSE(商標)の商品名で入手可能である。
【0048】
ポリプロピレンポリマーベース
組成物は、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも40g/10分(例えば、40g/10分〜200g/10分、40g/10分〜150g/10分まで、40g/10分〜120g/10分、及び/または65g/10分〜115g/10分)のメルトフローレートを有する30重量%〜95重量%のポリプロピレンポリマーベースを含む。例えば、メルトフローレートは、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも60g/10分であってもよい。プロピレンポリマーベースは、ASTM D1238に従い、230℃/2.16kgにおいて少なくとも40g/10分のメルトフローレートを有する1つ以上のポリプロピレン系ポリマーを含み得る。例示的な実施形態において、組成物は、本質的に改質剤及びプロピレンポリマーベースからなり得る。プロピレンポリマーベースは、ランダムコポリマーポリプロピレンの総重量に基づいて0.5重量%〜5.0重量%のエチレン含有量を有するランダムコポリマーポリプロピレンを含み得る。プロピレンポリマーベースは、プロピレンポリマーベースの総重量に基づいて95重量%〜100重量%のランダムコポリマーポリプロピレンを含み得る。
【0049】
ポリプロピレンポリマーベースは、ホモポリマーポリプロピレンのアイソタクチック形態のポリプロピレンを含み得、及び/または他の形態のポリプロピレン(例えば、シンジオタクチックまたはアタクチック)も使用され得る。ポリプロピレンポリマーベースは、プロピレンにゴム相を分散させたインパクトコポリマーを含み得る。使用されるポリプロピレンの分子量、及び従ってメルトフローレートは、用途に応じて変化し得る。種々のポリプロピレンポリマーの議論は、例えばModern Plastics Encyclopedia/89,mid October 1988 Issue,Volume 65,Number 11,pp.86−92に含まれる。
【0050】
プロピレンポリマーベースは、その中に清澄剤及び/または核形成剤を含み得る。例えば、清澄剤及び/または核形成剤は、溶融状態でポリプロピレン鎖が結晶化及び凝集する方法を変え得る。これらの薬剤は、結晶化温度の開始点を増大させ得る。清澄剤(または清澄化剤)は、通常、有機非ポリマー分子である。清澄化は、一般に核形成剤としても作用し得るが、核形成剤は必ずしも清澄剤である必要はない。例示的な清澄化剤は、ジベンジリデンソルビトールの化学的誘導体であり、ポリプロピレン樹脂のプロセスウィンドウ内の溶融温度を有する。核形成剤は一般に、平均粒径が小さく、融点が高い無機材料である。有核樹脂が押出機中で溶融されると、核形成剤は典型的には固体のままであり、ポリプロピレン球晶が形成され得る周りの部位を提供し得る。核形成剤の例は、安息香酸の化学誘導体である。例えば、核形成剤は、安息香酸ナトリウム、カオリン、及び/またはタルクであり得る。
【実施例】
【0051】
すべての部及びパーセンテージは、他に指示がない限り重量による。
【0052】
試験方法
密度は、ASTM D792に従って測定する。結果は、1立方センチメートル当たりのグラム(g)、またはg/cmで報告される。
【0053】
メルトインデックス(I)は、ASTM D−1238(190℃;2.16kg)に従って測定される。結果は、グラム/10分で報告される。
【0054】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238(230℃;2.16kg)に従って測定される。結果は、グラム/10分で報告される。
【0055】
多軸衝撃延性−脆性遷移温度は、ASTM D3763(本明細書ではM−DBTTとも呼ばれる)に従って測定される。低温延性のレベルは、6.7m/sの多軸衝撃試験における延性−脆性遷移温度によって定義され、ここで、25部のサンプルセットの40〜60%が延性モードで破損する。試験ディスクを射出成形し、次いで23℃/50%相対湿度で成形した後40時間エージングさせた。次いで部品は、周囲温度より低い温度で試験する場合、試験温度で冷凍庫に最低4時間置かれた。部品を10℃刻みで試験した。サンプルは、MTS材料試験システム(Model 319)で試験した。ラムは一定速度で駆動され、打金直径は0.5インチであり、環境チャンバは±2℃に制御された。
【0056】
ノッチ付きアイゾット衝撃延性−脆性遷移温度は、ASTM D256(本明細書ではN−DBTTとも呼ばれる)に従って測定される。射出成形の1〜16時間後にサンプルをノッチングした。23℃/50%相対湿度でノッチングした後、バーを40時間エージングさせた。次いで部品は、周囲温度より下で試験する場合、試験温度で冷凍庫に最低4時間置かれた。部品を10℃刻みで試験した。アイゾット試験装置には環境チャンバはなかった。個々のサンプルを冷凍庫から取り出し、試験した。延性−脆性遷移温度は、サンプルセット全体の平均アイゾット衝撃強さがノッチ内で4〜6ft lbs/inであった点と、サンプルセット全体の様々な破壊モードが混ざった場合と定義された。
【0057】
示差走査熱量測定(DSC)は、ポリマー(例えば、エチレン系(PE)ポリマー)の結晶化度を測定するために使用される。約5〜8mgのポリマーサンプルを秤量し、DSCパンに入れる。蓋は閉じた環境を確保するためにパンにクリンプされている。サンプルパンをDSCセルに入れ、約10℃/分の速度で、PEに対して180℃(ポリプロピレンまたは「PP」の場合は230℃)の温度まで加熱する。サンプルをこの温度で3分間保持する。その後、サンプルをPEに対して10℃/分の速度で−60℃(PPは−40℃)まで冷却し、その温度で3分間等温に保つ。次に、サンプルを完全に溶融するまで、10℃/分の速度で加熱する(第2の加熱)。パーセント結晶化度は、第2の熱曲線から決定された融解熱(H)をPEに対する理論融解熱292J/g(165J/g、PPについて)で割り、この量に100を掛けて計算される(例えば、%触媒=(H/292J/g)×100(PEについて))。
【0058】
他の記載がない限り、各ポリマーの融点(複数可)(T)は第2の熱曲線(ピークTm)から決定され、結晶化温度(T)は第1の冷却曲線(ピークTc)から決定される。DSCに関しては、線形ベースラインに対する最大熱フローレートでの温度が融点として使用される。線形ベースラインは、融解の開始点(ガラス転移温度より上)〜融解ピークの終点から構築される。例えば、温度を室温から200℃まで10℃/分で上昇させ、200℃で5分間維持し、10℃/分で0℃に低下させ、0℃で5分間維持してもよい。その後、10℃/分で0℃から200℃まで温度を上げ、この第2の熱サイクルからデータを取り出すことができる。
【0059】
高温液体クロマトグラフィー(HTLC):高温液体クロマトグラフィー実験方法機器はHTLC実験であり、これは公表された方法に従ってわずかな変更を加えて行われる(Lee,D.;Miller,M.D.;Meunier,D.M.;Lyons,J.W.;Bonner,J.M.;Pell,R.J.;Shan,C.L.P.;Huang,T.J.Chromatogr.A 2011,1218,7173)。2つのShimadzu(Columbia,MD,USA)LC−20ADポンプをそれぞれデカン及びトリクロロベンゼン(TCB)の供給に使用する。各ポンプは、10:1の固定フロースプリッターに接続される(Part #:620−PO20−HS,Analytical Scientific Instruments Inc.,CA,USA)。スプリッターは、製造業者によると、HO中0.1mL/分で1500psiの圧力降下を有する。両方のポンプの流量を0.115mL/分に設定する。分離後、マイナーフローは、デカン及びTCBの両方について0.01mL/分であり、収集された溶媒を30分超秤量して測定される。収集された溶離液の体積は、室温での溶媒の質量及び密度によって決定される。マイナーフローは、分離のためにHTLCカラムに送達される。メインフローは、溶媒貯蔵器に送り返される。50μLのミキサー(Shimadzu)をスプリッターの後に接続し、Shimadzuポンプから溶媒を混合する。次いで、混合溶媒をWaters(Milford,MA,USA)GPCV2000のオーブン内のインジェクターに送達する。Hypercarb(商標)カラム(2.1×100mm、5μm粒径)をインジェクターと10ポートVICIバルブ(Houston,TX,USA)の間に接続する。バルブには60μLのサンプルループが2つ装備されている。バルブは、第1次元(D1)HTLCカラムから第2次元(D2)SECカラムへの溶離液の連続的なサンプリングに使用される。Waters GPCV2000及びPLgel Rapid(商標)−Mカラム(10×100mm、5μm粒径)のポンプをD2サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のVICIバルブに接続する。対称的な構成は、文献(Brun,Y.;Foster,P.J.Sep.Sci.2010,33,3501)に記載されているような接続のために使用される。デュアルアングル光散乱検出器(PD2040,Agilent,Santa Clara,CA,USA)及びIR5推測吸光度検出器を、SECカラムの後に接続して、濃度、組成及び分子量を測定する。
【0060】
HTLCのための分離:バイアルを160℃で2時間穏やかに振盪することにより、約30mgを8mLのデカンに溶解する。デカンは、ラジカルスカベンジャーとして400ppmのBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)を含有する。次いで、サンプルバイアルを注入用のGPCV2000のオートサンプラーに移す。オートサンプラー、インジェクター、HypercarbカラムとPLgelカラム、10ポートVICIバルブ、LSとIR5検出器の温度は、分離の間140℃に維持される。
【0061】
注入前の初期状態は以下の通りである。HTLCカラムのフローレートは0.01mL/分である。D1ハイパーカーブカラム中の溶媒組成は100%デカンである。SECカラムのフローレートは、室温で2.51mL/分である。D2 PLgelカラム中の溶媒組成は100%TCBである。D2 SECカラム中の溶媒組成は、分離中に変化しない。
【0062】
サンプル溶液の311μLアリコートをHTLCカラムに注入する。注入は、以下に説明する勾配を引き起こす。
0〜10分、100%デカン/0%TCB;
10〜651分の間、TCBは0%TCB〜80%TCBまで直線的に増加する。
注入はまた、EZChrom(商標)クロマトグラフィーデータシステム(Agilent)を使用して、IR5検出器(IR測定及びIRメチル)からの15°の角度(LS15)及び「測定」及び「メチル」信号での光散乱信号の収集を誘発する。検出器からのアナログ信号は、SS420Xアナログツーデジタル変換器を介してデジタル信号に変換される。収集頻度は10Hzである。注入により、10ポートVICIバルブのスイッチも誘発される。バルブのスイッチは、SS420X変換器からのリレー信号によって制御される。バルブは3分ごとに切り替わる。クロマトグラムは0〜651分で収集される。各クロマトグラムは、651/3=217 SECクロマトグラムからなる。
【0063】
勾配分離の後、0.2mLのTCB及び0.3mLのデカンを使用して、次の分離のためにHTLCカラムを洗浄及び再平衡化する。この工程のフローレートは0.2mL/分であり、ミキサーに接続されたShimadzu LC−20 ABポンプによって供給される。
【0064】
HTLCのデータ解析:651分の粗クロマトグラムをまず展開して217 SECクロマトグラムを得る。各クロマトグラムは、2D溶出量の単位で0〜7.53mLである。積分限界が設定され、SECクロマトグラムはスパイク除去、ベースライン補正、及び平滑化を受ける。このプロセスは、従来のSECにおける複数のSECクロマトグラムのバッチ分析と同様である。すべてのSECクロマトグラムの合計を検査して、ピークの左側(上限積分限度)及び右側(下限積分限度)の両方がゼロとしてベースラインにあることを確認する。そうでなければ、積分限度を調整してプロセスを繰り返す。
【0065】
1〜217の各SECクロマトグラムnは、HTLCクロマトグラムでX−Yペアを生成し、ここで、nは分数である。
=溶出量(mL)=D1フローレート×n×tスイッチ
式中、tスイッチ=3分は、10ポートVICIバルブのスイッチ時間である。
【0066】
【数1】
【0067】
上記の式は、例としてIR測定信号を使用する。得られたHTLCクロマトグラムは、分離されたポリマー成分の濃度を溶出量の関数として示す。正規化されたIR測定HTLCクロマトグラムは、溶出量に対する正規化された重量分率を意味するdW/dVで表されるYである。
【0068】
X−Yデータ対は、IRメチル及びLS15信号からも得られる。IRメチル/IR測定の比は、較正後の組成を計算するために使用される。LS15/IR測定の比は、較正後の重量平均分子量(M)を計算するために使用される。
【0069】
較正は、Lee et al.,の同書の手順に従う。プロピレン含有量が20.0、28.0、50.0、86.6、92.0及び95.8重量%Pの高密度ポリエチレン(HDPE)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びエチレン−プロピレンコポリマーを、IRメチル/IR測定較正の基準物質として使用する。標準物質の組成はNMRによって決定される。標準はIR5検出器を備えたSECによって実行される。得られた標準物質のIRメチル/IR測定比を組成物の関数としてプロットし、検量線を得る。
【0070】
HDPE基準は、ルーチンLS15較正に使用される。基準のMは、LS及びRI(屈折率)検出器を用いてGPCにより104.2kg/molとして予め決定される。GPCは、GPCの標準物質としてNBS 1475を使用する。この規格は、NISTにより52.0kg/molの認証値を有する。7〜10mgの標準物質を8mLデカンに160℃で溶解させる。溶液を100%TCB中のHTLCカラムに注入する。ポリマーを0.01mL/分で一定の100%TCB下で溶出する。したがって、ポリマーのピークは、HTLCカラム空隙体積で現れる。較正定数Ωは、合計LS15信号(ALS15)と全IR測定信号(AIR,測定)から求められる。
【0071】
【数2】
【0072】
次いで、実験的なLS15/IR測定比は、Mを介してΩに変換される。
【0073】
原子間力顕微鏡法(AFM)は、形態決定のためのものである。射出成形されたASTM伸張バーのコアからの断片は、サンプルから試験片を打ち抜き、保持器に取り付けることによって調製される。サンプリングは、フローの方向を見下ろして、部品のコアで行われる。台形は、〜−120℃でクライオミルに面して粉砕される。次いで、サンプルを、−120℃において凍結切片法で研磨する。2つのAFM法が利用され、1つの試験片は、位相検出を伴うタッピングモードのBruker dimension Icon AFMでスキャンされる。PointProbe NCLプローブ(〜40N/m)は、Ao 1〜5.5Vと係合設定値0.85で使用される。解像度のラインは1024で、スキャンサイズはゴムのドメインサイズによって異なる。2回目のAFM実験では、Bruker Dimension icon上でPeakforceタッピング(PFQNM)モードが使用される。Bruker Scanasyst−エアプローブ(〜3N/m)が使用される。典型的な走査パラメータは、0.5Vピーク力設定値、0.5nmのノイズ閾値、300nmに設定されたピーク力振幅、4μmのZ−範囲、及び0.15Vのピーク力設定値を含む。解像度のラインは1024である。両方の方法のためのスキャンソフトウェアは、バージョンが変化するNanoscopeである。画像の後処理及びパーティクル分析は、様々なバージョンのImage Metrology SPIPソフトウェアで生成される。0次のLMSでの2次の平均面の当てはめと、0平面による当てはめに設定された最小が使用される。
【0074】
キシレン可溶分分別分析:は、2時間の還流条件下で200mlのo−キシレンに溶解された秤量した樹脂を使用して行われる。次いで、溶液を温度制御された水浴中で25℃に冷却して、キシレン不溶性(XI)画分を結晶化させる。溶液が冷却され、不溶性画分が溶液から沈殿すると、キシレン不溶性画分からのキシレン可溶分(XS)画分の分離は、濾紙による濾過によって行われる。残りのo−キシレン溶液を濾液から蒸発させる。XS画分とXI画分の両方を真空オーブンで100℃で60分間乾燥させ、次いで秤量する。
【0075】
13C核磁気共鳴(NMR)は以下を含む。
【0076】
サンプルの調製:サンプルは、クロムアセチルアセトネート(緩和剤)中の0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約2.7gを、10mmのNMRチューブ中の0.21gのサンプルに添加することによって調製される。サンプルは、チューブ及びその内容物を150℃に加熱することによって溶解され、均質化される。
【0077】
データ取得パラメータ:データは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えたBruker 400MHz分光器を使用して収集される。データは、データファイル当たり320トランジェント、7.3秒のパルス繰り返し遅延(6秒の遅延+1.3秒の捕そく時間)、90度のフリップ角度、及び125℃のサンプル温度での逆ゲートデカップリングを使用して取得される。すべての測定はロックされたモードの回転していないサンプルで行われる。加熱した(130℃)NMRサンプルチェンジャーに挿入する直前にサンプルを均質化し、データ取得前に15分間プローブ中で熱平衡させる。
【0078】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC):ゲル透過クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210またはPolymer Laboratories Model PL−220計器からなる。カラム及びカルーセル区画は、140℃で操作される。3つのPolymer Laboratories 10−ミクロン Mixed−Bカラムが使用される。溶媒は1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムのポリマーの濃度で調製される。サンプルは、160℃で2時間軽く撹拌することによって調製される。使用した注入量は100マイクロリットルであり、フローレートは1.0ml/分である。
【0079】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量間の少なくとも10年の分離を有する6つ「カクテル」混合物中に置かれた580〜8,400,000の分子量を有する21の狭い分子量分布ポリスチレン標準物質で行われる。標準物質は、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入される。ポリスチレン標準物質は、分子量が1,000,000以上の場合は50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、1,000,000未満の分子量の場合は50ミリリットルの溶媒中に0.05グラムで調製される。ポリスチレン標準物質を80℃で穏やかに攪拌しながら30分間溶解する。狭い標準物質混合物を最初に流し、分解を最小限にするために最も高い分子量成分を減少させる順序で行う。ポリスチレン標準物質ピーク分子量は、以下の式を用いてポリエチレン分子量に変換される(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載される):Mポリプロピレン=0.645(Mポリスチレン)。
【0080】
Viscotek TriSECソフトウェアバージョン3.0を使用して、ポリプロピレン等価分子量計算を行う。
【0081】
ブロック複合材料の調製
ブロック複合材料1(BC−1)及びブロック複合材料2(BC−2)は、2つの反応器に同時に供給される触媒を用いて製造される。BC−1及びBC−2の各々は、(i)エチレン−プロピレンポリマー、(ii)アイソタクチックプロピレンポリマー、ならびに(iii)エチレン−プロピレンポリマーと同じ組成を有するエチレン−プロピレンソフトブロック及びアイソタクチックプロピレンポリマーと同じ組成を有するアイソタクチックポリプロピレンハードブロックを含むブロックコポリマーを含む。BC−1及びBC−2のブロックコポリマーに関しては、エチレン−プロピレンソフトブロックが第1の反応器で生成され、アイソタクチックプロピレンハードブロックが第2の反応器で生成される。BC−1のブロックコポリマーにおけるソフトブロックとハードブロックとの間の分割は、約60/40である。BC−2のブロックコポリマーにおけるソフトブロックとハードブロックとの間の分割は、約50/50である。
【0082】
BC−1及びBC−2は、直列に接続された2つの連続撹拌タンク反応器(CSTR)を使用し、両方の反応器に同時に供給される触媒を使用して調製される。ソフトブロックは第1の反応器で生成され、ハードブロックは第2の反応器で生成される。各反応器は液圧的に満ちており、定常状態の条件で動作するように設定されている。特に、BC−1及びBC−2は、モノマー、触媒、共触媒−1、共触媒−2及びSA(鎖シャトリング剤として)を以下の表1に概要を示すプロセス条件に従って流動させることによって調製される。触媒、共触媒−1、共触媒−2、及びSA(シャトリング剤)−1を反応器に別々に供給するために、2つのポート注入器が使用される。BC−1及びBC−2の調製のために、触媒は(([rel−2’,2’’’−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ−κO)]ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)−5−メチル[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]ジメチル−ハフニウム)である。共触媒−1は、長鎖トリアルキルアミン(Akzo−Nobel、Inc.から入手可能なArmeen(商標)M2HT)が使用される反応によって調製されたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物である。共触媒−2は、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマン)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14−18アルキルジメチルアンモニウム塩であり、これは米国特許第6,395,671号の実施例16に従って調製される。SAは、Akzo Nobel Chemicalsからの1〜3mol%の変性メチルアルモキサン(MMAO−3A)を含有し得るジエチル亜鉛(DEZ)の溶液である。反応器を出る際に、水及び/または添加剤をポリマー溶液に注入し得る。
【0083】
ブロック複合材料1及びブロック複合材料2を製造するためのプロセス条件は以下の通りである。
【0084】
【表1】
【0085】
得られたBC−1及びBC−2は、エチレンプロピレン(EP)ポリマー、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)ポリマー及びEP−iPPブロックコポリマーを含む。
【0086】
BC−1及びBC−2の特性を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
ブロック複合材料1のブロック複合材料指数(BCI)は0.470である。ブロック複合材料2のBCIは0.444である。BCIという用語は、本明細書では、ブロックコポリマーの重量百分率を100%で割ったもの(すなわち、重量分率)に等しいと定義される。ブロック複合材料指数の値は、0〜1.0の範囲であり得るが、1.0はブロックコポリマーの100%に等しく、ゼロは従来のブレンドまたはランダムコポリマーのような材料に対するものである。言い換えれば、不溶性画分について、BCIは1.000であり、可溶性画分についてはBCIにはゼロの値が割り当てられる。
【0089】
特に、BCIは、不溶性画分が、ポリマーが単にiPPホモポリマーとEPコポリマーとのブレンドである場合には存在しないであろうかなりの量のエチレンを含有することを示すことに基づく。この「余分なエチレン」を説明するために、キシレン不溶性及び可溶性画分の量ならびに各画分中に存在するエチレンの重量%からブロック複合材料指数を推定するために質量バランス計算が行われ得る。この「余分なエチレン」を説明するために、キシレン不溶性及び可溶性画分の量ならびに各画分中に存在するエチレンの重量%からブロック複合材料指数を推定するために質量バランス計算が行われ得る。
【0090】
式1による各画分からのエチレンの重量%の合計は、(ポリマー中の)全重量%のエチレンをもたらす。この質量バランス式は、二元ブレンド中の各成分の量を定量化するために使用され得、または3元もしくはn成分ブレンドに拡張され得る。
【0091】
【数3】
【0092】
式2〜4を適用して、不溶性画分中に存在するソフトブロック(余分なエチレンの供給源を提供する)の量を計算する。式2の左辺の不溶性画分の重量%Cを代入することにより、式3及び式4を用いてiPPハード重量%及びEPソフト重量%が計算され得る。EPソフト中のエチレンの重量%は、キシレン可溶性画分中のエチレンの重量%に等しくなるように設定されることに留意されたい。iPPブロック中のエチレンの重量%はゼロに設定されるか、またはそのDSC融点もしくは他の組成測定値から分かっている場合、その値をその場所に入れることができる。
【0093】
【数4】
【0094】
【数5】
【0095】
【数6】
【0096】
不溶性画分中に存在する「追加の」エチレンを考慮した後、不溶性画分中に存在するEPコポリマーを有する唯一の方法では、EPポリマー鎖はiPPポリマーブロックに連結されなければならない(あるいは、そうでなければキシレン可溶性画分に抽出される)。したがって、iPPブロックが結晶化すると、EPブロックの可溶化の可能性が低下し、及び/またはEPブロックが可溶化するのを防ぐことができる。
【0097】
特に、本明細書で使用されるブロック複合材料1及びブロック複合材料2について、BCI値は、以下の表3に示すように計算される。
【0098】
【表3】
【0099】
BCIを推定するには、各ブロックの相対量を考慮する必要がある。これを近似するために、EPソフトとiPPハードとの間の比が使用される。EPソフトポリマー対iPPハードポリマーの比は、ポリマー中で測定した全エチレンの質量バランスから式2を用いて計算され得る。あるいはまた、重合中のモノマーとコモノマー消費量の質量バランスから推定することもできる。EPソフトの重量分率とEPソフトの重量分率は、式2を使用して計算され、iPPハードにはエチレンが含まれていないと仮定している。EPソフトのエチレンの重量%は、キシレン可溶性画分中に存在するエチレンの量である。
【0100】
例えば、iPP−EPポリマーが全体的に47重量%のCを含み、67重量%のCを含むEPソフトポリマー及びエチレンを含有しないiPPホモポリマーを製造する条件下で製造される場合、EPソフト及びPPハードは、それぞれ70重量%及び30重量%である。EPのパーセントが70重量%であり、iPPが30重量%である場合、EPDM:iPPブロックの相対比は2.33:1として表され得る。したがって、当業者がポリマーのキシレン抽出を実施し、40重量%の不溶性及び60重量%の可溶性を収集する場合、これは予想外の結果であり、これはブロックコポリマーの画分が存在したという結論を導くであろう。不溶性画分のエチレン含有量がその後25重量%のCであると測定された場合、式2〜式4は、この追加のエチレンを説明するために解かれ得、37.3重量%のEPソフトポリマーと、62.7重量%のiPPハードポリマーが不溶性画分に存在することになる。
【0101】
全ポリマー組成物の推定ならびにハード及びソフトブロックの組成を評価するために使用される分析測定値の誤差に応じて、ブロック複合材料指数の計算値において5〜10%の相対誤差があり得る。そのような推定には、DSC融点、NMR分析、またはプロセス条件から測定されるiPPハードブロック中の重量%C2;キシレン可溶物の組成から、またはNMRにより、またはソフトブロックのDSC融点(検出された場合)により推定されるソフトブロック中の平均重量%C2が含まれる。しかし、総合的に、ブロック複合材料指数計算は、不溶性画分中に存在する「追加の」エチレンの予期しない量を合理的に説明し、不溶性画分中に存在するEPコポリマーを有する唯一の方法では、EPDMポリマー鎖はiPPポリマーブロックに連結されなければならない(あるいは、そうでなければキシレン可溶性画分に抽出される)。
【0102】
BC−1及びBC−2は、後述するように、改質剤を調製するためにさらにブレンドされる。
【0103】
改質剤の調製
改質剤は、BC−1またはBC−2と高メルトフローポリオレフィンコポリマーとのブレンドである。
【0104】
特に、主に使用される材料は以下の通りである。
【0105】
[表]
【0106】
第1の改質剤は、第1の改質剤の総重量に基づいて20重量%のブロック複合材料1及び80重量%のポリオレフィンエラストマー1を用いて調製される。第2の改質剤は、第2の改質剤の総重量に基づいて20重量%のブロック複合材料1及び80重量%のポリオレフィンエラストマー2を用いて調製される。第3の改質剤は、第3の改質剤の総重量に基づいて10重量%のブロック複合材料2及び90重量%のポリオレフィンエラストマー1を用いて調製される。
【0107】
第1の比較改質剤は、第1の比較改質剤の総重量に基づいて20重量%のブロック複合材料1及び80重量%のポリオレフィンエラストマーAを用いて調製される。第2の比較改質剤は、第2の比較改質剤の総重量に基づいて20重量%のブロック複合材料1及び80重量%のポリオレフィンエラストマーBを用いて調製される。
【0108】
特に、第1、第2及び第3の改質剤ならびに第1及び第2の比較改質剤は、30mmのZSK Werner Pleiderer二軸スクリュー押出機で250RPMのスクリュー速度で溶融ブレンドすることによって調製される。成分は、個々の損失/重量フィーダーを使用して押出機に供給される。抗酸化添加剤は、配合の前にエラストマーとタンブルブレンドされる。配合押出機の供給速度は、25lbs/hrであり、溶融温度範囲は200℃〜220℃(430°F)である。さらに、温度プロファイルは以下の通りである。
【0109】
[表]
【0110】
実施例及び比較例の調製
実施例については、ブレンド組成物は、表4及び5の配合に従って形成される。次いで、それぞれのブレンド組成物を使用して調製した試験片を、多軸衝撃延性脆性遷移温度(以下、M−DBTTと称する)及び/またはノッチ付きアイゾット延性−脆性遷移温度(以下、N−DBTTと称する)について評価する。
【0111】
特に、主に使用される材料は以下の通りである。
【0112】
[表]
【0113】
実施例1及び2ならびに比較例A〜Fは、TPOブレンドが比較的高いMFRのポリプロピレンホモポリマーを使用する以下の表4の配合に従って調製される。
【0114】
【表4】
【0115】
実施例1を参照すると、比較例Aのブロック複合材料1を含まないポリオレフィンエラストマー1の包含と比較して、ブロック複合材料1及びポリオレフィンエラストマー1を含む第1の改質剤の包含は、十分に高いブレンドMFR(及び低いMFR比)が維持され、M−DBTTを減少させることが分かる。実施例2を参照すると、比較例Bのブロック複合材料1を含まないポリオレフィンエラストマー2の包含と比較して、ブロック複合材料1及びポリオレフィンエラストマー2を含む第2の改質剤の包含は、十分に高いブレンドMFR(及び低いMFR比)が維持され、M−DBTTを減少させることが分かる。比較例C、D、E及びFを参照すると、ブロック複合材料1の有無にかかわらず比較的低いメルトフローレートエラストマー(異なる密度で)を使用すると、ブレンドMFRは十分に高くなく、MFR比は非常に高いことが分かる。
【0116】
また、図1は、実施例1の形態を示す原子間力顕微鏡画像を示し、ここでは、比較例Aの原子間力顕微鏡画像を示す図2と比べて、非常に低いマトリックス粘度を有する熱可塑性ポリオレフィン化合物にブロック複合材料1を添加すると著しく小さいゴムドメインサイズ及び改善された分散が達成される。また、図3は、実施例2の原子間力顕微鏡画像を示し、図4は、比較例Bの原子間力顕微鏡画像を示す。また、図5は、実施例5の原子間力顕微鏡画像を示し、図6は、比較例Iの原子間力顕微鏡画像を示す。
【0117】
実施例3〜5及び比較例G〜Iは、TPOブレンドが比較的より高いMFRのポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレン衝撃コポリマーを使用する以下の表5の配合に従って調製される。
【0118】
【表5】
【0119】
実施例3を参照すると、比較例Gのブロック複合材料1を含まないポリオレフィンエラストマー1の包含と比較して、ブロック複合材料1及びポリオレフィンエラストマー1を含む第1の改質剤の包含は、十分に高いブレンドMFR(及び低いMFR比)が維持され、M−DBTT及びN−DBTTの両方を減少させることが分かる。実施例4を参照すると、比較例Hのブロック複合材料1を含まないポリオレフィンエラストマー2の包含と比較して、ブロック複合材料1及びポリオレフィンエラストマー2を含む第2の改質剤の包含は、十分に高いブレンドMFR(及び低いMFR比)が維持され、M−DBTT及びN−DBTTの両方を減少させることが分かる。実施例5を参照すると、比較例Iのブロック複合材料2を含まないポリオレフィンエラストマー1の包含と比較して、ブロック複合材料2及びポリオレフィンエラストマー1を含む第3の改質剤の包含は、十分に高いブレンドMFR(及び低いMFR比)が維持され、M−DBTTを減少させることが分かる。
【0120】
表4及び表5を参照すると、プロピレンベースポリマーの粘度が低下し、プロピレンベースポリマーのメルトフローレートが増加するにつれて、より低いDBTTを達成する能力に対して、ブロック複合材料の存在がより重要になる。
【0121】
実施例1〜5及び比較例A〜Iの試験片は、第1の溶融ブレンド及びその後の射出成形によって調製される。特に、改質剤、ポリプロピレンホモポリマー、及びタルクは、30mmのZSK Werner Pleiderer二軸スクリュー押出機で350RPMの速度で溶融ブレンドすることによって調製される。成分は、ペレット及び粉末のための個々の損失/重量供給機を使用して押出機供給ホッパーに供給される。抗酸化剤及び潤滑添加剤は、配合の前にタルクとタンブルブレンドされる。配合押出機の供給速度は、40〜50lbs/時間であり、溶融温度範囲は240℃〜270℃(430°F)である。さらに、温度プロファイルは以下の通りである。
【0122】
[表]
【0123】
さらに、射出成形された試験片は、Toyo110トン電気射出成形機で製造される。すべての試行において90トンのクランプトン数が使用されている。充填からパックへの移送はスクリュー位置で行われる。成形はASTM 3641に従って行われる。アイゾット試験片の場合、金型は2キャビティASTMタイプ1伸張バーであり、アイゾット試験片はN−DBTT測定のために切断される。次に、得られた部品をジップロックバッグに入れ、ノッチングする前に73°F/50%湿度室内に調整室に入れる。ノッチングは、成形後1〜16時間以内に起こる。
【0124】
M−DBTTは、厚さ3.175mmの直径4インチの射出成形ディスク上で試験される。直径4’’のディスク金型はシングルキャビティ金型である。冷却水と外部のMatsui金型コントローラを使用して、金型を32℃に加熱する。部品は1つのタブゲートを用いて塗りつぶされる。N−DBTT試験片の射出成形条件は以下の通りである。
【0125】
【表6】
【0126】
M−DBTT試験片の射出成形条件は以下の通りである。
【0127】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6